前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
ニア回です。
第九十五階層
「やっと私の番ね」
ああ、早く戦いたい。ライトから聞いたボスの攻撃が魅力的すぎて、ものすごい早く戦いたい。
「来たわね...閉所、そして魔法使い同士の戦闘となれば、最初にすることは一つ...!」
ボスも私も、魔力を周囲に撒き散らす。閉所空間にいる時に限り、空気中に魔力が飽和するほどの量を撒き散らすことで、周囲に自分の魔力を漂わせることができる。自分の魔力で満たされていれば、戦闘において何かと有利になる。自分の魔法の質が上がったり、相手の魔法が弱体化したりと、魔法使い同士の戦闘ではかなり重要な技術だ。
「……私の魔力が押し流されて...上書きされた?そういう魔法かしら...」
押し負けてしまった。この空間全てをボスの魔力が包む。
「まぁいいわ。これはこれで戦えないこともないし」
私は他人の魔力を使って魔法を発動させることができる。普段は相手の魔法を魔法拡散で魔力に分解するという工程が必要だったけど、この状況ならその下準備をすることなく魔法を使えるはずだ。
「面白い魔法...色々見せてもらうわよ」
ボスが魔法を発動させる。ボスの周囲に光の球?のようなものが浮きだすけど...一つ一つ別の魔法だし、どれも見たことのない魔法だ。
今回のボスは、クミリアが戦ったボスと同じように、挑戦者の記憶を参照する。けれど、その記憶の使い方は全くの反対。クミリアの時は、以前戦ったことのある人の模倣で、知っているものと戦わされていた。私の場合は、私が知らない魔法をボスが使ってくる。知らないものと戦わされるのだ。
この世には失われた古代の魔法が無数にあると言われている。その失われた魔法を使ってくるのだ。魔法使い、そして魔法の研究者であるならば、こんな機会は垂涎ものだ。
ここに来る前に、クミリアにガネルの冒険者の魔法について色々聞いたのは、その魔法を知識として頭に入れることでこのボスが使ってこないようにするためだ。あの魔法も気になるけど、古代の魔法を観れる方が遥かに価値が高い。現代に使い手がいる魔法なんて観てる場合じゃない。
「なに...あの魔法。複雑すぎるわよ解析が追いつかない...!」
ボスが使ってきた魔法全てに解析魔法を使う。解析では魔法を使うための呪文詠唱や魔法陣まではわからないけど、どんな効果を目的として作られたのかや、どのような要素が混ぜられているかがわかるから、これを知れるだけでもかなりの進歩になるんだけど...
魔法が複雑すぎて解析だけで思考の大半が持ってかれる。カリヤの思考共有を前に受けてなかったら、かなり動きが鈍っていたでしょうね...
「……少し見えたわ。回避をする必要はない...けど」
撃つのにかなりのタメが必要らしく、なかなか撃ってこないおかげで解析が間に合った。閃光と同じような性質を持っているわねこれ。魔力体になっているから、閃光の魔力貫通効果を持ってるなら回避する必要はない。
けれど、魔力体であることは一種の切り札でもあるから、あまり簡単に晒したくはない。回避できるなら回避して、閃光系が効かないことを隠した方がいいだろう。
「……って速っ!」
魔法が発射したと同時にもう私に着弾するくらいの位置まで来ていた。魔法拡散が間に合ったけど...流石に速すぎじゃないかしら?
「で、次は何かしら?」
はっきり言って、訓練自体は消化試合のようなものだ。私の知ってる魔法をボスは使ってこないのだから、魔法拡散をボスが使うことはない。ボスの周囲に魔法拡散を使って魔法を封じて攻撃すれば勝てるのだ。もちろん、私の知らない魔法拡散対策があれば話は別だけど...すぐに終わらせられる算段がついているから、私がここでやるべきは古代の魔法を知ることだけなのだ。ひたすら耐えればそれでいい。
「……っ⁉︎」
瞬きする前後で、視界がガラリと変わっていた。いつのまにか足が地面から離れていて、空中に投げ出されていた。
「転移魔法⁉︎それも魔族の転移とも違う...!」
魔族の使う転移は、魔素と位置を入れ替えているといった印象が強い。転移だけれど、どちらかといえば置換に近い。
けど、今のは違う。感覚でわかるが、完全に一瞬で飛ばされた。人間にはできないとされているゼロ時間移動...シレンの穴のギミックでたまにあったからもしかしたらとは思っていたけれど、やっぱり古代では転移魔法が実在していたのね。
でも、これを解析するのは無理だ。あまりにも一瞬で魔法の効果が終わるから、解析する時間がない。原理一切不明で流すしかない。
それよりも先にこの状況の打破をしないと...このまま落ちたら魔法に撃ち抜かれる予感がする。このまま落ちるくらいなら飛んで空中に止まった方がいいはず...
「重...⁉︎」
飛行魔法を発動して飛ぼうとした瞬間、急に体が重くなって地面に叩きつけられる。
「なんの魔法よ...!」
とりあえず重力魔法だとアタリをつけて、この重さから逃れるためにバフ魔法を自分自身にかけるが...
「さらに重く...そういうことね!」
魔法が私に向かって飛んでくるが、急いで全ての魔法を解除して、その場から飛び退き回避する。
今ボスが使っているのは魔法の効果の反転だ。飛ぶという事象を反転させて落下させ、強化という事象を反転させて弱体化させる。そうやって妨害してきているのだ。
逆にデバフを自分にかければいい...ってわけでもないでしょうね。多分反転は任意発動。反転されて強化されるわけじゃない。解析してある程度対処できるようになるまでは、バフはあまり使わないようにするべきね。
でも解析するには反転魔法を使わせないといけない。反転がどれだけの魔法に効くのかも試さないといけないし、少し攻撃しよう。
「ひとまずオーソドックスに閃光を...!」
ボスの攻撃が飛んでくる中、それらを走って避けながら閃光を撃つ...けど、ボスの魔法と衝突して消えちゃったか。もう一度撃ってボスに当てないと...
「……えっ⁉︎」
今サラッと流そうとしちゃったけど、異変中の異変が起きてる!閃光が魔法と衝突してるのがもうおかしい。魔力でできたものを貫通するという閃光の特性を反転させられて、魔力でできたものしか当たらなくさせられた。多分、この反転をされるとボスも貫通してしまうだろう。利点がなくなって一気に使い物にならなくなった。
「……じゃあこれはどう?」
火球を大量に作り出して、ボスに向けて放つ。これだとどんな反転が起こる?
「っ、そういう反転もあるのね」
今度は移動方向の反転、ボスに向かって撃ったはずの火球が全て私めがけて飛んできた。てっきり高温という要素が反転されると思っていたけれど、そういうこともできるのね。
「でも今ので読めたわ。解析完了よ」
最初にボスが放った魔法に、今攻撃に使っている魔法、いずれも発動までにかなりの時間がかかっている。その理由は、呪文詠唱や魔法陣なんてものがない時代での魔法の発動方法をとっているから。
原初の魔法は、自らの身体を細部まで精密に調整し、周囲の環境も最適なものに整えて行う儀式のようなものをトリガーとして発動していたとされている。例として、前にカリヤが使った音楽による作用が挙げられるが、あのボスはその方法を使って魔法を発動させている。だから発動までが遅い。
けれど、発動までに時間がかかるのなら、どうして反転魔法は私が魔法を使った瞬間に使うことができたのだろう。理由は一つ。あらかじめ魔法を使う準備を終わらせていたから。既に体内部を反転魔法を使うために調節していたのだ。
ならば、解析魔法でボスの身体の中で何が起こっているのかを探れば、反転魔法の使い方を学ぶことができるはずだ。私も反転魔法を使うことができれば、反転されたバフをさらに反転して元に戻す、なんてこともできるはずだ。
「体内条件設定完了。原初魔法...
試しに今ボスが撃ってきた魔法の進行方向を反転させて...やばっ!
「魔力が...⁉︎」
まずい。今の一回だけで全体の半分以上の魔力を持ってかれた。やはり、現代までに継承されずに消えてしまった古代の魔法といったところか。魔法適性が一切受け継がれていないから、一回使うだけでも大変だ。二度目なんて使えたもんじゃない。
「はは、カリヤだったら私より前少ない魔力で使えるんでしょうね...」
私にはない略奪の適性もある程度あるみたいだし、こういった古代の魔法も使えるんじゃないかしら。あとで教えてあげましょうか。一応一回使ったからスキルに登録されてるし。
「ひとまず、別の対策を考えないと...」
魔法改竄で反転を打ち消すことができない以上、別の方法でなんとかする必要がある。今思いついた中で一番手っ取り早いのは、魔力銃でボスを撃つこと。魔法改竄は魔法にしか干渉できないから魔力弾を止められる心配はないし、魔力弾が当たれば原初の魔法の発動に必要な体内条件を乱すことができる。これが一番楽かな...?
「……いや待って?そもそももう使ってこないんじゃ...?」
試しにバフ魔法をかけてみるが...体が重くなる感じはしなかった。
あのボスが使ってくるのは、私が知らない魔法。既に解析完了しており、一度使った魔法改竄はもう使ってこない。これでバフ魔法が使える。魔法を回避するのが楽になるわね。魔力半分以上使った甲斐があった。
「この調子なら...次!どんどん来なさい!」
今ならどんな魔法でも解析できる気がする...いや、そんなことなかったわ。なにこれ。
「なんでサラッと増えてるのよ...!」
突然虚空からボスがもう一体現れた。何かの魔法を使ったんだろうけど、これはなに?
「分身...じゃない?両方生身で本物⁉︎」
新手の方に解析魔法を使ってみたけど、わかったのはボス本人ということだけ。分身じゃなくて分裂?でも、予備動作無しに何もないところから現れたのよねぇ...
「ああもう攻撃激しい!」
ボスが二体に増えたせいで飛んでくる魔法の量がさっきまでの比じゃない。後から出てきた方が、まるで元からいた方がこれからどう動くかを知ってるかのような攻撃をしてくるのが厄介すぎる。連携がバッチリだから避けるので精一杯。とても思考にリソースを割く余裕はない。
バフ魔法で加速し、魔法拡散で的確に魔法を分解ながら走り続ける。分解した魔力でさらに魔法拡散を展開し、同時に魔法を撃ち込んでボスの魔法と相殺させる。
二人に増える魔法なんて、そう長く続けられるものじゃない...はず。今はひたすら耐えて、一人に戻るのを待つ!
「……っ!」
解析魔法が、元からいた方のボスの体内で、魔力が動くのを感知する。今撃ってる魔法を止めて、別の魔法を使うつもりのようだ。一体何の魔法が来るの...!
魔法を撃ってくるのが片方だけになったので、新たな魔法を使ってくるボスに注視する。どんな魔法が来ても対処できるように、魔法拡散と未来跳躍の発動準備をしておいて...
「……え?」
ボスが消えた。ボスの準備が終わって、魔法が発動した瞬間に跡形もなく消えてしまった。転移や透明化を疑ってみるけど...その消えた場所が、さっき新手の方が現れた場所だったことに気づき、魔法の正体を見抜く。
「未来跳躍ならぬ、過去跳躍ってわけね...!」
今ボスが使ったのは、過去に飛ぶ魔法だ。この瞬間に発動したわけだから、さっき現れた瞬間、魔法を発動する予備動作がなかったのも納得だ。元いた方の動きを知ってるかのような動きができたのも、一度自分が経験した動きなのだから当然だ。
……と、理屈ではわかるのだけれど、人を過去に飛ばすってどういうことよ。未来へ飛ばすのは簡単だ。一時的にこの空間から別の次元に飛ばしてしまえばいい。でも、過去に飛ばすってなによ。どういう理屈でそれが成り立っているのかまるでわからないわね。
別に、時間を巻き戻したりするのは普通にできるのよ。逆行再生とか物質逆行とかあるわけだしね。けどそれらは、物の時間を巻き戻しているだけで、その物自体は今の時間軸に残っている。発動した瞬間に、その時空から一生消え去るなんてわけがわからない。
「過去に飛ぶとか矛盾が発生して発動すらできないってことになるはずなのに...ん?」
あれ?今思ったけど、意外と過去に干渉するやつ普通にある?今はステラちゃんが持ってる指輪は、攻撃が当たったという事実を過去改変で無かったことにするし、カリヤやライトがたまに使う色彩剣装って魔法の中に、未来から過去に斬撃を飛ばすなんてものがあったはず。そう考えると、意外とあるわね...
たしか色彩剣装の場合、黒い光を纏わせている状態でここに斬撃を放ちたいと思うだけで放つことができて、後から辻褄合わせをすればいいんだったか。その理屈をこれにも当てはめるとするなら...
未来から呼びたいと思うだけで、未来から自分を呼び出せる。呼び出した自分は未来の自分だから、これから自分がどんな動きをするのかを知っていて、それに合わせた攻撃をする。そして任意のタイミングで過去跳躍の魔法を発動して過去に飛ぶ。
多分過去に飛んだら、体は自分の意思とは関係なく動くはず。自分が見た未来の自分の動きをそっくりそのままなぞるはずだ。そうして過去跳躍を発動したタイミングまで動き続け、一人が過去に飛ぶタイミングで普通に動けるようになる。
「こんなところでどうよ!」
もしこの推測があっていれば、ボスはもう過去跳躍を使ってこないはず。発動に必要な体内調整もあらかたわかってるから、いけるはず...
「……くっ、まだ足りないの...?」
またしてもボスがもう一人現れる...いや、もう一人出てきた。合計三人だ。未来から呼べる人数に制限はないのかしら...?
……この推測でもまだダメか。あと何が足りない?実際に使ってみれば早いだろうけど、魔力の消費がどれくらいかわからないから無闇に使えない。理解するだけでいいはずだから、もう少し足りない情報を得ることができれば...!
「……怪我してる?」
現れた二人のボスの右肩に、浅くはあるが抉り取られたような傷があった。未来から来てるわけだし、未来で負った傷?...もしかして。
「そうだとしたら...よし、推測を確定に変える...!」
カリヤから聞いた話の中で、少し気になっていたことがあった。もしかしたら、それがこれにも関係しているかもしれない。そう考えて、絶対に回避できないくらいの量の魔法を、元からいた一人に向けて放つ。
最善の動きをすれば、ギリギリ全弾回避できなくもない...そういう想定で放った魔法だったが、ボスは避けようともしなかった。
全ての魔法が私の制御を外れ、急に九十度方向転換して外れる。だが、そのうちの一つだけ、ボスの肩を擦って抉り取る。
やはりそうだ。カリヤから聞いていたのは、未来からの斬撃の辻褄合わせが完了してない場合、剣を手放すことにつながる行動全てが成功しなくる。殺したりとか、剣を奪い取るといった行動を封じられるのだ。
それを過去跳躍に当てはめると、未来の自分が負っている傷は必ず受けることになる。その代わり、未来の自分が傷を負っていない場合、どんな攻撃も効かないことが確定する。そんなところだろう。
……うん、正解みたいね。今の思考をしている最中、二人が少しの時間差を置いて過去へと飛んでいった。私が過去跳躍を理解すると、ボスはその魔法を使えなくなる。だから最後まで思考する前に過去跳躍を発動させて、辻褄合わせをするしかなかったのだ。
「よし、次の魔法を...?」
ボスの動きが変わった。原初の魔法には、武術にカテゴライズされるものも多く含まれている。カリヤとクミリアがたまに使う、反撃流とやらがそれに当たる。そういったやつを知れるのは嬉しいけど、体術の方だからできれば魔法系の方を使って欲しいよなと思ってしまう。
けど、今回のはその体術系原初の魔法の中でも異質だ。体内調整がほぼ一瞬で終わっていた。必要なのは体の動き?でも、こんな簡単な動きで発動するなら現代まで継承されてるはずだ。
ボスは弓を引くような体勢をとっていた。
急いで魔力を見る視界に切り替えるけど...魔力の弓矢を持ってるわけじゃないわね。でも...絶対に何かヤバい!
地面を蹴って、射線上から逃れようとする。が、完全に逃れる前にボスの右手が動いた。
次の瞬間には、私の左肩が消し飛んでいた。
「は...ハァ⁉︎」
肩が丸ごと消し飛んだせいで、左腕が落ちる。すぐに魔力に戻して回収したから、消耗は肩の分の魔力だけで済んだけど...今、何が飛んできた?
いや違う。何かが飛んできたんじゃない。無が飛んできた、これが一番表現として正しい。直線的に飛んできたそれは、その軌道上に漂っていた空気や魔力、魔素すらも消しとばしていた。触れたものを全て無に変換する矢。多分、どんな防御も通用しない。魔法拡散の結界すら消滅させて突き進むだろう。
魔力体でよかった。もしこれを生身のまま受けていたら、消し飛ばされた部位を治すことがほぼ不可能に近かった。ダメージ無く、今の攻撃を凌げてよかった。
「……まだまだ撃ってくるとか聞いてない...!」
二射目を放つためにボスが構え始めたので、急いで走って射線上から逃れる。片腕が消えてバランスが悪くなったせいで走りづらいけど、今治すほどの魔力の余裕はない。もう魔法を解析するのもやめにして、ボスを仕留めることに集中する。
これは予想だけど、生半可な魔法ではボスを殺し切ることはできない。防御に特化した原初の魔法を使われたら、ほとんどの魔法が効かなくなるだろう。この弓矢を使っている間はその魔法を使うことはできないはずだから、今のうちに仕留めれば勝てる。
「でもそれじゃ面白くない!」
完璧な防御を貫いてこそだ。無防備な相手を殺した、でこの訓練を乗り越えたことにはしたくない。
「そんな弓矢しまいなさい!」
魔力銃を抜いてボスに撃ち込む。魔力が体内調整を乱し、弓矢の原初の魔法を妨害する。
「今から攻撃するわよ。しっっかり防御しなさい!」
魔力体を解除し、生身に戻る。魔力を注ぎ込み、私はある魔法を発動させる。
思惑通り、ボスは何かしらの魔法を使ってきた。けど、予想はついている。あの魔法は、己が知っている魔法を無効化する防御魔法。文献に存在だけ示唆されていたのを見たことがある。ここのボスは古代に存在していた全ての魔法を知っているはずだから、古代の魔法も現代に残っている魔法も全て無効化してくるだろう。
だから、奴に攻撃できるのは、古代には存在しなかった魔法しかない。現代にて新たに作り出された魔法しか通用しない。
故に、落雷魔法は効くはずだ。雷装の存在と、カリヤの天の怒りについての知識があって初めて作り出されたこの魔法は、おそらく古代には存在しなかったはず。
でも、今使うのはそれじゃない。
「いろんな魔法を見せてくれたお礼よ」
発動させたのは、空気を操る魔法。空気中に漂うボスの魔力も利用し、新たに空気を生成しながら一点に圧縮していく。
カリヤが言うには、天の怒りや炎は一つの同じ現象・状態として説明ができるらしい。固体・液体・気体の三態の枠を超えた、もう一つの物質状態。
空気を圧縮し続けることでその温度を数千℃以上に跳ね上げさせ、その状態を作り出す。この技を、この現象を、カリヤはこう呼んだ。
「味わいなさい!プラズマ!!!」
圧縮した力を解放し、指向性を与えて射出する。
先ほどのボスの矢が、触れたものを無に変換したように、プラズマが触れたものは一瞬で気化、もしくはプラズマ化する。そして体積が膨張し爆ぜる。
その影響か、力を解放した瞬間に周囲のものが丸ごと吹き飛んだ。私にまで暴風が襲い、後ろに吹き飛ばされる。
「きゃっ!...いった」
壁に背中をぶつけた。が、その痛みはさっさと忘れてボスがいた方を見る。どうなった...?
「……あ、戻ってきた」
倒した姿を確認することはできなかったが、ボスが死んだのだろう、元の空間まで戻ってきた。
「どうなったか確認してからにして欲しかったわね...どれだけ威力があったのかわからないじゃない」
「サラッとエグい攻撃してくれてんなおい...前にボソッと呟いたくらいの話から新技作るのやめてくれません?」
カリヤたちが近づいてくる。
「そりゃあんな話聞いたらやってみたくなるじゃない」
「アニメの話だったんだがな...まさか本当にやるとは」
「そのあにめってのがなんなのかわからないけれど、まぁプラズマは封印ね。威力が高すぎてみんな巻き込んじゃう」
「だな、あんま使うなって言おうと思ってた」
せっかくの新技だから勿体無いけど、仕方ない。
「その代わりいくつか魔法を覚えたし、収支は完全にプラスね。あとでみんなに教えるわ」
「使えるかどうかは微妙だろうけどな。適性ないだろうし」
「どうせカリヤは使えるわよ」
どうせカリヤはある程度の適性を持ってるんだ。これだとほとんどカリヤのために原初の魔法を解明したようなものね。
「え?なんで?」
「あ、そうそう。魔力ほぼ使い果たしたから帰りはカリヤお願いね」
「ちょっ、質問に答えてくれませんかねぇ!」
せっかく知ることのできた魔法が私にはほとんど使えないという、魔法使いであり研究者なら誰でも一度は感じるであろう悲しみを抱きながら、私はカリヤを適当にあしらうのだった。
ラストのプラズマ云々は誰がどう見ても分かる通り、どこぞの第一位さんの攻撃ですね。
一回やってみたかったんよなぁ...元々はニアの落雷魔法は登場しないでこっちを出す予定だったけど、精霊と絡められるからと設定変更して落雷になったんですよね。
ガチで物理や化学を専攻してる人には、プラズマってこれおかしいだろと言われるかもしれないけど、魔力がある世界だとこうなるってことで...
次回は先送りにしていた魔族階層再戦です。