前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
前回後書きで書いた通り、魔王城に入るまでです。
「な、ぜ...」
心臓を失った二人の魔族は、力無く落ちていき地面に叩きつけられる。
「なぜって、どうして自分が死んだかってことか?」
「それ以外に何があるってんの...!」
黒い壁が無くならないのを見るに、こいつらが完全に死ぬまでは魔法は解除されないのだろう。なら、塵となって消えるまで、話に付き合ってあげてもいいだろう。解説パートに入ろうか。
「……随分余裕そうだし、どうやら相当残された時間は長そうだな。どこから聞きたい?」
「なんで私も心ぞ「あの謎の言語から説明してくれませんか?」……キネットちゃんが言うなら」
「丁寧語に戻ったな...そいつは少々説明が面倒だが、まぁ俺が喋ってる言葉はみんなが普段使っているものとはまるっきり別物だと考えてもらってくれて構わない。この世界で使いこなせるのは、俺とニアだけだ」
「……まさか、常にそれを使っていて、なんらかの手段でそうだとわからないように偽装していた...?」
「察しがいいなキネット。揃いも揃ってバカだが、流石にサーマルよりかは賢いな」
「御託は結構よ早く話しなさい」
「へいへい...ここに石があってな。俺の言ったことを、この世界の言語に翻訳してくれる便利な代物なんだが...その効果を切れば、お前らには意味不明な言語がそのまま届くようになる。それに魔法陣での魔法を掛け合わせれば、増幅できない特別な魔法があるんじゃないかって勝手に勘違いしてくれるってわけだ」
「魔法陣やスキルなら問題ないというのは、いつ気づいた?」
「んー...日本語使ってハッタリを仕掛けようと考えた時に、もしかしたらーって思ったんだよな。発動後しばらく経った魔法を増幅できない理由を推測して、これなら行けるんじゃねって思ったんだ」
「なるほど...」
「んで、魔法陣だとバレた後は、スキルに切り替えた。その時にお前らが味わったあべこべ地獄も、この翻訳の石を利用した結果だ」
そう告げたら、よくわからないといった顔をされた。まぁそりゃこれだけで伝わるとは思ってないがな。
「翻訳はな、自由に弄れるんだよ。俺が同じ言葉を言ったとしても、俺の意志で変換先を変えることができるのさ」
俺がやったわけではないが、実際に翻訳を変更した例がある。それぞれの町から一人排出される勇者の仲間を、わかりやすくするために神様が英雄と翻訳し直した、というものだ。その例があったからこそ、俺は戦闘中に翻訳を弄ることができた。
「本当は鎌鼬と声に出したのに、お前らの耳には障壁と聞こえるようにした。他にも、火球を閃光にしたりと色々やったさ。時にはそのまま翻訳したりしたが、すごい混乱しただろ?」
「……ええ。翻弄されっぱなしだった。最後の方には、口の動きと声が連動してないと気付けたのだけれど」
「惜しいところまで行ってんな...あのタイミングでトドメに移ってよかったぜ」
「それよそれ。なんで私まで死んだのか意味わかんないし、早く説明して」
「死にかけなのにすげぇ態度してんなお前...」
よく今の状況で俺のことを急かすってどういう神経してるんだサーマル...と思いながら俺は話し続ける。
「順を追って説明...つっても、最初から俺がサーマル狙いで、ニアがキネット狙いだったのは流石にわかってるよなもう」
「ええ、聞きたいのはなぜ姉さんも死んだのかよ。刀を投げつけただけでああなるわけがない」
「普通はそうだけど、二人を同時に殺すには刀を投げるのが必須で、実質あれをしたからサーマルは死んだんだ」
もったいぶらずにさっさと言えという魔族たちの目をひしひしと感じながら、話し続ける。
「俺は二つのスキルを使ったんだ。一つ目は...フロートから聞いてるかもな。
「……あっ!ギルドで会ったことある人がそんな名前の魔法を使うって言ってたような...」
「んあ?サーマルがそう言うってことはフロートからは聞いてねぇのか...」
「なんで言ってないんですかアイツ...」
キネットも不思議がってるけど、なんで言ってねぇんだ...?それのせいで負けたようなものだから、言うのを渋ったのか?それともあれか?俺がその魔法を使ったわけじゃないから報告しなくていいとでも思ったんだろうか。
「じゃあ魔法の説明からか...この魔法は、発動者自身が傷付けた相手と自身をシンクロさせる魔法だ。ここでいうシンクロってのは、互いの傷を共有するって意味だな。これを使ってたナルミって人は、自身が既に抱えていた障害を相手にも共有することでダメージを与えていた。相手が負ってた傷もこっちに来るから、最低限の傷にするために鞭を使っていたっけな」
人魔戦争が始まる前に、俺はナルミからこの魔法を伝授してもらっていた。一応使うかも程度で、俺が致命傷を負ってもう助からないなんてことになった場合に、相手を道連れにするために使おうと思っていたのだが...まさかこんなふうに使うとはな。
「……それだと私の手の傷がカリヤにも付くだけじゃないの?」
「そこでもう一つのスキルさ。お前らが負ってる胸の傷...似てると思わねぇか?なんなら、キネットの手にも傷があるぜ?」
「っ...よく見れば、確かに同じ傷...」
「……まさか、もう一つのスキルって...!」
「そう、魔法改竄さ。同調魔法に魔法改竄を使い、自己と対象とのシンクロから、他者と対象とのシンクロへと改竄した。キネットが負った致命傷を、サーマルにシンクロさせるためにな」
これが土壇場に編み出した、赤髪姉妹対策。同時に二人を殺す複合魔法だった。
「これでも完璧な同時は不可能だ。シンクロにはほんの少しタイムラグが起こってしまうから、シンクロが発動する前に致命傷が回復してしまえば意味がない。それを回避するために、キネットに近づいたのさ。まぁ、真下にいればギリギリ範囲内に入ってたから早々に降りたけどな」
「貴方が私の方に来たのは狙いを誤魔化すだけじゃなかったと...」
「……別に言わなくてもいいかもだけど、一応補足しておくわよ」
これまでずっと口を閉ざしていたニアが、急に話し始めた。
「こいつ、最初は一人でこの作戦をしようとしていたのよ。途中で、一人でも倒せるんじゃないかだの言ってたでしょう?その時にはもうこの策を思いついて、私に伝えてきていたわ」
「一人でやる...とは?」
「略奪で転移を封じてからキネットを刀で切り伏せ、同調魔法と魔法改竄をしようとしていたのよ。少しでも魔法改竄が遅れれば、自分が死ぬってのにね」
そうだ。最初に俺がやろうとしていた方法では、魔法改竄が遅れれば普通に同調魔法が発動し、俺とキネットがシンクロして死ぬことになった。まぁミスるつもりはさらさらなかったわけだが...
「そんなギャンブルをさせるわけにはいかないから、私がキネットを超光速弾で撃ち抜き、カリヤがサーマルを傷つけるって作戦になったのよ。ほんと、無理しようとするんだから...」
「助かったよニア。満足に魔法も使えないのによくやったな」
「当然よ。私最強だもの」
どこの無○限使いだよ...まぁ最強の魔法使いなのは確かだな。
「……ってなわけで、お前らが死んだカラクリは以上だ。わかったか?」
「理解はしました。理不尽すぎて、納得はできていませんが」
「凄いこと考えるなぁとは思ったよ。正直考え方とかやってることはこっちよりだよね」
「言ってくれるなぁ...まぁ魂に能力が刻まれてる共通点あるし、魔族と言われればそうなのかもだが...」
「あーもう疲れた。さっさと魔王様のところ行こうよキネットちゃん」
「そうですね。最後の仕事をしなければ」
「やっぱりお前ら、まだ何かあるんだな...察しはついてるから聞きはしないけど」
アクセルの話と今の言い方からして、魔王に取り込まれるとかなんだろうなやっぱり。魔族たちの固有能力を使ってくるとしたら...面倒極まりないな。
「ってかよ。何勝手に朽ちようとしてんだまだ一つネタバラシが残ってるぜ?」
能力で干渉し、塵になる速度を抑えて無理矢理魔族たちを引き止める。
「ちょっ、何すんのよこっちはもう行きたいの!」
「お前らのことをずーっとバカバカ言ってた理由知りたくねぇの?」
「……イラつくから聞きたくない」
「妹的にはどうだ?キネット」
「……姉さんはともかく、私がバカにされることに納得がいっていないので説明お願いします」
へあっ⁉︎と今にも言いそうにしながらサーマルがキネットを見るけど、正直キネットがこういうこと言うの今に始まったことじゃないしいちいち反応するなよと思う。
「まず聞きたいんだけどさ、二人の再生能力って、離れてても再生に時間がかかるくらいで、別に再生できなくなるってわけじゃないんだよな?」
前に、フロートがキネットの姿をしながらサーマルを引き連れて俺たちに襲い掛かってきたことがあった。その時に俺はサーマルを一度殺したのだが、奴は普通に再生して復活した。本物のキネットはガネルにいたはずで、なんなら俺がサーマルを殺した場所は次元転移の空間内だ。どう考えても遠い距離なはずだが、サーマルは再生できていたから、距離は再生の可否には関係ないとわかるわけだ。
「そうですが...それがなにか?」
「距離に関係なく再生できるってことはさ、二人が壁の中に入る必要なくね?」
「「……へ?」」
「キネットが壁と魔法拡散を貼って外に待機して、サーマルが中で固有能力を使いながら戦う。もし何かしらの方法で外に逃げられたら、すぐに転移で中に引きずり戻す。そうすれば、俺らはサーマルしか攻撃できないから、完全に殺すことができずジリ貧になる...間違ったこと言ってないよな?」
「「……」」
「俺らを完璧に詰ませる方法があるってのにそれを思いつけないんじゃ、バカって言われてもしょうがないよな?俺だって思いつけるんだぜ?魔族って人間並の知能があるはずなのに、なんで気付けねぇんだよ」
「……まさか、そんな方法があるなんて...」
「ガチで魔族に向いてるよカリヤ...」
うわ、ガチへこみしてるぞこいつら。そりゃバカって言われても仕方ないって顔してるわ。
「俺ってさ、四天王方式が嫌いでいつも全員一気にかかってこいよなんで一人ずつ来るんだって思ってたけど、今回ばかりは一人ずつの方が良かったよな」
ようやく二人で襲いかかってくるちゃんとした魔族が来たと戦闘の始めの方は思ってたけど、ほんとよくよく考えると一人ずつの方がいいんだよなこいつら。まぁ、ガチで一人ずつ来られてたら詰んでたからこれでよかったけど。途中で言ったら絶対実践してくるだろうから戦いが終わった今しか言うタイミングないせいで、ずっと言いたくてウズウズしてたわ。
「というかもう死なせて...その作戦思いつけなかった自分が恥ずかしい...」
「カイスやガネルでの戦争はお前らの仕業だし、なによりもカリスの惨劇はお前らも片棒を担いでいるんだ。正直、その報いとしては全然足りねぇぞ」
「「ヒッ...!」」
「じゃあなお前ら。またすぐ、会いにいってやる」
速度操作を解除する。
次の瞬間、魔族たちの身体は完全に塵となる。黒い壁も消え、それによって開いた道を通り、塵が外へと飛んでいく。
「ふぅ...めちゃ疲れた...」
「そうね...でもここで休んでも意味ないわ。休むにしてもどこかに移動を...その前にライトたちと合流ね」
「だな...」
「カリヤー!ニアー!」
「……探す手間が省けたな」
どうやら大空洞の直ぐ近くにいたらしく、四人ともこちらに駆け寄ってくる。
「二人で倒しちゃったの⁉︎すごーい!!」
「すごいだろーって疲れてるから飛びかかってくるのはやめて⁉︎」
勇者選定の時みたく飛びついてきたステラをヒョイと避ける。流石に今来られたら受け止められる自信はない。
「六人でも倒せるかわからなかったのに、よく二人でできたね」
「半ばチートじみた合わせ技をしたからな。それでも苦戦は強いられたが...」
「あ、そうそう。これ返しておくわよ」
ニアから魔道具を受け取る。これがなかったらやばかったよな...影の立役者だな。
「ありがと。どれくらい使ってくれちゃったかな〜」
『
魔道具が俺の中に入っていく。
「……まぁまぁか。これなら魔王討伐までは持ちそうだな...さて、こっからどうしようか」
次元収納の中身を確認した俺は、みんなにこれからの話をする。
「ひとまずニアの魔力回復は必要だと思うんだが...」
「そうね。一旦山の外に出て、聖域展開で回復しましょうか」
「ここじゃ魔王城の真下なせいでできないからね。降りようか」
「さんせーい」
全員で山を降りることにした。まずは大空洞を抜けて...と。
「そういやみんなさ、転移されたあと何してたんだ?」
「中に入れないから、一旦降りて魔物倒してたよ」
「ほら、壁のところの魔物だよ。一応数を減らしておこうと思って倒してたんだ」
「自発的に戦ってたんか...休んでくれてもよかったのにな」
「二人が頑張ってるのに何もしないなんて嫌だもん」
「そう言われると何も返せねぇわ...」
それでも休める時には休んでほしいというのが本音だが、これも俺の思いだ。ステラの思いを踏み躙ってまで押しつけるようなものではない。今元気なんだからそれでいいのだ。
「でもちょっとやりすぎちゃったかなー雷装を使いすぎてスタミナちょっとヤバいわ...」
「んじゃあ魔力回復だけじゃなくて、本格的な休憩が必要かもな。魔族は全員倒したわけで、突然転移で町が襲われるなんてことはなくなった。魔王自ら動くことはないだろうから、危険は魔物だけ。魔物だけなら普通の冒険者にも倒せるだろうし、ガッチリ休憩する余裕はあると思う」
「魔王が動かないって、ちょっと希望的観測すぎない?」
「そうでもないぞ?だって魔王城から出ちゃったら、俺ら六人以外とも戦わないといけなくなるだろ?流石の魔王も数の暴力はキツいだろうし、出てこないと思うぜ」
どれだけ人間が集まっても魔王に敵わないとしたら、最初から魔王自ら進軍してくるだろう。俺ら六人しか入れない魔王城に篭っているのは、あまりにも多くの人と相手取るのが難しいからに他ならない。
「ガッチリ休憩って言ったって、どこでするのよ。あとガッチリって具体的にどれくらいなわけ?」
「どこって、聖域だろ。完全安全圏で休まないと普通に死ぬわ。で、長さは...あんま考えてないな。別に朝まで休憩でもいいと思うけど、どうだろ?」
「あ、できれば夜のうちに魔王と戦っておきたいかな...」
「どうしてだ?ステラ」
「ほら、夜の間ならいくらでも指輪に魔力を貯められるから安全かなって...あっ、でもそれは私だけの話だから、時間とって休んでくれても大丈夫だよ!」
「……いや、朝までの休憩は流石に長すぎだから、自分で言っといてなんだが却下しておくわ。朝までまだまだ長いし、起きてすぐ戦えるとも思えないし」
まだ朝まで十時間弱ある。戦争開始から五時間ほどかかったわけだが、それの二倍もかかるわけだから朝までの休憩は長すぎる。
「カリヤの加速もあるし、長くても一時間も休めば十分じゃない?」
「だな」
「よし時間も決まったことだし、聖域に行こっか!」
ステラが前に出て歩き出し...
「あれ?聖域どこ?」
「……あっ。そうだった聖域の位置が変わってんだった...」
あれだな、魔族と二連戦を繰り広げたわけだから、疲れてちゃんとした思考ができなくなってんのかもな...あとあれだ、魔素の濃度が濃くて気持ち悪いのも原因の一つだろうな。
「王都とかも聖域じゃなくなってるだろうしなぁ...聖域だってわかってんのは元魔王の山だけど、あそこにもう一回行くなんて思ってないからゲート開けてないし...」
こうなるんだったら開けておきゃよかったな...普通に向かうにしても、一番近いガルムに転移したとして、そこから十分近く走んないといけないし、そこから山登りまでしないといけない。休憩するまでの間に疲れ切ってしまいそうだ。
「……はぁ、仕方ないわね」
ため息をついたニアが、話し始める。
「あの場所なら、一応ゲートを開けておいたわ。だから行こうと思えば行けるわよ」
「……ニアさんマジ神」
「とは言っても、魔力切れのせいですぐにはできないけどね。ポーションも尽きちゃったし」
「なら私が魔力を分けるよ!」
「それはしなくていいわよ。ライトいるんだから、一旦ここで聖域展開すればいいじゃない」
「あ、そうじゃん」
ステラもだいぶ頭が回らなくなってるな...みんなも疲れてきてるんだな。
「じゃあ頼んだわよ。ライトもカリヤもね」
「ニア一人だけならこれでいいかな...ほら近づいて」
ライトは聖剣展開を発動して、鞘を変形させて刀身を作り出す。確かにニアを回復させるだけなら、聖剣の周囲の魔素を常時変換し続けるこれで十分だな。ほんとに近くにしか影響を与えないから、魔王城の中でも使えそうな回復手段だ。
「じゃあ加速させるぞー」
聖剣の周囲の聖素によってニアの魔力が回復し出したため、その速度を加速させる。元々大体魔力が回復していたのもあって、少しすれば...
「よし、回復しきったわ。ここまでくると一回に増える量も相当なものになったわね...っと、そんなこと言ってる場合じゃないわね。今ゲートを開けるわ」
ここにも一応ゲートを作っといて...と言いながらニアは次元転移を発動した。
「よーし、休憩しに行くか」
開いたゲートを通り、俺たちは元魔王の山の聖域へと向かうのだった。
「みんな大丈夫だな?」
「うん!元気満タン!」
「最初の想定よりも休憩長くなったし、カリヤの加速も合わさればそりゃ疲れも吹き飛ぶわよ」
「上から俯瞰して状況を見れたってのが大きかったよな。意外となんともなかったのには驚いたがな」
元魔王の山はそこまで高度が高いわけではなかったはずだが、なぜかこの世界を一望できるような景色になっていた。その土地自体に何かしらの魔法的な効果が備わっていたのだろう。そのおかげで、王都やガルムなどの町がそこまで被害が出ていないことが確認できた。カリスが酷い惨状になっているのも見えてしまって、少し心が沈んでしまったりもしたが...ひとまず急ぐ必要が無さそうとわかったため、休憩時間を長くしたわけだ。
「なんともなかったってのは嘘でしょ。カイス動いてたじゃん」
「そういやそうだったな...びっくりしすぎて記憶から消えてたわ」
どういう原理か知らないが、カイスがゆっくりとだが町ごと移動していた。何を言ってるかわからないと思うが、俺もそれを見た時は夢かと思った。ニアが言うには、聖域の場所を目指して移動してる...と言ったけど、まずはなんで町ごと動けるのか説明してほしかった。どうせ魔法なんだろうけど。
「あっ、そうそうニア。俺のポーション分けとくわ」
「……変な改造してないわよね?」
「してないし、先に言っとくけど自作じゃないからな。ちゃんと市販品だ。超回復薬じゃねーんだからさ...まぁ作ろうとしたことはあるけど」
少量の液体に、大量の魔力を封じ込めて勝手に霧散しないようにするのは非常に難しかった。ただ魔力操作が得意ってだけじゃ作れないんだな...職人ってすげーや。
「そういや超回復薬アクセル戦で使い切っちゃったんだよな...」
「えっ、あれって使い切るとかあるの?何倍にも薄めて使うものなんでしょ?」
「そうだけど、原液のままアクセルにぶっかけて攻撃に使ったわ。用量を誤れば癌になるってね」
「……訳のわからないことをするのは相変わらずね」
「いい加減慣れろ。この世界特有の慣れの力はどこいったんだ」
「許容量を完全に超えてるわよもう...無駄な話は終わりよ。準備は済んでるわね?」
全員頷く。一度魔王城に入れば、魔王を倒すまで出ることができなくなる。後戻りができなくなるわけだが、みんなの様子を見るに覚悟は決まっているようだ...次元転移でワンチャン出れるんじゃねという疑問は一旦閉まっておこう。今それを言い出したら覚悟が霧散しそうだ。
「じゃあ...入るぞ」
俺たちは恐る恐る扉を開け、中へと足を踏み入れた。
予告通り、魔族のネーミング解説します。
まず、以前にも書いた通り、魔族たちは何かしらのエネルギーや力から名前が取られています。
アクセルは加速度のアクセラレーションから。
能力は肉体強化ですが、ほとんど加速能力として使っているのでそのまんまな名前になりました。
フロートは浮力から名前を取っています。
村の名前のカリスから連想したのもありますが、彼の能力の模倣能力は大量に他者の情報を内に溜め込むことになるため、自分の存在が希薄になる...存在が浮いている、みたいなニュアンスがあります。
模倣によって一年以上成り代わっていたトルクも、トルク力から命名されています。
サーマルは熱エネルギーから。
能力は各種エネルギーの増幅ですが、いろんなエネルギーの中で変化しやすいものが何かと考え、熱エネルギーからの命名になりました。
キネットは運動エネルギーのキネティックから。
転移能力なので、物が移動する時のエネルギーである運動エネルギーから取りました。
一応エネルギー系の名前で統一してはみましたが、能力との関連付けがこじつけっぽいかも...?