前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8034字。

第八十八階層攻略です。


雷装纏いし格闘家

「うぅー昨日の疲れが...」

 

「がんばえー」

 

「頑張れじゃないわよ流石にやりすぎよ」

 

「だってあれくらいやらないと雷装使えこなせないだろうし...」

 

「まぁそのおかげで大体のことはできるようになったんだけどね」

 

と、会話をしながらシレンの穴の螺旋坂を下っていく。

 

「どこまでできるようになったの?」

 

「俺みたいに雷装と魔力のリンクさせるのまでできるようになったぞ。体内での雷装操作の技量は早速ライト越えだ」

 

「クミさんすご!」

 

「凄いでしょー」

 

「でも体外操作は苦手なんだよな。そっちはライトの方が上手かった」

 

多分、経験の差なんだろうな。ライトは勇者の力の雷を扱ってきたから、外へ放出するのが得意になった。魔力操作の要領で、体内操作もある程度はできる。

 

それに比べて、クミリアは体外操作はあまりできないが、体内操作は抜群に上手い。普段からバフを自分にかけていたから、体内に力を及ぼすことが得意になっていたのだろう。二人とも、雷装以外の経験が雷装に活きているな。

 

「……そういえばクミリア、バフの件は大丈夫なの?」

 

バフの件とは、クミリアのバフが使えなくなってしまった一件のことを指している。

 

クミリアは自身にバフをかける時、あらかじめ自らの体に刻んでいた魔法陣やそれを簡略化した呪文に魔力を流すことで発動していた。けれど、雷を浴びてしまった時に、魔法陣や呪文が全て焼き切れてしまった。雷に打たれたことでリヒテンベルク図形が体に刻まれてしまい、それのせいで文字や記号が塗りつぶされてしまった感じだ。

 

ニアが言うには、俺やライトが雷に打たれた時にも現れていたらしきこの図形は魔法で治す時に跡形もなく消すことができたらしいが、破壊されてしまったクミリアの術式が元に戻ることはなかった。だから昨日のクミリアはバフを使えていなかった。

 

「大丈夫だよ。昨日ガネル行ったついでに、もう一度同じのを刻んでもらったから」

 

「そう...それならよかったわ」

 

「ああでも、定着には少し時間がかかるから、今日いっぱいはバフは使えないかな。雷装だけで頑張るつもり」

 

「そう...少し心配になったわ」

 

「まぁそこは俺がサポートするから安心してな」

 

「お願いねー」

 

「……悪い。サポート無理そうだ」

 

「えっ...うわほんとだ」

 

第八十八階層の横穴を歩いていたのだが、一本道なのに早々に行き止まりに突き当たった。このタイプは、個別訓練特有の奴だ。

 

「お願いしますカリヤがクミさんのところに来ますように...!」

 

「五分の一だちゃんと祈っとけ」

 

まぁ、クミリアに近づいておけば確定でついていけるんだけどな。みんなはまだランダムだと思ってるから、うまく偶然を装わないと...

 

『勇者、及び英雄の存在を認識』

 

『空間拡張、隔壁生成、擬似転移を開始します』

 

空間が拡張され、個別訓練が開始される。

 

「……よしカリヤゲット!」

 

「ゲットってなんだよ俺は物じゃねぇ。あと、サポートは最低限しかしないからな」

 

「安心できる程度のサポートはしてくれるでしょ?」

 

「普段クミリアが使う程度のバフと回復はかけてやる。それ以外は干渉しないぞ」

 

「うわケチだ」

 

「うわってなんだようわって。助けてやんねぇぞ」

 

「どうせやってくれるくせに〜...ちょっ、減速はやめて⁉︎」

 

「いっそのこと魔法拡散を使われた時のために、バフ無しで雷装だけで戦うのもありなんじゃね?」

 

「バフどころかデバフかかってる!嫌がらせしないでよ〜」

 

「嫌なら離れればいい」

 

「あそっか」

 

ノロノロとした動きで俺から離れていくクミリア。

 

「ところで、今回はどんな訓練をするんだろ?」

 

六メートル離れたことで、俺の速度操作の影響下から逃れたクミリアが言う。

 

「さぁな。いつもはどんなことをしていたんだっけ?」

 

「ほとんどが魔物と戦い続ける感じだったね。たまーに変なのが混ざってたけど...闘技場じゃないから今回は変な方だね」

 

俺たちが飛ばされた場所は、洞窟の中だった。情報がないから何をすればいいのかまるでわからないな。

 

「変な時って、具体的にどんなことをさせられたんだ?」

 

「いつも知らないうちに条件を達成して解放されるから、あんまりわからないんだよね。多分こうかなーってのはあるけど」

 

「どんなのだ?」

 

「最初の位置から、出来るだけ離れること」

 

「移動距離がトリガーってことか?まぁ移動する過程で魔物を倒していくわけだし、戦闘継続能力を鍛えるにはいいのか...?」

 

「というわけで行こっか。後ろは任せたよ〜」

 

「へいへい」

 

前を歩くクミリアの後ろをついていく。これだけで前後左右広範囲の索敵ができてるってんだから、本当に速度探知が便利すぎる。

 

「さっきの魔法拡散がーってので思ったんだけど、カリヤも速度操作封印してみていいんじゃない?」

 

「魔法拡散で無効化されないんだからする必要ないだろ」

 

「でも、略奪を使われてる間は使えなくなるんだよね?」

 

「そうそうないからいいんだよ別に。あの激痛を対策とか無理だし、どうせ別のことも出来なくなるしな」

 

略奪されそうになっている時に起こるあの激痛の中じゃまともに動けないんだから、あの状態でも動けるように練習するっていうのが無意味なんだよな。

 

「クミさんには雷装の痛みが気にならなくなるまで練習させたのに、そんなこと言っちゃっていいわけ?」

 

「ああ言えばこう言うな...一応言っとくけど、この痛みは雷装の比じゃないからな?ガチで心臓持っていかれるかと思うくらいだぞ」

 

「なにそれ怖っ」

 

「あと、後ろから来てるぞ」

 

「任せたって、後ろから来たのは倒してねって意味だったんだけど!」

 

雷装を使って加速したクミリアが、俺を回り込んで後ろにいた魔物を蹴り飛ばす。

 

「今回俺がやるのは索敵と回復だけだ。雷装の試運転がてら暴れ回れ」

 

この前の一件で、自分がもっとやっていればと後悔したけれど、流石に個別訓練まで出しゃばるつもりはない。病み上がりだから無理させないではなく、病み上がりだからこそ調子を戻してもらうためにクミリアに頑張ってもらおう。

 

「暴れるって言い方やめてくれない⁉︎」

 

「この戦い方してる時点で、そんなもんじゃね?」

 

クミリアは魔物を壁へと蹴り飛ばし、魔物が壁に叩きつけられた直後にグッと首を掴んで雷装を流し込みながら顔面に拳を突き刺していた。戦い方が効率的かつ残虐的すぎるんだよなぁ...ハ○ードフォームを見てるみたいだ。

 

「もっとヤバい人いるからね?狂化とか使ってる人とかもう凄いよ?」

 

「狂化ねぇ...使ってる人今まで一人しか見たことがないけど、その人たちはめっちゃ使いこなしてたぞ。理性もあらかた残ってたし」

 

「どれくらい残ってた?」

 

「夫婦の冒険者で、妻の方が狂化を使ってたんだけど、夫の言うことには完璧に従ってたぞ?会話もある程度できてたはず」

 

「なにそれ凄い。狂化への適性によってどれだけ理性残るか変わるとはいえ、会話ができるって普通じゃないよ」

 

「と言っても、その旦那さんの言うこと以外には従わないけどね。俺、フレンドリーファイアされかけたし」

 

「へぇ...凄い絆だね」

 

「絆ってか、愛だよなぁ...今頃どこで何やってるんだろ」

 

ログとメリッサ、前はカイスにいたはずだけど流石にもう別の町に行ってるかな。ここ最近ずっとカイスにいるわけだけど、あんまり話聞かないし。というか夫婦で冒険者って、持ち家とかどうしているんだろう。ずっと宿暮らしなのかな...?

 

「そういやクミリアが狂化使ったらどれくらい意識保ってられるんだ?」

 

「クミさんは狂化使ったことないよ?」

 

「そうなん?なんか意外だな...」

 

「クミさんのことどういう風に見てるわけ...?」

 

「いやだってさ、前に明鏡止水使ってただろ?あれって狂化の進化系みたいな感じに見えたからさ、使ったことあるのかなーって思って」

 

「先にそっちを覚えちゃったから、使う機会なかったんだよね。カリヤは使ったことあるの?」

 

「ない。使うと理性が飛ぶわけでしょ?そうしたら速度操作を上手く使えなくなるだろうし、そうなると魔法も使えなくなる。使った時よりも弱くなることがわかりきってるわけだから、使うわけがない」

 

「使ってみたら意外といけるかもよ?もしかしたらすっごい軽度かもしれないし、一回使ってみてもいいと思うよ」

 

「たしか、意識が飛ぶほどバフがかかるんだったよな?普通に動けるほどの狂化ってそれ、もうやる意味ないような...まぁいいや、帰ったら一回試してみるわ。と言っても、やり方知らないんだけどな」

 

「やり方知ってるから後で教えるよ」

 

「助かる...っと、前から来てるぞ」

 

「おっけ...!」

 

雷装を再発動して、クミリアが魔物を殴り飛ばす。

 

「よーしどんどん行くぞー!」

 

俺たちは洞窟を進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なーんで囲まれてるんですかねぇ!」

 

少し広いところに出たなと思ったら、上から大量に魔物が降ってきて周囲を囲まれてしまった。

 

「ここまで来たら流石に戦ってくれるよね?」

 

「まぁ...な。出血大サービスだ。バフもかけてやる」

 

9938、9939ページ 能力最大

 

見開き一ページに描けるだけ描いたバフ複合魔法の魔法陣に魔力を流し込み、対象をクミリアに指定、バフを全部乗せする。自殺的な加速に特化した全力疾走とは違い、全体的に身体能力を底上げするオールラウンダー型の魔法だ。

 

「すまん、再生が入ってないがいいか?」

 

「いいよ別に。もう十二分だから!」

 

雷装を発動して、クミリアが駆け出す。

 

「十二分ねぇ...いい褒め言葉だな!」

 

俺も走り出し、一瞬で一番近い魔物に接近する。

 

「『雷装』ゥ!」

 

雷装を発動させた直後に魔力とリンクさせ、思い切り魔物を殴り飛ばす。次の瞬間、電気を帯びた魔力が魔物に流れ込み、内側からその身を破壊する。

 

「よし絶好調!」

 

久しぶりに魔物と戦闘するが、勘は鈍ってないみたいだな。雷装のタイミングがバッチリだ。昨日、クミリアとライト相手に修行したおかげだな。

 

「オラオラどんどん来やがれ!」

 

なんとなく気分がいいので、このまま格闘戦をしていこう。魔道具使って武器取り出すのは今からやるには遅いしな。

 

「おっ、勇気あんなお前。ほれ消えな」

 

ドスッと首筋に雷装キックを叩き込み、一撃で絶命させる。

 

「死にたい奴から出てきな...って大人気だな俺」

 

どんどん魔物が襲いかかってくる。仲間の仇を討つ...というよりかは恐怖がないというべきか。仲間意識なんてなく、そういうダンジョンの機能なのだとでもいうように感情なく襲いかかってくるな。

 

「恐怖がない奴はどうやっても死ぬ運命なんだよなぁ...」

 

俺が前に言ったことを体現するかのように、ばったばったと魔物が死んでいく。突っ込んできた魔物の首に、順番に一回ずつ手刀と電流を流し込むだけで死んでいくのだ。

 

……あれだな、ガネルの英雄が雷の力を使うなんて想定してないから、魔物に雷への耐性がないんだな。いや、大抵の魔物は雷耐性ないんだが、普段シレンの穴で戦ってる魔物だとたまに効きにくいことあるんだよな。

 

「弱いぞ弱い!数だけかよお前ら!」

 

前あったような、集団の中に強い個体が混じっているみたいなこともないからひたすらに弱い。魔法を使ってくるならもう少し苦戦もしただろうが、こいつら接近戦しかしてこないしサンドバッグにしかならないな...いや、サンドバッグにするまでもなく死んでいくわこいつら。

 

「それにしても数だけは多いんだよなぁ...なんかめんどくさくなってきたな」

 

肉弾戦だけじゃやること少なくて暇だな...向かってきた魔物だけ倒すのも味気ない。

 

「前言撤回魔法解禁!」

 

4571ページ 黒のみ 触手・水

 

戦闘に使うのは久しぶりな水の触手を出し、雷装を流し込む。

 

「……待てよ?今すっごいインスピレーションが...いいね面白い!」

 

水の触手を使った、雷撃剣の改良形。水は魔力も電気もよく通す。電気に関しては通しすぎて電気分解を起こしてしまうが、今回はそれをロスと捉えて改良する。

 

前に魔力を使って水を剣の形に固定したように、背中から生えている九つの触手の表面に雷装とリンクさせた魔力を流し込む。先端を尖らせ、厚さを薄くし、切れ味が出るように刃を作っていく。

 

そして無駄な電気分解が起こらぬよう、水には魔力だけを触れさせておく。雷装を魔力とリンクさせてはいるが、電流を流す部分は外に向いている方だけ。緻密な雷装操作により、魔力と融合させながら、かつ水に触れないようにして、この剣に触れた相手だけに雷装を流し込めるようにする。

 

「九尾の雷水剣...やっぱネーミングセンスないなぁ俺。後で誰かに名付けてもらお」

 

今までは打撃と締め付けくらいしか攻撃手段がなかった触手・水だが、ここに来て致命的な殺傷能力を得た九つの触手を振り回す。

 

「おおっ!めっちゃ効くやんけ!多対一に使えるのは偉いぞー!」

 

走り回って速度探知の効果範囲内に魔物が入った瞬間、適当に一つ触手を差し向ければ突き刺して殺すことができる。手数がバカみたいに増えて、射程も伸びた。なんなら半分守りに使ってもお釣りが出るほどの攻撃能力。これ、禁止カードでは?

 

「ははっ!さいきょー!」

 

「なんかアホみたいなこと言いながらエッグいことしてる⁉︎」

 

……クミリアに罵られた気がしたが、気のせいということにしておく。

 

これ、本当に強いぞ?攻守両方ともできるし、背後から魔物が来てもすぐに倒せる。視界内だったら、速度探知の外側にも攻撃できる。電気分解をさせていないから、触手・水で消費する魔力もそこまで多くはない。

 

まぁ、使っていればそれなりに弱点は見つかるわけだが...まず、魔力消費がまぁまぁ重い。さっき触手に使う魔力はあまりないとは言ったが、それはあくまで触手だけ。雷撃剣の時と同様に、攻撃するごとに魔力を消費する。空気に魔力を流し込んでいるわけではないため、一つだけなら雷撃剣よりも魔力効率がいいが、九つとなると流石に多くなる。

 

第二に、魔法に弱い。雷装魔力で外殻を覆っても、触手・水に対して強い魔法にもれなく弱いのだ。火や熱で水を蒸発させられるとダメ。凍らされると制御を失って動かせなくなるし、そもそも魔法拡散をモロに喰らってしまう。

 

第三、制御がむずい。普通なら触手・水の魔法操作で触手を動かすことができていたけれど、これはそれに加えて魔力操作で剣の形にし続ける必要がある。九つ全て動かすとなると、それなりに集中する必要が出てくる。魔力操作の慣れと速度探知のおかげでなんとかなっているが、それでもかなりの情報処理をすることになり頭が痛くなってくる。

 

「四つは防御に回した方が良さそうだな制御しやすいし。ってか流石に魔物多くねぇ?」

 

相当なペースで魔物を倒しているはずだが、数が減ってる気がしない。けど、最初の時みたいな感じで天井から後続が降ってきてるわけでもないんだよな...俺が倒しているせい?あり得るけどなんか違う気が...

 

……あれ?別にここの魔物を全滅させる意味ないんじゃね?どうすれば個別訓練が終了するのか、確かなことはクミリアにもわかっていない。けれど、クミリアは最初の転移位置から一定距離離れることだと予想した。

 

それが正しいと仮定した時、こいつらを無視して先に進むのが正解なのでは?もちろん、一定数魔物を倒すっていう条件の可能性もあるが、それならこんなまだ前にも後ろにも進めるような場所で無限湧きなんてするはずがない。洞窟の最奥地みたいな場所でそういうことをするはずだ。

 

ってかそうだよ前と後ろの道から普通に魔物が入ってきてるんだよここに。だから無限にこいつらと戦う羽目になってんだ。ここにいても埒が開かない。さっさと進むべきだ。

 

「クミリア!こいつら無視して先に進むぞ!」

 

「えっ?あっ、そういうことね!」

 

クミリアのすぐ近くに着地する。一瞬困惑したものの、ちゃんと意味を理解してくれたようだ。

 

「道は俺が作る。撃ち漏らしの処理は頼んだ」

 

九つ全ての触手を前に突き出す。大量の魔物を薙ぎ払った触手はその後壁となり、外からの干渉を防がれた道を作り出す。横からも上からも入ることはできなく、後ろも触手で塞がれているため入れない、完全な壁だ。

 

「走り抜けるぞ!」

 

安全の保証された道を通り、この広い空間を抜けて先に進む道へと入る。道に入ったら触手を後ろに引き戻し、後ろを塞ぐ。この速度に追いつける魔物はいないだろうが、万が一のことを考えての処置だ。

 

「これなら逃げれんだろ。このまま走り切って出来る限り離れるぞ!」

 

「オッケーっと魔物!」

 

クミリアが前方にいた魔物に拳を突き刺し、そのまま後ろに殴り捨てた。

 

「後ろに放り捨てるのやめてくれません?横に投げろよ横に」

 

「処理してくれるでしょ?」

 

「一瞬ビックリすんだよ」

 

速度探知であらかじめわかるとはいえ、いきなり目の前に来られるとビックリする。

 

「……ところで、移動しないといけない距離って直線距離換算?それとも単純に移動距離?」

 

「移動距離だとその場でグルグルしてるだけで良くなっちゃうから直線距離じゃない?」

 

「でも直線距離だとキツくね?洞窟だからぐるっと回って最初にいたところらへんまで戻ってくるとか普通にあるだろ?」

 

「確かにねー...壁でもぶち破る?」

 

「それもありかもな。触手で壁壊すか?」

 

「もうちょい走ったらやろっか」

 

「だなー...っ⁉︎止ま...っれないよなさすがに」

 

空間が歪み出した。個別訓練が終わり、元の空間に戻る時の合図だ。だからこのまま走っていたら、戻ってきた先の壁に激突してしまう。そう思って俺は速度操作を解除した。

 

けれども、クミリアは少し反応が遅れたようで、そのまま壁に激突していっ

た。

 

「お、おーい...?クミリア?大丈夫かー...?」

 

「い゛た゛い゛」

 

よかった元気そうだな。めっちゃ声に濁点ついてるけど。

 

「何してるのよ...」

 

「おっ、ニアが一番乗りだったのか。みんなはまだなんだな」

 

「そういう話は疑問に答えてからしなさいよまったく...私、ちょっと時間かかったつもりでいたのだけれど、一番乗りでビックリしてるわ。ライトがこんなに遅いのは少し変よね」

 

「だな。っと、二人戻ってきたな。おつかれー」

 

ステラとレストが戻ってきた。ライトが一番遅いなんて珍しいな...

 

「もう疲れたよカリヤぁ」

 

「どうしたよステラ。大変だったのか?」

 

「大変もなにも、弓矢取られたんだよ?これも取られちゃってさ、魔法だけで戦えーって、私じゃ無理だよもう...」

 

「ダガーまで取られたのか...んで、どうやって攻略したんだ?

 

「魔道具は残ってたから、魔物を掴んで空まで飛んで落としたりとか、クミさんに教えてもらった体術で倒したりしたよ。大変だった...やっぱり弓だね」

 

「なかなかエグい攻撃してんな...んで、レストも見た感じ大変だったみたいだな。いつもの感じか?」

 

「ほんと、あの人形壊したい」

 

うん、結構ストレスかかってるね。

 

「それでちょっと気になってたんだけど...クミさんどうしちゃったの?」

 

「ちょっと事故って壁に激突した。ってか、いつまでへばりついてんだよ」

 

「いってて...ちょっとめり込んでたから出るのに時間かかっちゃった」

 

「ちゃんと止まれよなー」

 

「あの速度じゃ無理でしょ」

 

「ちゃんと加速は切ってあっ...ちょっと待てこれ!」

 

クミリアがめり込み、凹んだ壁。その凹みの境目ぎりぎりのところに、傷がつけられていた。その傷は文字になっており...

 

「フロートが来た。上で戦うから気づいたら来て...急いで戻るぞ!」

 

ライトは遅かったんじゃない。最速で訓練を終わらせて、この場から立ち去っていたのだ。ちょっかいをかけてきたフロートを追いかけるために...!

 

「なんだよもう最近魔族来すぎだろ!」

 

横穴を出て、螺旋の坂を駆け上がる。

 

「ライト!」

 

シレンの穴を出て俺らが目にしたのは...

 

「フロートに...アクセル⁉︎」

 

ライトと戦っているのは、二人の魔族。

 

魔族相手に二対一は流石にまずい。急いで俺たちは武器を取り出し、加勢しに行った。




最近魔族のちょっかいちょっと多すぎ?
戦える状態ならほぼ毎日妨害しに来てないと変だもんなぁ...というリアル視点での考えと、こんな何回も戦ってたら単調になってしまうよなぁ...というストーリーとしての考え、優先すべきなのはどっちなんですかね?
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