前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8558字。

前半ちょろっとやってから、クミリア回になります。


武器の近代化進む

「ほれ、補充だ」

 

「サンキュ」

 

今、俺はクルスの店に来ている。刀を直すのに使う金属片が少なくなってきたので、もらいにきたのだ。

 

ちなみに、クミリアは二日経った今もまだ目を覚ましていない。クミリアが目を覚まし、全快するまでシレンの穴には潜らないというふうに決めているので、こうやってみんなバラバラに動いているわけだ。ニアはずっとクミリアのそばにいるらしい。心配なのだろう。けど、ちゃんと休んでほしい。

 

「そういや、ちょっと気になってたんだが...もしかしてコートいる?」

 

「よく気づいたな」

 

「どうしてコートがこっちに?何か作ってんのか?」

 

「ちゃんと完成してから見せようと思っていたんだが...まぁいいか。試作品段階のものを見せてやろう。持ってきてくれ」

 

「へーい」

 

店の奥からコートが出てくる。その手に持ってるものは...

 

「魔力銃?...いや、中に魔法陣がないな」

 

見た目は完全に魔力銃だ。けれど、中の構造がだいぶ違う。これは魔力銃ってよりかは、むしら本物の...

 

「俺たちが作っているのは、魔力を使わない魔力銃だ」

 

「今大流行している魔力銃だが、冒険者の中には魔力が極端に少なかったり、魔法適性がなさすぎて魔力銃ですら使えない者もいてだな。そういった人たちのために、魔力を使わない機構を使って金属の弾を発射する武器を作っているんだ」

 

本物の銃を作ろうとしてるってことか...すごいな。技術が確立されていないというのに、自力で試行錯誤して作ろうってのか。というか、よく作ろうって思えたな。そもそもその発想に至っているのがすごい。

 

「……まぁ、全然良いものは作れてないんだけどな」

 

「前例がないせいで、難航しているんだ」

 

「そもそもこれ、どうやって撃つんだ?」

 

「最初は弾と火薬を先端から手動で入れて、ここの部品が火打ち石になっているからそれで小規模な爆発を起こして飛ばす...といった感じで作っていたんだ」

 

……ほぼほぼフリントロック式の銃と同じじゃんか。たった二人でなんつーもの開発してんだ。

 

「それでよくね?それ量産するでいいじゃん」

 

「魔物と戦ってる最中に、弾と火薬を入れる暇なんてないだろ?それに、火薬を持ち歩くのは危険だしな。需要と合ってないから方針転換したんだ」

 

「今のやつも量産した方がいいと思うぞ俺は。たしかに魔物と対面してる時には使いづらいだろうけど、例えば城壁の上から撃つとか、防衛戦において遮蔽物の裏から撃つとかそういったケースなら使えるはずだ。作っても損はないと思うぞ」

 

「そう...なのか?」

 

「まぁカリヤが言うならそうなんじゃないか?たしかに、魔王軍の侵攻対策に作っておくのもありだな」

 

いいね、これでさらに人類の戦闘力が上がったぞ。魔王軍に勝つためにも、俺ら勇者パーティーが強くなるだけじゃなく、全体のレベルを底上げしないといけないしな。

 

「それで、方針転換してどうなったんだ?」

 

「そっからは停滞さ。魔力銃みたいに、ここから弾を装填するようにしたいんだが上手くいかず、もしできたとしても今度は弾を飛ばす機構が入りきらなくなってしまう状態になってな。二進も三進も行かなくなってしまった」

 

「なるほどな...もし実験してみたなら教えて欲しいんだが、撃った時真っ直ぐ飛ばないとか飛距離が全然ないとかいう経験なかったか?」

 

「そうだ、その問題も残っていたんだった」

 

「これは俺の知識なんだが...物って回転していると姿勢が安定するんだ。実際、魔法でも球状のものは回転させて撃つことで真っ直ぐ飛ばせるようにすることがある」

 

ジャイロ効果ってやつだな。ただ、これは魔法使いの中ではある程度広く知られており、知ってる人は知ってるような状態だ。

 

「その現象はなんとなく把握しているが...それがどう繋がるんだ?」

 

「撃った弾丸を回転させればいいんだ。そうすれば真っ直ぐ飛ぶようになる」

 

「なるほど...だが、どうやって回転させればいい」

 

「ここの部分に螺旋状の溝をつければいい。それで効果があるのは、俺の魔力銃で実証済みだ」

 

ライフリングというやつだ。元々の魔力銃にはライフリングがなく、魔法の効果で加速と回転を与える機構になっていたのだが、改造して魔法はそのままにライフリングを作ったら思いの外安定した。

 

「……カリヤがいれば完成に近づけるかもな。知恵を貸してくれないか?」

 

「もちろんだ。俺の知ってる技術を全部叩き込んでやろう」

 

出し惜しみはいけないということを、クミリアの一件で学んでいる。いずれ襲って来る魔王軍を迎え撃つためにも、銃はあった方がいいだろう。多分完成には時間がかかるだろうが...少しでも技術を教えてやろう。

 

「とまぁその前に...一回コイツを分解してみてもいいか?速度探知であらかたわかるとはいえ、やっぱ目で理解しておきたい」

 

「その試作品はあまりバラしたくないな...同じのが奥にもう一つあるから、それならいいぞ」

 

「ならいいや。取ってこなくていいぞ。作るから」

 

古代道具(アンティークギア) 限定起動(リミテッドブート)

 

魔道具を起動して次元収納に接続する。そして速度探知でこの試作段階の銃を細部まで認識しながら...

 

『製作』

 

「ほいっと、これなら分解していいだろ?」

 

「製作スキル...まさか、もう触れたものを作れる段階にまで進化したのか?」

 

「そうなんだよね。もうほぼほぼ完成形まで進化したわけだ」

 

今まで、自分の手で作ったもの限定→魔法で作ったものでもOK→自分で作ってなくても改造したならOK、と段々スキルが進化するごとに条件が緩くなってきていたのだが、とうとう製作スキルを手に入れた以後に触れたことのあるものなら全て作れるようになった。

 

といっても例外はあって、充填器やステラに渡した指輪のような魔道具は作ることができない。これはこれ以上スキルが進化しても作れないもので、材料があっても付与されてる魔法を自分が使えたとしても無理なのだ。

 

けれど、たとえ魔道具でも人工的に作られたものなら問題ないので、魔力銃だとか魔法図鑑は製作可能だ。そして魔道具ではないこの銃も製作可能。これ以降、材料さえあればいつでも自由に作ることができる。本当にエ○ヤの投影っぽくなってきてるな...

 

「じゃあこれを分解して、問題点とか改善点を説明するぞ。まずここは...」

 

俺は二人に、知ってる知識をほとんど吐いて銃を作らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ起きないのね...」

 

「今日もずっと起きて隣にいたのか?ニア。最後に寝たのはいつだ?」

 

日没前に、宿のクミリアの部屋に寄ってみたのだが、まだニアがいた。ちゃんと寝ているのか心配になる。

 

「夜はちゃんと寝てるわよ」

 

「それ絶対ここでその体勢で寝てるだろ。ちゃんと横になって寝ないとダメだぞ?」

 

「大丈夫よ。研究で一週間起きっぱなしとかあったし」

 

「それ気絶という名の睡眠をどっかでとってるぞ絶対...クミリアが起きた後にお前がぶっ倒れるとかやめてくれよ?」

 

「そんなヘマはしないわよ。それにしても起きないわね...本当に治ったのかしら...」

 

「自分を信じろつったろ?多分もうそろ起きるよ」

 

「……んっ...」

 

「……やべぇよやべぇよ...マジで起きたよ...」

 

ゆっくり目を開けるクミリア。そして、少し眩しいといった感じに、天井の光に向かって手のひらを向ける。

 

「お、お、起きっ、おき、起きたっ!」

 

動揺しすぎだぞニア。

 

「み...みんな呼んでくる!」

 

「ちょっ、それは俺が...行っちゃった」

 

慌てすぎて、俺に行かせればいいのにニアがみんなを呼びに行ってしまった。しかもなんか部屋から出た瞬間にすっ転んでスッゴイ音したし。大丈夫か...?

 

「んー...っと、ごめん、これどういう状況?」

 

「何が起こったのか覚えてないのか?目覚める前の最後の記憶を教えてくれ」

 

「最後の記憶...?えーっと...ライトがすっごい色んな女の子を侍らせてた?」

 

「それは絶対夢だろ誰が夢の内容言えと言った」

 

「だって最後の記憶がこれなんだもん」

 

「そりゃ夢が最後の記憶だろうけれども、俺が聞きたいことはそれじゃないってわかってるだろうに...第八十七階層で何があったか覚えているか?」

 

「うーん...たしか雷装が効く歯車みたいなのを飛ばして来るボスと戦ってて、ニアのテトラを装着するために待機してて...そのあとは...」

 

「思い出せないか?」

 

「……そういえば、後ろにいたと思ったら急に目の前にボスが現れた気がする。それ以降は覚えてないや」

 

「よかった、ほぼほぼ覚えてるな」

 

「で、どういう状況なの?そのあと何が起こったわけ?」

 

「それはだな...」

 

クミリアに、空間置換によってライトと位置を入れ替えられたこと、雷に打たれて心肺停止したこと、そこからなんとか治して丸二日寝たきりになっていたことを説明する。

 

「そんなことが...」

 

「クミさん起きたのっ⁉︎」

 

説明し終わったあたりでステラが部屋に飛び込んできた。次にライトが入ってきて、レスト、ニアと順番に入ってくる。

 

「大丈夫?どこか痛いところない?」

 

「あはは、みんなには心配かけちゃったみたいだね...痛いところはないよ。ニアの回復は凄いね」

 

「身体はちゃんと動く?少し検査を...いや、もう少し休んでからでいいわねそれは」

 

「いや、もう動けるから大丈夫だよ。ほら元気いっぱいー...っとと」

 

「無理すんなバカ」

 

俺らを心配させないためか、クミリアベッドから降りて立とうとするがよろけてバランスを崩してしまう。咄嗟に支えるが...本当に大丈夫なのか?

 

「何が大丈夫よ全然ダメじゃない」

 

「いや、平気なんだよ?でも二日ぶりに動いたわけだから少し体が鈍ってて...うん、もう支えなくて大丈夫だよ」

 

そう言われたので支えを外すが...ちゃんと一人で立ててるな。

 

「そんなに言うなら、今から検査するわ。私の言うことそのままの動きをしなさい」

 

ニアがクミリアの検査をしていく。魔法による検査と、実際に動いてもらって後遺症がないかを確認する。

 

「大丈夫...そうね」

 

「でしょ?体感だけど、少しリハビリしたら前みたいに動けると思うよ」

 

「よかったぁ...死んじゃうかもってほんっとうに心配したんだよ?」

 

「そこまで心配させちゃったか...ほら、ちゃんと生きてるから安心して、ね?ああもうほら泣かないの」

 

「え...私泣いてる?あ、本当だ...あはは、本当によかったぁ...」

 

うぅ...ステラの涙に釣られて、こっちまで泣けて来るぜ...

 

「……なんか、この流れで見せるの変だけど...ちょっと見ててくれない?」

 

そう言いながらクミリアはステラから離れる。そして...

 

「クミさんもこれ...できるようになっちゃった」

 

クミリアの体から、バチバチと電気が漏れ出ていた。

 

「雷装...⁉︎」

 

「やっぱそうなるよなぁ...」

 

「やっぱり...って、カリヤあんた予測できていたの⁉︎」

 

「まぁな。状況が状況だし、手に入れていてもおかしくないとは思っていた。確信していたわけではないけどな...そして、クミリアがちゃんと雷装を手に入れていたおかげで、やっと雷装の取得条件が確定できそうだ」

 

「雷装の取得条件?」

 

どうすれば雷装が手に入るのか。俺が雷装を手にしてから一年間ずっと謎だったが、ようやくわかりそうだ。

 

「条件は二つ。一つは雷、またはそれと同程度の威力の電流を複数回喰らうこと。その時、後述する理由から最初に喰らう電流は普通の雷装くらいじゃダメで、普通の雷か長時間溜め込んだ雷装くらいじゃないといけない」

 

充填器に雷装を溜め込めば条件を満たすことができる。が、基本は雷の直撃が必要になるな。雷の威力以上が必要なのだろう。

 

「そして、条件二つ目。雷を喰らったことで心停止を起こし、そこから電流によって蘇生すること。この条件があるから一度目の雷は心停止するほどの威力が必要で、蘇生の電流は必要最低限で問題ない。これが、俺の考える条件だ」

 

「なるほど...一応筋は通っているのね」

 

「これなら、今まで雷を浴びた人がいても雷装を手に入れた人がいない理由にもなる。そして、雷装取得者の経験とも合致している。クミリアはもちろん条件を満たしているし、アクセルも心停止したあと魔素操作の魔族によって蘇生された。俺とライトは複数回雷を浴びているから、奇跡的にその雷で蘇生されたんだろう」

 

「そこだけちょっと無理矢理じゃない?」

 

「けどね、俺はちゃんと覚えているんですよ。雷を喰らって気絶したあと、目覚めた時に雷をもう一度浴びたことをね。だからこれが合ってると思ってる」

 

「……まぁ、カリヤが一番雷装に詳しいんだから、多分当たってるんでしょうね」

 

「んで、もう一つこうかなって思ってることがあってだな。俺とライト、あとアクセルの雷装の威力って結構違うだろ?俺よりもアクセルの方が強いし、アクセルと比べるとライトの方が若干強い。どうしてなんだろうとずっと考えていたが、これもなんとなくわかった」

 

「たしかに、少し気になっていたのよねそれ。理由はなんなのかしら」

 

「雷装を手に入れる時に喰らった電流の威力の違いだよ。少なくとも二回電流を浴びるわけだが、その時の威力が強いほど雷装の出力も大きくなる。リスクに見合ったリターンがあるわけだな」

 

「ライトは雷の直撃二回だったけど、アクセルの場合はカリヤの充填器の電流と、魔族の小規模な電流だったからライトの方が強い...というわけね」

 

「でもそれならカリヤはどうなの?カリヤもライトと同じで、二回とも直撃したんじゃなかったっけ?」

 

「俺の時は、既に雷装状態の剣を持っていて、そこに雷が落ちてきたからな。そのせいで多少威力が軽減されてしまったんだろう。だから雷装の威力も落ちてしまったんだろうな」

 

「へー」

 

「まぁこれは確証ないから言い切れるわけじゃないけどな...もしこの法則が正しければ、クミリアはアクセルくらいの雷装を使えるんじゃないかな多分」

 

「本当?カリヤが一番雑魚ってことだね」

 

「おいコラ調子のんな。知識と技量は俺が一番だからな?そんなこと言うと修行手伝わねぇぞ」

 

「えっ、あそっか練習しないとダメか。雷装使える喜びでそこ忘れちゃってたわ...」

 

「……まぁ念願の雷装を手に入れたわけだし、そうなるのも仕方ない...のか?」

 

あんだけ欲しい欲しい言ってたわけだしな。経緯はアレだったとはいえ、雷装を手に入れられてよかったなクミリア。

 

「改めて思うと、カリヤたちがあれだけのことを言ってた理由がわかったよ。死ぬじゃんあんなの」

 

「実際、ニアがいなかったら死んでるしな」

 

「ニア様ありがたやー」

 

「様はやめなさいよ様は...」

 

「今思ったけどこれで雷装使えないのはニアだけなんだね」

 

「褒めたかと思えばすぐに落とすのはなんなの...?雷装以上のことをしてるんだから私はいいのよ私は」

 

「ってかそうか、これで全員が雷を扱う術を手に入れたんだな...まさかこんなパーティーが出来上がるとは思わなんだ」

 

「歴代勇者パーティーどこをとってもないだろうね。これなら魔王を倒すのも簡単かも?」

 

「まぁ油断せずに行きましょうや。シレンの穴も攻略しないとだしな」

 

「そういえば攻略はどこまで進んだの?」

 

「ん?八十七で止まってるぞ?クミリアが回復したら続きやろうって決めてたからな」

 

「そうなんだ...じゃあ早く本調子に直さないとね」

 

「調整にはどれくらいかかる?俺たちはいつまでも待てるけど」

 

「明日一日あれば十分かな。カリヤが手伝ってくれるならだけど」

 

「当然手伝う一択だよなぁ?」

 

「じゃあ明後日から攻略再開にしましょうか。もう夜だし、みんなさっさと寝ましょ」

 

「だな。ニアはちゃんと寝るんだぞー」

 

「そりゃちゃんと寝るわよ。凄い眠いし」

 

「こいつずっとクミリアの隣にいたんだぜ?夜もずっとな」

 

「うるさい口ね二度と開かなくしてやろうかしら」

 

「ヒェッ」

 

ニアが自分の部屋へと戻っていく。おお怖い怖い...

 

「んじゃ、クミリアも寝るんだぞ」

 

「えー全然眠くないんだけど。二日ずっと寝てたんだよ?こっから寝るとか無理」

 

「寝れなくても寝るんだ...って、なんでステラ笑ってんだ?」

 

「前に私がカリヤに言ったことと同じことをクミさんに言ってるのがちょっと面白くて...ふふっ」

 

「あー...そんなこと言ってたっけ」

 

「その時カリヤはどうしてたの?ステラちゃん」

 

「その時はお昼だったから普通に起きてたかな。でも今は夜だしねぇ...」

 

「目を閉じてるだけでいい。明日雷装の練習するんだから、体力つけとけ」

 

「そっかぁ...あっ、そういやお腹減ってるじゃんご飯食べたら寝ようかな」

 

「宿の夕食の時間はもう終わってるぞ」

 

「じゃあカリヤが作ってよ」

 

「え〜保存食でも食べとけ」

 

次元収納の中からすぐに食べられるものを取り出し、クミリアに投げ渡す。

 

「これ味があんまり...あっ、食べるよ食べるから取り返そうとしないでっ!」

 

「それ食べてすぐ寝ろよ。俺ももう寝るから」

 

思ったよりも元気じゃねぇかとクミリアを見て思いながら、俺は自分の部屋へと戻ってそのまま寝た。

 

ほんと、元気でよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ビシバシ指導していくからそのつもりで頑張れよ」

 

「仮にも病み上がりなんだからもう少し優しくした方が...」

 

「アイツがそれくらいの勢いでやってくれつったんだぞライト。元気有り余ってるみたいだし、それならちゃんとやらないとだよなぁ?」

 

俺とライトとクミリアは、ガネルの闘技場に来ていた。ここなら怪我をしても治せるから、修行にはもってこいだ。魔力が回復しないのはネックだが...それはそれでシレンの穴の攻略や魔王城攻略の時に役立てるからヨシ。

 

「じゃあクミリア。さっそく雷装を使ってみてくれ」

 

「あいあいさー」

 

クミリアが雷装を発動させる...全身から電流が漏れているな。昨日も思ってたが、ちょっとロスが多い。これは矯正しがいがありそうだ...って、それよりもだ。

 

「爆発してんなぁ...」

 

「凄いことなってるね」

 

「えっ、なに?何か変?」

 

ちょいちょいっと、髪の毛を指差す。

 

「うわっ、なにこれどうなってんの?」

 

「髪の毛に無駄な雷装を流しているせいだな。静電気が働いて髪の毛同士が反発しているんだ」

 

クミリアの髪の毛が、下敷きで頭擦り合わせた後みたいになってる。いや、めちゃくちゃ静電気溜まりやすい滑り台滑った後みたいな感じだな。それくらいの爆発加減だ。

 

「カリヤたちはそんなことならないよね...どうやってるの?」

 

「そもそもクミリアは雷装が外に出過ぎだ。一旦内側に溜め込むイメージを持ってみろ」

 

「溜め込む?むむむ...」

 

「……おっ、できてんじゃん筋いいな」

 

「なんか、魔力を操ってるのと同じ感じ?」

 

「そうそう、魔力を操る感覚でやれば間違いはない。それで溜め込んだ雷装を、攻撃の瞬間に流し込めれば威力が出る。試しにやってみろ」

 

「前にカリヤにやられた奴だからね、きっちり仕返ししてやろ〜」

 

なんかひでーこと言ってるぞこいつ...

 

と思っていると、クミリアが走ってきて殴りかかってきた。威力の程を確かめるために、雷装を発動せずに拳を受け止める。

 

「い゛っづぅ...威力高いけど制御が甘い!拳が当たる直前に電流が来たぞ。当たると同時に流すんだ」

 

「慣れないと大変だねこれ...」

 

「もっと極めれば、足とか拳に雷装を一点集中させたり、魔力とリンクさせて体外に放出できるようになるぞ。それができるまでは帰さん」

 

「それは流石に厳しすぎ!」

 

もう一度殴りかかって来る。胸あたりに来た拳を腕で受け止め...

 

バチンッ!!

 

「に...二回目で決まるか。ほんとセンスいいなお前」

 

腕がビリビリと痺れている。俺の予想通り、アクセル並みの電力だなこれは。極めれば、いい戦力になる。

 

「じゃあ次は...脚に雷装を集めてみろ。そして、スタミナが切れるまで走り続けろ」

 

「スタミナ切れるまで?...あれ、たしか物凄く痛いんじゃなかったっけ...?」

 

「ほらさっさとやる!」

 

「はいぃっ!」

 

クミリアが走り出す。脚に集めるのは結構あっさりできてるな...飲み込み早すぎだろ。

 

「雷装って結構疲れるねこれ!ゴリゴリ削れてく!」

 

「そりゃそうだ。雷装は体内の生体電気を増幅させることで、雷を浴びた瞬間の状態を再現するスキルだ。生体電気は体を動かす時に流れているものだから、これを増幅することは体力の消耗につながる。まぁそのおかげで身体能力も上がるんだけどな」

 

「ごめん解説よく聞こえなかった後でもっかいお願い!」

 

えぇ...と思っていると、急にクミリアがバタンと倒れ込んだ。

 

「スタミナ切れ...もう動けない...」

 

「何言ってんだ。まだ通過点だぞほら雷装使って動け」

 

「そんなぁ!」

 

「ってかスタミナ削れるの早くね?雷装適性がまだ低いってことなのかな...ほら休まず動く!本番の時に痛くて動けませんじゃ困るぞ!」

 

「ひーん!...い゛っっっだぁ゛!」

 

泣きながらクミリアは走り出した。

 

「……今思ったんだけど、これ僕いる?」

 

「ああそっか言い忘れてた。いい機会だからライトも雷装の練習をさせようと思っててだな...」

 

「そうなんだじゃあかえ「帰さねぇよ?」...はい」

 

こうして二人の雷装特訓は、休憩を挟みながらも夜まで続いたという...って、やったのは俺なんだけどな。




クミリアの雷装入手、前々回のラストで薄々勘づいた人結構いそうですね...

ちなみに元々の予定だと、自分だけ雷関連の力を使えないことに焦っていたクミリアが、ニアやライトの雷攻撃を浴びた直後のボスに攻撃を仕掛けてしまい、帯電したボスに触れて感電し心停止という流れでした。
これまでの流れ的に焦って突っ込むってことしないだろうなぁということになり予定変更、不可抗力で雷を浴びてしまうというストーリーになりました。

自分的には変更してよかったと思ってますが、変更前の方が刺さる人もいるのかな...?
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