前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8119字。

魔物との戦闘回です。
カリヤくんの新技出します。


複合スキルのトリガー

ギルドでの襲撃事件から数日が経った日の朝のことだった。

 

「カリヤ起きて!」

 

すやすやと寝ていたら、急に叩き起こされた。

 

「なんだよステラ、こんな朝っぱらから...」

 

「良いから起きて!巨大化魔物が町に近づいてきてるの!」

 

「……マジで?」

 

……というのが今朝した話の流れであり、今俺たち勇者パーティーは北の門のところに集合して、巨大化魔物が来るのを待ち構えているのだった。

 

「おっかしいなぁ俺の考えた説だと巨大化魔物は町に来ないはずなんだけど」

 

町の中に入ってこようとする魔物は町の中で生まれた魔物であり、帰巣本能のようなものが働いているために聖域の中だろうが関係なく入ってくる、というのが俺の説だった。

 

だが、もしそれが正しいとするならば、今ガネルに向かって進行しようとしている巨大化魔物もガネルで自然発生した魔物だということになる。しかし、魔王城が移転した後に、サーマルがここまで来て魔素を注入したというのは考えづらい。それができるような時間はなかったはずだし、やってたら急に巨大化魔物が現れたーだなんて噂が広まっていたはずだ。

 

ということは、背理法っぽい考え方にはなるがそもそもの前提が間違っていたわけで、俺の考えていた説が間違っている可能性が高いということになる。また一から考え直しだと思うとちょっと嫌になるな。

 

「……で、その魔物はどこにいるわけ?どこ見てもいないけど、もしかして地中にいるとかそういう系?」

 

「逆よ逆。空よ」

 

「また鳥かよ...もしやあれか?」

 

北東の方を向き、五十度くらい首を上に傾けた時の視線の先に、何か動いているものが見えた。おそらく、あれが件の巨大化魔物なのだろう。

 

「どうやって接近してるってわかったんだよあれ」

 

「カイスの探知魔法に引っかかったらしいわよ。ガネルに向かって飛んでることがわかったから、ギルド経由で連絡が来たってわけ」

 

「なんでカイスとガルム突っ切ってガネル来るんですかねぇ...」

 

「さぁ?僕の聖剣に惹かれてるとか?」

 

「まぁありっちゃありだな...一応ガネルから離れておくか?」

 

「うーん...そのままガネルに直行されても困るし、すぐに戻れる程度の距離を取っておこうか」

 

ガネルから少し離れる。もしライトの勇者としての力や聖剣に惹かれているのだとしたら、巨大化魔物がガネルの中で暴れ回るといったことにはならないはず...

 

「あっ、ちょっと進路変わったっぽい」

 

「いつものことだがよく見えるよな...」

 

クミリアの目の良さに毎度のごとく驚きながら、軽ーく身体を伸ばして戦闘の用意をしていく。

 

「速度操作は使っちゃダメだよ?」

 

「わかってるよ。そのためにちょくちょく修行してたんだからな」

 

この数日間、組織関連の捜査はあまり進展しなかったが、速度操作を使わない戦闘をするための修行だけはうまく行った。まだまだレパートリーは少ないが、ある程度戦えるようにはなってきたのだ。それが巨大化魔物に通用するかはまだわからないが、少なくともそこらの襲撃者を相手取るには全然平気程度にはなっている。

 

「よーし頑張っちゃうぞー」

 

魔法図鑑がポーチの所定の位置にちゃんと固定されていることを確認し、ちゃんと魔力を通せるか試してみて...うん、大丈夫そうだな。

 

「……んで、まだ来ないのかな」

 

こっちの準備はできたのだが、肝心の獲物がまだ来ていない。もっと早く飛んできてくれないかな...いや、あまりにも早すぎると戦闘が厄介になるから移動速度は遅くて全然良いんだけれども。

 

「あの大きさだともう少ししたら来るんじゃない?」

 

「いや、まだまだ距離あるし、あの速度だと数分はかかるんじゃないかな」

 

「……なぁクミリア。あれ、どれくらいの大きさに見えるんだ?」

 

「んー...どう考えてもこの壁よりは高いかな。三...いや、四十メートルくらい?」

 

「ビル十四階クラスかぁ...だいぶデケェな」

 

それ以上の巨大化魔物と戦ったことあるし、魔王がそれ以上にまで巨大化したりしていたから、それと比べるとどうしても見劣りしてしまうが、それでも十二分にデカい。というか速度操作を使わないとするとだいぶ強敵だな。

 

「どうしたものか...ステラ、あれ撃ち落とせない?前に数キロ先のところから狙って矢を放ったことあったろ?」

 

「流石に動いてるものを撃ち落とすのは難しいかな...」

 

「そっか...それじゃあニアは?魔法でなんとかできない?」

 

「カイスの近くを通ったということは、防衛装置の魔法をある程度喰らったはず。それなのにまだ飛べてるのだから、相当な魔法耐性持ちでしょうし、ここから浴びせられる魔法じゃあ効果は今ひとつってところね」

 

「あそっか、探知だけして攻撃してないってのは考えられないもんな...近ければ大丈夫なのか?」

 

「やりようはあるでしょうね。役立たずにはならないはずよ」

 

「それならよかった。俺も今回は魔法主体になるし、魔法が一切効かないとかだったら困る」

 

「でも今から攻撃できないとなると、本当に近づかれるまで何も出来ないね」

 

「だな...ああ、でもあいつの攻撃の射程がわからないんだよな。下手すりゃ俺らが攻撃できない距離からビーム放ってくるとかあるかもしれないし、いつ攻撃されても良いように警戒してないとな」

 

「じゃあカリヤも、もうアレやってたら?急に襲ってきたらやりづらいんじゃない?」

 

「そうかな...そうかも。今のうちにやっちまうか」

 

これまでの修行の成果を見せる時が来たようだ。まだステラとクミリアにしか見せてないんだよな。

 

「『九尾』」

 

俺は右手でキツネサインをしながらそう宣言した。

 

『九尾』

 ┠ 4571ページ 黒のみ 触手・水

 ┗『雷装』

 

自動的に魔力が魔法図鑑の特定のページに流れ込み、さらに雷装も発動される。そして魔力と雷装がリンクし、水の触手の表面を覆う。

 

「うん、ちゃんと出来たな」

 

「……今、何が起きたの?」

 

「簡単に言えば、スキルを発動するだけで使いたい複数個の魔法を全部使えるようにしたんだよ」

 

速度探知を使わずにどうやって魔法図鑑の狙ったページに魔力を流し込むか。それが一番の問題だったわけだが、俺はスキルに目をつけた。

 

スキルとは、過去の再現。一度やったことを寸分違わずに実行する、この世界の人類特有の慣れの極致。それを使い、魔力を流し込む工程を自動的に行えるようにしてしまったのだ。二の矢とか速射とか、そういった動きをスキルに出来ることは知っていたから、これも出来るんじゃないかと思ってやってみたが驚くほど上手く行った。

 

ついでといった感じで雷装などの他のスキルや、別の魔法も同時に発動できるようにしようと色々試行錯誤した結果できたのが、この九尾という複合スキル。前々から使っていた九つの雷装を纏った水の剣を生み出すスキルだ。

 

「まぁ安定して発動させるにはスキル宣言だけじゃダメで、特定の動きをトリガーにしないといけないんだけどな」

 

先ほど例に挙げた二の矢や速射とは違い、この複合スキルは別の魔法やスキルを発動させるためのスキルであり、普通の方法では発動できない。身体の中で複数の異なる処理をしないといけないため、スキル宣言という単一動作では無理なのだ。

 

そのため、特定の動きとスキル宣言の二つをトリガーとし、それらを同時にすることで複合スキルを発動するようにしたのだ。特定の動作と魔法の発動をリンクさせ、因果関係を作りだす。最早、スキルよりもゴモンの反撃流やステラの無心の弓のような原初の魔法に近いかもしれない。それくらい俺の身体にこの動きが刻み込まれている。

 

「このスキルだと、こんなハンドサインが発動のトリガーになる...って、そういやこの世界に狐っているのか...?」

 

「他にはどんなスキルを使えるの?」

 

「他?他には...つってもそんなにまだ出来てないんだよな。今出来てるのだと、あと四つくらいしかないわ。今説明しても良いけど...後でにしようなんかやばそうなんでね!」

 

微かに空を切るような音が聞こえた俺は、巨大化魔物が接近してきている方角目掛けて水の触手を集中させ、飛翔物を受け止めた。

 

「なにこれ...毒?」

 

飛んできたのは何やら液体のようだったが、水の触手に溶けて広がってしまった。するとみるみるうちに色が見るからに危険そうな紫色へと変貌していく。

 

「どうやら水溶性の毒液みたいだな...しかも魔法じゃねぇなこれ奴の体液だわ。奴がここに来るまで二人で守るぞレスト」

 

「わかった。全部受け流す」

 

巨大化魔物が放ってくる毒液を、レストと俺の二人で捌いていく。水の触手に取り込ませ、濃度が濃くなってきたら切り離して遠くに毒液混じりの触手を廃棄し新たな触手を生み出してローテーションで受け止める。レストは単純に左腕の盾の機能を使って毒液を受け流し、遠くへ吹き飛ばして対処している。

 

……捨てられた毒液のついた草がどんどん腐り朽ちていくのが視界の端で見えるな。当たったらこうなるのか...なかなか怖いな。

 

「結構ヤバめの毒みたいだけど、電気分解とか出来ないものかねぇ...」

 

「キツイなら早めに言いなさいよ。障壁を貼る準備はできてるわ」

 

「あー...んじゃ頼むわ」

 

速度操作無しで触手を精密に動かすのはなかなか骨が折れる。障壁で守れるのならその方がありがたい。まぁ一応身構えておくけど...

 

「じゃあ貼るわよ...っ、溶けた⁉︎」

 

「うわホント思ったよりヤベェ毒じゃねぇか⁉︎」

 

障壁まで溶かすとかどうなってんだ...もしや、それが物理的な巨大化以外で得た力か?魔素の影響で毒性が強くなっているのだろう。

 

「貼るなら水で壁作れニア!」

 

「わかってるわ...よ!」

 

ニアが水で巨大な壁を作り出し、毒液を受け止め始める。

 

「……よし、この距離なら...!」

 

雷装の矢を発動させたステラが、水の壁越しに射撃して巨大化魔物に攻撃する。

 

「……っ、溶かされちゃったか...!」

 

ステラが放った矢は、巨大化魔物が放った毒液に命中してしまい完全に溶かされてしまった。

 

「魔法効きにくいくせに物理的攻撃は毒液で溶かして無効化してくるとか...なんかめんどくささの極みみたいな奴だな」

 

「そうは言ってられないわよもうすぐ来るわ!」

 

巨大化魔物が超速度で接近してくる。流石にこの速度のまま着陸までしてこないだろうけど、かなりの暴風が吹くはず。それに合わせて毒液を大量に吐かれてしまうと、水の壁に溶けきってしまう前に突き抜けて俺たちに降りかかりかねない。

 

「俺がなんとかする!」

 

俺は右手で扇をバッと開くような動作をして、そこから前に風を吹かせるように腕を振るう。そして、スキルを宣言する。

 

「『鴉天狗』!」

 

『鴉天狗』

 ┠ 7614ページ 黒のみ 気流操作

 ┠ 4447ページ 黒のみ 暴風

 ┠ 4970ページ 黒のみ 鎌鼬

 ┗ 4569ページ 黒のみ 風切

 

「奴に負けない風を!」

 

魔物の移動によって生じる暴風を打ち消し、上回る暴風を生み出して魔物の吐いた毒液を吹き飛ばす。

 

「よっしゃ体勢崩せた!攻撃開始だ!」

 

暴風で魔物を後ろにのけぞらせ、すぐさま風で足を掬って転ばせた。攻撃のチャンスだ。

 

「どっせーい!!」

 

クミリアが空気の拳で魔物の横腹を思い切り殴りつける。それによって刺激されたのか、毒液が魔物の口から飛び出す。

 

「ハァッ!」

 

降り注ぐ毒液を交わしながらライトは聖剣を振り、魔物の片足を切り裂く。しっかしデカイな。普通の魔物ならこれで足は両断、もしくは腱が切れて立てなくなるだろうに、まだ使えるらしい。魔物は翼で地面を押し、反動を利用して立ち上がった。

 

「傷口からも毒液が...!」

 

「ライト危ない!」

 

ライトに向かって放たれた魔物の踏み付け攻撃を盾でレストが逸らす。圧倒的な質量を持った蹴りが地面に突き刺さったために大量の土が舞い上がり、視界を塞ぐ。

 

「粉塵は俺が飛ばす!ニア救出を!」

 

暴風を吹かせて舞い上がった土煙を吹き飛ばす。そしてすぐさまニアが拘束魔法を使って魔物の足元にいる二人を絡め取り、勢いよく引っ張って回収する。

 

「そのまま攻撃を...!」

 

狙うは足。鎌鼬の魔法で魔物の足周辺の空気を操作して真空を作り出し、皮膚を一気に引き裂く。

 

「魔法耐性があっても物理現象は止められまい!」

 

しかし、耐性を突破出来るといっても鎌鼬は威力が低いため、傷つけるのは表面だけで限界。直接切りに行くしかない。

 

「行くぜェ!!」

 

俺自身の背中に暴風を吹き付け、風に身を任せてぶっ飛ばされる。そして風切の魔法で生み出した風の剣で...!

 

「っ、流石に強度が弱すぎるか...!」

 

実体のない風で作った剣だと硬すぎるものに当たったら霧散してしまうのか...クミリア相手にしか試してなかったから知らなかった。要改善だな...

 

「カリヤ!上!!」

 

空からステラの声が聞こえた。上を見ると、魔物の足が今まさに俺に向かって振り下ろされようとしている...⁉︎

 

「あっっぶねぇ!」

 

暴風で自身を吹き飛ばして緊急回避をする。ついてしまった勢いは同じように風を使って受け止め、なんとか減速し着地する。

 

「ライトを狙ってんじゃないのか⁉︎」

 

ここまで一直線に飛んできたのは、ライトの聖剣を追ってきたからなはず。さっき攻撃されてたのを見てそれが正しかったんだと確信してたんだけど、まさか違うのか?

 

「完っ全に俺にヘイトが向いてやがる...!」

 

風を使った緊急回避で魔物の蹴りと毒液を間一髪のところで避けていく。

 

「攻撃したからか?いやでもそれなら今も攻撃してステラかクミリア、ニアの方に行くはず...もしや、サーマルに俺を狙うように躾けられてんのか?」

 

何はどうあれ、俺をこのまま狙ってくるってんならなんとかするしかない。さっさと別のスキルを使おう今のままじゃ回避がギリギリすぎる。

 

「『鳳凰』!」

 

大きく両腕を広げ、翼を羽ばたかせるようにしながらスキルを宣言する。

 

『鳳凰』

 ┠ 9037ページ 黒のみ 飛行

 ┠ 4632ページ 黒のみ 炎翼

 ┠ 99ページ右上 黒のみ 火球

 ┗ 5092ページ 黒のみ 再生

 

背中から炎の翼を生やし、飛行の魔法によって空を飛ぶ。飛べば回避もしやすいはず...!

 

「炎なら相性もいいだろ!」

 

空中にいる俺への攻撃は必然的に毒液になる。そして、こういう生物の毒は大抵がタンパク質でできているから、加熱してしまえば無毒化できてしまう。いくら毒液を飛ばしてこようとも、グミ撃ちで放つ火球で全て加熱すれば俺には届かない。万が一届いたとしても、炎の翼で燃やせるから問題なし。それすらも乗り越えて俺に当たったとしても、再生魔法も発動させてるから回復できる。何重にも貼ったこのプロテクトを突破することはできない。

 

「あやっべ火力不足だ文字通り!」

 

遠距離武器が火球だけだから、魔法耐性を持っている魔物には当たったところであまり効果がない。これももう少し改良が必要か...一応近づけば炎の翼で直接攻撃できるけれども、これはヘイトを買いながらみんなに攻撃してもらう方が良さそうだな。

 

「つーか、別に他の魔法使っても良いしな。適度に攻撃もやってくか」

 

複合スキルを二種以上同時に使うことはまだ出来ない。だが、別に他のスキルや魔法なら同時に使うことは可能だ。

 

『色彩剣装 原色・青』

 

俺は刀を持ち、青い光を纏わせて切先から青い光の刃を放出させる。これも火力は低いが火球で攻撃するよりも威力は出るはずだ。

 

「ほらほら俺はこっちだぜ!」

 

間違ってもステラを巻き込まないように飛ぶ方向に気をつけながら魔物を引きつける。

 

「そういやお前なかなか飛ばねぇな。なんでだ?」

 

さっきまで飛んでたのだから飛ぶことはできるはず。それなのに空を飛ばずに地に足をつけたまま攻撃してきているのが不思議だ。何かありそうな気配を感じるが...理由がわからないから警戒のしようがないな。

 

「まぁいいや。ライトやってやれ!!」

 

下では、ライトが聖杖を放つ準備をしていた。このサイズでこの距離だと一撃で仕留めるのは難しいが、大半を消し飛ばすことができるはずだ。

 

「消し飛ばす...!」

 

ライトは聖杖を振り抜き、大量の聖素を放つ...っ⁉︎

 

「嘘だろ避けられた⁉︎」

 

魔物が大きく翼を広げたかと思えば、広げた翼から大量の空気が放出された。その空気は魔物の身体を持ち上げ、さっきまで俺がやっていたような方法で移動することでライトの聖杖を避け切ってしまった。

 

「風魔法も使うのかよ...!」

 

これまで飛ばなかった理由はこれか。おそらくこいつは、巨大化の影響で普通には飛べなくなってしまったのだ。その代わりに、大量の空気を溜め込み放出することで空を飛ぶ技術を手に入れたというわけだ。今思えば、奴が俺たちのところに飛んできた時に吹いてきた暴風も、この空気の放出によって生じたものだったのかもしれない。

 

「けどそれならリキャストがあるはず...そう短時間で何度も飛べないし、空気を取り込む時に異物を入れてやれば...!」

 

空を飛び始めた魔物を見ながら考える。溜め込んだ空気を使い切ったら地面に降りるはず。そこから空気を溜め込み始めるとすると、そこが狙い目だろう。次に飛び立つまでがタイムリミットだ。

 

「まずは降りるまで耐久...って、攻撃激化してやがる!」

 

暴風を吹かせながら毒液を吐いてくるため、このままだと対処が間に合わなくなりそうだ。これは熱で無効化するんじゃなく、逃げて回避する方が良さそう...!

 

「『主神(ゼウス)!』

 

一度地面に降り、走りながらスキルを宣言する。走りながらの発動がトリガーなのだ。

 

主神(ゼウス)

 ┠ 9938、9939ページ 能力最大

 ┗『雷装』

 

攻守走バランス良くバフをかけ、さらに雷装も纏って加速し地を駆け抜ける。全能の神であり、雷を操るゼウスはこのスキルの名前としてピッタリだろう。もっと性能をモリモリにしたかったが、能力最大の時点で大量の魔法を同時に使ってるからこれ以上はキツイんだよなぁ...

 

……って、そんなことはどうでもいい。今はこの身体能力を活かして回避に専念...!

 

「この速度じゃ追えねぇよなァ!」

 

一応人魔戦争直前の最高速度は超えている。もしあの時点での俺の速度を仮想敵としてこいつを強化していたとしても、これなら軽々と攻撃を避けることができるわけだ。

 

「そろそろ落ちてくる頃だよなァ?」

 

バフのおかげか、思考もいつもより回っていた。テンションも上がってきた。今なら僅かな変化も見逃さない。魔物の高度が少しずつ落ちているのを見てもう少しで地面に降りてくると思った俺は、行動を回避から攻撃へと切り替える。

 

「ここなら...!」

 

魔物の背後に一瞬で回り込む。ここなら俺に向かって毒液を吐こうと思っても、振り向くという動作が前に入る分ロスが生じる。攻撃するならこの位置からだ。

 

「いくぜ!『雷神(トール)』!!」

 

右手を高々と上げ、何かを掴むような動作をしながらスキルを宣言する。

 

雷神(トール)

 ┠ 7002ページ 黒のみ 金属生成

 ┠『製作』

 ┠ 6773ページ 黒のみ 磁力操作

 ┗『雷装』

 

金属生成で大量の金属を作り出し、それを製作スキルで巨大な鎚へと作り替える。そして雷装を纏わせ、磁力操作を用いて生み出した鎚を動かす。何かを掴むような動作はあくまで発動条件。鎚を持つわけでは決してない。こんなデカブツ自力で持てるわけねぇ。

 

「ブッ潰れろ!!喰らえミョルニル!!!」

 

魔物の頭に向かって勢いよく鎚を振り下ろす。

 

ゴシャァッッ!

 

……やはり質量。質量こそ正義。鎚が激突したことで魔物の頭が大きく陥没する。それでもなお鎚の勢いは止まらず、そのまま魔物の全身が地面に叩きつけられる。

 

「うーん...遠隔攻撃だから手応えがねぇな。流石にああなってれば死んでるよな?」

 

いくら巨大化魔物でも頭が陥没すれば流石に死ぬはず...死ぬよな?まぁどっちみち、体内の魔素を放出させないとだからもう少し攻撃は必要なんだけど。

 

「一応もういっかいぃっ⁉︎」

 

地面に横たわっていた魔物が、曲げていた足を急に伸ばしてキックしてきやがった。咄嗟に鎚を使って受け止めることはできたけど、あれでまだ生きてんのかよ...もっと攻撃しないとダメか。

 

「戦闘続行...だな」

 

魔物の足が届かないところまで下がった俺は、巨大な鎚を背後に浮かべながら呟いた。




複合スキルの発動条件の話、ちゃんと伝わったかな...頭の中のイメージを言語化するの難しい...
ちなみに、発動する時の動きはちゃんと決めてるものもあればちょっと適当なのもあります。
鳳凰の時に荒ぶる鷹のポーズやらせようかと思ったけど、流石に戦闘中だしやめさせましたわ...
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