前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8307字。

戦闘シーンは前半で終わります。


真夜中無意識放浪

「死んでねぇけど、流石に空気は使い切ったみたいだな」

 

魔物は横たわった状態から上半身を起き上がらせたが、空を飛ぶことはしなかった。溜め込んでいた空気を使い切ったのだろう。しばらくは空気を溜め込むフェーズに入ったはず。ここがチャンスだ。

 

「何使うか...鳳凰にするか」

 

とりあえず鎚を勢いよく叩き込んで、鎚に込められていた雷装を全て消費し切ってから次のスキルを発動させる。

 

「『鳳凰』!」

 

『鳳凰』

 ┠ 9037ページ 黒のみ 飛行

 ┠ 4632ページ 黒のみ 炎翼

 ┠ 99ページ右上 黒のみ 火球

 ┗ 5092ページ 黒のみ 再生

 

炎の翼を生成する。さーて、発動したは良いもののこっからどうしようか。奴が空気を取り込む時に何かしたいなとは思ってるけど、何すれば良いか思い浮かばねぇ...

 

「……あれ?風を取り込むやつに炎で攻撃って、どこぞのワ○ウ...」

 

「なにボーッとしてんのよカリヤ!働きなさい!」

 

「ごめんニア少し考え事を...なぁニア。なんか可燃性の何か出せたりする?」

 

「すっごいフワッとした要求するわねアンタ⁉︎そんなもん適当に油でも出せば良いでしょ自分で持ってるわよね!」

 

「……そういやそうだな」

 

複合スキルを使うことばっか考えていたから、次元収納の中身を使うことを一切考えてなかったわ...

 

「ああでもダメだ。少し前に使い切ったんだった...まぁいいや普通に内側から燃やそう」

 

炎の翼で身を包みながら空を飛び、魔物に近づく。どこから空気を取り込んでいるのかわからないけど、取り込み口に近づけば翼の炎を吸い込むはず。場所がわかったら集中砲火だ。

 

「みーつけた」

 

どうやら翼の付け根の部分から空気を取り込んでいたらしい。そこに大量に火球を撃ち込み、炎を混入させて内側から魔物を熱する。いくら魔法耐性があるといっても、内側からなら多少効果が出るはず...!

 

「っと、危ねぇな」

 

毒液を吐かれたため一旦魔物から離れる。炎で無毒化できるから逃げなくてもよかったかもだが、魔物はさっき頭をへこまされたから怒り心頭なはず。もしかしたら今まで出していなかった攻撃を出してくるかもしれないし、一応回避して正解なはずだ。

 

「……あれ?そういや普通に三十秒経ってるよな?」

 

今すぐに魔物が飛ぶようなことはないはず。今ならライトの聖杖を当てれるんじゃないか...?

 

「ライトー!聖じょ...必殺技撃ってやれ!」

 

聖杖という魔法の名前は、聖剣を持つ者にしか知ることが許されない。声に出すことすら出来ないから今一瞬声が止まってビビったわ...でも、聖杖を撃てという指示は通った。内側から攻撃とか関係なく、魔物の大半を一気に消し飛ばしてしまえ!

 

「ごめんまだ無理!」

 

「へ?三十秒余裕で経ってんだろ⁉︎」

 

「前にカリヤが無茶な使い方したせいでクールタイムめっちゃ伸びてるの!言わなかったっけ?」

 

「なにそれ聞いてねぇ⁉︎」

 

まっじかよそんなことなってたのか申し訳ねぇ!

 

「再使用まで何分だ⁉︎」

 

「もう十分は必要!」

 

「マジか...しゃーねぇ必殺技無しで行くしかねぇか」

 

最高火力は使えない。さてどうやって倒すか...体内から熱するのが現時点で一番のように思えるけど、何か他に方法はないのか...?

 

「消えろっ!」

 

声を出しながらステラが無心の弓を放つ。無が魔物の翼を貫き、風穴を開けた。

 

「……そうだった基本を忘れてたな」

 

巨大化魔物との戦闘で一番大切なのは、体内に蓄積されている魔素を排除すること。そのためには傷をつけなければならない。切り傷や風穴が最適。殴打では魔素流出を引き起こすような傷はつけられない。ってなるとトールは巨大化魔物には効果が薄いか...

 

「……ってなると、俺の手数じゃヤバくね?」

 

これまでに作った複合スキルは五つ。その中で、切断出来るような攻撃が出来るのは九尾か鴉天狗か鳳凰の三つ。ただし、鴉天狗の鎌鼬は効果範囲が小さいため巨大な切り傷をつけることは難しく、風切は強度不足で無理。鳳凰もメインは火球。接近して炎翼で切るのはサブだからそれで火力を出すのは難しい。

 

ってわけで、複合スキルの中だと九尾しか手段がない。だが、火力は出せるものの移動補助の魔法が雷装しかないから回避に難がある。毒はなんとか出来るものの、蹴りなどの物理攻撃はどうにもならない。

 

「多少無理はしないとダメか...『九尾』!」

 

『九尾』

 ┠ 4571ページ 黒のみ 触手・水

 ┗『雷装』

 

「……っと危ねっ!」

 

飛んできた毒液をすんでのところで水の触手を使い受け止める。

 

「そうなんだよな隙狙われんだよな...」

 

複合スキルの弱点は、一連の処理が完了するまで思うように動けないことだ。二の矢や速射など、以前行った行動を再現するようなスキルも同じようなデメリットを持っているが、この複合スキルの場合はそれらと比べると若干だが緩和されてはいる。

 

どのくらい動けなくなるかはものによってまちまちだが、九尾の場合は水の触手の生成から雷装魔力で触手の表面を覆うまでの間は行動に制限がかかってしまう。その間は無防備なため、そのタイミングを狙われるとキツかったりする。今回はギリギリ防御が間に合ったが、なかなかヒヤヒヤさせられた。

 

「でもそれで俺を殺せねぇんじゃ意味ねぇよなァ!」

 

触手で地面を叩き、反動で飛び上がる。九尾でできる唯一の移動技術。けれど、軌道が単純なため狙おうと思えば反撃は容易な移動...当然狙ってくるよな!

 

「それを待ってた!」

 

『色彩剣装 原色・赤』

『色彩剣装 原色・緑』

 

「混色の黄!!」

 

触手で毒液を受け止めた俺は刀に黄色の光を纏わせ、魔物に向かって勢いよく振り抜く。空間ごと魔物の左の翼が斬り飛ばされる。

 

「そのまま...!」

 

触手を一本だけ伸ばして魔物のへこんだ頭にひっかけ、空間の裂け目を避けながら右翼側へと回り込む。

 

「風穴広げるぜェ!」

 

先程ステラが開けた翼の風穴に触手を突き刺す。そして雷装魔力で剣の形へと変形している触手を一気に動かすことで、放射状に切断していく。

 

「うっわマジかよ翼に毒溜め込んでんのかきったね」

 

触手を引き抜いたら毒のせいでエグい色をしていた。翼の中に溜め込むって飛行機のガソリンじゃないんだからさ...ん?じゃあどこに空気溜め込んでんの?

 

「まぁいいやこれで両翼は死んだ!魔素もだいぶ減ったはず!」

 

残るは胴体に残る魔素のみ。そして、翼の切断面から魔素が常に流出し続けている。加速がないから全て出し切るまでにどれだけ時間がかかるかはわからないけれど、これで少しずつ弱体化していくから時間が経つたびに戦いやすくなるだろう。

 

「あとは内側から...そうだ!」

 

良いことを思いついたので、着地と同時にまた触手で地面を押して跳躍する。狙いは、少し前に見つけた空気の取り込み口。右翼側の方はまだ残っているはずだ。

 

「あらよっと」

 

触手を鉤爪状に変化させ、魔物の身体に食い込ませることでへばりつく。

 

「それじゃあ...イケナイこと、しちゃおっか」

 

確かにそこにある空気穴に...水の触手を突っ込む。液体だからスルスルと入っていくし、空気を押し出すから空気を放出することがトリガーとなる行動を取ることも許さない。穴から触手突っ込んで体内弄り回すとかいう、文字起こししたらめっちゃヤバいことをしているが、案外これが最適解かもしれない。

 

「よーしこの辺で...雷装ぶっこめ!!」

 

液体としての性質を十分に活かすために、この触手への雷装魔力の付与を解除していたのだが、そこに一気に雷装魔力を流し込み、魔物の体内に直接雷装を叩き込んでやる。

 

「か、かなりエグい攻撃してるわね...」

 

「仕上げはこっからだぜ?今この中には大量の気体が生じている...ってわけで、着火は誰か頼んだぜ!」

 

触手を魔物の身体から引き抜き、跳躍してその場から離れる。

 

「じゃあトドメは僕が」

 

「壁はクミさんが作るよ!」

 

ライトが小さな火種を作り出し、魔物の空気穴目がけて飛ばす。そしてクミリアが空気の腕を作り出して爆発から逃れるための壁を生み出してくれたので全員でそこに隠れる。

 

次の瞬間、魔物が内側から弾け飛ぶ爆発が生じた。

 

「……そーいやまた忘れてたけど、あの爆発ってマナ吹き飛ぶんだったな」

 

魔物の体内で水素爆発が起こったことにより、溜め込まれていた大量の魔素が丸ごと消し飛んでしまった。それによる急激な縮小の影響もあってか、爆散した魔物は即死だった。

 

「体内から爆破って、やっぱりエグいわね...」

 

「巨大化魔物相手だと最適解だし、これ多分これからもやってくことになると思うぞ。今のうちに見慣れておけ」

 

そりゃ無理だよ...と言いたげな顔をするニアを横目に俺はクミリアの方を見ていた。爆発から逃れるために空気の腕を作り出していたんだろうけど、魔物の体内から吹き飛んできた毒液からも守ってくれていたから、これが無かったらヤバかった。

 

「あークミリアそのままにしてて。今毒液拭いとるから」

 

水の触手を伸ばして空気の腕に付着している毒液を拭い取る。

 

「よし、もう解除していいぞ」

 

「これ微妙に重いから疲れるんだよねー」

 

そう言いながら空気の腕を解除するクミリア。腕をぷらぷらと震わせてほぐしている。

 

「ってかやっぱ、速度操作ないと辛いな...何度も何度も言ってることだけど、どんだけ速度操作に頼ってたんだって思わされるな」

 

「こっちもそうね。カリヤが走りまくって盤面を荒らすのが出来ないせいで、今までよりも戦いにくかった。加減速のサポートも無いしで、ずっと辛かったわ。魔力切れそうになってしまったし」

 

「気をつけてくれよな。もう魔力回復してやれねぇんだし」

 

加減速のサポートを受けられないことでクミリアとライトが若干戦力ダウンし、俺自身の火力や速度が落ちたことでヘイトを集められなくなりレストの負担が増したりと、俺が弱体化したことによってみんなも不利益を被ったわけだが、一番被害を受けたのはニアだ。俺の魔力回復速度加速があることを前提として魔法を使う癖がこの二ヶ月の間に出来てしまったため、魔力切れの危険性が高まってしまったのだ。

 

「早いうちに、カリヤのせいで捻じ曲がった戦闘常識を修正しないとダメね」

 

「……なんかすまんな」

 

「良いのよ別に。カリヤのおかげで魔力量は格段に増えたわけだしね。それに、直さないといけないのはカリヤもでしょうし」

 

「そうなんだよなぁ...複合スキルも考え直さないといけないのがほとんどだし、まだまだ頑張らないと」

 

正直九尾とトールくらいしかまともに使えそうなのなかったからなぁ。鴉天狗も鳳凰も火力不足。ゼウスは身体強化しかできないから巨大化魔物相手にはあまり使えない。なんなら九尾は前からやってたことだから実質的に手札トール一つしか増えてねぇなこれ...

 

「……後々考えりゃいいか。終わったし帰ろうぜ〜」

 

「これってそのままでいいのかな?」

 

「これ?...ああ、たしかにどうしよう」

 

周囲に飛び散った毒液を見る。毒液がかかった草花は完全に腐り落ちてしまっており、なんなら土も腐食してる...?

 

「どうする?これ」

 

「私たちには何もできないからノータッチでいいわよ。一応ギルドに報告しておけば、専門家が修復するとかはあるかもしれないけれど」

 

「まぁそっか。北側だから元々整備されてないし別にいっか」

 

これがガネルの南側だったら即修復作業に取り掛かっていただろうけど、北側なら馬車が通るとかもないから直ぐに直す必要はないな。

 

「それじゃあ帰るぞー」

 

戦闘中にだいぶガネルから離れてしまっていたがそこまで遠いわけではない。爆発であそこまで毒液が飛ばなくてよかったな...と思いながら、俺たちはガネルへと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだなんだ?何の騒ぎだ?」

 

ガネルに戻ってきたら、なんか町中がザワザワしていた。何事だろうと思い、聞こえてくる話し声に耳を傾けてみる。

 

…………

 

「……最悪だ」

 

聞こえてきた内容はこうだった。

 

王様は既に死んでいて、今いる王は偽物だ。国はその事実を隠している。

 

「なんでその話が知れ渡ってんだよ...」

 

この話はトップシークレットのはずだ。国の重役と俺ら勇者パーティーくらいしか知らないことのはず。なのになぜバレてしまっているんだ?

 

「……どうせキネットがリーダー格にしようと思っていた人にだけ教えていて、そいつがその事実を公表しただけでしょうね。まさか魔族同士で何をやっているのか連絡してないわけないでしょうし」

 

まぁそうか普通に考えたらそうだよな。フロートがやっていたことをキネットが知らないわけない。教えることは可能だっただろう。

 

「国の上層部にまで組織の構成員がいて、そこからリークされたって可能性もあると思うよ」

 

「うわそれも十分あり得そうだな...でも流石に前者か?そこまでキネットも手を広げられないだろ」

 

「でもフロートが手引きすれば王城に潜入することはできると思うよ。そこで何かしたかもしれない」

 

「それが出来てたら人魔戦争とかやらずに国のトップも上層部も全部殺戮してない?今起こってるイザコザは全部負けた時の保険のせいだったはずだろ?潜入してまでやることが洗脳とか、回りくどすぎるだろ」

 

どこぞのジュ○ル星人くらい回りくどい。それをするくらいなら殺戮の方が何倍も早い。だから逆説的ではあるけど、ライトが考えた可能性はほとんどないと言えるだろう。

 

「ってかよぉ国も最初から公表していればここまでの騒動にはなってなかったと思うんだよなぁ...」

 

「それ相応の騒ぎは起こるでしょうけど、先に言っておいた方が良かったのは同意ね」

 

「これであれだろ?神世界復興同盟が、自分たちの言っていたことは正しかったとか言い出すんだろ?それで他にも陰謀がある、国が魔神の存在を隠しているのも事実だとかも言うんだろ?厄介の極みだよもう」

 

奴らに大義名分を与えてしまったのは結構ヤバいと思う。奴らの話に正当性が生まれたことにより、今回の一件によって国に疑念を抱いた者が組織の一員に加わるなんてことが普通に起こりかねない。今はまだ冒険者がほとんどだが、これが一般人にまで広がってしまうともう俺たちの手には負えなくなってしまうだろうな。

 

「早めに対処しないと革命起こされかねないな...どうする?これ。俺らに出来るのって、王が死んだ云々の話を認めながらうまい具合に説明して疑念を晴らすか、ただの噂だと切り捨てて王が死んだってのが嘘だということにするかの二択だと思うんだがどうだろう」

 

「それはもう認めた方がいいんじゃない?嘘ついてもどうにもならないでしょ」

 

「というか魔神の話もそうだったけど、真実に嘘が混ざってるから全部嘘だって切り捨てられないの嫌だよねー」

 

「……ん?なぁクミリア、今回の件に嘘無くね?」

 

「いやいや何言ってんのさ。一応今いる王様って本人でしょ」

 

……そういやそうだな。

 

噂だと今いる王様は偽物だって話だが、実際のところはアンデッドではあるが一応本人である。だから今の王様は偽物だという主張は嘘であると言えないこともないけど...アンデッドだから偽物じゃないですって主張も到底通るとは思えないな...

 

「まぁとりあえずそこの矛盾を突いておくか。偽物とは言うけどどうやってその偽物を作ったんだ?とかそういう疑問点をぶつけて信憑性を落としていくのが良さそうだな。王が死んだのは事実だと公表するかは国に任せよう」

 

これは国の隠蔽体質が招いた騒動だ。俺らに出来ることは少ないし、国に任せて俺らはやるべきことをやろう。巨大化魔物の退治に神世界復興同盟の壊滅とやらないといけないことは盛りだくさんなのだ。こんなのにいちいち構っていられない。

 

「つーか朝早くに起こされたからめちゃ眠い...なんか疲労感ヤバいから俺今日もう寝るわ。後のことは色々頼んだ」

 

まだ昼にもなっていないが、鴉天狗の緊急回避だとか鳳凰での慣れない飛行魔法だとか、疲れる要因がめっちゃあったせいで疲労がマッハだ。帰ったら今すぐにも寝れそうだし、大人しくこの欲求に従って寝ることにした。

 

「了解よ。またアレはやっておく?」

 

「一応やっておいてくれ。まぁ多分、無駄だろうけどな」

 

俺らは一度宿へ戻る。俺は部屋で眠りにつき、みんなは各々やるべきことを成すために動くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ、またかよ」

 

長い眠りから目が覚めた俺は、ボソッと誰に聞かせるでもなく呟いた。

 

最近、俺には二つの悩みがある。

 

一つは、悪夢を見ることだ。起きたらどんな夢を見ていたかはすっぽり記憶から抜け落ちてしまうのだが、嫌な夢を見たという記憶だけは残るせいで朝心地よく起きれなくなってしまっている。

 

まぁ、こっちはまだ良い。速度操作を使わずに眠っているから普通に夢を見るようになるのは元々わかっていたことだし、戦闘だったりたまに使う速度操作のせいで頭痛が起きたりと、ストレスは溜まりやすいから悪夢を見やすいってのも元々わかっていたし、そりゃ仕方ないよなって感じだ。

 

問題はもう一つの方。

 

「……んで、ここどこだぁ?」

 

それは、夢遊病。寝ている間に宿の部屋を抜け出して、町の中をぷらぷらと歩き回ってしまうのだ。そして町のどこかで立ったまま目が覚める。ちなみにこれ、四回目である。

 

一回なってしまった後、対策はしたんだ。次の日の夜はちゃんと戸締まりして、簡単には外に出られないようにした。だけど目が覚めたら外にいた。

 

今度はニアに頼んで扉や窓に厳重に魔法をかけてもらい、どうやっても出られないようにした。だけどまた目が覚めたら外にいた。

 

そして今回は扉と窓の封印に加えて、ベッドに俺を縛り付けて身動き取れないようにしたのだが...それでもやっぱり起きてしまうらしい。どんだけ動きたいんだよ俺。

 

「……北の門の近く辺りか。結構歩いたなぁ...」

 

ここまでの夢遊病を引き起こす原因は、やはりストレスなのだろうか。でもこんなになるほどのストレスを抱えた覚えはないんだよな...

 

というか、どう考えても普通の夢遊病じゃないんだよな。本来なら夢遊病って無意識の間に動き回った後、もう一度眠りにつくはずなのだ。なのに俺は立った状態で目が覚めている。つまり、夢遊病で動き回った直後に起きているということだ。

 

しかし、目が覚める直前まで悪夢を見ていたという認識もある。つまりもう一度眠りについていたわけで...もうどっちかわからんな。まぁ普通ではないのは確かだ。

 

「……うわ。やっぱり能力使ってたみたいだな」

 

どうやら夢遊病で彷徨いている間、無意識のうちに能力を発動させてしまっているらしい。ここ四日毎晩そうなっているがために能力がエグい強化されてしまっており、能力の範囲はもう300メートルをゆうに超えている。これ、魔王戦で二つの楔を打ち込んだ時よりも広い。なかなか異常な値になってきたな...

 

「やっぱアレなのかな。使ってないと不安なのかな」

 

無意識のうちに使っているということは、使っていないと不安だというふうに心の奥底で思ってしまっているのだろう。もしかしたら、能力を普通に使い出したら夢遊病治るのかもな。

 

「まぁそれは最終手段ってことで...帰るか」

 

いつもならちょうど日の出直前くらいに目が覚めるが、今日は相当早めに寝たために真夜中に起きてしまった。帰ってももう一度寝るとかはしないが、こんな真夜中に外にいてもすることないし、さっさと帰ることにする。

 

「街灯もついてない完全な真っ暗闇...こんな時に外出るとか久しぶりだな」

 

あるのは微かな星明かりだけ。一寸先は闇とはまさにこの状況のことを言うのだろうな。

 

だが、今いる場所はわかっているので、どの方向に何歩歩いたか数えることで現在位置を把握しながら移動ができ、宿までちゃんと戻ることはできるだろう。完全に何も見えないわけじゃないし迷うことはないだろう。さっさと歩いて帰ろう。

 

……と思ったその時だった。どこからか、誰かに見られているような気配を感じた。それも、一人ではない。少なくとも二人...いや、二人だな。それ以上はいなさそうだ。

 

「誰だ?」

 

そいつらに聞こえるように呟きながら後ろに振り返る。当然暗いから振り返っても誰かいるのか見えはしないけど...

 

「……逃げたか」

 

歩き去るような足音が聞こえた。決して勘違いなどではなく、誰かが俺のことを見ていたらしい。

 

「一応追いかけるか...?」

 

もしかしたら組織の奴らかもしれない。もしかしたら、ここ最近の悪夢や夢遊病も奴らの仕業なのかも...うん、追いかけてみよう。

 

3740ページ下 黒のみ 暗視

 

魔法を発動させて視界をクリアにする。これで追いかけやすくなるだろう。

 

「俺を見ていたのは誰かな〜」

 

俺は奴らが逃げていった道へと入るのだった。




最近スランプ気味ですが、先の重要な部分の展開だけはどんどんアイデアが湧いているので、そこまで辿り着けばもう少し出来は良くなると思います...なんか前にも書いた覚えあるなこれ。
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