前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
今回はライト視点です。
前回みたく、別のキャラも登場します。
「き、君は...アライブ...⁉︎」
槍の飛んできた方向を見たら、そこにはアライブがいた。かつて僕と勇者の資格を争っていた男だ。
「誰かいるなとは思っていたけれど、まさか貴方だったとは」
槍を手元に引き戻しながら、アライブは言う。
「まさか、あんなやつに苦戦していたんですか?勇者ともあろう人が」
「ちょっと不意打ちをくらってね。ちょうど立て直そうとしていたところだ」
「そうですか...なら、さっさと倒しますよ」
一瞬だけ後ろを気にするようなそぶりを見せてから、アライブは吹き飛ばされていった魔物に向かって走りだした。僕もそれに着いていく。
「また地中に戻る前に...!」
もう一度潜られると面倒極まりない。バフを全開にして走り、泥地帯に踏み込む前に跳躍する。
「……傷口!あそこに刺せれば...!」
さっきのアライブの攻撃で魔物の側頭部に傷ができている。そこに聖剣を刺して、聖域展開をすれば一撃で倒せるはずだ。
「っ、泥を跳ね上げて...⁉︎」
魔物は地面の土を泥に変えてから僕たちに向けて飛ばしてくる。泥は飛んでくる間に土に戻り、矢のような形状になって襲いかかってくる。
「任せろ!」
アライブの槍の輪郭がブレたかと思えば、その形状が変化して土の矢を跳ね除ける傘のような形になり、攻撃を防ぐ...が。
「……っ、流石に脆いか...!」
カリヤから聞いた話では、アライブが持つ槍は質量はそのまま密度を変化させて体積を変えることができるらしい。この傘もその力によって作り出したものだが、いかんせん守る範囲が広すぎる。単位面積あたりの質量が小さいため脆くなっており、へこみが出来つつある。このままいけば貫通してしまうだろう。
「大丈夫。ニアが...仲間がなんとかする」
そろそろ貫通というところまでいったその時、ニアが僕たちの速度に追いつき、僕たちを中心とした座標指定で障壁を前方に貼ってくれる。
「っし、防御の必要ないなら攻撃だっ!」
槍が元の姿を取り戻し、障壁の横から魔物めがけて投げられる。次の瞬間、槍は十数本の小さなクナイのような形に姿を変え、魔物の全身に満遍なく突き刺さる。
「ほら戻れ!」
分裂した槍が一つに戻り、アライブの手元に戻ってくる。さて、そろそろ到着だ。
「『聖域展開』!」
魔物の側頭部に聖剣を突き刺し、体内の魔素を全て聖素に反転させる。
「うわやっぱ聖剣強いな...逃したものがデカすぎる」
魔物が消滅するのを見ながら、ボソッとアライブがつぶやいた。聖剣の力を見て、勇者になれなかったことを悔やんでいるんだと思う。
「え、えーっと...ひ、久しぶり?」
なんて声をかければいいかわからなかった。とりあえず久しぶりと言ってみたけど、これでいいのかわからない。
「……そんな申し訳なさそうにしないでほしい。貴方が勝ったんだから、僕たちなんて気にせずドーンと構えてもらった方が、心が楽ですから」
「そ、そう?」
「そりゃ力を取られてすぐの頃は恨みもしましたけど、この槍は手元に残ってましたし、筋力も鍛えれば戻るんだから早々に吹っ切れました。元々、勇者になれなかった時のことも考えて全て体ではなく頭で覚えてましたから、ダメージが少なかったんですよね。それはスートさんもそうらしいですけど」
そ、そんなことしてたんだ二人とも...勇者になれなかったらなんてこと考えたことなかった。保険を残さずに努力し続けたから勇者になれたのかもしれないけど、それを言ってしまうとなんか嫌な奴みたいになってしまうから声には出さない。というか、僕も保険かけておけばよかった。
「で、貴方は今何をしていたんですか?二人しか仲間いないみたいですけど...」
「最近巨大な魔物が増えてるでしょ?それを倒しに回ってるんだよ。ここに三人しかいなかったのは、東西で二手に分かれてるから。東側に、カリヤとステラ、クミリアがいるよ」
「なるほど...」
「えっと、アライブは何をしていたの?」
「僕ですか?僕は強くなるために魔物と戦ってましたね。次の獲物を探そうと放浪していたら、巨大な魔物を見つけて槍を投げたら貴方たちが居た...という感じですね」
「そうなんだ...もし良ければ、僕たちの手伝いをしてくれない?強い魔物と戦えた方が、アライブも嬉しいでしょ?」
「もちろん!...と言いたいところですけど、その前にやっていいか聞かないと」
「聞くって、誰に?」
「僕に協力してくれてる人たちがいるんですよ。多分、もうそろそろ追いつくはず...」
「「アライブさーん!」」
アライブの名前を呼びながら、二人の少女が駆けてくる。
「……!フレアにミレアじゃない!」
どうやら、ニアの知り合いみたいだ。
「あっ!ニアお姉ちゃんだ!」
「ニア姉さーん!」
……ニア、双子の妹いたの?
「ちょっとあんた!うちの従姉妹たちとどういう関係よ!」
あ、従姉妹なのね。ちょっと見ただけでも、慕われてるんだなとわかる。
「え、急になんですか?ちょっ、怖い」
「うちの従姉妹とどんな関係かって聞いてんのよ」
「どんな関係って...付き合ってもらってるだけですけど?」
「付きっ...‼︎⁇」
あ、ニアが倒れた。
「え、僕何かしちゃった?」
「どうしちゃったんだろニア姉さん」
「ねー?」
……多分、言葉足らずだったからだと思うんだけど...あっ、起き上がった。
「……あんたには消えてもらうわ」
「えっ、なに⁉︎うわ危ないほんとに魔法撃ってきた!」
「な、何してんのニアお姉ちゃん!」
「よくもうちの可愛い従姉妹たちに手を出してくれたわねぇ...!」
「……よくわかんないけどなんか可愛いって言われた!」
「そんなこと言ってないでフレアちゃん止めて!ミレアちゃんでもいいから!」
「ほわぁ...」
「ミレアちゃんが使い物にならなくなってる⁉︎」
ニアに可愛いと言われたことがそれだけ嬉しかったのか、完全に意識がどっか飛んで行っちゃってる。大丈夫かなぁ...というか、そろそろ止めたほうがいいよね。流石にアライブが辛そう。
「ニアニア。多分勘違い」
「あ゛?」
ギロリとこっちまで怖い目で見てくるのやめてほしい。
「多分、付き合うっていうのは交際って意味じゃなくて、一緒に戦ってもらうみたいな意味の付き合うだと思う」
「……それはそれで危険に晒すわけだから消す」
……ごめん、僕に説得は無理だ。何をどう言っても同じ結果に行き着くようにしか思えない。こういうのはカリヤが得意だと思う。うまく丸め込むの上手いし。
「えと...ち、ちゃんと話は聞いてあげてね?そ、そういえばレストいないなー探してこないとー」
「ちょっ、勇者が逃げるな!」
アライブに叫ばれたけど、ごめん。僕にはニアは止められない。元々言葉足らずだったアライブ自身に責任があるわけだし、なぜかここにいないレストのことが本当に心配だから自分でどうにかしてもらおう。
「……本当にレストどこ?」
しばらく探し回ってみるけど、なかなか見つけられない。戦闘中に結構移動したからなぁ...どこにいるか検討も...
「……もしかして」
ふと思いついた場所に向かってみる。もし僕の考えが正しければ、遠くから見ても分かりにくいところにいるはず...
「あっ、いた。レスト大丈夫?」
レストは地面に体が半分埋まっていた。魔物によって泥に落とされたあの時、僕は脱出できたけど、どうやらレストは抜け出せないまま泥が普通の土に戻ってしまい、埋まってしまったみたいだ。
「息...苦し...」
あっ、やばそう。急いで魔法で土を流動化させて、一旦圧迫からレストを救う。
「し、死ぬかと思った...」
「よいしょっと...なかなか来ないなとは思ってたけど、まさか埋まったままだとは思わなかったよ」
レストを引っ張り上げながら呟く。
「僕はなんで誰も来ないんだろうってずっと思ってたよ。僕を助けてから行けばいいのに、なぜかニアはすぐに魔物を追いかけていっちゃうし、女の子二人が走ってってたけど僕には気づかず素通りされるし...なんか日に日に僕の扱い酷くなってない?」
「それは...そうかもしれない」
「せめて否定してよ」
「というかなんか手すごい色になっちゃってるじゃん。今回復させるね」
「うう、もう僕に優しくしてくれるのはライトだけだよ...」
「ステラも優しいでしょ」
「そうだけど、あの子いい子すぎてなんか優しくされると申し訳なく思っちゃうんだよ。それに、僕にも歳上としての尊厳というものがあって...」
「ステラは大体空にいるから守って恩返しってのもできないしね」
「そうそれ。というか僕いるのかな...みんな自力で防御できたり回避できるし、僕がいる意味があんまりない...」
「そんなことないよ。カウンターだってあるし、魔物に不意打ちされても、いつもすぐに反応して守ってるでしょ?意味はあるよ」
「そうかなぁ...」
「……はい、治ったね。じゃあニアたちがいるところに行こうか」
ニアとアライブの様子が気になるけれど、治したとはいえレストが負傷した直後だから、少しゆっくり目に走って移動する。
「あと、これはカリヤからの受け売りになるけど、意味のない人なんて誰もいないよ。どんな形であれ、人は誰かに影響を及ぼす。誰かに自分の意味を刻み込める。レストは盾使いでしょ?誰かを守る、助けるっていうのは、一番直接的に誰かに干渉できる役割だ。自分がいる意味を見出せないなら、自分が今までに助けてきた人を思い浮かべるといいよ...後半は僕の言葉になっちゃった」
「じゃあ受け売りじゃないじゃん」
「そうだね」
お互いに少し笑いながら、ニアたちがいるところまで戻る。
「……これ、どういう状況?」
なんか戻ってきたら、ニアがアライブの関節を極めてたんだけど...なんでこうなったの?
「あっ、どこ行ってたのよレスト」
「埋まってたんだよ...それで、これどういう状況?」
「お話してたとこ」
「肉体で会話してない?それ...」
「まぁとりあえずアライブが五体満足のままでよかったよ...」
「あっ、そういえばカリヤから連絡があったわよ」
「連絡?どんなの?」
「その前にこの腕を退けて欲しい...!」
「まさか僕よりも不憫な人がいるとは...」
「ニア、放してあげて」
「しょうがないわねぇ...」
渋々、といった様子でニアは関節を極めていた腕を解く。
「で、連絡って?」
「一旦カイスに集合ですって。小休憩を入れたら、班分けをやり直してまた魔物退治に戻るらしいわ」
「メンバーチェンジってこと?」
「こっちに魔法耐性持ちの魔物が多かったように、あっち側には物理耐性持ちの魔物が多かったっぽいのよね。どう考えても私とクミリアは逆の方がいいし、他にもイレギュラーが多かったからそれについての話し合いもするみたいよ」
「なるほどね...了解した。じゃあカイスに戻ろっか。ニアお願い」
ニアがゲートを開く。
「……そういえばアライブ、一緒に巨大化魔物を倒そうって話、どうする?もし良いなら、一緒に来て欲しい」
「僕は行きたいですけど...フレアちゃん、ミレアちゃん、一緒に来てくれる?」
「ニア姉さんと一緒に行けるなら...」
「はいはーい行きまーす!」
「じゃあ一緒に行くということにするよ」
「なら着いてきて。これならすぐにカイスまで着くから」
ゲートに入り、異空間を進んでいく。
「これ、本当に便利ですよね」
「これ作ったニアお姉ちゃんすごい!」
「作ったというか、文献を読み解いたら普通にあっただけなんだけどね...あ、そうそうライト。カリヤがスートと会ったらしいわよ。勇者候補全員集結ね」
「そんな偶然あるんだ」
「二人とも頑張ってるんだなぁ...」
「あとなんか、カリヤとステラちゃんの知り合いも一緒らしいわね。そのうちの一人の、キースってやつはクミリアの知り合いでもあるらしいけど」
「キースさんがいるんですか?」
「えっ?もしかしてフレアちゃんたちの知り合い?」
「ほかに仲間が二人いて、名前がチュチュさんとギブドさんなら多分友達です!」
「うわ本当に知り合いなのね...着実に交友関係を広げていっててお姉ちゃんちょっと泣いちゃう」
「涙出てないよ」
「そういうところだよレスト」
「え?」
そこは話に乗ってあげるか、カリヤみたいにもっと強めに突っ込むかしてあぜないと。中途半端だから普通に訂正したみたいになって、場がしらけちゃうよ。僕に言えたことじゃないと思うけど、もう少し人との接し方をどうにかしたほうがいいと思う。
「それにしても、ちよっとカリヤ心配ね」
「カリヤがどうかしたの?」
「雨に降られちゃったみたいなのよね。ほら、ただでさえ今能力を使うと頭痛が起きるっていうのに、さらに不利になるような状況下で戦闘をしたわけだから、頭に相当な負荷がかかっているはずよ」
「そっか...せめて、能力なしでも魔法を使えたらいいんだけどね」
カリヤは戦闘のほとんどを速度操作に頼っている。能力がないと魔法を使えないという弱点も、そろそろ克服しておかないとまずいだろう。
「それならもう、今日はカリヤを休ませたら?別に今すぐに全部の魔物を倒さないといけないわけでもないし、二手に分かれずに一体ずつ順番に倒すでもいいと思う」
「そうした方がいいかもしれないわね...っと、着いたわね」
ゲートを越えて、カイスのすぐ前に出る。
「門を越えてすぐのところで待ってるって言っていたけれど...いた、あそこね」
カイスに入って少し進んだところに、カリヤたちはいた。ステラちゃんが一番最初に僕たちに気づき、大きく手を振ってくる。
「みんなお疲れさま。適当な店で軽く何か食べながら今後のことを...」
近づいてくる僕たちに声をかけるカリヤだったが...
その姿が一瞬にして消えた。
そしてアライブの真後ろにいつのまにか立っていて、その背中にダガーを突き刺していた。
「お前...!」
未来跳躍で背後に回り、即座にダガーを次元収納から取り出して背中に刺した俺は、そいつを睨みつけながら叫んだ。
「本物のアライブはどこにやった!フロート!!」
「なっ...フロートですって⁉︎」
「ハッ...やっぱりお前にはバレちまうみたいだな」
ゆっくり前に歩き、自らに刺さったダガーを引き抜くフロートは、その姿をアライブから別の誰かへと変化させる。
「本物をどこにやったかと聞いている!さっさと答えろ!」
「さぁな。本来の待ち合わせ場所で待ちぼうけでも喰らってるんじゃねぇか?」
「あっ...だからギルドの中じゃなくてわざわざ宿の前で待っていたのか...!」
よかった、とりあえずアライブが殺されているなんてことにはなっていないようだ...もちろん、こいつの言うことを信じるならだが。
「何が目的でアライブに成り代わっていた?俺らの監視、もしくは妨害か?」
「それは違うな。勇者からそんなことぐらいわかっているだろう?」
「……そうだね。監視や妨害目的ならあの魔物を一緒に倒すわけがないし、そもそもあの状況で助けに入るはずがない...」
「ならなんだっていうんだよ」
「そもそも聞けば素直に答えると思ってんのか?アクセルと仲良くしすぎて頭沸いてるんじゃねぇか?...そこの魔法使いさんは理由、わかってるはずだぜ?」
「……フレアちゃんにミレアちゃんの模倣が目的ね。世代最強の補助魔法使い。バフ魔法だけなら右に並ぶ者はいない、その力が目的...!」
二人ってそんな強かったのか⁉︎たしかにニアとリヒトの親族だし、素質は十分だったわけか...んで、その力を得るためにアライブの姿になり、二人に近づいたとそういうわけか。
「正解。いやはや、今回はとても良いものが得られた。この力もそうだが、お前の弱点も知ることができた」
そう言いながら、フロートは俺を指差した。俺の弱点?どういうことだ?
「……っ!さっきの会話か!」
「雨が苦手なんだってな。情報量が多くてパンクするとかなんとか...とても役立ちそうだ。お前ら、情報をどんどん溢してくれるからほんと助かるぜ」
「どんな話を聞かれようが、その情報を仲間に伝えられる前にお前を殺せばいいだけだ。絶対に逃さない」
「既に念話で連絡済みだ。今更俺をどうこうしたところでどうにもならない。そして、お前らは俺を追えない」
「っ!」
フロートが空を飛び始めたかと思えば、地面から土でできた手のようなものが生えてきて、この場にいる俺以外の足をがっしり掴む。回避できたのは俺だけか...!」
「俺は追えるぞ!お前はここで殺し切る!」
9037ページ 黒のみ 飛行
慣れない飛行魔法を発動し、フロートを追いかける。このまま略奪を使って能力を封じ、その間に殺せれば...
「……雨っ⁉︎あがっ゛!!!」
突如、俺の周囲だけに雨が降り出し、強烈な頭痛が俺を襲う。
「速度操作を封じるには雨、そして、能力さえ封じれれば魔法も使えない。そのまま落ちるんだな」
水魔法で雨粒を作り出し、俺の周囲7メートルぐらいの範囲だけ降らせているのか!く、くそ...飛行魔法の制御が...
「お前は絶対に逃さない!魔法が使えなくたって、こっからでもお前を殺せる!」
指で銃の形を作り出し、人差し指をフロートに向けて突きつける。
「喰らえ!」
次の瞬間、フロートの頭が丸ごと吹き飛んだ。
「
フロートが別の姿へと変化しながら落ちていくのを見ながら、俺も落ちていく。
「カリヤ!」
地面に衝突する直前、土の手を破壊して走ってきたのであろうライトにキャッチされ、事なきを得る。
「い、今何をされた...?」
再生代わりの変化を終えたフロートが、ボソッと呟く。
「まさか、新魔法...?」
「あ?聞かれて素直に答えると思ってんのか?そもそも魔法を使えないつったろうがよォ」
作り方は簡単だ。まず、光弾を普通に発動し、速度操作で加速する。そうしたら加速した光弾を次元収納の中にしまう。次元収納は入ったその瞬間の状態を保存する。速度も保存するため、あらかじめ魔法を入れて射出するという芸当が可能なわけだが...この性質を悪用する。
次元収納によって保存された速度は、元々は速度操作で加速されたものなのにも関わらず、能力範囲外まで飛んでいったとしても加速前の速度に戻ることがない。つまり、一度しまった光弾を取り出せば、また速度操作による加速が可能になる。
取り出しては加速し、また次元収納にしまう。これを繰り返すだけで、永遠と加速することができるのだ。加速は減速と違って一瞬でできる。次元収納の入り口と出口をほんの数センチ離して開いて設置し、光弾を行き来させるだけでいい。
一度にできる加速が大体60m/sだとして、クソ適当に計算しても五百万回の加速が必要なせいで一つ作るのにも時間と手間がかかるが、方法自体はお手軽で、なおかつ受けた相手にも何をされたのか理解できない速度と威力を叩き出すことができる。現状三発しか作れておらず、そのうちの一発を使ってしまったわけだが、この未知の攻撃が魔族側に伝われば警戒は必至。他の攻撃への警戒が薄まれば、見せた甲斐がある。
「わかんないならどうだ?もう一発喰らってみるか?」
「ふ...ははは、面白い、面白いなお前は本当に!」
「何がおかしい」
「お前はどんどん成長しやがる...笑えねぇのに笑っちまうくらいにな。だから...これ以上進化する前に、けりをつけてやる」
「お?ここでお前と最終決戦でもしようってか?」
「半分間違いだ。これから始まるのは...全ての最終決戦だ」
フロートがそう言った、その瞬間だった。
「カリヤ見て!魔王の山の方角が...!」
「闇に...いや、夜に覆われてる...?」
太陽が真上にある真っ昼間だというのに、北の果ての空が黒く染まっていた。
「少々早いが最終決戦開始だ!お前が本調子を取り戻す前に、そして全ての巨大化魔物が先んじて殺される前に、我々は行動を開始する!」
「なっ...もう人魔戦争が始まるってのかよ!」
「魔王様は復活なされた...夜は我ら魔の領域!誰がどう足掻こうと、昼が夜になるのを防げる者はいない。せいぜい無駄な足掻きをすることだな」
そう最後に言い残し、フロートはその場から一瞬で消え去った。
「……昼が夜になるのを防げる者はいない...か」
俺は北側を、夜に塗りつぶされようとしている空を見て叫ぶ。
「
カリヤ以外にはフロートか本人かの区別がつかないので、こうやってフロートが接近してきていても気づかないんですよね。
ちなみに、フロートだと明かされる前に一つ、フロートだと気づける要素があって、前回のラストでスートがカリヤの使った次元転移を見て少し驚く描写があったんですけど、今回のアライブはその描写がなかったんですよね。
中身がフロートなため、アクセルやサーマル経由で次元転移のことを知っていたから驚かなかったという...流石にこんな細かいことに気づいた人はいませんよね。