前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8881字。

エピローグ日常回二話目です。


王城に残る魔族の痕跡

「そういや王城ってどっから入るんだ?俺が前来た時は、裏口っぽいところから入ったんだけど」

 

俺が寝ていた宿から歩いて王城へと向かう途中に聞く。正面からか裏口からかで進行方向が大きく変わってくるため、ここらで聞いておかないとな。

 

「裏口からだよ」

 

あっ、そうなんだ。謁見だからてっきり正面から堂々と入るのかと思ってたけど違うんだな...って、そもそも謁見ってのは俺の想像か。招集かけられただけだし、もしや謁見じゃない可能性ある...?それなら普通の服でもいいのにも納得だけど。

 

「なぁ、何しに行くかってみんな知ってるのか?」

 

「いや、全員が揃った時に来てくれって使いの人に言われただけで、何するかまでは聞いてないよ。というか、聞いてみたけど使いの人も知らなかったみたい」

 

「へー...何すんだろ。なんか怖くなってきたんだが」

 

「何を怖がる必要があるのよ」

 

「いや、さ。俺の世界での創作物の話なんだが、魔王を倒した勇者は人々から恐れられ、なんやかんやあって処刑に...ってのがちょくちょくあってだな。その可能性が頭をよぎって...」

 

「突飛な発想過ぎない?なんやかんやって何が起こったらそうなるのよ」

 

「ほら、魔王を倒したってことは魔王以上に強いってことじゃん?もしそんな奴が刃向かってきたらなすすべもない。だから刃向かわれる前に処刑だってなんだよ。疑心暗鬼の結果なんだろうな」

 

「なんでそうなるのかしらね...というか、勇者を処刑できるほどの力があるなら勇者以外にも魔王倒せるじゃない」

 

「それ絶対処刑失敗して、逆上した勇者に返り討ちにあうやつじゃん」

 

「そもそも魔王以上の力を持つ人に逆らおうとするのがおかしいよね。どう足掻いても勝つのは無理なんだから、十分な報酬を与えてそれで終わりだよ普通」

 

「叛逆された時に怖いから処刑って、それもうどっちみちその国の未来は終わってるんじゃ...?」

 

「大前提として、そもそも叛逆を考えるような人は勇者に選ばれないと思う」

 

うわっ、五人全員から意見返ってくるとは思ってなかった。まぁ普通はそう考えるよな...

 

「ってかステラすげぇな正解だ。俺が知ってる中の一つに、処刑されそうになった勇者はなんとか危機を脱するも、人間を恨むようになり、やがて次の魔王になるってのがある」

 

「疑心暗鬼は双方に不幸を産むってことね。良い寓話じゃない」

 

寓話じゃなくて大衆娯楽なんだが...まぁ別にいいか。

 

「……まぁそんな怯える必要はないわよ。そんなこと考えるような人たちはいないでしょうし、もしいたとしてもこの六人に勝てると思う?」

 

「それもそうか。つっても中入る前に装備は没収されるし、魔力も全放出させられるんだけどな」

 

「……」

 

「おいちょっと待てなんで黙ったんだニア」

 

「……別になんでもないわ」

 

「まさか魔法を使えないって聞いてビビってるんじゃ...い゛だっ゛⁉︎足踏むなよ⁉︎」

 

「ご、ごめんなさい少しよろけてしまったわ」

 

……ガチでよろけて踏んだのかよ。今になってこんな一面を知ることになるとはな...案外ビビりなのか?それとも魔法が使えない状況そのものへの恐怖感があるのか...俺も速度操作を使ってないと不安になるし、似たようなものなのかもな。

 

「……っとここだな到着だ。さっきみんなが否定したように、処刑なんて起こるわけないんだから大丈夫だぜニア」

 

「なんで私に言うのよ...ほら、早く入るわよ!」

 

「入るってどうやって?堀があるし城には近づけないよ?場所違うんじゃない?」

 

「いや、違わないぞ。前はここで衛兵の人が魔法で道を作ってくれたんだが...いないな。どうすりゃいいんだろ」

 

「着いたら自分で魔法を発動させて入ってくれって使いの人に言われたよ。魔法陣ってどこにあるの?」

 

「それならここに...っと」

 

以前の記憶を思い出し、正確に地面に刻まれている魔法陣に魔力を流し込み、魔法を発動させる。城に向かって虹色の橋がかかり、城の壁に正方形の穴が開いた。

 

「よし、入るぞ」

 

「凄い裏口だね...」

 

「普段はどう見ても裏口があるように思えないもんな。俺はもう知ってるから速度探知でここに魔法陣があるんだなってすぐわかるけど、知らなかったらよく見たところで見えないし、防犯対策バッチリだよな」

 

たしかその場所だけ建材を変えることで魔法陣を作っているんだったか。すごいこと考えるよな。

 

「私でも見つけられなかった程だし、普段は認識阻害でもかかっているんでしょうね。ただ隠されてるだけなら人によってはわかってしまうもの」

 

「へー...そういや、前に来た時に認識阻害がどうとか言ってたな」

 

前来た時の記憶を思い返しながら虹色の橋を渡り、城の中に入る。

 

「お待ちしておりました。武器や装備、荷物などはここで預かります」

 

「聖剣や盾などは私どもには触れられないので、ご自身で壁に立てかけておいてください」

 

部屋の中に入ると、二人の衛兵らしき人たちがいて、荷物を置くように指示された。前と同じだなと思いながら、各々自分の荷物を置いていく。

 

……こうしてみると、前来た時と比べて荷物めっちゃ増えたのが一目瞭然だな...次元収納に大半突っ込んでるとはいえ、装備多すぎ...あっ、魔道具切らないとじゃん。

 

古代道具(アンティークギア) 休眠(ドーマンシー)

 

危ない危ない。危うく持ち込んでしまうところだった。これを外すとほとんどの装備は取り込まれるから、俺の荷物ってこれと魔力銃と魔法図鑑が入ったポーチだけになるんだな。そう考えると意外と少ないのかも?

 

「では、次の部屋にお進みください」

 

言われるがままに次の部屋に入る。そこには、前にも会った神官っぽい服装をした人がいた。

 

「この紙に書かれている文章を声に出して読んでください」

 

「なるほど、そうやって魔力を使い切らせるのね」

 

書かれている呪文を見てニアは察したらしい。さっさと詠唱を済ませ、魔力を光に変えて使い切る。

 

それとは対照的に、あまり魔法の知識を持っていないステラは少し首を傾げながらも声に出して読み...光が一切出なかったのを見るに、適性が低すぎて発動させる途中で魔力切れを起こしたようだ。唱えたのに光らなかったのをみて神官っぽい人が不審がってるけど、これがデフォルトなんですすみません。

 

「っと、俺も言わないとな。我が力は全て光に還元される」

 

みんな続々と魔法を発動させていたので、俺も詠唱して魔力を使い切る。

 

そういや前回は魔法陣に魔力を取り込ませていたけれど、今回は神の使いかどうかの判定はしないから魔法陣は関係ないんだろうな...あれ?シレンの穴だと神の使いじゃないってバレたけど、ここのは普通に素通りできてたよな...もしここでバレてたらって思うとゾッとするな。魔法陣の性能が悪かったのかどうかは知らないけど、助かったな。

 

「では、私について来てください。大臣のもとにお連れします」

 

あっ、やっぱり王との謁見ではなかったんだな。大臣ってなるとカルトか。勇者選定の日以来だな。

 

神官っぽい人についていく。俺が頑なに、「っぽい」と付けているのはこの世界に宗教があるのを見たことがないからだ。

 

宗教がないのは、女神という存在がちゃんと存在していることが勇者経由で判明しているがために、信仰というものが生まれないからだと勝手に思っているのだがどうなんだろう。いるとわかっているものに信仰することってあんまりないからな。それか、一強すぎて全員が教徒だからかえって宗教味が生まれないかのどっちかだろう。

 

……いずれにしても、じゃあこいつの服装はなんなんだよって感じだな。なんか意味のある服装なのかねぇ...?

 

「……おっ、ちょうどいいところに来たね」

 

カルトのいる部屋に向かっていると、廊下の向こうからカルトがやってきた。偶然鉢合わせしたようだな。

 

「すまない急用だ。この件は後に回しておいてくれ」

 

「かしこまりました」

 

カルトは隣にいた人に声をかけてその場を立ち去らせると、俺たちの方に向かって歩いてくる。

 

「ここからは私が受け持つ。君は持ち場に戻ってくれ」

 

「了解しました」

 

神官っぽい人が来た道を戻っていく。ここに残されたのは俺ら勇者パーティーとカルトだけだ。

 

「ふぅ...久しぶりだな勇者パーティーの皆々様。勇者選定の日以来か」

 

「そうですね。で、俺たちを呼んで何の話をするんですか?」

 

「まぁ立ち話もなんだ。部屋で話そうじゃないか。ついてきてくれ」

 

軽く手招きをしながらカルトは自身の部屋に向かって歩いていく。そーいやこんな感じの道順だったなと思い返しながらついていき、部屋の前に着く。

 

「少し待っていてくれ。呼んだら入ってくれて構わない」

 

カルトはそう言うと部屋の中に入る。

 

そこから一、二分ほど経ち...

 

「入っていいぞ」

 

中からカルトの声が聞こえた。

 

「失礼しまーす」

 

応接室のような部屋に入る。

 

「話をしやすいように、自由に座ってくれて構わない」

 

カルトに促され、俺たちは椅子なりソファなりに各々座っていく。

 

「待たせてすまなかったね。話す内容が内容だったから、万が一にも盗聴されるわけにはいかなくてね。魔法の干渉が無いか確認に時間がかかってしまった」

 

「なるほどだから時間かかっていたのか...で、そこまでしないといけないほどの話って?」

 

……と普段通りの口調でカルトに話しかけていたら、ちょうど俺が口を閉じたタイミングで横から肘が脇腹に飛んできた。何すんだと思いニアを睨みつけると、何タメ口してんのよとでも言いたげな目を向けてくる。

 

「前に話しやすい口調で良いぞって言われてんだよ脇腹攻撃して来んなよニア」

 

「それでも限度ってものがあるでしょ相手は大臣よ」

 

「はは、いいんだいいんだ。誰に聞かれているわけでもないんだ。私もフランクに行くから、ぜひとも普段通り話してくれたまえ」

 

「ほらこう言ってるだろ」

 

「いやはや、よく打ち解けているようで良かったよ。勇者も英雄も神の使いも癖揃いだったから名前を呼んでいる時に少し不安だったんだが、杞憂だったようだな」

 

「まぁ色々あったからな...って早々に話が脱線してるじゃん。話ってなんなんだ?カルト」

 

「……そうだな。衝撃的すぎる話だから会話でワンクッション置こうと思ったんだが、さっさと話すことにしよう」

 

衝撃的すぎる話...それがどんなものなのかわからないが、少しだけ空気が重くなったような気がした。思わず唾を飲み込んでしまう。

 

「実はだな...王様が死んでしまったんだ」

 

「……へ?」

 

「いや、正確には既に死んでいたというのが正しいか」

 

「ちょ、ちょっと待って王様が死んでいたってどういう意味⁉︎」

 

みんなが一斉に驚く。そんな中、俺は一人沈黙していた。

 

俺はこの世界に来てから今まで王様に会ったことがない。謁見の機会はなく、本来なら王様が行うはずの勇者選定もカルトがやっていためだ。

 

会ったことがないため、俺にとっては顔も名前も知らない誰かが死んだだけの話で、国を治める王が死んだのは確かに驚きだがみんなと比べるとその驚きようは小さくなってしまう。なんなら、カルトが代理をしていたのは既に死んでたからだったんだなーと冷静に思考できるくらいには驚いていなかった。あの時に王様は体調不良だとか言ってたけど誤魔化しだったんだろうな。

 

「驚きすぎだってみんな...先に詳細をちゃんと聞こうぜ」

 

「なんでそんな冷静でいられるのよカリヤは...」

 

「そりゃだって一回も会ったことない知らない人だし...で、どうして王様は死んじゃってたんだ?」

 

「順を追って説明しようか」

 

俺の質問にカルトが答える。

 

「まず大前提の話をするが、王家の者は既に王様以外にはいなかった。二、三年ほど前に流行り病によって兄弟両親が亡くなってしまったからな」

 

二、三年前となると、魔族たちが行動を開始する前だから、何の変哲もない純粋な流行り病だったんだろうな。不幸としか言いようがない。

 

「王様は流行り病を大いに恐れ、それからというもの一人で部屋に閉じこもるようになった。一歩も部屋を出ることなく、執務を全て自室で行い、外とのやりとりは全て魔法で行なっていた。これは周知の事実だと思う」

 

へーそうなんだ。まぁそりゃ家族全員で病で失ったら、最大限警戒するよなぁ...魔法があるから閉じこもっても問題なく政治も生活も行えただろうな。

 

「そのせいで、私たちは気づくのが遅れてしまったんだ。まさか、一年も前に王様が死んでいて、偽物と成り代わっていただなんて思ってもみなかった」

 

「……一年前に死んでいた?そして偽物?」

 

……それって...

 

「もしや、フロートか?」

 

「ああ。個体名フロート、魔王殺害及び成り代わりはこの魔族の仕業だろうと私は踏んでいる。詳しい状況はこうだ」

 

そのままカルトから話を聞き続ける。

 

いつも通り俺が要約すると、こうだ。

 

そもそもなぜ王様が死んでいただなんてことに気づけたのかと言うと、部屋にいるはずの王様が突如として消滅したかららしい。

 

外との物理的な接触は絶っていたとはいえ、魔法的な繋がりは依然として残っていた。外部とのやりとりはもちろん、王様が不自然な動きをしないか確認するための監視もあったようだ。何者かに侵入されて脅されているだとか、魔法で操られているなどの異変に気づくためのものだったようだが、この監視によって王様の消滅を確認したようだ。

 

王様が消えたため、王城内は大混乱。当初は転移の魔族の仕業と考えられ、ひとまず城内の全てを探し回った。

 

そして、発見された。数ある宝物庫の中でも滅多に使われることのない倉庫、その中で元気に動き回る王様の姿が。

 

発見されたことで一件落着かと思われたが、王様は発見者である衛兵に襲いかかった。アンデッドと化していたのだ。だがまぁ、戦闘能力が皆無に等しかった王様アンデッドはすぐに拘束された。

 

さて、王様がアンデッドになっていたということは、既に死んでしまってからかなりの時間が経っていたということになる。そこで、拘束されてもがいている王様アンデッドを調べると、死後一年は経っており、そして何者かによる防腐魔法がかけられていた痕跡を発見した。

 

以上の出来事と、魔王討伐後にニアたちがギルド経由で報告した人魔戦争のあれこれの情報を掛け合わせることで、カルトの次のような推理が生まれた。

 

一年前、フロートによって王様が殺害される。そして誰も使わない宝物庫に死体を放り込み、防腐処理をして隠す。その際、王様の複製体が作り出され、これまで通り政治を行わせることで殺害発覚を防いだ。

 

そして時は流れて人魔戦争。ここでとある事件が起こる。魔王が山を乗り換え、勇者が女神を移し替えたことによる聖域の位置変動だ。これによって王都が聖域ではなくなる。聖域でなくなったことで王城内に魔素が侵入。宝物庫に隠されていた死体に魔素が流れ込み、アンデッド化を引き起こした。

 

その後、フロートが倒される。それによって複製体が消滅し、王様が監視の目から消える。死体にかけられていた防腐処理も同時に解除されたのだろう。

 

そして消えた王様の捜索が始まり、王様アンデッドが発見された...というわけだ。このカルトの推理、見事に的を射ていると思う。筋は通っているし、時間的な矛盾はない。なぜフロートがそんなことをしていたのかという謎は残るものの、フロート亡き今その真意は不明だ。わかりっこないし、今はホワイダニットは重要ではない。重要なのは、王様が死んでいた事実とその過程のみだ。

 

「うん、その推理で合ってると思うぞ。なぜやったのかの理由はわからんが、フロートがやりそうなことではある」

 

「それならよかった。魔族と直接対峙している君たちの意見を聞きたくて呼んだんだが、確証を得れてよかったよ」

 

「……そういや、勇者選定の日に王様が来ずにカルトが代理をしていたのって、複製体だったからなのか?」

 

既に王様が死んでいて、それを隠すためにカルトが代理をしたという俺の読みが外れていたことを思い出し、聞いてみる。

 

「いや、もし本人のままだとしても代理として私がやっていただろう。入れ替わりが起こる前、二年以上も前から魔王関連の仕事は全て私に任せるように言っていたからな。複製体はものの見事に本人を真似ていたと言っていいだろう」

 

「じゃああの時王様は体調不良とか言ってたのは?」

 

「それも前々からされていた指示だ。人前に出ない理由を問われることもあるだろうからと考えられての指示なのだろう」

 

「なるほどな...結構惜しい人を亡くしたなこれ...」

 

話を聞く限り、王様はかなり聡明だったように感じられた。病を恐れて閉じこもっていても、政治はうまく回っていた。自らハンデを背負いながらも通常通り王政を成せていたのだから、それだけ有能だったのだろう。そして部下に魔王関連の仕事を任せることで、仮に自身が襲われたとしてもつつがなく魔王討伐を進められる...まぁこれは偶然かもしれないが、きちんとリスクヘッジができていたわけだ。

 

……ああ、そういうことか。もし王様が魔王関連の仕事も受け持っていた場合、フロートによる殺害と複製によって偽物を立てられることは致命傷と言ってもいい。フロートによって人間側の動きの手綱を掴まれているようなものだからな。人間側の負けに繋がるような指示をいくらでも出せるし、複製体を消滅させることでいつでも混乱を生むことができる。フロートの目的はこれだったのだろう。

 

「惜しい人を亡くした...ってだけじゃ済まされないわよ!王様の死は王家の血筋は完全に途切れたことを意味するのよ⁉︎」

 

「あっ、そういやそうなるのか...そこんところどう考えているんだ?トルク」

 

「私たち上層部もそこの判断を決めかねていてね...一応、今のところ二つ案が出ている。一つは、遠縁の者を王家に迎え入れ王様にするというものだ。公式には王家に分家のようなものは存在せず、外部に血筋を残すようなことは一度もなかったとされているが、遥か過去に例外があったらしくてね。そこから辿れば、一応血が繋がっていないとも言えない者を迎えることはできる」

 

「……それってどうなのかしら。血筋問題は解決しても、政治を行える能力はないはずよ。本人の性格や思想次第では混乱が起きかねないし、誰かが補佐をするにしてもその人選はどうするかって問題は起こってしまう。得策とは言えないわね」

 

「だってさ。二つ目の方法はなんなんだ?」

 

「アンデッド化した王様は、今も変わらず拘束されている。フロートによって防腐処理をされていたおかげで、目立った傷もないし腐敗もしていない」

 

……急に何を無関係なことを話し出してるんだ?と一瞬思ったが、すぐにその意図に気づいた。

 

「おいちょっと待て。まさか、そのままアンデッドに王様をやらせようとかそんなことじゃないよな?」

 

「なかなか鋭いな、正解だ」

 

ま、マジかよ...

 

「アンデッドの人間に危害を加える性質を抑えることができるのは、カイスで実用化されているアンデッド部隊によって実証されている。精神反転もなんとかできるのだろう?その技術を応用すれば、これまで通りの政治をさせることはできるはずだ。そして何より、王家の血筋をそのまま残すことができる」

 

……アンデッド部隊は俺も知っている。それを知った時にも似たようなことを思ったが、倫理的にヤバくねこれ。こういうふうにアンデッドを扱うのはこの世界だと普通なのか?...いや、ニアが嘘でしょとでも言いたげな顔をしてるわ。普通じゃねぇんだなこれ。

 

ってか、王家の血筋を残せるつってるけど、それってネクロフィリア適正のある人じゃないと相手できないよな...死姦確定だし。

 

「……聞かなかったことにしていいか?」

 

みんなドン引きしてて黙りこくっていたので、思わずこう呟いてしまった。

 

「まぁこちらは最終手段といったところだな。ひとまずはその場凌ぎだがアンデッドに政治をさせて時間を作り、一つ目の案を実行。見つかった人に王としての資質がなければアンデッド政治を続行させることになるだろう」

 

「できれば第三の案を急いで考えてくれ...」

 

「善処する...ふぅ、これで用事は以上だ。色々話を聞いてもらってすまなかったね。君たちには、今城内で起こっている問題を先に知っておいてもらいたかったんだ」

 

「というと?」

 

「もし何かの拍子にこのことがバレた場合、民衆は私たちへの信用を失うだろう。そして、いくら弁明しようとも聞き入れてくれなくなると思う。そんな時でも、君たちの話は聞いてくれるはずだ。魔王を倒した勇者パーティーの皆には誰もが感謝している。すぐに信用してくれるだろうね」

 

「……それ、俺たちのことを利用してやるって言ってるようなものでは?」

 

「否定はしない。けれど、非常事態時に民衆を動かせる力を持っているのは君たちだけだ。いざとなれば頼らせてもらう。そのことを覚えておいて欲しい。もちろんそうならないことを祈っているし、そうなるまでは君たちへのサポートを欠かさずにしていくと約束しよう」

 

……まぁ、先んじて利用させてもらうって言ってくれる方が、突然言われるよりもまだマシか。実際、問題を隠していた王政関係者が言うのと勇者が言うのじゃ、同じ内容でも信用度はだいぶ異なるだろうし、当然のことを頼まれているだけのようにも思えるな。

 

「頼ってくれるのなら、僕たちは断らないよ。それがみんなの為になるのならだけどね」

 

「ってなわけで、俺らはここらで失礼させてもらうぞ」

 

「くれぐれも、ここで話したことは口外しないようにな」

 

「わかってるさ」

 

「今日は来てくれて本当にありがとう。各所の復興支援、これからもよろしくお願いします」

 

「任せてくれ」

 

そう言って俺たちは部屋を出る。

 

「……まぁ俺たち、魔力ゼロだからもう今日何もできないけどな」

 

魔力総量がバカ多いため、最大まで貯まるのは明日の朝だろう。それまで魔法を使えないとなると、今日何もできないのは自明だ。

 

「……とりあえず帰りましょうか」

 

「だな」

 

俺たちはここまできた道のりを逆順で進み、宿まで戻るのだった。




フロートって本編で書かれたこと以外にも色々やってたりするんですよね。
ちなみに、そうやっていろんなことをしていたせいでカリスの英雄に選ばれなかったという裏設定があったりします。

トルクの姿で英雄になろうと画策していたのに、ムカデの巣の魔族騒動に加担し、カイスの戦争に参加し、ガルムの英雄選びに介入したりしていたせいで肝心の弓矢の練習を怠り、ステラに実力で劣ることになる。
さらには以上のことをするためによく家を留守にしていたせいで、村の住人から遊び歩いていると勘違いされ印象が悪くなったこともあり、英雄の資格がステラに渡ることになりました。

少しでも歯車が狂っていたらフロートが英雄に選ばれていたので、実はカリヤの知らないところで危機が迫っていたんですよね...まぁ雷装の矢をステラに伝授した時点で多分ステラが英雄に選ばれるのは確定していた気もするけど。
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