前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
キネット・サーマル戦です。
戦闘ですが、思考パートの方が長いかも...?
『わかってると思うけど、私たちの目的はカリスに向かうことよ』
頭の中にニアの念話が流れ込んでくる。
『そんなの重々承知だ。言いたいのは、ここでこいつらを倒す必要はないってことだろ?』
魔族二人の攻撃を避けながら、まずは会議をしていく。
『そうよ。同時に殺さないといけないから、ちゃんと殺そうとすれば時間がかかりすぎるわ。あいつらもそれがわかってて時間稼ぎ役をしているのでしょうし』
奴らの勝利条件は、俺たちを足止めすること。足止めし、その間にカリスを滅ぼすことが目的なはずだ。おそらくは、あの場にいなかったフロートが魔物たちを先導しているはず。さっさとこいつらをどうにかして、カリスに向かわなければ危ない。
『私はまず、どうして次元転移に干渉されたのかを考えるわ。隙をついて逃げるにしても、さっきと同じように空間を破壊されては逃げれないしね』
『了解。俺もわかったことがあったら連絡する』
念話を終了する。
さて、こいつらとの戦闘で無駄に魔力やスタミナを使うわけにはいかない。あとの戦闘で有利になるように出来るだけ情報を集めながらかつ、こちらの消耗を最低限にして戦わなければならない。
「お前の相手は俺だコラァ!」
けれど、あいつらにそれを悟られるのはまずい。既に思考は冷静だが、まだ怒りとイライラに満ちているように思わせたい。バレない程度に力を抜きながら、でも隙があれば殺しにいく程度の本気度でサーマルに突っ込みに行く。こいつは電気も少し扱えるから、俺かクミリアでしか戦えない。俺が担当しよう。
「おいテメェ!今まで相手してやった恩義を忘れたんか?」
「さんっざんバカバカ言われた覚えしかないね!」
「そりゃそうだテメェはバカだからバカって言う他ねぇよなァ!」
「うっるさい!」
「煽ればすぐムキになるのがバカなんだよ」
サーマルの放った謎の超加速飛び蹴りをすんでのところで回避し、その赤い髪を掴んで無理矢理引っ張り、頚椎に蹴りを叩き込む。
「ほんと、妹に知能全部吸い取られてんじゃねぇか?」
「キネットちゃんもたまにバカになるけd
……サーマルの上半身が、どこからともなく飛んできたレーザーのようなもので消失した。
「ああもうびっくりした!」
すぐに再生したサーマル。空を見るとちょうどキネットがライトに切断されているところだった。おそらくレーザーを飛ばしたのはキネットで、同時に死ぬのを回避するための行動だったのだろう。バカって言ったのを粛清する意味合いもありそうだけど...
「……ってか、姿は隠さなくていいのか?見えてると戦いやすいことこの上ねぇなァ!」
なんか戦いやすいと思ったら、普通に姿が見えるからだ。速度探知の範囲外でも居場所がわかるって楽だなぁ...
「まっ、今更隠れても無駄だろうがなァ!」
『雷装』
雷装を発動して、復活したサーマルに攻撃を仕掛ける。細かくダメージを蓄積させてヘタに殺さずに、動きを封じる方向で攻撃していく。
「ほらテメェも電気使いやがれ!でねぇと死んじまうぞォ?」
「あんたみたいにそう便利なものじゃないんだっての...!」
「そうだよなお前の力じゃ無理だよなァ!」
「っ⁉︎私の力がバレてる...⁉︎」
「今まで色々やってくれたからよォ流石に気づくぜ!」
まぁ完全にわかってるわけではないが、なんとなくの予想はできている。このブラフで勝手に解説してくれれば楽なんだけど...
「それならもう出し惜しみは無し!出し尽くせ!」
「は?...ハァッ⁉︎」
急に雷装の出力が上がった。自分にダメージはないけれど、制御しきれず周りに撒き散らしてしまう。そして当然、その分の魔力は浪費していく。
「なんっだこれ...!」
「あれ?知らなかった...ってことはもしかしてやっちゃった?」
「なぜ今それを使ってるんですか姉さん⁉︎」
「だってカリヤが私の力の正体を知ってるって言うから!」
「そんなものブラフに決まっているでしょうに!」
「そうなの⁉︎」
ちくしょうよくわからねぇし今も魔力ゴリゴリ削れているが...固有能力の情報が増えたことは良しとしよう。そして...この過剰雷装も慣れた!
『雷装・鞭』
鞭を手に持ち、そこに雷装を流し込む。
「これに触れたらどうなるか...バカでもわかるよな?ほら避けろ避けろ!」
「この距離で避けれるわけ...ヒギィッ!」
鞭を振って先端でサーマルの頬を引っ叩き、その瞬間に大量の雷装を流してスタンガンを当てた時のように気絶させる。普段の雷装の威力じゃ到底気絶なんてさせられないが、こいつの能力のおかげでできるようになった。
「っし、あとはキネットを戦闘不能にすればいいだけだな」
サーマルが気絶したことで、雷装の異常発動が止まった。気絶したフリとかいう高度なことをサーマルがやっていなければ、あとはキネットがサーマルを一度殺して再起動しようとするのを防ぎながら気絶させればオーケーだ...なんで魔族を魔族から守るという工程があるのかというのは考えないでおこう。
「ほーれキネット。お前の姉さん人質だ。交渉しようじゃないか」
「死んでもいい人質なんて意味なさないわよ」
「そう言いながらキネットは容赦なくサーマルに向けて魔法を放っていく。
4700ページ 黒のみ 軌道変更
「おっと、流石に姉にそれはねぇんじゃないかねぇ?」
「チッ、面倒ね...」
5510ページ 黒のみ 念話
『みんな、俺がここでサーマルを守っておくから、全員でキネットを叩いてくれ』
全員にキネットを倒す指示を出す。よし、次はニアに次元転移関連のことを話そう。なんとなく、干渉された理由がわかったからな。
『よし、ニア聞いてくれ』
『内緒話はさせませんよ』
っ⁉︎ヤベェ割り込まれた!魔族戦闘訓練の時にニアがやったことと同じことされてる!
『なにやら情報が欲しそうな感じですが...そんなに欲しいのならあげましょうか』
そうキネットが言った瞬間だった。
「ッ...⁉︎」
頭の中に大量の情報が流れ込んでくる。思考共有を応用した妨害、発案者の俺にそんなの効くと思って...
「あア゛⁉︎んだよこれ!」
ただいらない情報を大量に流されただけなら、思考加速でさっさと処理してそのまま忘れてしまえばいいだけだった。しかし、だ。その中に、やけに重要そうな情報が混ざっていやがった。ご丁寧に、それっぽいけど関係ないものとかも混ざってやがる。
気にせず全て忘れるのも手だ。けれども、今は少しでも情報が欲しい。取れるものは取っておきたい。だから俺は、全ての情報を逐一精査して仕分けることにした。
「……って、サーマルいねぇ⁉︎」
いつのまにかサーマルがいなくなっていた。直前まで一切動いていなかったのにどうして...って、普通に転移じゃねぇか!頭回ってねぇなオイ!
「ああもう面倒い...!ニア!ちょっと待ってろ!」
復活したサーマルの攻撃を避けながら、意識の大半を思考に移す。
有益な情報...とりあえず一塊見つけた!えーっとなになに...?
前々回の人魔戦争の際、毎度のごとく勇者は魔王を完全に倒し切ることは叶わなかった。けれど、今回はその
そうして余力を残しながら倒された魔王は、勇者の仲間のうちの一人に、自ら生み出した忠実な魔族を忍ばせ、休眠期に入る。
仲間の内部に寄生する形で紛れ込んだ魔族は、とある場所で分離し、次の世代の勇者たちを妨害するためにとある物へと寄生した。その場所は...シレンの穴、第七十六階層だった。
……七十六階層って、あのめちゃくちゃ硬くて再生が早い土偶みたいなのがいたところだったよな?あれに魔族が寄生してたってのか?気づかなかった...
……ああ、なるほど。その後の情報でも説明されてるけど、その魔族が寄生していたがために、その次の代の勇者たち、俺たちからして先代の勇者たちはこの階層を突破することが出来なくなっていたんだな。それより前の勇者たちは突破できていたのに、先代だけ出来なかったことの理由として十分納得ができる。
で、だ。そのせいで先代勇者はシレンの穴を突破することが不可能になった。けれど、魔王は倒せた。この話を聞いた時には、先代勇者強すぎね?と思っていたが、実際には違かった。また魔王は自ら倒されたのだ。ほぼ自らの半身とも言える魔族を分離していたが故に、力が落ちていたというのも理由の一つらしいが...こっちは今は関係ないな。
魔王はまたしてもわざと倒された。そしてまた、自らの一部を忍ばせた。けれど、今回は勇者の仲間に忍ばせたのではなかった。自身の目的達成に一番近く、前回の前準備がなければ絶対に忍ばせられないところ。すなわち、聖剣。
魔王は聖剣に自身の一部を寄生させたのだ。普通はそんなことできないが、シレンの穴を突破できていないため聖剣の力が完全解放されていなかったために、それが可能になったらしい。
今のも既にかなりメチャクチャな話だが...こっからもメチャクチャだな。そうして聖剣に潜り込んだ魔王の一部は、そのまま聖剣と共に女神の山へと刺された。そして、女神の山の内部へと寄生した。
女神の力が落ちている云々はここから来ていたのだ。もっとも、力が落ち始めたのは二代前からという話だったから、元々少しずつ力が落ち始めていたところを魔王に付け入られ、さらに力を落とした感じなのだろう。シレンの穴のギミックへの干渉でも削れていたんだろうな。
そうして魔王は女神の山の中で力を強め、いよいよ完全に支配する準備を整えた。そしてついに今代の人魔戦争にて、魔王の山に残されていた体の一部を引き寄せる形で統合し、女神ごと山を乗っ取る...という、二代前から練られていた計画だったそうだ。俺とライトのおかげで女神の乗っ取りは叶わなかったが、場をかき乱す目的は達成しているな。人間サイドの防衛機構は北側に寄っているから、南から攻め入ることができるというのもデカそうだ。
……なるほど、そういうことだったのか。この話を聞いて、前にアクセルが言っていたことに合点がいった。
アクセルは、人魔戦争は今回で終わりだと言っていた。前回前々回の仕込みというのも、今の話を指していたのだろう。そりゃここまでやって勝てなかったら、他のどんな手を尽くしたとしても勝てないと悟る。勝てればそれでヨシ。負ければ終わり。そう魔王が考えても不思議じゃない。
「……って、有益そうなのこれしかねぇじゃねぇか...!」
同時並列で他の情報の処理もしていたが、どれもそれっぽいだけで何の意味もなかったり、矛盾があったり嘘八百だったりして無駄なものしかなかった。
「チキショウ怪文書送りつけやがって...!」
そりゃ当然だけども、開示しても特に戦闘に影響ないようなものしか送りつけてこないわな。個人的にはいろんな謎が解けるいい情報だったが、この戦闘、ましてや魔王戦には全くの意味をなさない。
いや、魔王が何かに寄生する力を持つというのは重要か?土偶に寄生していた魔族というのも気になる。土偶は破壊できたけど、その時に魔族も死んだのか?もし死んでなかったら、魔王戦に参加してくる可能性が高い。そういうところだけ、ちゃんと覚えておこう。
「とりま今はニアに情報を...!」
さっき送れなかった情報をニアに送りたい。しかし、念話だとまた割り込まれてしまう。だから...
5114ページ 黒のみ 思考共有
ニアに必要な情報を思考共有で送りつける。
次元転移にキネットたちが干渉できたのは、以前に何度も魔族にあの空間内に入られているからだと思われる。
シレンの穴に入ろうとした時に俺だけ転移で分断されて、帰還しようとした時にサーマルに入られたのが一回目。
二回目は、アクセルと一緒にガルムに向かった時。
そしてアライブの姿でフロートがニアたちと共にカイスに移動したのが三回目だ。
この三回の侵入の中で、あの空間の座標を示すビーコンのようなものが設置されたと推測する。あ、そもそもあのタイミングでフロートがニアを模倣しているだろうから、次元転移の魔法の発動方法自体バレている可能性が高いな。これで、空間の位置の把握と侵入経路が出来上がったわけだ。
なぜあの空間に干渉されたのかの理由はこれで説明がついた。次に必要なのは対処法。
確実な方法はビーコンを取り除くことだ。次元転移を使えても、俺たちの使ってるあの空間に入るには座標情報が必要なはずだからだ。もしその情報がなければ、別の空間に繋がるだけだ。ニアに次元転移を教わった時、同じ空間に繋がるようにするために少し工夫を必要としていたからな。まぁ、ニアのをそのまま模倣したフロートが使うなら直通だろうが、そこから魔法を伝達されて使っているキネットたちは違うだろう。
しかし、そのビーコンがどこに設置されてるかなんてわからないから今やるのは無理。止めるなら、空間を破壊して元の世界に強制的に戻されるアレを対処するしかない。
あの現象は、おそらく何かしらの魔法によるものだと思われる。二人の固有能力ではあんな現象は起こせないからだ。その魔法がどんなものなのかはわからないが、止めるなら魔法拡散で十分なはず。あの空間への入場も同時に止められるだろう。
転移で無理矢理あの空間に入られたり、そこから引き摺り出されたりする心配はしなくていいだろう。あの空間には聖素も魔素も存在しない。転移には転移先に魔素が必要だから転移であの空間内に入ることはできないし、転移前の場所にも魔素は必要だから外に出すこともできない。やはり、魔法拡散だけで問題ないだろう。
……と、考察を交えた情報をニアに送りつけた。そのままの流れで、今度はキネットに別の大量の情報を送りつけてやる。さっきのお返しだ。
「なるほど...これなら...!」
5510ページ 黒のみ 念話
『ニア、今なら割り込まれずに話ができる。さっきの情報はどうだ?』
『魔法拡散を使えばいいんでしょう?少し工夫はいるけれど...なんとかなるわ』
『ならそっちは頼んだぞ』
『いや、魔法の発動はカリヤに頼むわ。この方法ならカリヤの方が得意でしょうし』
ニアの作戦を聞く。
『……なるほど、たしかに俺がやった方が良さそうだ。あとでそっちに行くからすれ違い様に渡してくれ』
『了解』
ニアとの念話を終え、サーマルとの戦いに意識を戻す。ずっと攻撃せずに避け続けていたからこいつイラついてきてるな...ならここは見えない攻撃を...!
3776ページ下 黒 黄 音撃
指パッチンで音の塊を飛ばして攻撃する。
「知ってる攻撃は受けないよ!」
なるほど、音を消す魔法で無効化したか。指パッチン初動を見られたか。ならフェイクに使うまで。
『雷装』
「またしても無駄!...イ゛ッ⁉︎」
指パッチンする時にサーマルに人差し指を向け、そこから雷装を纏わせた魔力弾を撃ち込んで攻撃する。
4571ページ 黒のみ 触手・水
「一旦死んどけ」
そして怯んだところに触手の剣を突き刺して一度殺す。
「次はお前だキネット!」
地上を走り、空にいるキネットの真下まで移動する。
「粉々に切り飛ばしてやらァ!」
「物騒ですね。その武器には消えてもらいましょう」
っ、魔法拡散で触手を分解されたか...送りつけた大量の情報からは既に脱却したらしい。魔力も雷装も結構な量が散っちまった。手痛いけど...攻撃するそぶりを見せ続けなければ。
「オラァッ!」
すぐに刀を掴み、刀身を伸ばしながら音速の抜刀を放つ。
「テメェら防御ってモンを覚えた方がいいんじゃねぇかァ?スパスパ死にすぎだぜ?」
同時に殺されなければ死なないという力を持っているが故に、あいつらは防御や回避に力を尽くすことがない。常に攻撃やこちらの妨害を仕掛けてくる。そのせいで、殺すだけなら簡単なのに戦うのはめちゃくちゃ面倒な相手になっている。やはり、今ここで倒すという最初に思考を捨てておいて正解だったな。
「よし、今のうちに...!」
ニアの近くを走り、すれ違いざまにあるものを受け取る。
とりあえずこれで準備は整った。あとはタイミングを計るだけ...!
「そろそろ遊びは終わりだお前ら!同時に仕留めるぞ!」
この場にいる全員に呼びかける。今からやる作戦は俺とニアしか知らない。本気で戦う四人がいるからこそ、この作戦を覆い隠してくれる囮になれる。敵を騙すならまずは味方からだ。
「サーマルはクミさんが...!」
「援護するよ!」
女子二人が近距離遠距離両方からサーマルを攻撃する。
「タイミングを合わせて...!」
「同時に殺す...!」
キネットには男子二人がつく。空を飛び直接聖剣を叩き込もうとするライトに、飛んでくる魔法を受け止めながら虎視眈々とカウンターを狙うレスト。
9037ページ 黒のみ 飛行
そして俺は魔族たちの意識から外れたその時を狙い、サーマルとキネットの両方から等距離の位置まで飛行して...!
「見逃すと思いましたか?」
チッ、流石にそりゃそうなる。けど、この程度の密度の魔法なら俺の飛行技術でも避けられる...っ⁉︎
「雨⁉︎」
クソっ!二段構えだったか!雨が空から降り始めてここに到達するまで分単位でのタイムラグがあるから、だいぶ前から準備してやがったのか...!
「くっ...!」
7801ページ 黒 青 未来跳躍
0.1秒の跳躍で魔法を全て回避し、一旦距離を取る。
「楔!条件はさっきと同じ!」
雨による思考阻害が面倒なので、さっさと神の使いのバフを封じて速度操作を強化する。
……よし、今だ。雨で俺があまり動けないと思っている今。そしてみんなの攻撃が二人に集中している今なら。ここから三十秒間、全て思い通りに行くはず...!
俺はまた魔族二人から等距離になる場所に向かって飛行する。妨害で魔法は飛んでくるけど...全て避け切って到着。そしてすぐさま手を銃の形にしてそれぞれに向ける。
「この予備動作は...!」
超光速弾を撃つためにはこのポーズが必要不可欠。そう思わせるために、今まで試し撃ちする時も実践で使う時もこのポーズをしてから撃っていた。別にその動きをしなくても魔道具で次元収納を開けばいいだけなのだが、今もこのポーズを取ったのにはもちろん理由がある。
「どれだけ速かろうと!」
「その動きを見えれば止められる!」
放った超光速弾は魔法拡散によって、魔族に当たる直前のところで散らされてしまう。が、これでいい。防がせることが目的だ。俺の作戦を潰せた。そう思わせたかった。
「ふっ...ニア!」
不敵に笑ってからニアを呼ぶ。
「カリヤ!受け取りなさい!」
呼ばれたニアは、俺に向かって二つ、とあるものを投げつける。
「魔力銃のマガジン...!キネットちゃん!」
「もちろん取らせません!」
キネットが魔法を放つ。が、マガジンは空中で軌道を変えて魔法を器用に避ける。ニアが念動で動かしているのだ。
「それなら...!」
キネットがそう言うと、マガジンが重力に引かれて落ちていく。魔法拡散で念動が打ち消されたのだろう。けれど...
「カリヤ!」
それが重要なものだと察したのか、レストが落ちてくるマガジンを拾い投げ渡そうとする。
「させない!」
が、そこにサーマルが突っ込んで妨害。なんとか盾で身を守るレストだったが、マガジンは上へと弾き飛ばされてしまう。
「キャッチ...!クミさんパス!」
それをステラがキャッチ。キネットが攻撃してきたためすぐにクミリアにパスする。
「ほらこっちだよ...ほれ!」
クミリアはキャッチせずにマガジンを蹴り飛ばし、今度はライトの方へ。
「これをカリヤに...!」
ライトがマガジンをキャッチして俺に向かって投げる。
「無駄です!」
マガジンは空中で何かにぶつかったような軌道を描き、それぞれ別の方向へと弾かれていく。おそらく障壁を張ったのだろう。
「「神の使いの手には渡らせない!」」
「なら三手は遅いぜ」
「「なっ...⁉︎」」
俺は両手に持っていた魔力銃の引き金を引き、弾丸をキネット、サーマルそれぞれに一発ずつ命中させる。
「
撃ち込んだのは、命中した相手の体内に魔法拡散の結界を作り出す弾丸だった。これで魔族たちは一切魔法を使うことができなくなる。
ニアとすれ違った時には、既にマガジンを受け取っていた。意識を逸らす二重の策として超光速弾と偽物のマガジンを使い、敵味方全てを欺くことに成功した。もし囮を使っていなければ、転移で避けられていただろう。
「魔法が...!」
飛行魔法で飛んでいたキネットが落ちていく。攻撃の絶好のチャンスではあるが、固有能力は普通に使えるから深追いは禁物だ。
「みんな離脱だ!行くぞ!」
「こっちよ!」
ニアがゲートを開き、そこに全員で飛び込む。さらっとサーマルが俺たちを追って入ってこようとしたが、魔力を溜めきっていたレストがカウンターで吹き飛ばしてことなきを得る。
「よし...やっとカリスに行ける...!」
特に邪魔されることなくこの空間を走り切り、カリスにつながるゲートの前に辿り着く。
魔族の妨害はあったものの、結構な速さでここまできた。キネットもこっちに来ていたし、転移でカリスに魔物が送りつけられてるなんてこともないはずだから、まだ魔物は到達していないだろう。
まだ間に合う。
そう思ってた。
現実は非情だった。
「なんだよ...これ...」
カリスについた。
魔物が既にいた。けれど、量はそんなにいない。近くに自然湧きしていたのが中に入ってる程度の量だ。
脅威は魔物じゃなかった。
人間が人間を襲っていた。
「フロートの...複製体...!」
既に滅びは始まっていた。
だいぶ駆け足になっちゃいましたが、二話に分けた方が良かったですかね...?
次回、滅びゆくカリス編です。