前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
クミリア回です。
第九十四階層
「よーし頑張ろう!」
転移して、闘技場っぽいところに移動する。ステラちゃんの時みたいな特殊フィールドの方が楽しそうでよかったけど、まぁこれはこれで戦いやすいしいっか。
「お、君がボスだね?じゃあやろうか!」
人型のボスが現れた瞬間に急接近し、拳を振りかぶる。
「お、やっぱ速いね」
拳が軽々と受け止められ、すぐに反撃として手刀が飛んできた。屈んで回避して、そのまま地に手を付いて支えにし、顎を狙って蹴りを放つ...これは避けられるか。
「まだまだ!」
着地の隙を狙った攻撃を回避して、逆に出してきたその足を踏みつけ...られなかったからグッと近づいて首掴んで足を刈り取って...!
「叩きつける!」
足払いで転ばし、そのまま頭を思い切り地面に叩きつけさせる。間髪入れずに空いてる左手で目に突きを...
「いっ゛⁉︎あそこから攻撃できる普通⁉︎」
首を押さえつけている状態から足を一気に跳ね上げて私の背中に蹴りを叩き込んできた。ちょっと警戒が足りなかったか...!
ボスがそのまま攻撃を続けようとしてきたから、手を離して一旦距離を取る。するとすぐにボスはグルグルと妙な動きをしながら立ち上がった。あれはまるで...
「ダンス...ミルキーのか」
ボスはミルキーの使っていたダンスのスキルを使っていた。いや、「ミルキーが使っていた」じゃなくて、これは「ミルキーのダンススキル」だ。
「やっぱり、使ってくるよねそりゃ」
今回私が戦うボスの能力、それは未知数だ。
対戦相手である私の今までの戦闘記憶を読み取り、戦ってきた相手の力を持って顕現するのだ。私自身覚えてない戦いとかあるし、どこまで読み取っているのかわからない以上、未知数としか言いようがない。底が見えない。
唯一の救いは、観戦している人の力は使ってこないこと。レストの力を使われて絶対に突破できないカウンターを使われるとか、ニアの魔力で大量に魔法を撃ってくるとか、カリヤのあの速度と戦うといったことは起こらない。仲間と戦うことはない、というわけだ。
「まぁ何が来ようとやることは一つ!」
どんな力を使ってこようと、全部倒すだけ!初見の相手と戦う時の要領で戦えば問題無し!不敗の拳の力を見せてやろう!
「さぁいくよ!『雷装』!」
全身に天の怒りを浴びた瞬間の電流が駆け巡る。魔力とのリンクも完了。準備万端!
「……へ?」
よし行こうと思い、駆け出そうとした次の瞬間。
全身から雷装が消え失せた。
そして、前を見ると、手をこっちに向けて何かを掴んでいるような仕草をしているボス。
「ぬ...盗まれた!雷装盗まれた!」
やられたそうだったワンナの略奪があった!略奪で雷装盗まれちゃった!
「ああもう雷装使われちゃってるし...!もうしょうがないなぁ!」
腕を前に突き出して、空気の腕を作り出して殴りかかる。直接触れなければ雷装の意味はない!
「掴んだ!このまま握りつぶして...いたぁっ!」
浅くだけど、伸ばしていた腕を斬られた。これは...カノウの色彩剣装!未来からの斬撃!
「同時に色々使うの反則でしょ!」
フロートっぽい力だと思ってたけど、フロートはこんなふうに同時に色々使ったりしないから全然違う!というかあっちの方が良心的!なんで姿も変わらずに力を使えるのさ!
……これ、フロートとかアクセルとかの力も使えるとかないよね?記憶の中の魔族と戦う階層がある以上、同じことをここではしないはず...そう思いたい!
「こうなったら...!」
懐にしまってある紙に魔力を流して...!
「ちょっと来い!」
一旦空気の腕を解除して全力疾走を発動、一瞬でボスまで近づく。途中で未来からの斬撃が来たけどバフと再生で十分対応できるから問題無し。多分ミュラーの罠の線も踏んだけど、発動までが遅いからこれも無視だ。
「セイッ!」
この速度のまま思い切りボスの顔面を殴り飛ばす。ボスは雷装を纏っていたけど、殴ったのは空気の腕だから私はノーダメージだ。
「来た!これを潰せば...!」
ボスを殴り飛ばしたことで出てきた光の球のようなものを握りつぶす。
「おかえり雷装!」
雷装が戻ってきた。略奪が解除されたのだ。
さきの光の球は、ボスの力の一部。今回の場合、ワンナの力を宿した結晶だったため、破壊したことで略奪が使用不可になり解除されたのだ。
「『雷装』っ!」
やっと戻ってきた雷装を再発動する。よーし、ここから暴れるぞー!
「どれだけ力を集めたって、一度戦った人には負けないよ!一度目も負けてないしね!」
とはいったものの、カノウの色彩剣装だけはまずい。未来からくる斬撃が厄介すぎる。あれだけで致命傷を負うことはないだろうけど、あれで攻撃され続けるのは面倒だしうざったい。
まずはカノウの球を砕いてやる。
「……というかそもそもいつのまに剣持ってるの⁉︎」
その人の力だけじゃなく、武器まで生み出せるの?それとも、武器を作る力を持つ人の力を使ってるだけ?
「どっちでも関係ない!倒せばなんでもいい...⁉︎」
何か、予感めいたものを感じ、咄嗟に横に飛び退く。
次の瞬間、さっきまで自分がいたところに、未来から送られてきた不可視の斬撃が飛んできた。
「えっ?なんでわかったんだろ今...っ!」
まただ。何かが来る予感がして、今度は後ろに跳ぶ。
「また避けれた...なんで?」
よくわからないけど、避けれるなら好都合だ。未来から飛んでくる斬撃を全て回避して、攻撃しよう!
「はいここ!ここ危なくてそこ安全!」
斬撃を毎回間一髪のところで回避しながら、ボスへと近づいていく。
「……うっわ近づけないじゃん」
ボスまであと少しのところまで行くけど、そこから先が斬撃で埋め尽くされていて思うように近づけない。少しも入る隙間がない。これでは予見できても進めない。未来から攻撃するって無法すぎるって...
……あれ?たしかこれって、原因作り?をしなきゃいけなかったはず。一度未来から攻撃されたところに、ボスが実際に剣を振る必要があるはずだ。こんなに斬撃を飛ばしちゃったら、後々面倒になるんじゃ...
いや、違う。これは保険なんだ。今のままだと、そのせいで私はボスに攻撃できなくなってしまう。
原因作りを終えていない状態で、色彩剣装が解除されることはない。となると、解除に繋がる行動も全てできなくなってしまう。私がボスに攻撃して、結晶を砕くことなどもってのほかだ。
「なら腕を落とすだけ!」
対処法はあの大会で既にアクセルが見つけている。剣を持っている方の腕、最悪手から先だけでも切り落とすことができれば、矛盾防止のために勝手に原因作りを進めてくれる。
けれど、それをするのも大変だ。そもそも、この斬撃の雨の中進む必要がある。無傷で行くのは無理だろうね...
「未来跳躍...いこうか!」
未来に跳躍し、ボスの右側後方へと転移する。
ザクザクザクッッ!と全身が切り刻まれるけど、その痛みが脳に届く前にボスの肘を手刀で切り落とす。
そしてまたすぐ未来に跳躍してボスから距離を取る。このままあそこに居続ければ、原因作りをしようとする剣に直接斬られてしまう。あの周りだけ大量に切り刻まれていたせいで何度も原因作りの斬撃をする必要があるからね。
「……いったぁ...」
再生で治りつつあるけど、それでも全身を切り刻まれたから相当痛い。体内もそれなりにやられたから、かなりキツい。けど、これでもだいぶ少ない方だろう。
「雷装のおかげ...なのかな?」
たしかカリヤの話だと、雷装は体を動かす電気信号?とやらを増幅させたものだから、そのおかげで身体能力が向上する。それと同時に、五感もある程度敏感になっていて、特に触覚は大きく強化されるらしい。周囲の気配に敏感になるとか、魔力に感覚が宿って体内の状態がわかるようになるとか言っていた。
他にも、でんじは?とかなんとかで周囲を察知できるかも...とか言ってたから、そういった何かが未来からの斬撃の予兆みたいなのを掴んでたんだろうね。それがなかったら、もっと切り刻まれていただろう。
「……もう終わったね。じゃあ砕かせてもらうよ!」
切り落とした側の肘の断面から球が見えていたので、そこを踏み潰して砕く。
「よし次!」
球が消えるのと一緒に腕も剣も消えたため、すぐにボスと戦う体勢へと切り替える。
「……また動きが変わったね」
相変わらず見た目が変わらないから誰の力を使っているのかわからない。誰なのかは今はまだ動きで察するしかないけど...ダメだまだわからない。戦い方がわかれば思い出すかもしれない。
「……シャボン玉?」
あーなんか覚えてるような覚えてないような...
「あっ、あいつか毒使い!ってか犯罪者!」
成り行きでとっちめることになった犯罪者がこんな魔法を使ってきた覚えがある。猛毒の気体を包んだシャボン玉を飛ばしてくるのだ。毒はかなり強いもので、一度吸い込めば即座に昏倒するレベル...だったか。
「けどそいつは空気中で急速分解される!」
私がこいつを倒せたのは、空気の腕があったからだ。毒は空気に触れるとすぐに分解されてしまうため、シャボン玉が割れると一秒も持たずに霧散する。空気の腕で少し離れたところからシャボン玉を割ることができたから、簡単に倒せたのだ。
だからこいつは敵じゃない。シャボン玉をさっさと割り、そのままボスを握り、ギュッと潰しにかかる。
パリンッ!と甲高い音がなった。この音は...さっき光の球を破壊した時もしてたっけ?記憶が正しければ、今ので毒のシャボン玉の力は使えなくなったはず。
「このまま...握りつぶす!」
さらに力を加えて、ボスを締め付けていく。このまま倒せればいいけど...!
「やっぱそうなるよね!」
急に視界がブラックアウトした。この空気の腕は自分の視界を腕で遮ることで生み出しているから、目を見えなくされると使えなくなってしまう。
けど、そうくるのは予想がついていた。前に光を操作するのが得意な冒険者と試合したことがあったから、その力を使ってくるだろうと思っていた。
予想がついていたのだから、対処法も既に考えてある。といっても、ボスの位置を見失う前に殴るという、至極簡単な方法だが。
さっきまでボスを掴み上げていたため、今ボスは落下している。着地音が聞こえてないからそれは確実。落下位置を変えることなんて難しいから、あらかじめ先回りして着地の瞬間に叩けるはず。気配察知で正確な位置を確かめて...!
「そこ!」
拳を振り抜くと、ボスの頭に直撃する。光の球が破壊された時の音が鳴ると共に、勢いよくボスが吹っ飛ばされて壁に激突する。
「目が見えるようになったけど...これでも倒せてないんだね」
結構全力を込めて殴ったはずなんだけど...強いね。
「殴っても球しか壊せない...倒すのに何か条件でもいるのかな?」
流石に全部の球を破壊してからじゃないといけない、とかじゃないと思うけど...次は心臓らへんを狙ってみようか。
「よし、追撃をぉっ⁉︎」
急に地面が滑って勢いよく転んでしまう。
「なんの魔法だ...?うわわっ!」
立ちあがろうとしたらまた滑ってしまう。何度も立ちあがろうとするけど、その度に足が滑ったり、地面についた腕が攣りかけたりして立てなくなってしまう。
「……前にもこんなことがあったような」
そんな気がするけど、いまいち思い出せない。結構前だな...でも、こんなただ転ばせるだけの力じゃなかった気がする。
「……あ、思い出した」
たしか、確率操作だ。手で触れたもの、もしくは視界内にとらえたものが内包している可能性を操作する魔法。今私がめちゃくちゃ足を滑らせているのは、この確率操作のせいだ。ほんの少しでも、ほんの0.001%でもそれが起こる可能性があるならば、それが起こる可能性を99.9%まで引き上げてしまえる。
今はまだ足を滑らせるだけだけど、その魔法をさらに発動させれば、攻撃の命中する可能性を操作することでこちらの攻撃は外れ、あっちの攻撃はどう避けても当たる、なんてことになる。
ここが屋内で、しかも床や壁、天井がかなり頑丈な作りになっているだけまだ幸運だ。もし外だったら、空を見るだけで天候すら操作してくる。未来は未知数であり、そうなる可能性を否定できないが故に、少しのタイムラグはあるが雲一つない空から雨雲を作り出して雨を降らせることまでできてしまう。壁や床が脆ければ、崩壊する可能性を引き出して崩落させてきたりもしただろう。
こいつが操作できないのは、確実に起こらないことだけ。今この瞬間に、何もしていないのに真空ができたり無重力になったりはしない。起こる可能性がゼロなら、それを起こさせることはできない。それが弱点。
もう一つの弱点は、触れたものか、目に見える範囲のものにしか魔法を使えないこと。背後に回り込んでしまえば魔法の影響を受けずに済むし、何か遮蔽物を作るのも手だ。
というか、目に映る範囲という条件がもし無かったらと考えるとゾッとする。今この瞬間に心筋梗塞が起こる可能性はゼロじゃない。そういった病気が起こる可能性を操作して、幾つもの病気を同時に発症させることができるようになってしまうのだ。そんなことできるのかと疑いたくもなるけど、実際前に触れられた時にそうなったから、出来ることには出来るのだ。奴に触れられることだけは絶対に避けなければいけない。
とりあえず、ボスの背後に回ろう。立ち上がるのはもう諦めて、未来跳躍で背後に...
「……っ⁉︎魔力が...暴走...!」
未来跳躍を使おうとしたら、魔力の流れが急におかしくなって不発になる。しかも流れがおかしくなったせいで少し体に痛みが走った。
「これもあの魔法のせい...?」
魔法の発動を妨害された。魔力を見ることはそんなに難しくないはずだから、そこから干渉されたんだろう。そんなことまでできるのか...って驚いてる場合じゃない。未来跳躍を妨害されたから、後ろに回り込めなかった。ボスがゆっくりと近づいてくる。
突破口は二つ。一つは、ボスが触れてくる瞬間を狙って雷装を撃ち込む。ただ、その瞬間にいろんな病気を誘発されるかわからないから、賭けすぎる。
もう一つは、文字通り確実にできる行動だけをして、ボスに攻撃をすること。一切妨害されることのない、100%確実にできる行動。不可能ではない。前にもやったから、やるならこっちだ。
チャンスは一回だけ。ボスがギリギリまで近づいた瞬間に決める...今!
「『寸勁』!」
スキルは以前に行った行動を一寸の狂いもなく完璧に再現する技だ。故に、失敗することはない。足を滑らせることなく発動までの構えに移行し、ボスの胸に拳を撃ち込む。技自体がボスに触れるか触れないかギリギリのラインで発動するものだから、避けられる可能性もゼロ。当然のごとく命中して、壁まで吹っ飛んでいく。
「……ぐっ...!」
心臓が苦しくなる。一瞬だけ触れたあの瞬間に、心筋梗塞が起こる可能性だけ操作されたらしい。前にもされたけど...今はもっと簡単に対処できる。
『雷装』
魔力は血液に乗って全身を駆け巡る。その血液が心臓に繋がる部分だけ塞がれてしまっているわけだが...雷装を魔力とリンクさせ、雷装を動かすことで魔力を動かせば、それに呼応するように血液が動き出して詰まった血栓を押し流す。
本来なら血液が魔力を運ぶところを、反対に魔力が血液を運ばせることで無理矢理詰まりを解消させたのだ。まぁこのままだと別の場所で詰まりを起こす可能性はあるけど...そもそもこの心筋梗塞はボスの魔法で起こったもの。さっきの攻撃で球を潰せているはずだから、魔法は解けているはず。別の場所で詰まる可能性はあるけれど、操作されてない可能性だからほぼ起こらない。無視でいい。
「というかほんと...さっさと終わりにしたいんだけど、まだ死なないわけ?」
ボスは何度も立ち上がってくる。しかも次に使ってくる力は...かなりやばい。あの特徴的な動きだけですぐに思い出せる。
触れたものの機能を一時的に停止させる魔法。さっきの、触れれば心筋梗塞が起こるとか比じゃないくらいやばい。触れられれば一発で心臓や脳の機能が停止する。腕とか足を触れられても、一時的に動かせなくなるから結構致命的だ。触れられる=死と思っていい。
「あれをクミさんも使えたら早いんだけど...!」
あの力のように、ボスを一撃で屠ることのできる魔法...何かあるか?
「……ある!」
ボスを一撃で殺すことができる技が一つだけある!発動条件が難儀なやつだけど、今のボスなら簡単に発動させてくれるはず!
ボスが走って近づいてくる。今回はギリギリまで引きつける必要はない。すぐに必要な魔法を発動させる。
「幻影鏡面...!」
私が後ろに下がると、私の方を向いたままボスの方へと向かっていく黒い人影が現れる。鏡に映したかのような動きをする影を生み出す魔法。最後の大会でも使ったこれには、少々危険な特殊効果がある。
ボスが私の影の心臓に当たる位置に触れ、その機能を停止させる。死亡判定。影の呪いがボスに降りかかる...!
「影を殺したね!タイムリミット一分!影が己を殺すデスマッチの開始だ!」
私の影と、ボスから生まれた影が実体化する。宣言通り、デスマッチ開始だ。
「なに?あの魔法...」
「そうかその手があったか...!」
クミリアの火力は十分なはずなのになかなかボスを倒し切ることができていなくて、負けないけど勝てもしない、そんな膠着状態が続くかと思っていたが、やっと戦況が変わった。
「なんか勝手に納得してる人いるわね...それで、なんなの?あの魔法は」
「ある地点や面を軸にして、自身と対称な動きをする分身を作り出す魔法だ。それで、その分身が殺されると、どちらかが死ぬかクミリアが魔法を解除するまで終わらないデスマッチが始まる」
「デスマッチ...嫌な響きね」
「クミリアは、死んだ自分の分身が完全に自分と重なると死ぬ。対して相手は、自分の分身と戦うことになって、死んだら負け」
能力も姿形も魔力も同じ分身と戦うことになるから、感覚としてはフロートと戦ってるみたいな感じかな。
「完璧な分身だから、もちろん弱点も把握してる。自分の致命的な弱点を自らの技で突かれるわけだ。クミリアが分身と重なるまでの時間は最長一分だけど、それよりも前に終わるだろ多分」
多彩な技に苦しめられたクミリアだけど、その力を利用してボスを倒しにいくとは、考えたな。
「なにしろ、ボスは自分の分身とクミリア、二人の攻撃を凌がなければいけない。クミリア一人の攻撃を受けきれてなかったんだから、二人いればもう終わりだ」
クミリアが自身の分身、影を避けながらボスを殴り飛ばし、飛んでいったボスにその影が魔法を命中させる。無数の光の剣のようなものがボスを貫いたのだ。
その攻撃が核のようなものを貫いたのか、ボスは少しの間ピクピクと指先を動かしたのち、完全に力が抜ける。そしてボロボロと崩れ出した。
それと同時に、ボスの影も消えていく。クミリアの影も一緒だ。ボスが死んだことで、魔法が解除されたのだろう。
それを確認してからクミリアの方を見ると、気持ちよさそうに伸びをしていた。あっという間にリラックスモードだ。切り替え早いな。
「っと、戻ってきたか。お疲れクミリア」
ボスを倒したことで、もといた場所まで戻ってきた。
「いやー疲れたね。かなりキツかった...」
「そりゃそうだろうな。なんかわけわからん魔法何個か飛び出してたように見えたし。クミリアお前、今までどんだけ修羅場をくぐり抜けてきたんだよ」
「まぁ大会連覇してたら、それまでの間に一芸特化で強い奴と戦うことなんてザラにあることだよ。何個か、成り行きで戦った犯罪者も混じってたけど」
「そういうのがおかしいところなんだが...あとクミリア」
「なに?」
「ニアがお前にすっごい色々話あるみたいな顔してるから、付き合ってやれ。何聞かれるかは大体予想がつくけど」
大方、あのボスが使っていた魔法はなんなんだーって感じの内容だろうな。俺も知らない魔法が混じってたし、マジでガネルって魔境だな...魔法についてわかったことはすぐに公表するカイスとは大違いだ。
「ほどほどにしてね。次はニアに戦ってもらわないといけないから」
「だってさ。ライトもこう言ってるし、できるだけ早めに済ませるんだぞニア」
「え、クミさんが話に付き合うのは確定なの?あ、ちょっと引っ張らないでどっか連れてかれる⁉︎」
……ニアに連れてかれるクミリアを見て、なんか既視感があるなと思ったらあれだ。リヒトに襟掴まれて引っ張られた時の記憶を思い出したんだこれ。まさかそんなことで親子なのを感じるとは思いもしなかったぞ...
「首絞まりかけてんぞ引っ張るのやめてやれー」
あんな戦いをした後に味方に首を絞められるなんて、クミリア不憫だな...と思い、無理矢理ニアをクミリアから引き剥がすのだった。
本文中に出てきた確率操作魔法は、ちょっと汎用性高すぎて話が作れず没になった作品の主人公が持っていた能力を、弱体化してリメイクしたものでした。
自分が○○できる能力(手から炎を出すとかテレポートできるとか天気を操れるなどなど)を持っている可能性世界に干渉して、自分もその能力を使うことができるようになる、とかいうチートにしてしまってものの見事に物語が崩壊したんですよね...強すぎる能力ダメ絶対。