前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
巨大化が負けフラグなのって、その巨体を使って物理で殴るしか敵の勝ち筋がないと言ってる様なものだからだと勝手に思ってるんですが、生憎この魔王は二つの再生能力を使って耐久してくるクソ厄介な奴なんでまだ勝ち筋全然あるんですよね...
「……チッ、回復力エグいな」
魔王にBB弾を大量に撃ち込んだにも関わらず、魔王は傷一つ負っていない。いや、正確に言えば、一瞬傷をつけたがすぐに再生されてしまったが正しいな。
みんなも各々攻撃を仕掛けるが、ことごとく再生されてしまう。傷をつけられたのかどうかすらわからないほどの速さでだ、
「二重の再生か...」
サーマルの魔素増幅による再生と、おそらくはレジリスの能力である超再生能力。その二つを同時に使うことで、あの速度の再生を実現しているのだろう。
レジリスの能力はあの土偶が兼ね備えていた、圧倒的な防御性能か超再生のどちらかだとは思っていたが、レジリスが土偶に寄生したことで先代勇者が突破できなかったことを考えると、自ずと後者になる。
硬いだけで再生しなかったから、どの勇者もゴリ押しで突破していた。そして再生によってそれが出来なくなったために突破できなくなったと考えられるからだ。
「まずは再生能力突破...の前に攻撃パターンの解析からか!」
こっちの攻撃が少し薄くなったタイミングで、巨大化した魔王からの反撃が来た。といっても、巨大化した肉体を使っての物理攻撃はしてこない。ずっと壁を背にしてもたれかかって巨大な身体を支えている。
よって魔王の攻撃手段は魔法と、魔物を召喚するというものに限定される。まずは小手調べといった様子で、大量の魔法が飛んできた。
「……ん?」
魔法を走って避けながら観察していたら、妙なことに気がついた。
「なぜ増幅させない?」
魔王はなぜか、魔法をサーマルの力で増幅させることなく通常のまま放ってきていたのだ。もちろん、元々魔力量の差によってある程度俺たちのとは威力に違いはあるわけだが、巨大化前と変わっていないのだ。そのため、少しショボく見えてしまう。
「砕いて取り込んだせいで弱体化してんのか?それとも、自らの巨大化にリソース割きまくってて魔法の増幅に使えないだけか...?」
まぁあとは実際は増幅できるのにわざとしてないって説もあるにはあるが...それをして俺たちを殺せるんなら魔王もさっさと使っているだろう。それをしてないってことは、できないかやったところで俺たちを確殺できるわけじゃないってことだから考えなくてもいいな。
「増幅はないってことは、バンバン魔法使って良いってわけだ!ニア!遠慮なくやっちまえ!」
「了解!」
これまでスキルで魔法を発動させていたニアが、脳内に魔法陣を描いて魔法を発動させる。その場で最も効率良い魔法を選んで複合魔法にし、飛んでくる魔王の魔法を撃ち落としながら魔王に攻撃を仕掛ける。
「最大火力で行くわよ!準備するから持ち堪えなさい!」
ニアは攻撃と同時並行で準備を進める。おそらくは、プラズマ攻撃の準備だろう。持ち堪えろ...って、ニア自身で十分自衛できそうな攻撃してんじゃねぇかと言いたくなるな。
「それならこっちも最大火力だ!行くぜ!閃光・改...九割九分!」
指先に次元収納の穴を開け、そこからストックの閃光を放つ。最大魔力の99%を注ぎ込んだ閃光は、恐ろしく速く空を切り裂いて突き進み、魔王の腹を撃ち抜き貫く。
膨大な熱量により傷口は完全に熱せられた。止血するに止まらず、ドロドロに溶けてしまうほどに。
しかし、そこまでのダメージを負わせたというのに再生は止まらない。これまでよりかは時間がかかったが、一秒もあれば完全に塞がってしまった。
「同時に全て消し飛ばすか、再生を阻害するしかねぇか...」
ただ高火力の攻撃をぶつけたとしても、すぐに再生されてしまうから無駄だ。ニアのプラズマも意味ないかもしれない。まぁ物は試しだからやってはみるが、あまり当てにしない方がいいだろう。
「やれることは全部試す!」
『色彩剣装 原色・赤』
おそらく徒労に帰すだろうが、少し前に手放した刀を拾って赤い光を纏わせ、魔王の触手へと近づいて一本切り倒す。
「っぱ再生阻害意味ねぇか!」
赤の再生阻害はきちんと機能しているのだろうが、魔素による身体の再構築を止めることはできない。レジリスの再生は封じることはできても、少し時間はかかるが元通りに治されてしまう。
「カリヤ!」
「わかってるよ」
頭を横に傾け、ステラが放った無心の弓を回避する。俺のすぐそばを通り抜けた無の弓は魔王の身体を抉り取り、そのまま消し飛ばす。
「……これでもダメなんだ」
残念がるステラの声を聞きながら思考を回す。
巨大化した状態でも電気に弱いのは変わっていないのだろうか。速度操作による再生速度減速と一緒に試してみよう。
「クミリア!一緒に行くぞ!」
「任せてちょーだい!」
『雷装』
二人で雷装を纏い、魔王の放つ魔法攻撃を走って掻い潜りながら近づいて跳躍し、腹に向かって飛び蹴りを叩き込む。もちろん足に全雷装を集中させ、蹴りの瞬間に勢いよく流し込んでおく。
「効いてはいる...みたいだな」
ものすごい重低音のうめき声が魔王の口から漏れた。雷装が有効なのには変わりないようだ。だが、蹴りという打撃では傷をつけるには至らない。雷装と併せて内部にダメージを与えることはできても、この巨体ではあまり効果は出ない。打撃より切断の方が良さそうだ。
「クミリア一旦離れてろ!」
4571ページ 黒のみ 触手・水
『雷装・剣』
「切り刻む!!」
クミリアが離れたのを確認してから水の触手を展開し、雷装魔力を流して剣にする。刀にも雷装を流し、合計十本の剣を使って魔王の腹を切り裂く。
「減速は...する暇もなく再生されちまうか」
さっきも減速を試していたのだが、うまくいかなかった。傷が深ければどうだろうと考え、抉り取るようにして腹の肉を切り飛ばしてやったのに直ぐに治されてしまった。減速をしようとしたその時にはもう治ってしまっている。
しかも厄介なのが、再生は一括ではなく部位ごとに細かく分けられてかけられていることだ。全体への再生ならば、常にどこか傷ついている状態にして、少しずつ再生速度に干渉して遅くしていくことができた。指を傷つけて減速させ、魔王が治している間に今度は脇腹を傷つけて減速を続ける...といった感じだ。
しかし、部位ごとに再生がかけられている場合は別。腹の肉一つ取っても、再生は百以上ののブロックに分けられて治されている。細胞一つ一つに再生を促しているようなものだ。傷が治ればその部位の再生は終わるため、減速させても無意味になってしまう。減速を引き継ぐことはできない。
「サーマルと同時に使うだけでここまで再生力上がんのか...」
シレンの穴でのレジリスの再生は、まだ今よりも遅かった記憶がある。というか、あの時はどうやって攻略したんだったか...
「……そうだ。再生箇所を物で塞げば...!」
前にやった方法を思い出した俺は、触手の剣で腹を切り裂いたのち、触手を傷口に押し当てる。
「……よし!再生防げる!」
どうやら傷付けた部位が何かで塞がれていた場合回復が阻害されるのはシレンの穴の時から変わっていないようだ。この状態で、再生速度に干渉し続ければ...!
「ゼロにできる...けどなぁ」
この部位の再生速度をゼロにできたところで、戦況は何一つ変わらない。土偶の時はそのまま攻撃を続けられたが、この巨体だ。半径七メートルをゆうに越すこの大きさでは、この一部分を止めたところで意味がない。離れればまた再生が始まってしまうからな。このまま前に切り進んだとしても、いずれ最初の傷が能力範囲外に出て再生が再開し、逃げ道を塞がれてしまうのがオチだ。
「しゃーないから適当に物で埋めて...!」
次元収納から大量の剣を取り出し傷口に刺しまくる。とりあえずこれで傷口を埋めてしまえば、離れたとしても再生はしない。この傷はあとで何かに役立てよう。
「……つーか、ここ魔法飛んでこねぇな?」
さっきから傷つけたり再生を阻害したりと好き勝手やっているのに、なぜか魔王の魔法が飛んでこなかった。
「……まさか、自分に当たるからか?」
今俺は、魔王の腹の真前にいる。魔王の触手を足場にしてだ。ここに向かって魔法を放とうとすれば、腹か触手のどちらかには魔法が当たってしまうだろう。それを恐れているのだろうな。無駄に自身の身体を破壊して、それを糸口に勇者の攻撃を受けたらひとたまりもないだろうし。
「真正面が安地とかどこの⑨だ...?まぁそろそろ離れるか」
ここにいても何もできないし、そろそろニアの準備が終わった頃合いだろうから安全地帯から離れる。
「ニア、準備はいいか?」
「ええ。道を作るのは任せたわよ」
「了解!」
『色彩剣装 原色・赤』
『色彩剣装 原色・緑』
「混色の黄!切れろ空間!!」
魔王のすぐ前まで見えない刀を伸ばし、グルンと円状に空間を切って裂け目を作り出す。そうしてできた道に、ニアは生み出したプラズマを放り込んだ。
プラズマは真っ直ぐ魔王のもとまで飛んでいき、空間の裂け目の道が途切れた瞬間に拡散して圧倒的な火力を撒き散らした。
「ナーイス!!でも治るのね...!」
俺たちめがけて魔法が飛んでくるのが見えたので倒し切れていないとすぐにわかった。普通の巨大化魔物なら一瞬で消し飛ぶのだが...やはり再生持ちは無理なようだ。俺とニアは別々の方向へ駆け出し、また別の作戦を練る。
「ってかこれを試そうぜまず!」
黄色の光を纏ったままの刀を振り抜き、魔王の身体を真横に引き裂く。空間の裂け目によって再生を封じ、しかも重力に引かれる形で上半身が落ちてきて、
身体が裂け目に突っ込むことで更に引き裂か...れないだと?ってか落ちてこないじゃんかどういうことだ?
「……まさか、壁に寄りかかってるんじゃなくてもうへばりついてる?つーか融合してる?」
そりゃ動けないわと思ってしまった。というか魔王は、もうあそこから一歩も動くことができないのだろう。そうじゃなきゃさっき安地と言ったところ実際は全然安地じゃないし。俺が乗ってる触手をチョイと動かすだけで弾き出せるんだからな。それをしてこなかったってことは、あの触手も動かせないってことだ。
「なんか巨大化してから逆に弱くなってねぇか...?厄介度は増してるけどよォ」
最初から今までずっと、魔王は強いというよりかは厄介ってのが合ってるんだよな。チマチマ妨害しながら耐久して、俺らが消耗するのを待つ...魔王の戦い方かよこれ。
「ってそんなこと考えてる場合じゃねぇ。いくら攻撃しても無駄なんだから、再生をなんとかする方向でいかないと...」
黄色の斬撃で出せる空間の裂け目はなかなかの効果が出たが、十秒たって裂け目が消滅してしまえば再生されてしまう。見えない刀身を伸ばすせいでクッソ重い刀を振り回し、十秒経つ前に魔王の全身全てを消し飛ばすのはどう考えても無理があるためこの選択肢も消える。
あと試してないのはライトの必殺技とレストのカウンターくらいだ。必殺技は効果はあるだろうけどミスった時の代償が大きいから最終手段として使うしかない。レストのカウンターは、全身を消し飛ばすほどの火力の魔法攻撃を魔王が放ってくれるわけないから無理。
有用な攻撃手段はあらかた無くなってしまったから、もう再生を止める方法を探るしか道はない。
「かといって、攻撃しては物で埋めるんじゃ時間かかるし...」
「ねぇカリヤ!あの再生力って魔族の力なんでしょ?」
偶然近くに近づいてきたクミリアがそんなことを言ってきた。
「あれ略奪で奪えないの?」
「……なるほど、その手があったか!」
サーマルでもレジリスでもいい。どちらか引っ張れば再生能力はかなり落ちるはずだ。それに、いつもなら完全に奪い取ることはできず魂を引っ張るような形になっていたけれど、今なら魂が内包されているあの球体を引き摺り出す形になるはず。うまくいけば魔王が魔族の力を使えたように、球体を使って俺らでも能力を使えるかも...
「……っと思ったけどダメだ。リスキーすぎる...!」
略奪を使ったところで、魔族の固有能力を引っ張れるとは限らないのだ。古代の魔法を幾つも知っている魔王なら、略奪も知っているだろう。対策している可能性は大いにある。対策していなかったとしても、魔王にとっての一番を俺らで操作できない以上、適当な魔法を掴まされるかも。それが俺の持っていない古代の魔法ならまだいいが、俺が使ったことのあるなんてことのない魔法なら不発になってしまい、魔力が無駄になる。それは避けたい。
「じゃあ魔族の球体を探して破壊するのはどう?」
「無理だ。あの二人の魔族は見つけられない」
サーマルとレジリスの球体は握り潰されはしたものの、完全に破壊されたわけではないはずだ。もしアクセルらと同じように破壊されたと見做されていたならば、今ここでサーマルやフロートの力を使えてないとおかしい。ということは逆説的に、サーマルやレジリスは完全に破壊されたわけではないってことになるわけだ。よって、魔王の中にはまだサーマルとレジリスの球体が残っているとわかるわけだ。
だが、魔王の中にあるからといって速度操作で見つけられるわけではない。そもそもあの球体は魔族の魂でできているもの。魂を探知できなければ、たとえそこにあったとしても速度探知は捉えてはくれない。
そして、俺はサーマルとレジリスの魂を探知することはできない。フロートやアクセル、キネットの魂を探知できるのは、略奪で能力を奪おうとした経験があり、魂の存在を知覚できているからだ。二人には略奪は使っていない。だから魂を捉えられない。実際、魔王が二つの能力を同時に操っているという嘘を見破ることができたのは、アクセルの魂が反応していないのがわかったからであって、サーマルが接続されているのかいないのかはまるでわからなかった。
……もし仮に、二人に対して略奪を使っていて、魂を探知できたとしても見つけるのは難しい。このサイズだぞ?半径七メートルじゃ全身隈なく探すのは不可能に近い。
「じゃあもう探さずに適当に攻撃しちゃおっか!」
「本末がコケてる気がしないでもないが、まぁそれが得策か。偶然破壊できるかもだしな!」
会話が終わったタイミングで別々の方向へと逃げ、魔王の魔法攻撃を避けていく。
「ライト!あの雷を叩き込んでやれ!」
魔王の全身に攻撃を浴びせるならこの技が適任だろうと考え、ライトに指示を出す。
「了解!」
ライトは展開していた聖剣を鞘の状態に戻し、雷を聖剣に纏わせる。そして聖剣を振り...加速する雷撃を魔王に向けて放った。
「っ、マジかよこれ火力不足なるんか⁉︎」
少し前に魔王に使った時はもう蹂躙レベルだったのに、魔王のサイズがあまりにもデカいせいで下半身の触手の半分に対してしか効果を発揮できていない。たしかに、一度に出せる雷撃の数には限りはある。だが、まさかここまで効き目が弱くなるとは...出力自体は落ちていないのにこれはヤバすぎる。
「まぁいいそのままやっててくれ!」
「それはもちろんだけど...マズイかも」
魔物が虚空から湧き出てきた。魔王が魔法を放つ以外にできるもう一つの行動である魔物召喚をここで使ってきたのは...ライトの周りに多く召喚してきたのを見るに、あの雷撃のターゲットを受け持つフレアとして使うためだろう。魔王の思惑通り、雷撃は魔物に吸い寄せられてしまい魔王へ向かう数が減ってしまう。
「魔物は私が受け持つわ!雷装しておきなさい!」
いつのまにかニアは雷雲を生成しており、妖精の力も借りながら召喚される魔物たちを撃ち抜いていく。
「ニア!魔物対処に使わない余力使って魔王の上半身撃ち抜けるか?」
「できるわ今やる!」
ニアは妖精の力を使って電気エネルギーを溜め、上半身を狙って射出する。さらにスフィア同士を魔王の近くで対消滅させることでエネルギーを炸裂させダメージを与える。
「……よし、さっきは否定したけど、このタイミングなら行けるはず...!」
9931ページ 略奪
「……よっしゃ引っ張れた!!」
ライトとニアの攻撃によって、魔王は再生に力を注がなければならなくなった。それによって魔王は再生のために魔族の力に強く頼らざるを得ず、そのタイミングで略奪を発動したことで魔族の力を引き当てることに成功した。魔族以外の力を引き当てる可能性があったからリスキーだったが、一番を誘導できれば話は別。色々考えて無理だなと思っても、やってみるものだな。
まぁ、球体ごとこちらに引っ張り出せるわけではなさそうだったからすぐに手放したが、魂の知覚さえできれば良いので問題ないな。
「しかもレジリスを取れたのはマジナイス...!」
どっちを取れるかは完全に運だったが、良い方を引くことができた。サーマルの方は、赤の光を纏わせた刀で切り回復阻害をしてしまえば盗めるようになるだろう。回復阻害があるとレジリスの再生では治せないからサーマルの力に頼らざるを得なくなり、一番の定義に引っ掛かってくれるわけだ。
「じゃあまずは魔力を回復して...!」
もはや誰もが存在を忘れてしまっているであろう左手首につけている腕輪の効果を起動する。この数ヶ月、暇さえあれば少しずつ魔力を込めて貯蔵していたため、内包されている魔力はとてつもない量になっている。そこから魔力を取り出すことで、略奪によって消費した魔力を回復させる。
「その腹を掻っ捌く!」
『色彩剣装 原色・赤』
魔王の触手の上に乗り、勢いよく駆け抜けながら魔王の腹を引き裂いていく。
「そして略奪ゥ!」
9931ページ 略奪
「サーマルゲット!!」
サーマルの力も引っ張ることができた。これで、二人の魂を探知できるようになった。速度探知で魔王の全身を隈なく探せば...
「って、それが出来ないから困ってんだよな...」
魂を探知できるようになったとはいえ、その問題はまだ残っている。
……切り札を切るしかないか。まだ追い詰められてはいない。まだ他に手はあるかもしれない...だからこそここで使って、一気にこっちの流れに持ち込む!
「みんな!ちょっと準備するから一旦離脱する!なんとか持ち堪えてくれ!」
これからやることに集中するために、魔王から一番離れたところまで下がる。
「よし、ここなら...神様、聞いてるよな?」
『このタイミングで話しかけてくるということは、楔じゃな?』
「ああそうだ」
この場を変えられるのは、速度操作しかない。制限された力を解き放ち魔王に一泡吹かせてやる。
『楔は前と同じか?』
「いや、あれじゃ何も変わらない。やるならもっとデカくだ」
『では、なにを楔にするんじゃ?』
「じゃあ、今から言うぞ。本当にそれで良いのかとか聞き返さずにすぐにやってくれ。覚悟は決まっている」
『了解じゃ』
一度深呼吸をして、俺は神様に言う。
「雷装シリーズを除く、現時点でこの身に刻まれているスキル、並びにその基となった魔法の発動を、速度操作発動中に限り永続的に禁ずる」
『……了解した』
神様のその言葉と共に、俺の心臓にとてつもない痛みが走った。
「あ゛ッ゛、グゥ゛ッッッ...!!!」
過去最大規模の楔が突き刺さったことによる反動による痛みが身体を蝕み...次第に収まっていく。
「フゥーッ、ふぅーっ、ふぅーっ、ふぅー...」
息をゆっくり整える。ゆっくり、ゆっくりとだ。これが、最後の休息になるだろう。だからゆっくり身体の調子を取り戻していく。
「……さぁ、行こうか」
楔を刺した直後に感じる、能力の制限を解放したことによる全能感が身体を支配する感覚を覚えながら、俺は一度切っていた能力を発動させた。
「イ゛ヅッ!」
瞬間、能力適用範囲が拡大したことによる情報量の波に頭が焼かれそうになるが、すぐさま思考速度加速を施して爆発しそうなほどの頭痛を解消する。
「……範囲は半径二百メートル、加速最大値は...音速の百倍強って感じか」
そう呟いた直後に走り出せば、瞬く暇もなく魔王のもとまで辿り着き、そのまま走りながら刀を振れば、一瞬で触手の大半が両断できた。
「ちょっ、なによその速度⁉︎...っていつのまに横に⁉︎」
驚きを隠せないニアの隣に移動した俺は、魔王に向かって刀を向けながら叫んだ。
「行くぜ魔王!この速度に追いつけるものなら追いついてみやがれ!!」
はい、おそらく次回はカリヤくん無双に...なるのかなぁ?
みんなを活躍させるつもりで書いているので、あそこまでの力を得たとしても一人で無双状態にはさせないと思います多分。
サポートにも使えるってのが話を作る上でも便利なんだよなぁ...