前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8226字。

魔族の力を取り込んだ魔王戦です。
ただもう一回魔族と戦ってるような構図にはならないようにしましたが...ちゃんとできてるかなぁ?


魔族の力宿し球体

黒い塵が魔王の中に入っていく。魔族の力が魔王に取り込まれていく。

 

「変身途中の攻撃は当たり前だよなぁ!」

 

刀を持ち、魔王に斬りかかる。空間操作はもうないため、普通に当たるはず...!

 

「変身中は無防備だという偏見はやめてもらおうか」

 

「……まぁよくよく考えたらそうか」

 

まだ完全に塵が入りきっていないが、普通に魔王は二本の腕を使い刀を受け止めた。確かに変身中は無防備っての偏見だな...

 

「そもそも、変身ではないのだがな」

 

殴りかかられたのでバックステップで避ける。その間に塵は完全に魔王の中に取り込まれた。

 

そして、魔王の中から四つの黒い球体が飛び出した。その四つの球体と魔王とはよーく目を凝らさないと見えないくらい細い線で結ばれており、魔王の周囲をフヨフヨと浮いて漂っていた。

 

「……なるほど、そいつが魔族の固有能力の結晶ってわけか」

 

球体を能力の核として自信と接続し、その能力を自由に扱う力。クミリアがシレンの穴で戦った相手がそんな感じの力を持っていたはずだから、関連させるとしたらそれだろう。

 

「けどそれなら、さっさと砕くまで!」

 

明鏡止水を発動中のクミリアが無言で後ろから走ってきたので、その速度を加速させながら自分もついていく。

 

『雷装』

 

「まずは一つ!!」

 

魔王の正面を漂っていた球体に近づき、二人で同時に拳を叩きつける。

 

「っ、びくともしない...⁉︎」

 

二人の全力パンチも虚しく、球体には傷ひとつつかなかった。殴られた衝撃で動くこともなく、ただフヨフヨと浮かんでいるだけだ。

 

そんなに強度があるものなのか...?いや、ここはもっと威力のある攻撃で!

 

『色彩剣装 原色・赤』

 

クミリアがそのまま殴り続けているのを横目で見ながら刀に赤い光を纏わせる。この魔法ならどんな守りも貫けるはず...

 

「ってマジかよこれでも切れねぇ⁉︎」

 

赤の光をもってしても球体は切れなかった。また傷ひとつついていない。今度は球体と魔王を繋ぐ線に斬りかかるも、これも結果は同じだった。

 

「破壊不可能オブジェクトかよっ!」

 

せっかく魔王に近づいたわけだし手ぶらで戻るわけにはいかない。一度帯刀して鞘に刀を押し込み、音速の抜刀を放つ。

 

「本体は普通に効くみてぇだな」

 

一瞬の抜刀に魔王は流石に反応することができず、左真ん中の腕を切り飛ばすことに成功する。どうやら傷つけられないのは球体と線だけらしいな...無視して魔王を叩くのが正解か?

 

「回復阻害...は効かないか。回復ってか新たに再構築してるからか?」

 

赤の光にはなんでも切れる超火力のほかに、傷口に回復阻害の呪いをかける力も備わっている。極度の再生能力がある場合は少しずつの回復を許してしまうが、並大抵の回復なら阻害できる。

 

だが、魔王の使う再生は魔素を使った肉体の再構築なため、回復とは違う扱いになり回復阻害の影響を受けないようだ。消耗させることはできるだろうが...やはり魔王を倒すには必殺技を使って一斉消去が一番か。

 

「全員魔王本体を狙...」

 

そう指示を出そうとした時、速度探知が異変を感知した。魔王の左側で漂っている球体の中に、魔族の魂を感じ取ったのだ。その球体はいつのまにか青色に変化しており、魔王と繋がる線も青くなっていた。

 

「この魂は...!」

 

アクセルのだ。

 

そう考えたその瞬間に、魔王が動いた。一瞬で俺の視界内から消え、速度探知内からも消え去る。

 

「   !!」

 

声にならないかすかな声。それを塗りつぶすかのような、肉のつぶれる音。

 

後ろを振り向けば、かつてステラだったものが散らばる中、魔王は次の獲物...レストを見つめていた。

 

「クソがァッッ!!」

 

雷装を足に集め、現状出せる最大速度で走り、なんとかレストに対する魔王の攻撃の妨害に間に合う。妨害といっても、ほぼ体当たりで無理矢理軌道を逸らしただけだが。

 

7713ページ 黒 赤 重力操作

 

俺たちを中心に周囲の重力を反転させ、魔王を引き離しつつ接近困難にしながら状況を確認する。

 

まず、ステラは無事だ。指輪の魔力により過去改変が起き、無傷の状態に戻った。だが、一瞬感じたであろう痛みのショックで混乱を引き起こしており、意識が朦朧としているようだ。しばらくすれば復帰するだろうし、まだ夜だから指輪に魔力を込めればまた力を使えるだろうけど...ハッキリ言って危険だろう。

 

次は魔王だ。完全にアクセルの力を使いこなしている。先ほども音速で移動してステラを一度殺し、レストも殺しかけた。いや、さっき速度探知で見たのが正しければ、厳密には音速には達していないはずだ。それでもみんなにとっては脅威的な速さだし、俺自身もバフ禁止によって全力疾走が使えない今は相手するのは辛いところがある。それでもやらないといけないが...

 

……ああ、アクセルは優しかったんだなと改めて思い知らされる。俺なんか無視してしまえば、みんな殺せていたんだ。それをしないで、唯一対等に渡り合える俺との勝負を選んでくれた。俺も、それに慣れて、甘えてしまっていたんだな。

 

「アクセルの力を...」

 

だから、こうやって倒せる相手から倒すために力を使うのは、どちらかと言えば正しいのだろう。しかし、思ってしまう。

 

アクセルならそんなことしない。

 

「そんなふうに使うんじゃねぇ!」

 

敵でありライバルであり友。そんなアクセルの力を、ただ暴力的に使われているのが嫌だった。アクセルならそんな使い方をしない。誰も殺さずにいたアクセルの力を人殺しに使って欲しくない。

 

アクセルと交わした約束。

 

またアクセルと会うために、魔王から魂を解放させなければ!

 

「ニア!全員障壁で囲って籠城してろ!アクセルの力とは俺がケリをつける!」

 

「……言いたいことはあるけど任せるわ!絶対に死なないでよ!」

 

「死なねぇよアクセルに会うまではなァ!」

 

クミリアがニアの方に戻ったのを確認してから、障壁が貼られる。もしかしたら普通に壊されてしまうのかもしれないが、それでほんのわずかでも隙を晒すのならば俺を狙ってくれるはずだ。

 

「来いよ魔王!テメェの相手は俺だ!!」

 

少量の魔力消費も時間が長くなるとバカにならないので、重力操作を切る。魔王を妨害するものが何一つなくなったため、即座に魔王がやってくる。

 

「ハァッ!!」

 

魔王の放つ拳に横から左手を当てて押すことで受け流し、右手に持った刀を使いすれ違い座間に脇下を切る。

 

「音速以下はもう遅い!」

 

受けに回れば、全力疾走がなくても防御に反撃までできる。だが、それは一撃目だけ。このまま近づかれた状態で二撃目を放たれたら無理だ。反撃を警戒して離れてくれれば...

 

「この速度に対応してくるとはな...」

 

よし!一旦離れてくれた!あっちがヒットアンドアウェイしてくれるなら好都合!的確に反撃を入れてやる!!

 

「速度がダメなら...」

 

……わざと速度を落とした...?音速の半分にも満たない速度でこちらに迫ってくる。速いけれど、これならさっきよりも対処は簡単...

 

「……っ!そっち優先させたか!」

 

赤の光は未だ継続中。なのに、回避後に反撃として放った下半身の触手への攻撃が失敗した。完全な切断には至らず、途中で刃が止まってしまったのだ。

 

アクセルの能力は加速ではなく肉体強化だ。魔王は加速を程々にし、肉体硬化に力のリソースを割くことで刀を受け止めたのだろう。

 

「だが無意味!」

 

刀を封じ込めたつもりなのだろうが、一度次元収納にしまってまた取り出すことで状況を脱する。赤の光は途切れてしまったものの、おそらく今ならなくても切れるはずだ。

 

「今解放してやる!!」

 

青く光っている今なら、あの球体を、アクセルの魂が封じ込められている枷を壊せるかもしれない。ゲームでたまにある、その能力を使っている最中にしか破壊できないアレだ。カー○ィ64のミラ○ルマター的な感じとも言えるな。その能力を引き出している今なら、脆くなっているはず...!

 

「ハァッ!!」

 

帯刀し、青い球体に向かって音速の抜刀を放つ。

 

……が、球体に当たった瞬間刀は折れ、外れた切っ先が弾け飛んでいく。いつのまにか球体は黒く染まっていた。アクセルの力を引き出すのをやめたのだ。

 

『製作』

 

壊れた刀をすぐに作り直し、魔王の方を向く。

 

既に魔王は別の球体から力を得ていた。魔王の背後にある赤い球体。内包されている魂は...キネットだ。

 

「……ってヤベェ⁉︎」

 

急いでみんなのもとまで走る。

 

だが、魔王の方が早い。魔王はキネットの転移の力を使い、ニアが発動した障壁の内側に入りこみ、また青い球体から力を得る。

 

障壁のせいでみんな思うような回避はできない。ニアは急いで障壁を解除したがもう手遅れ。亜音速の蹂躙が始まる。

 

「二度目は...させるか!」

 

走るがどう考えても間に合わない。ステラもまだ十分な魔力を込められてないだろうから攻撃は耐えられない。みんなもバフ禁止の中じゃ魔王の攻撃を受け止めることなんて...!こうなったら楔を打って更なる加速を!

 

「大丈夫だよカリヤ」

 

魔王の身体が勢いよくすっ飛んでいく。その原因は...もちろんレストだった。

 

「二度目は通用しない。もうあの速度にも慣れたからね」

 

「面倒な力を持っているな...ならば、初見の攻撃で潰すまで」

 

なにその摩○羅を倒す奴が言うようなセリフは...と思って見ていたら、光る球体が変わった。同じ赤色だが、魔王の右側の球体だからキネットではない。距離が離れているため魂の識別はできないが...おそらくサーマルだろう。

 

「ニア!!」

 

「わかってるわよ!」

 

魔力体を解除させて、サーマルの魔力暴走を回避する。サーマルの力は牽制としても優秀だ。普通に魔法を使えば暴発させられてしまうからな。だが、もう対処法は確立している。

 

『閃光』

『魔法復唱』

 

スキルで閃光を大量に放ち魔王に攻撃する。スキルなら暴走の心配はない。

 

「無駄だ」

 

閃光が障壁&サーマルの増幅によって防がれる。だが、今のは時間稼ぎ。さらにニアが魔法を放つことで魔王に防御をさせているうちに俺とライトの二人で接近し、攻撃を仕掛ける。

 

俺はそのまま真っ直ぐ魔王に向かって突っ込み、魔王前方の球体を足蹴にして跳躍し、上から刀で攻撃する。そしてライトは左から回り込み、赤く光る球体を狙った。

 

しかし、狙われているにも関わらず魔王はニヤリと笑いながら三つの左の手のひらから魔法を生成する。

 

そして、爆発。自身の魔法を増幅して暴走させることにより、自分を巻き込んでの魔法攻撃をしてきたのだ。

 

「チッ、めんどくせぇ...!」

 

ニヤつきながら魔法を出してきた時点で予想をしていたので、二人ともなんとか回避に成功する。

 

「って待て!」

 

俺らが魔王から離れてしまったため、魔王の移動を許してしまう。サーマルの運動エネルギー増幅により急加速した魔王は、レストに向かって突進する。

 

「その動きなら見たことあるよ...!」

 

レストは受け流しを発動させて魔王を弾き飛ばす...が、いつのまにか光る球体は魔王の後方のものに変わっていた。

 

「転移攻撃!」

 

レストに向かって叫ぶが少し遅かった。レストの真後ろに一瞬で転移した魔王が振り下ろした拳はレストの右肩を砕いてしまった。

 

「レストォッ!」

 

魔王に向かって刀を投げて転移で回避させ、レストから距離を取らせる。

 

「治せるか⁉︎」

 

「これくらいなら...なんとか...!」

 

左手で肩を押さえ、痛みに悶えながらレストはボソッと呟くように言った。レストは一応回復魔法を扱える。魔力銃の回復弾もあるし、自己回復の制限がかけられていない今なら回復できるはずだ。

 

「ってかヤベェなあの二つ...!」

 

キネットの転移に、サーマルのエネルギー増幅能力。二人のコンビ技にはなかなかに苦戦させられたが、一人で使い分けられるのも厄介だ。なによりも、同じ赤色の球体なせいでパッと見では今どちらの力を使えるのか分かりづらいのが厄介すぎる。

 

魔王との位置関係を見れば一応一目瞭然なのだが、あの魔王のことだ。実は自由に動かせるのにわざと位置を固定させていて、俺たちが位置で見分けるのに慣れてきた段階でごちゃ混ぜにするとか平気でしてくるだろう。球体に何かマーキングするなりして、一目で見分けられるようにした方が良さそうだ。

 

「……づっ!」

 

俺の背後に魔王が転移してきて、思いっきり腕で弾き飛ばされた。先に飛ぶことで威力は落とせたが、レストから強制的に距離を取らされてしまった。

 

7801ページ 黒 青 未来跳躍

 

「させるかってんだ!」

 

0.1秒の跳躍でレストの近くまで戻り、魔王の攻撃を次元収納から取り出した盾を使いなんとか防ぐ。一度使えば壊れるが、それと引き換えに絶大な防御性能を叩き出せる盾だ。天然の魔道具なため製作で作ることができず、できれば後まで取っておきたいものだが仕方がない。

 

「変えられる前に...!」

 

今は魔王に隠れて見ることはできないが、速度探知のおかげで位置はわかる。引き出す能力を別の球体に変えられる前に、超光速弾を放って魔王の腹ごと赤い球体を貫く。

 

「チッ、完全には砕けないか...!」

 

超光速弾は非常に不安定なものであり、一度何かに当たればそれだけで霧散してしまう代物だ。魔王を貫いた段階でもう崩壊寸前であり、球体に傷をつけることは辛うじてできたものの完全なる破壊には至らなかった。

 

しかし、ヒビは入った。流石にもうキネットの力を引き出せない...なんてことはないだろうが、これで同じ赤でも見分けがつくようにはなった。

 

「ぬぅ...!」

 

7713ページ 黒 赤 重力操作

 

魔王が超光速弾によって貫かれた腹を修復している間に重力を操ってレストを遠くに逃し、そして自分も重力を器用に使って高速移動して魔王の後ろへと回り込む。

 

「ハァッ!!」

 

音速の抜刀を放つ。刃が球体に当たる寸前、魔王は別の球体から力を得ようとして破壊から免れようとするが...その行動の速度を落とすことで妨害し、赤い球体を真っ二つに切り裂いた。

 

赤かった球体は黒く染まり、魔王の中へと吸収されていく...これ、一定時間内に全部破壊しないとまた復活してくるとかはないよな?魔王の中に戻るってすっごい不穏なんだが...

 

「なに...⁉︎貴様の能力は速度操作か!」

 

「気づくのが遅すぎだぜ魔王!」

 

アクセルの魂を感じ取ったので、魔王の左側に回り込む。そしてまた切り替え速度を落として妨害しながら音速の抜刀を...この距離じゃ間に合わねぇか!

 

抜刀を放つ直前で思いとどまり、バックステップで魔王から距離を取る。光る球体は、魔王の前方にある緑色の球体へと変わっていた。フロートの魂が内包されている球体だ。

 

フロートは触れることで相手の姿形や能力を模倣することができる力を持っていたが...たしか十秒は触れている必要があったはずだ。だが、この十秒ってのが、魔王が力を使っている影響で増減している可能性がある。

 

アクセルの力を使っても魔王は音速を出せなかった。だから能力は弱体化している可能性がある。ステラが無心の弓で魂を貫いたことによる弱体化もあり得るだろう。

 

けれど、魔王は何かに寄生する力を持っているはずだ。聖剣に取り憑いたり、女神の山に潜伏したりしていたから、寄生能力はあるはず。おそらく魔族たちの力を使っているのもそれの応用なのだろう。

 

その力とフロートの力をうまく掛け合わせれば、すぐに相手の力を得ることもできるのではないか。推測でしかないが、今俺に向かって伸ばされている手には絶対に触れてはならないはず...!

 

「カリヤ避けて!」

 

後ろから響いたステラの声を聞いてすぐに転がるように横に避ける。

 

「ぐっ...なるほど、武具へのバフは禁止してはおらんかったな」

 

ニアが限界まで強化した矢を使い、ステラが魔王の胸を貫いた。本来はフロートの球体を破壊するために放ったのだろうが、俺がいたせいで少しズレてしまったようだ。

 

「……そうだいいこと思いついた!クミリア!」

 

「急になに⁉︎」

 

おや?いつのまにか明鏡止水を解除していたようだ。返事が返ってくるとは思わなくて少しビックリした...魔王が魔族の力を使い出してから、流石に考えて動かないとダメだと思ったんだろうな。

 

「一瞬辛くなるだろうが我慢しろ!」

 

9946、9947ページ 完全弱化

 

魔法を発動し、クミリアとあとついでに魔王にも大量のデバフをかけてやる。全力疾走や能力最大の要領で、ありとあらゆるデバフ妨害系の魔法を掛け合わせ一つにした複合魔法だ。

 

「ちょっ、重...辛っ!」

 

9942、9943ページ 魔法改竄

 

「これでどうだ!」

 

魔法改竄を発動し、クミリアにかけた全てのデバフを反転させる。

 

「おお...っ!すごい身体軽い!!」

 

「なるほど、その方法ならば貴様の能力でなくとも禁止波動を無視できると...」

 

「行けクミリア!球体ぶっ潰せ!」

 

大量のバフを擬似的に得たクミリアは、驚くべきスピードで魔王に近づくと、緑色の球体へと勢いよく蹴りをかました。

 

「っ...!」

 

緑色の球体にヒビが入る。だが、純正なバフではないため微妙に威力が足りず、完全な破壊とまではいかなかった。

 

魔王はアクセルの球体と接続し、高速移動をするクミリアに追い縋ろうとして...動きがトロいことに気付き、自身にデバフがかけられているのを思い出す。

 

「忘れていた。余への妨害は禁ずる」

 

波動が広がり、魔王にかけていたデバフが解除された。デバフから解放された魔王は、クミリアへと攻撃を仕掛ける。

 

9946、9947ページ 完全弱化

9942、9943ページ 魔法改竄

 

クミリアにやったのと同じことをして擬似的なバフをかけ、クミリアに合流する。

 

「二人で行くぞクミリア!」

 

「一緒に...クミさんパーンチ!」

 

クミリアが魔王の顔面に拳をぶち当て、俺は後頭部にパンチを当てた。そして二人で雷装を流し込み、魔王の頭を砕く。

 

魔王本体への攻撃は魔素による再構築があるため傷付けるという意味では無意味になってしまうが、再生中は少し動きが鈍るため時間稼ぎとしては有用だ。今のうちにアクセルの球体を...っ⁉︎

 

「まずっ⁉︎」

 

ほんのさっきまでクミリアの動きに対応できていたのに、俺が混じった途端に両サイドからの頭への攻撃を許してしまうのが変だとは思った。まさか、フロートの球体へと接続先を変えていたがために、高速移動ができなくなっていたからだとは思っていなかった。

 

「ふむ...一つしか模倣できないとはな。フロートから聞いていた話とは違うではないか」

 

まずい模倣されたか⁉︎一つしか模倣できないってのは、ステラが魂を撃ち抜いたからストックを作れなくなってるってことなんだろうけど...俺とクミリア、どっちを模倣されたかによってだいぶ話が変わってくる...!

 

「まぁよい。これが貴様の力か」

 

魔王を中心に、何かが広がるのを感じ取った。速度操作の領域だ。やはり俺の力を先に模倣していたか...!ってかあの短時間で模倣すんなよフロートを超えてんじゃねぇ!

 

「クソッ!クミリアは離れてろ!これは俺が...ってステラ⁉︎」

 

後ろからステラが飛んできた!魔王が俺の能力をどういう風に使うか全く読めないこのタイミングで突っ込むなんて自殺行為にも程があるぞ⁉︎指輪の力に頼って強行突破する気か⁉︎

 

「ダメだステラ!止まれ!」

 

減速をかけて止めようかとも思ったが、魔王の目の前でそれをやるわけにもいかず、俺にはどうすることもできなかった。

 

ステラはそのまま魔王に向かって飛び続け、ダガーを手に持つと...魔王の腕を一本切り飛ばした。何の妨害も受けずにだ。

 

「力を模倣しても、体のどこかにその人の部位をツギハギしなければ力は使えない」

 

そう言いながらステラはダガーを投げ、既にひび割れていた緑色の球体に刺して破壊した。

 

「だから腕を切り飛ばせば力は使えなくなる。もっとも、そんなことしなくても速度操作は使えなかったと思うけどね」

 

「な、ぜ...!」

 

魔王は腕を治しながら問いかけた。俺の力を使えなかったことが自分でも不思議なようだ。

 

「だって、カリヤの力と一緒に、あなたはカリヤの精神性や記憶まで模倣したんだもん。カリヤなら、私が傷つくようなことは絶対にしない。カリヤの心に引き摺られてしまい、何もできなくなるってわかってたよ」

 

「マジか...最っ高だステラ!!」

 

完全に先走ったとした思えなかったステラの行動が、俺の能力の模倣という最悪に近い状況を即座に打開し、フロートの力の無力化までも成功させてしまった。戦況は大きく変わる。

 

残る球体はあと二つだ。




魔王が本文でやっていたように、変なこと考えず魔族たちがちゃんと能力を使っていたら、絶対みんな死んでるんですよね...特にアクセルはカリヤへの執着がなければどう考えても全滅ルート待ったなしなんで、ムカデの穴で出会っていたことがものすごいターニングポイントだったという...
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