前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8273字。

フロート戦後の話です。


死人しかいない村

「な...ぜ...」

 

腹と心臓を貫かれたフロートは、私の姿から変わる。

 

しかし、変わった姿も貫かれたところは変わらないまま。緑髪の魔族はただ困惑していた。

 

「なぜ...俺のストックが...!」

 

「この弓矢は、無の心が具現化したもの」

 

「っ...⁉︎」

 

「それに触れたものは、無へと変換される。魔族の能力って、魂に宿ってるんでしょ?そして魂は心臓に宿ってるってカリヤが言ってた。心臓全てを消し飛ばしたわけじゃなさそうだけど...一緒に魂も消し飛んだ。だから、これまで貯めてきたストックが消えたんだよ」

 

「く、そ...がぁ...!」

 

「無駄な足掻きはやめた方がいいよ。貴方も、もう何もできないってわかってるでしょ」

 

「それでも...俺はァ!」

 

「させねぇよ」

 

這いずってでも動いて私に襲い掛かろうとしたフロートが、後方へと蹴り飛ばされる。

 

「カリヤ...!」

 

「一人でよく頑張ったな。かっこよかったぜ」

 

カリヤにポンポンと頭を撫でられる。心身共に疲れているからか、この手の暖かさがなんとも心地よかった。

 

「なん、でテメェが...!」

 

「いやはや、まさかあんな小細工で俺らを縛り付けていただなんてな。よくやったもんだよ大博打じゃねぇか」

 

「……あれ?フロートが死なないとあの結界解けないんじゃ...?」

 

「あの結界な、ただの障壁と魔法拡散だったんだ。ニアが障壁を魔法拡散で消したおかげで、普通に外に出れたよ」

 

「え?魔法は使えないんじゃなかったっけ?」

 

「魔法拡散の上位互換だかなんだか言ってたが、そんなの存在しなかった。こいつなら持っていてもおかしくないなという先入観と、思考共有の応用による意識誘導のせいで、俺ら自身が魔法を使おうとしてなかっただけだったんだ。実際には使えるのに、フロートに魔法を使えないと言われて試しすらしなかったんだから、それだけ強い思考誘導だったんだろうよ」

 

「ぜ、全部ハッタリだったってこと⁉︎」

 

「そういうことだ。デバフとかの悪い影響を弾くライトも魔法を使えないって言ってたのが違和感すぎてなんとか気づけたよ。あいつ、思考共有で洗脳することへの耐性は流石に持ち合わせてなかったみたいだ」

 

勇者の耐性にそんな抜け穴があったんだ...

 

「……ってわけだ。もう少し早く気づけてりゃステラに苦労させずに済んだんだが...まぁ結果オーライか」

 

カリヤがフロートに近づいていく。

 

「うちのステラを強くしてくれてありがとさん。ゆっくり戦ってくれて助かったぜ」

 

「っ...どうやら、俺の負けはもう覆らないらしい」

 

「ああそうさ。お前にできることはもう死ぬことだけだ」

 

「いいや、まだ俺には出来ることが残ってる。そして、死ぬ前にやらないといけないことも終わらせている」

 

「……死んだ後に出来ることっつーのはよくわからんが、時間稼ぎは失敗だぜ?さっきお前が開けた穴は、今ニアが塞いでいる。魔法射出機構も付けてるから、破壊前よりも高性能だ。お前の時間稼ぎは無意味なものさ」

 

「そんなことはねぇさ...俺が蒔き、お前らが潰し損ねた種が、ちょうど今芽吹く頃合いだ」

 

「何を言って...なっ⁉︎」

 

カリヤが驚いた表情で、カリスの方を向いていた。

 

「なんで火が...?あんなところまで火装飛んでないはずだよ⁉︎」

 

「なんだって今頃...おいフロート!なにしやがった!」

 

「俺は何もしてねぇぜ。お前らが後始末しなかったせいだろ」

 

少しずつ、体がボロボロと風化するように散っていくフロートは、それでもなお言葉を紡ぐ。最後の瞬間まで、私たちを絶望の淵に落とそうと口を動かす。

 

「後始末...?」

 

「カリヤ!」

 

カリスに何が起こっているか分からず、混乱しているところにライトが駆け寄ってくる。そしてすぐに私たちに問いかけてきた。

 

「まさかだけどみんな処理してないの⁉︎」

 

「処理って...何をだよ?」

 

「……ってことはちゃんと心臓を潰してたのは僕だけか...!」

 

頭を抱えるライト。心臓を潰すって...なに?

 

「ハッ、流石は勇者か...あの状況でも冷静だな」

 

「うるさい邪魔だから退いてて!」

 

蹴り飛ばされて遠くまで退かされるフロート。なんか...ちょっと可哀想に思えるね。

 

「いい?二人とも。今あのカリスの中で暴れているのは、アンデッドだ」

 

「アンデッ...クソ!失念してた!」

 

アンデッド。死んでしまった人が魔素のある空間に長時間晒されることによって生まれる、特殊な魔物。カリス周辺だとアンデッドが生まれることはそうそうないから、全く考えてなかった。

 

あれ?でも村の中なら問題ないんじゃ...

 

「あそっか!村が聖域じゃなくなってるからアンデッドが生まれる条件を満たしちゃってるのか!」

 

「今回の件で死んでしまった者の中で、心臓や血がちゃんと残ってる人はアンデッド化しちまってるってわけか...!」

 

「それに加えて、村の中の墓地にある死体もだね。聖域の中じゃ土葬しててもおかしくないし、最近埋められた死体なら動ける程度には朽ちずに残ってると思う」

 

「となるとだいぶ数多いな...急いでアンデッド狩り行くぞみんな!これ以上村を破壊させるな!」

 

「ねぇカリヤ!フロートはどうするの?まだ一応生きてるけど!」

 

「……それじゃちゃんと消えるまでステラが見てやってくれ。終わったら、壁の方にいるニアと合流だ。疲れてるし、矢もないだろ?今は休んでてくれ。有無は言わさん!」

 

「ちょっ、カリヤ⁉︎」

 

言うだけ言って、カリヤたちはカリスの方へと走っていってしまった。

 

……正直に言うと、今からまた戦うのは辛かったからだいぶ助かる。こういう気遣いがすぐにできるの、なんか...ずるいなぁ。

 

「……消えるまで見ててやって、だって。やっぱりカリヤって、ちょっと魔族に優しいよね」

 

もう消えかかっているフロートに近づきながら話す。

 

「優しさじゃねぇだろんなもん。俺がもう抵抗できねぇで、消えるのみってのが分かってるだけだ」

 

「へぇ...最後にちょっと聞いてもいい?」

 

「なんだ?情報なら吐かねぇぜ?」

 

「その髪の毛って、元々緑なの?お兄ちゃんと被ってたのは偶然?」

 

……なんか、キョトンとした顔された。

 

「……ははっ、まさかそんな質問されるとはなぁ?...その通り、ただの偶然だ。お前ら兄妹の髪色がなんで違うのかこっちが聞きてぇよ」

 

「さぁ?兄妹どっちとも模倣したんだから、なんかわからないの?」

 

「知るかよんなもん...お前の兄さんが死に際に言った言葉なら教えられるぜ?」

 

「……ほんと趣味悪いよね」

 

「よく言われるよ...っと、そろそろ終いみたいだ」

 

体が朽ちていく速度が加速している。もうあと少ししたら、完全に消えてしまうだろう。

 

「……なぁアクセル。俺を嫌がらなかったのは、お前だけだったな...」

 

死を前にして、フロートはここにはいない仲間へ向かって話す。

 

「ああ、やっぱり、俺が最初だったよ...先に魔王様のところに行くが、お前は来るんじゃねぇぞアクセル...」

 

そう最後に言い残し、フロートの体は黒い塵になる。そして風でふわりと浮き上がり、妙な軌道で南へと飛んでいった。

 

「……あれ、あの城まで飛んでいったのかな?」

 

魔王様のところに行く...って言ってたけど、なんか悪い予感が...実は死んでなくて、後でまた出てくるとかないよね?魂削ったし...無いと思おう。

 

「終わったらニアところに...って言ってたよね。行かないと...っと」

 

ニアのところに行こうとして...引き返し、フロートのいたところまで戻る。

 

「これが本物の弓...なんか、手に馴染まないなぁ」

 

複製したものとはいえ、やっぱりほんの少し本物とは違う部分があったのだろう。フロートが持っていた本物の弓を持ってみたけど、なんか違和感がある。

 

「……もしかしたら、偽物を本物よりも使いやすくしてたりしたのかな?」

 

99.9%の精度で複製できるって言ってたけど、0.1%の部分は自分で操作できるとも言っていた。この弓の不便なところをその0.1%の部分に押し込むことで、欠点を無くした複生物を作ることができるのかもしれない。

 

もしそれができたとして、なんでそんなことをしたの?って話になるけど、これはフロートが言いそうなことを考えたらすぐに分かった。自分が負けて、弓が取られることになるのを想定したのだ。

 

そのまま何も細工しないで複製していたら、弓が本物になっても私の強さは変わらない、もしくは0.1%が埋まってそれまでより強くなってしまう。そこで複製物を本物より使い勝手の良いものにすることで、本物の弓を手に入れた時に弱体化するように図ったのだ。

 

「すっごいフロートがやりそうなことだよねぇ...頑張って慣れないと」

 

矢がないせいで試し撃ちが出来ないのが残念だ。空撃ちは弓に負担が掛かってしまうからやってはいけないし...

 

「……そんなことよりもまずはニアのところに行かないとだね」

 

弓を手に持ちながら、私は魔道具で空を飛びニアのいるところまで飛ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気をつけねぇといけないのは、転移で普通の一般人なり冒険者がアンデッドの中に紛れている可能性だ」

 

「またそれか...」

 

「しかも今回は、喋ってるから大丈夫とはならない。アンデッドは普通に話せるからな。明らかに死んでるだろって傷で判別できなくもないが...それでも確証は持てん。アクセルとレストはペアになって、処理は昏倒まで。ライトは必殺技で動かなくなった奴の心臓を処理だ。行くぞ」

 

「了解!」

 

カリスに入ったところで、バラバラになって行動する。俺なら体内に魔素があるのを察知できるから、ひたすら走り回ってアンデッドを見つけて心臓を潰すだけの簡単なお仕事だ。

 

「相当数いるな...しかも村狙いだからところ構わずに暴れてやがる」

 

複製体が暴れていたのは人同士の争いを誘発するためのものだったから、建物への被害はそこまで大きくはなかった。しかし、今回はアンデッドの人間に仇をなそうという本能によって暴れているため、狙う対象は人ではなく建物だ。ひたすら村を破壊しようとしている。

 

……こうして見ると、ここにはアンデッドしかいなさそうだ。転移させられた人が建物を壊す理由がないし、アンデッドしかいないと考えて良さそう。そもそも魔族が統率を取って暴れさせてるわけでもないし、キネットが転移させてるかもというのは考えすぎかもしれない。

 

「これならクミリアたちにも普通に処理任せられたか...?まぁ念には念をだな」

 

警戒を怠った結果、本来なら起こらなかった死が生まれてしまったらきっと立ち直れなくなる。ここは時間がかかってでも、確実性を取っていこう。

 

「というかアンデッドよりも火災の方が対処先か...?」

 

アンデッドの対処にだけ気を取られていると、その間に火災が広がって消火が難しくなってしまう。炎と煙の濃度が大きくなると俺の速度探知にも少なからず支障をきたしてしまうだろうし、先にやらないといけない気がする。

 

「延焼対策は...いらないな。さっさと全部火を消すほうが早いか」

 

こういう木組の建物の場合、燃えている場所の周りの建物を全て崩してしまうことで延焼を防ぐ、みたいなことできるんだったはず。江戸時代の時の火消しはそういうのをしてたらしいけど...魔法があるんだからそんなことをするよりも大元の火をなんとかしたほうが早い。

 

「水の触手...いや、熱操作の方が楽か」

 

5293ページ 黒のみ 熱操作

 

熱操作の魔法陣に魔力を通し、常時発動状態にしておく。

 

「これならアンデッドも同時にいけるはず...!」

 

速度探知に引っかかる半径6.4メートル以内の温度を全て精密操作できるようになったので、範囲内に炎上している家屋が入れば温度を低下させて火を消し、アンデッドが入った場合は心臓を即座に高温にして燃やす。

 

「まぁ結局どんな方法取ったところで、縦横無尽に走り回るのは変わんねぇんだよな...」

 

速度操作なんていう能力を手に入れた時点で、こうなることはもう半ば決まっていたようなものだが、この方法しか取れなくなっているせいで最近はもっと他にいい方法があったのではないかと考えてしまうようになった。今更やり方を変えることは難しいが、ずっとこのままでいるのもダメだろう。能力に頼らないやり方も考えなければ...

 

「……ってうわっ!自然湧きめちゃ近くでされんの怖すぎる!」

 

思わず蹴り飛ばしてしまったが、すぐに落ち着いて燃やし尽くす。

 

「ってか外で魔物の自然湧きに遭遇したことなんてないのに、なんでこうも遭遇するかなぁ?」

 

この一年で魔物の自然湧きに遭遇したことなんて一度もなかったよな?みんなもほとんど経験なかったはずだ。それなのに、カリスに来てから何度か自然湧きの瞬間を目撃している。それも、小さい個体ではなくそれなりのサイズで既に成長しきったようなものも珍しくない。

 

「魔素の濃度が濃くなってるせいか、それとも魔王が鞍替えしたからか、はたまた夜のせいなのか...まさか転移じゃねぇよな?」

 

一瞬で現れるから転移っぽくはあるんだよな...でもキネットが魔物を送り込むならこんな雑魚じゃなくてもっと強い奴を飛ばしてくるだろうし、そもそも既に滅んだも同然のカリスに魔物を送り込む意味がないからな。多分転移では無いと思う。

 

「……考えても意味ねぇか...っ、これもビビるんだよな」

 

ライトの必殺技が俺の体を貫通する。偶然射線状にいたみたいだ。全身が聖素に包まれ、とてつもない高揚感のようなものにも包まれる。疲れもこれに包まれている間は吹っ飛んでくれる。出た瞬間にこの影響は無くなるから、反動がキツくて喰らう前より調子崩しそうな気がするわ...一応魔力回復に利用させてもらおう。

 

「よし、なら今度はこっち行っておくか」

 

方向転換し、必殺技の飛んできた方向に向かって走る。必殺技のおかげでアンデッドの活動は止まっているから、その後の処理は後でここを通るであろうライトに任せて、火事を止める方に集中しよう。

 

「……見つけた!」

 

5114ページ 黒のみ 思考共有

 

ライトとすれ違った瞬間に思考共有で指示を出す。まぁ指示と言っても、俺は火事を止める方に集中するから、この先で倒れてる死体の処理は任せた...ってだけだがな。

 

「次はクミリアたちのとこ...一旦門まで戻るか!」

 

火を消しながら南の門まで走る。この道はライトが通った道だから、アンデッドを気にしなくていいのは楽だな。魔物が湧いてるのは変わらないから、面倒が全部消えたわけじゃないけど。

 

「……南側は火の勢いが弱いな。アンデッドの奴ら、北に向かって移動してんのか?」

 

人がいない村を攻撃する理由はあまりない。聖域でなくなった以上、ここに住むこともできないから、建物を壊すのは人々の家財を破壊するくらいしか意味を持たない。それでも破壊しようとしているのは、この村の住民であるためだろう。故郷を守る気持ちが反転し、故郷を破壊しようとしているのだ。

 

しかし、アンデッドはその人の性質を反転させた行動をとる一方で、普通の魔物のように人に仇なすような行動もしようとする。カリスを破壊しようとするのが前者なら、もっと効率の良い破壊をしようとするのが後者だろう。きっと北へと、王都の方へと向かおうとするはずだ。そっちを襲う方が、魔物の性質として正しい。

 

今はその両方をしようとしているため、アンデッドたちは北へと向かいながらカリスを攻撃している。北側の方が被害が大きいのはそのせいだ。となると...北側の門でアンデッドたちを迎え撃つ必要があるな。さっさと残ってる東側の消化をしてそっちに回ろう。

 

「つってもこっちは俺がアンデッドの処理しないとだからな...」

 

南の門まで辿り着き、すぐにクミリアたちが移動した方へと向かいながらつぶやく...が。

 

「……なんだこれ。アンデッドが活動停止してる...?」

 

道には、心臓が破壊されている死体が転がっていた。クミリアかレストのどっちかがやったんだろうが...俺、処理は昏倒までって言わなかったっけ?追いついたら問いただすか...

 

とりあえず熱操作で火を消しながら先へと進む。ちょくちょく道からでは速度探知が届かない位置で燃えてる場合があるが、そういう時はちょっと飛んでから水弾を火に直撃させて消火する。

 

「みーつけた...」

 

クミリアとレストを見つけた。ちょうどアンデッドに攻撃しようとしていたところだったらしく、クミリアが胸の辺りをドンと殴りつけていた。おそらく衝撃伝播によって、心臓だけを的確に破壊したのだろう。アンデッドは動かない死体へと戻る。

 

「……クミリア?なーにしてるのかな?」

 

「うわびっくりした。なにしてるって、アンデッド倒してるだけだよ?」

 

「俺、倒せって言ったっけ?」

 

「あ...あーでも、流石にアンデッドと普通の人を見分けるくらいはできるから、確証はあって、それで倒しただけで...最初はね?クミさんも昏倒だけにしようと思ったよ?でもよくよく考えたらわかるなーって思って」

 

「……雷装の感覚強化か。まぁ実際には転移はなかったわけだし結果オーライだが...レストはなんで止めなかった?」

 

「一般人の中に敵が混ざってるかもしれないってのは二度目だし、感覚でなんとなくアンデッドだってわかったから、別にいいかなって」

 

「……はぁ...しゃーねーなもう。よし二人とも、アンデッドは二人で倒して回ってくれ。俺は火事の方を止めてくる」

 

「許された!了解!」

 

「あと、大体倒し終わったと思ったら北の門あたりで待ち伏せしておいてくれ。アンデッドの奴ら、王都に向かおうとしてるから村から出ないように足止めだ」

 

「わかった」

 

「最後に、後でじっくり お は な し しような」

 

「ヒェッ...」

 

二人から離れて、近くの建物に飛び移る。結果的にアンデッドを倒す効率が上がってるから今回は良かったけど、指示したことと別のことをされると色々と計算が狂うから出来ればやめてほしい。たとえそれができたとしても、予定と変わってしまうなら考え直したほうがいいと思うんだ、うん。

 

「……これ一旦跳んでどこ燃えてるか見たほうが早く済みそうだな」

 

建物に飛び乗って視野が高くなったことで浮かんだ思いつきをすぐに試す。

 

「おおよく見える...そしてよく狙われるな」

 

まだ燃えている建物の位置はあらかた把握できたが、空中にいる俺に気づいたアンデッドたちはすぐさま魔法を飛ばして攻撃してくる。

 

「めんど...っ、ここで来るか...!」

 

落下速度の操作で魔法を避け切りながら着地したちょうどそのタイミングで、ドッと疲れが押し寄せてきた。楔による能力強化が解除されたためだ。今日の夜のうちだけで二回も楔を打ったのもあって、それなりの反動が返ってきた。

 

「ああもう頭痛いし...!これ終わったら絶対休憩挟む!眠すぎ!」

 

楔の解除により、加速最大値は落ちて適用範囲が広がり、脳の処理速度が限界を迎えて頭痛が起こり始める。フロートに結界で閉じ込められた後もずっと速度操作を使いながら抵抗していたのを考えると、人魔戦争が始まってから二時間弱、ずっと動き続けていたことになるし、そりゃ疲れるわ。

 

「チキショウ壁の再建終わったらニアたちにこっち来るように言っとけばよかった!」

 

指示から外れたことをするなとさっき言ったばっかだが、こればっかりは来て欲しいと手のひらクルーする。なんなら来てくれたら二人とのおはなしは無しにする。もう疲れてるからおはなしする気力もないし、もうバンバン来てほしい。

 

「雨でもなんなり降らせてくれよぉ...」

 

「めっっちゃ疲れてるわね...降らせたらさらに辛くなるんじゃないかしら大丈夫?」

 

おお、いつのまにかヘタレ錬金術師の黄○錬金でも使えるようになったのか?ステラを背負ったニアが空を飛んでるぞ。

 

「……本当に疲れた目してるわね...何をすればいいの?」

 

「えーっと...とりあえず火事をなんとかしてもらえると嬉しいかな?」

 

「じゃあ行ってくるわ。カリヤは休んでなさい」

 

そう言いながら飛んでいくニアに優しいなぁという感情を抱いていたら、その背中に乗ってるステラに手を振られたことで俺の心はキュン死しました。

 

故郷が滅んで、魔族と一対一させられて、それでもなお人の心配ができる...ステラちゃんほんと強い子!

 

……ダメだガチで疲れすぎててわけわからんこと考えてるな今。

 

そのまま地面に倒れ込みそうになるのを必死で抑えながら、こっそりと背後から近づいてきていたアンデッドの胸に手を当てて心臓を燃やし尽くす。

 

「頑張れよ俺...まだまだ戦いはこっからなんだからな...!」




終わり方わからなくなって俺たたみたいになってしまった...
そしてとうとうカリヤくんが壊れた...果たして休憩はできるんですかね?

……あと、本当に意図してないのに、カリヤくんとステラちゃんがお互いの好感度を着実に上げてるような感じになってるのはなんなんですかね?
くっつくかくっつかないのか作者自身にもわからないのやめてくれ...
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