前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8158字。

アライブ戦は今回で終わりです。


脚が無ければ

「ク、ソ...!諦められっかよ...!」

 

切断されており壊れている刀を手に取る。そして...

 

「ア゛グヴッ゛!!」

 

自分で自分の脚を一部切断する。

 

「……一体何をしているんだ?」

 

「絶対治す!!」

 

8271ページ 黒のみ 逆行再生

 

魔法を発動させる。切断した脚が治っていく。

 

だが、そこまで。今つけた傷しか治らず、失った脚は戻ってこない。

 

「てっきりようやく自死するつもりになったのかと思ったが、往生際が悪いぞ。もうお前は走れない。機動力を失ったのだからお前に勝ち目はない。皆のためにも、さっさと死んでくれ」

 

アライブが剣を振り上げる。黒い光を纏ったままだが、どこからともなく聞こえてきたライトの声が言っていたことが正しければ、あれは赤の色彩剣装。防御は不可能だ。回避するしか無い。

 

「クソがァ!!」

 

速度操作を発動し、横方向に高速で転がって回避する。

 

「随分と逃げ足が早いな。ビビりすぎだろ」

 

「脚切断されたんだぞビビるに決まってる...!」

 

ああ、涙目になっているのが自分でもわかる。脚が無い。闘技場でやる試合でもないのに、完璧に欠損してしまった。なんでこんな目に遭わないといけないんだ。俺は魔王を倒してこの世界を救ったってのに、こんな仕打ち酷いじゃ無いか。

 

まさか、一度傷口が埋まってしまったらそれ以上再生できなくなるだなんて知らなかった...いや、少し違うけど似たようなことが起こった事例を俺は知っている。というか、その時は俺がやったんだった。

 

これは、アクセルの腕が異形になるように超回復薬をぶっかけたのと同じなのだ。あの時は再生を防ぐために過剰回復させたが、今回は最低限の回復で終わらせることで完全な治療を防いだのだ。

 

それを思い出していれば、アライブの治療から逃れて逆行再生を使うこともできたかもしれないのに...もう失った脚は戻って来ない。悔やんでもしょうがない。

 

泣くなら泣け!さっさと涙を流し切って動け!俺にはもう、それしかできねぇ!

 

「『製作』!!」

 

壊れた刀を製作スキルで直し、納刀する。そしてダガーを抜いて構える。脚がない今の俺では踏ん張ることができない。腕の動きだけで攻撃できるダガーの方が適任だろう。

 

「何をするかと思えばまだ抵抗するつもりか。お前はもう終わったんだよ」

 

「終わってなんかねぇ!脚が無くたって死ななきゃ終わりじゃ無い!つーかライトどこ行った⁉︎」

 

多分幻覚魔法を使われているために目視で探すことは不可能だ。ちょうど速度操作を使ったところだし、速度探知で居場所を探ろう。

 

「って真横⁉︎ここにいんのか⁉︎」

 

目に見えないのにどうやら真横に立っているらしい。

 

「ごめんカリヤ。止められなかった...!」

 

よかった声は普通に聞こえるらしい。速度探知で空気の振動を読み取る必要はないみたいだ。

 

「別に構わない。そっちもそっちでなんかあったんだろどうせ。こうなったのは俺のミスだから気にすんな」

 

幻覚が効かないライトをアライブは警戒していたはず。俺にライトを知覚できないようにしながらひたすら妨害し続け、俺への攻撃に介入されないようにしていたのだろう。俺がなんとかできていれば良かったのだから、ライトには気に病まないで欲しい。

 

「それよりも先にアイツをなんとかする方法考えようぜ。現実をハッキリ見れるお前が考えてくれると助かる」

 

「……作戦立案は僕にはできないよ。出来ることは、せいぜいこれくらい」

 

視界が切り替わる。地を這いつくばっていたはずの視点が、まるで立っているかのような視点に変わる。これは...ライトが見ている景色か。

 

「カリヤみたいにうまくは出来ないけど、これで助けになれる?」

 

「ああ。助かるよ」

 

俺がやった時は、一度五感の共有の魔法でみんなの見ている景色を見て、そこに俺が速度探知で知った情報やライトの視覚から得た正常な情報を加えたものを思考共有で送り返す、といったふうにしていた。

 

だが、ライトにはそこまでのことはできない。ライトの視覚がそのまま送り付けられてきている。まぁそれでも正常な景色を見れるだけで十分だし、ライトの視覚に俺が映り込んでいれば通常通りに動けるだろう。問題ないはずだ。

 

「んじゃあ...とりあえず俺が突っ込むからライトは援護頼む」

 

「えっ、なんでカリヤが狙われてんのに行くのって早っ!」

 

ライトに止められる前に動き始める。腕で地面を押して推進力を得た瞬間に加速してアライブに向かって突撃する。狙うは脚。ダガーを突き刺して動きを止めるつもりで振る。

 

「喰らうか!」

 

アライブは俺らが話し込んでいる間に大量のバフを起動していたようで、その圧倒的な身体能力によって俺の速度を見切り、変形した魔道具で弾いてくる。音速の半分程度に抑えていたとはいえ、受け止められるのか...

 

「それならもっと加速するまで...んぐっ⁉︎」

 

心臓に痛みが走る。略奪魔法か...無理して能力を使うことはできるが、どうしたものか。

 

「……能力いらねぇ!『九尾』!」

 

『九尾』

 ┠ 4571ページ 黒のみ 触手・水

 ┗『雷装』

 

加速を解除し、キツネサインをして複合スキルを発動させる。能力を解除したところで心臓の痛みは止まらないが、無理矢理能力を使おうとした時よりかはまだマシだ。

 

「オラァッ!」

 

触手で床を叩き、アライブに飛びかかる。上昇しすぎてライトの視界から外れないように加減した低空跳躍で近づいて触手で攻撃を仕掛ける。

 

「目を...閉じてる⁉︎...っ!」

 

ライトの視覚に集中するために目を閉じていたのだが、それが衝撃だったらしい。アライブは驚きながらも俺を撃ち落とすために魔法を放ってくる。それを全て触手ではたき落とし、アライブの周りを取り囲むように八つの触手を床に突き刺す。

 

「なにを...っ⁉︎」

 

触手を突き刺したことによって床が抜け落ち、一瞬だがアライブが落下する。その一瞬だけは、反撃流を使うことはできない。

 

「ぶち上がれ!!」

 

残りの一本を使って下からアライブを押し上げ、空中に放り出す。このまま永遠とお手玉して着地させずに倒す!

 

「しっかり見てろよライト!」

 

触手を使って飛び上がり、自分も空中に躍り出る。下から見上げる視点にはなってしまうが、アライブの背格好がどの程度かわかっているから俺の背丈と合わせて考えることで上下方向の距離も推定できる。ズレは起こるだろうが触手で大雑把に攻撃する分には十分だ。

 

「そうだ触手の剣はオーバーキルすぎるから...!」

 

触手の剣で攻撃してしまうと問答無用に殺してしまいそうな気がするので、剣への変形はやめておく。その代わりに、次元収納の中から短剣を取り出して触手の先端に取り付けておく。これで切ったり刺したりする分にはそうそう死にはしないだろう。バフで身を守っているだろうしな。

 

「ほらほらもう一回!」

 

魔道具での防御を全方位攻撃によって乗り越え、アライブの腕への攻撃に成功する。そして無理矢理ねじ込んだ触手で魔道具をズラし、魔道具の穴を真下に移動させてから触手で思い切りぶっ叩く!

 

「まだまだァ!」

 

吹き飛んでいくアライブに向けて追い討ちとばかりに触手を叩き込む。

 

「んぁ?」

 

アライブに叩き込んだ触手が動かなくなった。完璧に固定されてしまったようで、繋がっている俺の身体も固定されてしまい背中を基点としてぷらぷらと揺れる。

 

「これ反撃流...?無理矢理足場作ったか!」

 

魔道具を薄く伸ばして端をギルドの壁に突き刺し、その魔道具に両足をつけることで無理矢理反撃流を発動させたようだ。なら...壁を狙う!

 

「ライト!」

 

「わかってるよ」

 

視界が絶え間なく動いていたから既に行動していると分かっていたけれど一応出した呼びかけに反応したライトは、ギルドの壁を走ってアライブの魔道具が突き刺さっている場所まで到達すると、聖剣で壁を粉微塵にして魔道具の固定を解く。

 

魔道具が落下し、アライブの足が離れた。それに伴い触手の固定化も解除される。

 

「ぶっ潰れな!!」

 

触手でアライブを取り囲み、押し潰す。短剣は触手の内側に飲み込んでおいたので、アライブは触手の中で呼吸できずに苦しみながら雷装のダメージと短剣での斬撃を同時に受けることになるだろう。

 

「さっさと意識飛ばしたほうがテメェの為になるぜ?苦しみたくなけりゃ俺を殺そうとすんのは諦めな!」

 

もがき続けるアライブ。ライトの視点では背中しか見えないけれど、泡のようなものが漏れ出ているのが見える。もうそろそろ息が限界だろう。

 

「ほらほら!早k

 

その瞬間、爆炎が上がった。大量の熱が放出され、俺の身体を焼き尽くす。

 

「ッッッ!!」

 

口を開いていたがために、喉と肺がやられた。水分が持っていかれ、火傷をしたかのように熱い。

 

ライトも熱にやられてしまったようで、目が開いていない。視界が完全に断たれてしまう。

 

爆発...したのか?

 

そう声に出したつもりだったが、完全に掠れてしまい発声できなかった。そして、発声の代わりと言わんばかりに吐血する。

 

……情報がなさすぎてわからないが、多分今のは触手が雷装で電気分解されたことによって生じた混合気体に火がついた結果起こった爆発だと思われる。火種は...おそらくアライブだろう。フレアとミレアに持たせていた魔道具と同じものを使ったのかもしれない。

 

そして、おそらくアライブは無事だ。水の触手の中に閉じ込められていた状態での爆発だったから熱の影響をあまり受けていないだろう。完璧なカウンターを喰らってしまったな。

 

「く、そ...」

 

血を吐きながらも、なんとか声を出す。声を出さなきゃ、複合スキルは使えない。

 

「『鳳凰』...!」

 

『鳳凰』

 ┠ 9037ページ 黒のみ 飛行

 ┠ 4632ページ 黒のみ 炎翼

 ┠ 99ページ右上 黒のみ 火球

 ┗ 5092ページ 黒のみ 再生

 

再生魔法を含んでいる鳳凰を発動させ、火傷を治していく。爆発が起こったおかげで問題なく鳳凰を使えるようになったわけだけど、まさか再生を主目的として使うことになるとはな...

 

「っと、着地させるかよ!」

 

ライトも魔法で回復させたようで、視界がクリアになる。そうしたらアライブが今まさに着地しようとしているのが見えたので、急いで飛行して掴みかかる。

 

「捕まえた!」

 

全力で上へ投げ飛ばす。掴む直前に魔道具は回収されてしまったが、これで反撃流は発動できない。足場を造られたら燃やし尽くすだけだ。

 

「喰らえ!」

 

大量の火球を放つ。適当に撃ってしまっているから大半が外れてしまうが、外れた火球はギルドの壁や天井に着弾して火をつける。完っ全に火事待ったなしだが、それでいい。魔道具を突き刺す壁になるものは先んじて壊してしまおう。

 

「クソっデタラメかよ!」

 

アライブは紙を作り出し、ミュラーの反射の魔法を発動させた。俺が撃った火球が逆再生したかのように戻ってくる。

 

それを飛行魔法でビュンビュン飛び回って回避する。脚を失ったおかげ...と言って良いのかはわからないが、脚がないことで重量が軽くなったので飛行速度が増し、回避がしやすくなっていた。先程アライブが着地する前に捕まえられたのも、身体が軽くなったおかげだったのだろう。

 

「無駄無駄!まだまだ撃つぜェ!」

 

ひたすら火球を放ち続ける。またしてもミュラーの魔法で戻ってくるが、それもお構いなしに放ち続ける。ライトが準備しているのを、ライト自身の視点で見ているからな。

 

「制御は頼むぞライト!」

 

周囲に鏡のようなものが撒き散らされる。それに俺が放った火球と反射の魔法で戻ってきた火球どちらも命中し、アライブに襲い掛かる。

 

「その魔法は二度目!無駄だ!」

 

火球も鏡も全て無視して閃光が飛んでくる。それをギリギリのところで回避し、火球を放ち続けながら俺はある準備をするために移動を始める。

 

「ちょこまかと...!」

 

火球に覆われていてどうやっても俺を視認することはできないはずなのに、正確に俺に向けて閃光を放ってくるのを避けていく。何の魔法だ...?透視してるかライトの思考を盗み見ているかのどちらかか?このままだと準備しづらいな...

 

「……ん?」

 

今気づいた。アライブが落ちてこない。おそらく飛行の魔法を使っている。もし障壁などを使って足場を作っていたのだとしても、魔法拡散を使えば叩き落とすことができる。俺の火球も消えるけど、その瞬間に攻撃すれば...!

 

「ライト!消し飛ばせ!」

 

「了解!」

 

消し飛ばせ、という最小限の指示で魔法拡散のことだと理解してくれたようで、ライトは魔法拡散を起動してアライブを囲むように展開する。

 

一瞬で跳弾鏡射の鏡を除く全ての魔法が解除された。

 

それによって常に発動し続けていた略奪が解除され、心臓の痛みが消える。ノイズが消え、より集中力が増す。

 

『雷装・矢』

 

弓矢を構えていた俺は、スキルを発動させてから矢を掴む指を離した。雷装を纏った矢が飛んでいき、アライブの肩を貫く。

 

「あぐッ⁉︎」

 

「もう片方貰うぜ!」

 

もう一度雷装の矢を放つ。

 

「させ...るか!」

 

アライブは魔道具で矢を弾く...が、弾かれた先には鏡。反射して背後からもう片方の肩に突き刺さる。

 

本当なら今やったように跳弾鏡射を利用して攻撃するつもりだったのだが、略奪の解除という魔法拡散の思わぬ副産物によって直接命中できてしまったんだよな。まぁ、そのおかげで二回攻撃できたわけだけど。

 

「いい加減諦めな!俺の脚切り飛ばしたのがテメェのハイライト!もうなにも出来やしねぇ!」

 

「諦めるわけねぇだろ!!俺しか知らねぇ事実があって、下手したら全てが終わるそんな事実!!知っちまったからには動かねぇわけにはいかない!!」

 

痺れる身体を酷使して、アライブは刺さった矢を抜きながら叫ぶ。

 

「そぉかよ。テメェがそんな妄言に取り憑かれ続けてんなら、その頭ぶちのめしてハッキリさせてやる!現実を見る時間だ!」

 

飛行魔法が解除されたことにより落下していくアライブに照準を合わせ、弓矢を引き絞りながら俺も叫ぶ。

 

そこで、俺は気づいた。

 

「魔力が...⁉︎」

 

魔力が少なすぎる。このままだとあと数回雷装の矢を撃っただけで魔力切れを起こしてしまうだろう。というかこのまま鳳凰を発動させ続けていたら即切れるので急いで解除する。

 

こんなに使った覚えは無いというのに、どうしてこんなに少ないんだ?ここを探し当てるために速度探知を使い続けたり攻撃に魔法を色々使ったりはしたが、とはいえこうはならないはず...

 

「……クソッ、そういうことか...!」

 

魔力は血液に乗って全身を駆け巡る。両脚を斬り飛ばされたことで大量に出血してしまったがために、大幅に魔力を失っていたのだ。あの瞬間、急所を守るために首や心臓の辺りに魔力を集めて保護してはいたが、それも全体のうちのほんの一部でしか無い。何もしなかった時とほとんど変わらない量を失ったことだろう。

 

「ってマズッ!」

 

あれこれ考えているうちにアライブが着地する。反撃流がアクティブになってしまった。今矢を放っても無駄だろう。

 

「ハァ゛ッッ!!」

 

アライブが走ってきて槍に変形した魔道具でその勢いのまま突きを放ってくる。

 

「ッ゛!」

 

それを間一髪のところで左腕の盾で受け流し、床を転がってアライブから距離を取る。床はところどころ破損しておりささくれ立っていて、転がるたびに刺さったり引っかかったりして痛いがそれはもう無視する。

 

今やるべきことは...

 

「魔力の補給!」

 

地面を転がり向かうのは斬り飛ばされた脚が落ちている床の穴。先ほどの爆発によって傷口が焼けたため、まだ血はあの中に残っているはず。その中の魔力を回復できれば...!

 

「させ「させない!!」っ!」

 

アライブが俺を追いかけようとするが、ライトがそれを防ぐ、ライトが移動したことで俺が視界から消えてしまうが、もう距離も方角もわかっている。脚に手が届く。

 

「取った!!」

 

脚に残った魔力を全て吸い上げる。この魔力があれば...!

 

「っ゛!」

 

視界がぐるんと回転する。ライトが反撃流によるカウンターを喰らってしまい壁まで回転しながら吹き飛ばされてしまったのだ。ダメージ自体は大したことなさそうだが、そのまま壁に叩きつけられる。そして壁を構成している建材が変形してライトの四肢を拘束する。

 

「後はお前だけだ!!」

 

アライブが走ってくる音が聞こえる。だが、正確な位置が掴めない。壁を向いた状態でライトが拘束されてしまったため、視界が完全にゼロになっているせいだ。

 

「ライト!共有解除しろ!」

 

視界が元に戻る。俺自身の目でモノを見れるようになったが、この目に映る景色は真ではない。幻覚魔法が俺の感覚を狂わせている。

 

「やっぱり最高!速度探知!」

 

略奪の痛みを無視して速度探知を発動させる。これでアライブの位置は掴めた。あとはアライブをぶちのめすだけだ。

 

「ふんっ!」

 

腕の膂力だけでアライブの攻撃を避け、ダガーを投擲して時間を稼ぐ。

 

必要なのは鮮明なイメージ。

 

失ったものを、本来あるべきものを、己自身で穴埋めする。

 

「『雷装』!!!」

 

雷装と魔力を繋げる。そして、雷装魔力を一点に集中させる。

 

アイツ(アクセル)に出来て...俺にできないことは無いッ!!」

 

「な、に...⁉︎」

 

俺の視界が、ぐんと高くなる。

 

まるで、脚でも生えてきたかのように。

 

「魔力で...脚を創っただと⁉︎」

 

アクセルが最後の最後、土壇場で雷装魔力で腕を創り出したように、雷撃剣の要領で脚を創り出す。

 

見た目は不恰好。だが、自分の身体は支えられている。性能は十分だ。

 

「俺は止まらねェ!最期の時まで走り続けてやる!」

 

片脚を後ろに下げ、全速力で走る構えをとる。

 

「止めれるもんなら!止めてみやがれッッ!!」

 

勢いよくアライブに向かって走り出す。

 

「『主神(ゼウス)』!!」

 

主神(ゼウス)

 ┠ 9938、9939ページ 能力最大

 ┗『雷装』

 

脚を斬り飛ばされたことで封じられてしまっていた複合スキル。走ることがトリガーとなる身体強化の複合スキル。それが今、発動される。

 

速度探知が解除される。そして、速度操作無しに、莫大な加速力を得る。

 

「っ!!」

 

アライブがギョッとした顔をして反撃流の構えを取る。

 

だが、無駄だ。

 

「あがッッ⁉︎」

 

床経由で雷装魔力がアライブのもとまで届き、その身体を蝕む。反撃流では雷装を防げないことは前から知っていた。ここぞという時の最終手段だ。

 

「クソ...がッ!」

 

剣の形に変化した魔道具を床に突き刺すアライブ。それによって雷装魔力がアライブに届かなくなってしまう。雷装を流した魔道具を避雷針のように使ったのだ。

 

だが、これで分かったことが一つある。アライブの位置は、この目で見たものと同じ。俺たちの位置関係は、一切歪められていないのだ。

 

しかし、反撃流の解除に失敗したのは事実。このままでは攻撃を叩き込むことは不可能。なら、次の方法を取るまで。

 

ダンッ!と地面を踏み抜き、床を陥没させる。アクセルが大会にて編み出した反撃流対策。アクセルの技術...全て使わせてもらう!

 

「っ!」

 

どうやら読まれていたようで、アライブは反撃流に必要な呼吸をやめていた。構えを解いて魔道具を掴み取り、俺の首を刈り取るために横薙ぎに振るう。

 

そして、凶刃が俺の首に迫り...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

盛大に空振った。

 

「なっ...⁉︎」

 

空振ったのは、俺の体勢が急激に低くなったからだ。

 

「脚を...!」

 

脚を形成していた雷装魔力全てを体内に戻す。それによって地面を踏み締める脚が消失したため、俺は重力に引かれて自由落下し始めた。ゆえに、アライブの魔道具は空を切ったのだ。

 

ほんの頭一個分の落下。それが命運を分ける。

 

「お前じゃ...」

 

雷装魔力を右腕に集め、拳を握りしめる。

 

「俺を超えられねェ!!」

 

落下しながらの全力ストレートが、アライブの胸に突き刺さる。拳に込められていた雷装魔力が一気にアライブの体内へと流れ込み、全身を蝕む。

 

「ク...ソ...」

 

ドサリとアライブが後ろに倒れ込む。

 

「意識途絶...心臓は動いてるな、良かった」

 

複合スキルを解除した俺は、速度探知を使ってアライブの状態を診た。ちゃんと殺さずに意識を奪うことができたようだ。

 

「無事解決...とはいかなかったけど、解決は解決か。おーいライトー大丈夫かー」

 

雷装魔力で脚を創り出し、壁に拘束されているライトのもとまで歩く。

 

失った代償は大きかったが、ようやく戦いは終わりを迎えたのだった。




カリヤくんアクセルに影響受けまくってるな...だいぶ脳を焼かれてますねこれは。
少し気になるんですが、前回脚を切断された時、雷装魔力で脚をを補って戦うという流れを予想できた人はどれくらいいるんですかねぇ...?
いなかったらもっと伏線なり布石なりをあらかじめ作れるように努力しないと...

アライブがどういう経緯で魔族と邂逅したのかといった話は...折を見てきちんと説明を入れます。
本文中に出した情報が全てじゃ無いのでね。
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