前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
滅びゆくカリス編です。
元々こうなる予定だったとはいえ、どうやって滅ぼしにかかるかはちゃんと決めてなかったから、ちゃんと絶望的な状況を作り出せたか不安だ...
カリスがフロートの作り出した冒険者の複製体に襲われている。まだ村の中には入っていないが、開いた門からその様子が確認できる。
まず最初に、ステラが走り出した。自分の故郷が襲われているのだ。なんとしてでも救おうとするだろう。
それをライトが追い越し、ものすごい速さでカリスへと向かう。こちらは勇者としての責務。全力を賭して皆を救おうとしている。
そこに俺は、待ったをかける。
5114ページ 黒のみ 思考共有
先ほどの魔族との戦いの中で楔を打ったことにより強化された能力、その恩恵をフルに使った思考加速でこの場におけるベターな策を一瞬で練り、全員に共有する。
「これ...!」
「本当の最善からは遠いだろうが、これが今の俺たちにできる最善だ。この通りに動いてくれ...!」
みんなに送ったのは、こうだ。
今、カリスの中ではフロートの作り出した冒険者の複製体が暴れ回っている。そして、それに応戦するために、この村に配属されていた冒険者が動き出して戦闘をしていると予想される。
冒険者の複製体と、元々この村にいた冒険者や住民とを見分ける手段は、俺以外には持っていない。故に、みんなが複製体を倒そうと攻撃したら、ただの一般人だったなんてことが起こりかねない。
積極的に攻撃を仕掛けている方が複製体、という見分け方もダメだ。仲間を傷つけられ、復讐心に駆られた冒険者が攻撃を仕掛けているというのが考えられるからだ。
もしワンナやスートなど、北側の町にいてこの場にいないはずの人がいたとしても、それだけで複製体だと判断することもダメだ。転移で本人が連れて来させられている可能性を捨てきれない。
よって、みんなにやってもらいたいことは二つ。
一つは、傷つき声を上げて助けを呼んでいる者の救助。複製体は喋らない。声を出している者は本人だと予想できる。回復させて、できるなら安全なところまで退避させるべきだ。
もう一つは、戦闘をしている者の拘束。誰が本物で誰が複製体かわからない状況で、かつそのままにしておくこともできないなら、やるべきことは両方叩くこと。なるべく怪我をしない方法で戦闘不能状態にするのが理想だ。その後、複製体に襲われたり、または無理矢理暴れて一般人を傷つけたりすることのないように、障壁で周りを囲むなどして互いに干渉できないようにする、まですれば十分だろう。
複製体にトドメを刺すのは俺がやる。みんなは各々出来ることをやって欲しい。
「やるしかない...一人でも多く助けるぞ!」
全員でカリスの中に入る。
が、そこで違和感を覚える。何かがおかしい。
そして、気づく。
「聖域...じゃない⁉︎」
村の中に入ったのに、周りに魔素が混じっていた。それはつまり、この場が聖域ではないことを意味している。
おそらく、魔王と女神がそれぞれ宿る山を変えたため、各地にあった聖域の位置が変わってしまったのだろう。カリスに入る前に、魔物は自然湧きしたのが入ってきたくらいの数しかいないとか考えていたが、本当に自然湧きしてきた奴だったのか。
できれば聖域であった方が嬉しかったが...仕方ない。魔力回復速度は据え置きだ。このままやるしかない。そんな些細なことを気にしている暇があったら、一人でも多くの人を救わなければならない。
カリスに入った俺は、パパッと辺りを見渡し状況を把握する。どこもかしこも人同士で戦っている。ここからではどちらが複製体かわからないし、下手したらどちらも本人の可能性すらある。近づいて速度探知で確認するしか方法はない。
そして倒壊している建物がちらほらとある。その瓦礫と瓦礫の隙間から人の手が出ているのが見える。倒壊した建物のすぐ近くで地面に血を流しながら横たわっている人もいるし、虚ろな目で地面に倒れている人もいる。建物の二階から助けを呼ぶ声がするが、おそらくは流れ弾なのだろう、魔法がそこに飛んでいって建物を削り取ってしまう。
ああ、これぞ地獄絵図。死の匂いが充満していて、雰囲気が絶望に包まれている。既に多くの人が死んでしまっている。ここから目に入る場所だけでこれだ。村全体でどれだけの人が巻き込まれているのか...考えたくもない。
「っ...!」
危うく狂化のスイッチが入りそうになるが、なんとか抑えて人同士の争いに割って入る。
「ハァ⁉︎っざけてんのかフロート!」
両方複製体だと⁉︎クソこういうパターンもあるのかよ!あたかも味方が複製体に対して反撃を仕掛けているように見せかけることで、本物の冒険者たちに戦わせるように仕向けてやがる!無理に戦わずにいれば同士討ちすることもないのというのに...嫌な作戦を考えつきやがる...!
「クソヤローがよ...!」
複製体を二体ともダガーで殺し、次の争いへと介入...
「あ゛ぁ...」
移動しようとしたその時、速度探知はそれを捉えた。崩れた建物の中で生きようと懸命にもがいている親子を。しかし、母親の方は出血が酷い。助かる見込みは薄い。けれど、今すぐにやれば助からないわけではない。
だが、ここで時間を使ってしまうと、他の人が助からなくなる可能性が出てくる。命の選別。俺なんかにそんなことできるわけない。
「くっ...後でちゃんと助けに行く!それまで生き残っていてくれ...!」
5092ページ 黒のみ 再生
俺が取った選択は、しばらく延命できるくらいだけ傷を治し、すぐに次に向かうことだった。ちゃんと治すのは全ての複製体を殺し、カリスの危機を救ってからだ。
偶然だろうが、親子は瓦礫に押しつぶされているわけではない。多少身動きできる程度の空間がある。この中にいれば、外に出すよりも逆に安全だろう。このままにしておくのがこの場における最善だと、俺は思う。
「後悔するんだろうなぁ...ほんとフロート許さねェ!」
俺が離れることに、絶望の表情を浮かべる子どもの姿を速度探知は鮮明に捉えてくる。が、それに構ってはいられない。
一人でも多くの命を救う。そのために俺は行く。
「両方止まって...!」
『
左腕の盾を起動して戦ってる人たちに押し当てる。怪我をさせずに戦闘不能にさせるなら、この盾の力でスタミナを奪うのが一番効率良いはず...!
「ニア!」
一人二人と盾を押し当てて、スタミナを一気に奪い取る。だけど、僕にできるのはここまで。戦闘不能にすることしかできないから、その後の拘束はニアに任せてしまう。
「わかってるわ!それぞれ個別に...!」
ニアが障壁で二人をそれぞれ隔離する。これを繰り返していけばいい...とはいえ、あまりにも数が多すぎる。二人で一つにしか対処できないとなるとだいぶ時間がかかってしまう。僕がもっと上手く障壁を使えたなら、ニアと手分けできたのに...!
「次行くわよ!」
「わかった...っ!」
視界に映る、ここから少し離れたところで、僕の知らない誰かが剣で斬られたのを見てしまう。叫び声を上げているから、複製体ではない。本物の人が斬られたのだ。
「くっ...急いで治すわよ!」
ニアがすぐさま飛び出し、近くに駆け寄って傷に手を触れ魔法で治す。そしてそのままもう片方の手をもう一人の方に向けて...
「ってニアだめ!」
全速力で走る。盾の起動は間に合わない。起動させてる方の盾で受け流す...!
「ハァッ...!」
なんとかニアともう一人の間に滑り込み、ニアが咄嗟に放ってしまった攻撃魔法を盾で逸らす。そしてそのまま盾で攻撃されそうになっていた方のスタミナを奪い取る。
「な、ん...で...」
スタミナを吸い取られたその人は、声を出しながらドサッと倒れる。
「嘘...本物?」
「攻撃されたのが人間だったからと言って、攻撃したのが複製体とは限らないよ。ニア、気をつけて」
「ごめんなさい...冷静さを失っていたわ」
「それならすぐに調子戻して。障壁貼ったら次行くよ。」
「ええ...冷静さを保てているレストは凄いわね」
障壁を貼って二人の動きを封じたニアが、そんなことを言ってきた。
「別に冷静でもないよ。これより酷くはないけど、それくらい酷い状況を何度も経験してきたから、少し慣れてるだけ」
ガルムで行われている、冒険者に盾使いを派遣するサービス。あれに参加していると、様々な人と組まされ、そして嫌でもいろんな経験をすることになる。
例えば、僕が守りきれないところまで一人で行ってしまい、魔物に襲われてそのまま死んでしまう駆け出し冒険者。
例えば、ダンジョンに閉じ込められ、少ない食糧をかけて仲間割れを起こした結果死者を出した不仲の冒険者パーティー。
例えば、魔物に洗脳されて仲間を殺してしまう不幸な冒険者。
例えば、はぐれてしまった仲間が戻ってきたと思って近づいたら、アンデッド化していたそいつに殺されてしまった冒険者。
例えば...と、挙げればキリがないほどには嫌なものを見てきた。多くの人が傷つき死んでいくのを見た。
いずれも、僕がきちんと守れていたら、今も生きていたかもしれない人たちだ。当時はまだ未熟だった。けれど、未熟だったのは自分のせいだ。もっと力をつけていれば、守れていたはずだ。
そんな経験をしてきたから、私生活はだらしないところがあるけれども、せめて盾使いとして動く時は完璧であろうと努力してきた。その甲斐もあって、ガルムで一番の盾使いになって、英雄になった。
全ては悲劇を繰り返さないため。
だけど、雷の事故でクミリアが傷ついたり、今みたいなことが起こったりと、まだまだ僕は未熟だ。全ての人を助けるなんてこと、僕には出来ない。
人が傷つけば、それだけ僕の心も軋んで傷つく。冷静さなんて保っていられない。誰かが傷つくところなんてもう二度と見たくない。
だからだろう。染み付いた経験が、僕の力になる。
一度起こった悲劇と似た状況になった時に発揮される、的確な判断能力と防御能力。過去の経験から学び、今すべきことを頭で理解するよりも前に身体が実行する、半ば未来予知の域にまで達する反射的行動。二度目の悲劇を起こさない力だ。
こんな村丸ごと滅ぼされかかるような状況は初めてだけど、状況を細かく分割して見てみると、小分けした状況の中には僕が経験したことがあるのも混ざっている。故に動ける。ニアの攻撃魔法を止めれたのもそのおかげだ。
冷静じゃないけど、今何をすべきかはわかる。これが僕の『慣れ』の力だ。
「そう...頼りにしてるわよ」
「任せて」
僕とニアは次を目指して移動する。これ以上の悲劇を起こさないために。
「えっ...」
そうやっていろんなところで戦いに介入しては障壁で封印、怪我人の救助を行なって、かなりの時間が経ったその時だった。
「なによ...これ!」
「こんなの、どうすれば...」
僕のこの力は、経験したことのある状況でしか効力を発揮しない。
こんなの、経験したことあるわけない、
だから、僕には何もできない。
空から落ちてくる、あれらをなんとかすることなんて...
「セイッ!...ほら行くよみんな!クミさんに着いてきて!」
私には複製体かどうか見分けることなんてできないから、負傷者の保護と村の中にちらほらといる魔物の駆除をしていた。怪我がひどい人には、回復魔法はうまく使えないから魔力銃の回復弾でなんとか治療をしていた。
そうしていたら、私は自分達を襲う敵、複製体じゃないと気づいた冒険者たちが声をかけてきた。話せる者は本物。こちらもすぐに信頼できた。
今はそうした人たちにカリヤの指示を伝えて、私たちと同じようなことをさせている。出来るだけ声を出して自分が複製体じゃないと主張しながら魔物を倒したり、負傷者を手当したり...この輪を広げていけば、手当てと避難はできそうな気がする。複製体の処理はカリヤに任せて、こっちでできることをやり続けよう。
……ただ、どうしてカリヤは今私がやっているような方法を指示しなかったんだろう、とそれだけが不思議だ。なぜ怪我をしていて声を出している人だけ救出しろと言ったんだ?普通に声を出してる人に協力してもらうのはダメなの?そこだけ、ちょっとわからないところだった。カリヤも焦っていた、とかなら別にいいけど、もしかしたら別の意味があるのかも...?
「……ところでなんだが、時々飛んでくるあれはなんなんだ?」
「うちの勇者の必殺技さ。当たっても問題ないから気にしないでいいよ!」
時折光のビームが飛んでくるが、それはライトが頑張っている証だ。あの技なら、どんな障害物も意味を成さず、魔物だけを消し飛ばすことができる。複製体も消えるのかはわからないけど...あっ、ちょうど今飛んできた光で少し先にいた奴が消滅したね。ちゃんと消せるみたいだ。
「この調子なら...そこっ!瓦礫の下に誰かいる!誰か救助お願い!」
カリスに来てからずっと雷装を発動していた。目的は雷装による五感のバフを活かしての索敵と要救護者を見つけるため。気配察知も併用しているおかげで、目に見えないところにいる人も見つけることができていた。これで複製体も見分けられたらよかったんだけど...あいにく、そこまで便利なものではなかった。
「……っ!魔物の自然湧き...!」
カリスが聖域でなくなってしまったため、魔物が急に現れることは普通に起こりうる。ただ最悪なのは、その魔物がちょうど逃げようとしていた一般人の近くで湧いたこと...!
「手を...出すな!」
雷装を足に集めて走り、そのまま魔物を蹴り飛ばす。もちろん、インパクトの瞬間に雷装を炸裂させておく。湧いた直後の魔物ならこれくらいでイチコロだ。
「ほら早く逃げ...ってうわっ!」
助けた相手から攻撃された。一般人に見せかけた複製体⁉︎武器も持ってないし、魔法すら使ってこないで素手で殴りかかってくる!ほんとの一般人を複製したってことじゃんフロート悪趣味すぎる!
「やめてよほんと...しかも見覚えある人だし!」
この人カリスに来た時に行った飲食店の店員さんじゃん...うわ攻撃しにくい!
「そもそも本当に複製体だよね?えーっと、あなた前にもあったけど名前なんだっけ?」
……返事が返ってこないから複製体!倒していい!
「じゃあとりあえず眠ってて!」
放たれた拳を掴んで私の方に引き寄せ、首筋に手を触れて雷装を流し込む。複製元が非戦闘員だから軽く流しただけで気絶してくれた。
「……よし、次行くよ!誰かこの人封印しておいてね!」
と、後ろにいた冒険者の人たちに呼びかけたその時だった。
空から何かが落ちてくるのが見えた。
それは私たちから少し離れた建物に落ちていき、崩落を起こす。
「今...何が落ちてきたんだ?」
冒険者の誰かが呟いた。
そして、次が落ちてくる。
「……やばい」
私は何が落ちてきているか気づいてしまった。悪趣味で、絶望的なそれの正体に。
最初は、魔物か何かが降ってきているんだと思った。それか、石なり岩なりを落として私たちを押し潰そうとしているのかと思った。
しかし、現実はもっと酷かった。
「こんなのどうすれば...!」
落ちてきていたのは、人だった。
「ひ、人が落ちてきてる!誰か魔法で受け止められる人いない⁉︎」
「人⁉︎なんで空から人が⁉︎」
「転移だよ転移!人が空高いところに転移させられて落とされたんだよ!」
もともと、村に人が少なすぎると思っていた。複製体がいて数が本来より増えているはずなのに、建物の中にも外にもそこまで人がいなかった。既に避難していたものだと思っていたけれど、ここにいなかった人たちは軒並み上空へと転移させられていたのだ。本来なら村の上空も聖素で満たされているはずだから転移できないはずだったのに...カリスが聖域じゃなくなった弊害がここにも現れていた。
どれだけの数が転移させられたのかは不明。だけど、数百は軽く超えていると思う。避難民はこのカリスにも来ている。その人たちの人数を知らないから正確なことは言えないけど、その数も合わせたら数百は余裕で超えてしまう。
このままだとそんな数の人たちが、なすすべもなく落ちてきて、地面や建物に叩きつけられて死んでしまう。それも、下にいる人を巻き込む形で。
「でも受け止めるってどうやっ
そう叫んでいた誰かの声が途切れた。後ろを見ると、そこには血溜まりと飛び散った肉と骨、布、武器。危惧していたことがまさに今起きてしまった。
「みんな上に注意!当たんないように気をつ、け...」
見てしまった。見てしまった見てしまった見てしまった。落ちてくる人の顔がバッチリ見えてしまった。しかも、知り合いだ。それも、小さな頃からの...幼馴染とも言えるそいつの絶望した顔が鮮明に見えてしまった。
「キース!」
手を伸ばす。しかし届かない。
なすすべもなくキースは地面へと激突し、血肉をぶちまけた。
「あ...あぁ...」
何も、出来なかった。救えなかった...!
「そんな...どうしてキースが...!」
キースはカリスに配属されているのは知っていた。なかなか見つけられなかったけど、どこかで誰かを守るために戦っているんだと、そう思っていた。
なのに、これだ。こんな仕打ちあんまりだ。せめて、誰かを庇って死んだのなら、まだ納得できたし、キースも本望だっただろう。だけど、こんな理不尽に巻き込まれて死んだんじゃ、どうやっても悔やまれない。こんなことって...
「じ、嬢ちゃん上!避けろ!」
「えっ...?」
ぼんやりとした思考のまま上を見る。
誰かが落ちてきていた。あれは...見たことがある。キースと一緒にいた弓使いの子だ。あの子も巻き込まれていたのか...
ああ、体が動いてくれない。雷装を使っているからスタミナが切れていても動けるはずなのに、動かない。心が止まってしまっていた。
私...死ぬのか...
「『重力操作』!」
女の子の声が響いた。体がふわりと浮きそうになる感覚を覚える。重力が反転している...?
「大丈夫ですかクミリアさん!」
「この声...フレアちゃん?」
振り向くと、フレアちゃんがいた。隣にはミレアちゃんもいた。ガネルにいたはずだけど...転移で飛ばされてきていたのかな。
「フレア!チュチュさんやばい!重力負荷に身体が耐えられてない!」
「ほ、本当だ!教えてくれてありがとうミレア急いで治療を...!」
すごい速度で落ちてきたのを無理矢理重力の反転で受け止めたせいか、体がひしゃげて、大量に血を流していた。
「これ...治るの?」
「絶対に治します!死んでないなら、私たちは諦めない!」
「諦めない...」
……そうだ。ここで私が折れてどうする。誰がキースの無念を晴らすんだ。私が...クミさんがやらずに誰がやる!
「あっ!ニア姉さんだ!」
ミレアが指差した方を見ると、ニアが空へ向かって飛んでいくのが見えた。おそらく、落ちてくる人を何らかしらの魔法で受け止めようとしているのだろう。
「そっちは頼んだよニア...クミさんは、キースをこんな目に合わせた魔族をぶっ飛ばしてやるから!」
冒険者の複製体の出現に、大量の人の転移。これらが起こらなければキースは死ななかった。
フロートとキネットのせいだ。あと、あれだけの人を転移させるために必要な魔素を捻出する役割を担ったであろうサーマルも同罪だ。あいつらは私の手でぶちのめす...!
「く...クミリア...?」
か細い声が聞こえたと思ったら、いつのまにか近くにカリヤが立っていた。
「今...なんて...?」
「え、カリヤどうしたの?」
「さっき、なんて言ったんだ...?」
「魔族をぶっ飛ばす?」
「その前だ...キースをこんな目に...って、どういう意味だ...っ!」
カリヤの目が動く。二点を交互に見るような動きだ。一つは、近くにぶちまけられている、キースの血肉。もう一つは、現在治療中の、かろうじて原型をとどめていて誰か判別可能な、チュチュの身体。
「そういう...ことかよ...」
カリヤは少しよろめくように後退り、頭に手をやる。
「ダメだろ...こんなの...」
今にも吐きそうな顔色のまま、カリヤは言った。
「クミリア...俺...我慢...できねぇわ...」
その目が紅く光ったかと思えば、一瞬でカリヤの姿が消えた。
紅い目...カリヤが狂化を発動した時に起こる、無意識化の魔力漏れが引き起こす現象だった。
理性を無くした紅目の獣が、赤に染まりゆく村を走る。
レストの過去描写をしたことないなと思いまして、急遽入れてみました。
今まで見せた異様なほどの防御技術の説明にもなったんじゃないかと思います。
何気にシレンの穴での特訓を一番活かせているんじゃないかな...?
人を大量に天から落とすとか、我ながらエゲツない方法を思いついてしまった...俺ってこんな残虐性を秘めていたの?怖っ。