前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
書いてみたら意外と無双しなくて驚いています。
「魔族の核は...そこか」
速度操作の範囲は二百メートル。この魔王城をすっぽり覆ってしまえるほど広くなっている。ゆえに、魔王の中にあるサーマルとレジリスの魂の位置を探ることなど造作もない。
「みんな!今から俺が攻撃する箇所に魔族の魂が眠っている!よーく見ておけ!」
そう言ってから俺は、手に持っていたダガーを二本とも投擲する。人間でいう右の腎臓がある位置らへんにそれぞれ魔族の魂は眠っていたようだ。ってか、二つとも同じ位置にあるんだな...混ざり合って一つの球体になってるんだろうな多分。今気づいたけど、もし一つになってなかったら二つの球体から同時に力を得ていることになるしな...
「……って、ごめん今のナシ!核の位置自由に変えれるっぽい!」
的確に核がある位置にダガーが刺さったことで魔王もマズイと思ったのか、核の位置を動かしてきやがった。これだと指示を出してちゃ遅くなるな...自分でやれるところまでやってみようか。
「まずはダガーを回収して...そのまま切る!」
魔王に刺さったダガーを直接引き抜いて回収し、即座に現在核がある位置まで移動して肉を切り開く。
「減速は...やっぱギリ間に合わねぇか」
能力の制限を解放して多少は改善されたが、それでもまだ減速にかかる時間は長い。刃渡りの小さいダガーでつけられる傷の大きさでは、減速をかけて再生を止められるほどの時間を稼ぐことはできない。
「ならもっと大きな傷をつければ...っと、そうですか。流石に俺を最優先で狙うよなァ!」
俺を狙った大量の魔法が放たれる。どうやら、どれもが追尾性能を持っているようだ。
「でも、俺の力なら!」
一旦魔王から距離をとり、周りに誰もいない場所で立ち止まる。この速度があれば走って逃げ続けることもできるが、これからやる方法の方が何倍も楽なはずだ。
「丸ごと吹っ飛べ!」
俺に向かって飛んでくる魔法。その中の、俺からまだ遠い位置にある魔法を一瞬で加速させる。加速された魔法は、先行していた魔法に衝突して起爆。そのまま他の魔法にも誘爆し、全て撃ち落とすことに成功する。煙によって視界は不良だが、速度探知があるから問題無しだ。
「……まぁ、一度防がれたとしてもそりゃ追撃してくるよな!」
今度の魔法はさっきと同じように追尾性を持ち、速度は前よりも速いものだった。速度重視にした分威力は落ちているだろうが、まずは一撃当てて俺の足を止めようとそういう算段なのだろう。しかも、さっきと同じような迎撃をされないように、一発しか放ってこなかった。
「それならそれで対処のしようはあるん゛ッ゛⁉︎」
心臓を握り潰されたかのような痛み。魔王に略奪の力を使われた...⁉︎
クソッ、まだ見せたくなかったけどしょうがない!魔法で撃ち落とすしか...!
「消えろっ!」
ステラの声が聞こえたかと思えば、飛んできていた魔法が消滅した。無心の弓で消し飛ばしたのだろう。
「大丈夫カリヤ⁉︎」
「痛みはキチィが何はともあれ助かったステラ。よく異変に気づいたな?」
「そりゃ、カリヤのことずっと見てるもん」
「……そりゃ冗談か?流石に戦ってる相手の方見ててよ」
「でもファインプレーだったでしょ?」
……否定しないってことはマジなのか?まぁ助けられたからとやかく言えねぇか。
「っと、続々来やがるな警戒度マックスじゃねぇか」
三度魔法が飛んでくる。今度は一つだけではない。俺とステラの四方八方を囲うように飛んでくる。能力を使えない今の俺には逃げられず、ステラが全て撃ち落とすこともできない。そういう考えのもと放たれたのだろう。
「舐められちゃ困るな...レストこっち来い!」
レストに向かって叫ぶ。俺に声に気づいたレストがこっちに向かって走り出そうと一歩目を踏み出した瞬間...その速度を加速させ一瞬で俺たちのもとまで辿り着かせる。
「今の俺は!略奪を克服している!」
略奪を受けても、完全に引っ張られて相手に力の所有権が移るまでは本来の持ち主が力を扱うことができる。つまり、魂が引っ張られていても能力は普通に使えるのだ。それなのに、俺を含め、今まで略奪を受けてきた魔族が力を使うことができなかったのは、単純に能力を引っ張られる時に発生する魂を引っ張られる感触と心臓の痛みのせいだ。極論、その痛みさえ我慢してしまえば力を使うことができる。
……まぁ、普通は我慢できない。何度も略奪を喰らってきたから慣れた...ってだけで我慢できるものではないのだ。それでも我慢できているのは...いや、我慢などしていない。既に心臓の痛みなどないのだ。
痛覚の伝達速度を加速できる上限まで加速させた。魂の痛みを、それを伝達する電気信号を、脳が理解する前に流しきって消してしまうのだ。痛みに耐えながら集中し、一度加速を済ませてしまえばもう痛みが来ることはない。略奪をうけていたとしても、通常通り能力を行使することができるわけだ。
そのおかげで、こうして防御が間に合うってわけだ。
「ほんと、人使い荒いよねカリヤって!」
レストはそう言いながらカウンターを発動させ、四方八方から飛んでくる魔法を全て受け止め、その威力を魔王に跳ね返す。
「いつも悪いなレスト。もう大丈夫だ!」
ダガーから刀に持ち替え、俺は魔王に走って近づく。先ほどのカウンターによって魔王に刻まれた大きな傷。再生はされたが、かろうじて減速が間に合ったことで残された小さな傷に追い討ちとなる抜刀を放つ。
「ハッ、こりゃもう鞘の意味ねぇな」
一応鞘に刀を押し込んでから抜刀してはみたが、速度操作で音速の百倍強の速度を出せるのだから鞘の力で出す音速なんてほぼ誤差だな。
「……って、ヤベェな流石に刃こぼれしちまうか...」
速度操作で加速したことによって付与される物理保護はあるにしても、流石に耐えきれなかったらしい。規模はほんの僅かではあるが、切れ味に関わってしまうレベルの刃こぼれを起こしてしまう。
「久しぶりにこの修繕方法使うな」
刀を構成している金属の破片を鞘に入れ、そこに刀を納刀する。少し待てば自動で修繕されるが...待つのは面倒だ。さっさと加速させて直してしまおう。
「よし直った。じゃあ続きを...その前にそろそろ発動しておくか」
『雷装』
ニアの雷雲の範囲がどんどん広くなっていた。最初は召喚される魔物を倒すためのものだったから最低限ライトの周囲を覆うほどのものだった。その範囲内からでも妖精の力で雷を魔王に射出することはできたからまずはその範囲だけ展開していたのだろう。
そこからニアは直接魔王に雷を落とせるように範囲を少しずつ広げていって、とうとう魔王の真上まで広げたわけだ。音速の百倍以上で動けるからといって落ちてくる雷を避けることは不可能なので、安全策として雷装を発動させておく。雷装シリーズは楔の制約からちゃんと外しておいたから普通に使えるしな。使っておくに越したことはない。
「ってか、ほんと雷装の加速の原理謎だよなぁ...なんでどんな状況でも速度を1.5倍にできんだ?やっぱ雷はそれだけ特別なんかねぇ?」
手に入れてから早一年、未だに加速の原理がよくわかっていない雷装を纏いながら呟いた俺は、後ろから飛んできていた魔法を横っ飛びで回避しながら刀を振って魔王の肉を切り裂く。
「減速のかけ方もだいぶ慣れてきたぜ。もっと大きな傷作ってやんよ!」
一度走る速度を殺し、すぐに切り返して加速しながら走り、最高速に達しながら刀を振る。俺を追ってきていた魔法ごと魔王の触手をバッサリ切り落とすことに成功し、背後で切られた魔法が周囲を巻き込んだ破壊を巻き起こす。
「減速成功!!」
今切り飛ばした触手。その断面から、新しく触手が生えてくるようなことはなかった。完璧に減速が間に合い、再生不能に陥れることができたのだ。
「次はどこを...っとクミリアいいところにいんじゃん」
クミリアと一緒に攻撃すれば、もっと大きな傷を作り出せるかもしれない。そう思った俺は、近くにいたクミリアのところまで一瞬で近づいた。
「うわびっくりしたぁ⁉︎ってかカリヤバフちょうだい!あとスタミナも回復して欲しい!」
「スタミナは了解だが、さっきと同じようなバフはできないぞ。俺はもう、速度操作と一緒に魔法を使うことはできないからな」
「えっ、さっき聞こえたのホントだったの⁉︎魔法使えないってやばくない?」
「まぁそうだな。だが、抜け穴はちゃんと作ってあるから問題ない。あと、一瞬だけ雷装解除してくんね?スタミナ回復できねぇ」
「わかったけどちゃんと守ってよね!」
「当然だ」
クミリアの真上に飛び、もし雷が落ちてきたとしても守れるようにしながらスタミナを回復させていく。ほんの少し止まってくれればもう一瞬だ。
「回復したことだし、一緒に行こうぜクミリア。マッハ百五十の領域見せてやるよ」
「いいね面白そう!」
再び雷装を発動させたクミリアと共に走り出し、二人で突撃を...
「ってなんかクミリア遅くね⁉︎雷装の加速が機能してない⁉︎」
一緒に走り出したはずなのに、一瞬で俺とクミリアとの間に距離が開いてしまった。クミリアの速度はおよそマッハ百強。俺が雷装を発動していない時の速度と同じだった。
俺とクミリアの雷装の仕様が微妙に異なるのか、それともクミリアが雷装を発動させた状態の速度を加速しているせいで最低保証のマッハ百強までしか加速させられないのか...原因はよくわからないが、これでは一緒に行動するのは難しいな。
「……悪いクミリア加速はしてやるから頑張ってくれ!別々に動こう!」
「よ、よくわからないけど了解!」
よくよく考えれば能力適用範囲がバカ広くなってんだから、わざわざクミリアの近くに行かなくとも加速できるんだったのを思い出し、俺たちは別々に攻撃を仕掛けることにした。思考や反応速度も上げてるから、速さに振り回されるようなことは起こらないだろう。その超スピードを活かして、魔王に攻撃してもらいたい。
「あとはライトも加速させれば...話つけに行こうか」
了解もなしに加速させるのは事故のもとなので、了解を得に行きたいんだけど...飛んでくる魔法の量が増えてやがんな。魔王が俺に対する妨害を強めてきているせいで、このまま一直線にライトのもとへ移動するのは難しそうだ。
「しかも閃光なのが厄介だな...」
閃光は魔力で出来ているものを貫通できるため、加減速を使って魔法同士を衝突させる方法で対処することはできない。一応方法がないわけではないが...少し余裕のありそうなニアに頼むか。
「ニアーこれ消してくんない?」
「閃光に追われてんのに近づいてくんじゃないわよ⁉︎」
そう言いながらもニアは魔法拡散を使い、飛んでくる閃光をかき消してくれた。
「ありがとよ!あっそうだ。俺が加減速使ってサポートできることってなんかある?」
「ないからさっさと特攻してきなさい!」
まぁ魔法使えないし、半ばそうだろうなと思いながら聞いてみたけどかなり投げやりな返答が返ってきた。どうやら、雷雲の制御だったり妖精への指示出しだったり、魔王への攻撃への対処だったりで脳のリソースがカツカツのようだ。一応思考速度加速を少しだけかけて、負担を減らしてやろう。
「よし、今のうちにライトのところに...!」
ニアのおかげで魔王の攻撃が途切れたので、ライトの近くまで駆け寄る。
「……なんでその速度で来たのに全くの無風なの?」
「今気にすることか?それ」
そりゃたしかに普通だったらマッハ百五十なんて速度で動いているんだし馬鹿みたいなソニックブームが発生してもおかしくないが、そこは減速でカバーだ。速度を固定することで暴風が仲間を襲うことを防ぎ、誰もいないタイミングで固定を解除して解き放っている。これによってソニックブームを防いでいるのだ。
……あれ?もしやニアの負担が増えてるのって俺のせいか?俺が走り回ることで暴風が起き、その風によって雷雲が散らされそうになっているのを必死で抑えているとしたら...ごめん。後で謝っておこう。
「ライト。その雷撃はやめて聖剣展開で突っ込もうぜ。そいつなら、サーマルの方の再生は機能停止するだろうから俺の減速もやりやすい。加速なりなんなりサポートしてやるから行ってこい」
「わかった。サポートは任せるよ」
「任された行ってこい!」
走り出したライトの速度を加速させる。
この場に音速の百倍で動ける者が三人もいたらどうなるか...
……瞬き一回で戦況が目まぐるしく変わることとなる。
ライトが聖剣展開を発動させて魔王に切り掛かると、まるで豆腐を切るかのように刃がよく通る。魔素を反転させる聖素によって、魔王の身体が強制的に削り取られるからだ。そして、切られた箇所にはほんの一瞬ではあるが聖素が残留する。その聖素が魔素に戻ってしまうまでの時間を減速で稼ぐことでサーマルの力による再生を妨害し、そのまま傷の再生速度を遅らせて傷として残す。
クミリアの打撃も馬鹿にはできない。速度はそのまま威力に直結する。クミリアの放つ拳は魔王の肉体をへこませ、内部を圧迫して機能を鈍らせる。拳から伝わる雷装も魔王の身体を確実に蝕んでいた。
「ハァッ!!」
そして俺は、俺にしかできないことをしていた。魔族の魂の位置を把握できるのは俺しかいない。刀を手にした俺は、魔王の体内を移動する魂を追いながら体を切り開いていき、内部へと進行を進めていた。
「再生が鈍ってるおかげでやりやすいなァ!」
三か所で行われている音速を超えた破壊。それに加えてニアの雷にステラの無心の弓もあるため二重の再生も少しずつ処理が追いつかなくなってきているようだった。そこに再生速度減速も掛け合わせれば、魔王の再生を封じることはもはや容易かった。
だが、魔王もみすみす魔族の魂を破壊されてやる気は毛頭ないため、せっせと魂の位置を変え続けていた。常に俺の位置から遠く、かつまだ攻撃に晒されていない箇所に移動させているようだ。
「……そろそろ使うか。ここなら破壊されないだろうという甘い考えをぶち壊してやらァ!」
楔を打ったせいで、速度操作を使っている最中は魔法を使うことができない。しかし、さっきクミリアに行った通り抜け穴は作ってある。
俺自身が魔法を発動させるのがダメなだけで、何かに代理で発動させれば良いだけなのだ。そして、それを可能とする道具は多数存在しており、誰しもが使った経験があるはずだ。
それは魔道具。使い手の魔力を吸い取り、魔道具自身が魔法を発動させるというのが魔道具の仕組みだ。魔道具を介してならステラにも魔法を使えるようになるのも、この性質のおかげ。この性質によって、俺が自身に課した制限をも無視できる。
だから、俺は刀の鞘を押し込むことで発動できる魔法も使うことができたのだ。あの鞘も一種の魔道具。同じく魔道具化している魔力銃も、この状態でも使える武器の一つだ。
ただ、同じ魔道具化している物だからといって、魔法図鑑は使えない。魔法図鑑の魔道具しての効果は、新たにページを追加することができる機能と本の厚さを薄くする機能を付与することだけだ。そこに書かれている魔法陣に魔力を流して発動することは魔道具としての効果ではないため、代理発動にならないのだ。ゆえに魔法図鑑は使えない。
だが、魔法図鑑がなくとも、魔法図鑑に載っている魔法を使うことはできる。俺の中に入っている、次元収納とリンクさせた魔道具。それに魔力を流して起動することは、制約には引っかからない。よって次元収納を発動し、あらかじめ入れておいたストックを放出することは可能なのだ。
「神様がちゃんと意図を読み取ってくれてなきゃ詰んでたな」
あの文言から、魔道具を使うことはオッケーなのだと解釈してくれた神様には感謝だ。もし魔道具を使えていなかったら、そもそも次元収納の魔道具が即座に機能停止して身体から排出されていて、魔道具の力でこちらに持ち出していた武器が全て収納されてしまっていただろうからな。そうなったらもう負けは確定だった。
「じゃあ破壊させてもらうぜ...穿て!超光速弾!!」
ストックの超光速弾を発射させる。発射角度は完璧。そして、何かに当たったら急速に崩壊拡散してしまう超光速弾の欠点を、速度操作による干渉で得ることができる物理保護と、崩壊速度の減速という二つの補佐を加えることで補い、途中崩壊を防ぐ。
この速度だ。今から球体の位置を動かすことはできない。真っ直ぐ飛んでいく超光速弾は、混ざり合っている魔族の球体を撃ち抜...
「なっ、弾かれ...⁉︎」
確実に命中したというのに、なぜか超光速弾は弾かれてしまった。なぜこんなことが...とすぐに思考を回そうとして、俺はあることに気づいた。
「魂の反応がない?...ってまずい!」
俺は急いで魔王の中から走って外に出る。
出たのと、魔王の身体が再生しきって傷が埋まったのはほぼ同時だった。
「と、閉じ込められるかと思った...!」
もし気付くのが遅れていたら、動き出しが遅れていたら、俺は魔王の中に閉じ込められていただろう。そのまま窒息待ったなしだ。
「まさか、減速をそうやって乗り越えてくるとは...!」
やられた。魔王は魔族の力との接続を一度切ることで俺の攻撃を防いだばかりか、再生を止めることで再生速度の概念を消滅させ、俺のかけた減速をリセットさせてくるとは...俺は速度が元々ゼロのものを操ることはできない。その性質を利用されて、再生妨害を乗り越えられてしまった。
「クソ...こっからどうすれば...!」
また再生速度を減速させたとしても、同じように再生能力を一度解除してしまえばまた振り出しに戻ってしまう。再生を解除した隙に攻撃すればいいってわけでもない。解除させるのは一瞬でいいわけだし、再生が再開するまでの短い時間で殺し切ることなんてできないからな。
先に魔族の魂を破壊できればいいのだが、光速で飛んでくる魔法を事前に察知して魔王は防御をしてきたのを考えると無理難題のように思えてしまう。
魔王は俺たちがどこにいるのかを把握することができ、さらには魔法の発動を感知することができる。たしか魔道具の発動の感知はできないはずだったが...この量の魔素だ。魔王の潜在能力がどれだけ発揮されているかは計り知れない。今まで以上の探知ができるようになり、魔道具の発動も感知できるようになったと考えておこう。
位置の把握と魔法の発動の感知。この二つによって、思いもしない方法による奇襲は通用しなくなった。何をしたとしても、魔王には伝わってしまう。先読みされて、球体への攻撃は全て防御されてしまうだろう。
……こうなったら、ストックを全て使い切るつもりで球体に向かって放ち続け、防御のために魔族の力との接続を魔王に切り続けてもらい、再生できない間に殺し切る...これしかねぇ!
「全員攻撃し続けろ!再生は俺が封じてやる!!物量ですりつぶせ!!」
ストックを大量放出して魔族の球体に向かって魔法を放ち続ける。元から準備していたものを放つおかげで、普通の魔法使いには到底出すことのできないほどの発射レートを叩き出しながら、ひたすら高火力の魔法を魔王にぶち当てていく。
……だが、魔王には届かなかった。いや、たしかに魔王には届いてはいるのだが、はたしてあれを魔王と呼んでもいいものか...
「嘘だろ...あれで打ち止めじゃねぇのかよ⁉︎」
魔王はサーマルの力を使うことで魔素を増幅させ、さらに自身の身体を肥大化させることで肉の壁を作り出し、俺が放った無数の魔法を受け止めたのだ。
「ってか巨大化止めさせねぇと押し潰されてそのまま終わりじゃねぇか!チキショウ次から次へと難題が...!」
こんなにも思考速度を加速させているというのに、それでもパンクしてしまいそうだ。
「……目下の目標は圧死回避!それだけ考えろ!」
せっかく重い制約を課したと言うのに状況が全く好転しないことに苛立ってしまうが、それでも思考は止めない。俺一人の力ではどうにもならないってのはよくわかった。みんなの力を借りてこの困難を乗り越えるのだ。
だから、考える。勝利への糸口を掴むために。
マッハ百強、雷装込みでマッハ百五十を出せるというのに、なんでこんなに苦戦してるんですかねぇ...最初はこんなつもりではなかったんですけど、展開を考えていたら意外と魔王も抵抗できちゃうなと気づいてしまったんでこうなりました。
思いついちゃったもんだから仕方ないね。
カリヤくんにはもう少し苦戦してもらいましょうか(ゲス顔)