前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
魔族との戦闘。
カリヤくんが本気出します。
第六十七階層
五人がそれぞれ一人ずつボスと戦った次の日、俺たちは雪辱を果たすために、この階層へと戻ってきていた。
「あの日から新たにわかったことは二つ。フロートが模倣した能力を手放すことで分身を作り出せること。もう一つは、魔素操作の魔族が雷を使えることだ」
俺たちの知識、認識が生み出される魔族の強さに影響するため、前回よりも強い魔族と戦うことになる。が、俺たちも強くなっている。負けるつもりはない。
「魔素操作の方はクミさんが戦うってことでいいんだよね?」
「ああ。また俺はアクセルにかかりっきりになるからな。雷の対処は任せたぞ」
「りょーかい!」
「フロートはどうする?分身とか絶対厄介だと思うけど」
「そんなん前みたいに初っ端殺すんだから関係ないだろ。どうせフロートが死んだら分身も消えるだろうし」
ただの魔法じゃなくて魂に刻まれた能力だから、死ねば解除されるはずだ。仮にこれが間違いだったとしても、そう思ってる限りこの場ではこれが真実になる。
「ってなわけでほとんどやることは前と変わらん。舐めプせずになるべくさっさとアクセル倒してそっちに合流するつもりだから、頑張って耐えてくれ」
「突っ込まないわよ」
……今の一瞬で俺がみんなに言わせたかったことを理解してそれ言えるのどゆこと?カリヤが来る前に倒してやるわよ的なことを言わせるために頑張って耐えろって言ったんだが...なんか一手先を行かれてる気分だ。
「カリヤが来る前に終わらせちゃうもんねー」
「ねー」
そしてそんなニアとは裏腹に、完璧に俺の思惑に乗るステラとクミリア。思考の誘導が簡単すぎる...ちょっと心配になるな。
「んじゃ最終確認は終わりだ。ライト、準備はいいな?」
「うん、いつでも切れるよ」
「よし、行こう。リベンジ開始だ」
魔族たちの待つ部屋の扉を開ける。
それと同時に、前回と同じように巨大な火球が飛んでくる。が、俺たちは飛んでくることを予想していた。ニアが魔法拡散で火球を分解する前に、俺とライトは全力疾走を発動させて火球の着弾地点から離脱する。
そのままフロートのいる場所まで二人で走る。何体か既に分身が作られていたけれど、フロートが増えたわけではない。狙うべき相手は一人だけだ。
9931ページ 略奪
フロートに対して略奪を発動し、固有能力を引っ張る...お、分身消えた。ラッキーだな。もうほとんど関係ないけど。
ライトの持つ、勇者のバフは以前よりも強くなっている。今回はアクセルが反応するよりも前にその首を切り飛ばした。
『……な...なっ⁉︎』
転移の魔族が驚きの声をあげる。あいつら目線だと、これが初の戦闘だ。前回フロートが瞬殺された記憶なんてない。あったらあったで、前よりも早く死んだことに驚くことになりそうだが。
「んじゃ、アクセル殺し合いしようか」
ライトが姉妹の魔族の方に向かったのを見送ってから、アクセルの方を向く。
「まさか...こうも一瞬でフロートが死ぬなんてね」
「頑張んないとお前もこうなるぞ?今回は遊ぶつもりはない。最高火力で殺してやるよ」
刀を抜き、いくつかスキルと魔法を発動させる。
4571ページ 黒のみ 触手・水
『雷装』
『色彩剣装 無彩・黒』
背中から水の触手を九本生やし、魔力とリンクさせた雷装で剣の形に整える。そして刀に黒い光を纏わせる。触手の剣にも色彩剣装を使えたらよかったんだが...これでも過剰威力だから別にいいか。
「蹂躙開始だ」
触手を操り、四方八方からアクセルに攻撃を仕掛ける。それと同時に未来から斬撃を送り込みクミリアに浅くはあるが傷をつける。この斬撃はあまり威力出ないから、追い詰めるために使うべきだな。これでうまく追い詰めて、触手の剣を当てないと...実際、今の触手攻撃は全て避けられてしまったからな。
「ほーれ避けろ避けろ」
自身も刀を振って未来からの斬撃の辻褄合わせをしながら触手の剣を振り回す。これをしているだけで、アクセルは俺に近づくことが出来ずにいる。
半径六メートル。速度操作の範囲内で水の触手は暴れ回る。アクセルの雷装発動中の最高速度は大体マッハ1.8。六メートルに入ってから俺のいる場所に辿り着くまでおよそ0.01秒。ほんの一瞬だが、それでも触手なら二回は切れる。それがわかっているからアクセルは近づけない。
激しく動き回るアクセルとは対照的に、俺はアクセルのいる方へゆっくり歩いて近づく。ゆっくり近づきながら、未来から斬撃を送り込み、辻褄合わせをして、少しずつアクセルに傷をつけていく。
「このままだとジリ貧だ。お前もスタミナゴリゴリ減ってんだろ?あんま無理せずサクッと死んでくれ」
お互いに雷装を発動しているが、動きまくってるアクセルの方がスタミナを使っている。近づかれないからスタミナ減少速度加速はできていないが、時期に限界が来るはずだ。
「こんな一方的な戦いをするなんてカリヤらしくないな。楽しくないよ」
「遊ぶつもりはないと言ったはずだ。楽しくないとか何言ってんだ?」
「この前君の憂さ晴らしに付き合ってあげただろう?今度は私に付き合ってくれてもいいじゃないか」
「殺し合いの場で何言ってるんだか...あと、だ」
アクセルを睨みつけながら言う。
「お前、本物のアクセルならこれ普通に突破できんだよ」
「……本物とはどういう意味だ?」
あー、自分は作られたものだということを知らないんだな。
「お前は俺が知ってるアクセルだ。あのアクセルとは違う」
「言ってる意味がまるでわからないのだが」
「お前は俺が知ってる動きしかしてこない。できるとわかってることしかしてこないんだ。前回は他の魔族に邪魔されて負けたが...タイマンなら必ず勝てる」
「だから前回だとか今回ってのはなんなんだ...何を言ってるんだ君は!」
「本物のアクセルなら必ずこの局面を突破できる。俺の知らないあいつは絶対マッハ2を超えてるだろうし、もっと奇抜な攻撃をしてくるはずだ。平気な顔で突破して俺に一撃加えてくるだろう」
俺の中のアクセルに対する期待はここまで膨れ上がっている。実際にアクセルがここまでできるかわからないから、目の前のこいつには反映されてないようだが。
「で?突っ込むこともせず怯えてグルグルと走り回ってるお前は、一体何ができんだ?」
そう言いながら全ての触手を俺の後ろ側に引き戻す。
「ほら、攻撃してきなよ。見ての通り無防備だ」
「……罠?」
「さぁな。だが、楽しさを得たいのなら突っ込んでくるといい」
「……なら、思惑に乗ってやるとしよう」
アクセルが雷装を全開にする。仮に触手の攻撃を受けても、雷装攻撃の影響を最小限に抑えるためだろう。この触手の剣自体に切断能力はあまりない。電気による切断が主な攻撃だから、あの対処は正しい。上手くやれば、触手を乱すこともできるだろう。
でも、そもそもその土俵に立つことすらこいつはできないんだよなぁ...
アクセルは走り出す。が、半径六メートルに入った途端にその動きが鈍り、そのまま喉と口のあたりを押さえてうずくまる。
「はい、いっちょ上がり」
「……っ!」
「どうだ?苦しいだろ?もっと早く近づいてたら、こうはならなかったんだぜ?」
俺がゆっくり歩いていたのは、スタミナの消費を抑えるため...だけじゃない。
「マイナス何℃まで行ってんだろうな...180まで行ってないのは確かだな。そこまで行ってたら液体酸素ができてるはずだし」
空気の熱運動の減速。ゆっくり歩きつつ、減速した空気が能力範囲外に出ないようにうまい具合に触手で留めながら二分ほどやっていれば、マイナス100℃以下まで温度を下げることができる。
そんな空気をアクセルは吸い込んだのだから、肺や喉に相当なダメージを負ったはずだ。マイナス100℃の中だと、数回呼吸をするだけで肺から出血して即死するらしい。魔族の肺がどれだけ強いかはわからないが、もっと低い温度なわけだし一回でも相当辛いはずだ。激しく動いていたから、より多くの空気を吸い込んだだろうしな。
そして、極低温の空気がアクセルから体温を奪う。しかも、すぐに能力で冷やされるから体温で空気が温まることもない。永遠と体温を奪い続ける。
「ここまで近づければまだ勝機はあるぜ?」
俺がこんな極低温の中でも動けているのは、自分の周囲だけ速度操作を解除しているため。温度を下げるのには時間がかかるが、元に戻すのは一瞬だ。俺に触れる空気、吸い込む空気だけ元に戻せば普通に動くことができる。自分の技で自滅するわけないだろ?
「まぁ無理か。そんなんできたら既にやってるよな」
納刀して構える。
「ああ、まだ勝機がないわけじゃないか。お仲間が助けてくれるっつー可能性があったな」
そういや、今回まだ一回も転移攻撃してきてないな。魔法のサポートもなかった。サポートできるほどの余裕がないってことか?それだけみんなが頑張ってくれてるということたろう。
「まっ、既に対処済みなんだがな」
背中側に触手を展開しているため、魔法が飛んできてもガードできる。前回みたく俺の触手を利用して攻撃しようとしてきても、雷装で形を固定しているから未然に防ぐことができる。仮にこっちを攻撃する余裕があったとしても、アクセルを支援することはできない。
「ってなわけで...さっさと消えてくれ、偽物」
アクセルに向けて、音速の抜刀を放った。
「タイミングずらされた!クミリアもう一回!」
「はいよ!」
既に何回か殺せてはいるのだが、同時に殺すという条件を満たすことができず、その度に蘇生されてしまっている。タイミングさえ合えば...!
『チッ...うざったい!』
魔素操作の魔族が私の魔法を高速飛行で避けながら叫ぶ。
『……うぶっ⁉︎』
そんな魔族の肩にステラちゃんの矢が刺さる。発光している魔法を避けていたため、その影に隠れるように放たれた矢に気づけなかったのだ。
そして矢を受けて飛行速度が遅くなったところに魔法が突き刺さり、四肢をもぎ取っていく。即死はしない程度に調整はした。あとはクミリアに合わせてトドメを刺すだけ...
「ああもうすぐ自殺する!」
クミリアが転移の魔族を殺すのが少し遅れ、先に魔法での自殺を許してしまった。魔族はすぐに再生して、また飛び始める。
「ごめん流石にもう対応されちゃったみたい!」
「流石にそうなるわよね...最初の作戦に戻すわよ!」
「りょーかい!」
今度は私が転移の魔族に攻撃を始める。元々の作戦だと私が転移の魔族と戦うはずだったのだが、偶然の発見で一時的に役割を入れ替えていたのだ。
その発見というのは、クミリアが魔族の障壁を突破できるというもの。あの二体が使う障壁は閃光すら受け止めるものであり、どうやっても突破できないものだと思っていたけれど、どうやら魔力とリンクした雷装を使えば障壁を無理矢理こじ開けることができるらしい。
……はっきり言ってなんでできるのかわけがわからないのだけれど、突破できるのならと転移の魔族をクミリアに任せることにした。元々の作戦だとチャンスは一回しかなかったから、入れ替えてよかっただろう。失敗したけど、数回もチャレンジできたわけだしね...クミリアが言うには対応されてしまったみたいだけど、どう対応したのか是非とも教えてもらいたい。
というか、あんまり電流攻撃してこなかったわね。クミリアが魔素操作の魔族と戦うことになっていた元々の理由は、雷装のおかげで電流攻撃を防げるからだった。あんまり近づかれることもなかったし、常に魔法で攻撃していたから使う暇がなかったのかしら。
『交代?ですが、なにをしたって無駄ですよ。この障壁はもう突破できない』
転移の魔族がそんなことを言うけれど、魔法拡散があるから突破自体は結構簡単よね?...いや、雷装でこじ開けられないほどの魔力密度だとすると、もしかしたら魔法拡散を使っても魔力が残留して壁になるかも。流石に魔法拡散があることを見越しての発言のはずよね。
……あと、無駄かどうかは私たちが決めることよね?
「ライト!やってしまいなさい!」
「うん...切れるよ」
ライトの聖剣に黒い光が纏わり付き、その直後に転移の魔族の腕に浅くはあるが傷をつける。
『なっ...これは⁉︎』
「未来からの斬撃が成功した時点で、私がこの障壁を突破する、あるいはあんたがそれを解除せざるを得ない状況になることが確定した。何をしたって無駄...とはならないみたいねぇ?」
と、魔族に向かって煽りながら念話をライトに使う。
『それで直接首を切り落とすことはできないの?』
『無理。普通に切るよりもだいぶ切れ味が落ちちゃってるから、切断まではできない。切り傷を大量に入れて失血死させるのはできるかもだけど...多分再生の方が早い』
『わかったわ。未来の確約だけ頼むわよ』
『了解』
ライトとの会話を終えると、今度はすぐにレストに念話をかける。
『ライト、魔力はどれくらい溜まった?』
レストはずっと、下まで飛んでくる魔法の流れ弾を盾で吸収し続けていた。カウンターをするためではない。とある目的のために、魔力を集めていたのだ。
『もうそろそろで限界かな。あともう少し溜められると思うけど』
『じゃあもうそろそろ使うわ。準備してなさい』
『わかった』
私にもあの鉄壁の障壁を破る方法が、一つだけある。ただ、大量に魔力を使うため、出来て二回。魔力を使うタイミングがその後にも一度あるため、できれば一回で終わりにしたいところだ。
魔力は十分集まった。一つは、魔法拡散で最初の火球やその後数多く飛んできた魔法を分解したことによる魔力。既に結晶化させていつでも使えるようにしてある。
もう一つは、レストが吸収蓄積した魔力。本来なら蓄積した魔力はレスト自身にしか使えないけれど、魔法拡散を使ってもう一度分解することで私にも使えるようになるのだ。普通魔道具は無効化されないはずだけど、どうやら魔力結晶の保存効果にまで魔道具の力が及んでいるわけではないらしい。ただの魔法によるものなのね。
「さっきあんた、何をしても無駄とか言ったわよね?」
『ええ。ですがそれが何か?』
「撤回した方がいいね。今からその障壁、破るから」
レストの近くまで行き、魔法拡散で魔力結晶を分解する。そして集めた魔力と私自身の魔力を少し使って...!
「
障壁の、攻撃から内側にいる人たちを守るという要素を、内側にいる人たちを障壁自らが害するように反転させる。
次の瞬間、障壁が魔族に牙を剥き、目に見えない攻撃を与え始める。おそらく、空気の加圧や圧縮といった攻撃だろう。このままいけば押し潰して殺せるはずだ。
『こ、これは...何の魔法...⁉︎』
「ぶっ潰れなさい!」
『転移が組め、な...』
腕がひしゃげ、脚が曲がってはいけない方へと曲がる。再生してもすぐに折れ曲がる。それほどの圧縮攻撃。おそらく、普通の障壁だったならばここまでの威力にはならなかったはずだ。固有能力で強化し、文字通り鉄壁になっていたからこそ、反転した時の威力が上がっているのだ。
『こうなったら...!』
何が自分を攻撃してきているのに気づいたのか、それともただその場から離れようとしただけなのかはわからないけど、魔族は障壁を消して逃げ出す。
『タイミング合わせるわよクミリア!ライト!』
『いつでも行けるよ!』
『ここで決める...!』
転移の魔族が障壁を張っていないこの瞬間。この瞬間にしか同時に殺すことはできない。
残る障害は転移による回避のみ。それを私が封じ、二人が同時に仕留める。
私が失敗すれば、全て終わりだ...!
「その力...剥ぎ取る!奪え『略奪』!」
魔力体を解除して魔力を補給。ほんの少しの魔力を残して略奪の魔法陣に全て注ぎ込む。
奪うは魔族の固有能力。転移能力を引っ張って魂を掴み取り、行動不能にさせる。
「……なっ...」
略奪が不発に終わった。魔力が足りなかったわけではない。魔法陣は正常だし、不発になる要因はどこにもない。なのに、なぜか固有能力が掴めない。
既にクミリアとライトは動き出していた。二人は私が失敗したことに気づかないまま、それぞれ攻撃を仕掛ける。
けれど、同時に殺すことは叶わない。クミリアは背後に転移した魔素操作の魔族の蹴りを喰らい、ライトは転移の魔族の首を切ることに成功するも、すぐに再生した魔族の魔法の直撃をもらってしまう。
私のせいだ。私が何かミスをしたんだ。そうとしか考えられない。
挽回しないといけない。だけど、魔力がもうほとんど残ってない。この量でできる攻撃なんて簡単に避けられてしまう。
どうにもならない。私には、何もできない...
「諦めないで」
「っ!」
目の前まで迫ってきていた魔法。それを受け止めながら、レストは言う。
「まだ戦いの途中だよニア。ほら見てみなよ。二人はまだ戦ってる」
そう言われて見てみると、クミリアは少し背中を痛がりながらも魔族と格闘を続けていた。ライトも、自身に回復魔法をかけながら地面を駆け巡り、飛んでくる魔法を切り裂きながら攻撃の隙を窺っていた。
まだ二人とも、諦めてはいない。
「でも、もう私には魔力が...」
「魔力は僕が作る。ちょっと時間かかるかもだけど...待ってて」
レストが魔法を吸収するために、魔法攻撃を受けているライトの方に向かって走っていく。
「レ、レスト...!」
「魔力なら私のもの使ってよ!大量に余ってるから遠慮しないで持ってって!」
ステラちゃんが近くに降りてきて、そんなことを言う。
「……あれ?もしかして人の魔力をあげるとかってできない?」
「……いや、一応できるわ」
魔力の回復が使い切るまで止まるデメリットはあるけれど、どうせここに居たら自然回復しないのだから、そんなデメリットないも同然だ。
「じゃあありがたく貰うわよステラちゃん!」
ステラの背中に触れて、その魔力を私に流し込む。異物が身体の中に入る感覚。ステラちゃんの力が私に溶け込む感覚。力が漲る感覚。それらを感じながら、魔力を満たしていく。
「ありがとう。これでまだ戦える...!」
ステラちゃんがしばらく飛べるほどの魔力を残しながら吸収を終えると、大体六割近くの魔力を補給することができた。
「もう一度略奪する?」
ステラちゃんが次どうするかを聞いてくる。略奪...あと少し魔力があれば一応使えなくはない。レストが吸収してきた魔力を使えば発動することはできるだろう。
「……また失敗しても困るわ。ここは別の方法で...今考えるわ」
リスクが大きすぎる。一度失敗したし、まだ思い浮かばないけどここは別の手を打つべき...
「そいつは違うな」
「カリヤ⁉︎アクセルを倒してきたの⁉︎」
カリヤが合流してきたなら、もっといろんな手を使うことができる。それこそ無数の手が...でも。
「違うって、何がよ」
「略奪を使わない別の手を考えるってのが間違いだ。対魔族の最適は略奪だぜ」
「で、でもさっきやったら失敗したわよ。魔力の無駄に...」
「そいつはタイミングが悪かっただけだ。略奪は基本的に、対象がその瞬間に一番頼りにした武器を奪い取る。あいつは直前、障壁の反転攻撃で一時的に転移が使えなくなっていた。おそらく、略奪を使った瞬間、あいつはすぐに使えるかわからない転移よりも先に、障壁を再展開することを考えたはずだ」
「だから...何も奪えなかった?」
確かに、そうだとすれば説明はつく。あの転移の魔族は、アクセルやフロートと違い、戦闘は普通の魔法を使っている。略奪で転移を奪える瞬間がそもそもあまりないのだ。あの瞬間、魔族は障壁を展開しようとしたのかもしれない。もしかしたら体の再生を優先したかもしれない。もしかしたら、自害で死のタイミングをずらそうとしたかもしれない。
いずれにしても、転移を奪うことには繋がらない。私が使ったことがある魔法が対象になったから、奪うことも出来ず魔力だけ消費した。それがあの時起こった事実だ。
「でも...ならどうやって転移を奪うのよ」
「答えは簡単だ。無意識のうちに転移を意識させてやればいい。暗示でもなんでもいい。元の使用者はそうして狙ったものを奪っていた」
「転移を...意識させる...」
「難しそうなら魔素操作の方をやってやれ。あいつの方はいつでも奪えるだろう。転移は俺が奪う」
「いや、私が転移を奪うわ。カリヤはあっちを」
「りょーかい」
カリヤが魔素操作の魔族の方に向かって走っていく。
「ニア!」
と、それと同時にレストが戻ってくる。
「これだけあれば...足りる?」
「ええ、十分よ」
魔法拡散でレストの魔力結晶を分解する。
『みんな、準備はいい?』
勇者パーティーの念話回線に指示を送り込む。
『クミさんはいつでもオーケーだよ!』
『今度こそ決める...!』
『タイミングはこっちが合わせる。合図なしで好きなタイミングでやってくれ。同時に叩き込む』
相変わらず、カリヤは頼もしいわね...よし、あとは最後の準備だけ。それを終えた瞬間に、略奪を使う!
念話回線を変更。以前の戦いで既に掴んでいる、魔族の念話回線に割り込み、声を魔法で似せて...!
『転移お願い!まず一人片付ける!』
『わかりました、姉さん』
『ちょっ、今の私じゃない...!』
今!
「『略奪』!!」
魔力が魔法陣に流れ込み、略奪が発動する。
……今度こそ、固有能力に手が届く。
『『ぐっ...⁉︎』』
魔族二体が胸を押さえて苦しみだす。
そしてその次の瞬間には、ライトの聖剣が転移の首を刎ね、クミリアの拳が魔素操作の心臓を貫いていた。
魔族四体、討伐完了。
第六十七階層、攻略成功。
カリヤくんが本気出したらあんな感じになるけど、まだ全力は出してないんですよね...全力出したら、使える魔法全てを同時に使い出し、楔を打ち込んで能力の上限上げて戦いますからね。
今でも普通に強いのに、一応まだ先があるという...強すぎて話が作れねぇ⁉︎
普段の戦闘がどうしても舐めプになってしまう...ちょっと強くしすぎたか?
あと、前回に引き続きフロートが即死してますけど、全員とも本番はこうはいかないはずなんで、いつになるかはわからないですが期待していてください。
次回は...多分もう百階層に行っちゃうかも?
そんな次回ですが、テスト一週間前なので毎度のごとく休みに入ります。
次回投稿は12月12日木曜日です。
お楽しみに!