前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
ちょっとだけ、この世界の言語を深掘りしてみました。
新言語考えるの難しすぎぃ!
「あれからずっと考えてみたけど、さっぱりわからないわ。読み方を教えなさい」
シレンの穴の攻略を切り上げ、今は午後の休憩時間。宿でのんびりしていたら、ニアが押しかけてきた。
「どんだけの時間考えた?」
「暇な時があればずっとよ。けど、なんの情報もなしに解読するのは無理って結論に至ったわ」
「もうちょい早くいけたろその結論...」
ずっと日本語を解読しようとしていたみたいだが、まぁ文字で音がわかるわけでもないし、そりゃ情報なけりゃ解読できるわけないわ。
「んで、読み方を教えてくれ、だったか?じゃあまずは色々基本から教えようか」
平仮名と片仮名を五十音全て紙に書いていく。
「はいこれ。これがこの暗号、日本語の基本的な文字。同じ位置に書いてるやつは同じ発音で同じ意味だから」
「多いわね...これだけで普通の文字よりも種類あるじゃない」
「でも普通はこっちの丸っこい方をよく使うかな。平仮名って言うんだ」
「ひ、ひらがな...?それだけでも十分多いわよ」
「んじゃ、発音も少しずつやってみようか...ひ ら が な はい復唱」
一時的に翻訳の石の効果を切り、日本語で発声する。
「……発音も作っているの?」
「ああ、発音もちゃんと決まってるぞ」
「発音はいらないわ。読み方だけ教えてちょうだい」
「おけ」
これはこう読むんだと、五十音全て声に出して説明する。翻訳の石のおかげで、「あ」と言うだけでこの世界の「あ」にあたる発声へと変換されるから、一文字一文字声に出すだけで説明できて楽だな。
……なんとなく、この機会にちゃんとこの世界の言語を話せるようにしたいと思い、ニアが復唱する瞬間だけ翻訳を切ってみたが、やはりちゃんと聞き取ることはできなかった。わけわからない発音で、もはやノイズのようにしか聞こえない。やっぱリスニングは石に頼るしかないか...
ただ、分かったこともある。といっても、前から薄々勘づいていたことではあるのだが、この世界の言語って日本語一文字一文字に対応しているんだよな多分。
いわゆる換字式暗号のようなもので、発音が平仮名一文字ずつに対応しているのだろう。発音は俺には理解できないものだが、それぞれこの世界の「あ」や「か」などの発音があって、平仮名と対応している。
それに気づいたのは、翻訳の石の性質のおかげだった。翻訳はリアルタイムで行われている。発音が違うため、口の動きと俺の耳に届く日本語の音声がズレてしまうのだが、それにもかかわらず話し終わるタイミングと口が閉じ切るタイミングが同じなのだ。
それはつまり、日本語の発音とこの世界の言語の発音の長さが同じだということに他ならない。だから日本語一文字とこの世界の発音が換字式暗号の要領で対応していると考えられるわけだ。
あと、リアルタイムで翻訳ができるということは、文型も日本語と同じSOV型の可能性が高い。それも、倒置法などがあったりと自由度が高い。
以上から、この世界の言語は日本語に極めて近い言語の可能性が高い。もしかしたら、発音と文字が違うだけでほぼほぼ日本語なのでは...?
とまぁ、ここまで色々考えてみたけど、結局聞き取れないんだから無意味だな。翻訳頼りの生活は終わらなそうだ。
「……とまぁ、これが五十音だな」
「発音一つに一文字が対応しているのね」
あっ、ほんとにそうなんだ。思わぬ形で答え合わせが来たな。
「んで、こっからもっとヤバいけどいいか?」
「……いいわよ。覚悟はできてるわ」
「まず、さっきの五十音に加える感じで、濁点と半濁点がつきます」
「なるほど、発音ちょっと足りないんじゃないかと思っていたけれど、まだあったのね」
「んで、これが漢字でございます」
「???」
はいパンクしたね。
「魔法図鑑にも書いてあったと思うけど、これは漢字。さっきの平仮名だけだと不便だからできた文字だ」
「なんでそんなもの作ってるのよ...」
「だって不便だし」
あと、俺に言わないでくれ。作ったのは俺じゃないし...
「不便ってどういうこと?線多いし、書くの面倒じゃない」
「そうだけど、全部平仮名で文を書いているのを想像してみて」
ニアが目を閉じて考え込む。
「どうだ?読みづらいだろ?」
「……そうかしら?」
あっ、普通にこの世界の文字を読んでるわけだから慣れてるのか...ちなみにこの世界の文字は、ラテン文字とキリル文字、他にも何個かの言語を混ぜたような形をしていて、二文字で一つの音を表しているようだ。日本語と同じ表音文字だな。文字は十個あるから、理論上は10×10で百個の発音を文字に起こせる計算だな。全部のパターンを使ってるわけではないみたいだけど。
「それが読みづらいんだよ。同音異義語ってあるだろ?平仮名だけだとどれのことを言ってるのか分かりにくいんだ」
「文脈から大体読み取れるじゃない。それに、順位記号を使えばいいのに...面倒なことをするのね」
ニアが言った順位記号というのは、単語につけられる数字のことだ。同音異義語を区別するために付けられており、使う頻度の高い単語から順番に1、2、3...と番号が既に振られていて、その数字で単語がどれを指しているのかを示しているのだ。この性質に気づくのには結構かかった記憶がある。
「順位記号って、その単語がどの番号なのかを覚えないといけなくて大変だろ?これだったら、一目見ればわかるから実際に使ってみると楽なもんだぞ。覚えるのが大変なのには変わりないけどな」
漢字って常用漢字外を含めて膨大な数あるからなぁ...Unicodeごと覚えてる人もいるってんだから、世界には凄い人もいるんだなぁと思った記憶がある。
「そうだな...例えばこれ、ニアはどう読む?」
裏庭には二羽庭には二羽鶏がいる、とこの世界の言語で順位記号なしで書いてみる。そしてあとの説明のために、その下に平仮名でも書いておく。
「どこで区切ればいいのよこれ」
「そう、これは区切り方を変えることで様々な読み方ができるんだ。これに順位記号をつけるとこうなるわけだが...漢字で書くとこうなる」
「ごちゃごちゃしてる字ね...でも、たしかに読みやすいは読みやすいわね」
「だろ?こんな感じで同音異義語や単語の区切りがわかりやすくなるのが漢字だ。順位記号を読む必要がないし、書くときもいちいち順番を数える必要がないからめっちゃ楽」
「へー...そのかんじとやらは、どれくらいあるのかしら」
「えーっと...何万字あるんだっけ...」
……あっ、やべ。ボソッと言っちゃった何万字ってのに絶句してるわニア。
「ああでも普通に使うのは二千字くらいかな、うん」
「それでも十分多いわよ...」
「……じゃあもっと混乱するようなこと説明していこうか。今度は数字の漢字を書こう」
漢数字で一と書く。
「これが1ね。それで、これが2」
一の隣に二を書く。もうこれだけで、あの芸人のネタを知ってたらこの後の流れを察せられるだろうな。
「んで、これが3」
「横棒が増えていくのね」
「この後どうなるかわかる?」
「……そう聞くってことは、もう一本棒が増えるわけじゃないのね?」
「こうなります」
はい四!
「なぜ急にこうなったのよ!」
「やっぱそうなるよねぇ。まぁこれでも4なんだけどね」
亖←これも4らしい。異体字らしいけど、なんでこっちの四が残ったんだろう...漢字を作った人の思考が読めん。
「そして、混乱する文章をここに...」
今日3月1日は日曜日で祝日、晴れの日でした、と書く。
「同じ漢字が6個あるだろ?これ、全部読み方違うんだぜ?」
「???」
はい、ニアさん二度目のパンクでーす。
こりゃ、ちゃんと理解するには時間かかるだろうなぁ...
「よいしょっと」
いつも通り次元転移のゲートを出る。ここはシレンの穴の真ん前。昨日の休憩時間が夜までニアに日本語を叩き込みまくったせいで消し飛んだが、次の日は普段と変わらずやってくる。ダンジョンに潜るんだから、集中しないとな...
「よーし頑張るぞー!」
ぐっと背伸びして眠気を吹っ飛ばし、集中を...
「……は?」
背伸びしている間目を瞑っていたのだが、目を開けたらみんながいなくなっていた。いや違う。シレンの穴がない。俺が別の場所に移動してしまったのだ。
「クソ、転移か...分断された!」
俺だけ転移させられたのか、それともみんな別々の場所に転移させられたのかはわからないが、分断されたのは確かだ。
「経験が活きたな...」
転移させられてしまったが、これはシレンの穴で経験済みだ。もし全員が転移させられたなら、すぐにシレンの穴へと向かい始めているだろう。
「というかそもそも!今ならすぐに戻れる!」
次元転移があるため、すぐにでもシレンの穴まで戻ることができる。というか、ここまで待ってもまだどこからも爆発が起きていないということは、俺以外は転移させられてないなこれ。
9936、9937ページ 次元転移
次元転移のゲートを開き、中に...
「っとあっぶね!」
ゲートの中に入った瞬間を狙ってきた。俺がゲートを閉じるよりも早く魔族が入ってきて、そのまま蹴りを放ってくる。
「あっぶねぇなオイ!」
ギリギリで魔族の蹴りを回避する。姿は見えない。この体格は...魔素操作の魔族か!
「クソ...この中で戦うとか怖すぎんぞ」
この次元転移空間の中で戦闘ってできるのか?壊れたりしないよな...?ニアにしかわからないからちょっと怖いな。
けど、ここでこいつを殺るしかない。こいつを放置してみんなのいるところに戻ってしまったら、魔族二人が揃ってしまう。シレンの穴周辺ではみんなと転移の魔族が戦っているはずだから、揃わせるわけにはいかないのだ。
「よっしゃあ!かかってこいやー!」
『なんかテンションおかしくない⁉︎」
「なに朝から魔族襲来してんだバカタレ!帰りに来い帰りに!」
『それはそれで怒るでしょうが!』
「よくわかってんじゃねぇか!」
互いに怒鳴り散らかしながら格闘戦をする。魔族の、時折繰り出される謎加速攻撃を速度操作で対処し、攻撃を繰り出す。だが、俺の攻撃は魔法で受け流されるか障壁で止められてしまう。
「へいへい動きすっとろいんじゃなーい?」
7801ページ 黒 青 未来跳躍
0.02秒の跳躍で魔族の背後に周り、蹴りを叩きつける。
……異様に硬いな。これはあれだな、魔力で皮膚表面に鎧を纏っているんだな。この魔族の使う障壁も普通以上に硬いし、超高濃度の魔力を固めているのか...
攻略法は二つ。この魔力の鎧を突き破るまで攻撃を叩き込むか、鎧を無視して攻撃する!
9929ページ 黒のみ 閃光・改
魔力を多量に注ぎ込み、閃光を放つ。普通の障壁や魔力の鎧なら閃光で貫ける。仮に魔力濃度が高くて貫けなかったとしても、ニトラスの改良型閃光ならダメージは与えられるはずだ。
『危なっ!』
消えた⁉︎魔族に触れるどころかその二メートル近く前で消滅してしまった。魔法拡散...なら速度探知でその領域を探知できるはず。となると、見えない魔力の壁を使って閃光を衝突させた?
「それなら...」
閃光がダメなら次。別の方法で魔力の鎧を無視してやろう。
『雷装』
雷装を発動し、魔力と同期させる。
「痺れろ...!」
雷撃剣(仮)は、電流と魔力二つの性質を兼ね備えており、それぞれその時々に都合の良い方の性質が現れる。障壁に触れれば、魔力の性質が多く作用することで障壁にあるごく僅かな魔力と魔力の隙間を縫ってすり抜けることができ、魔力の鎧程度なら魔力と同期した電流の力で鎧にも電流が流れて痺れさせることができる。
つまり、こいつが普通に今まで通りの防御をすれば痺れさせて、動きを封じることができるのだ。
ザクッ...
「……おいおい、説明は失敗フラグじゃなかったのか?」
心の中で次にやる動きを説明した時、大体失敗するのがオチなのだが...なんか普通に成功して魔族の喉に雷撃剣(仮)が刺さっちまった。マジか...こいつマジか...普通俺が新しいことやり出したら警戒して回避するだろ。バカだなこいつ。
そのまま剣を左右に動かして、首を焼き切って分離させる。
「さて、再生は...するのかよ」
転移の魔族とはだいぶ離れているはずだが、これでも再生するのか...こりゃ、距離は再生とは関係ないのか?...いや、再生が遅いな。傷口が焼けているからかもしれないが、距離が離れているからこそとも考えられる。どれだけ離れていても再生自体はできる。そう考えた方が良さそうだ。
「今のうちに合流を...!」
魔族が再生し切る前にこの空間内を走り抜け、シレンの穴前に繋がるゲートを抜ける。その最中に、まだ発動していなかった魔道具を起動していつもの装備を身につける。
「状況は⁉︎」
ゲートを抜けたすぐ先にいたクミリアに聞く。
「カリヤ⁉︎...今は転移の魔族と戦闘中!」
「こっちは魔素操作と戦ってきた。少ししたら追ってくるだろうから、それまでに出来るだけあいつを削って...って、どこいんだよ」
転移の魔族も姿を隠してやがる。いったいどこに...と思ったが、ニアの魔法が追尾してるな。あそこにいるのか。
「魔素操作がいつゲートから出て来るかわからない。奴も目には見えないから、クミリアは警戒を頼む」
次元転移の、出て来る瞬間までゲートの位置がわからず、兆候なく出ることができるこの利点がまさか裏目に出るとはな...というかそもそも、中に誰かいると開けたゲートを閉じれないのも初めての経験だ。閉じ込めることができたなら簡単だったんだがな...
「さて、俺は転移の魔族を...!」
ニアの魔法の追尾先、そこに魔族はいるはず。魔法の動き方でどの方向に向かって飛んでいるのか、次にどこへ避けそうなのかを先読みし...
「そこ!」
魔道具で次元収納の中にある魔法を取り出し、見えない魔族に向けて撃ち出す。
「……⁉︎」
俺と魔族の位置が入れ替わった...?転移の応用か!
とにかくまずい。このままだと俺が撃ち出した魔法にやられる。ニアの追尾魔法は魔力依存みたいだったから自動的に避けてくれたけど、俺が撃った魔法はそんな高性能じゃない。
7801ページ 黒 青 未来跳躍
「っ、ぶねぇ...なかなかいやらしいことしやがるな」
未来跳躍のおかげで避けられたが、珍しく搦手を使ってきたな。今後も同じような攻撃をされちゃたまらない。いつでも対応できるようにしなければ。
「転移を封じろライト!」
俺がそう叫ぶとすぐにライトは聖剣を地面に刺し、聖域を展開する。しかし、いつもよりも範囲が狭い。シレンの穴の外にいるため、今までシレンの穴で手に入れた勇者の力を引き出せていないのだ。時間も十五秒しかない。この安全地帯をうまく使って戦わなければ...
「か...カリヤ!!」
クミリアが俺を呼んでいる。魔素操作の魔族が出てきた。そういう合図だと思い、俺はクミリアの方を見る。
「えっ...⁉︎」
クミリアが一方的に殴り倒されている。いや...それにしては動きが変だ。その疑問を抱えながら、クミリアを助けに走る。
そして、速度探知範囲内に魔族が入ったことで、何が起こっているのかを理解する。
「雷...装⁉︎」
クミリアに攻撃が当たる瞬間だけ、魔族の拳に電気が宿っている。このせいで、一度攻撃を喰らったクミリアはそのまま連続攻撃を喰らってしまったのだ。電流対策のないクミリアにこの攻撃はキツすぎる。
というかそもそも、なんでこいつが雷装を持っているんだ。まさか、アクセルの例から雷装の取得条件を探り当てたのか?それでこいつも雷装を手に入れたとか...?
『雷装じゃない。私の力さ!』
チッ、こっちにターゲットを変えてきたか。こいつの役割は俺の足止めで、転移の魔族に自由にやらせるのが目的か!
『雷装』
というかこいついくつも固有能力持ちすぎだろ!判明している力は、魔素操作、魔法の威力増大、急加速、電気...魔族の固有能力は一つとは限らないとはいえ、こんな複数持ってるなんて考えられないし信じたくない。何か、うまく一つの固有能力として説明する方法はないのか...?
「くそ、防御も完璧かよ...!」
雷装状態で殴っても、触れる瞬間に魔族の身体から電流が飛び出すため、俺の雷装が打ち消されてしまい意味をなくしてしまう。電流の威力はトントンと言ったところか。普通の雷装じゃ意味なさそうだな。
ダガーを一本抜き、雷装を流し込む。そして雷撃剣(仮)も使い、右手に雷撃剣(仮)を、左手にダガーを持つ。
『その剣いったいんだよねぇ...』
「それならもう一度喰らってもらおうか」
『因果関係がおかしい!』
ってか、こいつと戦うよりも転移をなんとかしたいんだが...こいつの方が色んなことをしてくるが、厄介度は転移の方が高い。奴なら五人相手でもうまくあしらいながら耐えることができるはずだ。もう十五秒経って聖域も消えてるし、転移攻撃がいつ飛んできてもおかしくない。
だけど、こいつも面倒なのには変わりない。こいつと戦いながら転移の魔族の方に意識を向けるなんてできない。速度探知の範囲内に入ってくれればどうにかできるかもしれないが、そんなこと起こり得ないだろうし期待するだけ無駄か。
せめてこの雷撃剣(仮)をもう一度刺して、一度殺すことができればいいんだけど...バカのこいつも流石に学習する。ダガーの攻撃は必要最小限の動きで避けるかそもそも回避せず、雷撃剣(仮)の攻撃は絶対に避けて来る。これだと埒が開かないな...
今こいつらにこの手を見せるのはできれば避けたかったが...さっきも片鱗は見せてしまったし、いっそのこと全て見せて警戒させ、動きを鈍らせてやろう。
雷装を宿らせたダガーを魔族に向かって投げる。その攻撃自体はあっけなく避けられてしまうが...魔族の視界外にダガーが出た瞬間に次元収納で回収する。ダガーの運動の向きと速度は保存されている。意識がダガーから離れた瞬間に射出すれば...
「オラァッ!」
ダガーの射出を気取られぬよう、全意識を右手の剣に集中させ、当てるつもりで振る。
今だ。雷撃剣(仮)をギョッとしながら避けたせいで、ほんの少し体勢を崩している今がチャンス。転移さえなければもう避けられない。そして、チラと確認したがニアの魔法が俺の上を通っていったから、転移の魔族は俺の後ろ側にいる。
目の前にいる魔族にも、転移の魔族にも、この背後から射出するダガーは見えない。
『ッ゛...⁉︎』
勢いそのまま射出されたダガーが魔族の背中に突き刺さる。痛みで表情筋が歪むのを速度探知で感じ取る。そして、そんな無駄な行動を魔族がしている間に後ろに回り込み、ダガーを掴んでその身体を引き裂く。
「再生する前にあいつを...!」
この距離だとどれくらいの速さで再生するのかはわからないが、一度殺した魔素操作の魔族を一旦無視して転移の魔族を倒しにいく。まずは空を飛び回っている状態から引き摺り下ろさなければ...!
「ちょっと君こっち来てもらおうかっ⁉︎」
地面を蹴って転移の魔族を掴む...そうしようと手を伸ばしたのだが、気づいたその事実にビックリして掴めなかった。転移で避けられていただろうから結局掴めなかったんだろうけど、この事実を知れただけでも成果だ。
「テメェフロートじゃねぇか!なにしてんだテメェ!」
『えっ⁉︎』
……魔素操作お前も知らなかったのか...
「なるほどなぁ...お前、騙してこいつを連れてきたってわけか」
「よくわかったな」
空に浮かんでいたフロートは、アクセルの姿へと変わりながら着地した。
「身体中全てを完璧に模倣することはできないみたいだな。中身を見れば一発でわかる」
「なるほど、ますます厄介になりやがる...」
『ちょっ、ホントにフロートなの⁉︎』
そういや、サラッと再生してるなこいつ。というかそういうことか、こいつの再生が遅いのって本物の転移の魔族が近くにいなかったからか。
『騙された!帰る!』
「えぇ...」
……うわ、ホントに帰ったのか?速度探知の範囲外を移動されたせいでわからないな。普段は帰ったと思わせての不意打ちを警戒するところだけど、あいつのことだし平気だろう。
「……さて、お前一人になったわけだけど、続けるか?六対一」
「いや、やめておこう」
ヒュンッ、とフロートの姿が消えた。
「……急展開すぎて状況がよくわからないけれど、逃してよかったの?」
「フロートが相手だし、深追いは怖いしな...ライトの力も解放されてないしね」
もしフロートの勇者の力が万全だったなら、前に訓練でやったフロート対策で殺していた。それができないなら、逃した方がいい。
「んじゃ、色々あったが少し休憩してから攻略しにいくか」
「りょーかーい」
魔族と戦闘したわけだが、被害は小さい。クミリアが電流攻撃を何度も喰らったくらいで、ニアの回復魔法なら普通の魔法でも治してくれるから問題無し。
結果、さも魔族と戦ってないかのような状態で、第八十七階層へと向かうのだった。
言語はまだ製作途中なんで、ちゃんと設定が積まっているわけではないです。
日常回を考えていたはずなのに、魔族に襲われるシナリオができてしまった...身体は闘争を求める...ってこと⁉︎