前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

206 / 213
8260字。

戦闘回っぽいけど実はあんまり戦闘しなかったり...


干渉できぬ極寒

「ごめんちょっと止まって」

 

「んあ?どしたレスト?」

 

俺たちは今、西の方にある山で山登りをしていた。一年以上前にムカデの巣を壊滅させたあの山だ。今回はムカデとは違う別の魔物が巣を作ったらしく、それの処理に俺たち勇者パーティーが駆り出されたわけだ。

 

それくらいなら普通の冒険者たちにやらせれば良くね?と言いたくなる案件だが、この山に起こっている異変のせいでそうはいかなくなってしまったのだ。

 

『魔域』─簡単に言ってしまえば聖域の反対だ。空間全てを魔素が覆い、人間の生体活動を鈍らせてしまう領域である。シレンの穴の中だったり、魔王城の中とかがこれに該当する...まぁ、少し前までこんな名称ついてなかったがな。

 

魔王が山を乗り換えたことによる地脈のずれ。ライトが女神を元の山に戻したことで聖域の位置が戻るなどある程度ずれは解消されたが、全てが元通りとはいかなかったのだ。その結果が魔域。この山はその魔域と化してしまっていたため、俺たちに白羽の矢が立った。

 

んで、もうそろそろ巣穴があるっていう場所に着くところだったのだが...なんでレストは止まれとか言い出したんだろう。魔物の気配でも察したか?

 

「もうそろそろでセーブポイントだからちょっと待ってて」

 

「無視していくぞー」

 

「ちょっ、本当に待って!ほんとにあとちょっとだからっ!」

 

そうだ忘れてた。こいつずっとゲームしながら歩いてたんだった。今時DS歩きながらやるやつおらんって...しかもタッチペンめっちゃぐるぐるさせてるってことはポケモ○レンジャーだな?よりにもよってそれを歩きながらやる?アホなん?

 

「こいつにゲーム与えたのマジで失敗だったかもな...」

 

「ゲームやるから行かないとか言い出さないだけマシでしょ」

 

「それはそうだけどよ...」

 

「よしセーブ完了!ごめんね待たせて」

 

「ほんとだよ...とりあえずお前先頭な。入るぞ」

 

いつも通りレストに先行させて巣穴の中に入っていく。

 

「うわさっむ!!」

 

「事前にわかっていたとはいえ、やっぱ寒いもんは寒いな」

 

巣穴の中はガチガチに凍りついていた。その温度、絶対零度。もはや寒いとかいう次元では決して無いな。

 

「わざわざ出向くことになったのもこれのせいだしねー」

 

「こうじゃなかったら町にいながら倒せてたもんね」

 

俺の能力の範囲は、今やこの世界全域を覆うほどに広がってしまっている。当然俺の家からこの山の様子を確認することもでき、魔物の動きも手に取るようにわかった。そしてそいつの体温を...体を構成する分子の振動速度を上げて熱することで、どこからでも魔物を蒸発させることもできてしまう。

 

だが、今回の魔物は例外だ。この巣穴からも分かる通り、虫だってのにその体温は絶対零度。動きのないものを加速させることはできない。ゆえに俺の能力で死なすことができず、直接出向く羽目になったのだ。

 

「いいか?俺は索敵とみんなの体温維持に専念するから、戦闘は頼んだぞ」

 

「はいはーいわかってるよー」

 

ここは魔域。魔力の回復は不可能だ。能力が世界全体にまで広がったせいで魔力消費が多くなっている能力と義足に流す魔力のことを考えると、俺は戦闘に参加することはできない。減速のサポートも同時に一体までしか出来ないからほとんど何もできないに等しい。今回は観戦だな。

 

「……あっ、一体こっちに来てるわ。十秒もしたら来るぜ」

 

「オッケーニアお願い!」

 

「はいはいわかってるわよ」

 

ニアが小さな雷雲を作り出す。こんな閉鎖空間の中で、しかもこんなに短時間で作れるようになってるの凄いよなぁ...

 

「よーしテトラは十分!これならいける!」

 

最近、クミリアがハマっているものがある。永遠ととあるシリーズのDVDを見ているのだ。そのシリーズとは...

 

「変身!」

 

テトラがクミリアにまとわりつき、アーマーのように覆い尽くす。

 

「なんとなーくハマりそうだとは思ってたが、ここまでハマるとはねぇ...」

 

クミリアは仮○ライダーシリーズにハマったのだ。何度かテトラを身に纏って戦った経験があるからか、一度見た時に絶対これをやりたいと言い出して手当たり次第に見漁っていたのをよく見ていた。クミリアがテレビを占領するせいで、別のテレビを作る必要が出てきたくらいだ。

 

「おっ、キタキタ...ライ○ーキーック!」

 

カサカサと凍っている地面の上を器用に歩いてくる虫の魔物に向かって飛び蹴りをするクミリア。その瞬間、足先のテトラが変形して杭のようになり、魔物に突き刺さる。

 

「なんか、メタルク○スタみたいだな...」

 

大量の群体が集まってアーマーを形成しているところが似ているな。クミリアもそこを意識していそうだ。

 

「よーし撃破!どんどんいくよー!」

 

「はいはい慌てないの。雷雲から離れたらテトラ消えるの忘れないでよね。で、この先はどんな感じ?」

 

「しばらくはクネクネ道だな。魔物もなし。その先は...ちょっと道が広くなった辺りで魔物がいるな」

 

「じゃあそこまでは妨害無しで進めるわけね。ちゃっちゃと進んでしまいましょ」

 

「床凍ってるから気をつけろよー...ほら言わんこっちゃない」

 

クミリアが思いっきりすっ転んで凍った壁に激突する。テトラを纏っているせいで微妙に靴が厚底になっていて感覚を誤ったんだろうな。

 

「いってて...今ので魔物起きちゃったりしたかな?」

 

「それはしてないから大丈夫だ。ゆっくり慎重に進めよ」

 

滑らないように慎重に足を進める。だいぶ歩みは遅いが、仕方がない。さっきのクミリアは曲がり角がすぐのところですっ転んで壁に激突したからまだよかったが、場所が場所だとそのまま傾斜に足を取られて奥まで滑り落ちてしまうことだろう。速度操作でサポートできるとはいえ、危険なことには変わりないから気をつけなければ。

 

「もうそろそろ会敵するぞー」

 

開けた場所に出た。すぐにでも魔物が襲いかかってくるだろう。

 

「魔物いなくない?」

 

「あっごめん上」

 

「それ先に言って⁉︎」

 

上から魔物が降ってきた。この部屋に魔物がいるとは伝えてたけど、詳細な位置までは言ってなかったせいで奇襲されたみたいになっちゃったな。

 

「あっ...ぶない!」

 

落ちてくる四体の魔物をみんなが一体ずつ倒していく。ステラは無心の弓の連射で全身を消しとばし、ニアはキューブを使ったビームで撃ち抜く。クミリアは真横の壁まで蹴り飛ばし、ライトは聖剣で真っ二つ。ライトが倒した魔物だけ死体がそのまま落ちてくるが、それはレストが受け流しを使って弾き飛ばすことで対処した。減速をかけられるのは一つだけだから助かった。

 

「もう、これからはちゃんと魔物の位置まで教えてよね!」

 

「すまんすまん...いやおい待て。それは俺に索敵全部任せているのが悪いのでは?自分で周りを警戒していないのがダメなんじゃね?」

 

「……それは、そうだね」

 

「索敵って結構大変なんだよな。膨大に送られてくる情報から必要なものを取捨選択しないといけないし。ちゃんと魔物を見落とさずに発見できてること自体凄いことなんだからな?」

 

「頑張ってるアピール見苦しいわよ」

 

「アピール言うなし」

 

「まぁでも、頼りきりなのはダメね。ただでさえ体温調整を頑張ってもらっているのだし、索敵は私がやるわ」

 

「頼んだわ」

 

索敵しなくていいのはめっちゃ楽だ。全ての速度を完全に無視して、みんなの体温調整にだけ集中しよう。

 

「はぁ〜楽だわ〜」

 

「そんなに大変なの?」

 

「多分ほんの少しでもみんなの頭に叩き込んだら一瞬で卒倒するぞ」

 

「……ヒュッ」

 

「に、ニアがぶっ倒れた⁉︎何俺の頭の中覗いてんだテメー⁉︎」

 

「ちょっ、ニア大丈夫⁉︎」

 

突然ぶっ倒れたニアの肩を揺さぶるクミリア。ニアの目は虚で、今にも口から泡を出しそうな感じだ...

 

「なんでこうなるぞって言った直後にやったのアホなの⁉︎興味本位ってレベルじゃねぇぞ!ちょっ、誰か回復!」

 

「ほら起きてー」

 

レストとライトが二人でニアに回復魔法をかける。俺も思考加速をニアにかけてやって情報の整理を早めてやる。

 

「……っつつ...何をしていたんだっけ...」

 

良かった。起きたみたいだ。

 

「大馬鹿者が深淵をのぞいて痛い目を見たところだ」

 

「誰よ大馬鹿者って...」

 

「オメェだオメェー」

 

「私が何をしたっていうのよ...」

 

「記憶ぶっ飛んでんじゃねぇか少し休んでろ」

 

まったく、ニアのこういうところは困ったものだぜ...好奇心は猫を殺すっていうけど、まさか直前にここに地雷埋めてあるぞと伝えたところにジャンプして爆散するようなことする奴がいるとは思わなかったぞ。

 

「ニアが倒れるほどって本当にすごいね」

 

「いや、俺以外だったら誰であろうと普通にぶっ倒れるぞ。俺も物理保護のおかげでなんとかなってるだけだし」

 

「もし速度操作中に魔法が使えてたら、どんな魔物でも思考共有でイチコロだね」

 

「たしかに、これまでは行動不能が関の山だったけど今ならそれだけで殺せそうだな。強化版無○空処じゃん」

 

……あれ?反応返ってこないってことはみんなまだ未履修なのか。意外だな。

 

「……まぁ、今じゃ熱操作で魔物は倒せるから思考共有を使えてもやらないとは思うがな」

 

元々の体温が絶対零度か、高温低温どちらにも適応できる魔物以外なら全て熱操作で倒せてしまうからな。わざわざ近づかないといけない思考共有を使うくらいなら熱操作でいい。

 

「……ってやばい魔物来てる⁉︎」

 

ニアの回復に専念していたら周りを見ていたクミリアが声を上げた。慌てて速度探知で周囲を探ると、確かに魔物がこちらに何体か近づいてきていた。

 

「二人任せた!」

 

クミリアとステラに魔物の対処を任す。この二人なら、あの程度の魔物は余裕だろう。

 

「せいっ!...あっテトラいない⁉︎」

 

そっかニアが一度気絶したから雷雲が消えちゃったのか...って、そんなこと気にせずに倒してくれませんかねぇ?クミリアのパワーならテトラなんていなくても倒せるでしょうに。

 

「なんか感覚おかしい...!」

 

「クミさん避けて!」

 

動きの鈍ったクミリアをステラがカバーし、魔物を殲滅する。ステラは優秀だなぁ...

 

「どうしたよクミリア。テトラいなくなった程度でそんな調子崩すか?」

 

「いや、なんか気分が悪くなってきて...」

 

「……それを言ったら、僕もちょっとだけさっきから気分が...」

 

「それはここに来るまでゲームしてたからでは...?」

 

「あっ、私も来たかも...」

 

「ちょっ、三人も⁉︎」

 

クミリアとレストとステラが立て続けに体調不良を訴え始めた。低体温のせいでは決して無いだろうし、理由があるとすれば...

 

「魔域の影響か...」

 

圧倒的な濃度の魔力が体調不良を引き起こしているのだ。超巨大化魔物の魔素を流出させてる時に三人と似たような症状を引き起こしたことがあったが、おそらくその時と同じことが起こっているのだろう。ってか、魔王城じゃこんなこと起こらなかったし、もしかして魔王城よりも魔素濃いのか...?

 

「んーニアが体調不良起こしてないのを見るに、回復魔法でなんとかなる程度なのか...?とりあえずライト、聖域を頼む」

 

「わかった。『聖域展開』」

 

ライトは地面に聖剣を突き刺し、聖域を展開する。

 

「……おっ、なんか楽になってきた」

 

「それで治るってことはやっぱ魔域のせいか。こりゃ確かに一般冒険者には任せられないわな」

 

「いつでもどこでも聖域を作り出せるって便利だよねー」

 

「だな。この隙に魔力も一応回復しておいて...っと、もう終わりか」

 

俺が聖剣に無理をさせた影響は聖杖後のクールタイム延長だけでは止まらなかった。聖域展開の展開時間がかなり短くなってしまい、範囲も結構狭くなっている。時が経てば出力も戻るだろうって話だけど、本当に戻ってくれるか少し心配だ。

 

「……変換しきれなかった...?」

 

「ん?どうしたよライト」

 

「いや、気のせいかもしれないけど、聖域展開をしたのに魔素が残っていたような気がして...」

 

「そうか?魔素の速度とかちゃんと見てなかったから気づかなかったな...もしかして聖域展開の出力自体も落ちちゃってんのか?」

 

「それは無いと思うよ。昨日までは普通に変換できてたし。多分、魔域のせいなんじゃないかな。あまりにも魔素が多すぎて変換しきれないとか...」

 

「もしそうだとしたら本格的にやばい空間だなここ...また体調不良になっても困るし、さっさと終わらせて帰ろうぜ」

 

ニアもある程度回復したし、さっさと先に進むことにする。

 

「……そういえばさー、ライトはまぁ勇者だし聖剣もある、ニアは回復魔法をかけられた直後だから大丈夫だったってのはわかるんだけどさ、なんでカリヤは平気だったんだろ」

 

「……たしかに。なんでだ?」

 

回復魔法をもらったわけでも無いし、ライトみたいなデバフ無効があるわけでも無い。そんな俺が、なんで魔域の影響を受けていないんだ?

 

「無意識の間に速度操作であーだこーだしてた...ってことはないだろうしなぁ。あれか?動いてないからみんなよりも影響を受けてないとかなのかな」

 

「それなら私が影響を受けてなかったのも同じ理由かもしれないわね。もちろん回復魔法のおかげもありそうだけれど」

 

「たしかにニアも魔法が主体だから俺と同じくらいしか動いてないもんな...そーいやちゃんと索敵してくれてるか?」

 

「……何その話」

 

「そこまで記憶ぶっ飛んでんのかよ...速度探知で索敵するの難しいからってニアが代わりに索敵するって話になったんだよ」

 

「あらそうだったのね。じゃあやるわっと、早速お出ましよ。右の壁の中から来るわ」

 

「壁の中からぁ⁉︎」

 

氷を食い破って魔物が壁の中から飛び出してくる。

 

「どっせーい!!」

 

うおっ、壁から出た瞬間にクミリアに頭蹴り飛ばされて即死しやがった。手際が良すぎてビビるわ。

 

「つーか壁の中からも来んのか...」

 

「壁というか氷ね。入り口付近は土の表面を薄い氷が覆っている程度だったけれど、深くなるにつれて土が氷に置換されているみたいに氷の占める度合いが大きくなっているわ。どうやら氷の中なら自由に動けるみたいだし、全方位どこからでも襲いかかってくるでしょうね」

 

「氷に置換って、もし氷溶けたら山崩れね?」

 

「この温度だし普通なら溶けることはないでしょうけど、魔物を全部倒したら溶けるかもしれないわね。氷の置換が溶けて土に戻る可能性もあるけれど」

 

「後者だと信じたいな...生き埋めにはなりたくねぇや」

 

「最悪私が真上に無心の弓撃って出れば良いよ」

 

「マイ○ラじゃん」

 

ちょっ、突っ込もうとしたらレストに先に言われたんだが。ゲームに染まりすぎだろ。

 

「……そういや、全部加速切って減速すれば平気か。万が一崩落しそうになったらそうしよ」

 

「それもそうね...っ、上下両方から来るわよ!」

 

全員その場を飛び退くと、上下から魔物が飛び出してくる。

 

「はいはいワンパターン!」

 

クミリアが下から現れた魔物を蹴り飛ばしてその命を散らし、ステラが上から現れた魔物を無心の弓で撃ち抜く。二人の反応速度が早すぎて俺を含めた男三人衆の出番がねぇや。

 

「これ、俺いる...?」

 

「いるでしょ。いなかったら一瞬で凍え死んでるよ」

 

「それだってニアがいればなんとかなるっしょ。この六人だと過剰戦力すぎてこいつらと釣り合わねぇや」

 

「僕とか最初の一回から何もしてないよ。帰っても良い?」

 

「帰ってもゲームするだけでしょどうせ。それならついてきなさい」

 

「つーかさニア、どうやって氷の中の魔物を探知してるんだ?なんか速度探知に引っかからないんだけど」

 

二度目がどこかのタイミングで来るだろうと思って、周辺にいる魔物だけ見つけてやろうと速度探知を使っていたのだが、ニアが声を上げてからも魔物は速度探知に引っ掛からなかった。

 

魔物の身体は氷で作られている。だから周りの氷と同化して速度を探知しづらいというのはわかるのだが、それでも動いてさえいれば魔物と氷の違いに気づけるはず。なのに速度探知に引っかからないのはおかしい。

 

「魔素と魔力の流れに注視しなさい。氷の中で魔素の塊が蠢いているわ。それが壁の表面から飛び出す時、そこの氷を切り取り自身の身体にしているのよ」

 

「あーそゆことね。氷は単なる器で本質は魔素ってわけか...んじゃあ、ライトが切らなきゃいつまで経っても終わらなくね?あと無心の弓で消し飛ばすとか」

 

「……そうね」

 

「うわめんどくさっ!」

 

氷を砕いたところでその氷が地面に落ちれば魔素は吸収されて戻ってしまう。となると、ライトが聖剣の力で魔素を消滅させるか、無心の弓で魔素を消し飛ばさなければいつまで経っても終わらない。今この場で気づけてよかった。危うくずっと不毛な戦いをするところだった。

 

「……これ、外から何度も必殺技撃って魔素を反転させたほうが早くね?」

 

「クールタイムが伸びていなければそうしていたでしょうね」

 

「このまま潜ってひたすら魔物を消し飛ばしていくのと、クールタイムを挟みながら必殺技を撃つのだとどっちの方が早いと思う?」

 

「どっちでも変わらないでしょ。もちろん場合によるでしょうけど」

 

「外で待ってるだけとか暇すぎるしこのまま行こうよー」

 

「まぁ、それが一番良いんだろうけどよ...それにしても、魔素を辿るねぇ...」

 

ここ魔素多すぎて細かく探知するとか無理なんだよな...いやでも、一応練習しておくか。魔素で埋め尽くされていたとしても微妙に濃淡や流れのようなものはあるわけだし、ちょっと意識して見てみよう。

 

……

 

「ちょっ、カリヤどうしたの⁉︎」

 

「あれ...?」

 

速度探知から意識を離すと、いつのまにか壁に寄りかかっていた。ステラの話によれば、急にフラフラしだしてもたれかかるように壁にぶつかったらしい。

 

「何してたんだっけ...そうだ、たしか魔素を見ようとして...」

 

魔素を見ようとしすぎて注意力散漫になってしまったのだろうか。それとも、今になってようやく魔域の影響を受けてしまったのだろうか。

 

いや、違う。何かを見ようとした瞬間に、急に意識が遠のいたような、そんな感じだった気がする...だめだ、ちょっとボーッとしてきた。速度操作の疲れが出てきたかな。

 

「……ごめん。一旦外出ても良い?」

 

「カリヤに倒れられちゃ困るわ。今すぐに戻りましょ」

 

俺たちは踵を返し、元来た道を戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ、やっと戻ってこれた...」

 

途中何度か氷の中から出てきた魔物に襲われはしたが、無事に巣穴の外まで戻ってくることができた。

 

「速度操作も解除っと...いやー疲れた」

 

「涼しっ!」

 

「一応ちょい高めの体温にしてたからな。気温よりも高かっただろうしそりゃ涼しいだろうよ」

 

ほんの少しだけ巣穴から冷気が漏れ出ているのもあるけど、たしかにだいぶ涼しいな。ちょい暑くしすぎたか。

 

「んなことよりも、どうしようかアレ。必殺技連発する?」

 

「そうするしかないかな...準備だけしておこうっと」

 

ライトが聖剣を構える。一応もう少しだけ考えて何も思い浮かばなかったらライトに頼ることにしよう。

 

「……そーいや、帰り道に魔法石置いておけばよかったな」

 

「あー最後に崩落させるために貰ってた爆発するやつ?」

 

「そうそれ。すっかり忘れてたわ」

 

ムカデの巣を破壊したときに使っていたものと同じものをギルドから支給されていたんだが、帰り道に設置しておけばよかったな...ん?爆発?

 

「あっ...爆発させりゃーいいじゃん。魔素も消し飛ぶやんけ最適解じゃん」

 

「……何度やっても忘れるわよねそれ。それなら早くやってしまいましょ」

 

「だな。とりあえずニアはこれを巣の中に魔法で奥まで放り込んでくれ。魔素を消し飛ばす爆発を起こせるわけじゃねぇけど崩落には必要だ」

 

「わかったわ」

 

「んで、クミリアとライトはここから氷に雷装を流し込むぞ。出来るだけ奥まで気体が充満するようにするぞ。あっ、ニアはついでに気体が外に漏れ出ないように塞いでくれないか?」

 

「了解」

 

『雷装』

 

雷装を発動させて氷に電流を流し込み電気分解させていく。

 

「私何すれば良いー?」

 

「んじゃあ最後の火種を頼もうかな」

 

「また僕のやることない...」

 

「あー、うん、もうゲームしてていいぞ...?」

 

「あれだけやりたいって言っておいてなんだけど、ちょっと寂しい...」

 

仕事なくて本当にごめんと思いながら準備を終えた俺たちは、サクッと魔物の巣穴を爆破して魔素ごと全て消し飛ばした。

 

最初からこうすればよかったぜ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに世界全域に干渉できるようになった速度操作。

 

その力が世界を混沌に叩き落とすということを、今はまだ二人しか知らない。




……最後に書いたのはなんなんだ?と言われるかもしれませんが、この物語の最期が着実に近づいているということだけ言っておくことにします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。