前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
果たして、神世界復興同盟のトップは誰なのか...ちなみに開始十数行で早々に明かされます。
『さぁ来い。一人でここまでな』
その声に導かれて移動する。声の主はギルドにいる。そこにたどり着くまでに妨害は特になし。数分間小走りし続け、ギルドの入り口前にたどり着く。
少しだけ乱れた息を深呼吸で整え、僕はギルドの扉を開け放ち中へ入る。
中に人は一人を除いて誰もいなかった。朝早いとはいえ冒険者もギルド職員もいないのはおかしい。おそらく、カウンター台に腰掛けているあの男が人払いをしているのだろう。
「よかった。ちゃんと一人で来てくれたみたいだ」
男はカウンター台から降り、前に出ながら僕に向かって話しかける。
「やっぱり、君だったんだね...アライブ」
僕をここに呼んだのは、勇者候補であったアライブだった。そして、おそらくは神世界復興同盟のトップも...
「声は変えていたつもりだったけど、気づいていたのか。いつ気づいた?」
「その前に一つ聞きたい。アライブが神世界復興同盟のトップ...リーダーで間違い無いのか?」
「ああ。その通りさ」
えらく簡潔にアライブは答えた。そんなことはどうでもいいとでも思っていそうだな。
「……そもそも、正体がバレたとわかったから僕を呼んだんだと思っていたけれど、違ったんだね。フレアとミレアが捕まった直後なのは偶然だったのか」
「半分当たりだ。二人が警察に捕まったと知った時、記憶を消したとしても情報が漏れるだろうとわかっていた俺は先手を打つことにした。全員で乗り込まれてしまったら何もできずに終わってしまうからな。君は既に俺がリーダーだと気づいていたみたいだし、どうやら紙一重だったようだな...で、質問の回答はまだか?」
「気づいたのはアライブに呼びかけられる直前だよ」
「本当に紙一重...なぜ気付けた?やはり、あの二人が喋ったのか?」
「核心までは聞けなかったけど、それまでに手に入った情報のおかげで気づけたよ。根拠は二つだ」
「二つ...聞かせてもらおうか」
「一つは、不可逆の記憶操作。ニアが言うには、不可逆の方は抵抗されるから、親しくて心を許した相手が魔法を使ったのだと考えられるらしい。無抵抗で受け入れるほどだから、よほど距離が近い人物のはず。二人はカイス出身で家族はガネルにはいないから除外。ニアも論外となると、残るのはアライブだけだ。ここ何ヶ月か一緒に依頼を受けているんだろ?フロートの偽物だったとはいえ、一緒に行動しているのを見たことがある。その時の様子からして、十分に条件は満たしているように感じたね」
「それだけでは不十分だ。君の知り得ない交友関係があるのを否定できていない」
「そうだね。それを補うのが二つ目、魔道具の記憶だ。ギルドに設置されていた魔道具も、二人の手の甲に刻まれていた隷属の印も、何故か見たことあるように感じた。だけど、僕自身は見たことがない。ましては使ったこともないはずなのに、使った記憶が何故かある。それって、勇者選定の時の記憶統合のせいだよね?魔道具を使っていた君の記憶が僕に移されたこと。それがデジャブの正体であり、君が魔道具を使った犯人だという根拠になった」
「だが、それだけではスートが犯人の可能性が...なるほど、それで先ほどの一つ目が効いてくるわけか。しかし、スートと二人の関係性が一切ないとは言い切れない以上、まだスートか俺の二択でしかないぞ」
「……一応、もう一つ根拠はある。それは、フロートがアライブを模倣できていたことだ」
「だから何だ?それでは理由にならないな」
「いいや、なる。フロートの模倣は最低でも十秒は触れ続けていないといけない。だけど、そんな長時間触るなんて不自然だから普通なら払い除ける。そうでなくとも動いた拍子に手が離れるなんてザラだろうから条件を達成するには、よっぽど油断しているところを狙うか、相手に協力してもらうしかない」
「もしかして、俺がフロートとやらに協力したとでも言いたいのか?フレアかミレア、どちらかの姿で俺に近づけばそれだけで解決だろう」
「それはない。アライブの姿になったのは、二人の力を模倣するためだ。順序が逆なんだよ」
「……寝込みを襲われたのかもしれないだろ」
「それならなぜ、あの日お前は何もしなかったんだ?」
「……」
「待ち合わせた時間に二人が来なかったというのに、なぜ探しに行かない?なぜギルドから一歩も出なかったんだ?いいや、そもそもお前はギルドにすら行っていないんだ。誰かに見つかってしまえば、アライブが二人いるということになり騒ぎになってしまう。それを避けるために、お前はあの日動かなかった。人魔戦争が始まる前から、もうアライブと魔族は繋がっていたんだ」
「……なるほど確かに、普通なら二人を探しに行くよな。だからギルドから出ていないとおかしいのに、俺が二人いるという話が出ていないから人目についていたのはフロートの方だけということになる。よって、そもそも俺はギルドにすら行っていないということの証明になる...か」
少しだけ笑いながら、アライブは話し続ける。
「面白い。多少訂正したい部分はあるが、今はまだやめておくとしよう...よく短時間でここまで辿り着いたな。あの祭りの日からまだ一週間も経っていないってのに」
「種明かしは済んだ。これ以上のお喋りは終わり。僕は君を捕まえるよ」
「残念だがもう少し話に付き合ってもらおうか」
アライブはそう言うと、手を此方に向けてきた。
そして次の瞬間、僕の持っていた聖剣がアライブの手元に移動していた。
「づっ...奪っても弾かれるんだな」
「略奪の魔法...!隷属の印の力か!」
略奪の魔法をほぼノーコストで使えるワンナに印をつけており、その力を引き出したのだろう。最大で二回しか使えないカリヤとは違ってほぼ無限に撃てる略奪魔法...ハッキリ言ってやばい。勇者の力を盗めない以上、聖剣を使いこなすことはできないけれど、メイン武器を奪われただけでだいぶキツい。
「心配しなくて良い。話に付き合ってくれれば返してやる」
……それが本当かはわからないけれど、どうやら話に付き合うしかないみたいだ。
「……で、話って?」
「こうして対面してみてわかったが、どうやら僕の狙っている相手は君じゃなかったみたいなんだ」
「……もしや、お前が探しているのは魔王を倒した奴か?」
「……まぁ、その通りだ。国は勇者が魔王を倒したと喧伝していたが、どうやら嘘だったらしいな...ならば、魔王を倒したのはカリヤか?」
「魔王を倒した奴を殺すこと...それがお前の目的か!」
「……どうとでも受け取ってくれて構わない。だが、そうか。カリヤが...なら、俺としては君は帰ってくれて構わない。帰ったらカリヤを呼んできてくれると助かる」
「何をいうかと思えば...お前がそれで良くても、僕は君を捕まえなければならないんだ。帰るわけにはいかないし、カリヤを呼ぶ義理はない」
「俺は帰っても良いと言っているんだ。しないのならどうなるか...わかるかい?」
「わからんな。この戦いの終末はアライブの逮捕で確定だ」
「なら、俺はその未来を塗り替えよう。そうだな...君を倒して人質にして、カリヤを呼ぶことにするよ」
「僕を倒せると本気で思っているのか?」
「大丈夫。殺しはしないさ。俺の計画が失敗した時、残る最後の希望は君だけになるからね」
……?言っている意味がよくわからず困惑していると、聖剣が僕のもとまで戻ってきた。
「ちゃんと返してやったぞ。それじゃあ、始めようか」
アライブはそう言うと、どこからともなく槍を出現させた。
僕はあの槍の正体を知っている。あれはたしか、質量をそのままに密度を変化させることで体積を変動させ、自由に変形させられるアライブの持つ魔道具だ。多分、薄く伸ばした状態で服の上に貼り付けていたのだろう。瞬時に現れたように見えたのはそのためだ。
そして次の瞬間、アライブの姿が消えた...いや、超高速で僕の後ろに回り込んだだけだ。急いで振り向き、アライブの槍に聖剣を合わせて弾く。
「二人の補助魔法か...!」
魔族であるフロートも狙ったフレアとミレアの補助魔法。隷属の印でその力を引き出しているアライブは、自分でその魔法を発動させた時よりも強化されている状態になっているだろう。
「けど、カリヤの比じゃない!」
続く連撃を聖剣で捌き、反撃してアライブの右手の甲に切り傷をつける。カリヤのあの速度を見た後じゃ、この程度の速度なんて早歩きくらいでしかない。僕もバフをかければ、十分追いつける!
一息の間に連続で放たれる突きを最小限の動きで躱し、続けて放たれた横薙ぎの一撃をしゃがんで回避、すぐに地面を蹴ってアライブに近づき聖剣の柄の部分を腹に叩き込む。
「硬っ...!」
結構勢いよく叩き込んだはずなのにアライブはびくともしなかった。このまま近づいたままなのは危ないから、その硬さを利用する。アライブに蹴りを入れ、その反動を使ってその場から飛び退く。
「流石に読まれていたか」
アライブはナイフを持ちながらそう言った。
ただの槍ならば間合いの内側に潜り込んださっきの状況のままで良かった。だが、アライブの武器は自由に変形できる。間合いもその時々で可変する。あのまま移動していなければ、ナイフに変形させた武器で刺されていただろう。
「ここ...!」
アライブが武器を別の武器に変形させる前に魔法を撃ち込む。多分急いで変形させて盾を作り出し、それで魔法を防ぐはず。その隙に近づいて攻撃を叩き込もう。
「その手には乗らないぞ!」
僕の予想とは裏腹に、アライブは武器への変形を止めることはなく、自力で魔法を回避して僕に攻撃を仕掛けてきた。たしかにこの程度の魔法なら避けた方が早いけど、あの早さで判断できるのか...!
「あっぶ...ほんとその武器厄介!」
今は剣の形をとっているが、振られるたびに形状が変わりそれに合わせて間合いも変わるため回避するのでやっとだった。なんなら振られている最中に変形して僕の手を切り落とそうとしてくるし、一瞬の油断が命取りになってしまいそうだ。
「『雷装』!」
雷装による加速を使って回避しやすくし、息を整えながら攻撃を避けていく。隙をついて触れればそれだけでダメージになる。触れるだけでいい。攻撃のタイミングを伺いながら徐々に後ろに下がり、アライブが前に詰めてくるのを待つ。
そして距離を詰めてきた瞬間に僕も距離を詰め、雷装を集中させた手を武器を持つアライブの手に向けて伸ばす。一瞬で痺れさせて武器を取り上げる...!
「それは通用しない」
「っ⁉︎」
弾かれた...ナイフに変形した武器に、いつのまにか雷装が纏わりついている⁉︎
「いったいどこから...!」
まさか僕たちに隷属の印を仕掛けた訳では無いだろうし、勇者パーティー以外に雷装を使える人がいるのか⁉︎見たところ剣にしか纏ってないようだけど、雷装・剣しか使えないのか?それとも、それはブラフで全身纏うこともできるのか...?誰の力を得ているのかはわからないけれど、そこの違いで今後の戦い方は大きく変わってくる!
「こうなったら...!」
大きく後ろに下がり、そのまま上へと跳躍。魔力銃を撃って牽制しながら、上から吊り下がっている照明の上に着地して魔法を放つ。
「吹き飛べ!」
複合魔法、起爆。四つの魔法で引き起こされる見えない起爆剤がアライブの周囲を覆い、そのまま爆発した。
「……これも防がれるのか...!」
アライブは周囲にドーム状に展開した魔道具の形を槍に戻した。爆発が起きた瞬間、自分の周りの空間を覆うことで爆風を防いだのだろう。ほんの一瞬でも遅れれば、逆に爆発の威力を閉じ込めてしまいアライブの体ごと爆ぜていたことだろう。
「いやはや、流石にヒヤリとさせられた。一歩間違えれば僕は死んでいたよ。調整ミスじゃないか?」
……どうやらアライブは、僕がアライブを殺す気はないことをわかっていて、今みたいに迂闊に高火力に任せた攻撃を撃たせないようにああ言っているのだろう。僕の目的はアライブの逮捕。殺すことでは無い。殺してしまわないように手加減する必要があるため、魔物と戦うのとは勝手が違うからなんとも戦いづらい。
けれど、それはアライブも同じこと。僕を人質にするために戦っているのだから、手足は持っていかれるかもしれないけど殺しまではしないはず。手足の一本くらい犠牲にしても良い。多少無理してでもアライブを倒さなくてはならない。
「……しょうがない。今のを受け止められたからには、もっと本気を出さないとだね。腕の一本、覚悟してもらうよ」
「おっと、逆効果になってしまったか。しまったな、どうしようか...」
「考える暇は与えない!」
照明の上から飛び降り、アライブの左腕目掛けて聖剣を振り下ろしながら落下する。
「無駄だ!」
アライブの持つ武器が変形し、聖剣を絡みとろうと網のようになって襲い掛かる。
だが、何が来ようと関係ない。
「なっ、消え...⁉︎」
ちょうど一秒前に発動させていた未来跳躍。俺はこの空間から一時的に消え、一秒の間にアライブの背後へと回り込んで左肩めがけて聖剣を下から上に振り抜く。
「……タネが割れれば二度目で十分だ」
完璧に不意をついたはずなのに、聖剣は変形した武器によってすんでのところで防がれてしまった。おそらくは未来予知の魔法。何度も同じ時間を繰り返し、最善の選択肢を選び取る魔法だ。前にレストが使っていたはずだが、元を辿ればカリヤがガネルの冒険者から教えてもらった魔法だったはず。その冒険者の力を使ったのだろう。
「『聖剣展開』!!」
聖剣を受け止められたことを理解した僕は、即座に聖剣展開を発動させた。相手は人間なため、魔素の反転による擬似的な火力の向上は見込めない。だが、それでも発動させる。
鞘だったものが開き、ガシャガシャと動いて刀身を作り出す...アライブの武器を巻き込み、挟むような形でだ。
「なにっ⁉︎」
「第二第三の手は常に作っておくものだ...よ!」
武器を挟んだまま聖剣を勢いよく振り抜く。すると引っ掛かっていた武器が取れて吹き飛んでいき、アライブの手から離れる。
「もらった!」
周囲に魔法拡散を貼り、隷属の印による魔法の行使を封じながらアライブに近づく。これでアライブの手札は徒手空拳しかないはず。僕の中にある記憶が正しければ、他にアライブが持っている中で今この場で使えそうな魔道具もない。いける。
またしても左腕を狙って聖剣を振り下ろす。アライブの左手の甲には、隷属の印と似て非なる、言うなれば力を受け取るための紋章が描かれていた。あれを通して力を行使しているわけだ。つまり、それさえ切り離してしまえば、もう隷属の印は使えなくなる。そのために、執拗に左腕を狙うのだ。
そして、左腕狙いなのはアライブも当然わかっている。振り下ろされる聖剣の軌道を先読みしてあらかじめ身を捩ることで回避し、そのまま回し蹴りをして聖剣を横から叩くことで僕をよろけさせようとしてくる。
「そうくると思ってたよ」
「なっ...⁉︎」
僕はアライブによって聖剣を蹴り飛ばされる寸前のところで手を離していた。結果、聖剣は飛んでいってギルドの壁に突き刺さったものの、僕の体勢は崩れなかった。そして、僕が聖剣から手を離したことによって、想定よりも回し蹴りの当たりが軽くなってしまい逆にアライブの体勢が崩れてしまった。
未来予知は使ったことないからこれはあくまで予想だけど、おそらく百回の状況を毎回試すことはしないだろう。何度も何度もやっていれば精神が疲弊していくから、出来る限り少なくしたいはず。実際、さっきアライブは二回目で未来予知を止めた。
そして、今回も回数を減らすために、アライブはどうすれば聖剣の攻撃を回避でき、そのまま反撃に繋げられるかということだけに注視して魔法を発動させたのだろう。
それゆえに、その後どうなるかを見ていなかった。蹴りを当てられる選択肢を見た時点でそれに決定してしまった。第一の手の対処で未来予知を使い切らせ、隠していた第二の手で討ち取る。それがこの未来予知の対処法だ。
僕は体勢を崩しているアライブの足を引っ掛け転ばせる。そしてすぐに馬乗りになり、雷装を流し込みながら拳を振り上げ、意識を奪うために顎に向かって振り下ろ
「イ゛ヅッ...⁉︎」
背中を何かで撫でられたかのような感触。そして、走る痛み。構わず拳を振り下ろすものの、痛みによって狙いが少しズレてしまいアライブの顔面すぐそばの床を叩き割ることになる。だが、ただでは外さない。床板を叩き割ったことで小さな破片が飛び散り、アライブの右頬に突き刺さる。
「「っ...外したか!」」
僕とアライブの声が重なった。僕は拳を外した。じゃあ、アライブは?
「なっ、これは...⁉︎」
拳を振り上げ、今度はきちんと顔面に拳を叩き込もうとした次の瞬間、何かが僕を縛りつけた。それは、僕がさっき弾き飛ばしたはずのアライブの魔道具だった。魔道具は糸のように細くなり僕の身動きを封じていた。
そして、糸の端はアライブの指に括り付けられていた。どうやら、完全にアライブの手から魔道具を弾くことはできていなかったらしい。見えないほどの細さで魔道具と自身の指を繋ぐことで魔道具の操作を継続させており、それによって僕の背中を切り裂き、そのまま縛り付けたのだ。
さっきアライブが口走った「外した」という言葉は...推測でしか無いけど、本来なら変形した魔道具は僕の背中に深々と突き刺さるはずだったんじゃ無いかと思う。けれど、聖剣を蹴り飛ばしたことによる体勢の崩れと、僕の足払いによる更なる崩れ。これによって魔道具の操作がズレて背中を切り付けるだけにとどまったのだろう。
と、そんなことを長々と考えて現実逃避するのはダメだな。アライブは魔道具を変形させることで棘を生み出そうとしている。全身身動きできないように縛り付けられているこの状態で棘を生やされたら、全身の至る所に食い込んでしまう。ダメージは絶大だし、なによりも脱出がさらに困難になってしまう。なんとかしなければ...
とりあえず雷装を多めに流し込むけど...ダメだ気絶させられる前に棘を生やされてしまう。こうなったら...!
ガクンッ、と僕の頭が一瞬揺れる。記憶操作の魔法を自分に使ったのだ。
アライブが使っている魔道具を、あたかも自分が元々持っていたものだというふうに自分自身の認識を変えるために。
「返してもらおうか!」
物質転移を発動させ、アライブの持つ魔道具を強制的に飛ばして拘束から逃れ、すぐさま飛び退いてアライブから離れた。
物質転移の魔法は近くにある、一度手に触れたものか、自らの所有物だと認識したものに対して発動できる。運悪く魔道具に手が触れることは一度もなかったためそのままだと発動できなかったが、自身の認識を誤認させることで発動できるようにしたのだ。
「……返して、か。なかなか面白い方法で危機を脱したようだな」
認識が歪んだことによって無意識のうちに口走ってしまった言葉によって、どうやって拘束から逃れたのかバレてしまったようだ。こうなると、二度目は無理そうだな。
お互いに物質転移によって己の武器を手元に戻しながら、傷ついた身体を魔法で癒していく。アライブももう魔法拡散の領域から外に出ているし、完全にイーブンの状態に戻ってしまった。
「仕切り直しだ。次はない」
「それはこっちのセリフだ。全部つぎ込んで、次で終わらせてやる*
お互い駆け出し、己の武器を振る。
刃と刃がぶつかり合う、まさにその瞬間。
突然ギルドの壁の一角が吹き飛び、瓦礫が僕たちのもとに飛んできた...⁉︎
「なんだっ⁉︎」
二人とも後ろに飛び退き、瓦礫を避ける。
壁が壊れて外の光が差し込む方を見ると、そこには何者か、おそらくは壁を破壊した人物が杖のようなものに乗って浮いていた...あれ、この特徴って...!
「よぉ、ニアから話は聞いてるぜ」
「スート...⁉︎」
「……って、マジか。敵アライブなのか。元勇者候補同士、手合わせするのは初めてだな...加勢するぜ!勇者ライト!」
「これは...予想外だな」
おそらくアライブも予期していなかっただろう。それほどのイレギュラー。
だけど、とても心強い味方だ。
ついに元勇者候補が集結...なんかそれっぽい展開になったな。
都合よくスートが来た理由はきちんと次回説明しますんで、け、決してご都合主義じゃあないんだなぁ...