前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8021字。

テスト終わったので投稿再開です。

ついに百まで来ました...はい、九十六〜九十九は完全カットになります。
魔族倒すところがちょうどいい区切りだったんでね、しょうがないね。


過去を振り返る(強制)

第百階層

 

「ついに...ここまで来たな」

 

「だね」

 

第百階層。このシレンの穴における、最終ダンジョンだ。

 

ここまで長かった。日数にしてみれば一ヶ月経ったか経たないかぐらいだったけれど、積み重ねた戦闘経験が日付間隔を狂わせる。

 

みんなものすごく成長した。ステラとレストは他のみんなと比べると大きな成長とまでは言えないかもしれないが、それは比べる対象がおかしいだけで、世間一般の人間が一ヶ月で鍛えられる力を遥かに上回っている。全員が全員、飛躍的に成長することができた。

 

ここを突破すれば、魔王討伐への準備がほぼ完了したことになる。本当に魔王を倒せるのか...未だに心配ではあるが、その心配を忘れず、油断しないで挑もう。大丈夫だ。俺たちは魔王に打ち勝てる。もちろん、あの四人の魔族たちにもだ。

 

……あれ?なんでこんな思い出に浸ってんだ?油断しまくりじゃないか今魔物に襲われたらどうする。攻略するよりも前に、突破後の考えを巡らせるとか死亡フラグの一種だぞ。何やってんだ俺。

 

「そういや、ここはどんなダンジョンなんだ?最後の階層だし、さぞかし強いボスが待ってるんだろうなぁ?」

 

「あ、戦闘はないよ」

 

「……なんて?」

 

「魔物出てこないの?ボスも?」

 

「うん」

 

「じゃあこのダンジョンはなんなんだ?戦闘がないってんなら何をするところなんだよ」

 

「簡単に言えば、記憶の定着だね。このダンジョンで覚えたことを忘れないように、体に染み込ませるんだ。さっきから、気がついたら過去を振り返ってることない?」

 

「ああ、だからこうなってるのね...納得した」

 

「これ仕様だったんだ...」

 

強制的に回想させられるとかどんなダンジョンだよ...

 

「ってか俺さ、記憶定着加速のおかげでシレンの穴で何が起こったかほぼ全て記憶してるから、まったくもってここにいる意味ないんだけど」

 

「なんでカリヤはダンジョンの効果を自力で再現してるの...?」

 

「というかそんなに色んなこと覚えてて大丈夫なの?頭パンクしない?」

 

「全然大丈夫だぞ。なんなら、生まれた瞬間から今までほとんど記憶残ってる」

 

「それはそれで問題よね...生まれた瞬間から記憶あるってどういうことよそれ」

 

まぁそれは前世の話なんだがな。なんで記憶が完璧に残ってるのかは知らん。神様がなんかやったんだろと思ってるけど、実際どうなんだろう。最近質問してもあんまり答えてくれなくなったからな神様。楔打つ時くらいしか反応してくんなくなっちゃった。

 

「そもそも人ってのは百何十年分の記憶容量があるっつー話だからな。完璧に覚えててもなんら問題はないのさ」

 

確かあの話だと百四十年分記憶できるって言ってたっけ?ちゃんと調べてないから本当なのか知らないんだよね...まぁどう考えても15%が一年なわけないのはわかるけど。

 

「まぁ、完璧に記憶が済んでるせいなのかは知らんが、夢をあんまり見れなくなっちゃったんだけどな...」

 

これも本当かは知らないが、夢って記憶を整理するために見るものだって話を聞いたことがある。この世界に来てから数ヶ月の間は普通に見てたけど、記憶の加速を意識的にするようになってから...カイスで魔法を学び始めたあたりからあまり見なくなったんだよね。今夢を見たら、ファンタジー世界観がデフォルトで見れるようになってるんだろうな...

 

「……って、またナチュラルに過去を振り返ってんな。というかこれってライトにも干渉してんだろ?勇者の耐性突破してんのやばいな」

 

今のライトは耐性がガチガチになっていて、他者からの魔法の影響をほぼほぼ受けなくなっている。これで味方認定されている人のバフ魔法や回復魔法はちゃんと受け取れるってんだから、便利としか言いようがない。

 

「たしかに...そう考えてみると、結構すごい技術なのかも」

 

「逆に言えばこれ、勇者の耐性を突破できる方法があるってことなんだよな。何事にも例外はあるってことだけど...似たようなことを魔王がやってこないとも限らないな」

 

「シレンの穴で起こる全てのことは、魔王を討伐するために必要なこと。記憶の定着だけに階層一つ使うとも思えないし、警戒を促す役割もあるのかもしれないわね」

 

「記憶に干渉するところなわけだし、もしかしたら聖剣の勇者の記憶も意図的に操作されてる説ない?戦闘がないってのは改竄された記憶で、実は普通にボスがいるとか」

 

「あり得なくはないのよねぇ...一応警戒しながら進みましょうか。強制的に警戒解除させられるけど」

 

警戒してたとしても、強制過去回想が無理矢理解かせてくるんだよな。

 

ほぼほぼ気休めにしかならない警戒をしながら、俺たちは一本道を進んで行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおいマジかよマジで戦闘ないのかよ」

 

なんかずっと進んでたら出口...というか、最初の入り口のところまで戻ってきていた。ぐるっと回って戻ってきた感じだな。

 

「だから言ったじゃん」

 

「今までの性格が悪いとしか思えない、いやらしい仕掛けばっか作ってきた製作者のことを考えると、絶対何かあると思ったんだけどなぁ...」

 

「完全に杞憂だったわね」

 

「ま、まぁ突破できたわけだし、あとは聖剣刺して終わりだな」

 

百階層を終えた俺たちは、シレンの穴の底へと向かう。底と言っても、この横穴の出口からほんの数歩歩いたところにあるんだが...全ての階層を攻略すると、底に穴が現れる。そこに聖剣を刺せば、完全に勇者の力が解放され、シレンの穴の外でも力を振るうことができるようになるのだ。

 

「……えっ?ちょっと一旦待ってみんなっ!」

 

「え、なに?」

 

底に足を踏み入れる直前、ライトが俺らを引き止めようとした。

 

が、一歩遅く、俺たちは底に到達した。

 

みんなの姿が一瞬で消えた。

 

「……えぇ...」

 

えーーっと...うん、みんなが消えた理由として考えられるのは二つ。一つは、転移の魔族がまたちょっかいかけてきた説。まぁ、転移したとしても外の地面を踏んだ瞬間にここに戻ってくるだろうから、この説はないかな。となると...

 

「シレンの穴、最終訓練...ってとこかな」

 

ライトが引き止めたのは、入る直前にその記憶にアクセスできたから。一旦止めて説明してから入ろうとしたのだろう。

 

「……これ、重要なのは俺も訓練に参加できてるか否かだよなぁ」

 

はたしてこれは、全員個別で訓練に挑んでいるからバラバラになっているのか、それとも俺だけ参加できてなくて取り残されてるのか...どっちのパターンかいまいち判別できないな。

 

「……まぁでも、参加できたなら何かしら起こってるはずだよな。何も起こってないし...待つしかないか」

 

壁際まで行き、寄りかかりながら座る。

 

「なんか、待つのにも慣れてきたな...」

 

暇つぶしをせずとも長い時間を待てるようになってきた。まぁ、暇つぶしに近いことはしているが...

 

速度操作を起動して、自分の思考速度をゆっくり減速させていく。すると次第に、速度探知で得た情報を処理しきれなくなって、現実時間が思考時間の何倍も早くなって、いつのまにか時が...

 

「……はっ⁉︎」

 

誰かが戻ってきたのを視界の端で捉えた。思考の減速を止めて、現実時間に思考時間を合わせる。

 

「クミ...リア?」

 

戻ってきたのはクミリアだった。

 

「……何してんだ?」

 

「……なんだ、本物かよかったー」

 

「本物?何の話をしてんだ?」

 

「いやー、ちょっと変な戦いさせられてね...」

 

クミリアの話を聞く。

 

「……なるほど?みんなの偽物と戦わされたわけか」

 

「そうそう。それでなんとか全員倒したら、今度はクミさんの偽物が出てきてさーもう大変だったよ」

 

要約すると、だ。

 

まず、底に足を挟み入れた瞬間、みんなが立っている位置はそのまま偽物に入れ替わる。そして空間が拡張され、偽物が襲いかかってくる。なお、俺の偽物はいなかったらしい。

 

急に攻撃されたことと、俺がいなかったことで偽物だと気づいて全員殴り倒すと、今度は自分自身の偽物が出てきた。だけど、この自分の偽物はみんなの偽物とは違って弱いらしい。

 

みんなの偽物は、今の強さを基準にして作られているらしい。ライトが平然と必殺技を使ってきたらしいし、ニアも魔法改竄を使ってきたからこれは確実だそうだ。

 

それとは違い、自分の偽物は過去の自分の強さを基準にして作られている。体感的には、シレンの穴に入る前くらいの強さらしい。で、それを倒したらここに戻ってきた、と。

 

訓練の意味としては、みんながそれぞれどれだけ強くなっているのかを、実際に戦うことで体験する。そして、過去の自分と戦うことで自分の成長具合を認識する。直前に記憶の定着をしたから、そのアウトプットをするための訓練というわけだな。

 

「……そういやカリヤはやってないの?」

 

うーん...もう誤魔化す必要はないよな。すぐに俺が何者なのか説明するわけだし。

 

「ああ、俺はやってないな」

 

「そうなんだ。やらなくてよかったね」

 

「ん?どういう意味だ?」

 

てっきりなんで訓練に参加できてないのかを問い詰められると思ったが、まさかやらなくてよかったと言われるとは。

 

「だってカリヤ、偽物でもみんなに攻撃できないでしょ?」

 

「あー...確かに」

 

そう考えると、参加出来なくてよかったのかなぁ...

 

「でも、気絶まででいいんでしょ?それだけならまだできると思うぞ...なんとか」

 

「ほらもう苦しそうじゃん」

 

「想像したら苦しくなったわ...ほんと、試合だと普通に戦えるのに、なんで偽物相手には攻撃できないのかなぁ...」

 

そろそろこの悪癖を直したいんだけど、強い仲間意識と軽いトラウマのせいだから直し方わからないんだよな...いざとなったらニアに暗示でもかけてもらおうかな。フロートにちょっかいかけられた時のために、そこらへん予め決めておかないとな。

 

「ってかみんな遅いな。いや、クミリアが早かったのか?」

 

「んーどうなんだろ。まぁサクサク殴り飛ばしていったし、それなりに早かったのかも?」

 

「俺的には、どうやってレストを倒したのかが気になるところだな。格闘だけだと守りに入ったレストを倒すのむずくない?」

 

「レストって盾にさえ触れなければ簡単に倒せるくない?」

 

「そのさえの部分が難しいんですがねぇ...身のこなしも盾の扱い方も上手いから、普通ならそこで苦戦するんだよな。魔族とだって渡り合えるレベルだし」

 

「でもそれは、こっちの動きが見えてるからできること。未来跳躍で背後に飛んで、首筋に雷装を流したら簡単に気絶してくれたよ」

 

「……それもそっか。というか大体それで倒せるくね?」

 

「そんなことないよ。ステラちゃんは空にいるから未来跳躍じゃ届かないし、ニアは魔法で周囲を守るってる。ライトには雷装は効かないしね」

 

「じゃあどうやって倒したんだ?ステラは多分空気の腕なんだろうけど、他はどうした?」

 

「ニアはねぇ...どうやったっけ?」

 

「覚えてないってどういうことだよ」

 

「ああ思い出した。心を読まれないように明鏡止水使って倒したんだった。だからどうやって倒したか覚えてないんだよね」

 

「なるほど...久しぶりに聞いたな明鏡止水」

 

「んでライトは...」

 

と、クミリアが語ろうとした時だった。

 

「……はえ?戻ってきた?」

 

どうやら、ステラが戻ってきたらしい。キョロキョロあたりを見渡している。

 

「……カリヤいるし本物だよね?」

 

「もちのろんだ。ステラ、どんな感じのことしてきた?」

 

「んーっとね、最初はみんなの偽物みたいなのと戦ったんだけど...ボッコボコにされちゃった。そして気がついたら場所が変わってて、傷も治ってたかな?そこで私の偽物と戦って、倒したら戻ってきた感じ」

 

「ボッコボコにされた?」

 

「うん。みんな強いし、流石に矢だけで勝つのは難しいよねー」

 

「負けても次には進むのか...まぁそりゃそっか。そうでもしないと、ガルムの英雄枠突破できないもんな」

 

攻撃手段に乏しいガルムの英雄に、仲間の偽物を全員倒せとかあまりにも酷すぎる。数分耐えるとかが勝利条件ってのも考えられるけど、そもそも完全体勇者に勝つことが難しいし、一対四をやらされるわけだから負けても問題ないようにはしてるはずだよな。

 

「どうだった?自分自身と戦った感触は」

 

「なんて言えばいいかな...なんとなく、こうやって動きそうかなーってのがわかるんだよね。動きの先読みができるっていうか...」

 

「そりゃ過去の自分だしな。どんな動きをするかは直感的にわかるだろうよ」

 

「過去の自分ってどういうこと?...あ、たしかに魔力銃とか持ってなかったかも...?」

 

まぁ気づかないのも無理はない。なんか弱いなとは思っても、シレンの穴に入る時にデータを取られてたなんてこと知らないんだから、すぐにその発想に至らないのは普通だ。ってか、一発で気づいたクミリアがおかしいんだよな。

 

「でもフロートを対策するなら、今の強さで偽物を作って欲しかったなーって思うな」

 

「それはそうだけど、力をコピーしてくる魔族なんて想定してないんだからしゃーない。どっちかといえば、過去の自分と戦わせることで、自分が強くなったことを自覚させることが目的だろうしね」

 

「そっかぁ」

 

「何話してるの?」

 

「……戻ってきて急に会話に混ざるのビックリするからやめてくれレスト」

 

速度探知の範囲内に一瞬で現れたから何事かと思っちゃった。

 

「で、レストもみんなの偽物と戦った後、自分の偽物と戦ったんだろ?どうだった?」

 

「みんなもやったの?」

 

「俺以外はな。んで、質問に答えてくれるか?」

 

「ああ、うん。えっと、ひたすら耐えながらニアの魔法を吸い取ってカウンターしたりしてたんだけど、ライトの必殺技を受けて...」

 

レストも負けで先に進んだ形か。カウンターくらいしか有効打ないししゃーない。

 

「で、その後は自分と戦ってたんだけど...めっちゃ時間かかったね。ナイフぐらいでしか攻撃できないし、倒すのにすごい苦労した。最終的に、岩壁で上に跳ね上げてから刺して倒したよ」

 

無理矢理カタパルト射出したわけか...ちょくちょくその戦術使うよなレストって。

 

「これであとはニアとライトか...この二人が遅いのって意外だな」

 

結構サクッと倒して終わらせてそうなイメージなんだが...

 

「ニアがどうなのかわからないけど、ライトは別のことしてて遅いとかあるかもね。勇者専用の特別訓練とか」

 

「歴代勇者と戦う...とかされてないよな?聖剣にある記憶から歴代勇者を作り出すとか普通にありそうだな...」

 

「記憶から魔族を作るとかやってきてるし、絶対ないって言い切れないのやばいよね...」

 

「まぁライトならなんやかんや勝ってくれるだろうけどね」

 

雷装があるし、先代以前には発見されてなかった魔法とかもあるから基礎戦闘力が違うはずなんだよな。そもそも魔力量が桁違いに多いし、多対一でも勝てるはずだ。自分自身との戦いなんて、勇者の成長幅からして瞬殺レベルだろうし問題なく突破できるだろう。

 

「ニアはどうだろうな...単純に時間かかりそうだよな。魔法の扱いはパーティーで一番とはいえ、魔法使いが四人相手にするのは難しいからなぁ」

 

空を飛んでもステラに狙われ、降りたらクミリアに殴られる。どこにいてもライトは攻撃してくるし、ニアの攻撃はレストに吸われる。攻撃を避けながら攻撃しないといけないから、レストに吸われないように魔法を撃つのも難しいだろうし、結構キツそうだ。

 

まぁ、四人の魔法は魔法拡散を使えば完全に封じることができるはずだし、各個撃破していけば勝てるか...?五分五分...にはならないかもしれんが、勝てる見込みはあるな。

 

「それに、自分自身との戦いもめちゃ時間かかりそう。魔法改竄とか覚えて強化されたとはいえ、魔法の種類にそこまでの差はないはずだし、多分魔力が同じだから魔法拡散も効かないしで、泥試合になりそうだよな。魔力量の差でゴリ押すしかないんじゃね?」

 

「そうね、大変だったわ」

 

「……レストしかり、急に会話に混ざるのやめてくれない?びっくりするじゃん」

 

「私の話されてたら気になるじゃない」

 

「それはそうだけれども...んで、どうだった?」

 

「もう大変よ。なんとか全部倒したけど、魔力ギリギリよ。傷が回復するんだったら魔力も回復してくれればいいのに」

 

連戦の時魔力回復しないのか...ってことは魔力増やしてなかったらヤバかったってことだよな?どれだけ過酷なんだ...

 

「よくも何度も何度もカウンターしてくれやがったわねぇ...!」

 

「ちょっ、僕に当たるのはやめて⁉︎」

 

「そう言いながらパリィ発動して受け流してるわけだけど、もうその言い訳通用しなくなったな」

 

咄嗟に守ろうとして、思っきし真横にニアを吹っ飛ばしたレストさん。これは今すぐにでも処されますねぇ...いや、悪いのはイラついてレストにあたろうとしたニアなんだけども。

 

「……これで、残りはライトか」

 

ニアによって地面に転ばされたレストを見ながら、ライトを待つ。

 

…………

 

お、来た。見かねたステラが二人の喧嘩を止めようとした時にライトがふっと何もないところから現れた。

 

「よーっすライト。おつかれ」

 

「疲れた...なんとか勝ってきた」

 

よし、これで全員戻ってきたな。

 

それにしても、みんなはちゃんと仲間の姿をした敵と戦えたってことなんだよな...凄いなみんな。俺は無理だわ。もし負けてもいいって知ってたら、何もせずボコボコにされてすぐに自分との戦いに移行するね多分。

 

「なぁライト。これでもうシレンの穴は完全に終わりなんだな?」

 

「ちょっと確認してみるね...うん、もうないね」

 

「じゃああとは聖剣刺して終わりってわけか...」

 

「ちょっと待ちなさいカリヤ」

 

と、ついさっきまでレストと喧嘩していたとは思えない姿で言うニア。

 

「なんだ?」

 

「なんかサッサと次に行こうとしているけど、流石に見過ごせないから今聞くわよ」

 

なんだろうと思っていると、ニアは続けて言った。

 

「どうして、あの戦いの中にカリヤはいなかったの?クミリアに聞いたら、そもそもカリヤはやってすらいないらしいじゃない」

 

「なんだそのことか...」

 

「なんだじゃないわよ。流石におかしいわ。説明しなさい」

 

「俺に説明できると思ってるのか...?まぁ、見当はついてるし、聖剣刺したら話そうと思ってたことだけど、その前に話しちゃうか」

 

ついに、俺のことを話す時が来たな...

 

「俺が今の訓練に参加していないこと、並びに個別訓練の時に誰かの訓練に巻き込まれる形になって参加すること、これを説明するには、俺が何者なのかってところから語る必要がある」

 

「何者なのか...?それってどういう意味よ」

 

「どこから説明しようか...まず」

 

口を開こうとしたその時だった。

 

『神の使いの紋章を認識』

 

「な...なに?今の声」

 

「これは...個別訓練の時に聞こえてたアナウンスだ。みんなも聞こえてんのか?」

 

ってことは、みんなにも聞き取ることが可能な、今のこの世界の言語で話されているのだろう。

 

『神の使いに対する、最終訓練を実施...』

 

アナウンスの内容的に、俺だけが参加する訓練があるようだけど...今までの個別訓練では神の使い専用のやつに参加できてなかったのに、どうした今になって?

 

『……エラー』

 

ん?

 

『エラーを検知。推定。偽造された刻印』

 

偽造された...って、そっか、俺の世界の神様がつけた印だから、偽物だって言われてもおかしくないってか偽物なのか。

 

「偽造された...って」

 

「か、カリヤ...?」

 

「こりゃなかなか面倒なことになったな...」

 

アナウンスは続く。

 

『偽造刻印の持ち主を解析...検知。魂に刻印されし能力を発見。断定。人間になりすまし、神の使いを自称する魔族』

 

……おいおい確かにそれは共通してるけどそんなふうに言われるとめっちゃ困るんだけど⁉︎

 

『最終訓練を改変。目的。魔族抹殺。時空間移動開始』

 

「ちょ、ちょちょちょっ⁉︎」

 

俺の周りに光が纏わりつく。

 

『聖界転移』

 

俺は光に飲み込まれた。




能力の刻まれてる場所的に、魔族だと言われても仕方なかったんですよね...カリヤが認識されてなかったのは、この世界の人間じゃないプラス魔族だと思われてたからってのが本当の理由でした。

ちなみに、作中では一度も書いてませんでしたが、本物の神の使いは刻印を起点にして特殊能力を起動させます。
能力は魂には宿らず、刻印に宿るんですね。
なので本物の神の使いに略奪を使うと、刻印ごと能力を奪えたり...?
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