前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8506字。

前回の続きです。
戦闘シーンはめちゃ少なめです。


二人の刺客

「逃さねぇぞー」

 

真っ暗闇の町の中、逃げていく二人を追いかける。

 

「つっても、そっちも本気で逃げようとはしてないみたいだけどな」

 

こっちは歩いているのにちゃんと追跡できている時点で、これは茶番だとわかってしまう。奴らは逃げるフリをして何かしようとしているのだ。

 

「何しようとしてんのかは知らんが、やるなら早くしてくれ。逃げたって無駄なのはお前らもわかってんだろ」

 

逃げてる奴らの正体は知らないが、俺の能力のことは知ってるはず。俺が本気で追いかけようとしたら、速度探知で即位置バレして超高速でとっ捕まえられることなんて深く考えずともわかるだろう。それをせずにわざわざ歩きで追いかけているのは、単純にあまり能力を使いたくないからだけど...なんで使わないのかは相手目線ではわからないはず。能力を使うような素振りや言動を見せれば、すぐに行動してくるはず...!

 

「ほら、やるなら早くしまっぶし⁉︎」

 

突然周囲の魔力灯が点灯し、暗視の魔法を発動させていた俺は目がやられる。すぐに暗視を解除するが、しばらくは何も見えないだろう。

 

そんな中、近くの建物の屋根から人が二人降りてくる音が聞こえた。光で俺の目を潰し、その間に攻撃しようという三段だろう。

 

「遅い。『九尾』!」

 

『九尾』

 ┠ 4571ページ 黒のみ 触手・水

 ┗『雷装』

 

距離的に発動完了までに攻撃されることはないと踏んだ俺は複合スキルを発動させた。水の触手の表面に雷装魔力が覆われ、そのまま襲撃者二人の攻撃を触手で防ぐ。

 

「得物は奪わせてもらうぞ」

 

触手で襲撃者たちの得物を取り込み、その手から奪い取る。

 

「……なんだこれ、杖?」

 

二人とも杖で殴りかかってきたのか?ってかこの杖どこかで見たことあるような...

 

「っとと危ねぇな。黙っててもらおうか」

 

飛んでくる魔法を触手で弾き飛ばし、残っている触手を伸ばして襲撃者の足を絡め取り雷装を流し込む。

 

甲高い少女の叫び声が辺りに響いた。

 

「この声にこの杖...まさかテメェら...⁉︎」

 

もう目も見えるようになったので、触手を操り襲撃者を引き寄せて顔を見る。

 

「やっぱりお前らか...何してんだよ、フレアにミレア」

 

襲撃者は俺のよく知る双子の少女、フレアとミレアだった。まさかこの二人も神世界復興連合の一員だとは...いや、一応まだ決まったわけではないか。まぁ、襲ってきてる時点で違うってことはないと思うけど。

 

「離...して!」

 

「それは二人が抵抗しなければやってやるよ...魔法使おうとしてんのに解放するわけねぇだろ?」

 

触手の締め付けを強める。少女二人を電流を流した触手で締め上げるという絵面は相変わらず酷いが、これをしなければフレアの重力魔法とミレアの水魔法で攻撃されるからね。先に攻撃してきたのは二人の方だし、正当防衛ってやつだ仕方ない。

 

「触手は俺と繋がってるから、重力で何かしようとしたら一緒にお前らも引っ張られる。なんなら違和感した時点で地面に叩きつけてやっても良いんだぜ?あと、水は俺の触手と干渉するから無意味。使ったらさらに締め付けてやる。この状況を理解しろ。死にたくなけりゃ抵抗を止めるんだな」

 

二人をそれぞれ脅す。だが、それでもなお抵抗はやめない。

 

「……なるほど、なんか雷装の効き目が弱い気がすると思ったらバフで耐性つけてたのか。それプラスで膂力も上げて触手から抜け出そうとする...か。相変わらず状況わかってないな」

 

触手の締め付けをさらに強め、バフをかけながらもがく二人を拘束しながら俺はポーチを開き、魔法図鑑を取り出す。

 

「はい、残念でした」

 

ページをめくり、目的のページにたどり着いた俺はそこに描かれている魔法陣を起動させた。

 

9926、9927ページ 黒のみ 魔法拡散

 

「これでお前らは魔法を使えない。抵抗も無駄ってわけだ。それじゃあ洗いざらい吐いてもらおうか」

 

「……」

 

「ダンマリか?悪いが無理にでも吐いてもらうぞ。まずはなぜ俺を襲ったかだ」

 

キンッ!

 

俺が話し終わって口を閉じた時、小さな金属音がした。

 

パッとフレアの手元を見ると、そこにはライターのような何かが見えた。そういう形状の魔道具か何かか?...ん?ライター?マズくね?

 

「死なば...諸共!」

 

マズイ今俺は水の触手に雷装魔力を纏わせている。表面にしか纏わせていないから電気分解はそこまで起きていないものの、起爆の元は十分に溜まってしまっている。そして、魔法拡散では魔道具は止められない。今火をつけられたらマズイまとめて吹き飛ばす気か!

 

「クソッ、させるか!」

 

触手を伸ばして魔道具をフレアの手ごと包み込む。これで火をつけようとしても水の中だから火はつかない。これで平気なはず...いや待て、フレアが持っててミレアが持ってないとかあるわけねぇ!

 

「これでお終い!」

 

案の定ミレアの手にも魔道具が握られていた。そして既に点火スイッチに指がかかっており...

 

次の瞬間、指は動き、スイッチが押された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

爆発は起こらなかった。

 

それどころか、火もついていなかった。

 

「なんで...故障⁉︎」

 

「そんなわけないでしょう」

 

どこからともなく声が聞こえた...かと思えば、その声の主はすぐ近くの地面に降り立った。

 

「ニア⁉︎どうしてここに!」

 

声の主はニアだった。

 

「無意識下で結界ぶち破って外出たバカを追いかけにきたのよ」

 

「それは、その...すまん。助かった」

 

「なんで...なんで点かないの...!」

 

「いくら試したって無駄よミレア。不燃の魔法をあなたたちが知らないわけないでしょ?」

 

「でもカリヤが魔法拡散を使っているんだからニア姉さんにも不燃は使えないじゃないですか!」

 

……たしかに。不燃の魔法を使おうとしても俺の魔法拡散で無効化されてしまうはず。じゃあどうやって魔道具の火を点火できないようにしたんだ?

 

「あら、ミレアには私が嘘をついているように見えるのかしら」

 

ミレアは嘘を見抜く魔法を使える。だからニアが嘘を言っていないことがわか...いや、それも俺の魔法拡散で無効化されてね?

 

「……それも無効化されているとわかってて言うんですね」

 

「ミレアならもう魔法を使わずとも嘘をついているかどうかくらいわかるでしょう?不燃を使ったのは本当だってわかっているはずよ」

 

「それが本当だったとして、どうやって使ったんですか!」

 

「カリヤならわかるんじゃない?魔法拡散下で魔法を使う私なりの方法は何か」

 

「……魔法拡散の上書きか」

 

「そう、ミレアの手元だけ魔法拡散を上書きして不燃を発動させたのよ。全身を覆うようにして発動させてしまうと、カリヤの触手の拘束も解かれてしまうからうまく絞り込むのに苦労したわ」

 

「……ニアお姉ちゃんには敵わないね。降参だよ」

 

ずっと暴れていたフレアは大人しく負けを認め、抵抗をやめた。

 

「だってさ。ミレアはどうするよ」

 

「私も降参します。ニア姉さんにはどうやっても勝てないので」

 

「なんかまるで俺には勝てると思ってたみたいに言うな...」

 

「実際ヤバかったでしょ」

 

「一応死にはしないし、触手で防御できただろうから実際はそこまでヤバくはなかったんだけどな。まぁめちゃ焦りはしたけど」

 

ひとまず二人に自爆まがいのことをさせるのを阻止できてよかった。これから二人にはニアから熱ーいお灸を据えられることだろう。

 

「拘束は私がやるわ。もう抵抗もしないでしょうし、魔法解除して良いわよ」

 

「おけ、頼んだ」

 

雷装と触手・水を解除して二人の拘束を解く。

 

「というかカリヤあんた、よくここまでちゃんと戦えたわね。知り合いなんだし、防御は出来ても攻撃まで出来るとは思ってなかったわ。どういう心境の変化よ」

 

と、ニアは二人を拘束しながらそんなことを言い出した。おそらく、俺が躊躇なく雷装を流し込んだ触手で二人に攻撃できたことに驚いているのだろう。たしかに、以前の俺だったら到底できなかっただろうな...

 

「……なんで出来るようになったんだ?」

 

「自分でもわかってないの?」

 

「なんでだろうな...前に知り合いに背後から刺されたし、そういうのを気にしてちゃいられないって深層心理で思ってるのかもな。まぁ闘技場の試合だったらニアとかクミリアとも普通に戦えるわけだし、やろうと思えばできたんじゃね?流石にパーティーメンバーとは絆が深すぎて闘技場外だと無理だろうけど」

 

「……原因はどうであれ、ちゃんと戦えるのは良いことよ。現に起こったわけだけど、知り合いが組織のメンバーだなんてこと普通に起こりうるんだから」

 

と、ここで二人の拘束が完了した。こっからは尋問フェーズだな。

 

「よし、それじゃあ二人に色々聞いていくとするか...とりあえず大前提なんだけど、二人は神世界復興同盟のメンバーなんだな?」

 

「うん、そうだよ」

 

「話が早くて助かるぜ。んで、俺に悪夢を見せたり夢遊病を引き起こしたりしてるのも二人の仕業か?」

 

「……なにそれ?私たち知らないよそんなこと」

 

「……マジ?無関係?組織の奴らが俺に何かしてるってのを聞いたりとかもしてないのか?」

 

「聞いたことないね」

 

「じゃあ、なんで今日襲いかかってきたんだ?」

 

「なんか最近カリヤが夜にフラフラ一人で出歩いてるって話を聞いて、今なら行けるかもって思って...」

 

ってことは、なんだ?悪夢とか夢遊病とかは組織の奴らとは無関係なのか?単純に俺自身のストレスが引き起こしたものなのか...?

 

「……まぁいいや。夢遊病の時に襲われなくてよかったぜ...次行くぞ。二人は誰に魔人の話をされて組織に入ったんだ?キネットか?それとも別の奴か?」

 

「……」

 

「……」

 

「ダンマリねぇ...口をつぐんでも無駄だぜ。ニアなら記憶を読み取れるんだからな」

 

「そうよ。どうせ時間をかければわかるんだから、言ったところで変わらないわ。それならさっさと終わった方があなたたちも楽よ」

 

「……覚えてないものをどうやって言えば良いの」

 

「覚えてないだぁ?んなわけあるかよ」

 

「本当に覚えてないんだよ。少しは覚えているところもあるけど、ギルドの受付嬢から話を聞いて、国の人たちに一時的に記憶を封じられて、記憶が戻って...そこからはもう覚えてないよ。組織のアジトの場所も他にどんなメンバーがいたかも何も覚えてない」

 

「私たちは自由に動けって言われてたから、組織の記憶を消してもらってたの。万が一失敗しても、情報が漏れないようにね」

 

マジか...徹底してやがるな。情報無しか...

 

「……ん?おいちょっと待て。本当に記憶ないのか?」

 

「そうだけど」

 

「さっき俺二人に魔法拡散使ったろ。記憶の封印も改竄も全て解けてなきゃおかしいだろ」

 

魔法拡散で記憶が元に戻っていないとおかしい。それっぽいこと言って煙に巻こうとしたのだろうが、俺の目は誤魔化せないぞ。

 

「あー...カリヤには説明していなかったわね」

 

「ん?なんだよニア説明って?」

 

「記憶の操作には二種類あるのよ。常に魔法の効果を付与し続けることで記憶を封印したり改竄したりできて、解除しようとすれば元に戻るいわば可逆的な操作と、一度きりの操作で全て完了しており二度と元には戻せない不可逆の操作の二種類ね」

 

「……なるほど、理解した」

 

常に魔法の効果を付与させる方式だったら、魔法拡散で解除できるし発動者が死んだら解除される。これがキネットが使った可逆的な記憶操作。前にニアが俺に対して使ったのもこっちの記憶操作なのだろう。

 

そして今回二人に対して使われたのは、もう一つのもう戻らない不可逆の記憶操作。おそらくは、記憶を司る脳の部位に直接関与して細胞ごと記憶を消したりだとか、脳内物質を変異させて記憶を歪ませるとかいう感じなのだろう。もう既に魔法の効果が切れているから魔法拡散では解除されないし、どうやっても記憶をサルベージすることは叶わないというわけだ。

 

「ってことは、記憶を見たところで何も情報を得ることはできないってことだよな...仕方ないな」

 

「そうでもないわよ。記憶を見れないからといって、何も情報がないわけじゃないわ」

 

「というと?」

 

「不可逆の記憶操作は可逆式の記憶操作とは違って時間もかかるし、抵抗しやすいのよ。ということは、国の人らに記憶を封印されたというふうに誤認させる記憶改竄や、組織の記憶を消す記憶消去をした人物は、それなりに二人にとって近しい人物だってことになる。信頼してなきゃ必ず抵抗するからね」

 

「なるほど、そういうふうに容疑者を絞り込めるわけか...二人に近しい人物ねぇ...?」

 

「なんでこっち見るのよ冗談よね?」

 

「そりゃ当然だ。流石にニアを疑うわけないじゃないか。二人に近しい人物はおのずとニアにも近しい人物な可能性が高いわけだし、そこの繋がりで当てはまる人誰かいたかなーって思って考えてたんだ。まぁ思いつかなかったけどな」

 

二人に近しい人物で、かつそういう記憶操作の魔法を扱える技術を持っている人物...カイス出身の誰かか?

 

「そこは後で考えましょうか。だいぶ条件を絞れたわけだし、特定はそこまで難しくないはずよ。それで、他に何か聞くべきことあったかしら」

 

「そうだなぁ...あっそうだ。その魔道具は誰からもらったんだ?もしや、その記憶もない感じか?」

 

「そうだよ。多分、記憶操作をしてもらった人からもらったんだと思う」

 

「単純に火をつけるだけの魔道具だけど、もし雷装を使ってきたら私の水魔法をぶつけて火種を作って爆発させるためにもらった...はず」

 

以前ムカデの巣穴で爆発を使ったのを見ていたのだろう。俺が雷装を使えばそのコンボで倒そうとしていたのか...もし触手を使ってなくてもこの結果に収束しただろうな。

 

「購入者が別なら、そこからも追えそうね。これは貰っておくわよ」

 

ニアは二人の手から魔道具を取り上げ...

 

「……ちょっと二人とも、この印はなに?」

 

二人の左手の甲を見ながら、ニアは聞いた。

 

「なんの印だこれ...なんとも形容し難い形してんな」

 

俺も二人の手の甲を覗き込んで印を見るが、なんなのか全くわからなかった。

 

「これ...なんだろうね?」

 

「これも多分同じ人につけてもらったんだと思うけど、私たちにもなんなのかわからないや」

 

「魔力で描かれてるわね...魔法拡散で分解されなかったのをみるに、魔道具で描かれたものなんでしょうけど...なにこれ、糸?」

 

「どうした?」

 

「なんかこの印から魔力的な接続というか、目には見えない糸みたいなのが伸びてるのよ。魔道具が発動したら、この二人に何かが起こるか、もしくは二人を通じて魔道具の発動者に何かが起こるかしそうね」

 

「何が起こるかはわからないと...でもその糸は追えるんじゃねぇか?」

 

「無理ね。あまりに微弱すぎて追えたものじゃないわ」

 

「そうか...しゃーないな。直接は追えずとも、手がかり多く手に入ったしなんとかなるか」

 

これはだいぶ捜査が進展するかもしれない。その記憶操作を使った奴が組織の中でどの程度の立ち位置なのかはわからないけれど、おそらくはかなり上の方のポストだろう。そいつを捕まえられたらその後の捜査もだいぶ楽になるだろうな。やっぱりチマチマ捜査するよりも、わざと襲撃させて返り討ちにして情報を集める方が早いなこれ。

 

「記憶操作のせいで他の情報はもう出なさそうだし、もうそろそろ尋問終わりにするか。二人どうしようか?」

 

今は真夜中だ。この時間に警察に二人を突き出すのは無理だし、朝になるまでどこかに軟禁しないとなんだよな...なんで夜勤の警察官いないんですかねこの世界。

 

「とりあえず私の部屋に押し込んで監視しておくわ」

 

「おけ頼んだ」

 

「カリヤはまた結界貼っておく?」

 

「んー...もう十分寝たし、朝まで起きてるからやんなくていいぞ」

 

「了解したわ。ほら、二人とも着いてきなさい」

 

「「はーい」」

 

ニアの後ろに二人が着いていく。

 

これにて、真夜中の襲撃事件は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ってことがあったんだよ」

 

朝になり、ニアが二人を警察に突き出しに行った後、俺とニアは真夜中に起こったことをみんなに説明していた。

 

「あの子たちもメンバーだったんだ...」

 

「俺もビックリだよ。襲ってきた奴らの顔見たら知ってる奴だったんだからさ。まぁ知り合いに襲われるの二度目だから驚き度合いはそこまでだけどね」

 

「……あ、そういえば伝え忘れていたことがあったわ。私の部屋に連れてった後にも、少し話を聞いていたのよ。そうしたらとんでもないことを言い出したわ」

 

「どんな話だ?」

 

「あの子たちに記憶操作をした人が、組織のトップ、リーダーだって言うのよ」

 

「……マジ?」

 

「確かにそう言っていたわ。まぁ、私たちを惑わすための嘘って可能性は十分あるけどね」

 

「それもあり得なくはないけど、ニア相手に嘘をつくとは思えないな。マジの話なんじゃね?」

 

もしそれが本当だとしたら、捜査が進展どころじゃなく一瞬で解決まで行ってしまうんじゃないか?いやまぁ、あの手がかりだけで見つけるのにどれだけかかるかはわからないけれど、明確な終わりがやっと見えた気がする。

 

「あ、後もう一つ報告があったわ。前にギルドに設置されていた幻覚の魔道具から検出された魔力と、あの手の甲に刻まれていた印の魔力、同じ人のものだったのよ」

 

「……トップ自らが設置したってことか?そうなってくるとそいつがトップってのの信憑性ちょっと落ちるか...?」

 

「まぁ何にしても、それらをやった奴は最低でも幹部級のはず。そこを捉えられれば芋づる式に摘発できるはずよ」

 

「それもそうだな。そいつに狙いを絞って捜査していくか...ってライトどうした?なんか前にもそんなんしてたな」

 

またしてもライトが頭を抱えながら悩んでいたので声をかける。またデジャブでも感じているのだろうか。

 

「その手の甲にあった印って、どんな感じのだった?」

 

「えーっと...こんな感じ...だったかな」

 

3780ページ上 黒のみ 筆記

 

記憶を辿りながら筆記の魔法を使い、自分の左手の甲に同じ印を書き込んでいく。

 

「うん、こんな感じだったはずだ。これなんなんだろうな?もしかしてこれを基点として記憶操作してるとかあるかな?」

 

「もしそれだったら手の甲なんかには付けないわよ。やるなら額とか首の裏とか脳に近い場所に刻むはずよ」

 

「そっか...じゃあなんなんだろ」

 

「隷属の印」

 

「……へ?」

 

ボソッと呟かれたライトの言葉に、みんなが困惑する。

 

「これ、僕知ってる。隷属の印っていう魔道具で付けた印だ。たしか効果は...その印を打ち込んだ人の魔力を使って、その人の扱ったことのある魔法を行使できる...だったかな」

 

「ちょっ...何よその魔道具聞いたことないわよ!」

 

「しかもヤバいのが、その本人の適性値を参照して魔法を扱えるってこと。例えばステラがこの魔道具を使ってニアの魔法を使おうとしたら、ニアの魔力をニア自身の適性値に従って消費して、ステラが放つことができる。距離は無制限で、魔道具を起動するための魔力だけしか消費しない...そんな魔道具だよ」

 

「おいおいおいなんだよそれぶっ壊れチートすぎんだろ!つーかなんでそんな魔道具のことをライトは知ってるんだ普通に一般流通しているような魔道具じゃないんだろ?」

 

「もちろんそのはずだけど...どこで見たんだろう。僕自身は使った覚えないのに、なぜか知ってるんだよね...」

 

「……まさか、ライトが元々その魔道具を持っていたけど誰かに奪われて、その事実を不可逆の記憶操作で忘れさせられたとか?」

 

「そんなことは無いと思うけど...変だな、使ったことあるようにも思えてきた」

 

「どっちだよ」

 

「多分使ってない...はず。ごめん、ちゃんと覚えていたら...いや、待てよもしかしたら...」

 

「おっ、何か思い出したか?」

 

「……っ⁉︎」

 

ライトが急に驚愕の表情を浮かべ、辺りをキョロキョロと見渡し始める。

 

「……ごめん」

 

そして、ライトは急に頭を下げて謝った。

 

「ちょっ、ごめんってなんだ?何がだ?」

 

「ごめん。詳しいことは言えない」

 

そう言いながらライトは立ち上がり、どこかへ行こうと歩き出してしまう。

 

「おいどこ行くつもりだ⁉︎」

 

「みんなはここにいて。今日は誰も宿の外に出ないで。それが望みみたいだから...行ってくる」

 

「待っ...行っちまったか」

 

追いかけようとしたが、すぐにライトが消えてしまった。魔法で姿を隠したのか、それとも次元転移なり未来跳躍なりで消えてしまったのかはわからない。だが、ライトを追えないのは確かだ。

 

「急にどうしちゃったのよライトは...」

 

「……まさか、組織のトップのところに...?」

 

ライトにはもう誰がトップなのか分かったとでもいうのか...?

 

そして、最後に言っていた望みって...もしや、念話で誰かから指示を受けたりしたのか?一人でこの場所に来いとかそういう...

 

「……俺らはここに留まるべきか」

 

みんなにライトがどうしてあんな行動を取ったのか、その理由を俺なりの考察で説明し、ライトを追わないように言っておく。

 

多分だが、俺らが外に出たら組織の奴らに襲われてしまう。だから外に出ないようにライトに忠告されたのだ。

 

俺らには、ライトが無事でいるように祈ることしかできなかった。




今回までに出た情報があれば、組織のトップが誰なのか一応特定できると思います。
次回の冒頭で早々に明かされると思うので、是非是非考察してみてください。
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