前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8159字。

なんと今回、戦闘らしい戦闘はありません!
休憩&移動パートになります。


逃げた先は地獄

「はい、えーっと、これからどうするか三択を出すんで、誰か選んでくんせぇ」

 

「おはなし回避...?」

 

安堵しているクミリアとレストだが、ツッコむ気力もないのでひとまず無視しておこう。

 

「まず一つ目。このまま最速で魔王城まで向かい、さっさと魔王を倒して事態を収拾させる。その二、各地の村や王都とかで起きてる混乱を収めながら夜が明けるのを待つ。三、聖域が確定してる北の山に戻って休憩してから魔王城に乗り込むそれにしよう」

 

「もうダメだわ疲れすぎてカリヤが壊れた」

 

「三択って言いながら自分で決めてるじゃん」

 

「もう休め」

 

「ところでその二はどういう意味?」

 

「世界全体で聖域の位置が変わってしまったから、きっと他の村も聖域でなくなってしまい、町中に魔物が発生して混乱しているだろうから、それをどうにかしに行くって意味」

 

「急に落ち着かれると逆に怖いわね...で、どうしようかしら。私はそこまでする必要ないと思うけれど」

 

「それはどうして?」

 

「フロートが死んで、複製体が現れる心配がない以上、どんな危機や混乱が起こったとしてもその場にいる冒険者なり兵隊でなんとかできる範疇だからよ。アンデッド騒ぎも、誰かがすぐに気づいてなんとかしてくれるわ」

 

「その町の人たちでなんとかしてもらって、僕たちは魔王を倒しに行った方が結果的に早期事態解決に繋がる...か」

 

「じゃあ休憩はどうする?流石にこの状態のカリヤをそのままにするわけにはいかないよね?」

 

「それには同意よ。次元転移で一度山まで戻って、休憩を挟みましょうか」

 

「休憩するにしても、どれくらい休む?朝になるまで魔王も魔族も待ってるわけないし...」

 

「……長時間の休憩を取れない以上、カリヤの力を活用するしかないわけだけど、そもそもカリヤの体力を回復させるための休憩だから本末転倒してるしなぁ...」

 

「あーそれは大丈夫。寝てる間も加速はできるし、二、三分寝ればスッキリすると思うから俺の心配はしなくていいぞ」

 

「……もうそれしか手はないか。それでみんなもいいよね?」

 

頷くみんな。唯一ステラだけは少し渋っていたけれど、一応頷いてはくれたから満場一致だ。

 

「そうと決まればさっさと移動するわよ」

 

「あらあら、休憩を許すと思っているのですか?」

 

この場にいないはずの声が辺りに響いた。キネットの声だ。

 

「っ、声!どこ⁉︎」

 

「魔法で声を飛ばしてるだけよ!近くにはいないから探しても体力の無駄よ!」

 

「流石は世代最強の魔法使い。すぐに気付きますか」

 

「そんなことより何の用だよキネットさんよぉ...こんなことするくれぇならさっさと俺たち全員転移させりゃ済む話じゃねぇか」

 

「警告に従わなければそうなりますが...その方がよろしいですか?」

 

「んなもんお断りだ。自分のペースでそっちには行かせてもらうぜ」

 

魔族と対話や交渉をするのは俺の役割だ。頭は痛いが、気合いで踏ん張るしかない。

 

「んで、警告ってのはなんなんだ?それ言ってくれねぇとこっちも困る」

 

「今あなたたちがいる場所から北側、そこに一歩でも足を踏み入れた場合すぐに転移させます。引き返さず、真っ直ぐ山へと向かって来なさい。では」

 

響いていた声が鳴り止む。

 

「……だとさ。随分余裕そうでイラついてくるぜ」

 

そんな警告するくらいならさっさと一人ずつ転移させて各個撃破していけばそれであっちの勝ちだろうに...さっきのステラみたいに、土壇場で特殊な力に覚醒されるのを警戒しているのか?けど、それにしてもだよなぁ...

 

「だとさ、じゃないわよ。休憩できないじゃないどうするのよ」

 

「とりあえずみんな一旦少し歩こうか。なんかの拍子に北側に行っちゃって転移ーってのが一番困る」

 

それもそうだとみんなで南側に少し歩く。

 

「んで、どうするかだけど...もうしゃあないから今ここでライトが聖域展開を発動させて、その中でギリギリまで休憩するしかない。それくらいならあいつらも許してくれるだろ」

 

休憩を許さないだけなら、聖域の中に入ることを禁止してきたはずだ。北側に移動してはいけないというのは、どちらかといえば他の町を助けに行くのを封じる方が目的な気がする。休憩自体は許してくれてる...はず!

 

「ってわけで早速ライト頼む。聖域展開したらすぐにみんなを眠りにつかせて休ませるわ」

 

「えっ待ってそんな風に休まされるって聞いてな

 

ニアがひっくりして慌てていたけれど、ライトはもう聖域展開を使っていたから容赦なく眠りにつかせて黙らせた。戦闘で疲れていたためか、睡魔到来を加速させたらみんな一瞬で寝てくれた。この加速、ライトにもちゃんと効くのは驚きだ...やっぱちょくちょく抜け穴あるんだよな勇者の耐性って。

 

まぁそんなことは今はいいや。俺も寝て頭を休めないと...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし起きろーまだ夜だけど行くぞー」

 

聖域展開の効果が切れたので、みんなを覚醒させる。

 

「あーよく寝た」

 

「……身体はちゃんと熟睡した後くらい回復してるのが逆に怖い...」

 

「ねぇこれほんとに大丈夫なの?後で反動来たりしないよね⁉︎」

 

「だいじょぶだいじょぶ。俺が元気なってんだから平気だろ」

 

「さらに怖いのは、めっちゃ寝た感覚はあるのにもう目がパッチリしてることだよ。全然寝起き感ないんだけど」

 

「そこら辺カリヤが色々調節してくれたんでしょうけど、本当にカリヤは休めたの?」

 

「さっき言ったろ?完璧に元気だ」

 

「はいそれ嘘でしょ。なんとなくわかるんだからね」

 

うへぇ...ステラすご。ミレアみたいだな。

 

「……元々あった頭痛はちゃんと取れたよ。ただ、魂の疲労は流石にこの程度の休憩じゃ取れきれなかった。まぁこれは時間経過でしか治せないから、これ以上休憩の時間取れないし一旦放置するしかない。仕方ないさ」

 

「んー...しょうがないのかぁ...」

 

「こっちとしてはステラの方が心配なんだぜ?フロートと一対一したのもそうだけど、最後によくわからん魔法使ってたろ?あれ使った代償とかがないか心配で心配で...」

 

「代償とか、そんな怖いのはないみたいだよ?」

 

「みたい、って...もしかして、もうニアが解析済み?」

 

「ある程度はね。移動しながら話すわ...移動するでいいのよね?」

 

「ああ。休憩終わったんだから移動だろ?疑問に持つことあるか?」

 

「そう...よね。ええ、行きましょうか」

 

はい、これがステラの追及をうまい具合にかわして自然と移動の流れに持っていく俺の話術です。話が脱線しがちなのは俺の欠点だが、それをうまい具合にコントロールすればこうやって自分の望む方へと話を持っていくことができるのだ。短所を長所に...って、面接の時にしか考えないようなことをなんで異世界でやってんのか、そしてなんてしょうもないことに使っているのかについては目を逸らしておこう。

 

「んでんで、あの弓矢は結局なんなんだ?」

 

ひとまずニアが作った壁に向かって歩いていく。速度操作で走って...といつものようにしようとしたら全員に止められたので、普通に歩きだ。なんなら速度探知も切っている。それによる恐怖感もあってか、少し声が上ずっている気がする。

 

「魔法自体は、シレンの穴で見たあれと同じものよ。あの矢に触れたものは全て無と化すわ。ライトの必殺技に近いものがあるわね」

 

「聖素への変換と無への変換...確かに似てるっちゃ似てるな」

 

「無であるが故に目に映らないのは利点ね。それでもなんとなくそこにあるような感覚はあるし、魔力を見る目なら弓矢があると見ることはできるわ。放たれた後の矢は無理だったけど」

 

「手を離した瞬間にはもう攻撃は終わってる感じだからね。あと、無そのものを飛ばしてるんじゃなくて、心を飛ばしてる方が正しいかも」

 

「心を飛ばす?どういうこと?」

 

「呪文...みたいなのが頭の中に流れ込んできたんだけど、射るは己の心...とか、届くは無の心、世界は共鳴し、心と共に無に帰す...みたいのがあるんだよね。弓は自分の心との戦い。無心を極め、それ自体を弓矢にすることで無の心を相手に共有させて無にする...って感じだと思う」

 

「なんか、ナルミの同調魔法みたいだな。その状態を相手にも強制させることで、無を相手に叩き込む...と」

 

「その呪文を唱えれば誰でもできるの?」

 

「たしかに。適性問題はあるだろうけど、誰でも使えるならめちゃ強だな」

 

「残念だけど、呪文だけじゃ無理よ。教えてもらって試してみたけど、そもそも発動すらしなかったわ。シレンの穴の時に解析した動きを真似している状態でもね」

 

「呪文プラス動きでもダメなのか...じゃあ何がトリガーに、って心か」

 

「そうね。弓の極致にたどり着き、無の心を持つこと。これこそが一番の発動条件だと思われるわ」

 

「必要なのは精神...現状ステラにしか使えないな。そういや魔力はどうなんだ?どれくらい消費する?」

 

「それがねーほぼゼロなの。ワンナの略奪と同じで、適性が異常に高いからほとんど消費無しで使えるんだ」

 

「マジ?それで代償も無いとか強すぎないか...?」

 

というかあれだな。魔法適性の原則ってマジで正しいんだな。ステラが普通の魔法をあまり使えないのは、あの弓矢の魔法の適性がすごいからだったんだな...よくよく思い返してみると、炎弓とか空気の矢とか、弓矢に関する魔法はそれなりに使えていたから、その延長線上があの魔法だったということなのだろう。

 

もしかしたらまだわかってないだけで、弓矢関連で他の古代の魔法の適性あるんじゃね?まぁこっから魔王を倒すまでの間に見つけられる気がしないから、今その可能性を考える必要はないだろうけど...

 

「確かに強いけど、連発できないしなぁ...当たったらなんでも無にしちゃうって、誤射するかもだから怖いし」

 

「ステラなら誤射しないだろ?」

 

「そうかもしれないけれど、そもそも心を飛ばすなんてことして、本当に代償が無いのか疑わしいわ。数秒時間をおけば二発目以降も撃てるのはわかっているけれど、もしかしたら一日何発とかの制約があるかもしれないし、実は目に見えない形で代償があるかもしれない。わかってないことがまだまだ多い以上、連発は控えた方がいいわ」

 

「それもそうか...精神衰弱とか寿命を縮めるとか、悪い想像はいくらでもできちまうし、そう考えるとここぞという時にしか使わない方が良さげだな」

 

「なかなか怖いこと言うなぁ...」

 

「ステラ長生きしたい!」

 

「長生きはいいことだけど、別に今言う必要はないのよ...?カリヤも怖いこと言って脅さないの」

 

「脅してるわけじゃないけどねぇ...魂の疲労とかいう誰も経験し得ない症状を持ってる俺からしたら、普通にあり得そうな代償だなと思っただけさ。まぁ連発はしないってことに決まったところで、やっとこさ壁到着だ。ニアー上に上げてくれー」

 

「へいへい」

 

ニアが足元の地面を盛り上げることで、全員壁の上まで移動する。

 

「おー、魔物の死体が積み重なってやがる...」

 

壁の近くに、おそらく壁に仕掛けられた防衛機構が攻撃して死に至った魔物が大量に転がっていた。数百とか余裕で超えてる気がするが、それでも生きている魔物も多く残っており、後続もまだまだいるようだった。

 

「壁に蓄えた魔力とこの消費量からして、魔力自体は朝になるまで持つはずよ。魔物は無視して、迂回しながら山の麓まで行きましょ」

 

「……とは言っても、こいつをそのまま放置ってわけにはいかなさそうだ。こいつら、魔物の死体を盾兼足場にしてやがる」

 

「うわほんとだ。これこのままだとさ、あの死体の山がどんどん高くなって直接壁を飛び越したりしてきそう」

 

「なら、一定以上の高さになったら死体でも撃つようにしておくわ。それでいいわよね?」

 

「あー...それならいいか。それじゃ行こう。流石にこっからは速度操作ありだよな?」

 

「そうね。お願いするわ」

 

「オーケー行くぞ」

 

一旦壁を横に歩き、魔物のいない位置まで移動してから壁を降り、そこから南に向かって走り始める。ああ、速度探知が安心すぎる...頭は痛いけど、危険を察知できないことと天秤にかけたら頭痛の方が何倍もいいや。

 

「なーんで麓に次元転移のゲート作らなかったのかしら...」

 

「しゃーない。あそこにファストトラベルする必要あるなんて誰も思わんさ」

 

俺も作ってないしな。女神の山なんて勇者選定の時くらいしか行かないし、作ってた方がおかしいまである。

 

「……この森なんか見覚えあると思ったけど、あれだ。レストが脱出不可能になってた森だ」

 

ただいま森の中を走ってるわけだが、急にライトがそんなことを言い出した。

 

「何の話だ?」

 

「ほらあれだよ。シレンの穴でやった、合流する奴」

 

「あーそういやこの方角だったっけか...あん時は既にライトが森切り開いてたから気づかなかったわ」

 

「そんな話しててぶつかっても知らないよー」

 

「んあ?今更木に激突とかするわけないじゃないですかやだー。ってか、多分当たったら木の方がへし折れると思うぞ」

 

「それは...確かに」

 

「あの、クミリア?実際にそうなったのを見てないのに納得されるとなんかすごい複雑なんだが...?」

 

「……多分へし折れるんじゃなくて粉々になると思う...」

 

「その件はほんっとうにごめんステラ今掘り返さないでおいてくれ全部終わったらなんかしてやるから」

 

「……二人に何があったのかものすごい気になるけれど、聞かないでおくわね...」

 

ニアになにかものすごい誤解をされてる気がしないでもないけど、訂正面倒いしもうそろ山の麓に着くからそもそも時間がねぇ。

 

「っと、到着だな。登るか」

 

麓までたどり着いた。周囲に魔物はいない。今のうちに登るとしよう。

 

「一応見られてるものとして、転移には警戒な」

 

「当然よ。飛ばされるのも飛ばされてくるのも、両方ね」

 

転移に気をつけながら山を登り始める。この山は登るのにも下るのにも、整備された登山道を通るしかない。待ち伏せにも気をつけないとな。

 

「絶対魔族待ってるよなぁ...次に来るのはアクセルか、それとも赤髪姉妹か...」

 

「三人同時って事はないのか?」

 

「あり得るけれども、そうしてくるなら最初からフロートと一緒に来ればいい」

 

「そうしなかったから三人同時はない、ってちょっと決めつけが過ぎないかしら」

 

「かもしれないな。でも、俺の予想が正しけりゃ次出てくるのはアクセルだな。赤髪姉妹は魔王城の中で襲ってきそう」

 

「その理由は?」

 

「フロートが言ってたろ?殺していいのは、俺とライトとステラだけ。それ以外は魔王城の中でって。アクセルは俺と一対一を望んでくるだろうから、別に魔王城の中じゃなくたって構わない。赤髪姉妹は、魔王城の中にみんなを引き込んでから戦うはずだ。どうしても順序は後になる」

 

「なるほどね...納得したわ」

 

まぁ転移で強制的に魔王城の中に引き摺り込まれて、三人同時に襲ってくる可能性はあるが...アクセルと一対一なのは変わりないだろう。逆に三人で来てくれた方が、シレンの穴でやった練習と同じになるから経験が活かせる分助かるかも。

 

ってか、ほんとなんで四天王方式で襲ってくんだ?四人同時でよかったじゃん。そっちの方がいいって魔族たちが気付いてないわけないし、何かそうするわけがあるんだろうか...

 

「というか、本当に女神の山乗っ取られたんだね...魔素ばっかだ」

 

「山の中も汚染されてるな。その影響か?魔素の濃度がやべぇ。巨大化魔物倒した直後くらいの濃度だな...気持ち悪くなってくる」

 

「魔素が人体に悪影響を及ぼすほどの濃度って...よっぽどね」

 

「これが魔王本来の力、その影響ってわけだな。そう思うと、魔王の山じゃ魔素少なすぎだったな。そこで気づけたか...?」

 

「今そんなこと考えても無駄よ。集中しなさい。この先、何があるかわかってるわよね?」

 

「もちろんだ」

 

もう少し歩くと、山の中に入ることになる。そこには、山の中に二つある大空洞の一つがある。その壁には、万が一魔物がこの山まで攻め入ってきた時のために設置された、魔法の砲台のようなものもあるのだ。

 

魔王にこの山が乗っ取られている以上、そういった防衛装置も乗っ取られていると見ていい。捕捉されれば、即座に魔法が放たれるはずだ。

 

「いざとなればすぐ逃げれるわけだし、俺が様子を見てくる。みんなは一旦そこで待っててくれ」

 

異論は無しということで、みんなを残して俺だけ先に進む。この穴に入れば大空洞に...

 

「っ...キチィな」

 

ちらと覗いただけで見えたその惨状を、一度見なかったことにしてからもっと奥に踏み込む。魔法砲台が生きているのかだけ確認してから戻るとしよう。

 

「……生きてるか。速度は遅いが物量がヤベェな。対処するなら...カウンターで一発か」

 

確認できたので、走ってみんなのところまで戻る。

 

「音聞こえたか?砲台は普通に生きてたし、普通に襲ってきたぜ」

 

「普通は襲わないのよ...まだ何か言いたげな様子ね」

 

「……なぁ、カリスまで避難民を移動させる時に護衛してたのって誰だっけ?」

 

「王都からカリスまではクミさんとレストでやったよ?それがどうかしたの?」

 

「カリスからこの山まで避難する...って話は聞いたか?」

 

「そんなの聞いた覚えないよ」

 

「……じゃああの死体はなんなんだ?」

 

「死体⁉︎あの中で人が死んでたっての⁉︎」

 

「ああ。数十人程度はいたかな...多分あの砲台で撃ち抜かれて死んじまったんだろうけど、そもそも何でここにいたんだって話になる」

 

前にここに来た時、ここに避難するのかな...と予想していたがそんな話は一切聞かなかった。だから無いと思っていたのだが...一部の人だけ避難してきていたのか?

 

「転移で引っ張ってきた...にしては回りくどいわよね。カリスでやったように、空から落とせばいいだけなわけだし」

 

「空を飛べる冒険者をこっちに飛ばしてたとか?」

 

「いや、冒険者って身なりじゃなかった。武器も何も持ってなかったからな。どっちかといえば貴族っぽい感じだったな。血で汚れてたが、服装が豪華だった」

 

「……自主的にこっちまで避難してたのかも。自分の馬車を持ってる人たちが、カリスでもまだまだ危険だと思い、より安全なここまで移動してきた。転移の魔族がいるっていうのは誰でも知ってることだから、魔王城から遠いカリスでも危険だって思うはず。もっと安全なところに行きたいって考える人もいるはずだよ」

 

「なるほどな...そいつらには悪いが、不幸だったと言うしかないな」

 

安全なところで高みの見物をしていたらいつのまにか撃ち抜かれたわけだ。自分だけ助かろうとした自業自得...とは言い切れないな。助かるために全力を尽くすのは悪いことじゃない。まぁ、カリスにそのままいた方が、ギリまだ助かる見込みがあったわけだけど...

 

「……先に進むか。レストのカウンターがあれば砲台は全て破壊できるはずだ。用意してくれ」

 

「了解」

 

レストを先頭にして大空洞に入る。

 

「これでまとめて...!」

 

……はい。カウンターによって、あっさりと砲台全ての破壊に成功できました。これが強いんだよなレストは...もしルードがこの盾を手にしていたら、どんな能力になってたんだろう。もはや有り得ない世界線とはいえ、少し気になるな。

 

「何ぼーっとしてんのよ。もう一回あるんだから、さっさと行くわよ」

 

「あ、ああ」

 

血と油が散乱している大空洞の中を進み、一度屋外に出る。そこからもう少し歩けば、すぐにもう一つの大空洞にたどり着く...位置関係的に絶対場所被ってるだろと言いたくなるけど、どうせ空間を捻じ曲げているだけなんだろうな。考えるだけ無駄か。

 

「よし、カリヤ行ってきなさい」

 

「りょーかい」

 

ここにも死体が転がってんのかなーと思いながら大空洞に入る...が。

 

「……みんな、入ってきて問題ない。砲台は全部壊れてるみたいだ」

 

「壊れてる?一体どうして...」

 

「こいつが先に壊してくれたんだろうな、うん」

 

「こいつ...って、ああ...」

 

みんなが見た瞬間に納得できる奴なんて、一人しかいない。

 

「あの砲台の乗っ取りは不完全でね。人にも魔物にも無差別に攻撃するもんだから、面倒だし先に壊しておいたよ」

 

「そいつはご苦労なこって...」

 

そこにいたのは、皆さんのご想像の通り、アクセルだ。

 

「さぁ、戦おうか。カリヤ」




次回からはアクセル戦です。
カリヤVSアクセルの因縁の戦い...決着は何話後になるのやら...
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