前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
ちなみに魔王が使ってるバフ禁止や回復禁止などの禁止魔法は、魔素を利用したものです。
魔素が過剰にあると人間の身体機能を抑制してしまうという性質を利用したものですね。
魔族が聖域の中にいると力が落ちる、ってのの反対だと思ってくれればわかりやすいかな?
人にしか作用しないので、武器には通常通りバフがかけられるというわけです。
後書きにも解説入れるんで前書きで解説入れました長くてすんません。
本編どうぞ!
「このまま攻め立てる!」
アクセルの力を扱い亜音速で移動する魔王に近づき、刀で攻撃を仕掛ける。完全弱化の改竄による擬似バフにももう慣れた。魔法の力をロスなく速度に変換し、音速を叩き出すことができている。
「させるか!」
青い球体に斬りかかろうとした瞬間、球体が黒く染まり反対側にある球体が赤く染まる。黒の球体には傷をつけることは叶わず、超高速で衝突したがために刃が折れてしまう。
「角度調整よーし!」
回避されることは織り込み済み。刃が折れて飛んでいく方向を調整することで、折れた刃は魔王の脇腹へと突き刺さった。
『製作』
そして製作スキルで刀を作ることによって刺さった刃を無理矢理引き抜き、出血...魔王の場合は魔素と魔力の流出を促す。当然、巨大化魔物にやっていたように速度操作で加速させておく。
「無駄だ...!」
魔王は一旦傷口の表面だけを覆ってこれ以上の漏出を防ぐと、サーマルの力を使うことで魔素を増やして再生しきってしまった。
「うわキッツ...!」
魔王は魔素で身体を作っているため、サーマルの力がそのまま再生能力と化してしまっている。急いで破壊しなければ...
「けど隙がねぇ!」
魔王は再生が終わるとすぐにアクセルへと接続を変えてしまう。よってサーマルの球体を壊すのは難しい。アクセルの球体を先に破壊してしまうか、アクセルと接続している最中に大きめの傷をつけ、それをサーマルの力で再生している間に破壊するかの二択だが...サーマルと接続している間、ずっと運動エネルギーの増幅で高速移動してるからどっちみち狙いづらいんだよな...
「しゃーねぇ先にアクセルを...!」
クミリアと共に亜音速で動く魔王に付き纏い、球体を狙って攻撃を仕掛ける。だが、魔王もアクセルの力が自身の生命線だと理解しているので、魔法攻撃も織り交ぜながら球体の破壊を徹底して妨害してくる。
「こうなりゃもっと早く...!」
1527ページ左上 黒のみ 水膜
1749ページ右上 黒のみ 水噴
バフをかけることはできないが、加速する方法はいくらでもある。このコンボも久しぶりに使うが、バフ以外で加速できる方法の一つだ。
足裏に水の膜を貼り、そこから水を噴射することで地面を滑るようにして移動していく。移動のために足を動かす必要がないのも楽だ。走っていればすぐに方向転換するのが難しいタイミングもあるわけだが、それが存在しないのだから動きやすいことこの上ない。魔王は触手で移動しているがために二本足の俺らとは違って小回りが効くが、その差を亡き者にできるのだ。
「届け...!」
地を滑り、青の球体に急接近する。このまますれ違いざまに刀を押し当てれば、破壊することができるはず...接続を切り替えようとする素振りも速度も見られない。どう回避するつもりだ...?
「……っ⁉︎それアリかよ!」
魔王は回避しなかったため、予定通り刀を球体に押し当ててそのまま引き切ろうとしたのだが、異常なほどの硬さにより失敗する。アクセルの力を球体そのものに使ったのだろう。肉体硬度の強化だ。並大抵の攻撃ではあの硬度を突破することはできない。
並大抵の攻撃ならば...な。
「セイヤァッ!」
俺の刀に続くようにクミリアが拳を放った。しかも器用なことに、幻影鏡面を発動させて自身を中心とした左右反転の影を作り出すことにより、ほぼ一点に二度、ほとんど同時に拳を命中させる。どこぞの二○の極みのような攻撃は、その超硬度を貫いてヒビを入れることに成功する。
「次は俺が...!」
『色彩剣装 原色・赤』
これならあの超硬度も突破できる...そう思って発動させたが、そのタイミングで接続切り替えの速度を探知した。急いで反対側に回り込み、今はまだ黒い球体へと刀を振り下ろす。
「チッ、ブラフかよ!」
魔王はアクセルとの接続解除こそしたものの、サーマルと繋がるようなことはしなかった。よくよく考えれば、必ずどれか一つと接続していなければならないわけではないのだ。魔族の魂を吸収した直後はどれとも繋がっていなかったわけだしな。
『製作』
黒い球体を切り付けたことで刀が折れてしまったので、また製作を発動して作り直す。これで魔力を消費させられてしまうのが地味に辛い...!
……って、刀を作り直してる最中にサーマルと接続しやがったこいつ!ここは回避を...!
「吹き飛べ...!」
運動エネルギーの増幅によって加速した拳が振られたが、突如レストが俺の目の前に現れてカウンターを発動し、攻撃の威力を全て魔王に跳ね返してしまった。
「二回目で成功できてよかった...」
そう言うとレストが一瞬で消えてしまった。
おそらく、ネオンの未来予知の魔法を発動させることで魔王がどんな攻撃を放つかを見て、そして未来跳躍を使って誰にも気取られずに俺の目の前に移動しカウンターを発動させたのだろう。魔王に砕かれた肩はまだ完全には治り切ってはいないようだが、これなら肩に負担をあまりかけることなく、最大限の成果を出すことができる...魔王に狙われないように気をつけながら続けてくれると助かるな。
「ナイスだレストマジで...!」
カウンターによって受けた傷の修復のために、魔王はサーマルの力を使って魔素を増幅させる...ってマズイ!
「あぶゎぁっ⁉︎」
発動しっぱなしだった水噴が魔王によって暴走させられてしまい、足裏から勢いよく水が噴射して上へと吹っ飛ばされてしまう。すぐに魔法を解除したから高さはそこまででもないが、魔力を結構持っていかれた...!
「やりやがったな...っ⁉︎」
上へと吹き飛ばされたことで、全体を見渡すことができた。そのおかげで気づけた。
ライトが光を捻じ曲げる魔法を使って身を隠し、必殺技を魔王に当ててやるそのタイミングを虎視眈々と狙っていたのだ。地上の高さだと認識できなかったのに上から見えるのは、おそらく横方向だけ捻じ曲げていたからなのだろう。
空間操作はもうないため、捻じ曲げられたり受け止められたりする心配はない。一つ心配があるとすれば、サーマルの力を使って聖素の壁を作られて防がれる可能性があることだが...俺らが魔王を引きつければいい。アクセルの力を使っている最中なら防げないはずだ。
「っとその前に着地だ着地!」
ってどうしよう擬似バフは解除しちゃったし、魔法を使えばサーマルの力で暴走させられるから...スキルで対処!
『飛行』
飛行魔法で滑空して安全に着地する。というかクミリアにかけた擬似バフも一緒に解除しちゃったけど大丈夫か?...やばいまずそうだ魔王の急加速攻撃をギリギリで回避してやがる!
『色彩剣装 無彩・黒』
「離れろ!」
未来からの斬撃を浴びせて魔王の動きを止め、クミリアが離れる隙を作る。
「ほう、スキルは増幅できぬのか...だが、今ので貴様は縛られた」
っ...誘われてたのか!原因作りができなければ色彩剣装を解除することはできない。未来から斬撃が飛んできた場所を侵入不可能にして仕舞えば、俺の行動をある程度封じられるってわけだ...けど、これくらいなら!
「無駄だっ!」
魔力を刀に込めて...手を離す!
「貴様なんだその魔力操作技術は⁉︎」
「魔王でもできねぇってか?大したことねぇなァ!」
色彩剣装発動中に刀を手放せないのは、魔力の供給が出来なくなるためだ。一般人は空気中に魔力を流すことが難しいから、少しでも空間が開くことも許されない。
だが、俺の技術があれば話は別だ。手を離しても空気中を伝って魔力供給できるし、ある程度魔力を込めてしまえばその場で手を離せるしその分の消費だけで原因作りを終わらせられる...!
『色彩剣装 原色・赤』
「サーマルの力切らせてもらう!」
魔王が驚いている隙に近づき、ダガーに色彩剣装を纏わせて振り下ろした。当然、魔王はサーマルの力を失うことを恐れてアクセルへと接続を切り替える。
ちょうどそのタイミングでステラが矢を放った。魔王がどちらに切り替えようともどちらかは破壊できるよう、雷装を込めた矢を一本ずつ球体に向けて撃ち込んだのだ。
「あと一撃...!」
深々と青い球体に矢が刺さり、球体は崩壊寸前だ。ほんの少しでも衝撃を与えればそれだけで壊れてしまうだろう。
「こっからでも!」
『念動』
刺さっている矢を魔法で動かそうとする。
「そうはさせん!」
魔王は矢を手で引き抜き、これ以上の破壊を防いだ。これくらいなら接続を変えずに処理してくるだろうと踏んでいたが、予想通りだった。
魔王はそのままアクセルの力を使い、亜音速で攻撃しようとしてくる。擬似バフがない今の俺なら、未来跳躍くらいでしか避けることはできない。どこに逃げたところで、再跳躍できるまでのクールタイム中に攻撃できる...そう魔王は考えたはずだ。
俺に魔王の注意を向けさせる。それこそが俺の目的とも知らずに、まんまと攻撃してくれた!
魔王の背後の死角から、ライトが必殺技を放てる...!
俺は忘れていた。俺にはほぼ影響がないからと、無視してしまっていた。俺ら全員にかけられている、思考が声に漏れ出てしまう魔法の存在を。
「当たれ!!」
ライトが必殺技を放とうとした瞬間、当たってほしいという願望がライトの口から大声で出てしまった。奇襲が意味をなさなくなってしまう。
「そこにいるのはわかっていたぞ」
「させるか...!」
魔王がサーマルの力へと接続を変えようとしていたので、減速させて妨害する。必殺技を防げるのはサーマルの力のみ。接続変更さえ防げれば...
ってマズイ!こいつ、俺に向かって突進しながら変更しようとしてやがる!俺が接続を妨害し続ければ、魔王はそのままアクセルの力を使って亜音速で突っ込んでくる!かといって未来跳躍で逃げれば減速の妨害ができなくなって必殺技を防がれる!
俺を犠牲にして魔王を倒すか、逃げて戦闘を続けるか...なんだよこの二択は!!
でもこれなら死んででも魔王を倒せる方がいい!元々この世界にいないはずの俺が死んで、それで世界が救われるならいいじゃねぇか!
それなら妨害し続ける...いや待て!俺を轢き殺してからでも接続変更は間に合うんじゃねぇか?というか必殺技は別に音速を超えてないんだから、なんなら俺を殺してからも走り続ければ逃げ切れるじゃねぇか!ってなると死に損になる!!
7801ページ 黒 青 未来跳躍
0.1秒の跳躍をする、その直前の0.1秒で俺の思考はさらに加速する。
この選択が正しかったのかわからない。もしかしたら俺がそのまま残っていれば魔王を倒せたのかもしれないし、必殺技を発動できているということは反対側でステラが無心の弓を撃つ用意をしていたわけだから、そっちで仕留めることもできたかもしれない。
どちらにしても、もう跳ぶことを決めてしまった以上後戻りはできない。
0.1秒。俺はこの世界から消え、また現れる。
案の定、魔王はサーマルの力を使って聖素の壁を作り出し、必殺技を真っ向から受け止めていた。
必殺技発動後に訪れる、30秒という聖剣機能不全の時間が訪れる。聖剣の力が衰えている今、魔王は全力で勇者を潰そうと行動してくるはずだ。なんとしてでも阻止しなければならない。
だが、それよりも気になる事があった。誰にとっても予想外だった。
「二つとも...⁉︎」
魔王の左右に浮いている球体が、両方とも光っていたのだ。赤と青。まさか、二つの力を同時に使えるとでも言うのか...?
「同時に使えないとは言っていない!」
魔王はそう言うと、ものすごい速度でライトに向かって走った。ライトのすぐそばにいたレストが盾で弾き飛ばすが、魔王は速度を生かした連続攻撃を仕掛けてライトを付け狙う。
「二つ同時に使えるだと...?」
俺は急いでライトのもとまで駆け抜ける。
「そんなのブラフだろうが!!」
同時にいくつも使えたとしたら、最初から使うだろ普通!魔王に近づきさえすればタネはすぐに割れる!
「魔法で光らせてるだけ!今はサーマルだ!」
見ただけじゃ違いはわからない。だが、俺ならどの魂が反応を示しているかで見分けることができる。アクセルの魂は反応していない。やはり同時に能力を使うことは不可能だ!
「よいしょっ...!サーマルなら避け切れる!」
魔王を蹴り飛ばしてほんの一瞬怯んだ隙をついてライトを抱えておぶり、一心不乱に走って魔王の攻撃を避ける。
サーマルの力である程度速度を出せるとはいえ、初速がすごいだけだ。アクセルも似たようなものだが、アクセルよりも小回りは効かない。移動手段が触手なおかげで多少改善されてはいるものの、動きは直線的。加速と急停止を即座に使い分けられる俺なら十分に避けられる...!
「クソッ!クールタイム解消もできればいいのに!」
30秒を俺の能力で短くできたらこんな危険なことしなくてもいいのに...!
「あと何秒だ⁉︎」
思考加速のせいで経過時間がわからないのでライトに聞く。
「あと7秒!」
「了かぃっ⁉︎」
急に魔王の動きが良くなって...ってアクセルに変えたのか!こうなりゃ三次元的に避ける!
魔力銃をワイヤーモードに変えてから壁に向かって撃ち込み、巻き取ることで斜め上へと移動する。当然魔王も地面を触手で弾いて飛んでくるが、すぐにワイヤーを切り離して落下速度を加速させて地上に戻る。ただ前後左右に避けるよりも、落下速度を操作できるんだから上下にも移動したほうが避けれる可能性は上がる。これを繰り返すだけでも、残り秒数は十分稼げる!
「よっしゃ時間稼ぎ完了!」
30秒経ったので反撃開始だ。まずは聖剣で自衛できるようになったライトを放り捨てて...!
「今なら間に合う!」
『反撃流』
構えをとり呼吸を整えて、ゴモンの反撃流を発動させる。さっきは準備する時間がなかったから使えなかったが、この距離ならギリギリ使える。それも、魔王の突進が決まるその直前に!
ドンッ!!と魔王が衝突してくるが、ノーダメージだ。腕で受け止めたエネルギーが下半身へと移動していく。そして、俺が足を離すまで魔王は動けない。
最速で!アクセルの球体へと蹴りを叩き込む!!
「あと一つ!」
粉々に砕けた青い球体は魔王へと取り込まれ、残る球体は一つだ。すぐに破壊してやろう...そう思っていたのだが、魔王はすぐさまその場から飛び退き、俺ら全員から距離を取った。
「お?なんだなんだ?残り一つになってとうとう怖気ついたか?」
「世迷言を...貴様らなど取るに足らん。怖気付くわけなかろう」
「そうは言うけど俺らから距離取ってんじゃねぇか。あれか?勇気ある撤退だとか言うつもりか?」
「そうやって注意を逸らしたところで無駄だ」
バレたか。こっそり魔王の視界外にステラを飛ばせて、無心の弓で攻撃させようとしていたんだがな...そういやさっきもライトがそこにいるのはわかっていたみたいなことを言ってたし、俺らの位置は把握されてんのか?
……魔王城の中だからか。空間操作を封じることができたとしても、ここは魔王城の中であり、実質的に魔王の中であることには変わりない。魔王城の中ならば、俺らの位置は丸わかりってわけだ。
「奇襲できねぇのは残念だが、今のテメェは袋のネズミだぜ?完全に包囲されている。大人しく投降して、命を差し出しやがれってんだ」
「それは御免だな」
「なら殺す」
魔王に向かって飛び出し、赤く光った球体に斬りかかろうとする。
……が、魔王が背にしている壁の奥に異変を感じ、これ以上進んではならないという嫌な予感を感じた。すぐに後ろへと飛び退く。
「ようやく来たようだ...遅刻だぞ、余の配下よ」
壁を突き破って何かが飛び出してきた。こいつは...何者だ?
人間の上半身のようなものだけで構成された、謎の生命体だった。いや、なんだあれ...傷口か?切断されたような断面があるため、おそらくは下半身もあったのだろう。人間の形をしている、ということは...
「魔、族...?」
新手の魔族だと?あの四人以外に魔族がいたなんて...って待てよ?そういえばキネットが送りつけてきた情報の中に、魔王が生み出した魔族の話があったはず...!
「すみません魔王さま...全力で移動していたのですが、この身体でしたので...」
「勇者が聖剣の力を解放していたからもしやとは思っていたが...やはり突破されていたのだな」
「やっぱり!テメェ七十六層に居たっていう魔族か!」
下半身がないのは、おそらくライトが爆発によって土偶の下半身を消しとばしていたからだろう。もしや、あの時上半身側も消していれば、こいつは現れなかったのでは...?
「だが、それにしても遅かったじゃないか。どうしたのだ?レジリスよ」
こいつ無視して話し続けやがる...レジリスって名前なのか。あの魔族がどんな力を持っているのか大方予想はついているが、どういう戦い方をするかまではわかっていない。今下手に踏み込めば返り討ちだ...!
「魔王さまが山を乗り換えるのは知ってたんですけど、僕が戻ってからだと思ってたんです...誰にもバレないように大回りしてやっと山まで辿り着いた時に移動されて、絶望しましたよ...」
「それはすまなかったな。だが、それでもよく来てくれた」
「アイツらが一度山から離れてくれたから、なんとか間に合いましたよ...危なかったです」
なっ...もしかしたらあの休憩がなければこいつが到着する前に倒せたかもしれねぇのか...!いろんな行動が全部裏目に出てる...!
「まぁ余にとっては、死んでいようが生きていようがさして違いはないがな」
「ごもっともです」
……仕方ない。魔族の生き残りの加勢を許してしまったことへの後悔はもう遅い。あいつがここに来たことをデメリットではなくメリットとして考えよう。
あの魔族が来たことで、一つの選択肢を取れるようになった。それは、同調魔法を使った即死攻撃だ。あの魔族を殺し、その傷を同調魔法と魔法改竄を同時に使って魔王に移す。敵が二人に増えたことで、俺を犠牲にする最終手段だったものが、いつでも取れる選択肢に格上げされたわけだ。
9934、9935ページ 全力疾走
全力疾走という複合魔法は、加速系と物理保護などの肉体強化系のバフをありったけ詰め込んだものだ。そして、この魔法をかけられるのは人間だけじゃない。物にだって付与することができる。
俺はエアガンを次元収納から取り出した。その中に込められているBB弾にバフをかけたのだ。人にバフをかけることはできないが、物にはかけることができる。一度目の戦闘でステラが見つけたバフ禁止の抜け穴だ。
このバフをかけたことにより、BB弾は速度操作無しでも超速度で飛び出して敵を貫くことができるはずだ。つまり、能力範囲外にいるあの魔族をここから狙い撃てるわけだ。まだ魔王にはエアガンを見せていない。魔力銃だと勘違いしてくれるはずだ。回避も防御も必要ないと考え、何も警戒せずに無視してくれるだろう。
あいつらがこちらから目を話した隙に、魔族にぶち込む!
「……では、覚悟は良いな?レジリスよ」
「ええ。はるか昔から、覚悟はできております」
今だ。あいつらが互いの方を向いている今撃ち込め!
俺は銃口を魔族の頭に向け、引き金を引いた。
命中しなかった。
なぜ?
それは、魔王が魔族を握り潰し、砕いたからだ。
「な、なにぃっ⁉︎」
てっきり二人で襲いかかってくるものだと思っていた俺たちの頭には困惑しかなかった。
そんな俺たちを尻目に、魔王はサーマルの球体に接続すると、またしても己の手で砕き、破片を口の中へと放り込んだ。
「なにを...して...?」
意味がわからなかった。けれど、なにかヤバいことが起こりそうだと直感が告げていた。
「これで、配下の力は余のものとなった」
「……うぷっ...⁉︎」
魔王の身体にオーラのようなものが一瞬まとわりついたかと思えば、周囲の魔素の量が急激に増加した。あまりの濃さに気持ちが悪くなってしまうほどだ。
「……って、おいおいマジかよ」
魔王の身体がぐんぐんと巨大化していった。おそらく、サーマルの力を使って身体を構成している魔素を増幅させているのだろう。やっていることは、巨大化魔物とさして変わりない。
「魔族を取り込んでやることが巨大化だぁ?本気かよ」
迫り上がってくる気持ち悪さを呑み込みながら啖呵を切る。
「そいつぁ...負けフラグだぜ!」
エアガンの引き金を引き、巨大化した魔王の身体を撃ち抜いていく。
「みんな!最後の正念場だ!ゼッテェ倒すぞ!!」
ここに臆するものはいない。デカくなったところで、巨大化魔物で慣れてんだから今さらって感じだ。
仲間たちの威勢のいい声が、後ろから聞こえてくる。
さぁ、ラストスパートだ。
魔族レジリスは、黄色の髪をした丁寧語僕っ子執事みたいな感じです。
二代前の人魔戦争にて、魔王が殺した勇者パーティーの一人の魂を使って生み出した魔族であり、勇者パーティーの生き残りのうちの一人に寄生させてシレンの穴第七十六階層に送り込まれました。
固有能力は、魔王譲りの寄生能力と、超再生能力。
このうちの寄生能力はライトの爆発によって消失しており、超再生能力だけが残っている。
名前は復元力のレジリエンスから取られています。
以上、本編で解説する機会のない情報公開コーナーでした。