前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8056字。

サーマル・キネット戦四話目です。

裏設定ですが、キネットはサーマルの力での魔力回復に頼り切っているがために魔力切れを起こした経験が少なく、総魔力量は少なめ。
サーマルはちょくちょくミスって魔力切れを起こしてしまうのを繰り返すうちに、総魔力量が増えており結構多めです。
そのため、サーマルの魔力回復によって、キネットはすぐに魔力切れ状態から全回復になることができ、対してサーマルは略奪用の魔力を作るのに時間がかかっていたという...意外と魔力の増幅は時間がかかるんですよね。

……というのが、なんですぐにキネットは全回復できたのに略奪の再使用に時間がかかっているんだという、書いている最中に作者自身が思ってしまった疑問に、五分で考えた答えになりますが別に書かなくてよかったなこれ...


スキルの宣言

二人で魔族たちの攻撃を避けながら、各々状況を整理し、思考をしていく。

 

今ここには、魔族二人と俺とニアだけ。他のみんなは転移によって壁の外に出されてしまった。

 

俺らだけが残された理由は、略奪を使えるから...とキネットが言っていたが、おそらくそれは本来の目的とは少しずれているだろう。

 

本当の目的は、ニアが魔力供給をできないようにすることと、増援を呼ばれるのを防ぐことだ。

 

もし略奪が使えるやつを潰したいなら、俺かニアのどちらかだけを残し、それ以外を外に転移させてしまえばいい。一人だけで略奪を使っても、自由に動けるもう片方が攻撃すればいいだけだから、片方だけ閉じ込めれば十分なはずだ。

 

しかし、俺が外にいたら普通に次元転移でまた戻ってきてしまう。なんなら他の四人も連れて戻ってこれる。

 

ニアが外だったら、魔力を回復させられるおそれがある。回復したら、その後は俺が外にいた場合と同じだ。次元転移で戻ってこられる。

 

これが、俺とニアが残された原因。増援を呼ばれるのを防ぐこと。

 

今度は逆に、四人がなぜ外に出されなければならなかったのかを考える。ニアの魔力回復を防ぐという方向でだ。

 

ライトは言わずもがな。必殺技を使うことで、魔素しかないこの場所でも魔力回復ができてしまう。真っ先に除外されるだろう。

 

レストは、盾で吸収した魔力をニアに譲渡することで、擬似的に魔力の補給が可能になる。

 

ステラとクミリアは、余分な魔力を譲渡できるからだろう。実際シレンの穴での戦闘で、ステラはニアに魔力の譲渡をしている。その記憶をキネットたちは持っているから、対策のために転移させたのだろう。

 

見事なまでに、ニアの魔力供給を止められてしまった。聖素がないから回復加速は意味ないし、俺は余分な魔力を上げられるほどの余裕がない。どうやってもニアは魔力を回復できない。

 

魔力が回復しきらなければ、自身の魔力を使った魔法は発動できない。だから、普通の方法ではニアが戦闘に参加することは不可能だ。魔法拡散で相手の魔力を分解してそれを利用すれば一応戦えるが、それでは戦力として微々たるものだ。

 

……いや、あれを譲渡すれば、擬似的に戦えるようにはなるか...うん、戦えそうだな。

 

よし、ニアは戦える。けれど、戦えたとしてどうする?あいつらは二人同時に殺さなければ死なない。同時の定義は俺の能力で少しだけだが曖昧にできるが、単純に人数が対等になってしまったせいで同時に殺すのが難しくなってしまっている。その方法がまだ浮かばない...

 

「っ...大体同じような感じか」

 

ニアから大量の思考が送りつけられてきた。が、それらは既に俺も考えていたようなことだけだった。ニアもこの状況の打開策はまだ浮かんでいないらしい。

 

5114ページ 黒のみ 思考共有

 

俺もさっき考えたことをニアに送りつける。

 

『私に譲渡してくれるものはなに?』

 

『今サーマルに盗られているものだ。とりあえずあれを返してもらわないとな...』

 

「何喋ってんのか知りませんが内緒話はそこまでですよ!」

 

日本語で会話しているおかげで内容までは悟られてないみたいだが、俺たち同士の念話をやめさせるためにキネットが大量の魔法を放ってきた。サーマルがそれに能力を使い、強化していく。

 

「魔力もーらい!」

 

強化された魔法は、もはやニアのおやつだ。サクッと必要分の魔力をポーションで補給し、即座に魔法拡散を使って全ての魔法を分解していく。そして分解した魔力を操り、身体の周りに纏わせて保存する。

 

『盗られている...って、略奪されたの?』

 

『そうだ。十分で勝手に返却されるから、あと五、六分も待てば返されるはず...と、そろそろ略奪が来る頃か』

 

もうそろそろ速度操作か魔法図鑑が盗られてしまいそうな気がしたので、大量の思考をサーマルに押しつけて、できるだけ時間を稼ぐ。

 

『……略奪って、魔法拡散で解除できないの?』

 

『……わからん。一応やってみてくれね?』

 

俺は魔法拡散の適性がそこまで高いわけじゃないから、使おうとすれば結構な量の魔力を消費してしまう。しかもそこに固有能力を使われてしまったらすぐに魔力が切れてしまうだろうから、ニアに任せることにした。

 

『……これでどう?』

 

ニアが念話でそう言うと...

 

「あっ、やられた!」

 

と叫ぶサーマルの方から、魔道具が飛んできた。それと、さっきサーマルが投げ捨てていた弾切れ中のエアガンもだ。それらをキャッチすると同時に、雷装のスキルも戻ってくる。

 

「略奪に魔法拡散かぁ...試したことなかったからこうなるって知らんかったわ」

 

無事に魔道具が返ってきた。これが必要だったのだ。

 

……でも、略奪が魔法拡散で無効化できるってことが魔族たちにも知られちゃったのは、ちょっと困るかもしれない。略奪で固有能力を掴めたとしても、解除されちゃうってことだし...略奪に頼らない方法はないのか?未だに倒し方は考えついていないから、なんとかして搾り出さなければ...

 

『ひとまず、これを渡しておくぜ。ニアなら次元転移の座標を合わせるみたいに、次元収納に干渉することもできんだろ?』

 

ニアに魔道具を渡す。

 

『ええ。やったことはないけど、成功させるわ』

 

ニアは俺と一緒に動いて魔法を避けながら、それを告げた。

 

「『古代道具(アンティークギア) 起動(ブート)』!」

 

ニアの身体の中に、魔道具が入り込んでいく。本来なら魔道具とリンクしている次元収納の持ち主...つまり俺にしか触れられない魔道具に触れているということは、渡したその時にはもう俺の次元収納への干渉に成功していたのだろう。だから、起動もすんなりいったのだ。

 

『これで戦えるわ。カリヤは一人で戦いなさい』

 

『いいのか?』

 

『この武器庫があればいつまでだって戦えるわよ。それと、戦うなら情報量で攻めなさい』

 

『どういう意味だ?』

 

『ハッタリでもいいのよ。本質と違うことを真実に見せかけ、相手に無駄な思考をさせる...得意分野でしょ?』

 

『……なるほどな、理解した。ってかそれなら一人じゃなくてもいいじゃねぇか。俺とニアなら連携できるぜ?』

 

俺とニアにしかできない連携方法がある。それはライトやステラが混じっていればできない方法であり、相手を混乱に陥れることができるハッタリだ。

 

「じゃあ...そろそろ行こうか」

 

俺は左手で右肩の辺りに触れる。そして、そこにある翻訳の石に向かって念じた。

 

自身から他者への翻訳伝達の停止。

 

「さぁ...行こうか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「@☆...t♪∥*!!」

 

神の使いが口を開いたかと思えば、全く理解のできない音が飛び出した。カイスの英雄との念話を盗聴している時にも聞こえていたけど、この音はなんなんですか?特殊な暗号...?

 

「何言ってんのかわかんないけど頭でもぶっ壊れたのかな!」

 

そう言いながら、姉さんが神の使いに突っ込んでいった。どうしてすぐに突っ込むのか相変わらずわからないですが、情報を得るためにも当たって砕けてもらいましょうか。

 

「^(!! 〒☆!!」

 

また理解できない音が聞こえたかと思えば、カリスの英雄が姉さんに向けて魔法を放ってきた。今のは名前を呼んで指示を出したのか?

 

神の使いが蓄えていたストックを使っているから、姉さんの能力で暴走はできない...なら、転移で神の使いの真後ろに転移させる!

 

「W∥◎ ”L%ɸ≫仝®︎ʘ!!」

 

神の使いは、まるで真後ろに転移してくると読んでいたかのように、魔力銃に似た武器を向けて姉さんを撃ち抜いた。今のは想像通りだとか、そういったことを言ったのか...?その場の状況と、これまでの知識で推測すれば、話している内容をある程度予想できるはず...!

 

『っ...!あっ思い出した!この変な声、思考共有で送りつけられた時に聞こえてた気がする!』

 

『さっきもやられてましたよね⁉︎それ私にも送れませんか姉さん!』

 

『そんなのもう忘れちゃったよ!』

 

チッ、それがあれば解析がもっと早くなっただろうに...!って魔法来てるし!少しは考えさせろ!

 

カイスの英雄が飛ばしてくる魔法を転移で避け、こちらも魔法を放つ...が、魔法拡散で消されてしまう。

 

『姉さんはあっちを!私が神の使いを殺ります!』

 

『りょーかい!』

 

立ち止まっていたカイスの英雄を姉さんの近くに転移させ、強制的にマッチアップさせる。姉さんなら超加速で肉弾戦もできるから、魔法拡散と相性がいい。

 

「変な声出すのはいいですが、私は惑わされませんよ!」

 

神の使いに向けて追尾する魔法弾を放つ。速度は遅いが、数の力で逃げ道を封殺する...!

 

「*$*$*$ʉ!!」

 

おそらくは失われた古代言語か何かなのだろう。理解のできない言葉を叫んだ神の使いは、魔法を発動して水の触手を呼び出し、追尾する魔法弾を叩き落とし...

 

『姉さん魔法使いました!増幅を!』

 

神の使いが魔法を使った!魔法を暴発させて攻撃しながら魔力を減らすチャンス!

 

「暴発はできねぇよなァ?」

 

っ、声が普通に...⁉︎

 

『キネットちゃんなんかできない!あの魔法増幅できないよ!』

 

『なっ...それだけあの魔法が特別だというの⁉︎』

 

もしや、さっきまでの意味不明な言語は魔法の詠唱だったの?急に声を戻したのは魔法の詠唱が終わったから?それで私たちの知らない古代の魔法でも使って、この状況を捲りにきた...?

 

そんな魔法あるわけない!姉さんの能力で増幅させられない魔法なんてない!そりゃとある条件下だと増幅できなかったりするけど、普通に使った魔法を増幅できないなんてことあるはずが...!

 

「ほーら避けてみな!」

 

「避けるのはそっちです!」

 

魔法を弾き飛ばした勢いのまま、私に近づいて攻撃してこようとする神の使いを左右から魔法を放って妨害する。

 

「無駄だ!」

 

「っ、今度は障壁...⁉︎」

 

『ごめんそれも無理!』

 

カイスの英雄に向かって肉弾戦をしながら姉さんは支援しようとしてくれているが、魔法の暴発は起こらない。

 

「⇒°仝±‥!!」

 

またあの謎の言語を話し始めた神の使いは、魔力銃のような武器を向けて引き金を引いた。こちらも障壁を出して弾丸から身を守るが...すぐにパンチ一発で粉砕され、さらなる接近を許してしまう。障壁特効の魔法を使われたか。

 

「その口さっさと閉じろ!!」

 

「おっ、丁寧語の化けの皮剥がれてきたなァ?」

 

今の一節でもう詠唱を...⁉︎

 

「とりま一回死ね!」

 

「いや違うこれは...!」

 

神の使いの手から閃光のようなものが放たれ、私の頭は吹き飛んだ。

 

が、すぐに再生する。そして、手の内が読めた。

 

『姉さんあの言葉はハッタリです!』

 

私は頭を吹き飛ばされる直前、魔法が放たれる直前に、神の使いの手のひらで何か光るものがあるのを見つけた。それは...

 

『魔法陣!奴は筆記の魔法で魔法陣を書き、それで魔法を発動させているだけ!』

 

『っ!だから魔法に増幅をしようとしても無駄だったってわけか!』

 

筆記魔法で魔法陣を描き、魔法を発動させる手法は、先代の魔法使い最強であり、閃光の二つ名を持つ老人がよく使っていたものだ。

 

そうして発動される魔法は、魔法陣に込められた魔力のみを消費して発動される。発動者から魔力を吸い取って魔法を形成するわけではないため、姉さんの能力で増幅させようとしても、無からの増幅になってしまい神の使いから魔力を吸い取っての増幅はできない。

 

おそらくあの謎の言語も意味のない言葉を適当に喋ってるだけ!タネがわかってしまえば、対処は簡単!

 

『魔法陣を書いている最中を狙って増幅させなさい!微々たるものでしょうけど少しは魔力を削れるはず!』

 

『ちゃーんと割り込ませてもらってますぜ?』

 

「なっ...⁉︎」

 

思わず驚愕が声に出てしまった。いつのまに念話の回線に割り込まれて...謎言語に気を取られている間にか!

 

「魔法陣も安全じゃねぇってなると...これならどうかな?『閃光』」

 

「っ!」

 

神の使いの手のひらから閃光が放たれる。さっきとほぼ同じ攻撃だが、決定的に一つ違うところがある。

 

「スキル...!」

 

スキルとは、過去の経験を再現する、慣れの力が生んだ超技術。魔法ならば、カスタム無しのノーマルな魔法をただ発動した時のものが発動することになる。

 

過去の再現が故に、魔法に注がれる魔力を一定。多くも少なくもならない、完璧な一定だ。その性質から、無からの魔力増幅も不可能。どうやっても暴発を起こせない。姉さんの能力対策にはうってつけで、完全特効の技だ。

 

同じスキルでも雷装だったならば、姉さん自身が紫電を纏えるように、雷装の持つエネルギーそのものを増幅することで無理矢理魔力を吸い上げることができるのだが...閃光だとそれもできない。同じように炎や氷など熱系の魔法なら熱エネルギーの増幅でなんとかできるけど、多分そのロジックにも気づいているはず。そう安易には使ってはくれないだろう。

 

「その反応じゃあやっぱりスキルは増幅できねぇみたいだな。思う存分攻めさせてもらうぜ」

 

「それがわかったところでどうなる!たった二人で同時に殺すなんて不可能!」

 

「んなもん一人でもできるんじゃねぇかァ?まぁとりあえずは遊びに付き合ってやんよ!」

 

一人でできる...?バカなことを。二人でも無理なのに、一人で殺すなんて不可能中の不可能。これもただのハッタリ...本当に?

 

違う!こうやって私たちを惑わせることこそが神の使いの目的!騙されてはいけない!

 

「『障壁』」

 

……え?まだ私攻撃していないのになぜ障壁のスキルを...うぐっ⁉︎

 

「なぜ鎌鼬が...!」

 

私の腕皮膚が引き裂かれた。この現象はどう考えても、鎌鼬の魔法によるものだ。しかし、直前に発動したスキルは障壁のはず。どうやっても攻撃には結びつかない。

 

「次だ。『火球』」

 

火球⁉︎なぜそれを使う⁉︎まさか気づいてないのか⁉︎よし!熱だから増幅で暴走させられる!巻き込まれないように障壁を!

 

……なぜ笑って...⁉︎

 

バシュッ!!と心臓を撃ち抜かれる。障壁を貫通してきたということは、今の魔法は閃光...?

 

おかしい。スキルの宣言と、実際に放たれる魔法があべこべだ。

 

魔力の流れを読むことで、私たち魔族は相手がスキルを発動したかどうかを知ることができる。ただ魔法の名前を叫ぶのと、スキル発動の宣言として叫んだのを見分けることもできる。

 

神の使いは、確実にスキルの宣言をして、魔法を発動させていた。そしてスキルの宣言をしたということは、必ずその魔法が放たれる必要がある。仮にスキルの宣言とともに、魔法陣で別の魔法を発動させることで別の魔法での攻撃をしていたのだとしても、宣言した魔法が飛んできていないのがおかしい。

 

発動していない、障壁と火球。この謎が解けなければ、一生翻弄され続ける...!

 

「困ってんねぇ...次はどうしようか」

 

次が来る...一回の攻撃で出来るだけ多く情報を得なければ...!

 

『キネットちゃん下!』

 

っ⁉︎神の使いに集中しすぎた!英雄が真下に...!

 

「……っ、しまった!」

 

カイスの英雄が放ってきた魔法をいつものように魔法拡散で分解してしまった!アレが来る...!

 

「『魔法改竄』」

 

「そうはさせない!」

 

ニヤリと笑いながらスキルを発動させた神の使いを見て、私は急いで魔法拡散を解除した。

 

裏目だった。魔法改竄は発動せず、氷の槍によって私の首が貫かれてしまった。魔法拡散を解除していなければ、この攻撃を受けることはなかった...いや、解除していなければそのまま改竄されていたかもしれない。変なことを考えずに、転移に頼っていればよかったのだ。

 

「この...!!」

 

再生した私はありったけの魔力を注いで大量に魔法を生成し、神の使いに向けて放つ。失った魔力はいつものように姉さんが補充してくれる。残量なんて気にせずにぶっ放し、必ず殺す...!

 

「なら『魔法拡散』」

 

「どうせそれも違...わない⁉︎」

 

今度はちゃんと宣言通りに魔法が発動し、私の放った渾身の魔法が全て消されてしまった。神の使いは一度着地をすると、そのまますごい速度で跳躍して私に迫ってくる。

 

「どこに避けても無駄だぜ?『色彩剣装 無彩・黒』」

 

神の使いはいつのまにかダガーを手にしており、その刃に黒い光が纏わりつく。たしかにこの魔法なら、私がどこに飛んだとしても一撃を叩き込むことができる...けど、それだけ。致命傷を負わせるには威力不足!なら逃げずに迎え撃つ方がいい!

 

「消し飛べ!!」

 

姉さんに増幅してもらって回復した魔力を使い、魔法を放つ。この距離なら避けられないはず...!

 

「っ、すり抜け...⁉︎」

 

「後ろだぜ〜」

 

ズバンッ!と切り裂かれ、身体が上下に分断される。

 

「幻覚魔法...!」

 

近づいてきていたのも、色彩剣装も全て幻覚。本当はもう一度着地して跳び直し、背後に回って刀で攻撃...またスキル宣言と別の魔法が発動してる...!

 

「いい感じに翻弄できてるねぇ...お前があたふたしてんの見るの面白えわ」

 

「ふざっけんな!いつまでも調子に乗らせるか!!」

 

「完っ全に化けの皮剥がれたなァ!」

 

「煩い!もう喋んな!」

 

……待て。よくよく考えたら、なぜわざわざ声に出してスキルを宣言しているんだ?別に心の中で唱えるだけでも使えるはずなのに...いや、それはあべこべのスキル宣言で私たちを惑わせるためで...なら、聞こえる声を完全に無視して、魔法が発動したのを見てから動けばいいのでは?幻覚系は防げないだろうけど、それならある程度の魔法を回避できるはず...

 

「喋んなって、だいぶお怒りのようで...なら、そろそろ終わりにしようかニア!」

 

……あっ。今、ようやく違和感に気づいた。聞こえてくる音と、神の使いの口の動きが噛み合っていない。全く別のことを話しているかのような口の動きをしている。それが示すのは...なんだ?

 

『キネットちゃん来てるよ!』

 

そうだ今は考えている場合じゃない。終わりにしようという言葉が本気ならば、全力を込めた策で来るはず。これを乗り越えれば、スキルの謎について考える時間もできて、戦況が有利になるはず...絶対に乗り越える!

 

神の使いはこっちに来る。転移で逃げられてもすぐに追えるようにだろう。対してカイスの英雄は、回避に専念するために空を飛んでいる姉さんに向かって魔法の標準を定めている。どちらかを潰せば...!ひとまず転移で回避!死のタイミングをずらす!

 

「今、転移しようと思ったろ?」

 

「あグゥ...!!」

 

略だ、つで転...移を...⁉︎

 

『姉さん生き残って...!』

 

『任された!』

 

キネットちゃんが略奪で転移を封じられた。多分、致命傷は避けられない。だから私がなんとしてでも生き延びて、再生まで耐えなければ...!

 

私はニアからの魔法さえ防げばそれでいい。だから私とニアとの間に魔法拡散を設置しておけば、必ず生き残れる!

 

「無駄だぜ?」

 

「なっ...⁉︎」

 

カリヤが、私に向かって刀を投げてきた。キネットちゃんを攻撃するんじゃなかったの⁉︎でもこれなら手を犠牲にすれば...

 

「んぐッ!!!」

 

右手にグサリと刀が刺さる...が、貫通はしない。カリヤの能力の範囲外にいたおかげで、速度が落ちていたからだ。あとはニアの魔法だけど、もう既に対処済み...!

 

「あ゛あ゛ッッッ!!」

 

キネットちゃんの悲鳴が聞こえた。前を見ると、いつのまにかカリヤは落下していて、それによって空いた射線を通してニアが魔法を放っていたのだ。心臓が完全に撃ち抜かれている。致命傷だ。けど...

 

「乗り越えた!まだ戦いは終わらない!!」

 

元からカリヤの狙いは私で、ニアの狙いはキネットちゃんだったのだろう。だけど、カリヤは失敗した。私は死んでいない。キネットちゃんは再生して、まだ戦いは続く!

 

「いや、もうチェックメイトさ」

 

カリヤが、二つの魔法スキルを使うのが見えた。心の中で唱えていても、魔族にはわかってしまう。

 

それは、私たちへの死の宣告だった。

 

気がつけば、私の胸には穴が開いており、心臓が消滅していた。

 

私もキネットちゃんも、ほぼ同時に同じ致命傷を負った。

 

本当の死が、来る。




魔族目線になって、主人公が奇妙な技を使って攻めてくるのを描写してみましたが、ひたすらに難しかった...何が起こったのかは、次回にちゃんと説明しますね。

次回は魔王城に入るくらいまで行くかな...そういえば結構前の後書きに、サーマルの能力が判明したら能力と魔族の名前の関連性について解説すると書いたのをすっかり忘れていましたね。
前書きに長々と書いちゃったことだし、次回の後書きにでも書こうかなと思ってます。
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