前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8631字。

アクセル戦二話目です。


慣れは力なり

「なんで弾けるんだほんと...!」

 

アクセルに弾かれるたびに、触手を形成している水が吹き飛ばされて減ってしまう。すぐに魔力で水を作って元の大きさまで戻せるけど、そうなるまでの僅かな時間でアクセルに接近を許してしまう。

 

今は近づかれたら防御用の二本で耐久して、六本の触手が再生したらすぐに攻撃に使い、アクセルが気を取られているうちにフリーの一本で地面を叩いて粉塵を巻き上げながら走って距離を取ることで、なんとか一進一退の状況に持ち込めている。

 

けれど、この停滞した状況をダラダラと続けるわけにはいかない。魔力の消費が激しすぎるのだ。

 

まず、水の再形成に魔力を使う。さらに、水が吹き飛ばされる時に、その部分の形を保つのに使っていた魔力や雷装も消えてしまうため、その分の魔力も無駄になってしまう。触手の破壊をされればされるだけ、これらの要因で魔力が削られてしまうのだ。

 

「くそ...動くんじゃアレも出来ねぇし...!」

 

シレンの穴でやった、速度操作で周囲の温度を限界まで下げるあの技は、決まればほぼ必殺だ。体温を自力で上げられるアクセルでも、あれを喰らえば肺から凍りついて身動きが取れなくなるだろう。

 

だがあの技は、自らがその場を動かないことで成立していた。移動を抑え周囲の空気に干渉し続けることで、極低温を実現していた。けれど今はアクセルの攻撃から逃れるために移動をし続けてしまっている。これでは温度低下を効果が出る程度まで下げることもままならない。

 

別の技を使えば少なくともこの状況を打開することはできるけど、なぜ触手を弾けるのか、その謎を解けてからでないと怖い。解明して、他の魔法に影響がないことを確認してからでないと、不安材料として残り続けてしまう。

 

「ここは一旦...!」

 

攻撃を止め、防御に全ての触手を回す。一度見ることに集中しよう。

 

「防戦一方かい?このままじわじわと殺してあげようか?」

 

「そんなのお断りだな」

 

アクセルの攻撃を触手を使って捌いていく。やはり水ごと弾かれてしまうけれど、九本もあれば流石に防御し切ることはできるな。それでも移動しながらになるから、温度低下は使えないけど...

 

「無駄だって早く理解したほうがいい。先にカリヤの魔力が尽きるだろうね」

 

「たしかに無駄だが、謎を残したまんまじゃ後に響くんでな。きっちり解明...させてもらったぜ」

 

俺は気づいた。弾き飛ばされた水が、そのまま弧を描いて地面に落ちていることに。これは至って普通のことのように思えるが、これが異常だった。なぜならば、あの水には雷装魔力がこもっているはずだからだ。

 

触手が電気分解されずにいるのは、俺が逐一雷装魔力を操作して表面のみに流しているから。しかし、弾け飛んだ水はこうはいかない。俺の操作から外れた雷装魔力は拡散して水全体に行き渡る。そのため電気分解が起こり始め、ほんの僅かではあるが水の体積は小さくなるはずだ。

 

そうなるはずなのに、水は何の変化もなく落ちていく。つまり、あの水に雷装魔力はこもっていないということになる。となると、考えられる可能性はおそらく一つのみ。

 

触手が弾かれる直前に、雷装魔力が何らかの方法で排除されている。それしかない。

 

アクセルの雷装は、出力だけで見れば俺のものよりも強い。俺が流している雷装と逆向きに流して無効化したりだとか、雷装に干渉して電流の向きを変えたり散らしたりだとか、そういったこともできるかもしれない。

 

雷装魔力を排除することで硬度を元の触手レベルまで戻し、そのまま水を蹴り飛ばす...筋は通ってるし、見てわかる情報と違いはない。この推理で正しいだろう。

 

「よかったよ。雷装の応用だったら脅威はないな」

 

ただの雷装なら、魔法でなんとかしてましたってのよりも脅威度は低い。魔法の軌道を逸らすだとか硬度を無視して攻撃できるだとかいった、他の魔法の対処にも使えるようなものであったなら今後も厄介になるだろう。しかし、この技にしか使えない対処法なら、その技を使わなければいいだけ。問題無しだ。

 

「改良もこれだけでいい...いや、劣化と言った方がいいかな?」

 

俺は雷装と魔力のリンクを解除し、触手に雷装を流し込むのを止める。ただ魔力で触手を覆い剣の形にしただけの状態になったわけだ。

 

そしてすぐさま攻撃に移る。三本は近くに待機させておきながら、六本をアクセルに差し向ける。

 

アクセルは雷装を使い、触手を弾こうとするが...

 

「……弾けない⁉︎」

 

「ようは雷装に干渉されなければいいだけ!デチューンするだけでいい!」

 

元々雷装を混ぜていたのは、火力を増すためだった。触手を操作するには雷装が必要不可欠というわけでもない。雷装を使えるアクセルには雷装の追加ダメージが期待できないため、雷装が邪魔をしているんだったらさっさと解除するに限る。

 

「ほらほら今度はそっちが防戦一方だぜ?さっきまでの威勢はどうした!」

 

アクセルに向かって触手を叩きつけながら煽る。もう剣の形にするのもやめた。なら魔力流してる意味はなんだって気もするが、流石に魔力で覆っておかないとアクセルが動いた時に起こるソニックウェーブのせいで吹き飛ばされてしまうからしょうがない。

 

……やっと止まれるようになったから温度低下をやろうとしてみたけど、アクセルが動き回るせいで空気が撹拌されるからできねぇわ。シレンの穴の時はできたんだが...あの時よりも速いから上手くいかないみたいだ。

 

「早く突破して見せろ!お前は!アクセルはこんなもんじゃないはずだろ!」

 

「もちろんだ。こちらも出し惜しみはしない!」

 

っ⁉︎急に雷装の強度が上がっ...登ってくる⁉︎

 

「っぶね!」

 

触手を一本切り離し、消滅させる。危なかった。アクセルの雷装が急に強くなったかと思えば、叩きつけられた触手の一本にしがみついて一気に電流を流し込んでくるなんて...俺のところまで届く前に切り離せたからよかったけど...あれ、喰らったら雷装発動中でも否応なしにダメージをもらってしまいそうだ。

 

「身体強化どんだけ汎用性あんだよほんと...!」

 

急に雷装が強化されたのはおそらく、身体強化によって生体電気が何らかしらの変化を起こしたからなのだろう。雷装は生体電気の増幅によって雷の直撃を受けた瞬間を再現する。元となる生体電気がそもそも増幅されていれば、それをさらに増幅する雷装の威力が上がるのもまぁ納得できるだろう。身体強化でそんなことできるのかは疑問だが。

 

こうなったら身体強化で何ができるのかも調べたほうがよさそうだ。急に新要素を出されても困る。今ある情報を整理して、今後出してきそうな技も考えておかなければ。

 

と、その前に触手の攻撃はもう終わりにしておこう。何度もああやって雷装を流し込まれては触手を消すのを繰り返していたら、魔力が尽きるのも早くなってしまう。最低でも略奪一回分プラスαの魔力を残しておかないといけないのだから、無駄な消費は避けなければならない。

 

「しばらくはこれで...!」

 

アクセルから距離をとりながら、次元収納から魔法を取り出して射出する。これなら魔道具起動による僅かな消費しか起こさない。妨害して攻撃されないことに注意しながらアクセルの力を解析しよう。

 

「全部無駄だよ!」

 

アクセルは俺が放った魔法を全て最低限の動きだけで回避しながら距離を詰めてくる。魔法の軌道を一目見ただけで全て読み切り、着弾地点を解析して的確に避けているみたいだ。

 

次元収納から取り出した魔法は、入れる前のベクトルを維持している。後から軌道が変わることがないため、速度や方向はもちろん、回転による曲線的な攻撃でも、少しの間飛び方を見ているだけで読めてしまう。

 

だから、アクセルに当てられるとは思っていない。出来るだけ多く取り出し、最短距離で詰められることがないように移動方向を制限する。これが最適解だ。現に、アクセルは俺よりも二倍弱速いというのに、まだ俺に追いつけていない。考える時間ができた。

 

アクセルが見せた力...ひとまず判明しているのは五つくらいか?

 

一つは高速移動。周囲の魔素の量で速度の程度には差があるけれど、音速にまで達するほどの高速移動が可能だ。

 

二つ目は肉体硬度強化。音速に耐える身体というのもそうだが、たまに刃が通りにくくなる時がある。拳を打ち当てた時にも、人の身体を殴っているような感触じゃないことがあった。けれど、魔力の刃で攻撃した時は普通にダメージがあったから、効きやすい攻撃があるか、もしくは常に硬度強化をしているわけではないかのどちらかだろう。

 

三つ目は感覚強化。雷装を発動している時のクミリアのように、感覚が強化されている。魔法の軌道を読んでいるのもそれだろう。俺が未来跳躍で背後に飛んだ直後に攻撃できたのも、感覚強化で気配でも読んだのだろう。俺はいろんな魔法を使うことで、目でも耳でも温度からでも自身を探知されないようにすることができるけれど、おそらくそれをしても見破られるだろうな。

 

四つ目は体温上昇。おそらく代謝の促進によって熱を生み出しているのだろう。氷装を無効化できるほどの熱量...それに耐えられるのも肉体強化の力なのだろう。

 

五つ目は雷装の強化。生体電気、身体を動かす電気信号の増幅だ。雷装がなければ意味のない動作...だと思いたいけど、もしかしたら発想がなかっただけで、雷装無しに電気を操ることができたのかもしれない。けれど、おそらく雷装と同じくらいスタミナを消費するものだろう。負荷が大きいから連発はしない...はず。

 

ひとまずわかっているのはこの五つ。どれも身体強化で説明できそうではある。できそうってだけで、なんかいまいちピンと来ないところもあるが...とりあえず、肉体強化ってのは間違っていないと見ていいだろう。

 

他に肉体強化でできそうなことというと...本来ならセーブされてる脳の機能を全開放して超能力じみた力を発揮する...とかか?そもそも魔族の脳がどんな仕組みで全体の何%しか使えてないのか知らないから、それができるのか、できたとしてどんな力が使えるのかはわからないな。ただ、クミリアみたいな未来予知に近い第六感くらいはできそうだ。

 

「……ってどんどん近づいてきてやがる⁉︎」

 

いつのまにか少しずつ距離を詰められている。この弾幕にさらに適応して、弾けそうな魔法は弾くことでさらに最低限の回避を極めている...のか?

 

肉体強化...この世界の人間や魔族の持つ、慣れの力。その力を強化しているのか?それならあの適応力も納得...そういや最初にアクセルと戦った時、俺は未来跳躍で回避していたわけだが、しばらくしたら「だいぶ慣れた。もう逃さない」と言いながら転移先を読んで攻撃をしてくるようになってたな。慣れの力の強化は確定かもしれない。

 

……ついでに思い出した。あの時の戦いでは背後からの攻撃に気付けなかったり、高速移動中は周囲への警戒が薄れるとかいう弱点があった。けれど今はそれがない。慣れによって克服したか、それとも単純に俺と戦いたいがために鍛えてきたか。どちらにせよ、たとえ弱点を見つけたとしてもすぐに適応して克服してくるだろう。

 

「どこのま○ーらだよ...!」

 

よし、ひとまず解析はここまでだ。アクセルを倒すには、手を替え品を替え、初見の攻撃をひたすら繰り出し、わからん殺しをする。これしかない。

 

「おっ、もうやめにするのかい?」

 

これ以上は意味がなくもったいないので、魔法の射出を止める。

 

「もうこれにも飽きたろ?別のを使おうと思ってな」

 

ホルスターから魔力銃を一丁抜き、右手に持つ。左手にはダガーだ。

 

「その武器じゃ私に傷ひとつつけられない。前にやったから覚えてるだろう?」

 

「こいつは攻撃用じゃねぇよ。移動用だ。まぁその前に攻撃にも使うがな...なぁアクセル。よくもまぁ触手を分解してくれやがったな。おかげで火種はバッチリだぜ」

 

4014ページ 黒のみ 障壁

 

二つの出入り口を塞ぐ。アクセルが水の触手を電気分解してくれたおかげで、この大空洞の中は起爆剤がばら撒かれたも同然だ。アクセルの高速移動で多少空気が攪拌されているけれども、それでも外との空気のやりとりはあまり行われていないはず。火をつければ丸ごとドカンだ。

 

7801ページ 黒 赤 未来跳躍

 

「じゃあなアクセル。吹っ飛べ」

 

魔力銃の引き金を引いた瞬間、銃口から炎が飛び出したその瞬間に、三秒前に発動していた未来跳躍が発動した。転移位置はこの場所。動く必要はない。あくまで、爆発に巻き込まれないための跳躍だからだ。

 

「……は?アクセルはどこに...」

 

三秒が経ち、元の場所に戻ってきた。周囲の空気の感じや、地面が湿っているのをみるに、爆発が起きたのは間違いないのだろう。大空洞が崩落を起こしていないのは、ここが女神の山で、なんらかの結界のようなものが貼られているからだろうな。

 

しかし、だ。アクセルがどこを見渡してもいなかったのだ。消し飛んだ...とは考えにくい。かなりの威力があって、魔素を吹き飛ばすから魔族特効ではあるけど、完全に消し飛ばすほどの威力はないはずだ。

 

なのにどうしていないんだ?障壁を貼ったから外に逃げられたわけではないはず。地面の中...とかか?いやでも、多少窪ませることはできても人一人潜り込めるほど掘ることなんて難しいし、なんなら爆破の直前までアクセルは動いてなかったはずだ。あの状態からアクセルはどうなったんだ?ほんとに消えてしまったのか?

 

……消えた?もし、本当に消えてしまったとしたら?跡形もなく、完全に消えてしまえる魔法を、俺は知っている。それも、さっき使ったばかりの...!

 

「三秒は長すぎだ。飛ぶのは一秒で十分じゃないか」

 

「なっ...!」

 

俺の真後ろに、アクセルがどこからともなく現れた。直前まで、この世界のどこにも存在していなかった。未来跳躍だ。

 

「あと一秒。まだカリヤは飛べない!」

 

しまった。これを狙われていた。未来跳躍をもう一度発動するには、飛んだ時間と同じだけのリキャストタイムを待つ必要がある。三秒飛んだなら三秒待たなければならない。転移後からまだ二秒も経ってない。まだ飛べない。

 

「アガァッッ!!!」

 

俺が防御の構えを取る前に、背中に爪先が食い込む。骨や内臓がズレる感覚を覚え、なんなら速度探知によってダイレクトにそれを感じ取りながら、勢いよく壁まで吹き飛ばされ叩きつけられてしまう。

 

「いっづ...!アクセルお前、それ使えんのかよ...!」

 

5092ページ 黒のみ 再生

 

再生魔法と加速で傷を塞ぎながら言う。防御は取れなかったけど、魔力の物質化でなんとかダメージを減らすことはできた。それができてなかったら、身体突き破られてたんじゃないかって思う。それくらいの威力だった。

 

「前に絶対使えるようになってやると言っただろ?大変だったが、ちゃんと習得してきたぞ」

 

「そいつぁ...なかなかに絶望的だな」

 

おそらくだが、アクセルは二度跳躍したのだ。俺が三秒の跳躍をしたと同時に、一回目の一秒の跳躍。爆発から逃れるにはそれだけで十分だっただろう。そして一秒後、リキャストタイムが過ぎてすぐにもう一度発動させ、一秒後に二度目の跳躍をした。俺が戻ってくるのとほぼ同時にだ。

 

三秒を超える跳躍ができないため、このようにして二度飛んだのはほぼ確実だろう。カスタムしてデフォルトの一秒から変えていたらこの推理は間違いになってしまうけど、おそらくカスタムはしてないはず。今までほとんど魔法を使ってこなかったアクセルが、カスタムまで習得しているとは思えないからだ。

 

そしておそらく、未来跳躍を連発することもないだろう。多分使えるようになってから日が浅いのを考えると、魔法の適性はそこまで高くないはず。魔力消費を抑えるためにも、そう何度も使うことはないはずだ。避けれる攻撃は普通に走って避けるし、必要がなければ攻撃にも使わない。そうだと仮定して、こっからの動きを組み立てよう。

 

「けど、関係ないね!」

 

1799ページ左上 黒のみ 路面凍結

 

一瞬地面に手を触れ、辺り一帯の地面を凍結させる。そして魔力銃のモードを変えながら引き金を引き、壁にワイヤーを突き刺す。

 

「どこに飛ばれようとも、それに合わせて飛べばいいだけ!飛んだら詰みだぜ!」

 

アクセルがするのは一秒の跳躍とわかっているなら、それに合わせてこっちも跳躍すれば良い。こっちは0.1秒の跳躍でアクセルの攻撃を躱し、再跳躍できるようになるまでの隙を狙って攻撃すればいいのだ。ゆえに、アクセルは安易に未来跳躍を使うことができない。

 

それをわざと声に出して言うことでアクセルにもわからせ、行動を抑制する。未来跳躍無しで戦うように仕向け、氷とワイヤーを活用した高速移動で翻弄し攻撃する。このワイヤー機動はニアにはやったけど、アクセルには見せてない初見の動きだ。慣れられる前に出来るだけダメージを蓄積させたいところだけど...!

 

「なにこれ。引っ張れって言ってるようなもんだよな!」

 

「なっ...って当たり前か!」

 

ワイヤーにはもちろん俺の雷装が流れ込んでいる。だから掴んでくる奴なんていない...そう思ってしまっていた。そりゃ当然だ。雷装を使えるアクセルは普通に触れる。俺が妙な動きをする前に、そして思い通りの動きをされる前に潰すのは当たり前だ。

 

ワイヤーを引っ張られ、氷の上を引き摺られる。ワイヤーを巻き取りたいけれど...アクセルの手でガッチリと掴まれていてこれ以上巻き取れない。このままだと衝突する。それを避けるには...!

 

「『製作』!」

 

魔力銃が一度分解され、再形成される。それに伴って魔法で作られたワイヤーは消滅し、ギリギリのところでアクセルとの衝突を回避して真横を通り過ぎることに成功する。

 

「その場で色々作れるってのも、結構便利そうだね。カリヤに勝ったら、今度はそれを覚えようか」

 

「取らぬ狸の皮算用って奴だぜ。まだ勝ってないのに先のことを考えるのは負けパターンなの知らないのか?」

 

「それはカリヤもじゃないか。何をするにも温存。次の戦いを見越している。最初に足を使ったのはなんだったんだ?全力を出し切れよ」

 

「お前が魔王だったらそうしていたさ。まだまだ先があるんじゃ、温存するのも当然だろ?そんなに百%本気の俺と戦いたいなら、お前を倒せばそれで終わりって状況にでもするんだな」

 

「私に魔王様を倒せってこと?この期に及んでまだ面白いこと言えるのすごいな」

 

「今でも俺は、アクセルに裏切ってでもこっち側について欲しいって思ってるからな。いつでも交渉に繋げていくぜ?」

 

「答えは何度言っても変わらないぞ」

 

「だろうな...セッティング完了だ。もっかい爆ぜろ」

 

魔力銃の引き金を引くと、銃口から起爆の元となる混合気体が飛び出す。そしてもう一度引き金を引くと、小さな炎が飛び出してアクセルの元まで届き...爆発する。アクセルの足元の氷がアクセル自身の雷装によって電気分解されているため、その分魔力銃で出せる規模の大きさを超えている。けれども、さっきの爆発よりかは規模は小さい。離れている俺は跳躍の必要がないくらいの規模だ。

 

アクセルは未来跳躍によって回避していることだろう。現れるのは一秒後。どこに現れるかは不明...普通はな。

 

未来跳躍は転移先に液体や固体があった場合、そもそも発動しないという事象を起こす。よって、飛べた時点で転移先に何も物がないということを意味している。

 

となると、だ。アクセルが未来跳躍を発動したタイミングで、俺がある一点を除いたすべて場所に攻撃しようと思考して、実際にその行動を取れば、アクセルをその一点に転移するように誘導することができる。

 

そのために一番手っ取り早い攻撃は...これだ。

 

『色彩剣装 無彩・黒』

 

ある一点を除いた全ての場所に、ダガーでの未来からの斬撃を放つ。のちの辻褄合わせは今は考えない。この一度の攻撃を当てることに集中するんだ。

 

もうそろそろ一秒後。アクセルは確実に俺の前方四メートルの位置に現れる。その瞬間に、こいつを当てればいい。

 

そう考えながら、俺は魔力銃をしまい、次元収納の中からそれを取り出してアクセルが現れる位置に向ける。

 

さぁ、一秒後だ。

 

アクセルが現れ、俺が待ち構えているのを認識し、すぐに逃げようとする。だがしかし、未来からの斬撃が邪魔をして思うように動けない。動くスペースがあるのは、俺とアクセルとの間四メートルのみ。回避から攻撃へと意識を切り替え、走り出そうとする。

 

その瞬間に、俺は引き金を引いた。

 

「なっ...⁉︎」

 

アクセルの右肩に、直径六ミリほどの穴が空いた。へこみではなく、穴。完璧に貫通した。

 

「ぐっ...なんだその武器は...!」

 

右肩を押さえながら、アクセルは俺に聞いてきた。フロートなら「聞いたら答えが返ってくると思ってんのか」と言い放っただろうが、アクセルだからちゃんと答えることにした。どうせ答えても、そのせいで負けるなんてことにはならないだろうしな。

 

「なにって、銃さ。まぁ、エアソフトガンだけどな」

 

もう一度引き金を引く...が、今度は避けられたか。まぁいい。今のは威嚇射撃。当たると思ってない。アクセルが避けようと思えば避けられるのか、それの確認だ。

 

「喜べアクセル。初公開だ。よーく味わって蜂の巣になりな!」

 

この世界には存在しないはずのエアガンを構える。こっからは俺のターンだ。




エアガン登場...一話目のミリタリー方面にも多少の心得があるという描写はこの時のために...あの時はモデルガンの収集って言ってたけど、魔力銃をリヒトから貰った時にエアガンも集めてた宣言をさせたから矛盾はないはず...

なんでエアガンを持っているのかについては次回説明入りますんで、そんな威力出ないだろというツッコミも次回説明入るまで飲み込んでおいてください...
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