前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8486字。

ついに人魔戦争開始です。


十人一組中央突破

「……と、意気込んだのはいいものの...どうしよ、これ」

 

戦争開始と共に、戦闘区域に三種の雨が降り出した。一つはカイスから飛んでくる魔法。もう一つはカリスからの超遠距離射撃されてきた矢。そして最後の一つは...

 

「フロートの仕業なんでしょうねぇ...」

 

「雨なんて降らせやがってよぉ...俺の能力封じらせる気満々じゃねぇか」

 

魔法に矢に水、三種の雨が今戦闘区域に降り注いでいる。どれも、前方以外の射撃系攻撃を防ぐ魔法石のおかげで弾くことができるから、被弾したり濡れたりすることはない。けれど、あの中に入って速度操作を使おうとすれば、どれもが俺の脳を情報で満たし尽くしてしまうだろう。

 

「大丈夫なの?」

 

「問題ない。既に対抗策は作ってある」

 

俺は胸に手をやる。その奥にある、心臓を、魂を強く意識する。

 

「要は、女神のバフで俺の能力が一気に強化されたからダメだったんだ。加速が間に合わないほどまで能力適用範囲が広がったのがダメだった」

 

神の使いの力は、何かに干渉したり、支配することに長けている。力場を操る力も、結界を張る力も、超再生も、魔物の生成と使役も、身体の制御の乗っ取りも、魂を掴む力も、過去の罪を具現化する力も、どこかしらに干渉や支配の要素が入っていた。

 

そしてそれは、俺の速度操作にも当てはまる。周囲の速度に干渉し、自在に操り支配する力。まさに、といった能力だ。だからこそ、女神のバフが脳力にかかった時、支配圏を広げる方に重点が置かれてしまった。拡大に加速が追いつかなくなった。

 

「なら、解決策は一つ。その原因を、取り除けばいい」

 

楔を打つ。代償は、神の使いとしての力の一時的な剥奪。最近ほとんど会話しなくなったけど、聞こえてるんだろ?神様。やってくれ。

 

「うぐぅっ...!」

 

心の中でそう唱えたら、魂に痛みが走った。それと同時に、能力に変化が生じる。代償を楔として打ち込むことで、封じられている能力の一端を引き出す。

 

神の使いの力は、代償としては重いものだろう。たとえ一時的なものだとしても、相当の返礼が来る。もしかしたら、女神のバフがある時よりも、能力が強化されるかもしれない。

 

しかし、さっきも言った通り、女神のバフは範囲拡大に重点を置いていた。それとは違い、楔による強化は、加速最大値上昇に重点が置かれている。将来の最大値である光速にまだ全然遠いのだから、これは当然とも言える。

 

結果。

 

「範囲、6.4メートル。加速最大値...82m/sか」

 

「……それってどうなの?」

 

「最っっ高だ。万事解決多分頭痛は起こらん」

 

「よかったわね」

 

「っても、この状態はあまり長くは持たん。さっさと前線を突っ切るぞ!」

 

周囲にいる、俺含め十人全員を加速させ、一気に地を駆け抜ける。

 

「初撃はライトだ!丸ごと消し飛ばせ!」

 

「わかってる...!」

 

ライトが必殺技を発動させる。刃のついていない柄を振り抜くと、大量の聖素が溢れ出して魔物の大群を飲み込み、浄化させ、丸ごと消し飛ばす。

 

「道ができた!突っ走るぞ!」

 

俺ら勇者パーティーが戦うのはここだけ。ライトが道を作るだけ。こっからは先に進むことに意識を集中し、無駄にスタミナと魔力を減らさないようにする。

 

ここから先は、臨時メンバーたちの出番だ。

 

「あとは頼んだぞ四人とも!」

 

「おう!」

 

四人とも、昨日今日の特訓のおかげで高速戦闘への慣れが十分にできている。走りながら、その勇姿を見ていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニアさんちょいと魔法貰うよ!」

 

略奪をニアさんを対象にして発動させる。奪えた魔法は...魔法拡散?適性も技術も凄いし当たりではあるけど今は要らない!もう一回!

 

「おっ、いいのあんじゃん!使うぞその力!」

 

二度目に奪ったのは閃光。シンプルながら、障壁を貫通できる良い魔法だ。

 

「道を開けろ魔物ども!」

 

閃光を放ち、前方の魔物を貫く。そうしながらも横目で強そうな魔物を探し、見つけては略奪を発動して能力を奪っていく。

 

「……見た目が強そうってだけで、能力は良いのがないな...」

 

魔物から強い能力が取れる可能性は相当低い。巨大化した魔物なら面白い力を持っていることが多いけど、こんな普通の魔物だと何も持っていないこともザラだ。まぁ、奪うだけでも力を確実に削げているわけだから、後続の冒険者たちが倒しやすくなるし無駄ではないけれど...強い能力が欲しいなら人から奪う方が手っ取り早いな。

 

「次はカリヤ貰うぞ!一番はなーんだ!」

 

「速度操作以外全部!」

 

「……嘘でしょ?」

 

意識したからって、こんなことできるのか?略奪を一度使っただけなのに、何百も何千も魔法やスキルを奪えてしまえた。完璧な同率一位なんてそうそう起こらないし、もし信頼度一位のものが複数個あった場合、略奪がどれを盗むのかなんて調べようがなかったから、こんな挙動をするなんて知らなかった。

 

「うわー頭ピリピリする...!」

 

一気に大量の魔法とスキルの情報、適性や記憶が流れ込んできて頭痛がする。けれど、これだけのことが起こって頭痛だけで済んでいるのは、カリヤの思考速度加速のおかげなのだろう。一秒が少し長く感じるという欠点さえ飲み込めば、物凄い戦いやすくて便利だ。

 

「でもありがたい!これで戦える!」

 

雷装と触手・水を同時に発動させる。奪った記憶によると、これの合わせ技が強いらしいけど...!

 

「……これ、速度探知必須では?」

 

九尾のなんたら...って技をやってみようとしたけど、制御が難しすぎて諦める。二本が限界だな。とりあえず、魔力と雷装のリンクとやらをして...と。

 

「雷水剣完成!さぁ切れろ!」

 

剣と化した二本の触手を振り回し、魔物を真っ二つに切断する。いいね制御は相変わらず難しいけど強い!

 

「いいねいいね!強いぞ雷装!」

 

いつもとテンションがおかしい気がするけど、カリヤの記憶が大量に流れ込んでいる影響か?いやそんなこと気にしてるくらいならさっさと攻撃だ!

 

「離れすぎだぞワンナ。それ以上行くと置いてかれる」

 

なぜかテンションが少しおかしくなっているワンナを掴み、内側へと引っ張る。カリヤから6.4メートル以上離れると、加速の恩恵を受けられなくなり一瞬で置いてかれてしまう。カリヤはその距離を正確に知ることができるが、俺たちにはそれはできない。6メートルちょいなんて距離、大体でしか把握できない。突然置いてかれるなんてことにならないよう、距離には注意だ。

 

「ちょっとはしゃぎすぎじゃないか?どうしたんだ一体」

 

「あはは、なんか楽しくて」

 

「戦争を楽しむな...とは言いたいが、怒るに怒れないな。俺もこの速度感が楽しくなってきている」

 

さっきから色彩剣装で赤の光を刀に纏い、近くに来た魔物を一瞬で切っては走るを繰り返しているのだが、なんとも言えない爽快感がある。

 

「黒は使わないのか?」

 

「黒なんか使ってみろ。原因作りをする前に通り過ぎて回収できなくなるのがオチだ。金ならまだ使えるが、それをするくらいなら赤で切ったほうが早い」

 

青や緑も、直接近づいて切れるなら必要ない。混色も使い勝手の面で赤に劣る。カリヤのサポートがある今なら、赤色が最適だった。

 

「というかワンナ。その力はなんなんだ」

 

「カリヤの力一式奪えちゃった」

 

「……君も、大概おかしい方だよな」

 

俺たちは魔王城前でガネルに帰る手筈になっているけれど、ワンナはそのまま勇者パーティーについて行っても問題ないんじゃないか?

 

「そうか?私なんて一人では何もできないダメなやつなんだが...っと、障壁は魔法改竄して攻撃だな」

 

「知らない魔法がサラッと出ている...⁉︎」

 

どこでそんな魔法を会得したんだカリヤは。そして、すぐに使いこなすワンナはなんなんだ?異次元レベルが二人もいて頭おかしくなる...

 

「ちょっと!気を抜きすぎですよ!」

 

スパァァンッッ!と、鞭がカノウさんのすぐ近くまで迫っていた魔物に命中する。

 

同調魔法(シンクロ)!」

 

鞭で叩いた魔物と私がリンクする。魔物についている傷が私に、そして私の傷が魔物にも現れる。

 

魔物の右目が地面に落ちる。その頭、脳みその言語機能を司る部分にも傷がついていることだろう。これで、もうこの魔物は魔法を詠唱することはできない。魔法を使う種族ならば、これでもう戦闘不能だろう。

 

そして、現れた傷はもう一つ。魔物の両足、膝から下が消滅した。

 

カリヤさんと出会ったカイスの戦争からしばらく経ったある日、ダンジョン探索中に魔物のトラップにかかってしまい、この両足は完全に凍結、壊死してしまった。状態が悪く、誰にも治せないということになり切断、今はそのダンジョンで見つけていた魔道具を義足として使っている。義足があるとはいえ、本当の足を失っているのは事実。ゆえに、同調魔法を使うと相手の両足は消滅する。

 

「っ...やっぱりそうなのか」

 

足が消えた魔物を見て、ポツリとカリヤさんが呟いた。やっぱりってことは、既にこの足のことには気づいていたみたいだ。昨日カリヤさんに会った時、見る前から右目がないことに気づいたようにこの足のことにも気付くかと思っていたけど、特に何も言われなかったからバレていないのかと思っていた。気遣ってくれたのかな?

 

「気にしなくてもいいよ。これのおかげで前よりも走りやすくなってるし」

 

膝は自分のがちゃんと残っているおかげで曲げ伸ばしもスムーズ。負担が膝にくるというデメリットさえ目を瞑れば、頑丈だし色んな機能があるしで結構良い。足を失ったにしては良い方だと思う。

 

「それに、こんなこともできるしね!」

 

足をブンッと振ると、氷でできた刃が魔物に向かって飛んでいき、さっきのとは別の魔物の頬に浅い切り傷をつける。そして同調魔法を発動させて、三種の傷を与える。

 

「なんだそれ走○脚かよ⁉︎」

 

カリヤさんが叫んでるぶれーどなんたらというのはよくわからないけど、しばらくこれで攻撃し続けて同調魔法を連発していく。私はこれだけをしていればいい。片目と両足が潰されてて、魔法も使えない魔物なんて誰も怖くない。放置していればカイスから飛んでくる魔法かカリスの矢が撃ち抜いてくれるし、その前にガネルの冒険者が倒してくれるはず。戦闘不能状態の魔物を増やすことが私の役割だ。

 

けれど、そんな私にも苦手な相手がいる。

 

「くっ...こいつ任せます!」

 

同調魔法は、私と私が傷つけた相手をリンクさせる魔法。リンクさせるには、ある程度身体的特徴が一致していなければならない。私自身が両足を欠損しているため、ある程度違っていても許容されるが...少なくとも、おおよその形が人型であることが基準になっている。

 

それゆえに、スライムやトレントのような人の形を成していない魔物や、姿形を変形できるような力を持つ魔物には同調魔法を使うことができない。いや、リミッターをかけているから使えないようになっているだけで、無理矢理使うことも出来なくはないのだけれど...使ったら多分、自分も相手も身体が変形して同時に死んでしまうから使えないも同然だ。

 

だから、今目の前にいるこういう魔物は勢いよく横に蹴り飛ばして、まず前進の邪魔にならないようにしながら誰かにパスする!

 

「任された!」

 

ナルミからパスされた魔物を氷の槍で貫きながら横へと吹き飛ばす。カリヤ対策であったはずの雨だけど、氷の供給源になるから僕にとってはありがたい恵みの雨だ。

 

僕の役割は、左サイドの魔物の殲滅、そして進行方向にいる魔物を先んじて倒すことだ。ナルミとカノウは遠距離攻撃も持っているみたいだけど、走りながらという関係上近接攻撃しかしていない。前側を担当している二人がこれだと、いずれ倒すのが追いつかなくなってしまう。それを防ぐのが僕の役割。

 

ナルミの撃ち漏らしを氷の武器で貫きながら、はるか前方にいる魔物を氷漬けにしてから砕くのを繰り返す。魔力を大量に使ってしまうけれど、カリヤが常に魔力回復速度加速をしてくれているおかげで消費と回復が釣り合っているからなんとか長時間使えている...これだと無限に魔法を使えてしまうけど、なんかダメじゃない?別に気にすることでもないんだろうけど、なんかダメじゃないかと思ってしまう。言葉には出来ないけど...こう...ねぇ?

 

「……これ、絶対零度しなくてもいいんじゃ...?」

 

今、こうして攻撃するのとは別に、カリヤたち勇者パーティーのいる場所だけに絶対零度領域を発動させている。もし万が一僕たち四人の攻撃を掻い潜って六人のところにたどり着いたとしても、凍らせた空気の壁で守るためなんだけれども、なんか別にいらないような気がしてきた。これをしてもなお収支が釣り合ってるのがおかしいのはもう置いておくとして、これは流石に過剰防衛な気がするのだ。

 

「っと、上から来てるし!」

 

空から鳥の魔物が急降下してきた。急いで雨を周囲の空気ごと凍結させて傘にし、激突させることで攻撃を防ぐ。

 

「そろそろ魔法も届かなくなってきたか...!」

 

思考加速のせいで走り始めてからどれくらい経ったのかいまいち見当がつかないが、だいぶ距離が離れたためカイスの防衛機構が届かなくなってきたらしい。カリスの矢はまだ飛んできているけど、魔法が届かなくなったため矢を避け切った魔物が空から飛来してくるようになってきた。

 

「仕事がまた増えた...!」

 

前方に加えて上から来る魔物も処理しないといけないとなると、手が足りなくなっていずれ撃ち漏らしが出てくるだろう。一応絶対零度領域は残すべきか...

 

けれど、カイスから魔法が飛んでこなくなったことは、僕にとっては別に悪いことでもない。僕もカリヤほどではないけど、周囲の探知能力を持っている。熱操作を使うのにあたって、周囲の温度を知ることは大前提と言ってもいい。それの応用で、熱によって周囲を探知することができるのだ。

 

さっきまでは大量に飛んでくる魔法のせいで周囲の熱の変化が激しくなり、熱探知が使えなくなっていたが、今はもう使える。たとえ空から魔物が飛んできたとしても、すぐに気づいて雨で作った氷で防衛や攻撃ができるだろう。

 

「下から来るぞカイ!」

 

「っ、了解!」

 

僕の熱探知は地中を探るのにはあまり向いていない。カリヤから言われて、初めて僕たちの下まで魔物が接近しているのに気づくことができた。急いで地中だけ凍結させる。倒せたかはわからないけれど、少なくとも動きを封じることはできた。

 

「あと二分も走れば大群から抜け出せる!もう少しの辛抱だ!」

 

いや、戦争開始からどれだけ経ったのかわからないからあと二分とかもう少しの辛抱とか言われてもわからないんだけど...!

 

「あっはは!どうやら二分じゃ終わらないみたいだ!」

 

なんかテンションがさっきからおかしいワンナがそう叫んだ。いつのまに空を飛び出したんだ...?と思いながらも前を見ると、ワンナの言っている意味がわかった。

 

さっきまでいなかった巨大な魔物がどこからともなく現れていたのだ。おそらく、普通の魔物も続々と転移していることだろう。

 

「流石にこれを四人で倒すのは厳しい...か?」

 

「三人がどうかは知らないですけど、少なくとも私は無理。アレに同調魔法を使うのはダメだと思う」

 

「私は行けると思うけどね!」

 

「深入りはダメだぜワンナ。全能感に浸るのはいいが、少し落ち着け」

 

「じゃあどうするんだ?アイツらを倒さないことには先には進めないぞ」

 

「……私が協力するわ。今から流す指示に従いなさい」

 

ニアがそう言うと、頭の中に情報が流れ込んでくる。

 

「了解!じゃあ貰うよ!」

 

ニアから必要な魔法と技術を奪い取る。

 

「それじゃあ...全部吹っ飛ばそうか!」

 

ワンナはニアから奪い取った魔法で空気を加圧する。カイはその加圧された空気の温度を上げ、プラズマ化の進行を補佐する。そして最後にカノウが、黄色の光で空間を引き裂き、発射されたプラズマの通り道を作り、余計な拡散と自分たちに余波が飛んでくるのを防ぐ。

 

結果。まだかなり距離があるうちから巨大化魔物が二体ほど消し飛んだ。

 

「なにこれ面白っ!」

 

「ああまたテンションがおかしくなってやがる...!あとはあの一体を仕留めれば終わりだよな!」

 

「追加が来なければだけど...ね!」

 

「そんなこと言うな現実になんだろうが!」

 

「私は別に来てもいいけど!」

 

「もうこいつ黙らせろガチで頭狂ってんじゃねぇか⁉︎」

 

「ナルミ、一回ワンナを叩いてくれ」

 

「ちょっ、それは洒落にならない...!」

 

「会話増えてきたな。だいぶ余裕できたか?」

 

四人で話していたら、カリヤがそう言った。奥に行くにつれて魔物の数が減ってきていたから、たしかに余裕は出てきている。あの巨大化魔物をどう処理するかという問題は残っているけれど、まぁこの様子だと問題ないだろう。

 

「まぁな。最後の一体も俺たちだけで倒してやるよ」

 

「そいつは助かる。じゃあ頼むぞ!」

 

「おう!任された!」

 

ナルミを除いた三人で一度目を合わせ、さっきのプラズマとは違う方法であの魔物を倒すことに決める。それぞれの最強の技を同時にぶつけて倒すことにしたのだ。

 

「さぁさぁ魔力十分!二人とも準備はいい?」

 

魔物から奪った魔力や、カイスから飛んでくる魔法を魔法拡散で分解して貯蔵しておいた魔力のほぼ全てを注ぎ込み、カリヤの持つ改良版の閃光を発動させる。

 

「カイ、君は?」

 

色彩剣装の最終奥義、三色を混ぜた純白の光を刀に纏いながら、準備中のカイに呼びかける。

 

「ごめん待たせた。いつでも撃てる」

 

低温には、絶対零度という限界が存在する。しかし、高温に限界は存在せず、際限なく上げることができる。さっき使ったプラズマと似たような現象を起こすことになるが...この超高温の点をあの魔物に向けて放ち、その体表面に触れた瞬間に解放すれば、二人にも負けないくらい威力のある攻撃になるだろう。

 

「じゃあ撃つよ!カウント!3!」

 

「2!」

 

「1...!」

 

「「「ゼロッ!」」」

 

三種の必殺魔法が魔物に向かって飛ぶ。次の瞬間、跡形もなく魔物は消し飛び、吹き飛ばされそうになるほどの衝撃波と逆風を受けながら、さっきまで魔物が立っていた箇所を走り抜ける。

 

「よし抜けた!」

 

「山の麓にたどり着くまで油断しない!魔物や魔族の転移を警戒!」

 

魔物の大群から抜け出したため、もうここに魔物はいない。ほぼ全ての魔物があの大群に集約されているから、魔王城のある山まで魔物と出会うことはこのまま何事もなくいけばないだろう。

 

魔族の転移にだけ注意しながら、俺たちは魔王の待つ山まで走るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ...みんなお疲れ様。目的地に到着だ」

 

何分走ったか、俺にもわからない。なんか空間でも歪まされているのか、それとも時間感覚を狂わされただけなのかはわからないが、見た目の距離よりも長く感じた。その分時間もかかったが、それなりに早く来れた方だろう。

 

「まずは四人とも、本当にありがとう。おかげで、俺たちの消耗がほとんどない状態でここまで来れた。感謝する」

 

「カリヤたちには頑張ってもらわないとだからな、協力するのは当然だ。お前ら...絶対に勝てよ」

 

「もちろんだ。そのために、俺たちはここまで来たんだから」

 

「……それじゃあ四人とも、ガネルに送るわ。このゲートに入りなさい」

 

ニアが次元転移を発動させる。

 

「じゃあな、生きて返ってくれ」

 

「もちろん」

 

カイがゲートに入る。

 

「幸運を祈るよ。全部終わったら、奢ってやるからまた全員で会おうぜ」

 

「ああ。ゴチになるからたんまり金稼いどけよ」

 

カノウがゲートに入る。

 

「皆さん頑張ってください!私もガネルで防衛頑張ってきます!」

 

「おう、しっかり守ってくれよ」

 

ナルミがゲートに入る。

 

「それじゃあまた会おう...って、なにその目」

 

「さっさと俺から盗ったもの返せ」

 

「おっと忘れてたすまないすまない...」

 

絶対わざとだよ時間ギリギリまで持ってるつもりだったなこいつ。

 

「ほらさっさと行った行った」

 

ワンナをゲートに押し込む。

 

これで、四人全員がガネルに帰還したことになる。

 

「……ワンナは残しても良かったんじゃないかしら」

 

「俺も最初はそう思っていたんだが...さっきまでのテンションを見てやめた。多分あれ、俺の力を奪うと同時に奪った記憶が影響したんだと思う。そのせいで確実に疲労しているだろうし、魔王に略奪を使った時に似たようなことになられちゃ困る」

 

魔物相手の略奪は問題ないみたいだけど、魔王に対して使った時に、どんなことが起こるかは誰にもわからない。魔王は一度も代替わりをしていない。能力を奪えば、膨大な記憶の濁流に飲まれる危険がある。

 

「それに、だ。略奪をほぼノーコストで使えるワンナは魔族にとって天敵だ。真っ先に狙いに来ること間違い無し。ガチで殺しに来られると、誰かの力をあらかじめ奪っていない限り自衛手段のないワンナは瞬殺されてしまう。だから、連れていくわけにはいかない」

 

「なるほど...一理あるわね」

 

「納得してもらえたところで、切り替えていくぞ。魔王城に乗り込む...そのために、まずはこの山を登ろうか」

 

聳え立つ山を見上げる。その頂上にある魔王城を、俺たち全員睨みつけるのだった。




いつもは視点変更をする時、大量の改行を間に挟んでいたんですけど、今回はそれだとテンポが悪かったのでシームレスに繋げてみました。
一応誰視点に切り替わったのかわかるように努力しましたが...分かりにくかったらすみません。

ワンナ強すぎて魔王討伐についてこないの不自然問題をやっと解決できた...

p.s.
名前ミスを修正しました。
反省。
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