前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8058字。

フロート戦...ですが五千字くらいは会話してるんで、戦闘本番は実質次回からですねこれ。


偽物はいつから偽物なのか

「そんな...お兄ちゃんがフロートなわけ...!」

 

「目を逸らしたくなるのはわかるが、これが現実だ。この矢を奴が放ってきたのがその証拠だ」

 

何かの間違いだと信じたがっているステラに、残酷な現実を突きつける。この状況だ。腑抜けたことを言っている暇はなかった。

 

「いや...いやでも!まだ魔法で洗脳されて遠隔で操作されてる可能性があるでしょ!そんな魔法あったはずだよね⁉︎」

 

「確かにその魔法はあるが、あれは間違いなくフロート本人だ。狂化の時にトルクを襲おうとしたのは、攻撃対象が複製体だけじゃなくフロートも入っていたから。あれは決して暴走なんかじゃなく、ちゃんと狙って攻撃しようとしてたんだ」

 

「でも...でも...っ!」

 

「いい加減認めるんだステラ。あれはお前のお兄ちゃんなんかじゃない。カリスに複製体をばら撒いて滅亡へと追いやった魔族そのものだ」

 

「酷い言い草だな。俺はちゃんとステラの兄、トルクさ」

 

「今更何をふざけたことを...おいフロート、本物のトルクはどこだ」

 

……つっても、フロートのことだ。どうせもう...

 

「愚問だな。わざわざ生かしておく意味ないだろ?」

 

「っ...!」

 

「おお、怖い怖い」

 

ステラが衝動に身を任せて矢を放つが、軽々と避けられてしまう。

 

「お兄ちゃんを...返してよ!」

 

「あ?頭イカれたのか?それとも、さっき俺が言ったこともう忘れたのか?」

 

「魔族が本当のことを言う意味ない!私を絶望させるための嘘に違いない!」

 

「はぁ...これだからお子様はダメだな。キャンキャン泣いてばかりで五月蝿いだけじゃねぇか。よくそんなのと旅できたなぁお前ら」

 

「トルクの記憶を見た程度でステラを知った気になってんじゃねぇぞコラ」

 

「記憶を見た程度ねぇ...これでもちゃーんとお前の兄ちゃんやってたんだけどなぁ?」

 

……ダメだ言ってる意味がまるでわかんねぇ。会話の意味ないなこりゃ。ステラも完全に戦闘モードに入ってるし、ここらで切り上げて六人で袋叩きにしてやらァ!

 

「お喋りは終いだフロート。村を守るってトルクの誓いをその体で破った報い...受けてもらうぞ」

 

「おいおい、おかしなこと言ってんなぁ...」

 

なんか言い出したけど、無視して...

 

「それ、俺がお前に言われた奴じゃねぇか。ステラの帰る場所を守る...だったか?」

 

「は?...いや待て、記憶を読んだだけ...」

 

「お前が俺を認識できるのは、略奪を俺に対して使ったからだったか。ってことは、あん時はまだお前に俺を見分ける術はなかったわけだ」

 

まさか...本当にあの時点でフロートがトルクに成り代わっていた...のか?確かにあの時点ではフロートを能力で見分けることは出来なかったが...

 

……待て。待て待て待て。バラバラに散らばっていた点が、一見無関係で気にも留めてなかった点が、繋がり出した。けど、そんなこと...あり得るのか?

 

「おい、フロート、お前...」

 

恐る恐る聞く。この予想が、タチの悪い妄想であってくれと願いながら。

 

「お前...いつからトルクに成り代わっていた?」

 

「お喋りは終いなんじゃなかったか?それに、いちいち律儀に答えると思ってんのか?」

 

「うっるせぇ答えろ!」

 

「……いいね、答えた方が面白そうだ。そんなに聞きてぇなら答えてやるよ」

 

フロートはさぞ面白そうに笑いながら言った。

 

「お前と初めて会った頃にはもう俺だったぜ。つまり、テメェは本物のトルクとは一度も会ってねぇってわけだ!」

 

「それ...って...」

 

絶句したステラの口から声が漏れる。

 

「一年以上前...」

 

ああ、悪い予想が当たってしまった。今日だけで、何度悪い予想が当たってしまったんだろう。

 

俺が初めて会った頃にはもう、既にフロートがトルクに成り代わっていた。それが正しいとすると、今まで見聞きしてきたことの全てに説明がついてしまうのだ。それはつまり、その時点でフロートがトルクに成り代わっていたことの証明となる。

 

カリスにいた頃、秘密の訓練場でステラに弓を教わっていた時に聞いた話。元々はステラの方が実力が上だったのに、三ヶ月とちょっと前くらいから急にトルクの弓の腕が上がって追い抜かされた、というもの。まるで人が変わったのかのよう、とステラは言っていたが、本当に中身が変わっていたのだ。

 

その時の三ヶ月とちょっと前というと、ちょうど俺がこの世界に来る一ヶ月前くらいに該当する。実はこの時期、他の魔族たちが活動し始めた時期と一致しているのだ。

 

アクセルは、俺がガネルに来た時から数えて、ちょうど一年前くらい前から表舞台に出たと、大会の時にもらったパンフレットに書いてあった。俺がこの世界に来る一、二ヶ月前だ。

 

サーマルは自分でこう言っていた。九ヶ月前くらいにこの町に来て、ギルド職員になった。その日は俺がカイスを離れる三日前とかだったはずだから、そこから九ヶ月前というと、俺がこの世界に来る二ヶ月前くらい。

 

キネットはわからないが、おそらくサーマルと同時期だろう。魔族たち全員の活動開始時期がおおむね一致している。フロートがその時点でトルクに成り代わっていたことを証明する理由その一だ。

 

理由その二は、フロートがステラを模倣できていたこと。

 

ステラの姿をしたフロートが俺の部屋に突撃する事件が起こったわけだが、その時のフロートは英雄が持つ弓と魔道具を両方きちんと持ってるステラになっていた。しかし、フロートは俺がステラと再開したその日のうちに渡していた指輪を持っていなかった。よって、フロートはステラが弓と魔道具を手に入れてから勇者選定の日までの一週間のうちに模倣したということがわかっていた。

 

その期間中に誰かに触られたかというニアの質問に対して、前すぎて誰かに長時間触られた記憶なんてない、とステラはニアに答えたみたいだが、もしステラが、無意識のうちに家族をその容疑者から外していたとしたら?家族なら触れても不自然ではないし、日常的なことなら記憶にも残らない。トルクの姿のまま、ステラを模倣したのだ。

 

なぜトルクの姿になっていたのか、その理由も推測は容易い。一言で簡潔に言ってしまえば、カリスの英雄の座をステラから奪うため。そしてそのまま勇者パーティーの仲間入りだ。それには失敗したわけだが...ガルムでの一件といい、いろんなことにも手を出していたわけだから失敗も織り込み済みだったのだろう。本気で成功させたかったらそっちに集中するはずだし、そもそもステラに成り代わっていたらよかったわけだしな。

 

……さて、フロート自身の証言も既に取れておる。一年以上前からフロートがトルクに成り代わっていたのは、完全なる事実だろう。

 

問題は、ステラがその事実を受け入れられるかどうかだが...

 

「一年も前から...お兄ちゃんが...フロート...?」

 

弓矢を持つ腕がワナワナと震えるステラ。

 

「ああ。実質、俺はお前のお兄ちゃんと言っても過言じゃないわけ「違う!」...いいねぇ」

 

「お前なんか...お兄ちゃんじゃない!その姿で...その声で...!私の記憶を塗りつぶすなぁ!」

 

「ちょっ、待てステラ!」

 

怒ったステラが弓に矢をつがえながら、一人前に飛び出してしまった。慌てて止めに入ろうとするが...

 

「計画通り」

 

「なっ...結界⁉︎」

 

俺とステラとの間に透明な壁のようなものが現れて、介入を防がれる。完全に囲まれた。四方八方、どこからも外に繋がる場所はない。この結界は、俺たちとステラとを完全に分断していた。

 

「一年も一緒に過ごしてきたんだ。お前の性格くらい熟知しているさ。どんなことを言えば怒って独断専行に走るかもバッチリだ」

 

「っ...一人で勝手に動いてごめん、カリヤ」

 

「……いや、しょうがないさ。誰だって似たような状況になれば同じことをしたはずだ。フロートの策に引っかかること自体に悔やむ必要はない」

 

結局のところ、俺が動くのが遅かったのが悪いのだ。キースを死なせてしまったことといい、速度を操る力をもってしても追いつけず、間に合わないことはいくらでもあるんだと実感させられる。

 

「その結界は、俺自身が発動させた魔法によって作られた代物だ。模倣した力じゃない。つまり、俺を完全に殺し切らない限り、その結界は消えないってわけだ」

 

「こんな結界、魔法拡散で...!」

 

「無駄だぜ。その中じゃ魔力を魔法に変えることは出来ねぇ。魔法拡散の上位互換ってわけだ。諦めてそこで見てるんだな」

 

「戦えるのは...私だけ...」

 

「そう...みたいだな」

 

速度操作は普通に使えるから、能力の範囲内に入ってくれればサポートできるが...フロートはそれを許さないだろう。サポートは一切できないと見ていい。

 

「戦えるのはステラだけ...頼んだぞ、ステラ」

 

「……うん!」

 

サポートはできないけど、応援はできる。想いは伝えられる。想いを託すことしかできないとも言えるけど、ここはポジティブにいこう。応援でステラを助けるんだ。

 

「じゃあ私、行ってくる!」

 

「ああ、行ってらっしゃい!」

 

ステラは振り返り、一歩を踏み出す。

 

己の兄の仇を討つため。カリスを滅ぼした報いを受けさせるため。

 

……いや、おそらく違うのだろう。

 

彼女は、復讐という後ろ向きな理由では決して戦わない。

 

俺たちを救うため。そのために、一歩を踏み出すのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、戦う前に一つ聞きたいんだけどいい?」

 

弓矢を構えて、半ば脅しのような形で質問をする。

 

「なんだぁ?お前もアイツみたいに...有無は言わせねぇってか」

 

「関係ないことを口走った瞬間にその頭を射抜く。答えてもらうよ」

 

質問したいことは一つ。単純な疑問だけど、多分カリヤも聞きたがってることだと思うから聞いてみる。

 

「どうしてあんな分断までして、私とだけ戦おうとしたの?フロートの力なら、ここにいる全員と同時に戦うなんて訳無いでしょ」

 

こっちには、略奪から瞬殺するコンボがある。それを警戒してのことなら納得できるけど、あっち目線だとそんなコンボがあるなんて知らないはずだから、自分の力に自信持ってそうなフロートなら普通に戦ってきそうな気がする。

 

「なるほどな...時間を無駄にしていいってんなら話してやるぜ」

 

「……いいよ。話して」

 

別に時間かかっても、魔物の大軍はニアが作った門のおかげでこっちまで来れないし、大丈夫なはず。ゆっくり話を聞く時間はあるはずだ。急に攻撃されてもいいように警戒しながら話を聞こう。

 

「そもそも、今この場で殺していい奴は神の使いと勇者、あとはお前だけなんだよ。その理由がわかるか?」

 

「……?」

 

「そりゃわっかんねぇよなぁ?何故かは知らんが、いつのまにかそういう慣習と成り果てて、なぜそうなのかの理由が伝承されてねぇからな」

 

「話には付き合うけど無駄口は減らして。無駄口叩いた瞬間その口ん中射抜くから」

 

「……お前ら、どうして勇者と英雄、神の使いの六人だけで魔王様を倒しに行くのか、疑問に思ったことないのか?もっと多くの人を連れて、それこそ百人でも連れて行って魔王様をリンチしてやれば、それだけで済む話だろ?」

 

……たしかに疑問に思ったことないかも。六人以外の助っ人を入れるという発想自体浮かばなかった。魔王城の前までとはいえ、カリヤが四人を助っ人に入れると言った時も、それなりに驚いた記憶がある。カリヤ以外、誰一人としてその考えを持てなかった...ってことだ。

 

「だが、そんな百人連れてくるなんてことはできないのさ。なにしろ、魔王城には勇者と英雄、神の使いしか入れないんだからな」

 

「そんな話初めて聞いた...けど、それがこの場で殺していい人とどう繋がるの?」

 

「魔王城に入るには、勇者か英雄、神の使いである必要があり、その称号とそれを示す物を持っている必要がある。逆に言えば、それらを持ってさえいればいいんだ。それは聖剣であったり、紋章だったり、弓だったり、盾だったり、知識であったり、力であったりと様々だ」

 

多分、今羅列したやつは勇者パーティー六人がそれぞれ持っているものなんだろう。私の場合は弓...ってこと?

 

「お前も英雄なら聞いたことあるはずだ。勇者は替えがきかない。しかし、英雄はいくらでも替えがきく...ってな。勇者は神の使いは死んだらそれでおしまいだが、英雄はそいつが死んだとしても、その称号を引き継ぐ奴が現れて穴埋めをする」

 

その話はたしかに聞いたことがある。もし私が死んだ場合、ナンバー2の実力者だったお兄ちゃんが引き継ぐことになっていた。まぁ、そのお兄ちゃんはフロートだったわけだけど。

 

「もうここまで言ったならわかるだろ?カイス、ガルム、ガネルの英雄は死んでも代替わりできる。しかし、カリスはそれができない。もう滅んじまったからなぁ?まっ、もし滅んでなかったとしても、俺に引き継がれるからどっちみち代替わりできないようなもんだがな」

 

「……やっと話が見えてきた。代替わりできないってことは、魔王城に入れる人数が減ることに直結する。逆に、代替わりできる奴を殺したとしても、入れる人数自体は変わらない。だから、ここでまだ代替わりできる可能性があるニアやレスト、クミさんを殺しても無意味。カリヤやライトなら殺してもいいけど、まずは戦力的に殺しやすそうな私から...ってわけね」

 

「よくわかったじゃねぇか。流石は俺のいもう...っと」

 

無駄口が出てきたから即座に矢を放ったが、軽々と避けられてしまった。

 

「ここでお前は確実に殺す。残りの五人は、魔王城に入って後戻りできなくなってから殺す。どっちみち、お前らが全滅することには変わりねぇ」

 

フロートの語気が荒くなり始める。話は終わりとばかりに、戦闘モードに入ろうとしているのだろう。

 

「そんな未来は訪れないよ。そうならないためにカリヤが来てくれたんだから。そして...そんなカリヤのおかげで、私は強くなれたんだから!」

 

勢いよく空へと飛び立ち、弓矢を構える。

 

「いいぜ。たっぷり時間稼ぎしながら遊び殺してやるよ」

 

フロートはお兄ちゃんの姿から変わることをせず、どこからともなく弓矢を取り出して構えた。

 

「その弓...私の⁉︎」

 

「模倣してないわけねぇだろ?ほら、避けてみな」

 

「っ!」

 

私のと同じ弓から放たれる矢を空を飛び回って避ける。

 

「無制限に撃ってくるのやばすぎ...!」

 

ある程度避けて隙があったら反撃しようと思っていたのに、なかなか矢が途切れない。一度に手で持てる矢の本数には限りがある。だから、矢筒から矢を補充する時にかかる時間分、本来ならこの弾幕が薄くなるタイミングが無いとおかしいのだ。

 

この謎は、フロートの手元を見たらすぐにわかった。複製の力で、矢を生み出し続けていたのだ。これだとタイムロスも少なくできるし、なによりも矢が無くなることを気にしなくていい。カリヤから渡された矢は十分にあるけど、それでも長期戦になった時のことを考えて温存しないといけないから、この差はかなりキツイ。

 

「そんなに撃ってくるなら...!」

 

フロートの方を向いて飛んでくる矢を避けながら、空高くへと上昇していく。

 

「この高さなら...!」

 

距離が離れれば離れるほど、ほんの少しのズレでも標的から逸れ、外れるようになる。ここまで遠く離れれば、私に当てるため正確な射撃をする必要が出てくる。そうなれば一発ごとに時間をかけなければいけなくなるし、距離があるから避けるのも簡単になる。

 

「……よし!思った通り!」

 

そして、矢も重力の影響を受ける。ここまで飛んでくる間に重力の影響をかなり受けるため、そもそも矢の速度が落ちる。斜め上ではなく真上へと向かったのは重力を最大限に利用するためだ。真上に向かって矢を撃つなんてこと普通はしないし、慣れもないはず。だからここまで届かせるだけでギリギリなはず...!

 

「そして!逆に私の矢は加速するっ!」

 

フロートめがけて矢を放つ。距離があるのは変わらないから、少しのズレが大きな外れに繋がるのは変わらない。しかし、撃ち下ろすため矢は重力を受けて加速する。射った瞬間の速度よりも速くなってフロートに向かって降り注ぐことになる。

 

「形勢逆転...だけど、いつまで続く?」

 

フロートは今、時間稼ぎ半分、私の殺害半分くらいで動いていると思う。この割合が動けば、すぐにお兄ちゃんの姿をやめて本気で攻撃してくるだろう。そこまでいかずとも、まだ遊びという意識があるのなら、こんな一方的に撃ち下ろされる展開なんて楽しくないからすぐにでも変えたいはず...私を追って空まで飛んできたら逆に近づいて意表を突いてやる!

 

「なーんてこと考えてんだろ?」

 

っ⁉︎消えたと思ったら目の前に...

 

「がふっ...!」

 

腹蹴られ...痛い!って早く立て直さないと!

 

「はぁっ!」

 

落ちながらもなんとか体勢を立て直し、追撃で飛んできた矢を避ける。

 

「転移...厄介すぎ!」

 

急に目の前に転移されたら、その後の攻撃なんて避けられるはずもない。腹を思い切り蹴られて、叩き落とされてしまった...って感じなんだろうけど、あまりにも早すぎて本当にそんな攻撃だったか確信を持てない。

 

「……ってやば...お゛え゛っ」

 

胃の中のものが逆流する。と言ってもほぼ水分しかないが、その水分だけというのが逆に嘔吐を辛くする。

 

「ははっ!いい気味だな」

 

「……ほんっと、下劣!」

 

「仲間にもよく言われるぜ」

 

よかった。まだ遊びの割合が多そう。これが無言で襲ってくるようになったら、もう終わりだ。それより早く決着をつけないと。

 

「……そういやそうだ。お前に感謝したいことがあったんだった。あん時狂った神の使いから守ってくれたろ?指輪の力も使い切ってくれてマジで助かったぜ」

 

「っ...!」

 

そうだ。あの蹴りで痛みを感じたのは、あの時カリヤを止めるので指輪の力を使ってしまったからだ。そもそも私が止めなければ、あそこでフロートを倒せたかもしれないのに...いや、今は後悔してる場合じゃない。

 

指輪の力はもうない。つまり、被弾がそのまま怪我と痛み、死に繋がる。転移攻撃などのどうしても避けられない攻撃以外は全て回避し切らないといけない。

 

「感謝するくらいなら自死でもしろ!」

 

三本の矢を一度に番え、フロートに向けて放つ。

 

「まぁ最悪自死もいいんだが、それするくらいならお前を道連れにして、神の使いも勇者も殺してやるさ」

 

自死もいい...?死ぬのも目的の一つってこと...?

 

……もしかしたら、殺してはいけない可能性ある?フロートを殺したら何かが作動するとか?考えられるのは...あの結界がなんらかの攻撃を始めるとか...いや、ブラフだ。変なこと言って無駄に考えさせようとしてるだけ!そもそも私に殺さずに拘束するという選択肢無い!あったとしても私の力じゃできない!だから丸ごと無視!

 

「ならその最悪を味わわせてあげる!」

 

「っ、近づいてくるとはな」

 

飛んでくる矢をカリヤ仕込みの瞬発力で避けながらフロートに近づく。この距離で限界まで引き絞ったこの矢なら...転移で避けざるを得ないよね?

 

手を離した瞬間にフロートの姿が消え...なかった。フロートの心臓を矢が穿つ。

 

「なっ...⁉︎」

 

フロートはわざと転移せず、こちらを欺こうとした...のではない。転移できなかったのだ。ほんの一瞬躊躇したことでね。

 

「私の真後ろに転移しようとしたでしょ。バレバレなんだよね」

 

「わざと近づいたのは、あの位置に誘導して転移を防ぐためか...!」

 

転移先に物があった場合、それを押し退けて転移できるのはシレンの穴での訓練で知っていた。あらかじめ物を置いて転移を防ぐ...なんてことは通用しない。

 

だから、そもそも転移を躊躇させる方法を取った。フロート自身が放って時間経過で落ちてきた矢を利用し、転移直後に矢が刺さるように転移先を誘導した。転移してもしなくても、必ず一度は殺せるような状況に仕向けたのだ。

 

「これで転移は消えた。お兄ちゃんの姿もやめてもらうよ」

 

フロートが矢を引き抜くと、傷が再生して別の姿へと変わる。

 

まだまだ戦いは始まったばかりだ。




トルクは最初からフロートだったことに気づけた人はどれくらいいるんですかね?
アクセルが青、サーマルキネットが赤と三原色の髪色をしていたので、緑髪のトルクが怪しい...となってくれたら嬉しいけど流石に微妙な伏線ですねこれ。

あと、一応魔族たちは、名前が何かしらのエネルギーや力(サーマルは熱エネルギーで、フロートは浮力などなど)から取られているので、その法則に気づいていればトルクという名前で魔族関係者じゃないかと予想できたりします。

各々、能力と名前にある程度関連性を持たせているんですが、まだサーマルの能力を完全に解説したわけじゃないので、そこら辺の解説はまた後ほど...
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