前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8407字。

ついにアクセル戦終幕...!


超高速戦闘の終わり

「そーいやお前と最初に戦ったのもこんな場所だったなァアクセル!」

 

アクセルの攻撃を避け、ダガーで反撃しながら叫ぶ。

 

「と、の意味が今とは違うがな!」

 

山の中で戦っているこの構図は、ムカデの巣での戦いと似ている。あの時はアクセルが味方だったが...戦ってる相手も実質アクセルだったから今考えると奇妙な状況だったなと思う。

 

あの時はほとんどアクセルが活躍していた。けれど今は、一対一ができている。戦っている最中、常にアクセルの成長具合に驚かされていたけれど、俺も相当成長していたんだな...

 

「そーだな!今は敵同士!そしてそんな楽しい対決ももうそろ幕引きだ!」

 

「名残惜しいがそうするとしよう!」

 

この状況でも、最後までアクセルは勝ちに行こうとしている。それに敬意を払いながら、振り回される異形の腕を避ける。

 

今のアクセルには、その腕を自由に動かすことはできない。グレネードのBB弾によってボロボロになった腕を超回復薬で強制回復させた結果、本来なら筋肉であるはずの箇所まで肉で埋め尽くされたためだ。筋肉が壊れていては、雷装の電気信号で無理矢理動かすことも叶わない。

 

そのためアクセルは、腕を振るって攻撃するために全身を動かして遠心力を利用している。そうでもしないと、腕は動かせない。だらんと垂れ下がるのみだ。もはや切り落としてしまった方が走りやすくなり、攻撃しやすくなるかもな。

 

「おおっと怖い怖い...な!」

 

指先をアクセルに向け、超光速弾を放つ。アクセルも放たれる直前に身を捩らせることで回避しようとしたが、避けきれず異形の腕に命中する。こんな腕でもアクセルの肉体。痛みは当然やってくる。

 

「う゛、ぐ...」

 

「……おぉ、脅威的な回復能力だな」

 

今さっき貫いた腕が、瞬く間に再生している。アクセルの力だけではこうはなるまい。超回復薬の効果がまだ微妙に残っているのだろう。

 

「けど...それ以外の部位はもう回復できねぇみてぇだな!」

 

先程攻撃を避けながらダガーで脇腹を切り裂いてやったのだが、その部分の傷はまだ治っていなかった。おそらく、腕に自然治癒が集中してしまい、他の部位で自然治癒が行えなくなってしまっているのだろう。

 

「それに...雷装も!」

 

身体中に流れている雷装を右手のダガーに全て集中させ、腕を切り付ける。次の瞬間...

 

「ガ、ア゛ア゛ァァァッッッッ!!!」

 

異形の腕から胴体へと雷装は流れていき、一気に痺れさせる。

 

相手が雷装を発動しているなら、本来雷装をぶつけても意味はない。しかし、雷装取得直後のアクセルのように、全身に均等に流すことができていなければ普通にダメージは通る。

 

これまでのアクセルなら雷装に穴を開けることはなかったが、これも異形の腕のせいだ。自身の肉体が異形の腕によって拡張されたため、思うように扱えないのだろう。今なら雷装が効く。

 

「ッッッ...ッ!」

 

アクセルの姿が消える。未来跳躍だ、ってなにっ⁉︎

 

一秒と経たずに俺の後方へと転移したアクセルは、両腕を振り下ろして攻撃してきた。跳躍間に合うか...いや無理!

 

「っ、オラァッ!」

 

振り下ろされる異形の腕に、こちらも腕で対抗する。ダガーに集めていた雷装を右腕に移動させ、異形の腕を受け止める。

 

「ん...ぐっ...⁉︎」

 

こいつ異形の腕に全雷装を...!わざと均衡を崩して集中させ、俺の雷装の反撃を防ぐばかりか逆にこっちに流し込んでこようとしてやがる!

 

「だあ゛クソッ!」

 

押し込まれる。そう確信してすぐに腕を捨てる決断をする。魔力体の右腕を分離し、急いでその場から離れる...が。

 

「クソッ、またかよ!」

 

またしても俺の背後にアクセルが転移してくる。さっきもそうだが、アクセルの奴、未来跳躍をカスタム発動できるのを隠してやがった。けど...二度目が通用すると思うな!

 

バックステップをして一瞬でアクセルに近づき、背中からタックルをかます。今のアクセルは腕にしか雷装を纏ってな...

 

「     !!!!」

 

思考が飛び、全身に痛みが走る。そして反射的に、スキルを使用する。魔力体の右腕に丸ごと置いてきてしまったために解除されてしまったスキルを。

 

『雷装』

 

すぐに鋭い痛みは消え、じんわりとした痛みだけが残る。

 

「この状況で頭冴えすぎだろ...!」

 

アクセルは俺がタックルを仕掛けた瞬間に胴体へと雷装を移したのだ。その攻撃は雷装が解除されてしまっていた俺にクリーンヒットし、決して小さくないダメージを負ってしまった。

 

不利な状況に追い込まれたアクセルだったが、隠していた一秒未満未来跳躍という切り札を切り、それに加えて雷装を一極集中しての攻撃も使うことで、ものの見事に状況をひっくり返してみせた。

 

「……ハッ」

 

ひっくり返してみせた?自分で考えておいてなんだが、そいつは違う。結果だけ見れば確かにそうだが、大事なのは最終的な勝ち負け。そして、そこに向かう過程だ。

 

見事に逆転したアクセルだったが、その逆転をするまでにどれだけ切り札を切った?そもそも、最終局面になってやっと切り札を切るんじゃ遅すぎる。まだ勝ち負けがつきそうにない段階で切り札はさっさと切っておくのだ。

 

早い段階で切れば切るほど、相手視点でのこちらの手数が増え、次の手の読み合いで考えることが多くなり、思考が遅れる。そして、まださらに奥の手があるのではないかと思わせられる。切り札は隠すものではなく、どんどん晒していくものだ。

 

この最終局面で切り札を切ったということはつまり、これ以上手数はないと言い切っているようなもの。もちろんアクセルがまだ勝ち負けがつかない場面だと認識していれば話は別だが、おそらくそうではないはずだ。

 

もう臆することはない。これ以上現実のアクセルが、俺の頭の中のアクセルを超えることはない。

 

そして、あともう一つ。このタイミングで切り札を切ったことでわかることがある。

 

今この瞬間にもアクセルは未来跳躍をして攻撃しているわけだが...なぜアクセルは連続で跳躍しているのだろう?未来跳躍が来るとわかっていれば、それだけ対策していれば問題ない。未来跳躍と普通の攻撃を使い分けられる方が攻撃としては厄介なのだ。だというのに、わざわざ魔力消費の大きい未来跳躍を連続で使うのか。その理由は...

 

「もう、()()()()()()()()()()?」

 

「っ⁉︎」

 

またしても背後に転移してきたアクセルの腕を掴み取る。

 

「もう雷装を発動していないと動けない。けど激痛がある。だから未来跳躍で移動を最小限にしているんだ...違わないだろ?」

 

図星だと顔に出ているアクセルを見て笑いながら、腕を離して蹴り飛ばす。アクセルは腕を自分の意思で制御できないため、蹴り飛ばされた腕に引っ張られる形でよろめく。

 

「っ!」

 

おそらく、アクセルはまた未来跳躍をしてくるだろう。けれど...

 

4571ページ 黒のみ 触手・水

 

転移先を封じれば、そもそも跳ぶことすらできない。

 

「未来跳躍は俺の十八番だぜ?それで勝てると思うなよ!」

 

アクセルの胸を思い切り蹴り付ける。ガードが間に合わず直に喰らったアクセルは後ろにのけぞり...腕の重さのせいでバランスを崩して倒れる。

 

「ほらその腕邪魔だろ?今切ってやる!」

 

触手で先程腕と共に手放したダガーを回収し、魔力体解除によって戻ってきた本物の右手でダガーを掴み取る。

 

「ハァァッッ!」

 

……ズバンッ!

 

アクセルの両腕が、肩から切断された音だった。

 

「  ヅ...!」

 

痛みで意識が飛びそうになったのを、無理矢理舌を噛むことで抑えたのだろう。アクセルの口から少し血が吐き出される。

 

「いつまで...そこにいるつもりだ!」

 

俺の腹めがけて放たれた蹴りを回避する。その間に距離を取られたが、腕を落とせたからひとまずヨシとしよう。

 

「ぐっ...自然治癒じゃここまでか...!」

 

肩の切り傷が自然治癒強化によって埋まる。流石に腕が生えてくるようなことはなくて安心だ。

 

「どうだアクセル。走りやすくなったか?」

 

「そんなわけないだろ...」

 

腕が振れないと、走る時に下半身にかかる回転を打ち消せなくなるため、思うように走れなくなる。異形の腕があった時よりも走りづらくなるだろう。

 

「腕切り落としといてからこう言うと完全に脅迫なんだが、最後に聞いておく。人間側につく気はないんだな?」

 

「もちろんだ。勝つか負けて死ぬか。そのどちらかしかないさ」

 

そう言うアクセルの様子が、少しずつおかしくなる。

 

「だから私は...最後まで、勝利を追い求める。最初に覚えた、この力で...!」

 

この様子。見たことがある。それも二度。どちらも本人ではなかったが、あれは...

 

「狂化...?」

 

狂化を使えることは前々から知っていた。しかし、本人が使うのを見るのは初めてだった。

 

「へぇ...」

 

どういう経緯で狂化を得たのかは謎だが、大方戦闘に没頭しすぎて勝手に発動したとかだろう。狂化の発動条件は人によって様々だが、勝利への極度の執着に身を委ねることで発動する人もいると聞いた。アクセルもその系統だろう。

 

「……よっと」

 

狂化によって無口となったアクセルは、音速の二倍よりもさらに速くなって俺の元まで近づき、蹴りを放ってくる。が、俺は全力疾走も無しにそれを回避する。

 

「っぱそうなるよなぁ...」

 

アクセルの攻撃を軽々と避けながら、俺は速度操作を使う。

 

「……ほら、さっさと起きろ」

 

「……えっ...?」

 

アクセルは困惑の声を出しながら、その場でぐったりと倒れ込む。

 

「な、んで...」

 

「魔力の消費速度加速をして、お前の魔力をゼロにしただけさ。雷装だけだとちと難しいが、狂化も使ってれば簡単だ」

 

雷装と狂化という、発動中常に魔力を消費する力を同時に使っていれば秒間消費量はまぁまぁ多くなる。元々既にある程度消耗していたのもあって、少しの間加速させてやるだけですぐに魔力はゼロになる。そして魔力がゼロになれば狂化も雷装も解除され、雷装のおかげで動けていたアクセルはスタミナゼロのせいで動けなくなる、というわけだ。

 

「違う...聞きたいのはそのことじゃない...!」

 

「ん?じゃあ何が聞きたいんだよ」

 

「聞きたいのは魔力を全回復させた理由だ!なぜそのまま殺さない⁉︎」

 

「なんだそのことか...そりゃお前、あのまま終わらせてもつまらないからだよ」

 

困惑まみれのアクセルに、そう言ってやった。

 

「つまらない...だと?」

 

「ああ。狂化なんてもん使って、勝てる望みを捨てやがったからな。そりゃ萎える」

 

「……なんだと?勝てる望みを捨てた?その逆だ!私は勝つために!」

 

「お前の強みは肉体強化だけじゃない。発想力や判断力...思考を基にした類まれなる戦闘センスもお前の強みなんだよ。それを狂化で捨てちまったら、速くなれても逆に弱くなっちまう」

 

狂化を使っているアクセルの攻撃は、なんて分かりやすく、なんて読みやすく、なんて単調だっただろう。攻撃が一直線すぎて、全力疾走なしでも避けられてしまう。普段のアクセルならフェイントを入れたり搦手を使うとかしてくるから気を抜けないのに、それらを一切警戒しなくていいとかぬるすぎる。

 

「ほら、魔王の山でお前、狂化状態の俺を一瞬で叩きのめしただろ?あの時の俺、ハッキリ言って弱かっただろ。それと同じだ」

 

「っ...言ってることはわかった。だが、それと魔力を回復させたこととはなんの関係が...いや、まさか...⁉︎」

 

気づいたアクセルは驚きで目を見開きながら言った。

 

「狂化無しの私と戦うため...⁉︎」

 

「同じ状況になった時、アクセルならどうするか...そう考えてやったぞ俺は。お前なら、狂化で弱くなっている俺を嬉々として殺すようなことは絶対にしない」

 

「だからって...お前がそれをするのか」

 

「するさ。どうあがいても、アクセルと戦えるのは最後なんだ。なら、決着は最っ高のものにしてぇだろ?」

 

「……そんな余裕を出せる時点で、勝敗はもう決まったようなものだが...最後まで抗わせてもらう。トドメを刺さなかったこと、後悔させてやろう」

 

「ハッ、やってみろ。魔力全てと、あと一発攻撃できる程度のスタミナだけ回復させてやった。さっさと立って、全力を乗せた攻撃をしてこい。俺も、最高の一撃で応えてやる」

 

アクセルはゆっくりと立ち上がる。そして片足を後ろに引き、走り出す体勢をとる。

 

「……『雷装』」

 

アクセルの身体に電流が走り出す。

 

「……ははっ、この土壇場でそれをするか!」

 

「君を見ていたら、できる気がしてね!」

 

アクセルに腕が生えていた。雷装をリンクさせた魔力の腕だ。魔力体というより、雷撃剣に近いものだろう。俺が使っているのを見ただけで真似してみせるとは...やはり、戦闘センスがずば抜けている。

 

9934、9935ページ

 

「面白い!じゃあ...行くぜェ!全力疾走(オーバーアクセル)!!」

 

全力疾走を発動し、アクセルに向かって走り出す。アクセルも同時に走り出す。魔力で腕を作ったおかげでめちゃくちゃ走りやすそうなアクセルをよーく観察し、攻撃のタイミングを図る。

 

今、決着の時...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ⁉︎」

 

驚愕の声を上げたのは、アクセルだった。

 

先に攻撃したのは、アクセルだった。その攻撃を俺が避けたことに驚いたのだ。

 

アクセルが攻撃に使ったのは、足だった。腕に警戒させておいて、最後の一撃は足。最後の最後にそんな搦手を使ってくるところは流石アクセルだ。腕を振るって拳で攻撃するよりも、そのままの勢いで飛び蹴りをした方が、リーチもあって先制できるし体勢が一気に変わるからこちらは攻撃が当たりづらくなるから良い攻撃と言える。読まれていなければ...の話だが。

 

俺は最初と同じように蹴りで終わらせようとしてくると考え、逆に足を止めたのだ。アクセルにはできない、速度操作だからこそできる急停止。最高速度から、速度操作を解除することで一瞬でゼロ速度への減速を成し遂げ、それによりアクセルの攻撃を避けることに成功する。

 

「アクセルへのトドメはこれでと決まっている!」

 

次元収納からそれを取り出し、空中に放り投げる。

 

充填器(チャージャー)!!!」

 

地面に手をつきながら蹴りを放ち、爪先で充填器(チャージャー)を捉えてそのままアクセルの左脇腹へと叩き込んだ。

 

次の瞬間、充填器(チャージャー)に蓄えられていた電気エネルギーが全て解放される。

 

「ア゛...グゥッ...!」

 

俺の口から声が漏れる。雷装を発動して、しかも右足に集中させているにも関わらず、充填器(チャージャー)から放出される電流は俺にも牙を剥く。

 

けれども、そんな俺にも小さなダメージがあるということは...左脇腹という心臓に近い位置に直接叩き込まれ、しかもフェイクのために腕に雷装を集中させていたアクセルに、耐えられるわけもなかった。

 

アクセルの心臓が、止まった。

 

全ての電気エネルギーを叩き込み終わると、後ろにゆっくりと倒れ、アクセルは地面に崩れ落ちた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ...」

 

8271ページ 黒のみ 逆行再生

 

上がった息を整えながら、ポッキリと折れた脚を治していく。マッハ2で接近してくるアクセルを、勢いを殺しながら蹴りつけるなんていうそりゃ折れんだろと言いたくなる動きをしたからな。流石に無傷ではいられない。

 

「勝った...ぞ...!」

 

小さく、けれど心が100%乗ったガッツポーズをしながら呟く。

 

「はは、おめでとう」

 

「……アクセルお前心臓止まってんのに喋れんのかよ。びっくりしすぎて心臓止まるかと思ったわ」

 

「そりゃ魔族だからね。人とは違うさ」

 

「……そういやフロートもそんなんだったな。この後消えるんだろ?最後まで付き合ってやるよ」

 

アクセルの横まで歩き、隣で座り込む。

 

何を話せばいいかわからず、しばらく沈黙が続き...俺から口を開いた。

 

「なぁアクセル...楽しかったか?」

 

「もちろんだ。最期に君と戦えてよかったよ」

 

「それはよかった...俺も楽しかったぜ」

 

……また沈黙。もしかしたら、戦いの中でほとんど語り尽くしてしまったのかもしれない。話すことが既になくなってしまっている。微妙に気まずい雰囲気が...

 

「……カリヤは、前からずっと、私と一緒に戦えたらよかったと、そう言っていたよな」

 

「そうだな。今もその気持ちは変わってないぞ」

 

「実はな、私もなんだよ。魔族として生まれてなければこの力はなかっただろうけど、もしそんな可能性があったならば、普通の人として生まれてカリヤと出会いたかった」

 

「アクセル...」

 

「魔王様を裏切るというのも、できるのならやってやりたかった。けど、魔族に生まれた私にはそんなことできない。それに、魔王様の計画がうまくいけば、魔神が復活する。魔神の意思によっては、人と共存を選ぶ可能性もあったから、この道を選んだんだ」

 

人を一度も殺さなかったのは、人と魔物の共存する未来を夢見ていたから...ということなのだろう。もし本当にその未来を掴み取りたいなら、魔王に戦争ではなく交渉で目的達成を目指してみないかと進言すればよかったんじゃ...と思ってしまうが、ここでそれを言うのは流石に無神経すぎるか。

 

「けど、この道を選んでしまったがためにカリスの多くの人々が死んでしまったのを考えると、全てをかなぐり捨ててでも役目を放棄して戦うのをやめるのが正解だったのかな...」

 

「……今更後悔したって何の意味もない。過去のことを話すくらいなら、未来のことを話そうぜ」

 

「未来...?そうは言っても、私の身体はあと数分も持たないぞ」

 

アクセルの身体が、少しずつ朽ちていっていた。フロートにも起こっていた現象だ。魔族が死ぬときはこうなるのだろう。

 

「未来ってのは数分とかじゃなくて、もっと未来の話だぜ。魔族は人間の魂から生まれてるって話聞いたことあるだろ?」

 

「そうだが...?」

 

「人ってのは死んだら生まれ変わるもんだ。それは多分、魔族も変わらない。次の人生が待ってるんだ」

 

「次の...人生?」

 

「だからよ、次人間に生まれて来ればいいんだ。そして、もし人として生まれることができたなら、俺はアクセルのことを絶対に探し出してみせる」

 

「そんなこと...本当に可能なのか?それに、もし生まれ変われたとしても、カリヤのことを忘れてるんじゃ...」

 

「まぁそりゃ忘れてるだろうな。次の人生じゃ、前の人生の記憶は忘れるもんだ...頭じゃな」

 

「頭じゃ...?」

 

「魂では覚えてんだよ。俺は速度探知でアクセルの魂を識別できる。いろんな魔法を使えば...その記憶も呼び覚ませるかもしれない。だから...俺はアクセルを見つけられるまで死なない。たとえおじいちゃんになったとしても、探し出してやるぜ」

 

「……じゃあ、カリヤが私を見つけて、記憶も取り戻すことができたら...ジジイになったカリヤを見て笑ってやるよ」

 

「ハッ、ジジイ確定かよ。もうちょい早く生まれ変わってくれね?」

 

二人で笑う。最期の時を、悲しいものにしないため...なんて理由じゃない。ただ純粋に楽しくて、そして未来への希望を胸に笑うのだ。

 

「……生まれ変わりか。そうなれたらと思いたいけど、現実は厳しいものでね。きっと、そううまくはいかない」

 

「なんでだ?」

 

「私たち魔族が生まれ変わるには、魔王様が死ななければならない。魔王様がいる限り、魔族の魂は縛られる...ずっとね」

 

「やっぱり...何かあるのか」

 

「だから、もし人としての私が見たいのならば、絶対に魔王を殺し切らないといけない...でも、カリヤなら、カリヤたちならできると信じてる。頑張れ」

 

「……ああ、もとよりそのつもりだ。魔王を殺すのが、俺がこの世界に来た目的だからな」

 

アクセルの身体の崩壊がピークに達する。もう残された時間は僅かだ。

 

「私がカリヤのためにできることは、もう応援することだけ。それどころか、きっと私の力はカリヤたちに牙を剥く。だけど...」

 

アクセルの手を取る。

 

「ああ。応援も、その心も、全部受け取る。心配しないで、ドーンと大船に乗ったつもりでいてくれ。次に目覚めた時にはもう、新しい人生が待ってるはずだ」

 

「はは...楽しみだ...」

 

ボロっと、アクセルの手が、身体が、崩れ去った。そして、小さな黒い塵のようなものになり、大空洞の外へと飛んでいく。

 

「今のは...なるほど、魔王が魂を縛り付けるというのは本当らしい」

 

塵と一緒に、アクセルの魂も飛んでいくのを感じた。アクセルの力が牙を剥く、というのも、おそらく魔王が死んだ魔族の力を使うとかそんな感じだろう。

 

「……時間かけちまったな。みんなのところに行かないと」

 

息を整え、アクセルが死んだことで揺さぶられた感情も整えてから、俺は走り出す。

 

……そういえば、この世界には海がないから、「大船に乗ったような気持ちで」という表現通じないんだよな。

 

生まれ変わったアクセルに会ったら、地球の記憶でも見せてやろうと思いながら、俺は走る。魔族と戦うみんなのもとに合流するために。




アクセル死んじゃったよ...アクセルとの戦闘は描いてて楽しかったし、キャラも好きだったから、こうなるって知りながら書くの辛かった...

この先まだまだ書かないといけない話があるから実現できるかはわからないけれど、この作品のIFストーリーとかも書いてみたいなぁ...まぁ、既にあらかたストーリーが出来上がっている十作品くらいを完成させてからになると思いますが...いつになるんだこれ。

次回は、サーマル・キネット戦になります。
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