前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8521字。

前回フロートが宣戦布告しましたが、まだ戦争は始まりません。
開始は次次回くらいになるかな...?


人魔戦争、頭痛翻弄

「ほんと、厄介なことになったわね...」

 

「そうだな...まさか、あんな急に戦争開始を告げられるとは...」

 

昨日、突然フロートから告げられた、人魔戦争開始の宣言。北の空は夜に侵食され、まだ陽が出ているにも関わらず黒く染まっていた。

 

「あと二日...それまでに準備を終わらせないとね」

 

ついに魔王軍が動き出したわけだが、まだ戦闘が始まったわけではなかった。始まったのはあくまで魔王軍の進軍。ギルドの調査員の見立てだと、2日後の夜にはこちらの防衛ラインに到達するらしい。

 

「2日後つっても、普通に歩いてきたらだけどな。転移があるから、いつ来てもおかしくない。下手したら、この瞬間にも襲ってくる可能性があるわけだ」

 

地震みたいなものだな。今後三十年の間に30%起こる、みたいな予測があったとしても、三十年後にピッタリ起こるわけじゃなくて、明日や一秒後にも起こる可能性はある...みたいな。

 

「まぁいつ襲ってくるかの議論は無意味ってのはもうわかってることだし、とりあえず予定通り2日後だと仮定して、やるべき準備を考えましょ」

 

「それじゃあ最初に、俺ら以外がどう動くのかを整理しておこうか。その方が、俺たちがこれから何をしたらいいのかわかりやすいはずだ。町単位での計画の中で、俺らが介入できることはどんどんやろう」

 

「わかったわ。ならまず...防衛の要、ガルムね」

 

「ガルムの役目は魔物を引きつけ、そこから南側への魔物の侵攻を完璧に防ぐこと。あの町の防衛機構と、盾使い全員の力があれば、魔物の攻撃を耐えることは十分可能なはず」

 

「次はカイスよ。カイスの役割は、圧倒的な魔法火力による魔物の殲滅。範囲内に入った魔物は全て撃ち抜けるわ。人への誤射もない。ただ、一つ問題があるとすれば、本来よりも攻撃の密度が少し落ちることね」

 

「南側に防衛機構の一部を移さないと行けないからか。転移でいつ南側から攻め入られるかわからないからな」

 

「ええ、でもそれでも殲滅にはあまり影響はないはずよ」

 

「じゃあ次はガネルかな。ガネルは、ひたすら冒険者が戦い続けるだけ。ガルムに引き付けられている魔物を横から叩くのが仕事。闘技場のおかげで多少の負傷も厭わないで戦えるのが特色だね」

 

「……闘技場のおかげ?どういう意味だ?」

 

「たとえ死にかけるほどのヤバい傷を受けたとしても、ガネルに運びさえすれば、時間を気にせずに治療ができるんだよ。ほら、闘技場の中で試合をしてる最中に死んでも、試合開始直前の状態に戻るでしょ?その機能を使って、怪我人が本当に死なないようにしながら少しずつ治療ができるんだ」

 

「なるほど、闘技場にそんな活用法が...次は王都か」

 

「王都は戦闘にはあまり干渉しないよ。多少の司令は出すけど、避難所としての役割が強いかな。実質、ここを落とされたら負けなわけで、防衛体制は強化されてるから一番安全なはず。戦えない一般人はここに避難することになるね」

 

「最後はカリスだね。カリスは王都に収まりきらない一般人の避難先兼、超超遠距離射撃による援護をするんだって。でも、射撃ができる人も少ないから、基本的には避難所って感じだね」

 

「なるほど、そんな感じか...早急に必要なのは、銃の作成と使い手の育成ってところか...?」

 

「銃って魔力銃のこと?」

 

「違う。魔力を使わない、金属の弾丸を飛ばす銃だ。王都の知り合いに作らせているんだが、まだ未完成だったはず。それを完成させて、使い手を育成して配るまでやりたい。ギルドの協力が不可欠だな」

 

「……ギルドに協力を仰ぐのは、少し考えたほうがいいと思う」

 

「どういう意味だ?」

 

「ギルドの中に、魔族が混じってる可能性がある。それもフロートじゃなくて、転移か魔素使い、もしかしたら両方かも。そう考えた理由は...」

 

「いや、理由は言わなくていい。ライトがそう思うんならそうなんだろう。たしかにアイツらがやりそうなことではある」

 

「なら、私たちはあまりギルドを頼らずに行動した方がいいかもしれないわね」

 

「いや、カイスだけは信用していいと思う。前にカイス全体で魔族がいないかの調査がされて、魔族はいないと判明している。サーマルの話だと、あの後ギルドに新たに入ってきた人はいないらしいから、魔族は絶対にいないはずだ」

 

「そうね...他の町のギルドに情報が流れないように口止めしながら協力を得る、それならできそうね」

 

「じゃあその方向で行くとして...あと出来ることはなんだ?」

 

「私はカイスに行って防衛機能の最終調整と、新たに手に入れた魔法をみんなに共有してくるわ。2日間かかりっきりになるだろうから、他のことは協力できないわ」

 

「オーケーニアはそれでいいとして、みんなはやること決まってるか?」

 

「僕は次元転移を使って一般人の避難を手伝おうかな」

 

「クミさんとレストは馬車での移動の防衛をギルドに頼まれたよ。ステラちゃんは?」

 

「何も決まってないんだよねぇ。カリスの遠距離射撃も本人の技量だから私がどうこうできることじゃないし」

 

「じゃあステラは俺についてきてくれ。手伝ってくれると嬉しい」

 

「わかった!」

 

「よし、それぞれやること決まったな...お、帰ってきた。みんなどこ配置だった?」

 

ギルドに行っていたフレアミレアやキースたちゼ○伝組、スートが戻ってきた。みんな、それぞれ自分がどの町で何をすればいいのかを聞きに行ったのだ。ギルドに登録されている、各々の戦闘スタイルや実績などを鑑みて、適した場所に派遣されるらしい。

 

「私たちはガネルでした!」

 

「俺はカイスで魔法の調整兼アタッカーだとさ」

 

「俺たち三人はカリスで万が一のための防衛だとよ。まぁ前線に出て戦えるかと聞かれたら微妙だが...戦力にならないと言われてるみたいでなんか癪だな」

 

「仕方ないさ。転移があるせいで、どの町も常に襲われる危険がある。だけど、あまりに戦力をばらけさせると前線が押されてしまう。でも弱すぎる奴が行ったとしても到底守りきれないだろ?お前らならカリスを守ってくれると、ギルドも信じてるんだよ」

 

「……本当、カリヤは口が上手いよな。俺らをやる気づけるのが上手すぎる」

 

「そうか?それにほら、お前らにはカリスで巨大トレントを倒した実績があるし、カリスに地の利があると思われたんじゃねぇか?」

 

「たしかに、ありそうな話だ」

 

「よーしそれじゃあ頑張ってカリスを守ろー!」

 

「だな、いつ襲われるかわからないし、俺らはもう出発するぜ」

 

「ああ、行ってらっしゃい」

 

ゼ○伝組がカリスに向かうため、俺らが会議をしている店から出て行った。

 

「それじゃあ、俺もそろそろ動くとしようかな」

 

「なら私もついていくわ。勇者候補時代の知識、使わせてもらうわよ」

 

「サラリと傷を抉るのやめてくれないか?」

 

そんなことを言い合いながら、スートとニアも出て行く。

 

「二人はガネルに行くんだっけ。なら僕が連れて行ってあげるよ」

 

「「ありがとうございます勇者様!」」

 

ライトと、フレアミレアも出て行く。

 

「んー...じゃあクミさんたちも行こっか」

 

みんなに続くように、クミリアとレストも出て行く。

 

「……あれ?サラッと俺が金出す感じになってない?」

 

軽く軽食を食べながら会議してたんだけど、せめて自分が頼んだ分はお金置いとくとかしておくもんじゃない?普通。

 

「まぁいいけど...」

 

会計を済ませ、ステラと二人で店を出る。

 

「じゃあステラ、まずは銃の調整に行くか」

 

「わかったー」

 

9936、9937ページ 次元転移

 

カイスの外に出てから、次元転移を発動させて王都へと移動する。

 

「……何度も通うことになるわけだし、直接転移できるようにしておけばよかったか...」

 

王都の中を歩き、クルスの店に向かう。着いたら次元転移のゲートを作っておこう。

 

「……およ?念話?」

 

頭の中にニアの声が響いた。

 

『さっき言い忘れたけどカリヤ、今日は出来るだけ早く休むのよ。頭痛、痛いでしょ』

 

早く休め、かぁ...たしかに頭痛いけど、そんなすぐに休まないといけないくらい酷くはないんだよな。心配しすぎだと思う。

 

『どうせ早くこの痛みに慣れるんだとか言って使い続けるんでしょうけどね』

 

はは、バレテーラ。

 

「ニアもだいぶお節介だよなぁ...」

 

「さっきニアと連絡してた時も思ってたんだけど、いつ念話を繋げたの?」

 

「ん?えーっとな、シレンの穴で分断される訓練が何度かあっただろ?転移の魔族もいることだし、いつでも連絡を取り合えるようにした方がいいよなって話になって、つい先週だったかな?俺とニアとライトの間に回線を繋げたんだ。今ならどれだけ離れていても話せるぜ」

 

これを第七十四階層より前に作っておけば、合流もめっちゃ簡単だったろうな...

 

「ステラたちも繋げれたらよかったんだけど、三人とも念話の適性が低くて無理だったんだよね。電話みたいな魔道具でもありゃ簡単なんだが」

 

「電話ってカリヤが前に言ってた道具だっけ?いっそのことカリヤが作っちゃったら?」

 

「無理無理。電波飛ばす基地局やらなんやらが必要だし、俺一人で作るとか無理すぎる」

 

「そっかぁ...」

 

「っと、着いたな。とりあえずゲートを作っておいて...っと」

 

9936、9937ページ 次元転移

 

いつでもここに転移できるようにゲートを設置してから、クルスの店に入る。

 

「よっすクルス...バタバタしてんな」

 

店の奥の鍛冶場からすごい音が聞こえて来る。

 

「おお、カリヤか。今忙しいんだが...何の用だ?」

 

「銃の製作がどのくらいまで進んでいるかの確認に来た。どんな感じだ?」

 

「またしても停滞している。カリヤのアドバイスを頼りに進めていたのだが、どうしてもうまくいかないんだ」

 

「どの辺がうまくいってないんだ?」

 

「主に三つ。一つは弾丸装填部分。撃っていると三回に一回くらいの割合で弾詰まりを起こしてしまうんだ」

 

「ジャムっちまうのか...次は?」

 

「金属の耐久性が足りない。撃つたびに発生する熱のせいで、金属が歪んでしまうんだ。そのせいで弾詰まりを起こしたり、暴発が起きたり弾の軌道がずれたりしてしまう」

 

「耐久不足...最後は?」

 

「弾丸と火薬の材料が足りないのに加えて、弾の持ち運びが難しい。これは銃本体のせいではないが、これも乗り越えるべき課題だ」

 

「なるほど...弾詰まり問題は俺がなんとかできるかもしれないが、問題は耐久性と素材問題か。これはどうしようもない...か?」

 

地球で作られる銃とはおそらく製作工程が違うし、使われてる金属も違う。この辺の問題は実際に作ってる側の人間じゃないと案を出すことすら難しいだろう。

 

「……ダメ元で聞くが、ある程度納得がいくものを作れるようになったとして、2日後に作れる銃の数は何丁が限界だ?」

 

「……すまない、一つ間に合うかどうかすらわからない。出来たとしても、訓練期間がないから実戦で使わせるわけにはいかない」

 

「やっぱりそうなるか...!」

 

銃を配備する計画はおじゃんになってしまった。思い浮かべていた人間側の戦力が少し落ちた。が、まだ許容範囲。銃があれば上振れなだけで、まだリカバリーは効くだろう。

 

「あのボヤ騒ぎさえなければ、今頃完成していたのかもな...」

 

「……ボヤ騒ぎ?何かあったのか?」

 

「ああ。少し前に鍛冶場で火事が起きてな。俺は留守にしていたから無事だったんだが、研究データや資料が軒並み燃えてしまったんだ。火の始末は徹底していたはずなんだがな...」

 

「……どうせ、フロートのやつの仕業だろう。そんな火事が偶然起きるわけない。どっから嗅ぎつけたかは知らんが、妨害しに来たんだろ」

 

フロートならコートの姿になってクルスに近づくこともできるはず。バレずに魔法陣でも仕掛けておき、誰もいない時に燃やすなんてことも簡単に出来たはずだ。

 

「しょうがない...一旦銃の製作は中止だ。人魔戦争が終わるまでは一切銃は作るな。フロート経由で魔族の手に渡る可能性は避けたい」

 

「……わかった」

 

「その代わりに、冒険者たちに最高の武器を作ってやれ。腕の見せ所だぞ」

 

「ああ、任せてくれ」

 

会話を終え、クルスの店を出る。

 

「一切会話に混ざれなかったけど...作るのやめてよかったの?一つはできるかもしれないって言ってたのに」

 

「一つあったところで何も変わらない。誰に持たせるのかって問題も出てくるしな」

 

「カリヤが持てばいいじゃん」

 

「ちょっと考えがあってな。俺にはクルス製の銃は必要ないんだ」

 

俺の言っていることがよくわからないと言った表情をするステラだったが、すぐに表情を戻して話題を変えた。

 

「銃が作れないってなると、この後私たちは何をすればいいのかな?やること無くなっちゃったくない?」

 

「んーそうだな...出来ることといえば、冒険者の強化くらいかな。防衛じゃない、本格的な戦闘を任される冒険者はガネルに集まってるはず。ひとまずガネルに行って、そっから細かいことを考えよう」

 

9936、9937ページ 次元転移

 

別空間を通り、ガネルへと移動する。

 

「よし、とりあえず冒険者が集まってるところを...おおっと」

 

一瞬頭痛が酷くなり、少しよろめいてしまった。次元転移の空間はほとんど何もないから得られる情報量も少なかったが、ここは人も多く行き交っており一気に情報量が増えた。それが頭痛が酷くなった原因だろう。

 

「カリヤ大丈夫?」

 

「あー...うん。多分平気だと思う」

 

このくらいの人混みでもこうなるか...戦争開始までになんとかしないと、速度操作無しで戦うなんてことになりかねないな。

 

「……本当に大丈夫なの?ちょっと顔色悪いよ?」

 

「マジ...?あー、一旦能力解除するわ」

 

速度操作を解除する。大量に流れ込んできていた情報が無くなり、頭痛が少し和らぐ...が、それと同時にほんの少しの恐怖が湧き上がってくる。索敵が出来ず、いつどこから襲われても対処ができないこの状況、これはこれで心臓に悪い。

 

「……一旦人の少ない路地裏に避難させてくれる?」

 

「わかった。ほらこっちだよ」

 

ステラに手を引っ張ってもらい、人の多い大通りから人気の少ない路地裏へと移動する。

 

「ふぅ...っぱ、だいぶ頭痛いな」

 

「ほら言わんこっちゃない。もう今日は休んだら?」

 

「そうしたいのは山々だけど、やれることは出来るだけ早めにやっておきたいしな...いや待て、もしかしたらアレできるかも...」

 

「アレってなに?」

 

「ステラ、今から俺は十秒だけ寝るわ」

 

「えっ?どういう...」

 

俺は壁に寄りかかり、目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふわぁ...よく寝た」

 

腕をグッと伸ばし、眠気を覚ます。

 

「え?ごめんちょっとよくわからないんだけど、寝たの?」

 

「ああ、ちゃんと寝たぜ。ノンレム睡眠もちゃんとした」

 

「のんれむ...?よくわからないけど、十秒しか経ってないよ?」

 

「忘れたのか?俺の能力は寝てる状態でも発動できる。睡眠導入から脳の整理、起床まで全て加速させて、まぁ一時間仮眠を取ったくらいの休憩にはなったかな」

 

「……それするくらいならちゃんと寝よう⁉︎」

 

「でも本当に頭痛は結構治ってるんだぜ?ひとまずは良いってことで...」

 

「ダーメ。ちゃんと寝よ?」

 

「えぇ...いいじゃん別に」

 

「んー...あっ」

 

なんか、いいこと思いついたみたいな感じの表情をステラが浮かべた。ま○あこのう○なちゃんみたいなひらめき顔なんだけど...なんかやばそう。

 

「もしカリヤがちゃんと休まなかったらぁ...私、ここでキャーって叫んじゃおっかなー」

 

「……っ⁉︎えっ、えっ⁉︎」

 

「人気の少ない路地裏で、私とカリヤ二人っきり。ここで叫んだらどうなるか...カリヤならわかるよね♪」

 

「ちょっ、ステラおまっ、どこでそんな脅迫覚えたっ⁉︎」

 

「えへへー」

 

「えへへーじゃねぇ⁉︎クミリアか?クミリアなのか?こういうの仕込むのはクミリアしかいねぇだろ何してくれてんだ⁉︎」

 

ジリジリ近づいてくるのが怖すぎる!なにこれほんとどういう状況⁉︎思考加速してるはずなのにパンクしそうなんだけど!

 

「さーん」

 

「カウントダウン始めやがった⁉︎ちょっ、一旦落ち着こう...な?」

 

「にーい」

 

「聞いちゃいねぇ⁉︎待てステラ。ここに連れてきたのはステラだろ?手を引っ張ってこの路地裏に連れてきたのはステラだ。目撃者がステラがここに俺を連れてきたと証言してくれるはず...叫ばれたとしても言い訳が効く!」

 

「でも路地裏を指定したのはカリヤだよね?それに、今の言い方だと、言い訳できる余地を残すために私に引っ張らせたみたいに聞こえるよね。ということは...もしかして私に何かしようとしてたのぉ?」

 

「ああッカウンター喰らったなに墓穴掘ってんだ俺...!」

 

「カリヤって変態さんだったのかなぁ?」

 

「そ、その目でそんなこと言うのやめて⁉︎ってか今目の前にいるステラがフロートだったらよかったなぁって本気で思っちまったそんくらい心にクル!」

 

「いーち」

 

「カウントダウン再開してるし...!ああもうわかったよ今日は休む!これでいいんだろ⁉︎」

 

「ぜー...」

 

止まんねぇ⁉︎マズイここは最終手段の逃走を...いやここでそれは一番ダメだ残されたステラに有る事無い事言われても弁明一切できない!ここは大人しく投降するしか...

 

「……何してるの?」

 

「きゅ、救世主来た...!」

 

誰かやってきて声をかけてくれた!よかったこれでなんとかなる...ところで、どちら様だろう。聞いたことある声ではあるけど、誰だっけ?

 

「なんか騒がしいと思って来てみれば...あんた何してるわけ?」

 

あっ、ミルキーか。久しぶりに会ったな。

 

「色々あって仲間に脅されてた」

 

ステラが答える前に先手を打ち、妙なことを言われないようにする。

 

「仲間に脅されるって、ほんと何があったのさ...で、そっちの人は?」

 

「ステラ、カリスの英雄だ」

 

「あっ、あなたがそうなんだ。うーん...ちょっとステラちゃん借りるね?」

 

「ん?いいけど...」

 

相変わらず変態を見るような目で俺を見ながら、ミルキーはステラちゃんを引っ張って俺から離れていく。具体的には七、八メートルくらい。能力の届かないところ...って、まさか。

 

「おい待て、ステラに何話そうとして「はいそこで待っててねーこっち来ないでよ」うっるっせ!演奏魔法の応用か...?」

 

多分俺にだけ届くように調整されたミルキーの声が爆音で俺の耳に突き刺さり、思わず後退ってしまう。そして俺がそうしている間に、ミルキーはステラに耳打ちしていた。

 

「……ってこと!だからしょうがない時以外はあんまり近づいちゃダメだよ...!」

 

ああ、終わった...墓の下まで持っていこうとしてたことを暴かれてしまった...

 

「なーんだ、そんなことかぁ」

 

「……へ?」

 

ちょっと待て、脳の処理が追いつかないんだが...内容によっては、ただ知られたよりもヤバいんだが⁉︎

 

「えっ、知ってたの?既に教えてもらってたとか?」

 

「いいや?教えてもらったわけじゃなくて、自分で気づいたんだ♪」

 

「……ステラ、それって具体的にいつのことだ...?」

 

恐る恐る聞いてみる。聞くのは怖いけど、こんなん聞かないほうが怖すぎる!

 

「んー...何ヶ月前だっけ?忘れちゃった」

 

「俺と離れてる時じゃねえか!なんで気づける⁉︎」

 

「カリヤがどれくらい強くなったのかなーって考えてた時に、ふと思いついちゃったんだよね。よくよく考えてみると、全部見られちゃってるんじゃない...⁉︎って」

 

「……ってことはなんだ?再会のあの時、それを知ってて抱きついてきたってのか⁉︎」

 

「抱き...っ⁉︎なに二人、そういう関係...?」

 

「それは違うよー。まぁその時はただの私の妄想だったし、実際は違うかも〜って思ってたからね。その後身長が伸びたことをすぐに言い当てられて、確信に変わったけど」

 

「マジかよお前、そん時にはもう気づいてたのかよ...ってことは、シレンの穴でニアたちにバレた時も、既に知ってたってことか...」

 

「なんなら、その時のコソコソ話も私には聞こえてたしね」

 

……たしかあの時、「何の話なのー?隠さないでよー」とか言ってた気がするけど、あれ演技だったのか...

 

「なんか色々ショック...」

 

「よ、よくわからないけど、既に知ってたのならあたしの出る幕じゃなさそうね。ギルドの招集かかってるし、失礼するね」

 

そう言って、ミルキーがこの場を去っていった...待って、この状況でステラと二人きりにしないで⁉︎

 

「えーーっと...スゥー...どうしてステラさんは全部知ってて、俺についてくれてるんです...?」

 

「なんでだと思う?」

 

わからないから聞いてるんだYO!

 

「カリヤだからだよ♪」

 

「……わからん...!」

 

「カリヤなら変なことしないってわかってるしね。ま、まぁ、ちょっと恥ずかしくはあるけど...」

 

「うぐぅ...」

 

「そんなことよりもカリヤ、忘れてないよね?」

 

「忘れる...って、何を?」

 

「今日は休む、ちゃんと言質とったからね♪」

 

「……完っ全に忘れてた...!」

 

「ほら行くよ!ゲート開いてね♪」

 

なんか、完全にステラに上に立たれたなぁ...と思うしかなかった。今後、何があってもステラには逆らえない。そう思いながら、俺は次元転移を起動してゲートを開くのだった。




ステラちゃん...卑しい...卑しい〜!
自分で書いてて、すごいことしてんなステラちゃんと思いました。
ステラちゃんなら絶対カリヤを休ませようとするし、そのためには手段を選ばない、カリヤへの理解度もNo. 1だから全部見られてることもわかってて接してる...このキャラなら絶対こうするはずだという気持ちで書いてたら、とんでもないことになりました。
でもこれ多分、恋愛感情は(少なくとも現在は)ないんだろうなぁ...
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