前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8355字。

とうとう魔王の城に到着...!


最初からクライマックス...?

「よいしょっ...っと」

 

俺たちは今、魔王の山を登っている。ただ、登るとは登山的な意味ではなく、ロッククライミングという意味の登るだが。

 

魔王の山は、女神の山とは違って道が整備されていない。斜面も歩いて登れるような傾斜ではなく、飛ぶか崖を掴んで登るかの二択をするしかなかった。

 

「こういう時、盾が腕につけるタイプで良かったと思うよ」

 

「はは、言えてる」

 

もし手で掴んで使うタイプ盾をレストが使っていたら、この崖を登るのは大変だっただろう。空を飛べる誰かに抱えてもらう感じになっていたかもな。

 

「あともう少しよ。三人とも頑張りなさい」

 

「あと何メートルくらい?」

 

「二十メートルくらい」

 

「うへー」

 

流石のクミリアもロッククライミングの経験はあまりなかったのか、珍しく項垂れている。まだまだ頂上まで遠いことに、軽く絶望しているのだろう。

 

「なんか、カリヤ慣れてるよね。経験あるの?」

 

「俺の世界で、クライミングが流行った時期があってな。軽ーくやってみたりして、コツとか色々調べたことがあったんだ。そのおかげだな」

 

だいぶメジャーな競技だし、高校生なら誰しも一回くらいはチャレンジした経験があると思う。まぁ、俺は挫折した側だけど...その時の記憶と、今のこの肉体があれば、こんな崖を登るくらい余裕だ。

 

「んじゃ、俺先行って様子見てくるわ」

 

ひょいひょいと崖を登り、頂上に到達する...よし、魔物や魔族の待ち伏せはないな。

 

「おーい、安全だからさっさと登ってこーい」

 

「早く来て欲しいなら手伝って...!」

 

「カリヤとは違って僕たちはどれが安全な岩かなんてわかんないんだよ?それに、暗くてよく見えないし...」

 

「……ちょっと待ちなさいレスト。今なんて言ったの?」

 

「ごめんとりあえず登り切ってからにして」

 

「見えないならしゃーないこれでいいか?」

 

5114ページ 黒のみ 思考共有

 

「ありがとこれで登れる...っと!」

 

クミリアとレストが崖を登り切る。

 

「ふぅ...」

 

「ふぅじゃないわ。それよりさっき言ってたのはなに?」

 

「なにって...暗くて見えないって話?」

 

「私、あなたに暗視の魔法かけたわよね?どうして解けてるわけ?」

 

普通にロッククライミングしてきたけど、現在は夜も夜。月が無いこの世界では、夜は星明かりしかなくほぼ真っ暗と言ってもいい。自分で暗視の魔法を使うことができず、ステラやクミリアのように夜目が利くわけでもないレストはニアに魔法をかけてもらっていた。なのに、それが切れているようだ。

 

「魔法が解けたのはいつ頃だ?」

 

「山を登っていくうちに、少しずつ見えなくなった感じ。みんなもそうなってるのかと思ってたけど...違うんだ」

 

「……なるほど、そういうことか」

 

「なんでかわかったの?」

 

「シレンの穴で、自分にも他人にもバフをかけられない、ってやつがあっただろ?それと似たような感じで、自分自身にかけることはできるけど、人にバフを与えるのは出来ないんだと思う。これなら、レストだけが見えないことの説明がつく」

 

「なるほど、理屈は通ってるわね...」

 

「シレンの穴で経験しておいてよかったね」

 

「でも都合が良すぎるというか...あそこで経験済みのことが今ここで実際に起こるって、どんな確率よ」

 

「どんな確率って、ほぼ絶対じゃね?シレンの穴は魔王対策なわけだし、全く違うことされる方が困るでしょ」

 

「それもそうだけど、なんか腑に落ちないというか...シレンの穴の内容は変わらないわけだし、魔王もそれを見越して別のことをしてきそうなものじゃない」

 

「そう言われるとそうだが...いや待て?シレンの穴は封印された魔神が放出している魔素を使って運用しているわけだろ?そして、魔王は魔神が作り出した。ってことは、魔神の魔素を解析すれば、魔王の力をある程度推察することができる。だから完璧な対策ができてるんじゃないか?」

 

「なるほど天才ね」

 

「お前ら魔神云々の話聞いてなかったからそうなるんだよ。ちゃんと聞いてたら同じことを考えれたはずだぜ」

 

「そうかしら...まぁそんなことがわかったとはいえ、バフをかけられないのには変わりないわ。暗視くらい使えるようにしておきなさいよ」

 

「夜に護衛しないといけない依頼とかもあっただろうに、そんときはどうしてたんだ?」

 

「見えなくてもどこから攻撃来るか大体わかるし...」

 

それはそれですごいなオイ。

 

「どうせ城に入るわけだし、中は灯りあるでしょ。見えなくても平気だよ」

 

「レストがそう言うなら別にいいけれど...自分にバフをかけられるならみんなも大丈夫よね?」

 

「だな。俺らってあんまり相互にバフをかけることってないからな。まぁ、どうせ先に進んだらバフが完全禁止になるんだろうけど」

 

自己完結できているのは、勇者や英雄を選ぶシステムのおかげだ。それぞれ個人で力をつけた人を集めて一つのパーティーを作るから、自分でバフをかけられる人が自ずと集まることになる。

 

ゆえに、他者へのバフ禁止は、あまり役に立たないことが多い。そんなこと魔王もわかってるだろうし、これから自分にバフをかけることもできなくなることだろう。

 

「それじゃあとりあえず、突入しましょうか。カリヤとレストの二人で先行して、警戒しながら行くわよ」

 

「……え?どうして普通に入ろうとしてるんだ?ニア」

 

「入らないでどうやって魔王を倒す気よ」

 

「こっからライトの必殺技ブッパすればいいじゃん」

 

……うわぁ...って顔するのやめてくれない?

 

「俺、そんな変なこと言ったか?魔王の城って魔素が物体化したものなんだろ?魔素なら、ライトの必殺技で消し飛ばせるじゃんか」

 

「……外道」

 

「おい誰が外道だよ誰が」

 

「相変わらず、すごい発想するわよねぇ...異世界から来たから私たちとは価値観が違うのね」

 

「えっ、なに?マジで思い浮かばなかったのか?魔王が待ち構えてる城に馬鹿正直に入るやつなんて居ないって。こういう時は、外から壁ぶち抜いて奇襲をかけるとか、城を破壊して魔王に外に出てもらうのが定石じゃね?」

 

「どこの定石よ...たしかに、その方が合理的ではあるわね。それで魔王を倒せたら御の字。もし倒せなくても、城から追い出せたり、城の修復に力を使って消耗してくれるかもしれない。やらない理由がないわ」

 

「だろ?だからほら、頼むぜライトそんなすっごい嫌そうな顔すんな」

 

「なんか、フロートが考えそうな作戦だよね」

 

「それ絶対皮肉ってるよな?お?喧嘩するか?」

 

「喧嘩しないの!ほらライトやっちゃって!」

 

「わかったよ」

 

ライトが聖剣を構える。

 

「じゃあ...撃つよ」

 

鞘から聖素の光が溢れ出す。あとは柄を鞘から外して振り抜くだけ...なのだが、なぜかライトは動かない。

 

「……どうした?」

 

「撃てない。なぜか腕が動かなくなった」

 

「マジ?外から必殺技を撃てないように対策されてるってことか?いやでも、勇者にはありとあらゆるデバフや悪影響を受けなくなる加護があるはずだろ?なのに動けないって、それおかしいぞ」

 

「おかしいと言われても、現に動けないわけで...撃とうとしなければ動けるみたいだ」

 

狙いを城から変える分には腕を動かせるらしい。けれど、城に向けて必殺技を撃つことだけはできないようだ。ライトは諦めて、必殺技の発動を取りやめる。

 

「……なるほど、なぜ撃てないのかわかったわ」

 

「本当かニア」

 

「ええ。ライトには何も異常はなかったのよ」

 

「ライトには異常がない?じゃあどうやってライトの動きを止めてたんだよ」

 

「カリヤの世界じゃどうなのかは知らないけれど、この世界で一番強制力がある事象があるわ。それは、未来が現在に干渉した時に起こる、未来改変防止現象。あの城、ライトが必殺技を撃とうとした瞬間だけ、存在が二重に重なっていたわ」

 

「あー...過去跳躍の応用ってことか」

 

カノウの黒の光でも似たような現象が起こるが、過去跳躍の方が原理は似ているな。要は、未来から無傷の城が送られてきているわけだから、現在の城を傷つけることは絶対にできないというわけだ。こんな守り方があったとは...魔王もなかなかやるようだ。

 

「対策されてるとなると、もうしゃーない。普通に入るしかないな」

 

「よしキタ!」

 

「なんでそんな意気揚々になってるんですかねぇ...ほら、こっから先は何が起こるかわからない。いつ魔族が襲いかかってくるわからないし、いつ転移で分断されるかもわからない。しっかり切り替えて集中してくぞ。いいな?」

 

「了解」

 

というわけで、当初の予定通り、俺とレストの二人を先頭にし、城に入る準備をする。

 

この扉を開ければ、魔王の領域。一瞬たりとも気を抜くことはできない。

 

扉の先に待ち伏せがいないことを速度探知で確認してから、俺は恐る恐る扉を開ける。

 

そして扉の先に見えたその光景は...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……は?」

 

思考が追いつかない。思考加速をしても、少しずつでしか状況を飲み込めなかった。

 

まず、俺たちが入ってきたのは、城のエントランスホール...じゃなかった。どう見ても外観よりも広いのは空間拡張系の魔法の仕業だとしても、とにかく異質な場所だった。

 

というか、他に部屋がない。城は結構な高さがあったはずなのに、階段もない。ってか、壁がねぇ。探したら果てはあるのかもしれないが、遠くまで見通しても壁が見当たらない。なんなら、さっき入ってきた扉も消え失せてしまった。後ろにも、壁はない。天井もない。なのに普通に明るいのはどうせ魔法のおかげだろう。

 

さて、どこを見ても他の場所に通じそうなところがない以上、とりあえずここが城の内部であり、最初の部屋にして最奥であると仮定しよう。

 

とすると、だ。

 

視線を少し上に上げたところにいる、あの黒いモヤのようなもの。

 

あれは、まさか...

 

「魔、王...⁉︎」

 

そうとしか考えられないだろう。実は階段が隠されている、なんてことがない限りこの城にこの部屋以外の場所は存在しない。となると、この場所にいるアイツ=この城の主、魔王ということになってしまう。

 

けれど、こんなあっさりと魔王と出会うなんておかしすぎる。あいつは本物の魔王じゃない...そう考えたい。けれど、いろんな可能性を考えても、全て自分で否定できてしまった。

 

一つ。あれは影武者であり、認識を誤魔化して魔王だと錯覚させている説。これは、ライトもあれが魔王だと認識している時点で否定される。ライトにそういった干渉をすることはできないからだ。

 

一つ。本来は城にも色々ギミックがあったはずだが、魔族によって強制的に転移させられて早々に魔王の部屋にぶち込まれた説。これも、転移させられたなら速度探知で気付けるから違う。

 

他にも色々あるが、全て否定できてしまう。フロートが模倣した複製体って可能性だけは捨てきれないけど...流石に複製できてたまるか。

 

「よ...よくわからんが戦闘用意!本物かどうかは一旦無視!アイツを倒すぞ!」

 

「りょ、了解!」

 

魔王は手足がちゃんとある、人型だと前に神様から聞いていたけれど、こいつは違う。どう見ても黒いモヤだ。偽物説を一旦置いて説明するならば、まだ不完全な顕現、復活しかできていないとかだろう。フロートも少々早いがとか言っていたし、俺たちは超高速で中央突破してここまで来たから、まだ完全体じゃないってわけだ。

 

まだ復活途中。この考察が正しければ、又とない絶好のチャンスだ。

 

「ひとまず散開!攻撃される前に散らば...っ⁉︎」

 

黒いモヤから、波動のようなものが出てきた。タ○ーのO○F波動が見た目としては近い。そしてこの速さ。今から走っても追いつかれる。避けるには未来跳躍でもしないといけないけど...無理だ避けられない。喰らっちまう...!

 

「っ...何もない?」

 

波動が俺たちを貫通する。けれど、特に何かが起こった様子はない。いったい何が...

 

「……あれ?ここどこ?」

 

ステラが、そんなことを呟いた。

 

「この状況は...なに?」

 

「いつの間にこんなところに...」

 

ニア、クミリアも似たような変なことを呟いた。レストも同じだ。さっきの波動で何かされたのだろう。しかし、ライトは勇者の力で無事だとして、なぜ俺も無事なんだ?神の使いだから免れたとか、実は気づいてないだけで影響を受けているとかだとアレだが...俺が無事なことには、何か意味があるはずだ。

 

「……チッ、そういうことか」

 

四人に共通しているのは、直近の記憶がないこと。俺が無事なのも併せて考えると、あの波動は短期記憶を消去、もしくは封印するもの。俺が影響を受けていないのは、常に記憶加速によって短期記憶を一瞬で長期記憶へと移しているから。

 

「状況をさっさと飲み込め!」

 

5114ページ 黒のみ 思考共有

 

四人に人魔戦争開始から今までの情報を一瞬で伝達する。

 

「シレンの穴での記憶は消えない!あの時のことを思い出しながら戦え!」

 

シレンの穴第百階層。シレンの穴で起こったことの全てを回想させ、記憶に焼き付ける。実際に体験していたときは、どのような意図があるのかよくわからなかったが...まさか、魔王の攻撃のガンメタだったとはな。

 

「一斉攻撃!」

 

黒いモヤに全員で攻撃を仕掛ける。実体化してるのか不明だが、当たれば倒せる相手、通り抜けたりすれば今は倒せないor弱点しか通らないと、攻撃が当たる前から場合分けをして作戦を練り続ける。

 

攻撃は...当たった!ひとまず普通の攻撃でも効くのがわかったのは僥倖!あとは弱点の解析と魔王の攻撃の解析!

 

「……攻撃来るぞ!」

 

虚空から巨大な腕が現れ、俺たちを薙ぎ払いにかかる。動きがのっぺりしているから、俺がいなくても普通に回避できる程度の攻撃だな。警戒の必要はほぼ無し。

 

「魔王のくせに攻撃弱っちぃなァ!なんだデバフ型かァ?」

 

ここまで魔王がやってきたこと、他者へのバフ封じと短期記憶封じだろ?やってることが魔王らしくない。マジでこいつ魔王じゃない説ある?

 

「これだと魔族の方が戦いがいあるぞ!四人とも出てきやがれ!」

 

そう叫ぶが、魔族は出てこない。これもおかしい。魔王と戦う前、もしくは魔王と戦ってる最中に魔族が絡んでくるだろうと予想していたのに、どちらでもなかった。魔族たちは何をしているんだ?俺らをここに閉じ込めて戦わせている最中に、王都に攻め入ってるとかは流石にやめてくれよ?

 

「どうして来ねぇんだ?...さっきの攻撃来るぞ!」

 

また虚空から腕が飛び出してくる。

 

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「クソッ、記憶封じのせいか...!あれ永続効果かよ!」

 

短期記憶の封印は、どうやらあの瞬間だけでなく常に行われているらしい。このままだと、みんなは魔王の攻撃パターンを何一つ覚えることができなくなる。そしてもし弱点を見つけたとしても、それを覚えていられない。戦闘において、これらは致命的だ。回避も攻撃もままならなくなってしまう。

 

「めんどくせぇ...情報処理は俺の役目だ!受け取れ!」

 

6401ページ 黒のみ 五感共有

5114ページ 黒のみ 思考共有

 

五感共有の魔法を使い、みんなの五感で感じ取った情報を全て受け取る。そして得た情報から戦闘に必要な情報だけをピックアップし、思考共有でみんなに送り返す。自分の見た情報を直接流さないのは、なるべく自身の感じたことをそのまま覚えてもらったほうが戦いやすいはずだから。それぞれ注意を向ける箇所があるはずだから、長期記憶に押し込んだ自身の記憶をしっかり活用してもらいたい。

 

「これを続けないといけないわけか...なかなかハードだな」

 

常にこの二つの魔法を回し続ける必要がある。戦闘にはそこまで支障ないだろうが、こっからも同じような補助が必要になってくると、それはそれは面倒なことになる。これ以上魔王に何かされる前に、早く倒してしまいたい。

 

「もっと攻撃しねぇと...っ!」

 

急に虚空から大量の魔物が現れる。魔族の転移の仕業か、それとも魔王の召喚魔法かなにかか...いや違ぇ!

 

「なるほど幻覚か!」

 

五感を受け取っていたのは、記憶封印を受けている四人だけじゃない。ライトからも受け取っていた。そのおかげで、今見ているあの大量の魔物たちが、シレンの穴でもあったような幻覚の産物だと気づくことができた。

 

「ライト!光を破壊しろ!」

 

ただ、幻覚だとわかっても、あの魔物の攻撃を防ぐことはできない。幻覚の痛みとはいえ、そのショックだけで死ぬことも十分あり得る。幻覚を受けないため魔物に攻撃されることもないライトに、元凶の光を潰してもらう必要がある。

 

「その間に俺は魔王に攻撃を...!」

 

ライトが光の対処に向かっている間に、出来るだけダメージを与えておきたい。もしかしたら攻撃することで幻覚魔法が解けるかもしれないし、ここでダメージを出しておくのは悪くないはずだ。

 

そう思い、魔法図鑑に魔力を流そうとした時。

 

「……いや待て?」

 

別の案を閃いた。元々後ろの方に流そうと思っていたが、ほんの少しズラしてラストページに魔力を流し込む。

 

「ライト!光を潰すのは無しだ魔王に攻撃しろ!」

 

叫びながら、魔法を発動させる。

 

9942、9943ページ 魔法改竄

 

「対象反転!自分の魔法を受けな!」

 

俺たちにかかっていた幻覚魔法の対象が魔王自身に移る。魔王にどう映っているのかわからないが...誰もいないところを攻撃し始めた。ちゃんと効果が出ているようだな。

 

「今のうちだみんな!一斉攻撃!」

 

9930ページ 黒のみ 跳弾鏡射

 

幻覚に攻撃しても意味がないと悟った魔王は、俺たちの攻撃を警戒して腕で防御を行ったが、全くの無意味。空中に浮かんだ鏡によって魔法や矢が反射され、魔王に命中していく。

 

「……効いてそうに見えるのが幻覚じゃないことだけ祈るぜ...探知で直接探りに行く!」

 

4571ページ 黒のみ 触手・水

『雷装』

 

背中から触手を九本生やし、雷装を流して剣に変え、超接近戦モードに移行する。そして跳躍し、魔王に接近する。

 

「細切れにしてやらァ!」

 

触手を使って上手いこと腕の防御の内側に滑り込み、九本の触手の剣と刀で一気に斬りかかる。

 

「セイッ!」

 

攻撃は全て命中する...が、奇妙な感覚だ。黒いモヤに攻撃が当たると、確かな手応えが伝わってくる。けれど、相手はモヤ。自分でやっててなんだが、切断がダメージに繋がってるとは到底思えない。

 

しかし、速度探知のおかげでこの黒いモヤは決して幻覚の類ではなく、確かにここにいることは確認できた。攻撃した時のこの感覚は謎のままだが、一旦距離を取ろう。この距離だと攻撃されたら避けれない。

 

そして、速度探知でわかったことはもう一つある。

 

「ライト!魔王の核は魔素だ!展開で反転させろ!」

 

聖域展開。それをあの魔王の真下でするだけで、魔素で構成されている魔王を倒すことができる...かもしれない。理論上は可能なはずだが、これまで魔王が一度も代替わりしていないのを考えると、魔王はこの攻撃を喰らっていないと思われる。おそらく、何かしら妨害されるのだろう。勇者に気を取られたその隙を、俺たち五人で突いてしまおう。

 

ライトが魔王の真下に移動する。そして、聖域展開を発動させるために、聖剣を地面に突き刺し...

 

「っ⁉︎」

 

聖域展開が発動していない⁉︎突き刺したはず...いや、聖剣が床を突き抜けたのか!

 

こんな謎空間だけど、ここは魔王城!入る前に言ったように、魔王場は魔素で構成されている!だから聖域展開のために聖剣を地面に刺したとしても、そこから聖素を流し込んだ段階で床を構成する魔素が消滅してしまうから聖剣を刺すという条件を満たせない!これが魔王に聖域展開を使えない理由か!

 

「必殺技も使えないとなると...聖剣展開しか魔素への対抗手段が無ぇ!」

 

聖剣展開中は、聖剣の周囲の魔素は聖素へと反転する。しかし、その範囲は小さい。一度に反転させられる範囲が小さいため、魔王へのダメージもあまり期待はできない。もちろん、他の攻撃よりかは効くだろうけど...

 

「クソ。決して強くはねぇのに、ただひたすらに面倒な奴だ...!」

 

そう、攻撃自体はまだ単純だ。使ってくる妨害も、対処できる程度のものだ。だから強さだけで言えば、魔族の方がよっぽど強く感じる。

 

強いではなく、厄介。創作やゲームにおいて、ここまで厄介さに振り切った魔王がいただろうか。

 

「全部乗り越えて、絶対に倒してやる...!」

 

そう呟きながら刀を構える俺だったが...

 

「うわっ⁉︎」

 

「なっ⁉︎」

 

突然クミリアにぶつかり、二人まとめて吹き飛ばされてしまった。

 

「まーた知らない魔法かよ面倒な...!」

 

起き上がりながら、思考を回して今の攻撃の正体を探る。

 

この思考が止まる時。それは俺が死ぬ時で、勇者パーティーが負ける時だ。

 

ゆえに、止めるわけにはいかない。楔のバフが切れ、頭痛がする頭で思考を回し続けるのだった。




はい、早速魔王?戦です。
今のスペックの勇者パーティーと戦わせるには、どうしてもデバフ型にならざるを得ないんですよね...シレンの穴の意味や、勇者の悪影響無効化のことを考えると、デバフ型になるのは当然だったり。

次回はカリヤ視点以外もやろうかな...
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