前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

16 / 213
10071字。

なんか長めになったけど、内容的にはそこまでです。


王城にお呼ばれした件について

「ちょっと君、いいかい?」

 

肩をぽんぽんと叩かれ、声をかけられる。

 

「はい?」

 

振り返ると、門のところで見たのと同じ制服を纏った人が二、三人立っていた。

 

「俺になにかようです?」

 

「君、カリヤくん...であってるかな?」

 

「そうですけど...」

 

「ちょっと着いてきてもらうよ」

 

……もしかして俺、捕まるの?

 

俺なにか悪いことしたっけ?まさかスライムの残骸を持ち込んでるのがやっぱりダメだったとか?やばそうだったら能力使って逃げるか...?

 

「ちょっと待ってくれ衛兵さんよぉ。いったいどういう要件だ?」

 

キースが衛兵さんに食ってかかる。

 

「上からの命令だ。なに、悪いようにはしない」

 

「命令だぁ?どういう命令だよ」

 

「神の使い様を連れて来いという命令だ。これでもうわかっただろう。これ以上抵抗すると言うのなら...」

 

「……チッ!」

 

キースが下がる。

 

「…よくわかんないけど、とりあえず行ってくるよ」

 

「では、ついてきてください」

 

みんなの方に手を振ってから、衛兵の人についていく。

 

「…あの、どうして俺が神の使いだってわかったんですか?」

 

「ギルドから連絡があってな」

 

なるほど。確かにあの時騒ぎになったし、そこから伝わっててもおかしくはない。

 

その後はほぼ無言で移動を続けた。裏道や細道を何度も曲がりながら進んでいく。行き先はどう考えても、あそこに見えている城だろう。尾行を警戒して何度も曲がっているのだろうか?というか、城に入るのにこんな服装でいいのか?そういうの厳しいんじゃ...

 

「少し待ってろ」

 

城の目の前に着いた。着いたんだが...入り口がない。というか、水堀があって城に近づけない。

 

「あの、入り口は...?」

 

「正門からではなく、裏口から入れと命令されていてな。今、道を作る」

 

「道?」

 

そんなのないけど...と考えていると、衛兵の人が城に向かって手をかざす。すると、体から白い小さな光が飛び出して地面に流れ込む。

 

「これは...魔法陣?」

 

地面に模様が浮かび上がる。それと同時に、城に向かって虹色の橋がかかり、城の壁に正方形の穴が開く。城にかかる虹の橋とか時○カかな?

 

「早く通るぞ。認識阻害はかかっているとはいえ、長く橋をかけることは避けたい」

 

「あ、はい」

 

小走りで虹の橋を渡り、穴を通る。通り終えて何かの部屋に入ると同時に、橋が消え、穴も閉じる。

 

「秘密の裏口か...すごい魔法だな」

 

「武器と荷物はここに置いていってもらいます」

 

「えっ?あっはい」

 

そりゃ武器は持ち込めないよな。危険だし。でも、魔法がある以上、武器を没収したところで危険は残ってそうだけど、そこら辺はどうするんだろう。魔法阻害みたいな魔法でもあるのかな?

 

「次の部屋にお入りください。後はそこにいる人の指示に従ってください」

 

「わかりました」

 

荷物はほぼ全て渡したが、神と話すための小石は見逃してもらった。一見ただの小石と変わりないし、説得したら持ち込み許可をもらうことができた。これがないと異世界人との会話もできなくなるし、没収されなくて助かった。

 

次の部屋に入る。すると、一人の男が立っていた。神官っぽい服装をしている。

 

「それでは、まずはここにお立ちください」

 

「あっ、はい」

 

言われた通りに部屋の中心に立つ。

 

「次に、この紙に書かれている文章を声に出して読んでください」

 

紙を手渡される。

 

「えっとなになに...?」

 

書かれている文章を一読し、声に出して読む。

 

「我が力は全て光に還元される...っ⁉︎」

 

それを唱えた瞬間、全身に満ちていたはずの魔力が全て地面に流れ込んでいく。魔力は隠されていた魔法陣に流れ込み、それを光らせる。

 

「これは...いったい?」

 

魔力が切れ、光が消える。何が起きたんだ?何が何だかわからない。

 

「魔力総量を調べると同時に、魔力を使い切らせてもらいました。武器を取り上げても、魔法を使われては危険ですからね。神の使いともあろうお方がそんなことをするとは思っていませんが、保険です」

 

「ああ、そういうこと...ちなみになんですけど、俺の魔力総量ってどれくらいなんですか?」

 

「平均より少し多いくらいですね。これからも精進ください」

 

「はぁ...」

 

精進しろって言われてもなぁ。魔力総量の増やし方知らないんだよな。どうすりゃいいんだろ。

 

「あと、魔法陣が起動したということは、本物の神の使いであるとの証明でもあります」

 

魔力量測定に、浪費、判別もできるとかえらく便利な魔法だな。いや、一個の魔法じゃないのかもな。魔力の浪費と測定は詠唱した魔法で、神の使いの判別は光った魔法陣の効果かもしれない。そっちの方がそれっぽい。

 

「この部屋ですることは以上です。大臣のもとにお連れします。ついてきてください」

 

あっ、俺が会うの大臣なんだ。こういうのの定番は国王に会うってのなんだけど...まぁ、神の使いと確定が取れていたとしても見ず知らずの人をすぐに謁見させたりはしないか。それか、単純に大臣に魔王討伐の全権を任されているのかもしれない。

 

神官についていって部屋の外に出る。俺が出た瞬間、今出てきたはずの扉が消失する。いや、見えなくなったと言う方が正しいか。ちょっと手探りすると窪みのようなものがあるのがわかった。裏口だから見えないようにしているのだろう。

 

「あまり探らないようにお願いします。認識阻害の魔法が解けてしまいかねませんので」

 

「あっ、すみません」

 

大人しくついていく。何かに触って壊してしまったり、魔法を解いてしまったりしたら、最悪俺の首が飛ぶかもしれない。下手にあちこちを触るのはやめておこう。

 

「この部屋です。少しお待ちください」

 

神官が扉に四回ノックする。こういうときのノックって、結局三回なのか四回なのか未だにわからないんだよな。どっちなんだろ。別にどっちでもいいと思っちゃうけど。

 

「入れ」

 

部屋の中から声が聞こえる。

 

「お入りください」

 

神官が扉を開ける。パッと部屋の中を見た感じ、応接室みたいな感じだ。そして一人の女性が立っていた。多分、大臣なのだろう。

 

「失礼します...」

 

一度礼をしてからおずおずと部屋の中に入る。この世界の作法ってのがどんなのかわからないから、とりあえず日本式の礼をしたけど大丈夫だったかな?流石に冒険者上がりだし、よほどひどい言動をしなければ大丈夫だとは思うけど...

 

「やぁ、君が神の使いでいいんだね?」

 

「は、はい」

 

「そうか、まずは座るといい。せっかく椅子があるのだから立ち話をする意味はない」

 

「失礼します」

 

大臣に指示されてからソファーに座る。大丈夫だ。面接の時みたいな感じで受け答えができれば大きな問題にはならないはず。

 

「まず自己紹介からするとしよう。私の名前はカルト。君の名前は何と言うんだい?」

 

カルト...崇拝、礼拝ねぇ。なんか名前すっごい怪しいけど、偶然だろう。こっちでの意味とこの世界での意味が違う可能性もあるしな。

 

「俺...いや、私は仮谷幸希です。知り合いからはカリヤと呼ばれています」

 

「カリヤか...では、まずは君の持つ力を教えてもらおうか」

 

俺の持つ力...速度操作のことでいいのかな。それとも雷装とか火装とかのスキルも全部教えるのか?

 

『速度操作だけで良いぞ』

 

あっ、神の啓示が来た。

 

『神の使いは必ず、他人には使えない力を一つ、もしくは複数使うことができるのじゃ。じゃからお主の場合速度操作が当てはまるのう』

 

なるほど。じゃあ雷装は教えなくてもいいのかな。ステラも矢とダガーは使えるわけだし。とりあえず速度操作だけ教えておこう。さらに聞かれたら雷装のことも話すとしよう。

 

「速度操作です。周囲の物体の速度を検知、自在に操作できる力です。範囲は半径二メートルで、加減速の限界もありますが、使い続けると範囲も加減速の限界も大きくなっていきます」

 

「ふむ、成長していく力か。今までにない力だな」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ。文献に残っている力は全て最初から完成されていた。まぁ、前例がないからといってこれからもそうとは限らないからな。いつかは来るかもしれないと思っていたよ」

 

『本来は最初から完成された能力が神の使いに宿るんじゃがのう。無理矢理神の使いと結びつけたからちょっと矛盾が出てしまったが...この感じなら大丈夫じゃろう』

 

あっ、そうなんだ。

 

「ああ、それと風の噂で聞いたのだが、君は天の怒りを使いこなすらしいな。勇者でもないというのに、な。それが二つ目の力かい?」

 

風の噂ってどこからそんな話が...雷装のことは王都では話していないし、ずっといたからあの三人が話したわけでもないはずだが。カリスの方での行動が伝わったのか?

 

「雷装のことですか。あれは神の使いとしての力ではありませんよ」

 

「…そうなのか?あっ、言い忘れていた。無理して丁寧語を使わなくてもいいですよ。話しやすい喋り方で構いません」

 

「いやでもそれは...」

 

「やりづらいと言うなら私もフランクにいくとしよう」

 

「…できてませんよ?」

 

「おっと、すまない。やはり癖になっているようだ。普通に話すのも難しいものだな。私のことは気にせずに話すといい」

 

「では...雷装はただのスキルです。剣や矢、鞭や盾に天の怒りを浴びせたものを一度でも使用すれば、使えるようになります。火装や氷装と同じような感覚です」

 

「なるほど。天の怒りは危険だから今まで試した者はいなかった。いや、いたにはいたのかもしれないが、失敗して死んでしまったか、大きな後遺症を患ってしまって使うことができなかった。だから存在が判明しなかったのか」

 

「多分そうですね。自分も喰らいましたし、天の怒り」

 

「そうかそうか...え?」

 

カルトの体が固まる。そしてわなわなと唇を震わせながらなんとか言葉を捻り出す。

 

「君...実は死んでいたりする?」

 

「そんなわけないですよ。生きてますって」

 

「いや、確かに喰らっても生きてる者はいるが...後遺症もないのか?」

 

「ないですよ?二回も喰らいましたけど、優秀な医者と偶然カリスに来ていた魔法使いに救われました」

 

「しかも二回と来たか...よく生きてくれた。それで死んでいたらどうなっていたことか...」

 

「まぁ、運が良かったんですよ」

 

「違いない」

 

ほんとに死んでたらやばかったんだよな。死んでいたら、勇者敗北ルート待ったなしになってしまう。もしかしたら神さまが何かやってくれていたのかもしれないな。

 

「あっ、あと自分、天の怒りを身に纏うことができます」

 

「身に纏う...面白そうだ。見せてくれないか?」

 

「見せると言われても...魔力全部浪費させられたんで使えませんよ?」

 

「ならこれを飲むといい。それを飲んで私に雷装を見せてくれ」

 

ポーションを渡される。

 

「いいんですか?魔法を使っても」

 

「構わない。話している限り、君に私を害するつもりはなさそうだと私は思った。それに...無抵抗で殺される私じゃないしな」

 

見た感じ、カルトは何も武器になるものを持っていない。魔法を使うのかもしれないが、認識阻害の魔法で隠しているだけで、何か持っているのかもしれない。危害を加えようとした瞬間に作動するトラップとかもありそうだ。まぁ、そんなことしないから関係ないけど。

 

「じゃあ飲みますね」

 

ポーションを飲み干す。

 

「まずはこれを使ってくれ」

 

先ほどまで何もなかったところから、カルトは短剣のようなものを取り出しこちらに放る。やっぱり隠し持っていたか。

 

「これは?」

 

「ゴム製のレプリカだ。剣の形をしているなら、属性装備スキルは問題なく使えるはず」

 

「なるほど...では、やりますね。『雷装・剣』」

 

ゴム製の短剣だが、問題なく電流が流れる。

 

「おぉ、本当に流れているな。面白い。本当にスキルは全てを再現できるのだな」

 

「じゃあ次行きますよ。『雷装』」

 

今度は体に電流が流れる。

 

「今度は体に...すごいな。勇者にしか使えない力をここまで操るとは...」

 

「電撃を遠くにいる敵に撃ち込むことはできないんですけどね。触れているものにしか流せません」

 

「そこは差別化されていると。他にも何かないかな。デメリットとか」

 

「スタミナの消費が早いってのがありますね。あと、スタミナが切れても動けます。ものすごい激痛に襲われますけど」

 

「なるほどなるほど、負荷が大きいのか...」

 

「ええ。あっ、そうだ。速度操作の方も実演した方がいいですか?」

 

「できるのなら」

 

あまり動かないでできるのは...これかな。

 

「この剣を見ててくださいね。いきますよ...ほれっ、と」

 

ゴム製の短剣を上に放り投げる。加速しながら投げられた短剣は、天井にぶつかり、自分のもとに返ってくる。そして落ちてくる短剣の速度を減速させ、キャッチする。

 

「わかりました?」

 

「確かに加速したり減速したりしていたな。面白い力だ。期待できる」

 

これで俺の持つ特殊な力は説明し終えただろうか。

 

「これで俺が使える特殊な力は以上です」

 

「そうか。じゃあこれで私が聞きたいことは以上だ。逆に、君から私に聞きたいことはあるかな?」

 

「聞きたいこと...聞きたいことか」

 

少し考え、質問を捻り出す。

 

「噂で聞いたんですけど、勇者の選定が近々あるらしいじゃないですか。いつ、どこでやるんですか?」

 

「それか。およそ九ヶ月後、南の女神の山頂点にて行われる。魔王討伐の勇者パーティーも、その時結成されることになる」

 

「じゃあそれぞれの町から選出される勇者の仲間はいつ決まりますか?」

 

「それぞれタイミングはバラバラだな。一番早いのはカイスだな。もう既に選出が終わって、旅に出ているそうだ。次はガルム。四ヶ月後くらいに選出されるそうだ。次はガネルで、今から七ヶ月後だ。一番遅いのはカリスで、勇者選定の日の一週間ほど前に行われるらしい」

 

「なるほどなるほど...旅をするなら順番を決めておいたほうがよさそうだな」

 

出来るだけ勇者パーティーに入る人と知り合いになっておきたい。順番に行くとすれば、魔法の町カイス→盾の町ガルム→冒険者の町ガネル→弓の町カリスの順だろうか。これなら魔法使い以外には会えるだろう。

 

「他には質問はないかい?なんでも答えるぞ」

 

ん?今なんでもって...いや、冗談だ。

 

「何があるかな...あっ、そうだ。ギルドの許可証の件、どうにかしてくれません?試験が必要みたいなんですけど、できればパスしたいというか...」

 

「質問ではないが...それなら手を回しておく。神の使いに試験なんて必要ないだろう。巨大トレントを倒した、だなんて話も聞いているしな」

 

「あ、ありがとうございます。助かります」

 

別に試験を受けてもよかったのだが、早く許可証を貰えるに越したことはない。使える権力はありがたく使わせてもらおう。

 

「他にはないのか?質問でもお願い事でも、どっちでもいいぞ」

 

「んー...特にはないですねぇ。多分大丈夫だと思います」

 

「そうか...ああそうだ、言い忘れていた。我々、国は資金の援助を惜しまない。神の使いである君に最大限の援助をすることになっている。ギルドで発行される許可証は特別なものにしておく。それを見せれば、どの町の役所でも必要な分の資金を渡す手筈になっている」

 

「なるほど...でも、必要な分は自分で稼ぎますよ。出来るだけですけどね」

 

「そうしてくれると我々も助かる。保険として使えることをぜひ覚えておいてほしい」

 

「わかりました」

 

「では、これで話は終わりだ。急に呼び出して悪かったね。神の使いが現れたら、こうしろというマニュアルがあってね」

 

「大丈夫です。こちらも、知りたいことを色々知れたので助かりました」

 

「そう言ってくれると助かる...帰り道は外にいる神官について行けば問題ないはずだ」

 

カルトが席を立ったので、俺も立ち上がる。

 

「では、失礼しました」

 

「今日は来てくれてありがとう。勇者たちの補佐、よろしく頼む。期待しているよ」

 

礼をしてから部屋の外に出る。あー緊張した。これでよかったのかな。何かミスったりとか、聞き忘れていたことはなかったっけ...ないな、多分。

 

「カリヤ様、城の外にご案内します。ついてきてください」

 

神官の後ろを歩く。行きに通ったルートを反対に歩き、壁の前で止まる。神官は手探りで壁に偽装された扉の窪みを探し、指を引っ掛けて手前に引く。

 

「お進みください」

 

言われたとおりに扉の先に進む。魔力を吸い取られた部屋だ。雷装を使うためにポーションを飲まされたから、この部屋でやったことの意味がまるでなくなっていたが。ああでも神の使いの判別もやっていたんだった。

 

「というか、魔法陣って何で描いてるんだろ。全く見えない...」

 

部屋の中心に魔法陣があったはずだが、どこにも何かが描かれているような痕跡はない。床を手でなぞってみても、凹凸はない。普段は見えない特殊な塗料で描かれているわけでもなさそうだった。

 

「…なにをしているのですか?」

 

いつまで経っても来ないことを不審に思ったのか、次の部屋から衛兵が様子を伺ってきた。行きの時と違う人だ。交代したのかな?

 

「あっ、ごめんなさい。あの魔法陣がどうやって描かれているのか気になって...」

 

「描いているわけではありませんよ。埋め込んでいるんです」

 

「埋め込んでいる...?」

 

「魔法陣の部分だけ床の建材を変えているんです。見た目はほとんど同じなんですけどね」

 

なるほど、だから触ってもわからなかったのか。繋ぎ目がわからないほど精密に造られたのだろう。というか、こういうこと簡単に言っていいのか?機密だと思うんだけど...

 

「それ、俺に言ってもよかったんですか?」

 

「国の管理している場所には同じような魔法陣があることが多いんです。だから、仕組みを知っていた方が何かと便利になると思います。自分で作る時もないわけじゃないですから」

 

自分で作る...か。拠点を作る時に見えない魔法陣でトラップを仕掛けるとか出来そうだけど、いかんせん魔法を知らなすぎるからできる気がしない。する機会が訪れる時は来るのだろうか。

 

「早くこちらに来てください。預かっている荷物を返しますので」

 

「あ、今行きます」

 

長く待たせるわけにもいかない。次の部屋に移動する。

 

「荷物です。ご確認ください」

 

鞄や、各種武器を返してもらう。それぞれホルダーにしまい直し、鞄も中身を全て確認してから背負う。

 

「忘れ物はございませんね?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「では、今から道を作ります。少々お待ちください」

 

衛兵が壁に向かって手を向ける。体から白い光が飛び出して地面に流れ込み、魔法陣を起動する。壁に正方形の穴が開き、水堀の対岸まで虹色の橋がかかる。

 

「行きましょう」

 

虹色の橋を歩き、対岸まで向かう。途中で橋が消える...なんてこともなく、無事に地面を踏み締めることができた。渡りきった瞬間に橋は消え、城の穴も消える。

 

「今日は急な呼び付けに応じてくださり、誠にありがとうございます。今後のご活躍を、国一同で期待しております。それでは」

 

そう言い残すと、衛兵の姿が掻き消えた。

 

「認識阻害の魔法か?」

 

残っていた魔力で速度探知を発動する。すると、礼を一度してからこの場を立ち去る衛兵の動きの速度を感じとれた。足音も微かだが聞き取れるし、視覚だけに作用する魔法なのだろう。ちょっと欲しい。教えて貰えばよかった。

 

「あー疲れたー...これから何しよう」

 

懐中時計が示す時刻は十時。つまり夜になるまであと二時間半だ。夜になる前には宿を取っておきたいが...

 

「あっそうだ。ギルド行って許可証貰おう。ギルドは...こっちだっけ?」

 

ここまで衛兵についていくだけだったから、ちゃんと道を覚えられていない。けど、ある程度の方向くらいはわかるから途中で人に聞けばなんとかなるだろう。

 

「今のうちに魔力使い切っておかないとな」

 

微風と能力を同時使用し、魔力を消費しながら歩く。しかし、残っていた魔力が少なかったのか、ものの三十秒ほどで魔力は切れた。気にせず歩き続ける。

 

「たしかこっち...だよな?あってるかな」

 

何回か曲がり角を曲がりながら細道や裏道を歩く。こんな景色、確かに見たような覚えはあるが、あっているか確証が持てない。というか、何度も同じ道をグルグルしているような気が...

 

「ダメだこれ。迷った」

 

さて、どうしたものか。人がいない裏道なせいで道を尋ねることもできない。

 

「まずは大通りに出ないとな」

 

左手の法則発動!迷路は左手を使えば脱出可能!左手を壁に当てながら進む。

 

「これで抜けれるはず...あっ、ダメだこれ。同じところループしちゃってるわこれ」

 

迷路の形によっては左手の法則は使えない。出口が外側にない場合がそれに当てはまるが、壁が全て繋がっていない場合も含まれる。

 

「仕方ない。右手に変えよう」

 

今度は右手を壁に当てて裏道を進む。少しずつだが、人の声が聞こえてきた。もう少しで大通りに出るだろう。

 

「おぉ、出れた出れた」

 

やっと大通りに出ることができた。なんだかんだで二十分くらい迷ってしまった。早くギルドに行かないとな。そのためにもまずは道を聞かないと。

 

「あ、あの、ちょっといいですか?」

 

近くにいた商人に声をかける。腕輪やネックレスなどの、アクセサリーを売っている店のようだ。

 

「なんだ?買ってくれるのかい?」

 

「そういうわけじゃ...いや、やっば買っておこう。何かいいやつあります?」

 

何も買わないで道だけ聞くのもなんだしな。

 

「あんた冒険者だろ?魔法は使えるかい?」

 

「ぼちぼちですけど」

 

「ならこいつがオススメだ」

 

商人が紫色をした腕輪を見せてくる。

 

「なんですか?これ」

 

「魔力を貯めておける簡易魔道具さ。あらかじめ自分の魔力を貯めておけば、魔力が枯渇しかけた時に便利だ。ポーションとは違って自分の魔力を取り入れることになるからデメリットも存在しない。俺が言うのもなんだが、良い買い物だと思うぜ」

 

魔力を貯めておける魔道具...欲しいな。

 

「それ、買います。いくらですか?」

 

「ここに書いてあるだろう。いやでも、ちょっと安くするぜ。一割サービスしてやるよ」

 

「ありがとうございます。これでピッタリですよね」

 

袋から金を取り出して渡す。

 

「毎度あり!」

 

「そうだ。本来の目的忘れかけてたわ。あの、ギルドってここからどうやっていけばいいですか?」

 

「それならこの大通りを真っ直ぐ行って、そこに見えてる十字路を右に行って、そのまま道なりに行けば着くぜ」

 

「助かりました。ありがとうございます」

 

「情報料貰えばよかったかな...」

 

「何か、言いました?」

 

聞こえてはいたが、ちょっと圧をかけながら言う。

 

「いや、なにも言ってない」

 

「そう?じゃあ行きますね」

 

ギルドに向かって歩き始める。「サービスしなけりゃよかったか...?」という声が後ろから聞こえるも、それを無視して歩く。

 

「ここ右で、そのまままっすぐか」

 

手首に腕輪をつけながら歩く。これがあればもっと魔力を長持ちさせられるだろう。ちょっと思ったけど、なんかどんどん装備が増えていくな。ゲームだったらもう装備できないぞ。

 

そんなことを考えているうちにギルドの前に着く。ゆっくりと扉を開け、中に入る。確か、許可証の発行は一番左の列だったよな。夜が近づいている関係か、列に並んでいる人はいなかった。

 

「なんかざわざわしてるな...」

 

俺がギルドの中に入った時から、ざわざわと話し声が聞こえていた。聞き耳を立ててみると、「神の使いが...」というのが聞こえたので、俺の話をしているのだろう。ちょーっと気恥ずかしい。

 

「すみませーん。許可証の発行に来たんですけどー!」

 

「は、はい!ただ今!」

 

上擦った声を出す受付の人。

 

「許可証の用意はすでにできています!お、お受け取りください神の使い様!」

 

「様づけは勘弁してほしいな...ありがとうございます」

 

一枚のカード、許可証を受け取る。

 

「よし、あとは宿を取って今日は終わりにするか...」

 

「よーっすカリヤ。ここにいれば会えると思ってたぜ」

 

声のした方を向くと、キースたち三人が座っていた。

 

「うおっ、キースじゃん。待っててくれたのか?」

 

「そだよー」

 

「許可証、受け取れた?」

 

「ああ、パーペキだ」

 

「パーペキ...?よくわかんないけど、受け取れたなら良かった。というか、俺たちのと色が違うんだな」

 

確かに、キースたちが持っていたカードは白だったが、俺のは黒だ。特別性ってことだろうか。

 

「まぁいいや、そろそろ宿に行こうぜ。俺たちが泊まってる宿、まだ部屋が一つ空いてるみたいなんだ。同じところに来ないか?」

 

「いいのか?じゃあついていこうかな」

 

宿探しをしなくていいのは助かる。

 

「それじゃあ行こっか。言っておくけど、全員バラバラの部屋だからね?期待しちゃダメだよ?」

 

「しねーよ」

 

俺はキースたちの泊まる宿についていき、チェックインを済ませた。

 

今日は色々あって疲れた。巨大トレント退治に、大臣との謁見。

 

疲れのせいもあってか、ご飯やお風呂をすぐに済ませると、すぐに寝てしまった。

 

明日のことは、明日考えよう。今日はもう寝る。

 

けれど、今日の俺は知らない。

 

明日、全身筋肉痛で昼間までほぼほぼ動けないことを、俺は知らない。




神と話せるあの石がないと異世界人と会話できないという描写をし忘れていたので、無理矢理ぶち込みました。

作中でも書いたけど、カリヤくん装備多すぎな件について。
首→懐中時計
背中→弓 ロングソード 鞄
腰→ダガー×2 矢筒&矢 鞭
左腕→盾
左手首→腕輪(new!)

鎧を買う気がカリヤくんにはないので、これ以上装備が増えるとは考えにくいけど...もうすでにゴテゴテなんだろうなぁ。

p.s.
漢字の変換ミスを修正しました。
反省。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。