前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
魔王戦二話目です。
魔王の戦闘スタイルは、妨害を振り撒きながら相手の実力を解析し、最適解で相手をボコす感じです。
いかに解析させず、最適解の行動を取らせないかが勝負の鍵ですね...シレンの穴で経験した諸々が出てくるので、読み返してみるのもありかも?
すみません予約投稿をミスしていて0時に投稿されてしまっていました。
気づいた時めっちゃ血の気引いた...以後気をつけます。
「う、腕が...!」
「ニア!治療頼む!」
「了解よ!」
レストの防御が貫かれたことで、俺たちの間にこれ以上ないほどの緊迫感が現れた。知らず知らずのうちに、俺たちはレストなら魔王の攻撃でも受け止められると、そんな甘い考えをしてしまっていた。致命的な油断。過ぎてしまったものはしょうがないと、すぐに切り替えて各々できることを実行する。
ニアがレストとクミリアのところまで走り、治療しに行く。当然魔王が妨害しに行こうとするだろうが、そのタイミングでステラが無心の弓を放ち、魔王に回避行動を取らせる。
「行かせない!」
「魔力消費ほぼゼロで連射してくるとは、いい適性を持ってるではないか。魔王軍に欲しい逸材だな」
そう言いながら、魔王は六つある腕のうち二つを使い、弓を構えるような姿勢を取った。まさか、同じ無心の弓...⁉︎
「させるかよ!」
超光速弾を放ち、矢を持つ側の腕を吹き飛ばす。これで撃てないはず...いや、すぐに別の腕を⁉︎
「贄の弓」
そう魔王が言うと、矢を掴んでいる方の腕が粉々に砕け散って矢の形を成し、ステラに向かって飛んでいった。
「死なせない!」
ライトが先回りしていた。聖剣展開させた状態で矢を切り裂き、反転聖素によって丸ごと消滅させる。ただの矢ではなく、魔王の肉体をもとにしたものだからこそできた防御だ。
「肉体を贄に矢を放つ...か」
そんな魔法があることすら驚きだが、あの魔法は魔王と恐ろしく相性がいい。魔素を使って肉体の再形成ができる魔王にとって、贄なんてほぼノーコストだ。身体に負荷がかかる魔法なども、思う存分使えるだろう。最悪、自爆までできるかも...どんな新魔法が飛んできてもいいように、一挙手一投足に気をつけなければ。
「まぁいい、テメェの相手は俺だ!!」
4571ページ 黒のみ 触手・水
『雷装』
「九尾!貫け!」
雷装魔力で覆った触手の剣を魔王に叩きつける。
「なかなか面白い技を使うな。だが、貴様に付き合うつもりはない」
クソ、空間拡大の防御をこれじゃ超えられねぇ!無視して他のみんなのところに行こうとしやがる!
「……おおっと、忘れていた。再生阻害を発動せねばな」
「なっ、絶対止める!」
9926、9927ページ 黒のみ 魔法拡散
魔力を注ぎ込み、魔法拡散を魔王を囲うように発動させる。再生阻害なんて魔法、使わせるわけにはいかない。
そして、空間操作は魔王城の構造変化の応用なため魔法拡散じゃ止められないのはわかっているけれど、さらに攻撃を畳み掛けて注意を逸らす。空間拡張の防御は高度な技のはず。魔法を使う隙を与えなければ...!
「無駄だ」
なっ、触手が解除され...魔法拡散を上書きされたわけじゃないし魔法改竄か!
魔法改竄によって俺の魔法拡散の対象が俺自身になってしまったため、触手が消滅する。そして、自らの魔法によって改竄された魔法拡散自身も解除されてしまう。俺がやったような二重の改竄でなかったため、俺が爆散するようなことはなかったが...魔法拡散が解除されたことは大問題だ。
魔法を封じていた枷が無くなり、魔王から波動が放たれる。回復阻害の波動。これを受けたら、レストの腕は...!
「カリヤナイスよ!治したわ!」
……よかった。決死の時間稼ぎのおかげで、ギリギリのところで治療が間に合ったようだ。
「運がいいな。まだ自身での治療は封じておらぬから、そこまで焦る必要もなかったのだが...やはり焦る人の顔は面白いものよな」
「テメェ...!」
「怒るのはいいが、防御が疎かだ」
ザンッ...!
俺の首筋から、血が噴き出した。
「鎌鼬...!」
怒りのせいで気付くのが遅れたために、鎌鼬によって首筋に切り傷が走った。しかも運が悪いことに、動脈がバッサリといかれている。だが、まだ自身での再生はできる...それをわからせるための攻撃か!
5092ページ 黒 青 再生
「舐めやがって...!」
カスタムで首筋だけに再生を集中させ、治療する。出た血の量は...これなら戦闘には支障ないだろう。逆に攻撃に使ってやるまでだ。
6799ページ 黒のみ 血液操作
「喰らえ!」
飛び散った血を操作し、魔王に向かって放つ。
「……なるほど、目隠しか」
魔王に当てられるとは最初から思っていない。魔王に覆いかぶさるように薄く広げてぶっかけ、空間拡大によって生じている不可侵領域に沿うように血液を付着させる。端的に言えば目隠し。魔王が何か行動を起こさなければ、血液が魔王の視界を塞ぐ。
「まぁ、バレても構わぬか」
そう言いながら、魔王は一歩...触手だから一歩ではないが、前に進んだ。その瞬間、空中で静止していた血液がドバッと地面に落ちた。
「予想通り...!」
おそらく魔王の空間拡張防御は、移動時には解除する必要があるのだろう。というか、解除しなければ自らが拡張した空間を進まなければいけなくなるため解除するのは普通か。魔王が移動中なら、攻撃が当たる...かも?
「バレたところで、どうにもならんしな」
そう言い、レストに向かって移動し始めた魔王。無防備にも俺に背中を向けているわけだが...はたして、攻撃しに行ってもいいものか。
「ここは遠距離で...!」
魔道具を介して次元収納にアクセス、貯蔵された魔法を取り出して魔王に向かって放つ。
……が、なぜか魔法はピクリとも動かない。いや、前に進む速度はきちんと存在している。空間拡張のせいで、前に進んでもすぐに戻されてるだけ...!
「おや、魔法が発動した様子はなかったはずだが...貴様何をした?」
下半身の触手を器用に使ってこちらに向き直した魔王は、不思議そうに問いた。そして空間縮小で一気に距離を詰めてきて...
か、身体動かない⁉︎そうか前後左右全て空間拡張されてるから走っても大した距離が稼げないのか!回避は不可能。なら盾で逸らすしか...いや待て!レストのアレ的に盾の効果は...でももう動いちまった後戻りできねぇ!
「ふぬぅ!」
軽く情けない声を出しながら、なんとか盾を魔王の攻撃に突き出すことに成功する。
「……へ?」
魔王が盾の効果を受けてすっ飛んでいった。びっくりして、またもや変な声が出る。
「なんで...?」
レストの防御を貫通された理由をずっと考えていて、ちょうどほんの少し前に思いついて出した結論だと起こり得ないはずの現象に、驚きを隠せない。
俺が出した結論はこうだった。レスト一人で挑んだ九十三階層で、ボスが使ってきたような魔道具の効果無効。それによってレストの盾にある不可侵領域を破って攻撃した。シレンの穴の目的を考えると、これが一番理にかなっていた。
しかし、俺の持つ盾に備わっている、逸らす力はそのまま発動した。そのせいで、魔道具の無効という仮説は瓦解してしまった。ならなぜ、レストの防御は破られたんだ...?
「油断、か。回避不可能にすれば仕留められると考えたのは浅はかだったな」
「ああ、浅はかさ。なんならもう一度来てもいいんだぜ?返り討ちにしてやらァ」
よくよく考えれば、魔王は俺に攻撃するために空間拡張の防御を解いていたはずだ。攻撃の瞬間に合わせて、その部位に攻撃すればダメージ出るはず。さっきのは逃げずに立ち向かうのが正解か...!
「遠慮しておこう。まずは倒しやすい者、なおかつ余を倒しうる者から仕留める」
「っ、それでレスト狙いかよ!」
魔王は、レストの盾に反射の魔法が備わっていることに形状から気づいているらしい。カウンターはレストにとって一番の攻撃手段であり、なおかつ空間拡張の防御を無視して直接攻撃を叩き込める魔法だ。それを発動させまいと、魔王はさっきのように盾の効果を無視して攻撃し、腕を破壊しようとしているのだろう。
「レスト!」
俺がレストの名前を叫び警告するのと、魔王が空間縮小でレストの目の前に現れるのはほぼ同時だった。そして、腕がレストに向かって振り下ろされる。
「……なに?」
魔王が少しだが驚く。レストが盾を使わず、地面を転がって攻撃を避けたからだ。
「まさか、あの経験が役立つと思ってなかったよ」
レストは笑いながら魔王の攻撃を避ける。あのボスとの戦いで身につけた、盾を使わない回避の技術で難なく攻撃を避けていく。
「逃すわけなかろう」
レストの回避行動が止まる。これまで避けれていたのは、俺が喰らったような空間拡張の妨害を受けていなかったから。盾で必ず防御するという先入観から魔王は発動していなかったのだろうが、回避され続けて流石に発動したようだ。
「言っとくけど、僕に二度目は通用しないよ」
レストは一度は盾を構えるも、すぐにその構えを解いて放たれた腕の側面に盾を押し付けて攻撃を逸らす。
「どの世代の英雄が使ったとしても、所有者しか触れることができないという盾の効果は共通してる。だから、その性質は僕たちガルムの人間よりも、盾の使い手と何十何百と戦ってきた魔王の方が知り尽くしている」
レストは余裕綽々で、解説までしだすほどの余裕さだ。二度目以降に強いとはいえ、ここまで適応できるのか。
「そのおかげで、この盾の不可侵領域がどの位置にあるのか、どのくらいの厚さなのかも把握している。さっきの攻撃は、不可侵領域がある空間を圧縮して無きものにし、剥き出しの盾にそのまま攻撃した」
……なるほど。それならレストの盾の効果を無視して殴れるのか。受け流しやカウンターなどの発動位置も不可侵領域がある場所だから、これも無視できる。そして、その方法では俺の盾の効果を無視することはできない...筋は通ってるな。
「けど、空間縮小が少し雑だ。盾を少し巻き込んでいるから、ほんの少しだけ盾が引き寄せられている。そのタイミングで盾をずらせば...!」
レストの盾が、真正面から魔王の攻撃を弾き飛ばした。
「慣れの極致...今代は揃いも揃って優秀だな。実に倒しがいがある」
「随分と舐めた口聞いてるけど、背中がガラ空きだよ!」
「きちんと魔法が発動しているようでなにより」
「っ゛!」
なぜか盛大に不意打ち宣言しながら魔王に攻撃したクミリアが、魔王に反撃されて吹き飛ばされた。防御が間に合ってるから心配いらないようだけど...何の魔法が発動してるって?
「そして解説ご苦労ガルム。褒美は死だ」
「なっ、声に出てた...⁉︎」
「そういうことか...!」
魔王がレストに攻撃しようとしている。多分もうレストの防御は通用しない。回避は封じられ、防御もできない。攻撃されれば終わる。
だから、攻撃されなければいい。
5114ページ 黒のみ 思考共有
大量の思考を魔王に送りつける。普段なら速度操作で得る情報も送りつけるところだが、それをして俺の能力を解析されたらたまったもんじゃないから、必要最低限に抑える。今はレストを救うことだけに集中する。
「一旦離れるぞ!」
レストを抱え、魔王から離れる。
「……ふむ、この魔法にそんな使い道があるとはな」
やはり情報量が少なかったため復活まで早いな。攻撃しに行かなくて正解だった。
「ねぇカリヤ。さっき僕声に出して色々言ってた?」
「ああ、バッチリとな。多分思考が声に漏れ出るような魔法でも発動されたんだろうよ」
いつ発動したのかはわからないが、レストが解説し出したのも、クミリアが不意打ちしようとしたのに声を出したのも、その魔法のせいだろう。これでは考えが魔王に筒抜けになってしまうから、作戦を練りずらいな...次の手を読まれてしまうのは相当辛い。
「……貴様、さっきからなにを言っているんだ...?」
……そっか。俺の思考も声に出てんのか。まぁ、超高速思考だから声に出るのも超高速だろうし、なんなら日本語だしで魔王に思考を読まれることはなさそうだな。
「こりゃ好都合。あっ、これ特殊な呪文なんで気ぃつけな」
レストを下ろした俺は、魔王に近づき刀を構えながら言葉を紡ぐ。
「そんなハッタリ通用するとでも?」
「ハッタリならよかったな」
ストックから魔法を放ち、魔王に攻撃する。どうやら魔王は魔法の発動を感知できるようなので、魔法を発動せずに使えるこの攻撃は魔王にとって意味不明な攻撃に見える。ハッタリである特殊な呪文、というのに意味を持たせられる。
「閃光に氷槍...魔法を使わずにしてなぜ放てる?」
警戒してくれれば、それだけみんなに余裕が生まれる。そうなれば、攻撃の厚みがどんどん増し、ライトから注意を逸らせることができる。切り札の必殺技が当たる可能性が上がる。
「……不可解だが、放たれる魔法がこの程度では話にならんな」
時折刀を振りながら攻撃していたのだが、またしても魔法が射出直後に動きが止まる。展開はさっきと同じだ。後ろも横も空間拡張のせいで避けられない。魔王が一瞬で距離を詰めてきて、拳を放ってくる。
「俺も、二度目は通じねぇぜ?」
7801ページ 黒 青 未来跳躍
魔王のいる方向には、空間拡張は発動されていない。その方向に跳躍すれば、魔王の攻撃は回避できる。
「転移...ではなく、未来跳躍か。0.1秒でその距離を飛ぶとは...やはり貴様の固有能力は加速能力か」
よし、まだ減速は見せてないから勘違いしてくれたな。まだどの範囲をどのくらい加速できるのかまでは見切れてないだろうし、この情報差を最大限利用しなければ...
「……いい加減煩わしいぞカイスの小娘。いくら放ったところで無駄だと知れ」
この戦闘中、ニアは魔王に向かってひたすら魔法を撃ち込み続けていた。仮に空間拡張によって止めたとしても、自身が動く時に邪魔になるため、魔王はニアが放つ魔法を全て魔法で撃ち落とさなければならなかった。その処理に追われていたがために、俺たちを攻撃するときは腕しか使ってこなかったのだ。
しかし、ここで魔王は動く。これまでは受動的な攻撃...同じ魔法ながらニアの魔法よりも火力を強めにして魔法を撃ち落としながら、その余波で攻撃する程度だった。けれど今は、ニアよりも数が多く多種類の魔法を放ち、魔法を撃ち落とすと同時に隙間を通してニアに攻撃を仕掛けてきた。
「どんな処理能力してんのよ...!」
魔法を発動する方法は大まかに、呪文を唱えるか、魔法陣を描くか、スキルを使うかの三種に分けられる。実際に口に出したりするか、脳内でやるかの違いはあるが、魔法はこれらのどれかをしなければ使うことはできない。
ニアは、脳内で複数個の魔法陣を描くことができ、なおかつその速度がハンパないからこそ世代最強の魔法使いなのだ。思考速度の加速を使える俺でも、魔法図鑑を使わずに脳内で魔法陣を描いて魔法を使おうとしたらニアよりも遅くなる。それくらいニアはずば抜けているのだ。
だというのに、そのニアを超える速度で魔王は魔法を使っているのだ。しかもそのどれもがカスタムされているのが見てわかるので、スキルで発動して短縮してるなんてこともない。これが、長い時を生きた魔王の実力というわけか...いや、たかだか二十年生きた程度で喰らいつけているニアの方がおかしいのかもしれない。
「けど、魔力補給できるからありがたいかも...!」
「魔法拡散使うなら気をつけろニア!」
一瞬だけ翻訳の石の効果を切り、日本語でニアに伝える。日本語が通じるようになったニアに指示するなら、魔王に内容がバレることのないように日本語で話すのがベストだ。ついでに謎の言語を魔王に聞かせることで無駄な警戒をさせられるしな。
「わかってるわよ!」
ニアは俺が言う前からわかっていたかのように、魔法拡散をほんの一瞬だけ発動して魔王の魔法を分解する。しかも、魔法拡散を使う時には効果範囲内に自分が入らないようにするという徹底ぶり。どちらも魔法改竄対策だ。
俺がやったような、爆散させる改竄は魔王の発想にないみたいだが、改竄されるとニアの魔法が分解されてしまう。ニア自身が範囲内に入っていれば、魔法拡散はおろか飛行魔法まで消されてしまうから気をつけなければいけない。範囲内に入っていなくとも、改竄された時点で魔王の魔法が素通りするようになるから危険だ。ゆえに、改竄されないよう一瞬だけの発動に止める必要がある。
「ふむ...余の魔力を使おうとするとはな、面白い。命知らずもいいところだ」
「っ、ニア!その魔力全て捨てろ!」
この日本語を聞いたニアは、急いで魔王の魔力を全て捨てて距離を取る。
次の瞬間、捨てられた魔力は魔法へと変わり、ニアに向かって放たれた。
「あっ...ぶないわねぇ!」
ギリギリで障壁が間に合ったようだが、その間にも魔王は魔法を放ち続けていた。ニアは障壁で魔法を抑えながら負けじと魔法を発動し、防御ではなく撃ち落とす方向にシフトする。
「遠隔で魔法にできんのかよ...!」
よくよく考えたら、今俺たちがいる魔王城は魔王とほとんどイコールで結ぶことができる存在だ。魔王城も魔王も魔素で形成されているものであり、魔王がこっちの山に移動する時に魔王城を取り込んでから移動していたから、同質の存在として見ることができる。
魔王城=魔王。言うなれば、今俺たちは魔王の体内にいる状態なのだ。魔王の体内なのだから、その中であれはどこに魔力が漂っていても魔法に変えることができるというわけだ。
空間操作も、魔王城の特性を生かしたものだしな。自身の身体であるがために、魔法として発動することなく大きさを変えることができる。魔法じゃないから、魔法拡散を使っても空間拡張の防御を貫けない。
……結局のところ、この空間操作をどうにかしない限り魔王を倒すことは不可能と言ってもいいな。必殺技は貫通できるにしても、ライトから注意を逸らすにはダメージを与えることが必須。そして現在、魔王に対して有効打を与えられたのは、俺の色彩剣装と超光速弾に、ステラの無心の弓、そしてクミリアが魔王の攻撃の瞬間に放った雷装...少なすぎる。これでは対処が簡単だし、警戒対象が少なすぎる。
「……って、ちょっと待て。そもそも注意を逸らしたところで当てられるのか?」
仮に、うまく注意を逸らせて、どう考えても避けられないタイミングで必殺技を放てたとしよう。空間拡張による防御は意味をなさない。無心の弓による後処理もちゃんとできるからそもそも不発になることもない。
けれど、空間縮小による擬似瞬間移動がまだ残っている。今はまだ攻撃にしか使ってないが、あれをされてしまってはどんな攻撃も避けられてしまうだろう。必殺技も例外ではない。
つまり、空間操作をどうにかしない限り、必殺技を当てることは不可能というわけだ。
……本当か?そう思い込まされているわけじゃないよな?いつのまにか思考が誘導されている可能性がなくはない。ありとあらゆる可能性を考えろ...
「考えるのはいいが、目の前が疎かだ」
「っ゛!」
日本語なせいで内容を悟られることはないが、思考している事実は伝わってしまう。当然思考している分警戒は薄れているわけで、速度操作に頼り切っている俺は、瞬時に目の前に魔王が現れたために反応が遅れてしまった。
俺の抱えている弱点を突かれた形だ。普通に能力適用範囲である七メートルの位置から迫ってきたなら、どれだけ相手が速かろうと対処できる余裕が生まれるが、空間縮小や転移などによって瞬時に距離を詰められてしまってはどうしても出遅れてしまう。
「んグゥッ!!」
盾をギリギリ滑り込ませることはできたが、真正面から受け止めてしまった。この盾は逸らすことに特化し過ぎており、真正面からの攻撃にてんで弱い。まるで元からそこには何もなかったかのように貫かれ、ほとんど威力を減衰させることができずに俺の腕に魔王の拳が突き刺さる。
7801ページ 黒 青 未来跳躍
「クソ...!」
幸い、腕は魔力体だ。多少の痛覚はあれど、腕へのダメージは無視できる。なんなら、魔力が弾ける力を利用して後ろに吹っ飛び、そこから未来跳躍を使うことで距離を取ることができた。
……が、ギリギリ回避が間に合っていない。ほんの僅かではあるが、胸まで拳が届いていた。骨が軋み、皮膚と筋肉がジンジンと痛む。
5092ページ 黒 青 再生
『製作』
傷を再生で癒しながら、腕の魔力体の置換を解く。ここまで来たらもう、不完全な魔力体を作って身を守るよりも、切断された直後に魔法で治した方が魔力効率が良いように思えたからだ。あと、破壊された盾も作り直しておく。
「まったく、少しは考えさせろよ...!」
「もう十分考える猶予は与えたつもりだが?そして、導き出される結論は余の勝利だ。揺るぎはしない」
「んなこたぁねぇよ。勝つのは俺たちだ...何があってもな」
再生を終えた俺は、また刀を構える。思考は...まだ止めない。俺にできることは、考えることだけだ。
魔王の強さをちゃんと描写できてるか毎日不安になる...強すぎてもダメ弱くてもダメ、みんな均等に活躍させないとダメ、強いけどやりようによっては戦える感じで...と考えること多すぎる。
世の作家さんたちはよくもまぁ強いラスボスを考えつきますねぇ...ムズすぎ!