前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
フロート戦です。
「これで転移は消えた。お兄ちゃんの姿もやめてもらうよ」
そう言いながら、姿が変わりつつあるフロートに矢を放つ。まぁ、さっと避けられてしまったけど。
「……その弓は手放さないんだ」
「色々便利なもんでな。じゃあ第二フェーズ行くぜ?」
まだまだ遊び気分のフロートは複製した矢を放って攻撃してくる。急いで避けるけど...なんか速いし精度がさっきよりも良くなってる?ということは、今のフロートの姿の一部は、本来のお兄ちゃんよりも腕の良い弓使いってことかな。
そこまで弓矢に固執する理由がわからない...けど、とりあえず考えないでおこう。今は避けながらしっかり狙って反撃を...っ⁉︎
「ら、雷装⁉︎なんで⁉︎」
フロートが雷装の矢を放ってきた。普通の矢でも当たったらやばいってのに、さらに威力を上げてくるなんて...というかなんで使えるの⁉︎
「まさか私のを...!」
「いや、前に模倣した分は既に破壊されちまってるし、さっき模倣することも出来なかったからテメェのじゃねぇぜ。アクセル経由さ」
なるほど、雷装を使えるアクセルの模倣で矢に雷装を流し込んだのね。ということは、今のフロートの一部はアクセル...と。
フロートは模倣した他人の力を使う時、その本人の体になる必要がある。けれど、必ず一人の力しか使えないというわけじゃなくて、複数の人のパーツを織り交ぜることで複数の力を同時に使ってくる。さっきも見た目の部分はお兄ちゃんにして、多分体の内側とか服で隠れて見えないところはキネットにして転移の力を使ってきた。
こうすることで複数の能力を使えるのはメリットだけど、デメリットもある。それは、その時に死ぬとその体を形作っていた人の力を全て一度に失ってしまうこと。ほんの少しのパーツだったとしても使えなくなってしまう。だからフロートは、自分の残機を温存しながら戦うために同時に使う力は二、三個程度に抑える。そうそう一度の死で何十も力を失わせることはできない。
……といったことを前にカリヤから聞いていた。これが全部正しいとは限らないから信用しすぎないようにって言ってたけど、今のところ魔族に一番詳しいのはカリヤだから私は信頼している。
「ならこっちも雷装で...!」
『雷装・矢』
私も負けじと雷装の矢を使って攻撃する...けど、当たらなければ意味がない。少し速くなったりはするけど、雷装の利点は威力増加だ。やはり当たらなければ意味が...そもそもアクセルの雷装があるから効かないじゃん。じゃあそれに気づいてない風に見せかけて油断させよう。わざわざ当たりに来ることはないだろうけど、当たってもいいという意識を持たせよう。
「……さっきから思ってたけど、なにそれ走ってんの?」
フロートは飛んでいる私から一定の距離を保ちながら空中を移動していた。飛んでいるというよりかは、空中にある何かを蹴って移動しているようだった。アクセルは空中で一回ジャンプできる魔道具を持ってるらしいけど、多分それじゃないはず。ということは、弓使いが空中に壁を作れる力を持っていたか、三つ目の模倣した力で足場を作ってるかの二択だ。第三の力に気をつけておこう。
「じゃあ力の確認のためにも...!」
後ろに下がりながら矢を射るのをやめにして、一気に前進。私の急な行動に少し驚いた表情をしたフロートの下で静止する。
「はぁっ!」
雷装の矢を放つ。もし足場を作る力なら、その足場に矢は刺さるはず。もし別の力で空中を移動していたなら、回避行動を取らざるを得ないはず。回避したならすぐに氷装に切り替えて撃ち抜く!
「チッ...!」
なっ、一瞬矢が何かに当たって止まったと思ったらそのまま突き抜けた⁉︎って避けた!今!
『氷装・矢』
「いけっ!」
すぐにフロートの真横まで移動して、氷装の矢を放つ。避けた直後の今なら、雷装が来ると油断していた今なら、当たるはず...!
「っ...意表を突いたつもりのようだが、残念だったな」
「な...壁に止められた⁉︎」
氷装の矢は壁のようなものにぶつかり、それをカチカチに凍らせる。
「っぱ雷装で貫通されちまうか...あん時もそうだったか」
あん時ってのはよくわからないけど、雷装の矢で突破できたのを見るに、あの壁は空気中の水分を固めたものだ。だから電気分解で突破できて、氷装だと凍らせられた。おそらく、足場だけじゃなく横や上もこの水の壁で覆っていることだろう。
……なるほど、だからフロートは雷装の矢を使ってたのか。当たらなければ意味がないのになぜ使うんだとおもっていたけれど、自らを覆っている水の壁を貫通して攻撃できるからだ。自分の攻撃のためにいちいち壁を解除する必要がないからその隙を狙われることもなくなるってわけだ。
となると、フロートに攻撃を当てたいなら、私は雷装の矢で攻撃し続けるしかない。命中したとしても雷装の追加ダメージは期待できないのにだ。スタミナも魔力も使うから、無駄に雷装を使わせられるのはかなりのロスだ。
「……って思ってるんだろうけど、その予想を超える!」
『雷装・矢』
まず雷装の矢を一本放つ。フロートの目の前にある壁を矢が貫通し、そのまま向こう側の壁に当たるその前に...!
『氷装・矢』
「これで!」
急いで反対側に回り込み、雷装の矢が次の壁に当たる前に氷装の矢をその壁に突き刺す。水分でできた壁は一瞬で凍りつき、雷装の矢は貫通することなくその壁に突き刺さる。
「まだまだ!」
フロートが動き出す前に五本の矢を手に取り、一本ずつそれぞれ別の壁に向かって放つ。フロートの上下前後左右の壁を全て凍結させるのだ。
「……よし決まった!」
全ての逃げ道を塞ぎ、壁の内側には雷装の矢。準備は整った。
雷装の矢は凍った水分の壁を電気分解して、爆発の元を作り続ける。フロートがあの中から出ようとして壁を破壊したところに火装の矢を撃ち込めば、爆発でフロートを殺すことができる。
転移がない以上、この攻撃からは逃れられない。フロートにできることは、せいぜいアクセルの力を温存するために一旦模倣を解除することくらいだ。重要な能力は残されてしまうけれど、これで残機を減らせるはずだ。
バレずにあの中から出る方法はないはず。空気中の水分を操る力を解除しても、凍りついた壁は元には戻らない。もはやあの壁は氷装のおかげで成り立っているから、水分操作じゃどうにもならない。物理的な壁の破壊でしか抜け出せないから、察知も容易い。火装の矢を放つのが遅れることはないだろう。
「……いや、それじゃダメだ」
これじゃフロートの予想を超えられない。
もしフロートがなかなかあの中から出て来なかったら?あの中に爆発の元が大量に充満するまで待ってから出ようとしてきたら?全ての壁を一気に破壊してその空気を周りにばら撒き、待ってた私が持ってる火装の矢で引火させようとしていたら?私ごと巻き込んで丸ごとドカンだ。そしてフロートは残機のおかげで復活...十分考えられる負け筋だ。
これを回避するには、私が自発的に着火させて、フロートだけを爆発させる必要がある。火装の矢を構えてなければそれでいいわけではない。フロートは壁を破壊した後に自分で火をつけることもできるからだ。安全な状態で、先に私が火をつける必要がある。
しかし、あの中にどうやって火を投げ込む?まずは壁に穴を開ける必要ある。火装の矢も炎弓も壁を貫通するほどの威力はないからだ。なら雷装の矢で穴を...と言いたいところだけど、おそらく刺さりはするものの貫通はしない。穴を開けることはできないし、それどころか、外側でも爆発の元が生まれてしまい面倒なことになる。
「とすれば...!」
私はフロートを囲む氷の壁に近づき...
『雷装・剣』
「はぁっ!」
カリヤから貰ったダガーを抜いて雷装を纏わせ、氷の壁に突き刺した。剣の形なら厚みのある壁も貫通して剣先を内部に露出させることができる。
「そして...吹っ飛べ!!」
『火装・剣』
雷装を火装に切り替える。
次の瞬間、壁の内側が爆発する。爆発の勢いで刺していたダガーがポンッと吹き飛んでいったため、私は壁を蹴って空を飛び、ダガーを回収する。
「あーちょっと欠けちゃってる...よく頑張ったね。後でカリヤに直してもらおう」
「これはこれは...予想外だな。まさか、そんな武器を隠し持っていたとは」
壁が壊され、中から先ほどとは別の姿に変わったフロートが出てくる...今思ったけど、フロートって服ごと模倣してるのかな?完全に吹き飛ばしたはずなのにちゃんと服着てるけど...服に魔法を仕込んでる冒険者多いって聞くし、再現度を高めるためにちゃんと服も模倣してるってことかな。
「そりゃ色々あるよ。お兄ちゃんも知らない武器だってある。舐めてもらっちゃ困るよ!」
フロートの予想を超えるには、勇者選定の日以前から持っていた力じゃダメだ。それ以降の、フロートと関わってこなかった期間のうちに手にした力でなら、さっきみたいに裏をかくことができる。その手札を使い切る前にフロートの残機を減らし切らなければ...
……そもそも、フロートってどれだけ能力のストックがあるの?前にカリヤから、ギルドの中でフロートと遭遇したことがあるって話を聞いた。おそらく、そこにいる冒険者を模倣して回ってたのだろうと言ってた。カリスに送り込まれた冒険者の複製体からしても、模倣した数は相当のものだと思う。
だけど、ここで一つの疑問が残る。模倣した力のうち、どれだけを複製体の生成に使って、どれだけを自分のストックとして置いておいたのかだ。強い力、便利な力を残しておいているとしても、その数はどれだけなの?その数によっては、何百回殺してもまだ終わらないなんて普通に起こりうる。少なくなってきた矢をどのように使うのかにも関わってくるし、かなり重要な事柄だ。と言っても、どうやったってその数を私が知ることはできないのだけれど...
「……ひとまず矢の回収を...!」
急降下して地面スレスレを飛行し、刺さってる矢を引き抜いて回収する。
「これでしばらくは大丈夫なはず...!」
そう言いながら、回収した矢の一本を弓に番える。
「おお、そいつは...」
ニヤリと笑うフロート。それにほんの少しカチンと来た私は勢いよく弦を引き絞り...
「……えっ?」
手を離そうとした瞬間、矢が消えた。
「なんで...転移はもうないはず...物質転移の魔法?」
「そいつぁ俺が生み出したもんだぜ。勝手に使われるくらいなら消してやるさ」
「なっ...」
フロートが複製した矢はいつでも消すことができる...ということは、今私が回収した矢の中に混じっているであろうフロートの矢も同様に消せるってことだ。どのタイミングで消されるかはわからないけれど、今みたいに番えた瞬間に消されるのも、放った後に消されるのも両方厄介だ。矢筒の中に入れている状態で消されたら残り本数もあやふやになってしまう。これは...厄介極まりない!
「つまりテメェは自分の矢しか使えねぇってわけだ。回収したいならゆっくり吟味することをお勧めするぜ。もちろん、その最中も攻撃させてもらうがな」
そう言いながら、フロートの姿が変わっていく。
「っ...ニアの姿に...!」
ニアの力はヤバい。本気を出さなくてもニアの力を一部解放しただけで全方位から急いで殺す必要がある。フロートの知らない技で、一撃で殺さないと...!
生きるか死ぬかの賭けだ。起こりうる事象だけ考えると確率は四分の一。だけど、実際の確率は多分それ以下。でもやるしかない。
私は矢を二本取り出して、まずは一本番える。何百とやって体に馴染ませてきた速射をやるイメージを固めてから、まず一本目を放つために弦を弾いて...
「ハッ、残念だったな!」
フロートが嘲笑いながらそう言うと、番えていた矢が消滅する。
「……なぜ笑っ...⁉︎」
私に扱える数少ない魔法である炎弓を発動させながら手を離すと、炎でできた矢が発射されてフロートを襲う。
「くっ...あがっ⁉︎」
流石はニアの力。フロートは即座に魔法拡散を使い、炎の矢をかき消した。しかし、その炎の矢のピッタリ後ろに隠れるようにして放たれた普通の矢をどうにかすることはできず、額に矢が突き刺さった。
軌道変更の魔法で逸らせば助かったものを、ニアが得意な魔法拡散で一本目を対処しようとしたからこそ二本目が命中する羽目になったのだ。まぁ、不意打ちに近い形で放たれた炎弓を回避するにはああするしかなかったんだと思うけど...
「今が第何フェーズなのかは知らないけど、また私の勝ちだね」
一本目がフロートの矢で、二本目が私の矢であるという確率を引き当てた私の勝ちだ。こうもあっさりニアの力を失わせられたのも幸運だ。少しは運が傾きつつあるってことかな。
「チッ...次はこうは行かねぇぞ。こうなったら徹底的に弓で勝負してやる。テメェの得意分野で叩き潰して、有無も言わせぬ完全勝利だ」
……カリヤだったらここでめっちゃ煽りを入れるんだろうなと思うけど、これ以上怒らせるとすぐに本気出されてやられちゃうからやめておこう。でも...これだけは言っておこうかな。
「落ちてる矢の本数を増やして、矢の回収を難しくしようって魂胆なんだろうけど...無駄なんだよね」
さっき回収した分の矢を矢筒から取り出す。
「見分ける方法、今さっき思いついちゃったから」
『製作』
カリヤから伝授された製作のスキルを使う。周囲の素材を使って矢を作り出すこのスキルを使えば...私が使った矢は分解されて矢の形に再形成される。フロートが複製した矢はそのまま残るから、矢が作り出される前にポイと捨てておく。
「……なるほどな。まさか、そういう見分け方があるとは...」
「完璧に見える複製にも、ちゃんと綻びがあるってことだね。で...あなたの模倣にはどれだけ綻びがあるのかな?」
「言ってくれるじゃねぇか...テメェが思ってるほど杜撰なものじゃねぇぞ。模倣、複製共に精度は99.9%だ。どうしても0.1%再現しきれない部分はあるが、どこを再現できなくするか俺が選ぶこともできるし、わざと精度を落とすこともできる」
「へぇ...」
……と、あたかもちゃんと話を聞いてますよという雰囲気を出しながら、適当に相槌を取る。正直、再現率がどうとか聞かされても、それによって私が得する未来が思い浮かばないから無視して自分のことをしたほうがいいに決まっている。
私がしていたのは今持ってる矢の本数の確認だ。元々残っていた矢は二十八本で、さっき回収した分は十一本。合計三十九本だ。少し心もとないから回収しながら戦う必要があるね。
「複製したもんは壊されると存在ごと消えちまうから製作にも使えないってことなんだろうが...こいつは俺も知らなかった性質だ。感謝はするが...これ以上矢を拾わせる気はない!」
「っ...⁉︎」
フロートが片足を上げ、ドンッ!と勢いよく地面を踏み締めた。次の瞬間、放射状に衝撃波のようなものが伝播していく。フロートの近くに生えていた草花がスパスパと切れていくのを見てヤバいと思った私は急いで空に飛んで逃げる。
「こんぐらい粉々にしてしまえば、製作も使えねぇだろ」
やられた。あそこまで細かく切り刻まれてしまったら、製作の素材に使えない。ここからは今持っている三十九本の矢しか使えない。おそらく、使った矢は回収する前に同じように破壊されてしまうだろう。一本の無駄撃ちも無くし、全てを有効打にしないといけない。
「キツい...けど!」
フロートが放った矢を見てから私も矢を放つ。真正面から矢同士がぶつかり合い...フロートの矢を破壊し突き抜けそのままフロートの肩に突き刺さる。
「ぐっ...!」
「弓だけは誰にも負けない!!」
怯んだ隙に速射で二本矢を放つ。一本目で手から弓を弾き飛ばし、二本目で脳天を貫いて殺してしまう。
「この弓は貰うよ!」
「っ...返させてもらう!」
フロートの姿が変わり...ワンナの姿になる。そして私が回収した弓が略奪によって奪われ、フロートの手に渡る。
ああなってはもうフロートから弓を取り上げることはできない。所有権がフロートとして固定されてしまっているため、私には触れることもできなくなった。
「そしてお前のも...!」
フロートの腕に盾が装備される。あの着き方、あの形。間違いない。レストの盾だ。
けれど、弓を持つために両手が塞がれているため、フロートは今それぞれの盾が持つ特殊効果を使うことができない。ノーハンドで使えるのは二つの盾をくっつけて発動できるカウンターだけ。それさえ警戒して、適切に対応すれば殺すのは容易い。厄介なワンナの略奪の力を消せるチャンス!
「そんなの無意味だよ!」
『雷装・矢』
雷装を纏わせた矢を番え、弦を弾き絞り...来た!
「それは見てから止められる!」
私が矢を放ってから発動させればいいものを、矢を番えて放つ直前にカウンターを発動させてきたため、すぐに矢を放つのをやめてフロートに近づく。
あの盾は略奪で奪ったもの。模倣した時のように、完全に本来の持ち主と同様に使いこなせるわけではない。盾への理解度の浅さが、この隙を生み出した。
カウンター発動中に攻撃が来なかったため、時間経過でカウンターが止まる。展開されていた盾は元の大きさに戻り、フロートに防御手段は無く無防備状態。
「くっ...!」
フロートがこちらに手を伸ばし、略奪を発動させる。矢筒に入っていた矢が根こそぎ持っていかれるが、問題ない。略奪は二つ手札を用意しておけば必ずどちらかで殺せる!
「はぁっ!!」
爆発によって少し形が歪になったダガーを抜き、フロートの胸に突き刺す。予想してた通り、切れ味が落ちていてうまく刺さらなかったけど...!
「あぐぅっ⁉︎」
無理矢理ダガーを捻り、傷口を抉り広げる。ここからもう一つ...!
「『風装・剣』!!」
ダガーから風が噴き出し、体を内側からボロボロに壊す。
「矢は返してもらうよ」
一度死に、姿を変えてフロートが復活する前にその手から矢を奪い返...そうとしたけど、略奪の効果が切れたことで勝手に返却された。それを矢筒にしまいながらダガーを引き抜いてしまう。
「強い能力無駄遣いしすぎなんじゃないの!私に勝つ気あるぅ?」
「最終的に勝ちゃあいいんだよ。何度死のうと...な!」
フロートはそう言いながら一瞬で矢を番え、そのまま私に向かって放ってきた。
「避ける必要無し!お返しするよ!」
私は飛んでくるその矢を掴み取り、先のフロートの射撃よりも早く矢を放つ。狙いが大雑把になったから首から逸れて右肩に当たったけど、十分だ。
「なっ...そんなのできるか普通...!」
「なに?魔族さんにはこれできないのぉ?...弓じゃ私にはどうやっても勝てないよ!」
弓ならば私は誰にも負けない。飛んできた矢を掴んでそのまま利用することだってできる。カリヤの加速に長い間付き合ったおかげで得たこの技術。誰かの力を借りることしかできないフロートなんかに、遅れを取ることなんてあり得ない。
「こいつ...!」
「そろそろ弓は諦めたら?そんなんじゃいつまで経っても私を殺せないよ。先に私がお前を殺してみせる」
「ハッ...その矢の本数で何ができる。それに...」
ふわっ...と矢筒から重さが消える。
「一度触れることさえできれば、物質転移は使えるんだぜ?」
フロートの手元に矢が現れ、そのまま握りつぶされて粉々になってしまう。ご丁寧に製作に使えないようにしてくれたわけだ。
「矢を破壊したところで、さっきみたいにそっちが放ってきたのを使えるから尚更そっちが弓矢を使う理由ないね。どうするの?」
「優しさ出して使ってやるのもありだが...炎弓あるんだろ?使いたいのは山々だが、さっきのを見せられてわざわざ使うやつはいねぇわな」
「どうしてそこまで弓にこだわるのか知らないけど...まだ私のこと舐めてるみたいだから、これ、避けてみなよ」
何も番えていない弓を引き、手を離す。
瞬き一瞬の時間が経つ。するとフロートの左肩には、まるで矢が刺さったかのような傷が一つ生まれていた。
「っ...⁉︎」
「見えない不可視の矢...そろそろ本気出さないと、本当に死んじゃうんじゃない?」
フロートなんか死にすぎじゃね?と思う人いるかもしれませんが、どこぞの慢心王のように慢心しているのと、本文中にも言ってた通り別に死んだとしても問題ないこと、それ加えて単純に実力不足で、これが正常だったりします。
フロートがやってることは言ってしまえば、最大三人の力を同時に扱うことができるというものですが、三人の力を一つにするっていうのは勇者を作る時にやってることとほぼほぼ同じなんですよね。
しかも体をキメラのように繋ぎ合わせる関係上、身体能力をフルで発揮することも難しく、能力同士の相性もあって勇者よりもその精度は低かったり...
正直言って、フロートの力って模倣のストックによる無数の残機と、物体や人の複製の方がメインなまであるんですよね。
無限に近い命で特攻したり、複製体で囲んで数の力で戦う方が絶対強い。
今のフロートは前者で戦ってるので、実はちゃんといつもの戦術で戦ってるんですね。
果たしてステラちゃんは無数のストックを全て殺し尽くすことができるのか...?