前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8114字。

戦闘シーンはちょっと短めです。


旅立つ時が来た

なぜ魔力が尽きたのか。落ちている間、俺はそれを考えていた。本来の想定ならあの場面で魔力切れを起こすことはなかったはずだ。

 

少し考えればわかった。理由は簡単。魔力の回復が行われなかったからだ。

 

俺はトレントの傷口の中に入り、魔素の流出速度を加速させていた。そのせいで魔素が辺りに充満しきっていたのだ。吹き出し続ける魔素は聖素を外に追いやり、中に聖素はもはや一欠片も残っていなかった。それによって魔力の回復が一切できなくなっていたのだ。

 

「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅ!」

 

こんなこと考えてる暇なんてなかった。このままじゃ俺は地面に叩きつけられて死ぬ。受け身なんて全く意味がないほどの高さだ。五接地転回法とやらならなんとかなるのかもしれないが、やり方なんてちゃんとは知らないし、知っていたとしても初めてだから成功する保証もない。

 

打つ手なしだ。

 

こうなれば奇跡に頼るしかない。

 

「か、神様なんとかしろー!」

 

『仲間を信じるのじゃ。お主はこんなところじゃ死なん』

 

「へ?...あだっ⁉︎」

 

腰に鈍い衝撃が走る。けれどおかしい。まだ地面は遠いはず...

 

「うわわっ⁉︎氷⁉︎」

 

いつのまにか空中に氷の橋が出来ていた。氷だったため、ツルツルとその端に向かって滑り落ちていく。

 

「おぉぉおおおぉおぉ....よっ、と」

 

なんとか滑り落ちていくうちに体勢を立て直し、着地する。

 

「俺生きてる...?夢じゃないよな?」

 

「夢じゃないよ。はいこれ」

 

ステラからポーションの入った瓶を渡される。

 

「ん...ん...ぷはぁ...なんだったんだあの氷。誰がやったんだ?」

 

「私とギブドだよ」

 

「俺が魔法で水を噴射した。そこにステラが氷の矢を撃ち込んで凍らせたんだ」

 

「なるほど...そうだトレントは?どうなった!」

 

まだ戦いは終わってない。

 

「あれだよ。カリヤのおかげで随分と小さくなったね」

 

トレントの方を見ると、ステラの言うとおり随分と小さくなっていた。前に戦ったトレントが一回り大きくなったくらいの大きさになっていた。魔素を抜いた影響がはっきりと現れたようだ。

 

「あれくらいなら俺らだけでも倒せると思うぜ」

 

「そうそう。まだちょっと大きいけど、余裕余裕ー」

 

「カリヤは休んでおきなよ」

 

「いや、せっかく魔力回復したしな。速度操作の援護くらいはやるよ。鞄取ってくるからちょっと待ってて」

 

能力を発動し、置いてきた鞄のもとまで走る。それをささっと回収し、すぐに戻る。

 

「この感じなら五人全員加速させても二分は魔力保つと思う。間に合うか?」

 

「ああ、余裕だ。ステラとチュチュとギブドは行かないしな。それに一分もかけない」

 

「りょーかい。じゃあ3カウントでいくぞ。3、2、1...GOGOGO!」

 

キースと二人で走る。

 

「カリヤ!援護じゃなくてトドメを刺しにいっていいんだぜ!」

 

「…わかった。俺の手柄になっても文句言うなよ!」

 

「これからどうなってもお前の手柄だ安心しな!」

 

お互いにそれぞれ自分の最も得意とする武器を持つ。

 

「「雷装』『雷装・剣』!」

 

「『闘争心』『捨て身』『フルアタック』!」

 

各々一撃の威力を限界まで上げるためにバフをかけていく。キースの使ってるスキルの名前がちょっと怖いが、反撃をもらわない想定なのだろう。そうじゃないと危険すぎる。

 

「一撃で!」

 

「決める!」

 

トレントのもとに辿り着くまであと一秒。これで終わりだ。

 

「っ!!」

 

残り0.1秒。

 

残り0秒。

 

その瞬間、すれ違いざまにトレントを斬り飛ばす。あっという間に斬ったため、ただの一つのバリもできず真っ二つになり動かなくなる。

 

「…これでやっと終わりか。長かったな...」

 

「お前のおかげでめっちゃ早く感じたぜ」

 

「それは物理的にだろ」

 

その時、後ろからドンっという音がした。

 

「え、なに?」

 

後ろを見る。そこにはトレントがいたはずだが...いない?

 

「トレントどこいった?消えたぞ?」

 

「これじゃねぇの?ほら、これ」

 

キースがさっきまでトレントがいたところから何かを拾ってくる。

 

「なんだこれ、苗木?」

 

まさかトレントの正体はこれだったのか?

 

「魔素が溜まっちまうとこんな普通のものまで魔物になっちまうのか?でもなんで溜まったんだ?」

 

「さぁな。どうせ魔王軍の仕業なんだろ多分」

 

魔王軍のことはよく知らないけど、できるんだろ。こういうのは全部魔王軍のせいにしとけばいいってなんかで見た。

 

「さてさて、トレントも倒したし帰るか。みんなー戻るぞー。依頼料貰いに行こうぜー」

 

ステラたちの方に歩く。

 

「あっ、そういえば聞き忘れてたんだけど、お前らパーティー正式に組んだのか?」

 

「そうだよー」

 

「お前なら入れてやってもいいんだぜ?」

 

「遠慮しておくよ。いずれ勇者パーティーに入るしな」

 

「なんで遠慮してんのにそんなこと言えるんだよ。普通逆だろ。勇者パーティーの方で遠慮しろよ」

 

「たしかに。全然遠慮してねーじゃん俺」

 

でもそこで遠慮する気はない。勇者たちを助けるだなんていうことを成し遂げようとしているのだ。遠慮してどうする。

 

「よし帰ろう。魔力使い切りたいから加速するぞー」

 

「えー走るのー?」

 

「歩きでいいよ。それでも十分速いからさ。ほらほら近づいて」

 

みんなに近づくように言う。半径2メートルに5人はちょっとキツいが、ギリギリ入るだろう。密ですとか言っちゃいけない。

 

「…よし、みんな入ったな。行くぞー...っ⁉︎みんな離れて!」

 

俺がそう叫ぶと、全員がすぐにその場から飛び退く。なんでかを聞く前に離れてくれるのは助かる。そうでなきゃ、誰かやられていたかもしれない。

 

「スライムだ!」

 

ここに来た時から、こうなることを想定してはいた。想定通りではあるのだが...このタイミングでくるか。

 

「なんでこんなところに⁉︎」

 

「俺が前に土流で埋めたやつだ!トレントが暴れて地面が掘り返されたせいで封印が解けたんだ!」

 

実はトレントとの戦闘中、能力を使っている間は地面の下にいたスライムの存在を知覚してはいた。しかし、出てくる気配がなかったので無視していた。その選択は間違っていないはずだ。どう足掻いてもスライムは出てきていただろうし、トレント戦の時に出なかったのが幸運だったと思おう。

 

「うっわどんどん出てきた。どれだけ増殖してんのさ!」

 

辺りにできていた地面の亀裂からスライムがうにゅうにゅと出てくる。ちょっと気持ち悪い。

 

「地面に埋めたのは失敗だったか...」

 

「に、逃げるか?」

 

「いや、出来れば倒しときたい」

 

「えーでも無理じゃない?スライム倒すの超面倒だし、こんなに数がいたんじゃ潰しても他のにくっついちゃうでしょ?」

 

「私たち弓組はなにもできないよ?」

 

「いや、ステラは出来ることあるぞ」

 

「えっ、なんかあるかな...?」

 

「スライムって結局液体なんでしょ?だったら凍らして砕いちまえばいいだけだ」

 

氷の矢は、固体に命中するとその周辺しか凍らせることが出来ないが、液体に命中すると瞬時に全て凍り付く性質を持っている。ステラたちが俺を助けるために作った氷の橋も、その性質を利用して作り出したものだ。液体であるスライムも、氷の矢で凍らせられるはず。凍ったらそれを砕くだけで倒せるはずだ。

 

「おぉ...じゃあやってみよっか」

 

「いやいやちょっと待て。普通に逃げようぜ」

 

キースがそう言うが、無理なんだよなぁ...

 

「いや、逃げれねぇんだわ」

 

「どうしてさ」

 

「あいつら、目も耳もないのに俺のこと追ってくるんだよ」

 

「どうしてだよ」

 

「コイツのせい」

 

あの元スライムの入った小瓶を取り出して見せる。

 

「それならそれ捨てろよ!ってかなんでそんなもん持ち歩いてんだ!」

 

「もったいない病...ラストエリクサー症候群のせいでさ」

 

「なんだよそれ...」

 

「ほらほら、ステラやるぞ」

 

「オッケー」

 

二人で弓を構える。

 

『氷装・矢』

 

氷の矢を近場にいたスライムに当てる。矢が当たったスライムはカチンコチンに凍りつき、プルンとも動かなくなる。

 

「よーし、これで砕けるはず...あれ?」

 

「全部凍ってる...ねぇ」

 

遠くから出てきていたスライムも近くのスライムも、全部例外なく凍りついていた。なんで?

 

「地面の下で全部繋がってたからかな?液体で凍りやすかったから二本で全部凍っちゃったね」

 

「ああ、なるほど。だからか」

 

この矢を外さない限り、このスライムは全部永遠に凍りつくってわけだ。こんなあっさりと解決するとは思ってなかった。

 

「よーし、じゃあ一番遠いところから粉々に砕いてくか」

 

「もういいだろわざわざそんなことしなくても。溶けないんだったら他の人に任せればいいじゃないか」

 

「あー...そう?」

 

「全部潰すことなんて不可能なんだ。地面の下に埋まってるのまで砕くのはこの人数じゃできない。正式な討伐隊でも組んでもらってその人たちにやってもらう方が楽だ」

 

まぁ確かに、俺たちがわざわざやる意味はないんだよな。砕くのなんて誰にでも出来るんだし。

 

「そうだな、砕くのは任せよう。じゃあ氷の矢もっと刺しておこうか。封印は多い方がいいしな」

 

「そうだねー」

 

氷装・矢を発動し、氷の矢をスライムに突き刺していく。地面から出ている部分一つにつき最低一つずつ。俺とステラ、あと氷装を使えるようにしてもらったチュチュの魔力が尽きるまで矢を突き刺して回った。

 

「これでいいだろ。帰るぞー」

 

「だな、あれは結構過剰だとは思うが...」

 

「損はしないんだし、多少過剰でもいいだろ」

 

「途中で魔物に会ったらどうすんだよ。魔力ないんだろ?」

 

「魔力なくても問題ないだろ。各自普通に武器も持ってるんだし、魔法使わないとやばいって奴が出てきたらポーション飲むだけだよ。あっ、能力使えないから帰るの遅くなるわ。我慢してくれ」

 

「そこの心配はしてないから安心してくれ」

 

「おぉう...」

 

そんなふうに言い合いながら村まで歩く。正直言うと魔力ないこの状態、ものすごい怖い。戦う時は大体能力を使っていたから、能力がないとちゃんと戦える気がしない。もし魔物が出てきたら、全力で仲間を頼ることにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと、その後は特に困難もなく村に戻ってくることができた。行きとは違って、森を迂回して村に戻ることができたからだろうか。一回魔物が出たは出たが、キースが一瞬で一刀両断してくれた。頼もしすぎる。

 

「よし、みんなで報告に行くぞー」

 

役所の中に入る。

 

「報告に来ましたよー」

 

「あぁカリヤさんたちじゃないですか。お疲れ様です。どれだけトレントに傷をつけられました?自己申告で構わないので、正直に答えてくださいね。それによって報酬の量を決めるので」

 

「あっ、それよりも前に文句言わせろ文句。なんだよあのデカさ。聞いてなかったぞ」

 

「そりゃそうですよ。言ってませんもん」

 

「いや、そういう返答が聞きたかったわけじゃ...」

 

「すみませんね。あれだけデカいことをあらかじめ伝えてしまったら、誰も依頼を受けてくれないんですもの」

 

「わざわざ森の中通らせたのもそのためですよね?」

 

「そうですそうです。直前で逃げられても困りますし」

 

「死んでたらどうするつもりだったんだよ...まぁ倒せたからよかったけど」

 

「すみません...って倒した⁉︎」

 

「ほらキース。証拠出してやれ」

 

「見せても証拠になるかはわからないけどな...」

 

キースが巨大トレントの残骸である苗木を取り出して、受付の人に見せる。

 

「これが証拠...?確かに膨大な魔素の痕跡はありますが...」

 

そんな痕跡を見るスキルがあるのか。確かに、こういうのを鑑定するなら持っていておかしくないか。

 

「信じられないなら調査隊でも送れば良いじゃないですか。トレントがいなくなってるのが一目瞭然ですよ」

 

「あっ、そうそう。スライム討伐隊も送ってもらわないとね」

 

「調査隊は出すつもりでしたが...スライム?」

 

「地下に埋めてたスライムが出てきたんですよ。凍らせているので、砕くだけでいいようにはなってますけどね」

 

「ああ、あの時のスライム...そういえばですけど、トレントがいなくなってるってどういうことですか?」

 

「それはですね...」

 

トレントの正体について、俺たちの出した考察を話す。あくまで考察、当たっている保証はない。多分合っているとは思うが。

 

「トレントがこの苗木に...?なるほど、膨大な魔素を吸収した魔物ですか...」

 

「魔王軍の仕業ですかね?」

 

「えぇ、おそらく。魔族の仕業でしょうね」

 

…魔族?

 

『魔族とは人間に近い姿形を持った魔物のことじゃ。人間と同レベルの知能を持ち、魔王に心酔し従う右腕のような存在じゃ』

 

いつも唐突に来るな、天啓。

 

『奴らはそれぞれ特殊な能力を一つ持っておるのじゃ。多分その内の一体が、魔素を操り魔物を巨大化させられる力を持っておるのじゃろう』

 

なるほど、そんな奴らがいるのか。人並みの知能ねぇ...普通の魔物とは違って頭を使って戦ってきそうだ。能力によっては厳しい戦いになるかもしれない。今はそんなに関係ないけど。

 

「魔族かぁ...」

 

「一応魔族の方も警戒しておくように衛兵の人たちに言っておきましょう。魔の手がすぐそばまで近づいているわけですし、いつ村が襲われるかわかりませんから」

 

「もし襲われたら言ってくださいよ。俺ら冒険者は頼まれればどんなところでも戦うぜ!報酬は要交渉だがな!」

 

「ああそうだ、報酬を忘れてました。ちょっと待っててくださいね、取ってきますから」

 

受付の人が奥に消えていく。「まさか倒しきるだなんて...どれだけ出せばいいのかしら...」と言う声が小さく聞こえてくる。

 

「大体でいいですよー!」

 

奥に向かって呼びかけると、「き、聞こえてました⁉︎すみません!」と言う声が返ってくる。

 

「どれくらいになるのかな。まぁ多い方が嬉しいけど」

 

「何に使うんだ?」

 

「今日王都の方に行くんだよ。移動費は十分あるんだけど、あっちでの資金が欲しくてさ」

 

「おぉ、王都に行くのか。頑張れよ」

 

「応援ありがとよ」

 

「お待たせしましたー。今回の、報酬ですっと」

 

報酬の入ったでかい袋がドカッと置かれる。すごい重そうだ。

 

「ありがとうございまーす」

 

袋を受け取って外に出る...やっぱ重っ!

 

「どんだけ入ってんだこれ...みんな財布出せー、分けるぞー」

 

まず袋の中身を全部ぶちまける。そしてどれだけ入っているのか、金額を確認してきれいに五等分する。

 

「すげぇ量だな」

 

「しばらく何もしなくても暮らせそうなくらいだねー」

 

「おぉ...」

 

三者三様の反応を見せるゼ○伝組。

 

「でも...」

 

「だな」

 

「うん」

 

お互いに目を合わせると、三人は報酬の半分の量を取る。

 

「はい二人とも。これ!」

 

「えっ?」

 

「受け取ってくれ」

 

三人がお金を渡してくる。えっ、なんで?

 

「二人が倒す方法を見つけたんだ。俺たちは最後に少しだけ戦ったにすぎない。等分じゃなくてもっと受け取るべきなんだ」

 

「いや、でも」

 

「でもじゃない。お前の手柄だってあの時言っただろ?前も等分にさせられたからな。今回はちゃんと正当な量受け取ってくれ」

 

「流石にこんなは要らないって。重いし」

 

「お金なんていくら持ってても困らないんだからさ。足りなくなったりしたら嫌だろ?」

 

重くて困るんだけど...まぁ確かに、足りないよりはマシだな。

 

「そこまで言うならありがたく貰っておくとするか」

 

渡された分も含めて、袋に金を入れる...やっぱ重い。ほんとなんで紙幣ないんだよこの世界...

 

「じゃあここでお別れだな。じゃあなカリヤ、また会う時があれば一緒に戦いに行こうぜ」

 

「だな、また稼がせてやるよ」

 

「そいつは助かる」

 

「じゃあねーバイバーイ」

 

「またな」

 

キース、チュチュ、ギブドが別れを告げて去っていく。

 

「生きろよー!」

 

三人の背中に向けて、こう叫んだ。いつ死ぬかわからないのが冒険者。見送るならこの言葉が合っていると思った。

 

「あったりめーだー!」

 

キースがそう言い返してきた。彼らならきっと生きていてくれるだろう。俺とステラは姿が見えなくなるまで手を振り続けた。

 

「…よし、俺もそろそろ行こうかな」

 

「そう...だね。見送るよ」

 

「ありがと。確か発着場は...北の門でいいんだよな?」

 

「うん」

 

「じゃあ行こう」

 

ゆっくりと、王都行きの馬車の出る北の門に歩いて向かう。着くまでの間、会話は一つもなかった。めっちゃ気まずかった(小並感) 普段のステラなら元気よく話しかけてくるというのに、全く喋らない。そこまで別れを惜しんでくれているのだとしたら、なんと嬉しいだろう。

 

「ごめんねカリヤ」

 

第一声が謝罪とは...いったいなんだ?

 

「私カリヤを弓の名人にするって言ったのに...出来なかった...」

 

なんだ、それのことか。

 

「一週間じゃできないのなんて当然だ。そんなに悔やまなくてもいいよ」

 

「でも...でも」

 

「そんなん言ったら俺だって謝らないといけないじゃん。ステラを一番にするって言ったのに出来なかっただろ?」

 

「そんなの一週間じゃあ...」

 

「自分で言ってるじゃん。一週間じゃ無理なんだよ」

 

本当に気に病む必要はない。気楽に生きれるならそうした方が人生楽だ。というか、ステラってこういうの抱え込みがちだからなぁ...

 

「俺がしたことなんてダガー教えて、俺が知ってる魔法をちょっと教えたくらいだろ?そんなのとステラが教えてくれたことを比べたら天と地ほどの差があるって」

 

「そんなの、じゃないよ」

 

へ?

 

「そんなのとか言わないで。私、もっと色々教えてもらったから。そんなのだなんて言っちゃダメ。いい?」

 

「お、おぅ...」

 

結構な剣幕で言われた。今度からステラとの会話の中で自分を卑下するのはやめておこう。俺覚えた。

 

「カリヤには色々といいアイデアをもらったからね。カリヤがいなくても頑張るよ」

 

「おう、頑張れよ。俺も頑張るからさ」

 

そうやって、やっと始まった会話をしばらくしていると目的地である北の門の前に着く。

 

「あっ、あの馬車じゃない?」

 

「だな。じゃあ行ってくるよ」

 

「今度会うときは勇者パーティーとして会おうね」

 

「いいねそれ。約束だ。指切りげんまんしよう」

 

「…なにそれ?」

 

「えっとね、こうやって指をやって...」

 

「それをすればいいの?」

 

「うん」

 

やり方を教えて、ステラと指切りげんまんをする。

 

「「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ーます!指切った!」」

 

「…で結局どう言う意味なの?これ」

 

「約束を破ったら指を切って、さらに一万回殴りますよっていう意味」

 

「何それこわっ⁉︎」

 

「あと針を千本飲ますんだよ」

 

「なんでそんな物騒なの...?」

 

「さぁな、俺もなんでこの言葉ができたのかは知らん」

 

ほんとにどうやったらこんな言葉を作れるんだろう。言語って不思議だよな。

 

「じゃあね。元気してろよー!」

 

「カリヤもねー!バイバーイ!」

 

ステラに別れを告げて馬車に乗り込む。

 

この村から出る時がやってきた。異世界にきて二ヶ月と二週間ほど。もとの地球の時間に換算すれば三ヶ月と少しってところか。随分と長く感じたが、学校の一学期分と考えるとそこまで長くないように思った。

 

「…あの、出発はいつですか?どれくらいかかります?」

 

乗り込んだはいいものの、なかなか出発しなかったので御者の人に聞いてみる。今日の朝の時点だと俺しか客がいないって話だったはずだけど...

 

「すまんねぇ、ちょっと前に急に客が入ってな。もう少しで来ると思うから待っててくれな、あんちゃん」

 

そうだったのか。まぁそこまで急ぐわけでもないから何分でも待てるからいいけど、どんな人だろう。

 

「悪い悪い!準備に時間かかっちまった」

 

御者の人に声をかける人がいた。なーんかこの声を聞いたことがある気がするのは気のせいかな?というかほんの数分前に聞いた声のような...

 

「よっ!」

 

馬車に乗ってきた人がそんなことを言う。

 

「よっ、じゃねぇ!なんでここにキースがいるんだよ!」

 

「私もいるよー」

 

「俺もだ」

 

チュチュとギブドも入ってくる。

 

「もともと王都に行く予定があったんだが、カリヤが行くって聞いたから予定を早めたんだ」

 

「ならさっきの別れはなんだったんだ...」

 

「あはは、別れた後に決めたからね」

 

そうだったのか...でも、こいつらとなら楽しい旅になりそうだ。

 

「そろったな、出発するでなー!」

 

馬車が動き出す。

 

俺の異世界生活も、やっとスタート地点から動き出したのだ。




やっと最初の村を出ました。

スライムなんとかしたし、もうあとぐされはない...はず。

次にカリスに来るのは多分物語後半になるでしょうね。
魔王城は北にあるので、余程のことがない限り行くことがないですし。
ステラの弓が壊れたりとかしたら行くかもしれませんね。
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