前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8785字。

依頼回だけど、あんまり出来は良くないかも...


雷を呼ぶ立体

依頼を受けた。今回はキースたちとではなく、ソロで行くことにした。少しでも多めに報酬が欲しいという理由もあるが、俺一人で行くのにはもう一つ理由があった。

 

「また来ちゃったここ...」

 

ピシャリと白い光が落ちてくる。雷鳴が鳴り響く。

 

そう、俺は今日、雷装を手に入れたあの荒野にやってきたのだ。

 

「俺にしかできない仕事ねぇ...そりゃそうなんだけどさ」

 

ギルドに来たとき、適当な依頼を受けようとしたら突然ギルドの人に呼び止められた。天の怒りの降り注ぐ地に現れる特殊な魔物の調査と討伐。国からの依頼のようで、報酬が多かったので引き受けた。

 

「やっぱやめればよかったかな...」

 

俺にその話が回ってきたのは、俺が雷装を使えるからだ。雷装発動中なら、雷の直撃を喰らっても問題はない...はずだ。本当にできるかはわからない。怖いから正直やりたくはない。

 

「そろそろ使っておくか...『雷装』」

 

スキル発動と共に、体に電流が流れ始める。その一瞬後、もう一つの電流が俺の体に流れ込む。

 

「おぉ、あっぶね。コンマ一秒遅れてたら今度こそ死んでたかもな」

 

雷が直撃した。けれど、まったく痛みはなかった。雷装をしている間は雷を浴びても問題ないらしい。

 

「出来るだけ早めに終わらせないとな」

 

能力を使って走ろう。どこに魔物がいるかわからないし、ひとまず辺りを駆け回って探すところからしないといけない。

 

「行くか...うわびっくりした!」

 

走り出そうとした瞬間、また雷が直撃する。痛みはないが、光で目がやられる。目が...目がぁ...!

 

「時間ねぇし、見えねぇけど走るしかねぇ!」

 

雷装使用中はスタミナがごりごり削れていく。スタミナが切れると激痛が走るようになる。それに耐えきれなくなったら、雷装が切れる。その間に雷が直撃したらやばい。能力を使っていれば、速度検知で周囲のものを探知することができるので、目が見えなくてもなんとかなるだろう。

 

「どこだどこだ...?うひゃっ⁉︎また雷⁉︎」

 

三度目の直撃。流石にこれは異常な気がする。あとまた目がやられた。

 

「くそ、雷装が雷を引き寄せてやがるのか...?めんどくせぇなオイ!」

 

雷は一番流れやすい道を通って地面に落ちてくる。今の俺は雷装により電気をまとっているため、まるで避雷針のように雷が落ちてくるのだろう。目は使えそうにない。

 

「こんなんじゃ調査とか無理だぞ...」

 

目が見えないから魔物の調査は難しいだろう。けれど、まずは魔物を見つけるところからだ。ひたすら荒野を走りまくる。

 

「どこだどこだ...いた!死ね!」

 

小さな丸い球体のようなものの速度を感じ取った瞬間、それが何なのかを調べるよりも前にダガーで斬り刻んだ。

 

「そろそろスタミナが...逃げるのは間に合わないか!」

 

あと五秒ほどでスタミナが切れる。五秒あれば、もしかしたら荒野から脱出して雷の脅威から逃れることができるかもしれないが、今は目が見えていないのだ。どこに走れば逃げれるのかわからない以上、走りでの脱出は厳しい。

 

「なら!土よ、流動しその形を変えよ!」

 

地面に手をつき、土流を発動する。足元の土を操作して、先ほど倒した魔物ごと自分を覆い尽くすようにドームを作る。もちろん雷装を解除するのも忘れない。そうしなければスタミナは切れるし、このドームに雷が直撃することになってしまう。

 

「これで雷が来る可能性は低くなるはず...よし、目も回復してきた。さて、さっき倒したのはなんだったんだ...?」

 

球体をしていたのはわかったが、逆にそれ以外は何もわかっていないと言っていい。硬いのか柔らかいのかも、ダガーを新調したばっかりだったのでよくわからなかった。ダガーの出来が良かっただけで、実はめちゃ硬いのかもしれないのだ。

 

「なにこれ...なに?これ」

 

見てみたが、よくわからなかった。黄色い半球が二つ落ちているだけだった。多分、もとは一つの球だったはずだが、それ以外に特徴が見られない。触ってみても、なんとも言えない感触だ。ほんと、なんだこれ。

 

「反ミームでももってるのかこの魔物...?倒す前だったらなにか特徴あったのかな?」

 

倒す前の姿を見たくなる。他の個体が近くににいたりしないかな?

 

「そうだ。ここからなら安全に見れるはず...」

 

土のドームの一部に穴を開ける。そしてその穴から外を覗く。

 

「やっぱめちゃくちゃ雷降ってるな...あっ、あれか?」

 

黄色い球体のような魔物が浮いているのが見えた。多分、俺が倒したのはあれだろう。

 

「なんかカー○ィのゼ○みたいだな。目怖っ!」

 

体力ゼロにしたら目から血を出しながら追ってきそうな見た目をしている。あれがこの荒野特有の魔物か...

 

「ん?ビリビリしだした...?」

 

魔物がビリビリと紫電を漏らし始める。

 

「もしかして...ああ、やっぱりか」

 

魔物から放たれる紫電が大きくなってきた時、ズバンッと雷が魔物に直撃する。雷装中に雷が俺に集中するのと同じ原理だろう。

 

「あれが雷の原因...いや、落ちるところにはあいつがいるってだけか。なんで空に雲がずっとあって、雷が降るのかの説明にはならないな」

 

雷の直撃を喰らった魔物は、二つに分裂した。ああやって数を増やしているのだろう。

 

「面白い魔物だな...ん?別のがいるな」

 

もう一種類魔物がいた。今度のは白い立方体の形をした魔物だ。なんかラミ○ルみたいだな。ビームとか撃ちそう。

 

「球に立方体...簡単な構造をした魔物が多いな。なにか法則でもあるのかな...おっ、動き始めた」

 

空中に浮遊して静止していた立方体の魔物が、スィーっと水平移動を始めた。ゆっくりと移動していき、やがて球の魔物の真上に位置する。

 

その時、球の魔物が放電を始める。それに呼応するように空の雲が光だし、球の魔物に雷を落とす。

 

「吸収した⁉︎」

 

雷は、空と球の魔物の間にいた立方体の魔物に命中し、消えた。地面に一切流れることなく、立方体の魔物に全て吸収されたかのようだ。

 

「雷のエネルギーを奪っているのか...?増殖はしないみたいだけど、何のために?」

 

訝しんでいると、立方体の魔物が45度回転する。そして、魔物の方からキンキンと何かがぶつかるような音が聞こえる。

 

「いったいなにが...」

 

キンキンとした音が十秒ほど続く。そして魔物の角、その中の空に向いている角が青白く光り出す。角から光の柱のようなものが空に向かって飛び出す。

 

「空に撃ち込んだ⁉︎」

 

光の柱は雲に命中すると、そのまま溶け込むように消えた。

 

「空に雷を返した?なるほど、あいつが雷を吸収して増幅させる。そのエネルギーを空に撃ち込むことで、再度雷が落ちるようにする、と」

 

永遠に雷が降り続けるというこの荒野の謎。こんなふうに考えれば、ある程度の説明はつく。間違っている可能性の方が高いが。

 

「スタミナも回復したし、そろそろ動くか。まずはあいつを倒して情報収集を...」

 

地面に手をつく。そして土流で土のドームを崩して外に出ようとしたその時、またキンキンと音がしだす。

 

「雷を受けていないのに音が鳴っているな。増幅だけじゃなくて自家発電もできるのか?」

 

魔物の角が光だし、真下に向かって光の柱を放つ。光の柱は球の魔物に命中し、分裂を促す。

 

「雷と同じエネルギーなのか。何かしらの衝突音...それに雷...氷の粒か?」

 

氷の粒が雲の中でぶつかり電荷がたまることで雷は発生する。何かがぶつかっている音と、雷という事象を合わせて考えてみると、あの魔物は体内に大量の氷の粒を抱えているのかもしれない。それで電気エネルギーを増幅、あるいは生産しているのだろう。

 

「行くか。土よ、流動しその形を変えよ!『雷装』」

 

土流で土のドームを弾けさせる。そして雷防止のために雷装を発動し、立方体の魔物に向かって走る。

 

キンキンキンキンッ!!

 

魔物の角が光る。上でも下でもない。俺の方だ。光の柱が射出される。光の速さの攻撃を避けることなんて出来ず、モロに直撃する。

 

「くっ、痛ぇ...」

 

体に鋭い痛みが走る。おかしい。雷ならば雷装発動中の今、ダメージを受けるはずがない。つまり、光の柱は雷とそれ以外の力の集合体なのだろう。そのため、少しだがダメージを負ったと考えられる。

 

「氷なら...『火球』!」

 

火球を手のひらに生み出す。それを今まさに魔物に向かって撃ち出そうとした時、雷が俺に落ちる。目がやられる。

 

「クソッ、方向が!」

 

目が見えないなか、適当に火球を放つ。さっきまで魔物がいたところ目がけて撃った。けれど、多分当たっていない。その証拠に、再度光の柱が飛んでくる。

 

「イッテェなオイ...ぶった斬る!」

 

魔物は音もなく移動するとはいえ、さほど移動はしていないだろう。能力を発動して加速し、速度を探知しながら魔物目がけてジグザグに走る。

 

「これなら当たんねぇだろ!」

 

ジグザグに動くことで、狙いを絞らせない。少しでも被弾する可能性を減らす策だったが、それが功を奏した。魔物の攻撃は二、三回ほど飛んできたが、一回も当たらずに魔物まで近づく。

 

「捉えたぜ...!」

 

魔物が能力適用範囲である半径二メートルに入る。立方体の外装と、その内側にある大量の氷の粒の速度が探知できた。

 

『火装・剣』

 

「消えろ!」

 

ダガーを使い一瞬で魔物を一刀両断する。

 

「っ、この速度...⁉︎」

 

秒速三十五メートルでその場から飛び退く。なんとか十メートルほど離れた時、最後に魔物が溜め込んでいたエネルギーが爆発する。

 

「危ねぇ危ねぇ...なんとか避けれたな。というか、粉々になっちまったな。回収するにはエネルギーを溜める前にやらないとダメか」

 

調査のため、死体は回収したい。依頼を受けた時、先方からは生捕りにしてもよいと言われたが、生捕りは攻撃能力がある以上無理だろう。

 

「でも、お前らなら捕らえることはできそうだな」

 

周囲に近寄ってきていた三体の球の魔物を見る。俺の体を流れる雷を再現した電流を感じ取り、増殖するために近づいてきているのだ。こいつらは今まで攻撃をしていない。捕らえても安全なはず。

 

「とりあえず袋に入れればいいかな。しまっちゃおうねー」

 

小さく畳まれた袋を広げ、球の魔物三体を袋に入れる。

 

「おー、ジタバタしてる。でも、問題なさそうだな。牙が生えて袋を食い破ったりとか、変形して棘を生やすとかはしないみたいだ」

 

目から弾を出すとかもしてこない。安心して袋を縛った。その矢先、球の魔物が放電を始める。

 

「雷を呼んで増殖、数を増やして袋を破ろうって魂胆か?面白いことするなぁ。無駄だけど」

 

袋を掴んでいた手を離し、上に向かって手を伸ばす。

 

ズバンッ!と空気を切り裂きながら雷が落ちてくる。しかし、魔物に雷は流れ込まない。俺が全て受け止め、増殖することを防ぐ。

 

「無駄だよ、無駄無駄...よし、荒野の外に持ってくか。何度も雷を落とされても対処が面倒だしな」

 

魔物は、すでに存在している雷を呼び寄せているだけだ。雷の降っていない場所まで持っていけば何もできなくなるはず。

 

「よいしょっと...ん?なんかさっきより軽い?」

 

いくら浮遊しているといっても、引っ張ろうとすれば多少の抵抗はあった。けれど、さっきよりその抵抗が弱い。というか、おかしい。三体いたはずなのに、いつのまにか一体分の速度しか感じ取れない...⁉︎

 

「融合した⁉︎」

 

嫌な予感がしてきたので、袋を手放し距離を取ろうとする。能力は、魔物がどんどん小さくなり、エネルギーが凝縮されていく速度を観測していた。

 

電気エネルギーではない、謎のエネルギーによる爆発が起き、その衝撃で大きく後方に吹き飛ばされる。

 

「対消滅によるエネルギーの拡散か。デ○ストのヴォイド○ウトが小さな規模で起きたみたいな感じだな...持ち帰るなら一体だけか」

 

ちょっとばかり驚かされたが、今の現象は二体以上いないとできないと見た。一体だけ捕らえて、増殖を防いだまま帰還すれば安全に持ち帰れるだろう。

 

「その前にここできゅーけー!土よ、流動しその形を変えよ!」

 

土のドームを作り、その中に身を隠す。とりあえず休憩だ。回復してから、捕獲や討伐をしよう。

 

「まず、スフィアは一体だけいるところを捕獲。キューブはビームを撃ち切ってから仕留めるか、そもそも気づかれる前にやるかだな」

 

いつまでも球の魔物立方体の魔物と呼ぶのは面倒だ。それぞれスフィア、キューブと仮に命名しておくとしよう。

 

「とりあえずあの二体はこの作戦でいいとして...他の魔物はいないかな?」

 

ギルドに伝えられた魔物の種類は三種類。ボールのような魔物に、サイコロのような魔物。それぞれスフィアとキューブだろう。そして、最後に伝えられた魔物の特徴は、不定形。なんでも、目撃証言がバラバラらしいのだ。三角だったり四角だったり複雑な形をしていたり。けれど、薄い赤色をしているため、他の二種類と見間違えたわけではないことは確からしい。

 

「まずはそいつを見つけたいんだけど...あれか?」

 

赤い何かが地面の上を転がっているのが見えた。形は...なんとも形容し難いものだ。なんて説明すればいいのかわからない。

 

「まず斬ってみるか。安全捕まえられるのかを確かめないと」

 

『雷装』

 

魔力を温存するため、土流を使わないで土のドームを崩し、外に出る。そして二秒で近づいて魔物を斬る。真っ二つに、上下に分断される。

 

「すんなり斬れたな...手応えがない」

 

まるで切り取り線がすでにあったかのようだ。感覚としては、軍隊虫の腕を鞭で千切ったのに近い。

 

「こいつも群体型か!」

 

二体に分裂した魔物が動き出す。ビリビリと電気を流しながら近づいてくる。

 

「すまんな、電気は俺には効かないんだ」

 

ゴツゴツとぶつかって電気を流してくるが、ちょっとしたマッサージ気分だ。まったく痛くないし、逆にちょっと気持ちいい。

 

「とりあえず一番小さくなるまで斬り刻むか」

 

スパンスパンとダガーで魔物を斬る。一刀ごとに魔物の連結部分が分断され、小さくなりながら数が増えていく。そして正四面体になった魔物を斬ったとき、その魔物は分裂せず消滅する。

 

「この小さな正四面体が最小の状態か。テトラとでも名付けておこうかな」

 

正四面体、テトラヒドロンから名前をとる。というか、球に立方体に正四面体。やはり簡単な構造をしているな。

 

「さて、テトラはどうやって出現するのかな...?」

 

とりあえずテトラを一匹だけを残して斬り落とす。

 

「こうしたら、どうなる?」

 

しばらく待つ。一体になった時、どうなるだろうか。増殖するのか、増援を呼ぶのか、このどっちかだろう。

 

「来たな。増援が」

 

コロコロと周囲の地面からテトラが転がってくる。こいつらはどこからやってきたのだろうか?

 

「地面から...か。雷に対応させるとするなら...プラスの電荷か?いやでもそれはスフィアの役割ぽいっし...」

 

考えてはみるも、よくわからない。今までの魔物は、それぞれ雷に対応していた。スフィアは、地表付近に漂い雷を落とす道標となる特徴から、地面にたまるプラスの電荷。キューブは、氷の粒で静電気を起こし雷のエネルギーを作り出す特徴から、雷雲そのもの、もしくはマイナスの電荷に対応している。残るテトラにも何かあるはずなのだが、それがよくわからないのだ。

 

「残る要素は...うひゃっ⁉︎目がっ!」

 

そんな時、雷が俺に落ちる。目が痛い。というか、これではテトラを見失ってしまう。なんとかして範囲二メートルに入れ続けなければ...

 

「ん?これって...テトラか?」

 

上からテトラが降ってくるのを感じとった。テトラは俺の前にいる一体のテトラにくっつき、大きくなっていく。

 

「テトラは地面を転がるはずじゃあ...いや待てよ?」

 

一個だけ、忘れていたことがあった。

 

「テトラは雷そのもの...ってことか?」

 

要素ではなかった。雷が降った後に空から降ってきたということは、電荷だとか静電気などではなく、雷そのものに対応していると考えた方がいいだろう。

 

「よし、ある程度調査も終わったし、出来るだけ回収して帰るか」

 

キューブの増殖方法は調べていないが、そろそろ潮時だろう。魔力も無限じゃない。そろそろ底が見えてきた。魔力切れになって、雷装を使うことも、土流で身を守ることも出来なくなったらいよいよ終わりだ。

 

「まずはテトラから!」

 

相変わらず目は見えないが、能力で位置を感知して把握し、一体を残して全て斬り刻む。

 

「よし、回収っと」

 

テトラを掴み、小さな袋に入れる。テトラはビリビリと放電して袋に何度かぶつかるも、小さすぎて威力が出ず破ることはできない。

 

「次は...スフィアかな。どこだー...?」

 

目が見えないが、スフィアなら雷が落ちているところにいるのがわかっているので、耳が生きていれば大体の位置がわかる。

 

ドンッッッ!

 

「右斜め後ろか!」

 

能力で音の速さを検知すると同時に、その方向も探知する。右斜め後ろ。どれくらい距離が離れているかはわからないが、適当に走っていれば行き着くだろう。

 

「……いた!」

 

スフィアは二体いた。直前に雷を受けたのだからそれは当然だ。けれど、二体いると対消滅の危険がある。

 

「お前は消えろ!そして君はしまっちゃおうねー」

 

二体いるうちの片方はスパンと斬り、もう片方は袋にぶち込む。

 

「よし、あっそうだ。死体も回収しとこ」

 

死体も調べれば何かわかるかもしれない。死体も融合してしまうかもしれないので、一応別の袋に入れて保管する。

 

「あとはキューブだけど...今日は厳しいかな」

 

目が見えないなか、キューブを探すのは困難だ。スフィアを追えば、いずれキューブのもとにたどり着くかもしれないが、それをする時間はない。それをしている間に魔力は尽きるだろう。荒野を出るには、今から脱出を開始しないと間に合わない。

 

「今日は帰るか...」

 

スフィアの入った袋を担ぎ、荒野の外に向かって走り出す。

 

「『魔力転移』」

 

腕輪にためておいた魔力を自らの体に移す。これをしてなお魔力はギリギリだ。一日で腕輪にためることのできる魔力の量には限りがある。ためられる量はほぼ無限で、何日何週間何年とかければ腕輪にためた魔力だけで超強力な魔法や儀式を発動することもできる。しかし、この腕輪にためていた魔力はたったの一日と半日分だ。ほんの少ししか回復しない。

 

「報告する内容考えとかないとな...一回宿に戻って、紙に書いて持ってくか」

 

秒速三十五メートルで走りながら頭も働かせる。

 

「報酬たんまり貰うぞー!」

 

王都に向かって、普通に歩いたら片道一時間以上かかる道を走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ、報告書です。伝えることが多かったので紙にまとめてきました」

 

ギルドの受付に、報告書を提出する。

 

「拝見しますね...妖精?どういうことですか?これ」

 

「そのまんまの意味ですよ。あの魔物たちは、実は魔物じゃなかった。妖精だったんですよ」

 

「説明になってませんよ?」

 

「簡単に言えば、あの魔物たちはそれぞれとある自然現象の塊だったんですよ。スフィアは地面にたまるプラスの電荷で、キューブは雷雲、テトラは雷。どれも雷の、どこかの側面が形を持った妖精だったんです」

 

「でんか...というのはよくわかりませんが、天の怒りの具現化ですか。どのようにしてそのような結論に至ったのですか?」

 

「妖精だと思った理由は、ただ一つ。奴らが消滅したことからです」

 

「消滅?」

 

「報告書にも書いたんですが、私は今回、スフィアの死体に、スフィアとテトラの生存している個体を回収し、持ち帰ろうとしました。けれど、それは出来なかった。何故だかわかりますか?」

 

「いえ。消失というのが関係しているのはわかりますが...」

 

「そう、消えたんですよ。荒野から出た途端、袋に入れていた魔物たちは急に姿を消し、完全に消滅しました。一片のカケラもなく、ね」

 

「雷の降るあの荒野にしか魔物たちは存在できない...そう主張したいわけですね」

 

「ええ。まぁあくまで、これは予想ですけどね。合っている保証はありません」

 

神さまがそうだと言ってくれれば、真実だと確信を持てるのだが。うみ○このように赤き真実みたいに保証してくれないかな。

 

『当たっているっぽいぞい。奴らは雷の具現化した妖精じゃ』

 

わざわざ赤で言ってくれた。ノリいいな神様。

 

「すみません、さっきの忘れてください。当たっているそうです」

 

「き、急にどうしたんですか?」

 

「神から啓示が降りてきました。妖精で間違いないそうです」

 

「神の啓示...本当にあるんですね」

 

本来の神の使いに、神の啓示を受け取る力があるかは知らないが、信じてくれたみたいだ。

 

「ただ、一つわからないことがあるんですよね」

 

「なんですか?」

 

「あの荒野で雷が降っていたから妖精が現れたのか、妖精がいたから雷が降るようになったのかがわからないんですよね」

 

鶏が先か、卵が先かみたいなことだ。

 

「それは重要なことなんですか?」

 

「そこまででもないですね。特に関係はないです」

 

その違いによって少し変わることはあるが、ほとんど誤差のようなものだ。これを考えることに深い意味はない。

 

「というわけで、口頭での説明は終わり...でいいですね?」

 

「ええ、少しお待ちください。報酬をお出しします」

 

受付員が少しの間奥に消え、戻ってくる。

 

「こちら、報酬です。お受け取りください」

 

「ありがとうございます」

 

報酬を受け取り、受付を離れる。

 

「リハビリもできてお金も受け取れて...一石二鳥ってこういうことだよな」

 

報酬もたんまりともらえた。昨日使ったお金の半分くらいは戻ってきた。

 

「ご飯食べたらもう一個受けに行くか」

 

まだ真昼間だ。依頼を受けて達成する時間は十分にある。それに、金は命より重いとまでは言わないが、重要なものには変わりない。あればあるほどいいのだ。死なない程度の依頼をこなし、お金を稼ぎたい。

 

「じゃんじゃん稼ぐぞー!」

 

そう意気込み、まずはご飯を食べるために俺はギルドを出た。




スフィアとキューブとテトラが今後出てくるかは不明です。
もしかしたら出てくるかも...?

そういえばなんですけど、報告書を書く描写がありましたね。
カリスで過ごした二ヶ月のうちに自力で読み書きをマスターしたと思っておいてください。
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