前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8172字。

えー、サブタイトル通りの回です。


夢のマイホームを作ろう(土地探し編)

「家が...欲しい!」

 

「急にどうしたのよ騒々しい」

 

「いやね、このままずーっと宿暮らしってのもどうかと思ってな。賃貸でも良いから家欲しいなって」

 

「家いる?」

 

「いるよいるいる。何も気にせずグータラできる自分の家ってのは大事なんだよホント。ってかほら、みんなは実家あるけど俺そんなもの存在してないからさ。帰る場所がずっと宿ってのもアレだしね」

 

「実家ねぇ...あっ、そういえばステラちゃん、カリスの復興だいぶ進んだんだって?」

 

「そうなの!今朝手紙が届いて、家が出来たから一度帰ってこないかって!」

 

「おーそうなのか、よかったなステラ」

 

「うん!」

 

家も直し始めたってことはだいぶ復興進んでるんだな...この調子だとあと一週間もしない内に全部直るんじゃね?

 

「……カリスの余ってる土地買えたりしないかな?」

 

「カリスに来るの?」

 

「こう言っちゃ不謹慎だが、ぶっちゃけ今から新しく家建てるってなるとカリスでやる方が都合いいよなって思って」

 

「確かにそうだけど...じゃあ一緒に行く?」

 

「そうしよっかな。ステラが実家帰ってる間に探してみるよ」

 

「それ、私たちはついていかなくても良いわよね?」

 

「ああ、各々やりたいことやってて良いぞ」

 

「それじゃあ行ってくるね〜」

 

ステラに車椅子を押してもらい宿から出る。

 

「……カイスじゃ無いんだし宿出なくてよかったな別に」

 

9936、9937ページ 次元転移

 

次元転移のゲートを作り出し、二人で中に飛び込む。

 

「ねぇカリヤー家出来たら何するの?」

 

「うーん...自由にゴロゴロするのが目的だけど、それ以外なら工房に使うかな」

 

「工房?」

 

「そう工房。ほら、前に機械作りしたいつったろ?その工房として使うかな」

 

「いいねー面白そう!出来たら行って良い?」

 

「いいぞーいつでもウェルカムだ。面白いもん色々作ってやるぜ」

 

「どんなの作るつもりなの?」

 

「んー...それは今んとこ未定。元いた世界のものを作ろうとは思ってるけど、どれだけ作れるかはわからないからな」

 

「そういえばまだカリヤの世界がどんななのかってあんまり詳しく聞いてないよねー」

 

「そういやそうだっけ...今度記憶の共有とか使ってみんなに見せてみるか。面白いもんめちゃあるぞ〜」

 

とまぁ楽しく会話しながらカリスまで向かう。ステラと二人きりなんて久しくなかったからから楽しいな。

 

「よーし到着っと...ここで別れるか?」

 

「そうだね行ってくる!」

 

「いってらー」

 

ステラが両親の待つ実家まで走っていく。久しぶりの再会を楽しんで欲しい。

 

「んじゃあ土地探すか」

 

車椅子を操り、カリスの中を散策する。

 

「……まだあんまし家建ってなくね?」

 

まだパッと見ただけだが、村の運営に必要な施設はある程度建っているけれど普通の一軒家はほとんどなかった。一軒家は建設中なものがほとんどで、後回しにされてるような印象を覚えた。

 

「あれかな、英雄の実家だからちょっと優先されたのかな」

 

普通にあり得る。ちょーっと不平等な気がしないでも無いけど、この世界を救った勇者パーティーのメンバーの実家な訳だしまぁ妥当な対応か。ステラはあんまし快く思わなそうだな...

 

「……つーか予想通りだな。土地空いてるとこめちゃあるわ」

 

工事予定地には立て看板なり建材なりが置かれているから、そうで無い場所は一眼でわかる。そして、そういった場所は至る所に存在しており、大通りに面しているところにもポツポツと空き地が存在しているようだった。

 

「あん時の被害エグかったからなぁ...仕方ないか」

 

フロートとキネットによって、多くの人が殺されてしまった。冒険者の複製体と、空中への転移という二つの理不尽によって多くの死が生まれてしまった。その後もあいつらの残していったもののせいで面倒ごとに巻き込まれるし...アイツらへの恨みつらみが心の底から沸々と湧いてくる。ああ、なんか心臓の辺りがチクチクと痛む...

 

「土地管理してるところどこなんだろうな...役所に行ってみるか」

 

この村にはギルドがない。正確には、役所がギルドとしての役割も受け持っているというのが正しいのだが、これが示す通り、この村の役所はいろんな業務を一身に請け負っているのだ。そこに行けば大抵のことは解決するはず。多分同じ場所に建てられているだろうし、行ってみよう。

 

「たーしーかーこの辺だったはず...」

 

昔の記憶を思い返しながら村の中を移動する。車椅子生活になったせいで視線が下がったから、だいぶ景色が変わって見えるな...

 

「……おっ、ここか」

 

それらしき建物を見つけた。外壁に掲示板が貼ってあるし多分ここが役所であっているだろう。やはり復興の拠点になっているようで、だいぶ人々の往来が激しいな。

 

「中入るか」

 

人が出入りしやすいようにか、扉は設置されていなかった。しばらくは人でごった返すだろうしな。大荷物持って出入りする人も多いし、付けずに建てたのだろう。

 

「扉ないのは良いけど段差あんのはいただけねぇよなぁ...よっと」

 

バリアフリーに配慮されてないなと思いながら、役所の入り口にある小さな段差見る。そして、車椅子経由で地面に魔力を流し込み、段差を埋めるようにスロープを魔力で作り出す。そうして軽々と段差を乗り越えて中に入る。

 

「んー...おっ、そこか」

 

外観はあまり変わりなかったが、内装はだいぶ変わっていた。突貫工事というか、とりあえず今必要なものだけ作りましたといった感じだ。そのためか、早急に対応しなければならない部門が大きく場所をとっていた。土木工事なり住居建設だったりを担当している部署もその一つで、多くの人員が割かれているようだった。そのおかげで回転率も早そうだし、あまり待たなくても良さそうだ。

 

「よいしょっ...と。あっ、場所とっちゃってすみませんね」

 

列に並ぶが、車椅子のせいでだいぶ場所をとってしまう。前や横の人に軽く会釈をして謝り、ぶつからないように気をつけて並ぶ。

 

「……脚、悪いんですか?」

 

隣の人が心配そうに声をかけてきた。

 

「つい先日色々あって脚を失ってしまいまして。仲間に義足を調達してはもらったんですが、だいぶ魔力消費が激しいもので普段はこれで生活してるんですよ」

 

「そうなんですか...やはり、先の戦争でですか?」

 

「いや、その時じゃなくてですね、ほんの二、三日前なんですよ。ちょーっといざこざがありまして...」

 

「それは...すみません、色々聞いてしまって」

 

「いえいえ別に良いですよ。そちらは今日は何をしにここへ?やっぱり家の建設についてですかね?」

 

「そうですね。戦争の時に実家が潰れてしまったのですが、私自身はガルムの方に居を構えていまして...父母ももういないですし、建設中止してもらおうかと思いまして」

 

「建設って勝手にされるものなんですか?」

 

「順番は後回しにされますけど、基本は全て元通りにする予定らしいですよ。看板だけ立てられていて、特に誰からも何も言われなければ勝手に建てるらしいですね」

 

「えぇ...普通はお願いされてから立てるんじゃ無いんですかね?」

 

「王都だったり他の町に逃げている人もいて、建設を頼むのが難しい人たちもいるんですよ。だから基本は建設することにして、断られたものだけ建てないようにする感じに決まったみたいです」

 

「なるほど...ここに来るまでにいくつか看板のないところを見たんですけど、中止にする人ってかなりいるみたいですね」

 

「そうみたいですね。私みたいに実家はここだけど他の町に出ているという人は多くいますからそのせいでしょうね」

 

「人口減少が心配になるぜ...」

 

「それに、この村から移住しようと考えている人も多いそうですよ。昨今では魔物が村の中に侵入してくるなんてことが頻発しているようですし、守りの硬いカイスやガルムに行きたいとかなんとか」

 

「あー...確かにそれは心配ですよね。もう少しこの村にもカイス並みとは言わないまでも、それなりの防衛装置は欲しいと思いますね」

 

「それがあったならここに残るという人もある程度出てくるでしょうけど...その、こう言ってはなんですが、そもそも弓矢の村自体に需要があまりないと言いますか...田舎すぎて魅力があまり無いんですよね」

 

「……」

 

「……すみません。怒らせてしまいましたか?」

 

「いえ、自分はここ出身というわけでもないので怒っては無いんですけど、仲間がここ出身なのでちょっと悲しみそうだなと思いまして」

 

「それは申し訳ない。ですが、弓ならガネルでもある程度は学べてしまうので、客観的に見てもこの村の存在意義とは...と思ってしまうんですよね」

 

「一点集中というのも結構良いものですよ。実際、仲間は弓を極めて古代の魔法を会得しましたし」

 

「古代の魔法を...⁉︎って、その人もしかして英雄の...⁉︎」

 

「ええそうです。英雄のステラです。彼女、この村を立て直すのが今の夢なんですよ。なので、できればそういったことはあまり言わないようにしてもらえると...」

 

「そうとは知らず、本当に申し訳ない...ということは、あなたはこの村から出るためにここに並んでいるのでは無いんですね?」

 

「そうですね。なんならこの村に居を構えるために来たんですよ。空いている土地があればそこに立ててもらおうかと思いまして」

 

「そうなんですか...それなら私の実家の土地を上げましょうか?先ほどのお詫び...と言ったらなんですけど、こうして横に並んだのも何かの縁ですしどうですか?」

 

「ちなみにその実家があった場所ってどの辺ですかね?」

 

「村の中央から少し東にそれた辺りですね。大通りに面しているのでだいぶ便利ですよ」

 

「大通りに...実は、工房としても使おうと考えているので村の外周の離れたところにしたいんですよね。魔法で軽減できるとはいえ騒音が出るかもしれないので」

 

「なるほど...なら仕方ありませんね。誰かカリスに移住したいという人がもしいたなら、その人に土地をあげることにします」

 

「そうしてやってください。人が来たらステラも喜ぶと思うので」

 

そこまで言った時、お互い順番が回ってきた。軽く会釈をして別れを済ませ、受付の方に車椅子を動かす。

 

「今日はどうなさいましたか?工事中止、それとも移住についてですか?」

 

「移住ですね」

 

「そうですか...看板に書かれていた番号をここにご記入ください」

 

「あっ、あの違くて、カリスから移住するのではなくカリスに移住したいんですよ」

 

「……え?」

 

信じられないみたいな顔してる...来るなんて思ってなかったのかな。

 

「……これは想定外だぁ...ちょっ、ちょっと確認取ってきますね!」

 

裏の方に消えていく受付員さん。これはちょっと時間かかりそうかな...?

 

隣の列が二、三人進んだ後、ようやく受付員さんが男の人を連れて戻ってくる。

 

「この村への移住でしたらこちらで受け付けますので、ついてください」

 

「わかりました」

 

ここからはこの男が対応してくれるらしい。車椅子を操り後ろをついていく。

 

「すみません急ピッチで用意したもので...ここで対応しますね」

 

そこには小さなラウンドテーブルのようなものと椅子が一つずつあった。長くなりそうだから別の場所を急いで準備をしたんだろうな。

 

「えーっと、この村への移住というわけですが...一体どういう経緯でここを?」

 

「家が欲しいと考えていたんですけど、ちょうど冒険を共にしていた仲間がここの実家に戻ると言っていたので、どうせならもうこの村に住んでしまおうかと思いまして」

 

「なるほど...土地なら現在進行形で余っているのですが、どの辺りがいいとかそういう希望はありますか?」

 

「できればあまり周りに家が無い方が嬉しいですね。工房としても使おうと考えていて、魔法で抑えはしますが騒音が起こるかもしれないので配慮のためにもできれば村外れでお願いします」

 

「そうですか...なら、この辺りはどうですかね」

 

男は村の地図を取り出して俺に見せてくる。

 

「北東の端なんですが、よく魔物が侵入してくるということで多くの人が移住してしまったので周囲に家はあまりありません。ここならばご希望通りかと」

 

「良いですね。じゃあそこでお願いします」

 

「了解しました。家はどのようにしたいかなどの希望はありますか?」

 

「あー...そこはまだ考えてないですね。考えておきます」

 

「了解しました。では、一応現場の下見に行きましょうか。周りの風景などを見ていただければ、こういう家にしたいといったアイデアも出るかもしれません」

 

「わかりました。案内お願いします」

 

男について行き、役所の外に出る。

 

「あの...つかぬことをお聞きしますが、先程おっしゃられていた仲間というのは、もしかして英雄の...」

 

「そうですよ」

 

「ということは貴方は神の使いの...?」

 

「そうですそうです」

 

「やはりそうでしたか。ギルド経由の噂で神の使いは脚がどうたらといった話を聞いていましてもしやと思っていたのですが、まさか本当にご本人様だったとは...」

 

「そこまでかしこまらなくて良いですよ。ささっと下見終わらせて少し早めの休憩でもしたらどうですか?付き合いますよ」

 

「いえいえそんな恐れ多い...今は繁忙期なのでサボるわけにもいきませんしね」

 

「そうですか...ギルドに紛れてたサーマルっていう魔族は思いっきりサボってましたけどね」

 

「魔族ならそれが正しいのでは?」

 

「それもそうですね何言ってんだろ俺」

 

そーいやアイツに飯奢らさせられたことあったな...チキショウあいつ踏み倒しやがって。

 

「……っと、着きましたね。ここです」

 

俺の家の建設予定地に辿り着いた。見渡してみるが、確かに周囲に建物はほとんどない。これなら騒音問題は気にしなくても良さそうだな。

 

「この広さですけど、家の大きさとかはどうしますか?相当大きいものでも建てられる余裕はありますが」

 

「そんなに広くても持て余すからなぁ...普通の一軒家があって、少し離れたところに工房がある感じかな。あっ、あと平屋がいいな。この脚だからできれば階段とか段差がない方がありがたい」

 

「なるほどなるほど...ではこの辺りに平屋を作りまして、少し離れた場所...ここに工房を作る感じになりますかね?」

 

「そうですね良い感じです!なんか役所の職員とは思えない手際の良さですね」

 

「一応本業なんですよ。臨時で役所に駆り出されているんです」

 

「ああ、なるほど」

 

「他にも要望があったらどんどん言ってください。必ず形にしてみせますので」

 

「それは心強い。そうだなぁ...ん?」

 

突如、俺たちを覆うように影がさす。ただそれだけなら太陽が雲に隠れただけだろうと思い気に留まることはなかっただろう。俺が上を見上げたのは、何かバサバサといった異音が聞こえてきたからだ。

 

「鳥の...巨大化魔物⁉︎」

 

どうやら南の方から飛んできたらしく、そのまま俺たちの上を通り過ぎていき...Uターンしてこっちに戻ってきた。ってかここに突っ込もうとしてやがる⁉︎

 

「まずい早く逃げないと!」

 

「クソッ、荒らされてたまるか!」

 

逃げることもできるが、ここは将来の俺の土地だ。巨大化魔物の衝突で地面が大きく抉れでもしたら困る。だが、魔法じゃ衝突を止めることは叶わない。すぐさま能力を発動させ、巨大化魔物の動きを完全に止めてしまう。

 

ちょうどそのタイミングで、後方からステラが矢を放ってきた。放たれた大量の雷装の矢は魔物の胴体を撃ち抜き、その身体を痺れさせる。まぁ、完全に動きを止めているせいで身動ぎ一つしていないがな。

 

「カリヤー大丈夫⁉︎」

 

ステラが慌てた様子でこちらに向かって飛んできて、俺の近くに着地してくる。

 

「見ての通り大丈夫だ。つーかこのタイミングで来るのかよ...」

 

「私もびっくりだよ。ちょうど家を出た時に真上を飛んでいったんだから」

 

「そりゃタイミング良すぎだろ...俺たちがこの村に来た時に入ってきたのが運の尽きだな。さっさと処理しちまおうぜ」

 

「そうだね。あっ、あなたは離れておいて。ここは私たちでなんとかするから」

 

「は、はい...この村の平和は頼みましたよ!」

 

そう言って建築士の人はその場を離れた。周囲に人影は無し。周りを気にすることなく存分に戦えるな。

 

「どうやって倒そっか?」

 

「できれば全身を丸ごと消し飛ばしておきたいんだよな。能力解除したら元の速度に戻って死体がここに落ちてくることになるし」

 

「そっか...爆発で消し飛ばす?」

 

「うーむ...木造の壁が近いし、爆発させるのはちょっと怖いな」

 

「じゃあ無心の弓しかないね」

 

「だな。魔力ならいくらでも回復できるし、連射してやるぜ」

 

俺もステラも、手には何も持たずに弓を構えるような姿勢をとる。そして、スキルを発動させる。

 

『無心の弓』

 

心が無に染まる。その心が弓矢を作り出し、放たれ、矢に触れたものを完全に無に変換してしまう。

 

「んー...二人で三十回ぐらいやれば完全に消し飛ばせるかな」

 

「どんどん行くよー!」

 

適宜魔力を回復させながら無心の弓をひたすら放っていき、巨大化魔物の身体を端から消しとばしていく。

 

ステラはほぼノーコストで無心の弓を撃つことができるけれど、俺はそうはいかない。全ての魔法適性がちょうど中央値なおかげで、無心の弓もそれなりに適性があるがそれでもかなりの魔力を消費してしまう。脚を失ったせいで相当な量の魔力を失った今の俺では、九回くらいが限度だろう。

 

だが、速度操作を使えるのなら話は別だ。しかも、ここは聖域。100%の効率で魔力を回復できるため永遠に無心の弓を放つことができる。無駄撃ちしてもいいし、ひたすら早く撃ち続けよう。

 

「……あれ?」

 

「どうしたの?」

 

「なんで俺...魔力回復できてるん?」

 

思わず無心の弓を撃つ手が止まる。

 

「魔力が回復するのは当然じゃない?」

 

「いや、そうじゃなくてだな。俺、あいつに対して減速をかけているはずなのに、なぜか魔力回復を加速できてんだよ。どゆこと?」

 

「……確かにおかしいね?もしかして楔抜けた?」

 

「そう...なのかな?じゃあ魔法も使えたり...」

 

適当に魔法図鑑に魔力を流してみる。

 

「……それは無理なのか。じゃあなんで加減速だけ...?」

 

なぜかはわからない。だが、加速と減速を同時に使えるという事実だけが存在していた。

 

「二回目に打った永続の楔だから先に抜けたとかなのかな...最近能力強化されすぎてたしもう制限解放の時期なのか?」

 

これ以上能力を強化するならば、加速と減速を同時に使えないと不都合が出るから勝手に楔が抜けたとかかねぇ...理由はわからんが、同時に使えるようになったのは普通に嬉しいな。

 

「んーでも同時に複数個を加速させるのは無理そうだな。減速を使ってる時には一つだけしか加速できないと...」

 

ひとまず今のところはそんな感じらしい。後でしっかり調べておくとしよう。

 

「んじゃあ後々調べるとして...今はこいつを倒さないとな」

 

無心の弓を撃つのを再開する。魔物の身体はもう半分ぐらい消し飛んでおり、それによって体内の魔素も減ったためかだいぶ大きさも小さくなってきた。当初の予想の三十回は余裕で下回るなこりゃ。

 

「もう魔力はいいか。魔素流出早めちゃお」

 

加速の対象を切り替え、魔素の流出速度を最大まで加速させる。

 

ドバッッ!と大量の魔素が飛び出し、そして聖域の効果によって反転して聖素へと変わる。魔物の体内にあるときは聖域の影響を受けないが外に出ればすぐに変わるんだな。聖域の中で巨大化魔物を倒したことなんてなかったから初めて知ったわ...そういやライトの聖域展開だと一瞬で反転して内側から魔物を吹き飛ばしてた気がするけど、普通の聖域とは扱いが違うんだろうな多分。

 

「おっ、めっちゃ小さくなったな。トドメは任せたわ」

 

「任され...た!」

 

ステラが最後の一発を放ち、魔物の身体を完全に消しとばした。

 

「減速解除っと...よし、これで俺の土地は守られた」

 

「あっ、もしかしてここに住むの?」

 

「その予定だ。まずはどんな家にするか考えないとなー...そういやステラはもう用事終わったんだよな?一旦ガネル戻ろうぜ」

 

「うん!」

 

巨大化魔物を倒した俺たちは、まるで何事もなかったかのように日常へと戻っていく。

 

速度操作の変化が、いずれこの世界を混沌に陥れることになるのを、二人は知らない。




実は加減速を制限付きながらも同時に使えるようになるのはもっと後の予定でした。
本編最後の方に素でミスって同時に使わせてしまったので泣く泣く今回に前倒ししました。
まぁ全体の流れは変わんないしセーフセーフ!
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