前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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9365字。

サブタイ通り、護衛依頼を受けます。


馬車の護衛で馬車に乗らせてくれないってことある?

「さーて今日の依頼はー?」

 

「どうした急に」

 

キースが困惑したように聞いてくる。

 

「いや、さ。俺がちゃんと見る前にチュチュがさっさと依頼書を提出しちゃったから、どんな内容なのか一切知らないんだよね」

 

ギルドを出て、歩きながら3人に聞く。今日は3人と依頼を受けることになったのだ。そして俺はどんな依頼なのかを知らない。

 

「今日はねぇ...護衛の依頼だよー」

 

「護衛?なんのだ?」

 

「荷物だよ。カリスに重要なものを運ぶ馬車が出るらしくて、それを護衛する依頼なんだー」

 

「へー、重要なものって?」

 

「多分だけど、女神の山でやる勇者選定の儀式に使うやつなんじゃないかな?」

 

「それって確か九ヶ月後とかじゃなかったっけ?今からそれ用のものを運ぶのか?」

 

「さぁ?量が多いから小分けにして何度も運んでるんじゃない?」

 

「中身が何かなんて気にしなくていいだろ。俺たちは護衛をする、それだけだ」

 

チュチュと話していると、キースが話に割り込んでくる。

 

「そうそう、俺たちのすることは変わらないよ」

 

「破損したら取り返しのつかないものだったら困るじゃんか。中身が何かは結構重要だと思うぞ?」

 

「取り返しつかないものでも、そうでなくても、護衛をするなら傷一つつけないようにするのが冒険者だ。依頼がなんであれ、そこに全力を尽くせないやつは冒険者失格だ」

 

「いや、そうだけどさ。不安なもんは不安なわけで...護衛とか初めてだしさ」

 

「まぁ今回の行き先はカリスだ。そこまで強い魔物も出ないし、問題ないだろう」

 

「はいそれフラグ。今のでもっと不安感が増したぞ」

 

「なんで...?」

 

いやでも待てよ?今まで何回魔物が現れるフラグを立てて、それを崩してきた?片手で数えられる程度とはいえ、俺にはフラグクラッシュの経験がある。もしかして、俺はフラグクラッシャーなのでは?

 

「逆に安心してきたわ...」

 

「カリヤは情緒不安定かなんかなの?」

 

「そんなわけないだろ失礼な」

 

情緒不安定だなんてそんな...違うよな?こういうの自分じゃわからないし、違うとも言い切れないのがちょっと怖い。

 

「なぁ、南の門ってこっちだったか?なんか方角ずれてるような...」

 

カリスに向かうのだから、南の門に向かうのは当たり前だ。けれど、今歩いている方向は東。大通りからどんどん外れていた。

 

「こっちの方が近いんだよ。少人数で動くなら、大通りを歩くよりも裏道を通った方が早いんだー」

 

「急がば回れってか」

 

「そうそう」

 

「道間違えてたりはしないよな?」

 

「そんなヘマするわけないじゃん。カリヤじゃないんだし」

 

「なんで知ってんのさ」

 

「えっ、ホントに迷ってたの?」

 

「カマかけやがったなお前」

 

そんなふうにギャーギャー騒いでいると、南の門に着く。

 

「これが護衛する馬車でいいのか?」

 

門の前に一つの馬車が止まっていた。

 

「多分そうだと思うよー?」

 

「じゃあ行くか。すみませーん。依頼で来たんですけど、カリスに運ぶ荷物を積んだ馬車ってこれであってますか?」

 

一応確認しておく。実は別の行き先の馬車だったり、カリス行きではあるけど別の馬車だった、とかは困るからな。

 

「せやでー」

 

御者の人が降りてくる...というか大阪弁⁉︎なんで?翻訳挟んでるはずだから標準語に統一されててもおかしくないはずだけど...この世界にも訛りがあるってことなのかな?

 

「あんたらが依頼受けはった人?」

 

「そうです」

 

「おーきになー。誰も受けてくれんてえろう困ってたねん」

 

「護衛するこの荷物はこの中に?」

 

「そうや。頼むでー」

 

「荷物はどれくらいあるのかな...」

 

馬車の荷台に積んであるであろう荷物を見るために、垂れ幕を横にずらす。

 

「えっ」

 

一瞬壁かと思った。そう見間違えるくらいの量の荷物が馬車に積んであった。こんな積んでいたら、馬がバテないか心配になる。というか、これ馬車満杯まで荷物積んでいるのか?

 

「俺たちが乗る場所は...?」

 

「ん?」

 

「護衛するなら馬車に乗らせてもらえるんじゃ...」

 

「んな余裕あらへんがな。歩きや歩き」

 

「歩きィ⁉︎」

 

そんな馬鹿な。歩いて移動とかキツすぎる。馬車について行くなんて無理だろ。

 

「誰も受けてくれないってこれが原因なんじゃ...」

 

「…そういえば本当にいいんですか?って受付の人に言われたな...」

 

「なぜそれを言わない...」

 

「しょうがない。言われたとしても、依頼を放り出すことはなかっただろう。諦めて頑張るぞ」

 

「でも流石に馬の速度に歩いて追いつくのはキチィぞ」

 

「そんなのカリヤの力があれば余裕じゃん」

 

「そうだけど...」

 

「安心しなはれ。この重さやし、馬も歩くんや。そりゃ時間はかかるが、そこまで大変にはならんて」

 

確かに、これだけの荷物で馬を走らせるのは無理だろう。これなら、移動にスタミナをあまり必要としなくなるし、戦いに集中できるはずだ。

 

「ほな行くでー!出発やー!」

 

いつのまにか御者は馬車に乗り込んでおり、ゆっくりと馬を歩かせていた。

 

「ちょっ、置いてくなし!」

 

慌てて馬車に追いつく。

 

「あっ、馬車にしがみつくのは堪忍な」

 

「これ以上重くしちゃうと馬が動けなるからですか?」

 

「せや。よくわかっとるな!」

 

そこまで荷物積むなよ...と言いたいけど、我慢する。

 

「周囲警戒!見つけたらすぐに報告!」

 

「了解!」

 

四人いるので、馬車の四方を囲む。キースは左でチュチュが右、荷台の入り口を守るためにギブドが後方につき、俺が前方につく。

 

「轢かれんように気ぃつけてなー」

 

「大丈夫ですよ。馬の位置はわかるんで」

 

「わかるって後ろに目でもついとるんか?」

 

「目はないですけど、わかるんです」

 

「魔法ってめちゃすごいんやなー。うち、魔法なんて使えへんから羨ましいわー」

 

「魔法とは違うんですけどね...あっ、魔物二体きたぞー!」

 

前にステラが倒していた鹿のような魔物が二体やってきた。

 

「見えてるよー」

 

その言葉と共に、二本の矢が馬車の右側から飛んでいく。仕事が早いな。

 

「一本命中!片方は無傷!」

 

「ありゃりゃ...」

 

二本のうち、一本が魔物の背中に刺さる。そして凍りついた。氷の矢だったのか。

 

「でも足は止めたからあとはお願いねー」

 

よく見ると、生きている方の魔物の足が凍りついていた。地面に刺さったもう一本の矢の力で凍りつかせたのだろう。

 

「じゃあ俺行ってくる」

 

能力を使って走る。そして魔物の首をスパンと斬り飛ばす。

 

「一応こいつも...!」

 

ダガーをしまってロングソードを取り出す。

 

「ふんっ!」

 

ロングソードで凍った魔物の頭を叩き砕く。

 

「よしオッケー」

 

馬車の前まで戻る。

 

「あんためちゃ速いなー!腰抜かすところだったわー」

 

「座ってて腰を抜かすって...ってあれ?キースは?」

 

キースの姿が見当たらない。どこいった?

 

「今さっき飛び出してった。すぐに戻ってくる」

 

ギブドのその言葉通り、キースがハルバードに血を滴らせながら戻ってきた。

 

「仕留めてきた」

 

「お疲れー」

 

そこから二時間ほどは、魔物が現れることもなく進んだ。

 

以前乗った時は、少し急いで走ってくれていたため30分強で着いたが、本来なら馬車で一時間かかる距離らしい。しかし、それも普通に走った時の話だ。馬の消耗を考えて走らせると、速度は大体時速15キロくらい。地球の一時間に直して考えると、距離は18キロちょいになる。今は人の歩く速度と同じくらいで歩いているので、時速4キロほど。休憩を考えないで移動すれば、四時間半くらいで着くはずだ。

 

「疲れた...!」

 

「ただ歩くだけってのも辛いな」

 

「そろそろ休憩しないー?」

 

「いや、魔物がいるところで休憩はできればしたくない。そのまま歩くぞ」

 

カリスに着くまであと大体二時間くらいだ。歩いているだけならスタミナの消費も少ないし、いつ魔物が襲ってくるかわからない以上、早めに移動し切った方がいいだろう。

 

「そうだカリヤ。一度先まで行って魔物がいないか見てきてくれないか?」

 

「りょーかい!」

 

馬車の進行方向、カリスに向かって走る。偵察だ。

 

「あんまりいないな...」

 

魔物を見つけたらすぐにダガーで斬り飛ばす。けれどそれも二、三回ほどだけで、ほとんど倒すべき魔物はいなかった。

 

「そろそろ戻るか」

 

一分ほど走り、それまでの道の安全を調べた。秒速22メートルで一分走ったのだから、魔物を狩っていたのも考慮して、一キロ以上は走ったことになる。この距離の安全は大体保証された。というか、俺が走ったら王都からカリスまで11分くらいで着くんだな。速くなったなぁ...

 

「しばらくは安全っと...」

 

馬車の方へと振り返る。

 

「…えっ...なに、あれ」

 

魔物がいた。さっき通った道に、魔物が立っていた。

 

見逃したわけではない。秒速22メートルで走っていたら、小さな魔物くらいは見逃す可能性もあっただろう。

 

けれど、この魔物を見逃すわけがない。こんな巨体を、見逃すわけがない。推定、高さ四メートル。俺に見えないところまで離れていたと仮定しても、一分以内にそこまで移動できる距離ではない。逆に、移動できる距離にいれば見逃すわけがない。

 

この魔物は、俺がこの道を通った一分のうちに、音もなく突如として現れたのだ!

 

「まずい!」

 

『雷装』

 

雷装を発動し、急いで馬車まで走る。魔物は右腕を大きく上げていた。そのまま振り下ろすつもりだろう。このままでは馬車が危ない。

 

「くっ、『氷装・矢』!」

 

走りながら弓を取り出し、氷の矢を射出する。矢は魔物の右肩に命中し、氷漬けにする。

 

「大丈夫かみんな!」

 

30秒もかからずに馬車まで戻ってくる。よかった、馬車はまだ傷つけられていなさそうだ。

 

「大丈夫だけど...!」

 

「こいつ突然何もないところから現れやがった!」

 

「それに、こいつ色からしてミニゴブリンだよ!全然ミニじゃないけどね!」

 

「チッ、十中八九魔族の仕業だな。トレントの時と同じ奴だ!」

 

突然何の予兆もなく現れた魔物。本来ならありえないほどの大きさ。どれも、巨大トレントの時と同じだ。

 

「どこでもいい!一箇所でいいからデッケェ傷つけろ!そしたら俺が能力で魔素を流出させる!」

 

全て同じだとしたら、対処法も同じ。まずは傷をつけ、魔素を出させる。

 

「だったらあの爆発使えばいいじゃん!右肩をふっ飛ばそうよ!」

 

「したいのはやまやまだが...馬車が近すぎる!やるならもっと遠ざけてから!」

 

この距離だと馬車を巻き込んでしまう。馬が傷つくかもしれないのはもちろん、荷物も無事では済まないかもしれない。爆発させるのは慎重にやらなければいけない。

 

「じゃあ爆発は無しだ!普通に倒すぞ!」

 

「ならまず目を潰すよー!『二の矢』!」

 

チュチュの放った二本の矢が魔物の目めがけて飛んでいく。右目には命中したが、左目には当たらず少し下にずれる。

 

「ごめんミスった!」

 

「任せろ」

 

『投擲・剣』

 

ダガーを取り出し、スキルを使って左目めがけて投げ、命中させる。

 

「目は潰したぞ!」

 

「転ばせるよ。『路面凍結(アイスバーン)』!『シールドバッシュ』!」

 

ギブドが地面に手をつき、魔物の足元の地面を凍らせる。そして大盾を持ったまま突撃し、魔物を滑らせて転ばせる。

 

「トドメは俺だァ!『闘争心』『捨て身』『フルアタック』!」

 

キースがハルバードを勢いよく振り上げながら飛び上がる。

 

「オオラァッ!」

 

雄叫びを上げながら首めがけてハルバードを振り下ろそうとする。しかし、魔物が左腕を持ち上げて首を守った。ハルバードが左腕に深く突き刺さるも、それまで。切断まではいかない。

 

「まずっ⁉︎」

 

魔物が左腕を大きく横に振る。その勢いによってハルバードから手を離してしまったキースが大きく飛ばされていく。

 

「落ちたらやばい!カリヤ!」

 

言われるまでもない。すでに走り出している。捨て身にフルアタックを使っているため、あの勢いで地面に激突したら普通に命を落としかねない。落下地点を予測し、能力を使って走る。

 

「キャッチ...!大丈夫かキース!」

 

衝撃を上手く吸収しながらキースを受け止める。

 

「問題ねぇ。けど、武器が...」

 

ハルバードは魔物の左腕に突き刺さったままだ。しかも、そのせいで魔素の流出も妨げてしまっている。

 

「ならこれを使え。勝手は違うかもしれんが、ないよりはマシなはずだ」

 

ロングソードをキースに渡す。

 

「助かる。すぐ戻るぞ」

 

「おう」

 

能力を起動、キースも加速してすぐに魔物のところまで走って戻る。

 

「今どんな感じだ」

 

「全然ダメ。こいつ皮膚が硬すぎるよ」

 

チュチュが矢を放つも、皮膚には刺さらない。目などの柔らかいところには刺さるようだが、それ以外の場所では弾かれてしまう。俺の矢が魔物の右肩に刺さったのは、秒速35メートルで走りながらだったためだろう。普通じゃ刺さらない。

 

「キースの全力でも切断出来なかったし、魔法でチマチマ削るしかないか...?」

 

「その前に少し試しておこう。キース、行くぞ」

 

鞭を取り出す。キースもロングソードを構える。

 

「オラッ!」

 

立ち上がることが出来ず、手足をジタバタさせている魔物に向かって鞭を連続で振るう。キースもロングソードを叩きつけ、硬い皮膚の内部にダメージを与える。

 

「効いてるみたいだけど...薄いな」

 

魔物は苦痛の声をあげるも、魔素が出るような傷は与えられない。やはり、鞭とロングソードでは傷はつけられないようだ。

 

「やっぱり魔法で...」

 

「それならアイスバーンを頼む。あっちの方向に氷の道を作ってくれ」

 

「…?わかった」

 

ギブドは軽く困惑しながらも、地面に手をつき氷の道をつくる。

 

「ありがとう。これなら...『微風』!」

 

スキルを発動し、手から風を発生させる。能力を使って秒速22メートルの風に変えると、その風を魔物に向ける。

 

「ほらほら滑りやがれ!」

 

風に押されて、魔物が氷の道を滑っていく。

 

「何をして...ああ、そういうことか」

 

「この距離なら巻き込まないだろ」

 

風を出すのを止める。

 

「爆発させるぞー。あまり近づくなよー!」

 

『雷装・矢』

 

右肩めがけて電気の矢を飛ばす。いくら皮膚が硬くとも、すでに凍りついた場所にはちゃんと刺さり、高圧電流を流す。

 

「トドメはギブドに任せる。最大級の炎をお見舞いしてやれ!」

 

「任された」

 

ギブドが魔力を搾り出し、大きな火球を作り出す。チリチリと赤い火の粉が散っては消える。

 

「発破!撃てーっ!」

 

火球を放つ。巨大な火球は魔物の方に飛んでいき、命中する直前に大爆発を起こす。衝撃波が飛んでくる。

 

「『衝撃吸収』!」

 

ギブドが大盾を持ち、衝撃波から馬車を守る。

 

「ありがとうギブド。さて、魔物はどうなった...?」

 

動かなくなった魔物の方に向かって歩く。死んだふりをしているだけかもしれないので、警戒しながら慎重に歩く。

 

「おぉ、首まで吹っ飛んでやがる」

 

水素爆発の威力は凄まじく、右の脇腹から首にかけて丸ごと吹き飛んでいた。こんなになって動けるはずがないので、警戒を解く。

 

「少しずつ小さくなってるな。加速させよう」

 

能力を使って、魔素の流出速度を加速させる。

 

『マナ検知』

 

マナ検知によって、赤い点が傷口から大量に放出されているのが見えるようになる。けれど、それも10秒ほどで終わる。体内に入っていた魔素が全て出切ったのだ。体長も、ミニゴブリンにふさわしい30センチくらいになっていた。

 

「よし、討伐完了っと。みんなー!ちゃんと死んでるぞー!」

 

馬車まで戻りながら叫ぶ。

 

「オッケー!リーナさん、もう大丈夫だってー」

 

チュチュが御者に安全を伝える。

 

「めちゃんこすごいなー四人とも。休憩はせなあかんか?」

 

「みんな、休憩はいるか?」

 

「大丈夫だ」

 

「問題なーし」

 

「スタミナはすぐ回復できるし、休憩なしでいいぞ」

 

「了解や。ほな、行くでー!」

 

馬車が、また動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「到着やー!」

 

その後は、魔物が出ることもなくカリスに着くことができた。

 

「今日は助かったわー。みんな、囮に付き合ってくれてありがとさん」

 

「いえいえ...って囮?どゆこと?」

 

「あれ?知らされてなかったんか?この馬車は囮や。本物の馬車は...今来たで」

 

馬車がもう一つ、街道を逸れたところからやってきた。

 

「カリスの周辺で魔族の仕業と見られる現象が起きたっつー話があってな?運搬の馬車も狙われるかもしれへんというわけで、本物の馬車は二、三日前から出発して、大きくぐるっと回って来てたんや」

 

「それを気取られないために、この馬車が囮になる必要があったと...」

 

「せや。みんな本気で戦ってくれはったから、魔族の連中も本物だと勘違いしたと思うで」

 

「こっちもこれに荷物が乗ってると思ってやってたからな...」

 

「敵を騙すにはまず味方から...ってか」

 

「けどな、これで怪しい奴が絞り込めるんや」

 

「というと?」

 

「あんたら、囮の話聞かされてへんかったんやろ?つまり、囮ことを知ってる奴はうちと王都のギルド職員のみ。それ以外で、この荷物の運搬について知っとるやつが怪しいってわけや!」

 

「それって結構範囲大きいような...王都のギルドであの依頼書を見た人は大体当てはまっちゃうし、カリスの人も運搬のことは知ってるわけだろ?」

 

「せやけど...これで国全体を調べる必要はないわけや!」

 

だからといって、絞り込めた疑わしい人全てを調べるのは無理があると思うけど...

 

「本物の馬車も来たわけやし、そろそろ王都に戻るで!」

 

切り替え早いなこの人。

 

「また四時間かけて戻らないといけないのか...」

 

「あっ、帰りは馬車に乗ってもええで」

 

「馬車に?なら荷物を下ろさないといけないか」

 

「その必要はないで!ほれっ!」

 

御者が荷台の幕を開けると、勢いよく荷物を蹴りつける。

 

「ちょちょちょっ!何をして⁉︎」

 

ほらもう荷物がバタンと倒れて...えっ?満杯まで入ってるんじゃ...

 

「ハリボテや」

 

「ハリボテ⁉︎」

 

「荷物なんて一切積んでなかったんや。せやから、帰りは乗っていってええで」

 

馬を歩かせていたのも、ハリボテの荷物を積んでいたのも、全ては本物の馬車と誤認させるためのフェイクだったのだ。

 

「それじゃあ乗らせてもらおうか」

 

馬車に乗り込む。

 

「ほな行くよ。行きとは違ってかっ飛ばすでー!」

 

馬車が動き出す。速度は時速15キロほど。一時間で着く速度だ。

 

「いやー疲れた。まさか囮だなんて思わなかったな」

 

「だな。でも帰りにまた四時間歩く...だなんてことにならなくてよかったな」

 

「途中に休憩所でもあったら楽だったんだけどな...」

 

PAかSAみたいなのが欲しい。馬車の乗り換え場所とかがあれば、馬の消費をあまり考えずに走らせることもできるし、便利そうなんだけどなんでないんだろ?

 

「そんなの作っても、魔物に襲われちゃうから使えないよ」

 

「ならもっと近くに町を造ればよかったのに」

 

「しょうがないよ。広い聖域にしか造れないんだから」

 

「聖域?」

 

「…知らないの?」

 

「うん」

 

なんだろ、聖域って。

 

「まず魔物がどうやって生まれるのかを説明しないとダメかな。魔物はどうやって生まれると思う?」

 

「それは...繁殖とか自己増殖とか?」

 

死体が残るわけだから、普通の生き物と同じ方法で生まれると思った。あと、スライムやスフィアのように、増殖して生まれる魔物もいるはずだ。

 

「それもあるけど、魔素から自然発生することもあるの。メカニズムはよくわかってないんだけどね。そうして生まれた魔物を倒しても魔素に分解されるわけじゃないから、どうにかして体を得ているはずなんだけど」

 

「へー...あれ?自然発生するなら、カリスとか王都を囲ってる壁って意味なくない?」

 

「そのための聖域だよ。聖域ってのはね、魔物が自然発生しない場所のことなの。もっと正確に言えば、魔素が存在しない場所。そこにしか町を作れないんだ」

 

「そりゃ、どれだけ外壁で囲っても内側に魔物が発生するんじゃ意味ないもんな。聖域以外には人は住めない、と」

 

「そう。魔素が少ないから、魔物があまり寄り付かないっていう効果もあるんだけどね」

 

「聖域に町を造るっていってたけど、他に聖域はないのか?」

 

「大きなやつはね。大きな聖域は、カリス、ガルム、カイス、ガネル、王都、女神の山にしかないの。小さな聖域は他の場所にもあったりするんだけどね」

 

小さな聖域か。あっ、もしかしたらステラの作った秘密の特訓場って聖域だったのかな?魔物がいるはずの平原に作っていたはずなのに、一切魔物が出てこなかったし。

 

「聖域を増やすことってできないのか?」

 

「どうして魔素がない空間ができるのかわかってないからね。多分無理だと思う」

 

「そうなのか。まぁそっか、出来てたら今頃全ての場所が聖域になってるはずだよな」

 

そうしたら魔物も出なくて楽だったのに。

 

「そういえば、カリヤは山奥に住んでたって言ってたよな。多分、そこも小さな聖域だったんだと思うぞ」

 

「あ、あぁー、そ、そうだったのかー」

 

びっくりして反応がわざとらしくなってしまった。前についた嘘のことを触れられると、話を合わせるのが大変だ。

 

「あんた、学校通ってないんか?」

 

急に御者が話に入ってくる。

 

「え、えぇ」

 

この世界の教育は受けてないしな。通ってないと言っていいだろう。

 

「まぁ、あんさんくらい強ければ冒険者としてやってけるだろうし、大丈夫やろ。あっ、そうや!あんさん物の速さを変えられるんやろ?早く帰りたいなら馬を速くしてええで!うちお腹ぺこぺこやねん!」

 

「本音漏れてますよ...じゃあちょっとそっち行きますね。範囲小さいんでここからだと無理なんです」

 

御者の座ってるところまで移動する。

 

「じゃあ馬が潰れない程度に加速しますよ」

 

「ありがとさん!」

 

馬の速度を加速する。

 

「王都に着いたら一緒に食べようや!うち、オススメの店知っとるで!」

 

「いいですね。食べに行きましょう」

 

ご飯について話しながら、俺たちは王都に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まーた邪魔されたみたいですね」

 

「なんで神の使いが護衛なんて地味な仕事やってんのさ!ミニゴブリンもせっかく巨大化させてやったというのに負けやがって...!」

 

二人の女が、空から見下ろしながら話す。

 

「仕方ありませんよ。姉さんも、どうしてあの大きさで止めたんですか?もっと大きくしていたら可能性があったでしょうに」

 

「馬車を襲うだけなんだからあれくらいでいいって思ってたんだもん!神の使いが護衛をするって知ってたら、もっともっと大きくしてやってたよ!」

 

「でも、あの大きさのトレントが倒されたわけですし、いくら大きくしても倒されそうですけどね。相性悪そうでしたし」

 

「ならもっと大きくするだけでしょ!」

 

「フロートの報告によると、そもそもあの馬車は囮だったみたいですけどね。いくらデカくしても無駄だったと思います」

 

「それは結果論でしょ!」

 

「それに、あのトレント以上に大きくされると転移が難しくなるので加減して欲しいんですけどね」

 

「それはあんたが頑張れば良いだけでしょ!」

 

「姉さん、もっと頭を使ってください。大体、デカくさせる魔物が違えば結果も変わるはずです。もともと鎧を装備している魔物なり、強力な魔法を使える魔物を巨大化させた方がいいでしょう」

 

「頭を使うのは姉さんの役割でしょ!というか、姉さんが自分で考えて選べって言ったんでしょ!」

 

「だから頭を使えと言ってるでしょうに...」

 

「もういい!目の前でグチグチ言われるよりもテレパスの方がマシだ!早く帰らせて!」

 

「仕方ない姉さんです」

 

音もなく二人は消え、後には何も残らなかった。




関東人なんで、関西弁が間違ってたらすみません。

あと、次にカリスに行くとしたら物語後半になると言っておいて、すぐに訪れることになりましたね。
馬車で荷物を運ぶのを護衛する依頼を書きたいけど、新しい町に行くわけにはいかなかったので行き先がカリスになりました。
きっと、きっと次は物語後半になるでしょう。
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