前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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ついに第九十階層を超えて、ライトの必殺技習得&お披露目です!


聖剣は剣にあらず

第九十階層

 

「えーっと確か、ここ突破したらライトが必殺技使えるようになるんだっけ?」

 

「うん、あとはこのボスを倒すだけだね」

 

この九十階層は特にギミックのない、ひたすらダンジョンを潜って魔物と戦い続けるような階層だった。ダンジョンがとてつもない広さで、ボス部屋にたどり着くまでに相当の時間がかかったことを除けば、下手なギミックありの階層よりも簡単だったと言える。

 

「これ、カリヤがいないと絶対魔力切れしてたわよねぇ...」

 

ライトの聖域展開で魔力を回復できるといっても、俺の速度操作で加速させなければそこまで魔力を回復できない。聖域展開にも魔力を少し消費するし、その消費量は展開中に回復できる量を超えているから、いずれライトの魔力が尽きて回復できなくなっていただろう。

 

「でもそれって、魔力を回復できる前提で魔法をバンバン使ってたからだろ?俺がいなかったらもうちょい慎重に魔法使ってただろ」

 

「それもそうね。きっと魔力量ももっと少ないでしょうし」

 

「全員普通じゃ考えきれないくらい魔力多いもんね」

 

そう、今までずっとみんなの魔力増強に付き合っていたおかげで、俺含め全員魔力量がえげつないことになっていた。仮に元々魔力量の多い人が、赤ん坊の頃から死ぬ直前まで聖域で魔力を増やす作業をしたとしても、俺たちの半分程度にしかならないだろう。

 

もはや過剰としか思えないくらいの魔力量だが、そこまでいくとそれはそれで使う魔法の強さが強くなったり、使う頻度が多くなったりして消費も前より増えていくんだよな。これでもまだ足りなくなるんじゃってくらいだ。ステラも、ここまで魔力を増やしてやっと火球を一回まともに撃てる程度だしな...いやまぁこれはステラの魔法適性がなさすぎなだけなんだが。

 

「やっと魔法も使えるようになったし、カリヤには感謝だね」

 

「一回しか使えないけどな」

 

「あっ、言っちゃいけないこと言ったね今!んー!」

 

「ちょっ、叩くなってかなんか魔力乗ってる痛い痛い!」

 

「お、できるようになったんだステラちゃん。凄いよ〜」

 

「クミリアお前が教えたんか!」

 

「そういえば矢にも魔力が乗るようになってたよね。それはニアが教えた感じ?」

 

「そうね。ステラちゃんって弓矢に関することなら他の魔法よりも適性があるみたいで、付与魔法を教える過程でやらせた覚えがあるわ」

 

「なにそれステラがそんなことできるって俺知らないというか流石にもう叩くのやめて⁉︎」

 

女子三人が協力して俺攻撃してきてるようなモンでしょこれ...というか、弓関連の魔法は使えるのか。

 

「ステラって炎弓とかって使えるの?」

 

「使えるよー。三回が限度だけどね」

 

「弓を生成しなかったらもっと使えたはずよ」

 

「へー。ステラも成長してるんだなぁ...お兄ちゃん嬉しい」

 

「自分でお兄ちゃんって言うのはちょっと...」

 

「あの、クミリアさん?この前イタズラしておいてそれ言うのは酷いんじゃあないかい?」

 

「……話戻していい?」

 

「あっ、どうぞどうぞ」

 

どんな流れでこんな会話をしていたのか分からなくなり始めていたから、ちゃんと話を戻してくれるライトには感謝だ。

 

「いつもどおり一切の情報無しだけど、多分ここまで連戦続きだったから極端に強いってことはないと思う」

 

「ある程度は強いだろうけど、本来ならだいぶ消耗してる状態で戦うことになるだろうし、その見通しで問題ないだろうな」

 

「多分だけど、魔法は結構効くと思うわ。私たちが魔力をほとんど使い切っていて、魔法はあまり使えないことを想定してボスを造ってるはずよ。魔法耐性はないわ」

 

「ってことは物理防御がマシマシってことだよね。基本的に格闘家と弓矢使いは魔力残りがちだから、ボス戦でもバフをかけて戦うはずだし。それに耐えれるくらいはあるってことでいいよね」

 

「だな。だから物理攻撃は一旦、聖剣解放したライトの聖剣でしか通らないという想定をしておこう。魔法もどこまで効くかはわからないが...普通にいつも通りの火力を出してたら問題ないだろうな」

 

「どんな攻撃をしてくるかってのはわからないよね流石に」

 

「その予想はもう未来予知でもしてないとわからんよレスト。まぁたしかに、知りたくなる気持ちはわかるけどな」

 

防御担当のレストは、どの攻撃なら通じるだろうかという作戦会議に参加できないんだよな。だから会議中は口数が減って...いや、いつもと変わんねぇわ。

 

「……もう入っちゃう?」

 

「だね。もういいや。入っちゃおう」

 

「ってかそうだ。最近覗き見してないよな。入るかどうかはそれしてから決めるか」

 

最初の頃は俺が扉を少しだけ開いて、中の様子とボスがどんなのかを確認してから会議してたよな。いつのまにか、ライトの勇者の記憶の情報だけで会議するようになってたから、原始的な確認方法を忘れてしまっていたな。

 

「それじゃちょいと覗いて...ん?」

 

扉を開けて、中の様子を確認してみるけど...これどゆこと?

 

「どうしたの?」

 

「ここボス部屋じゃないぞ?出口ってか、縦穴のところに戻る道に繋がってるぞこれ」

 

「……どういうこと?」

 

「そんなん言われても俺にもわからん。ボス戦がないタイプの階層だったとか?」

 

「ありえる...のかな?」

 

「んーもうどうしようもないし進んじまおうぜ」

 

扉を完全に開けて、進んでみる。

 

「幻覚の類い...でもないみたいね」

 

「転移されたわけでもないよね?」

 

「ああ。速度探知をずっと使ってたけど、転移はしてないと思う」

 

「じゃあ本当に戻ってきたんだ...ちょっと拍子抜けだったね」

 

ガチで出口に出たよ。これで第九十階層終わりなのか...あっけないな。

 

「ボスがいないなんてことあるんだね」

 

「だな。まぁダンジョン部分がめっちゃ長かったし、そういうことなんだろうな」

 

「というか、ここ突破できたってことは、ライトの必殺技は使えるようになったんだよね?」

 

「……うん、使えるみたいだね」

 

「それじゃ次のボス戦で試してもらうか。ちょっと休憩したら次行こーぜー」

 

次の階層に挑む前に、俺たちは魔力やスタミナを回復させるのだった...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ?ちゃんと読めるようになってる」

 

次の階層に入る前に、ライトがそんなことを呟いた。意味的に、勇者の記憶が読めるようになってると言う意味だろう。

 

「マジ?」

 

「うん。この階層のボスの情報がハッキリ残ってるよ。というかこの先の階層も大体読めるね」

 

「読めるのは良いことなんだけど...じゃあなんでさっきまでは読めなかったんだって話になるよな。てっきり攻略情報無しってことだとばかり思ってたけど、違うってことになるし」

 

たしか、七十四階層あたりで読めなくなったんだったか。土偶の階層だと一部だけ読めたりとかはあったけど、それ以外は大抵読めなかったんだよな。

 

「うーん...意図的にあそこの辺りだけ読めないようになってたか、何かしらのせいで不具合が起きてたかって感じかな。ほら、先代の勇者たちは七十六階層を突破できなかったわけでしょ?だからあの辺りが読めなくなったとか」

 

「ありえなくはない...か。あとは女神の力が弱まってる云々が関係してるとかかな。まぁ、あれこれ考えててもどうにもならないけどね」

 

「そうね。読めるならさっさと情報公開して対策しましょ」

 

「うーん...これを公開する意味はあんまりないかも...」

 

「ん?どういうことだ?」

 

「伝えた方がいいところだけ言うね?まず、ここから先の階層は全部ボス戦だけ。それで、次行くところはどうやら一人しか戦えないみたいなんだよね」

 

「あー、そういうことね。ライト一人でやるから、次のボスの情報を共有する必要はないってことか」

 

「そういうこと。一人しか戦えないのって、多分この新しい技を試させるためでしょ?」

 

「だろうな。じゃあ頑張れよ」

 

「送り出すの早いよ?」

 

「一人で戦うって、私たちはどうすればいいの?」

 

「なんか、観戦できる場所があるみたい。闘技場みたいな構造になってるのかな?」

 

「闘技場...ってことは、あらかじめバフをかけておくとかもできない感じかな?」

 

「そうだね。そっちからは一切干渉できないと思うよ。逆に、こっちからそっちにも行かないから、見てる方は安全だと思う」

 

「おけ。じゃあもう本当に頑張れとしか言いようがないわ。必殺技って響きだけでワクワクするし、さぞ凄い技なんだろうなぁ...」

 

「ハードルどんどん上げるねカリヤ...まぁ、多分凄いと思うよ」

 

「おっ、自分でさらにハードル上げたねぇ。それじゃ行ってこい!」

 

「行ってこいって言っても、途中までは同じ道通るんだけどね?」

 

全員で横穴に入り、少し進む。

 

「行き止まり...擬似転移で移動する感じか」

 

「先頭に立ってる人が戦うことになるんだって」

 

「へー」

 

っと、ボソッと呟いた瞬間、空間が歪んで視界に映るものがガラリと変わった。擬似転移云々の音声聞き逃したなこれ。

 

「おお、本当に闘技場だ...ガネルの大会を思い出すぜ」

 

「だね。こっち側で見るの、何気に初めてかも...」

 

「まぁそりゃクミリアは戦う側だしな」

 

「あっ、でもちっちゃい時に一度だけ見たことあったっけ...?」

 

「それが格闘家になるきっかけになったとかか?」

 

「いや別に」

 

「違うんかい...」

 

「なにしてるのよ二人とも。もうそろそろで始まるみたいよ」

 

「っとそうだった。ちゃーんと見ないとな...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし、頑張るぞ...」

 

闘技場に転移する。ボスは...まだ現れてないみたいだけど、先に準備だけしておこう。

 

『聖剣展開』

 

必殺技を使うには、しばらくの間聖剣展開をしておく必要がある。だから、今のうちから展開しておく。

 

「おっ、来たね」

 

ボスが現れる。情報通り、二、三メートルくらいの人型だ。何本もの腕を持っていて、それぞれ持っている武器が違う。剣に斧に弓矢に鞭に槍に盾に杖に...こんなに色々持ってるのを見ると、カリヤみたいって思っちゃうね。

 

「じゃあ...始めようか」

 

聖剣をボスの方に突きつけると同時に、結界が張られて訓練が始まる。

 

そして即座に亜音速の弓矢が飛んできたので、身を捩って回避する。

 

歴代の勇者が戦ってきた記憶を全てこの脳に叩き込んであるおかげで、このボスが何をやってくるのか、その全てを理解している。どんな攻撃も、僕には通用しない。

 

ボスとの距離が離れている時に飛んでくる亜音速の矢と、ニア並みにばら撒かれる魔法の波の中を抜けながらボスに近づく。

 

このボスの倒し方は、武器を持つ腕を一つずつ切り落とすこと。全ての腕を切り落としてからでないと、胴体には一切のダメージが通らないのだ。

 

数ある腕の中で、一番厄介なのは杖を持つ腕。基本的に、攻撃で同時に使う腕は二本のみ。そして遠距離では、弓矢を使う二本で満たしてしまっている。けれど、杖の魔法は今も使っている。杖は、二本までしか使えないという条件を無視して、どんなタイミングでも使ってくるのだ。実質三本腕を使えるようなもの。だから、例外である杖の腕を真っ先に切り落としたい。歴代勇者もやってきたことだ。

 

と、ここでボスとの距離が一定距離に達した。ここからは弓ではなく、鞭と槍を使ってくる。鞭は見た目通りの射程だが、槍は振り回しと突きの瞬間だけ伸びるから気をつけなければいけない。

 

そして、この瞬間にも魔法はばら撒かれているから面倒だ。さっきまでは距離も遠かったからまだ密度が薄く避けれたが、ここからはもう普通では避けきれない。

 

「っしょ...」

 

普通なら避けられない。自力では避けられない。なので、ボスの攻撃を利用して魔法を回避していく。鞭と槍が通る軌道上の魔法は消滅するので、そこを進めば魔法を回避できるのだ。

 

時には聖剣でボスの攻撃の軌道を変えて、自分で道を作っていく。武器を切断できれば早いのだが、それはできないのはもう知っている。弾くことを意識して、刃を押し当てる。

 

「きた...この距離!」

 

僕の魔法拡散を発動できる射程に入ったので、固定型の魔法拡散を杖の腕に筆記魔法で刻み込む。これで、新たに魔法を放つことはできなくなった。あとは既に放たれている魔法を避けるだけ。そして魔法陣の魔力が切れる前に腕を切り飛ばせばいい。

 

さらに一定距離を近づいたので、鞭から斧に腕が切り替わる。鞭と比べると斧の攻撃は直線的だから避けやすい。ただ、横薙ぎに払われると結構厄介だ。跳んで避けるとその後の槍が避けられなくなる。未来跳躍を織り交ぜながら回避して...

 

最後の武器チェンジの境界線を超えた。斧と槍から、剣と盾に切り替わる...が、その隙をついて盾の内側に潜り込む。そのまま聖剣で斬り上げ、杖の腕を完璧に切り飛ばす。

 

と、腕を一本切ったところで、ボスを中心として物凄い突風が吹き荒れ、僕の体を吹き飛ばそうとする。本来なら吹き飛ばされてもう一度近づかないといけなくなるけど、対策済みだ。拘束魔法でボスと僕を繋いでいるため、飛ばされる心配はない。

 

そして風が止むと同時に振り下ろされた剣を避け、次に鞭の腕を切り落とす。続け様に今度は槍の腕を切り落とし、弓の腕を切り...終わったところでまた突風が吹く。

 

さっきと同じように鎖を繋いでいるから飛ばされない...はずだったが、矢を射る役割をしていた腕が鎖を解いたみたいで、遠くまで吹き飛ばされてしまう。

 

できれば弓矢の腕は同じ周期の中で切っておきたかった。片方が残ると、他の腕のサポートに回ったり、普通に腕で殴ってきたりするから面倒になるんだよね。

 

「しょうがない...もう一度!」

 

ボスに向かって走り出す。遠距離と中距離を担当する腕はほぼなくなり、残る腕は斧と剣と盾、あとは素手の腕のみ。斧は大振りで、槍がないから避けるのは容易い。剣も盾も、切り替わるタイミングで内側に潜り込めば問題ない。素手の腕だけ怖いから、まずはそこから落とす!

 

「ふっ...セイッ!」

 

ボスに肉薄し、そのまま素手の腕に切りかか...矢尻を握り込んでる⁉︎そのまま刺してくる気か!でも僕の方が早い!

 

ザンッ!と腕を切り落とし、そのままの流れで斧の腕を落とす。返す刀で剣の腕を切り裂き、すぐ近くにあった盾の腕に聖剣を一突きする。

 

「       !!!!」

 

ボスは形容し難い声を上げて、僕を蹴り飛ばそうとしてきたから未来跳躍で避ける。

 

「やっと動き出したね...!」

 

腕を全て切り落としたことで、やっとボスがその場から動き出した。今に至るまで、ボスはその場から一歩たりとも動いていなかったのだ。そして、その場から離れたことで、やっと刃が通るようになる。

 

……けど、もはや刃が通るようになるなんてことは関係ない。

 

必殺技を撃つ用意が完了した。

 

どんな魔物も、一撃のもとに屠り、浄化する必殺技。

 

聖素変換装置は十分に温まった。

 

今こそ、魔を反転させよう。

 

『聖剣納刀』

 

必殺技を使うために、一度聖剣を元の形に戻す。

 

「えーっと、呪文を唱えないとだっけ...」

 

聖剣を腰の辺りに構え、僕は呪文を詠唱し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよ必殺技の出番か...?」

 

ライトの戦いを見ていたわけだが、ライトが攻撃をやめて聖剣を元に戻した。そして、ボスの攻撃をひたすら避け続けている。

 

「何かボソボソ呟いてるみたいね...ここからじゃ何を言ってるのかはわからないけれど」

 

「必殺技の呪文かな?...お、そろそろ来るぞ!」

 

ライトが握る聖剣から、光が漏れ出す。

 

ライトは聖剣の鞘を左手で、柄を右手で掴み、腰の辺りで構える。

 

「……まさか、ついに鞘から聖剣を引き抜く時が来たのか⁉︎」

 

ライトが右手を動かし、柄を鞘から引き抜く。

 

「え?」

 

ついに露わになった、柄の先、聖剣の中身。

 

そこに、刃はなかった。

 

あるのは柄と鍔だけ。剣としてあるべき、刃がなかった。

 

けれども、ライトはそのまま腕を振るい、魔物に向かって柄を振る。

 

次の瞬間、その柄の軌道を後追いするような軌道で、鞘から溢れ出した大量の光が放たれ、ボスの左半身を飲み込む。

 

「は...ハァ⁉︎」

 

剣ってか鞘からビーム出たぞ!あれが必殺技なのか⁉︎

 

やがて鞘から光が消えていき、ライトが持っている柄を元の位置に戻す頃には、ボスを襲っていた光も消えていく。

 

「け...消しとばした...⁉︎」

 

光が消えて、ボスの左半身も消滅していた。ウェカ○ポの左半身失調でも喰らったんじゃないかってくらい、綺麗に半身が削り取られているように見えるが...ボスがバランスを崩して倒れたのを見るに、本当に削られているようだ。

 

「というか、あれを浴びてまだ死んでないのかよ...」

 

まだ訓練が終わっていない。けど、ボスはもう瀕死。ライトはここからどうやって倒すのだろう...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミスったね...」

 

初めて使うせいで、ちょっと狙ったところからずれてしまった。本当は全身を飲み込んで消し飛ばしたかったけど...しょうがないね。

 

「今無理に攻撃する必要はない...よね」

 

ボスは瀕死だけど、あの状態でも普通に胴体は硬いから、聖剣展開してやっと攻撃が通るようになる。

 

けれど、必殺技を使った影響で、聖素変換装置が一時的に機能停止してしまっているから、聖剣の力が失われてしまっている。威力だけで言えば、今は普通の剣とあまり変わりない。

 

「元に戻るまで三十秒...カリヤがいたら復帰も早くなるのかな?」

 

あとで試せるタイミングがあったらやっておかないとね。

 

と、十秒経ったので、聖域展開はできるようになった。けど、まだ攻撃はあまりできない。余裕があるから、ちゃんと待って...

 

「よし、『聖剣展開』」

 

聖剣の力が戻ったので、鞘の形を変える。

 

「一撃で...屠ろうか」

 

聖剣からバフを貰い、一瞬でボスの首を落とす。

 

「はい、終わり」

 

ボスを倒したことで訓練が終わり、転移によって最初の場所に戻される。

 

「ライト!何よあれ!」

 

「なんだあの剣ビーム!どこの騎士王だよ!」

 

おおぅ、ニアとライトに詰め寄られた。ライトの騎士王がなんたらってのはよくわからない。

 

「えーっと、うん、説明するから少し離れて...?」

 

二人から距離を取ってから、あの技の説明を始める。

 

「あれはね、聖素を直接飛ばしているんだ」

 

「聖素を飛ばす?まぁ、聖域展開とか色々やってたし、できなくはないのか」

 

「まず、鞘に見えてたのが、実は聖素変換装置っていう魔道具みたいな物で、これが聖剣の力の源なの。周囲のマナを吸い取って、魔素だったら反転、聖素だったら増幅させる感じになってる」

 

「な、なるほど?」

 

「聖域展開は、この魔道具から地面に聖素を流すことで発動していた。聖剣展開は、魔道具の内部構造を表側に出すことで周囲の魔素を変換して魔物へのダメージを増やしてたってわけ」

 

「ってかそうだ。聖剣なのに刃がなかったよな。実は剣じゃないのか?」

 

「魔道具を剣の形にしてる...というのが正しいのかな。剣でもあるけど、本質は魔道具って感じだね。で、この魔道具を制御しているのが、ここの部分」

 

「柄の部分ってわけか」

 

「あの技は、聖素変換装置の機能をフルに使って、その機能を外部に拡張させることで成り立ってる。聖素を飛ばす時に、その聖素自体に魔素を聖素に変換する効果を付与しているんだ。そして効果が付与された聖素を、この柄を振ることで狙って飛ばせるってわけ」

 

「……ってことはつまり、聖素が通る軌道上の魔素は全て聖素に変換される。だから、聖剣展開状態で攻撃した時と同じように、魔素での魔物や魔族に対するバフを打ち消しながら攻撃できるってことか?」

 

「もっと凄いよ。魔物や魔族の体内にある魔素をも聖素に変換するから、飛ばされた聖素に触れた箇所は丸ごと内側からも外側からも浄化されるよ」

 

「えっぐぅ...」

 

「ほとんど防御は意味をなさないわけだね。障壁も貫通できるから、逆にそれで身を守ろうとしてくれる方が、避けられないから嬉しいくらいだね」

 

「どう考えても強いとしか言いようがないけれど...何かデメリットは当然あるわよね?」

 

「そうだね。これを使うと、十秒間聖域展開ができなくなって、三十秒間は聖剣展開ができなくなる。聖素変換装置が一時的に効力を失っちゃうんだ」

 

「オーバーヒートしちゃうわけね...ってか、さっきからあの技だとかこれとか言ってるけど、技に名前はないのか?ちょっと呼びにくい」

 

「技名か...あるにはあるんだけど、明かせないんだよね。呪文と技名は、聖剣を手にした者にしか知ることが許されないんだ。誰かに伝えることも、書き残すこともできない」

 

勇者についての情報を無闇に話せないのと同じような感覚で封じられてるんだよね。流石に魔法が体内に刻まれてるとかではないんだろうけど...聖剣の力で情報規制されてるのかな。

 

「……と、説明はこんなところかな。他に何か聞きたいことがあれば聞くけど...ないみたいだね。次の階層に行こっか」

 

「なんか、やっとライトがリーダーらしくなってきたぜ...」

 

「……そう?」

 

僕自身はあんまり変わったとは思えないけど...勇者になって、気づかないうちに変われたのかな。

 

自分を変える。勇者候補になってから思っていて、それが半ば目標になっていたけれど...ここからはそれだけじゃダメだ。

 

この国の期待を一身に背負っているからには、必ず魔王を倒す。その気持ちでいかないと...

 

いや、違うね。

 

一身じゃないか。

 

僕には頼れる仲間たちがいる。

 

勇者になれなかった二人のためにも、僕たちで絶対に魔王を倒してみせる...!

 

そう心の中で意気込んで、次の階層へと向かう一歩を踏み出した。




相手が魔のものならば必ず消し飛ばす必殺技。
何気にライトの説明をきちんと読み解くと、魔素を内包していないものには一切影響を及ぼさないということがわかるんですよね。
味方を巻き込まないし、建造物や自然を巻き込むこともない。
なんなら魔族と人間を見分けるのにも使えるという...範囲攻撃にしては使いやすい出来になりました。
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