前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
前回ラストに書いた通り、第八十七階層攻略です。
第八十七階層
「たしかカリヤ、ここに来たことあるんだったわよね?」
「うん。魔道具を回収しに一回来たぞ。だが、先に言っておく。この階層のギミックが発動する前に回収したから情報は一切無い」
「まぁあったらここに来るまでに言ってるよね」
「あっ、忘れてた。ダンジョンの構造が変わったり、急に魔物が出てくるとかは確認できたからそれだけ注意な」
「入る前に言いなさいよそれ...」
まぁでも、まだ何も起こってないんだよな。そのせいで、あのとき見た事が正しいのかすらわからない。
「構造が変わるなら、やることは二つよ」
「壁とか地面に傷をつけるか、魔力で周囲にマーキングするかだろ?やっておく」
「頼んだわよ」
一瞬で壁や地面に傷をつけ、さらに魔力を地面に流し込んでマーキングする。
「よーしいくぞー」
シュンッ!
……
「分断された...!」
俺だけマーキングのために立ち止まっていたため、ほんの少しだけ歩き出しが遅れた。そのせいで出来ていた、みんなとの間にあんたほんの少しの隙間に壁が突然現れて分断されてしまった。
「ってか壁どうなってんだ?こんな厚さなかったはずだろ...」
速度探知でも壁の奥を探れない。5.5メートル奥まで壁なのか...隙間はせいぜい一メートルくらいだったはずなのに。
「こりゃ空間が歪んでやがるな...いや、もしや俺が転移してる?」
いつのまにか俺だけ転移されるなんてこと、ついさっき起きたばっかだからなぁ...あり得ないとは言い切れない。
「ひとまず...戻るか」
ここは行き止まり。待っていてもどうにもならない。さっさと道がある方、後ろへと進もう。
「……分かれ道か。一応マーキングしておいて...左に行こ」
T字路の分かれ道にぶち当たったので、マーキングをしてから左に曲がる。
「……こんな早く合流できることある?」
なんか全員普通にいるんだけど...
「前から来たわねカリヤ」
「ほんとにカリヤ?」
「フロートじゃない?」
「何を今更怪しんでんだ冗談だよな?」
「それにしても、本当に構造が変わるのね。あと転移も」
「急に本題に戻らないでもらえますかねぇ...まぁ何はともあれ、合流できたし移動再開するか。あっ、そこのT字路の右側は俺が来たところだから、そのまま直進するぞ」
「……てぃーじろ?」
ああそっかTを知らないから通じないのか...
「まぁいいや。分かれ道に着いたら直進するってことで...って、分かれ道増えてるし」
俺たちがきた道を含めて、五つに分岐している分かれ道にぶち当たる。マーキングは...消えてるから意味ないか。
「これ、どうやってボス部屋まで行けばいいんだよ...」
こんなにダンジョンの構造がコロコロ変わるんだったら、もう攻略のしようがなくない?
「運に頼るしかないのかなぁ...」
「……そういえば、カリヤの持ってる魔道具って、ライトが勇者の記憶のおかげでここにあるとわかったのよね?しばらく記憶を読めないせいで情報無しの攻略が続いていたけれど、ここならできるんじゃ?」
「うーん...無理だ。魔道具の記憶はあるのに、ダンジョンに関する記憶がごっそり抜け落ちてる」
……もしかして、神様が言ってた女神の力が落ちてるみたいなことと関係あったりするのか...?いずれにせよ、ノーヒント攻略なのは変わりないか。
「しゃあねぇ。とりあえずどんどん進むしかない...はぁ」
ダンジョンの構造が変わり、周囲にいたみんなが消えてしまった。速度探知のおかげで分かったことだが、どうやら空間の縮小や拡大によってダンジョンの構造を変えたり、分断をしているんだろう。
「俺だけ位置が変わってない...ってのはいつもの認識されてないが故なんだろうな」
さっきの俺だけ分断されたやつは、実はみんなの方が移動していたんだな多分。俺はダンジョンの影響を受けない...うまく利用できないもんかなぁ?
「……なんかめんどくさくなってきた。これ、壁ぶち破っていいかな?」
壁を取り払ってしまえば、ゴールまでは一直線だ。ただ、洞窟だから壁を崩すのちょっと怖いんだよなぁ...誰かを巻き込んでもダメだし、やめておこうかな。
「一人ずつ探すしかないかぁ...」
見つけたら手でも握っておこうか。俺は影響受けないんだから、ぎゅっと握っておけば手とか指とかを切断されない限り分断されないだろう。
「誰かいるかー。いたら教え...て...」
横の壁をぶち抜いてきた奴がいた。今さっきやめとこうかなと考えた矢先にこれか...
「崩落するからやめてくれね?」
「ああそっか。声が聞こえたから急いで行かないとって思っちゃった」
と、壁をぶち抜いてこちらに歩いて来るクミリアさんが申しております。
「気をつけろよーまったく。じゃあ行くぞ」
手を差し出す。
「ん?なに?」
「えーっと...なぜかは知らないが、俺はダンジョン構造の変化に巻き込まれないみたいなんだ。なら、こうやって手を握ってたらクミリアも巻き込まれなくなるんじゃと思ってな」
「そっか。じゃあ行こう」
俺の言い分を信じて、迷いなく俺の手を握るクミリア。
「そういえば、魔物とまだ会ってなくない?」
「そういやそうだな。でもどうして急に?魔物でも見えたか?」
ちょうど、長い真っ直ぐな一本道だし、俺には見えないけど遠くに魔物でも見えたのかな?ってか、長すぎだろ空間歪みすぎだ。
「うん、結構遠くだけどいるね」
「遠いけど、魔法で処理しておくか...?」
「いや、なんとなくだけど...来るよね!」
何もない場所に向けて蹴りを放つクミリア。その瞬間、道が急に短くなって魔物がこちらに向かって急接近し、そのままクミリアの蹴りが直撃する。
「……今の、こっち来るってよくわかったな」
「なんとなくだけどね。あり得そうだなと思って蹴ったら直撃して、クミさんもちょっとビックリ」
「なんとなくでそれできるの凄いな...おっ、ステラがいる。おーいステラー」
道が短くなったおかげで、分かれ道にもすぐに辿り着くことができた。そして運のいいことに、ステラも見つけることができた。
「あっ、カリヤとクミさんだ!...なんで手繋いでるの?」
「分断対策だ。ほら、ふくれてないで行くぞ」
空いている手でステラの手を繋ぐ。
「……何気に手を繋ぐのって初めて?」
「かもな。抱っこなりおんぶなりはやったことあるけど、手を握るのはお互いに初...だよな?」
「順序おかしいよ...」
「クミリアは何を言ってるんですかねぇ...そしてステラ?そんなに腕ブンブンさせないで?腕取れちゃう」
元気よく腕を振り回すもんだから肘関節外れそうになるんだけど、ステラさんそれやめてくれません?
「あっ、ニアだ!」
ステラもクミリア並みに目がいいからか、遠くにいるニアを見つけてくれた。
「あ、でもいなくなっちゃった...」
「強制移動されたねぇ」
「そうなのか?よく見えるなぁ...」
「これって結局、転移なのかな?」
「ダンジョンの移動に巻き込まれて移動してる感じじゃ...ね?」
「なんでちょっと不安そうなの...って、そうだよね。あくまで予想だもんね」
残念、今の予想だと俺が巻き込まれないことに矛盾するなーと途中で気づいたからこうなっただけなんだよな。
「あと考えられるのは...まぁガチで転移の可能性は普通にあるか。シレンの穴って転移の技術が普通に使われてたりするしな」
「古代の人がシレンの穴を作ったってことは、この転移も使えてたってことだよね?」
「たしかにそうなるよな。なんでもう人には使えない技術だなんて言われてるんだろうな...継承に失敗したのかな」
「そう言えばこの前、ニアが転移の魔族の技を盗んでやるとかそんなこと言ってたよ」
「固有能力は魔法に転用できないからなぁ...厳しそうだな。略奪で奪うのも無理だし」
固有能力だから略奪で奪えないんだよな。奪えたなら、そこから解析できなくもないんだけどね。
「方法があるとすれば精神の入れ替わりだけど...現実的じゃないしな」
転移の魔族とシレンの穴に一緒に入らないといけない時点で、難易度が高すぎる。そもそも、魔族と入れ替われるのか?それがわからないからもはや選択肢にも上がらないな。
「でも、さっき言った略奪みたいに、突然変異的に魔法の適性を得てなおかつ魔法を見つけられる可能性はなくはないから、今すぐには無理でもいつか転移魔法が誰にでも使える世界になるんじゃね?」
……自分で言っててめちゃムズイなと思った。できなくはないけど、ほぼ無理だよなぁ...ワンナの例はあまり当てにならないな。あまりにも特異すぎる。
「転移が誰にでも使えるようになる世界...なるのかな?」
「なるでしょ。既に転移に近い魔法はあるわけだしね」
「次元転移とかそうだよな」
「未来跳躍も似たようなもんだね。カリヤのとかもうほぼほぼ転移だし」
「そういやそっか。たしか適性値もちょっと繋がりあったっけ」
もしかしたら、もう転移に対する適性は生まれつつあるのかもな...
とまぁ、俺に触れているおかげか誰も強制移動に巻き込まれないため、こんな感じに話しながらでも探索をすることができていた。たまに構造変化で道を塞がれたり、急に魔物が出てきたりはあったけど、ちょっとした妨害にしかならずすぐに突破できる。
そんなこんなでまずレストを見つけ、そのあとすぐにライトも見つけた。けど、ニアとの合流には結構な時間がかかった。俺たちが移動に手間取っていたからだ。そりゃ四人が俺に引っ付いて歩いていたら時間かかるよ...やっと合流できたニアの、何やってるのとでも言いたげな顔はちょっとおもしろかった。
「まったく、なんでこんな面倒なことを...」
「しょうがないだろ。こうすれば巻き込まれないんだから。あと、別に掴む場所はなかったのかレストよ。首根っこ掴むのはやめろ身長差を活かすな」
なんか首らへんを咥えられて移動させられてる子ライオンみたいな気分になるからやめてほしい。
「この状態でボスと戦わないといけないってのだけ勘弁してほしいな...」
「移動させられるにしても、どうせ部屋の中のどこかだろうしボス部屋に入ったらもういいでしょ」
「じゃあ変なこと起きても自己責任ってことで。っと、やっとボス部屋か」
ボス部屋は動かないと読み、よく構造が変わっていて行きにくい方向に向かっていたのだが、ビンゴだったみたいだ。やっと扉が見えてきた。
そして、なんか明らかにボス部屋前ゾーンなんだろうなという周りの色の違う地面に入るとだ。背後のダンジョンの構造が一気に変わっていった。これは...ボス部屋まで辿り着いたから、元々の構造に戻ったってことか?
「ここまで来ればもう安心...ってことでいいのかな。ほら散った散った」
密集していたせいでちょっと暑かったんだよ。あー涼しい。
「じゃあさっさと入ろうぜ。情報ないから作戦会議も意味ないしな」
「そうね。転移は気をつけるというのだけ念頭に置いておきましょ」
ああもうニアはあれを転移って捉えてるんだな。
「開けるぞー」
ボス部屋へと続く扉を開ける。
標準的な大きさのボス部屋。その中央に、比較的大きめの...なんだろう、金属製のゴーレムかな?見ただけじゃハッキリと判断できないな。
「……とりあえず、戦って情報収集してくるわ。みんなも当たり障りない程度に攻撃して弱点探してくれ」
情報がない時、先陣を切るのは俺の役目だ。ダガーを抜き、ボスに切り掛かる。
「っ、機械仕掛けだと?」
ダガーは刺さらない。外装が金属製だからだ。けど、そんなことはどうでもいい。
問題はこいつの中身。簡単に言えば、こいつはカラクリ人形のようなものなのだ。歯車やらなんやらで中身が埋め尽くされている。
となると、こいつを倒すには内部機構を破壊するが一番効率良さそうだな。外装が金属なのもあって、雷装も効きそうだ。
と、そんなことを考えていると後ろからニアの魔法が大量に飛んでくる。これもいつもの光景で、弱点を探るために一つたりとも同じ魔法はない。まぁ、大抵弱点を探ることなくこれだけで殲滅できてしまったりするわけたが...
「っ、ぶね!」
明らかに俺を巻き込む軌道で飛んできていたので、ボスを盾にできるように移動する。
「……気のせいか?」
普段ニアは俺に当たらないように魔法を撃ってくれるんだが、なんで今のはこうも雑なんだ...?
「いや...まさかな」
このダンジョンの特性。構造変化と、それに伴う強制移動。もしかしたら関係しているのかも...?
「一応確認した方がいいのか...?って、こりゃ強敵だな」
ニアの魔法があまり効いていない。けれど、魔法耐性があるような感じではないな。単純に装甲が硬い感じだ。
「んで、こっちを狙って来るわけね。一番近いやつを狙う感じかなっ!」
ニアの攻撃を耐え切ったボスは、手のひらを俺の方に向けてきた。手のひらをコチラに向けながら攻撃してくる場合、大抵何かを飛ばして来ると相場が決まっているので急いで離れる。
「うわ歯車飛んできた!」
もしや、あの中身の歯車やらって身体を動かす機構じゃなくてこの射出攻撃の弾丸だったりする?となると内部破壊は攻撃封じくらいしか意味ない?...試す前に決めつけるのはダメか。今俺がすべき攻撃は...
「雷装操作一択!」
『雷装』
雷装と魔力を同期させ、そのまま右手のダガーに集中させる。
「まずはその足を...!」
ボスの足に一瞬で近づき、ダガーを突き立てる。
ダガーは刺さらない。けれども、込められた電流が炸裂する。電流を流し込んだ箇所が丸ごと爆ぜるように消滅した。
「思った以上だなァ!もしかしてその歯車...電気に弱いな?」
速度探知のおかげで分かった。電流がボス内部にある歯車に触れた瞬間、高温になりドロドロに溶け出したのだ。そしてそのまま気体へと変化して吹き飛んだ。
「こいつの弱点は電気だ!ただ、飛ばして来る歯車に当てるなよ!爆ぜて巻き込まれる!」
現状わかったことを叫んでみんなに伝える。
その瞬間、全員の動きが変わる。ライトはすぐに聖剣に雷装を纏わせた。ステラも雷装の矢を使い出し、ニアも雷雲を作る準備をしている。クミリアも一旦攻撃を止め、ニアのサポートを待っている状態だ。唯一変わらないのはレストだな。盾に雷装なんて纏わせたら歯車を安全に弾けなくなるからな。その判断は正しい。
「弱点わかったことだし、一気に攻め...ヤバそう」
片足を失い、満足に動けなくなったボスはその場で座り込んでいたのだが、その体の至る所に穴が空いていた。大きさはそれぞれ別。おそらく、さっきの射出攻撃が数多めで飛んでくるだろう。
「全部はたき落とす!」
雷装操作で鞭を作り出す。長さは魔力があれば際限無しに伸ばせるので、歯車が射出されたそばから鞭ではたき落としていく。
「ライト!」
ライトが近づける隙を作れた。聖剣に電流を纏わせたライトがボスに飛びかかる
……が。
「えっ...?」
ライトの姿が消えた。いや違う。元々ライトがいた場所に歯車が現れたのだ。そして、ボスの背後側の方にライトが移動しているのが見えた。
「物体同士の入れ替わり...!」
簡単に言えば東○の不義○戯だ。物と物の位置を入れ替える。ただそれだけ。このボスの能力なのか、それともダンジョンのギミックなのかはわからないが面倒だな。
おそらく、ボス部屋までの道のりで、ダンジョンの構造が変わっていたのもこの入れ替わりのギミックだったのだろう。ダンジョンをある程度の広さで区画分けし、その位置を入れ替えていたのだ。
……となると、この入れ替わりも物体同士の入れ替わりじゃなくて、空間置換なのか?空間を切り取って入れ替えている...入れ替わり後も移動方向は変わってないみたいだし、そっちの方が正しそうだな。
「さっきのニアの魔法が俺の方に飛んできていたのもそれが原因か...」
そうなると、飛び道具はあまり使わない方がいいかもしれない。空間置換で自分や味方に攻撃が飛んでいってしまうかもしれないからだ。ライトが雷を撃つのではなく聖剣で直接流しに行ったのは、既にニアの魔法が空間置換で乱されたのを後ろから見ていたからかもしれないな。
「俺がやるしかないか...!」
空間置換に巻き込まれない俺が攻撃するしかない。けど、今は鞭で歯車を落とし続けるだけで精一杯。転移させられたライトも気掛かりだ。ボスの影に隠れて見えなくなってしまったから、ちゃんと避けれているか心配だ。それに...
「ときどき飛んでくんのほんと面倒!」
不定期に俺の目の前に歯車が転移してきて、そのまま飛んでくるのだ。俺は空間置換に巻き込まれないだけで、空間置換での攻撃の標的にならないわけではない。この回避にも意識を割かないといけないため、なかなか攻撃に転じられない。
遠くにいるみんなの方に空間置換攻撃が飛んでないだけまだマシか。やはり近い相手を優先して攻撃するみたいだな...おかげでニアの準備が妨害されずに済んでいる。
着実に雷雲が形成されつつある。これを使って雷をボスに落とすことは危険だからしないにしても、クミリアにテトラを装備させることはできる。引き剥がされはするけれど、空間置換にあまり邪魔されない近接攻撃ができるようになる。俺がやるしかないと思ったけど、耐えればいけるか...?
……そうだな。俺がでしゃばる必要はない。この空間置換のギミックは、転移の魔族相手のいい対策となる。
強制転移で敵や味方からの攻撃を被弾させたり、攻撃を逸らしたりなど、フロートがやってみせたような行動を本気で戦う時にはしてくるだろう。それに慣れるためにも、みんなに戦ってもらいたい。
もちろん、俺がトドメを刺せないというのも理由の一つだが、俺が倒さない方がいい理由がもう一つある。ここの空間置換の影響を俺は受けないが、転移の魔族の転移は俺も影響を受けてしまう。ここで俺に頼ってしまえば、転移の魔族との戦闘でも無意識に俺のことを頼ってしまうかもしれない。
だから、今回はサポートに徹しよう。ひたすら鞭で歯車を叩き落として、攻撃を防ごう。
……それでいいのか?
まだ何か...何かある気がしてならない。
言語化できない恐怖が俺を襲う。
これよりもやばい場面なんて何度もあったはずなのに、直感が俺を恐怖させる。
コロコロと思考が切り替わるのはそのせいか?少し前に考えていたことを否定して別の方に舵を切っているのはそのせいか?
……決めた。さっさとこいつを削り切る。トドメだけ誰かに任せて削る。
やるんだ。ちょいとこの鞭の振り方を変えて、攻撃するだけでいい。ほんの少し撃ち漏らしが増えて、みんなのいる方に歯車が飛んでいくかもしれないけど、それくらいならレストが守ってくれるだろう。
よし、今だ。
鞭の振り方を変え、鞭をボスに直撃させる。腕や胸付近が爆発し、勢いよく吹き飛ぶ。その後、爆発に巻き込まれなかった歯車が空いた穴からポロポロとこぼれ出していく。
運がいい。これで正面方向への射出はできなくなった。あともう数発電流を流し込めば倒せるはず。
そこで気づく。ライトがもう一度ボスに飛びかかっているのだ。聖剣には、雷装に加えて勇者専用の魔法である天の怒りの雷も付与されており、この一撃で殲滅するつもりなのだろうとわかった。
だが、ここで、誰にも予想できなかった誤算が生じる。
ボス部屋の一番上でできていた雷雲は既に完成しており、あとは生まれたテトラをクミリアに受け渡すだけとなっていた。
その真下でライトが聖剣を掲げながら飛び上がったため、雷がニアの制御を離れる形で聖剣に向かって落ちようとする。
そしてその瞬間。
その事実に、おそらく俺だけがギリギリのところで認識できた直後、聖剣に落ちようとしていた雷が落ち、クミリアの身体を貫いた。
「ク...クミリアッ!」
力無く落下していくクミリア。唖然とするみんな。状況を理解して、少しずつ曇っていく顔。俺のせいだと、絶望しているライト。その全てが視界に入る。
俺の心はまだ混乱している。けれど、頭の中は、思考は回っていた。
だから、クミリアを受け止めに走れたのだろう。心では理解できていないのに、頭での整理は追いついているから、落下点をすぐに把握し、クミリアを受け止める。
そして、速度探知が突きつけるその事実に、やっと心の理解が追いつく。
混乱が、絶望という形に変わる。
クミリアの心肺機能は、停止していた。
少し過程は違うけど、書こうと決めていた展開がやっとできました。
文化祭準備とかで時間なくて、この話を書くのに六日もかかってしまいましたが、我ながらいいものが書けたぞぉ...すまんなクミリア。