前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
前回の次の日です。
サブタイめっちゃ悩んで適当になりました。
「痛え...」
身体中が痛い。全身の筋肉が引き攣っているのがわかる。三時くらいに起きてからかれこれ三時間。ベッドの上から全く動けなかったころと比べるとだいぶマシになったが、それでもベッドから降りるのはまだ無理そうだ。
「アイシングしないと...」
『水弾』
水弾を使い、空中に水の球を浮遊させる。
『氷装・矢』
痺れる体でなんとか近くに置いてあった矢筒から矢を取り出し、氷装を発動する。そうしてできた氷の矢を水の球に突き刺し、氷漬けにする。
「いっっっつ!!」
浮遊していた水の球が凍りつき、質量をもった。持っていた矢の先端に突然重量が増えたせいで、支えていた腕に急に負荷がかかり痛みが走る。
「いつつ...とりあえずこいつを砕いて、と」
氷の塊を持ち上げ、ダガーの持ち手を叩きつけて砕く。
「ビニール袋...なんてないし、何か袋として使えるのは...これでいいか」
財布代わりに使っている袋を鞄から取り出す。袋の中に入っているお金をバサーっと床にぶちまけ、代わりに砕いた氷を入れる。
「水も入れないとな。『水弾』」
氷を入れた袋に、さらに水を入れる。即席の氷嚢の完成だ。
「あ〜冷たい」
「カリヤーだいじょーぶー?」
氷嚢で筋肉を冷やしていると、部屋の外からチュチュの声が聞こえた。
「ダメーしばらくは動けなーい」
「扉開けてくれなーい?看病するよー」
「動けないんだって。扉まで歩いて行くことすら出来んのだ。看病はしなくていいから自分のやることやっといていいぞー。今日は冒険行かずに王都を回る予定だからさ」
「そう?じゃあ頑張ってねー」
扉の前から離れる足音が微かに聞こえた。
「とりあえず冷やさないと...」
氷嚢を体のいたるところに当てていく。氷嚢を当てるのは数秒だ。数秒当てればある程度冷えるし、能力を使えば長い間その温度を維持することができる。こんな形で能力を使うことになるとは思わなかったが、使えるものは全て使わないとな。
「だいぶ熱が引いてきたな...熱が引いたら逆に温める方がいいんだっけ?」
能力の使用を止め、温度をもとに戻す。
「どうやってあっためようかな...乾布摩擦でもするか?」
さっきと同じようにやれば温度を高く保つことはできるから、それでもいい。けど、それよりも良い方法を思いついた。
「確か電気治療ってあったよな...?どんなのかあんまり知らないけど、とりあえずやってみるか。当たって砕けろってね。『雷装』」
雷装を発動し、体に電流を流す。
「おっ、おっ、おぉ...?痛みが和らいだな。それに、体が動くぞ?」
体を流れる電流が痛みの信号を遮断しているのか、それとも負荷を無視して直接筋肉を電流で動かしているから動けるのか。よくわからないけど、好都合だ。
「魔力とスタミナが切れないうちに風呂に行こう。風呂で体をあっためないとな」
服を用意し、鍵を開けて部屋の外に出る。
「うぉっ、カリヤ出てきた」
斜向かいに位置する部屋から出てきたチュチュとばったり会う。
「もう動けるようになったの?早いねー」
「雷装を使ってるだけだよ。無理矢理動いてるだけ。完治したわけじゃないから、とりあえず風呂に行ってくる」
「なんで風呂に...?」
「そりゃ、体をあっためるためさ」
「動けるんだったら医者のところに行こうよ。そっちの方が手っ取り早いよ?」
筋肉痛も魔法で治せるのか...?いや、普通に治せそうだな。
「一番近い医者のところはどこ?二、三分で行けるところにない?」
「二、三分じゃ無理だねー。ここからだと十分くらいはかかるよ?」
「マジか...休み休み行くしかないか」
「ちょっと座ってて。キースとギブド呼んでくるから」
「ああ、ありがと...」
その場に座り込んで壁に寄りかかってから雷装を解除する。持っていた服は自分の部屋の中に放り投げておいた。
「いてて...やっぱ解除すると痛いな」
「おーい、大丈夫かカリヤ」
「…辛そう」
キースとギブドがやってくる。
「大丈夫に見えるのかい?この通り、雷装を使わなきゃ一歩も動けんさ」
「そりゃ大変だ。ほれ、肩貸すぞ」
「サンキュー」
キースとギブドに肩を貸してもらう。痛い...けど、これなら動けないほどではない。一応歩けそうだ。
「肩貸すだけじゃなくて、背負ってくれたりしてくれた方が楽なんだけどなぁ...」
「んな無茶な。頑張って歩け」
「へーい...あっ、加速するわ。チュチュも近くに来てよほら」
能力を使い、みんなの歩く速度を加速させる。あまりにも速くしすぎると痛いので、ほんの僅かの加速に留めてはあるが。
「それにしても筋肉痛か...そういえばそんなのあったな、って感じだ」
「えっ、筋肉痛ならないのお前ら?」
「そりゃ駆け出しの頃は何度もなったさ。でもいつのまにかならなくなったな」
「慣れってすごいな...」
「お前もいつかは慣れるさ」
「ほら、着いたよ」
辿り着いたのは、小さな建物の前だった。ここが病院なのだろうか?王都なんだからもう少し規模がでかいと思っていたのだが、予想が外れた。トリさんのところと同じぐらいじゃないか?
「すみませーん!回復魔法お願いしたいんですけどー!」
「はいはい。開いてますからどうぞ入ってください」
扉の奥からしわがれた声が聞こえる。中に入ると、白衣を着た老人が座っていた。町医者感がすごい。
「今日はどういった用件で?どこを治しましょうか」
「全身が筋肉痛で動けないくらい痛いらしいんですよ」
チュチュが代わりに答える。
「はっはっは。筋肉痛ですかそうですか。最初は誰もが通る道ですよ。では、ここに寝っ転がってください」
キースたちの補佐を受けながら、なんとかベッドに横になる。
「いきますよ」
医者がベッドに手を当てる。すると、緑色の光がベッドに流れ込む。光はベッドを通じて俺の体にも流れ込み、癒していく。暖かいもの...布団に包まれているような気分だ。
「一分ほどそのまま横になっていてください。それで施術は完了です」
魔力を十分流したのか、医者がベッドから手を離しながらそう言う。
「相変わらずいい腕してるよね、カールさん」
「全身同時治療ならワシが一番さ」
「でも一部分だけを治せって言われるとすぐ無理って言うよね」
「無理なものは無理と言わないとダメだろう。他を当たった方が患者のためだ」
チュチュと医者の会話が聞こえてくる。回復魔法にも得意不得意があるんだなぁ。
「あっ、もう起きても大丈夫ですよ」
「おぉ...痛みがまったくない」
筋肉痛も回復魔法で治せるんだな...あそっか。傷ついた筋繊維が修復されるときに起こる炎症が筋肉痛の原因だから、筋繊維を治してしまえば筋肉痛も治るのか。
「ありがとうございます。えっと、いくらですか?」
「財布を出してくれるかい?」
「財布財布...あっ」
「どしたの?」
「部屋に置いてきたまんまだ」
氷嚢を作るために中身をぶちまけて、そのままだ。一銭も持ってきていない。
「しょうがないなぁ...後で返してよねー」
チュチュが財布を取り出す。
「この御恩、一生忘れませんチュチュ様ー!」
「はっはっはっ、恩に着るがいいー。料金はいつものでいいんだよね?」
「ああ」
「じゃあこれ」
チュチュが財布から一枚の硬貨を取り出す。
「えっ、そんな額でいいのか?」
明らかに少ない。もちろん硬貨の中でも価値は高い方ではあるが、それでも一枚は少なすぎる。トリさんならもう数倍は取ってたぞ。
「いいんだ。そんなに金があっても使い道がないしな。もういつポックリいっちまうかわからないし、明日の衣食住と少しの娯楽に使える額だけあれば十分なのさ」
明日生きる分だけあればいいってどこのO○Oだよ。
「治したけど、一応今日は様子を見ておくといい。今日一日は運動禁止だ、いいね?」
「ええ。元々今日は王都を回る予定でしたから、問題ないです」
「よかった。また来ることはない方が嬉しいけど、もし同じようなことが起きたらここにおいでね。いつでも治してあげるよ」
その言葉を聞いて、診療所を出る。確かに、医者に何度も掛からないといけない事態は避けたいな。
「…なぁチュチュ、気になったんだけどさ」
荷物を取るために宿に戻る道すがら、思ったことをチュチュに話す。
「なにー?」
「あんだけしか受け取ってないのによくあの店潰れないな。王都だと売れない店はすぐに潰れちまうんだろ?」
「あそこには結構人が来るからね。一人の単価が少なくても店がもつんだよ」
「あんだけ安いとダンピングって言われそうだけど...公取とかないの?他の医者の仕事奪ってたりしない?」
「そこらへんは大丈夫だよ?カールさんはさっきやったみたいに、全身を同時に治療したり癒したりするのが専門なの。腕折っちゃったりとか、目をやっちゃったとかした時はそれぞれ得意な医者のところに行く。そう言う感じの棲み分けをしてるから価格を下げても問題ないんだー」
「なるほど、それぞれの得意分野でやってるからいいのか...それはそれで独占状態だから公取のお世話になりそうだけど」
「さっきから言ってる、その、こうとり...ってなに?なんかの鳥かなんか?」
「この世界にないならいいや。忘れてくれ」
「なんかまるで別の世界があるかのような言い方だね」
「さぁ、あるかもな」
少なくとも俺の世界とこの世界の二つはある。神様が言うにはほぼ無限に近い数があるらしいけど。
「よし、とうちゃーく!」
宿の前に着く。
「じゃあ荷物取ってくるわ。というかお前ら依頼受けに行かないのか?俺のことなんか構わずに行ってこいよ」
「そのつもり」
「今日はここでお別れだ。じゃあな、無理すんなよ」
「しねーよ」
宿の自分の部屋に戻る。まずはばら撒いたお金を拾わないとな...
「袋は...あそこか。水捨てないとダメだな。ビッチョビチョだ」
洗面所に行き、袋の中の水を流す。
「乾燥させて、と」
『微風』
袋に風を当てる。能力も併用して温風にすることで、乾燥を早める。
「うわ、めっちゃ散らばってる...なんで俺こんなふうにぶちまけちゃったんだろ」
床に見えている分だと、元々入っていた量には足りない。
「いったいどこに転がっていったのやら...」
床に落ちている硬貨を拾い集め、乾燥しきった袋に入れていく。
「あっ、そうだ。いいこと思いついた」
ここは一階。迷惑はかからないはず。
「えいっ!...見つけた」
足を上げ、床をドンッと踏みつける。その振動が家具の隙間に入り込んでいた硬貨に伝わり、揺れる。速度探知によりその振動の速度を感じ取った俺は家具をずらし、硬貨を拾う。
「こんな使い方もできるとか本当に便利だなこの能力」
『そんな使い方されるとは思ってなかったぞい...』
何か聞こえるが、無視する。どう使ってもいいだろ?
「これで全部...か。よし、武器を買いに行こう」
荷物を全て装備し、宿の外に出る。目的地は武器屋。どこにあるがわからないが、人に聞けばわかるだろう。
「武器屋武器屋...えっ?なんでチュチュいるの?」
宿を出ると、チュチュが立っていた。キースとギブドはいないけど、どうしたんだ?
「ん!」
手を差し出してくる。なんだ?...あぁ、そういうことか。
「がめつい奴め」
袋から硬貨を取り出し、チュチュに放り投げる。
「ありがとさーん。じゃあねー」
硬貨を受け取ると、チュチュはさっさと去ってしまう。ほんとにこれだけのために残ったのか。
「あっ、武器屋の場所聞いとけばよかったな。忘れてた」
仕方ないのでぷらぷらと歩く。適当でもなんとか見つかるだろう。
「ついでにどこに何があるのかも覚えておくか」
カリスは狭かったから道も覚えやすかったが、この王都はカリスよりも何倍も広い。道を覚えるのも一苦労しそうだ。スマホのマップアプリがどれほど便利だったかがわかる。
「あるとしたら多分大通りだよな。どこかなー?」
大通りを歩き、いろいろな店を見ていく。ここらへんは食料品を扱う店が多いな。あまり俺には用がなさそうな場所だ。
「どこにあるかな...聞いてみるか」
近くにあった店の店員に聞いてみよう。
「すみませーん。これ、買います」
唐揚げ棒のようなものを指差す。情報料代わりに買うのだ。決してお腹が空いていたわけではない。
「まいどありー」
「あっ、ついでにちょっといいですか?武器屋に行きたいんですけど...どこに行けばいいですかね?」
「武器屋?それならギルドの近くにいくつもあるよ」
「そうですか、ありがとうございます」
武器屋はギルドの近くにある。冒険者が集まるのだから、ギルドの近くにあるのはとても合理的だろう。ちょっと考えればわかることだったな、これ。
「とりあえずギルドの方に行くか」
うまうまと唐揚げ棒を食べながらギルドに向かって歩く。これ、なんの肉だろ...まぁいいか、知らなくても。変な肉だったら精神的ダメージ受けるし。知らぬが仏だ。
「ギルドはここら辺だよな...あっ、これ武器屋じゃん。そこは盾で、そこは道具屋か。ほんとに集まってんだな」
ギルドの近くにやってくると、そういう冒険者向けの店が増えてきた。それぞれ専門に扱っているものが違うようだ。カリスみたいに、一つの店で剣や弓など複数の武器を扱っているわけではないらしい。ダガーもロングソードも弓も盾も新調しようとするなら、色々な店を回らないといけなさそうだ。
「どれから買おうかな...おっ、ちょうどいい、剣から片付けよう」
よさそうな店を見つけた。看板には文字が書いておらず、剣のようなマークと、トンカチのようなマークだけが書いてあった。この飾らない感じ、いい店感がすごい。
「失礼しまーす...うおっ、よさそう」
予感的中。よさそうな剣がいくつも置いてあった。デザイン性ではなく、機能性重視。素人目から見ても、それがわかった。
「店主は...寝てるな。勝手に見てくか」
店主っぽい男の人はカウンターみたいなところで、完全に突っ伏して寝ていた。お疲れなのだろうか。
「ダガーはここら辺か。三種類しかないな。というかこれ、全部一点物なのか?」
どの剣も、種類ごとに一つずつしか置いてなかった。奥に在庫があるのかもしれないけど、この建物はあんまりデカくなかったし、奥に見える扉の先に鍛冶をするスペースを取ると倉庫のスペースがなくなりそうだ。倉庫があるようには思えない。
「量産はしない、完璧な完成品しか置かないスタイルなのかな」
剣一つ作るのにも、とてつもない労力を使うだろう。買われるかわからないものを量産するよりは、一つ完璧なものを店内に置いておき、必要になったらその都度作る方が楽なのだろう。
「これ、触ってもいいのかな。試し振りとかしてみたいけど、売り物だしなぁ...」
「触ってもいいぞ」
うわびっくりした。いつのまにか店主が起きていた。髭など一切生えていない、童顔ぎみの好青年だった。鍛冶屋店主のイメージとかけ離れてやがる。店主だと思っていたけど、店主の息子だろうか。それかバイトかもしれない。
「いいんですか?」
「ああ、全部レプリカだから問題ない」
「えっ、レプリカ?これ全部?」
「そうだ。重さや重心は実物に合わせているから、振り心地は変わらないはずだ」
マジか。これ全部レプリカなのか。試しに一つ取って振ってみるも、感覚は実際のものとなんら変わりない。確かに刃は見た目だけで、触っても切れることはないレプリカだったが、ちょっと信じられない。じゃあ商品はどこにあるんだ?鍛冶場は別にあって、奥は普通に倉庫だったとか?
「実物はどこにあるんですか?」
「実物?そんなのないよ。今から作るのさ」
今から...なるほど、注文してから作るのか。受け取るには時間がかかると、そういうわけだ。
「じゃあダガーはこれとこれでいいかな。握りやすいし、比較的軽めだから振っても疲れないし」
右手用と左手用。それぞれ別のダガーを買うことにした。あとはロングソードだ。
「めっちゃ数多いな...オススメってあります?」
店員に聞いてみる。
「オススメか...今使っているのはそれかい?ちょっと見させてもらいたいんだが、いいか?」
「ああはい、大丈夫です」
ロングソードを引き抜き、店員さんに渡す。
「ふむ、このくらいの重さで、この傷のつき方なら...これなら使いやすいと思うぞ」
店員が指差したものを手に取ってみる。
「…おぉ、いいなこれ。使いやすいな」
剣の重さに、傷を見ただけで俺に使えそうなものを選び取るだなんて、やはり本職はすごい。すごい以外に言葉が見つからない。
「これ買います」
「いいのかい?他のも試したりしなくて」
「いいんです。だって、俺が使うならこれが一番いいんでしょう?」
「初めて会った人の言うことをそこまで信じるのかい?」
「プロが言うんですよ?素人があれこれ試すよりも何倍もいいでしょう」
「プロねぇ...死んだ親父にはまだまだ届きませんよ」
おぉう急に重い話が...隙を与えた俺が悪いな。というか、この人店主なのか。なんかこの店来てからした予想全部外れてる気がする。
「ダガー二本に、ロングソード一本、これで全部ですね?」
「はい。あの、受け取りはいつに...?」
「ん?すぐに出来ますよ?」
えっ、そうなの?
「あっ、あと、その武器を材料にしていいのなら安くできますよ。どうです?」
材料...?
「まぁ安くなるのなら...」
よくわからないけど、ダガーとロングソードを店主に渡す。もしかしてだけど、金属を再利用したりするのだろうか。店側で用意する材料がその分減るから、料金も安くできる。その理屈はわかるが、すぐ出来るってのがよくわからない。
「すぐに出来るってどういうことなんだ...?」
「…もしかして、王都の武器屋に来るのは初めてかい?」
「そうですけど...」
「それなら...ちょっと待っててくださいね」
ダガーとロングソードをカウンターに置き、扉を開けて奥に消えていく。扉の奥がチラッと見えたが、いかにも鍛冶場っぽい内装だった。
「何をしに行ったんだ?」
「あのー、ごめんなさい。扉開けてもらえますか?両手が塞がってて...」
扉の奥からそんな声が聞こえてくる。カウンターを乗り越え、扉を開ける。
「ありがとうございます。今から作りますね」
ここで、か?奥の鍛冶場じゃなくて?
「あっ、危ないかもしれないから離れてくださいね」
「あっ、はい」
カウンターを乗り越えて、さっきまでいたところに戻る。
「では、行きますよ」
カウンターに、いろいろな金属の塊を置いていく。そして店主は指パッチンを一回する。すると、ダガーといくつかの金属の塊が空中に浮遊し出す。
この現象を、俺は見たことがある。昨日、キースたち三人に見せた製作スキルの挙動だ。
ダガーと金属の塊は、一度目に見えないくらいの細かさにまで分解される。そして、鍛治で行う過程を全てすっ飛ばして一対のダガーが形成されていく。
「おぉ...」
空中で完成したタガーは、完成した瞬間に重力に従って落下する。それを店主がパシッと掴み取る。
「まずダガーは完成だ。次はロングソードだな」
もう一度指パッチンをすると、ロングソードと残っていた金属の塊が空中に浮き出し分解される。
「指パッチンする必要はあるのか...?」
「癖でね。それに、ちょっとカッコいいだろう?」
特に必要なことではないようだ。
「はい、完成だ」
ロングソードをこちらに渡してくる。ダガーもロングソードも、さっき俺が選んだものと見た目は完全に同じだ。違うのは、刃がちゃんと付いているという点だけだ。
「製作って極めるとここまでできるようになるんだな...」
どこぞの人間のふりをしたロボットみたいだ。材料が必要という点においてそれとはちょっと違うが、一度でも作ったことがあるなら何度でも作れるのはとても便利だ。確かに製作スキルがあれば、店頭にも倉庫にも在庫を置かなくても問題ないな。
「もっと極めると、作ったことないものでも、過去に触れたことがあるなら製作で作れるようになる。親父がそうだったからな」
「そこまで出来るようになるのか...俺もできるようになりたいな」
「冒険者にそれをやられると、商人が泣くぞ」
「確かに。武器が壊れてもその場ですぐに作り直せちゃうなら、武器屋が潰れちまう」
でもそこまで出来るとわかると、欲しくなってしまう。時間があったら練習して練度を上げておこうかな。
「あっ、そうだ。お代はいくらですか?」
「えっと、今回使ったのはあれとあれだから...このくらいだ」
値段を書いた紙を出される。
「えっっぐ...」
「払えないのか?それならツケでもいいが」
「いや、払える。払うよ」
「一つ二つ...はい、まいど。お釣りだ」
お釣りを受け取る。今ので全財産の三分の一が吹っ飛んだ。さすがは王都。さすがは一級店。値段も一級だ。
「…また買い換える機会があったら来るよ」
「どうぞ、ご贔屓に」
店を出る。
「あと弓と盾か...」
弓も盾も買うとすると、今日だけで全財産の半分吹っ飛びそうだ。
「明日から頑張らないとなぁ...」
たくさん稼がねば、と思った今日この頃だった。
今回、いろいろなスキルや魔法が出てきました。
本来の使い方一個もカリヤくんはしてないけど。