前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

208 / 213
8048字。

ステラとのデート回ですわ。


思い出の場所巡り

「だいぶ街並みも戻ってきたでしょー」

 

「だな。店も増えてきたし、なにより家が増えたな」

 

二人でカリスの中をゆっくり巡る。建設中の建物はもうほとんどない。前と同じくらいとまでは言えないが、だいぶ活気が戻ってきただろう。

 

「人も多くなったし...なんか移住者増えたんだって?」

 

「そうなの!冒険者の人がいっぱい来たんだー」

 

「近頃この辺に強い魔物が増えてるからかな?何はともあれ人が増えるのは良いことだ...」

 

「カリヤが住み始めたっていうのも理由の一つだよ?カリヤが先陣を切ってくれたから移り住みやすかったって人もいるし」

 

「そうなのか?ちょっと気恥ずかしいな...」

 

まさかそんなことになっていたとは...この脚のこともあってか、あまり外に出ることがなかったから知らなかったわ。

 

「んで、次はどこに行くんだ?」

 

「もー内緒って言ってるでしょー?...ほらここっ!」

 

「ここって...入って良いのか?」

 

「事前に何も伝えてないからビックリすると思うよー?」

 

「オーケーじゃあ入るわ...しっつれいしまーす!」

 

扉を勢いよく開けて中に飛び込む。

 

「うわビックリしたッ!誰だデケェ音立てたのは!」

 

奥から診療所の主が出てくる。

 

「よぉトリ。会いに来たぜ〜」

 

「よりにもよってお前かよ...何の用だ?」

 

この世界に来てすぐの頃に何度もお世話になった診療所の医者、トリが俺の顔を見て顔をしかめた。1番最後に会った時と何も変わってないな...

 

「というかお前、前は俺のことさん付けしてなかったか...?なに呼び捨てしてるんだ歳上への敬意くらい持て」

 

「それなら敬意を持たれるくらいの威厳を持つんだな」

 

「お前、魔王討伐に貢献したからって遠慮が無くなっていないか...?で、何の用かって聞いているんだが早く答えてくれ」

 

「答えろもなにも、俺はここに連れてこられただけだからなぁ...理由ならステラに聞いてくれよ」

 

「やっほートリさん!」

 

「ステラ...お前が連れてきたのか?どうしてこんな奴...」

 

「こんな奴呼ばわりはどうなんだ...?んで、なんで俺をここに連れてきたんだ?」

 

「えっ?なんとなく」

 

「なんとなくで連れてくんじゃねぇよ...怪我人じゃないならさっさと帰るんだな」

 

「相変わらずだなぁトリさんは...さっきはなんとなくって言っちゃったけど、一応理由はあるんだよ?題して、私たちの思い出の場所巡り!あの三ヶ月で行ったところに全部行こうのツアー!」

 

「あーなるほど。じゃあここはもう終わりだなデートの続きしようぜ〜」

 

「おいちょっと待てデートってなんだデートって」

 

「おっ?なんだ急に腕なんて掴んじゃって。さっきはあんだけ早く帰れって言ってたのにアレか?実は帰ってほしく無いのかツンデレか?」

 

「そうじゃねぇデートってなんだおいステラ!」

 

「もーカリヤったらまたデートとか言っちゃって〜トリさんもカリヤの言うこと真に受けちゃダメだよ〜」

 

「なんだ嘘か。驚かせやがって」

 

「なになに心配しちゃった?トリお前ステラの親か何かと勘違いしてなーい?」

 

「チッ...」

 

「うわ舌打ちしたこの人」

 

「用が無いなら早く出ていきやがれ!あと、ステラに手ェ出したら容赦しねぇからな!」

 

「うっわ医療過誤で殺してきそうだな怖すんぎ」

 

急いで診療所の外に出る。絶対に怪我しないようにしよう...

 

「もーどうしてケンカしちゃうかなぁ?」

 

「あんなんケンカじゃなくてただの楽しい楽しい馴れ合い弄り合いだって。アイツも本気にしてないと思うぜ」

 

「本気で怒ってたように見えたけど...まぁいっか。次行くよー」

 

歩き出したステラの後ろをついていく。

 

「思い出の場所巡りねぇ...じゃあ次はどこになるんだろ。またお楽しみか?」

 

「そうだね。次も行ってからのお楽しみ〜」

 

そう言いながら向かう先は南。この方向って何があったっけ...

 

「……あっ、なんとなくわかったぞ。こりゃカリスの外まで出るな?」

 

「正解♪まぁ、99%だけどね」

 

「99%?それってどういう...」

 

そうこう言っているうちにカリスを出てしまう。そしてステラはクルリと半回転してこっちの方を向いてくる。

 

「衛兵のおじちゃんおはよー!」

 

「おぉステラちゃんおはよう。カリヤくんもおはよう」

 

「おはようございますヨイさん」

 

思い出巡り二箇所目...いや、朝食を食べたあの訓練所を一つ目にカウントすれば三箇所目だな。ここが三箇所目らしい。

 

「おじちゃん最近調子どう?」

 

「魔物が押し寄せてくる時はすごい怖いな。前はこんなことなかったから忘れていてたまに素通りさせてしまう時があるのがもっと怖い」

 

「ちょっ、衛兵がそれで良いのか...?」

 

「ダメだね。いい加減俺も慣れないとな...」

 

「というかおじちゃん、武器ボロボロじゃない?どうしたの?」

 

「少し前に魔物が一体来てな。切ったら体液みたいなものが飛び出して武器が腐食してしまったんだ」

 

「なるほど、それは災難ですね...俺が魔力切れしていなければ製作出直したんだけどなぁ」

 

「製作スキルか...確かに使えたら便利そうだ。考えてみるよ」

 

「流石に今から習得するのは難しいんじゃない?」

 

「まぁ俺も歳だからな。本来ならそろそろ引退を考えても良い頃合いだ。人不足のせいで出来ないけど」

 

「ヨイさんも苦労してますね...」

 

「せっかく冒険者の人たちが多く移住してきたのだから、何人か門番の仕事をやってくれないもんかな。ちょっと後で上に掛け合ってみよう」

 

「人増えると良いね」

 

「まぁでも期待はしないでおくよ。そういえばお二人さんはどこか出かけるのかい?」

 

「ステラ先導で思い出巡りしてるんですよ。まぁ次行くところの検討はついてるけど」

 

「……そうか、おじちゃんにはよくわからないが、楽しんできなさい」

 

「おじちゃんまたねー!」

 

その場を離れ、また南へと進み始める。

 

「次はあの森だな?」

 

「そう!カリヤと最初に会った森!今思い返すと、あそこでいろんなことが起きたよねー」

 

「だな。出会いはまぁ大前提として、燃える中トレントを退治したりスライムと戦ったり色々あったよなぁ...」

 

「そういえばカリヤって空から降ってきたんだっけ?見たかったなー」

 

「あんなん事故だよ事故。本来は地上に出るはずだったのに神様が出現座標ミスったんだぜ?少し間違えてたらあの時点で死んでたかもしれないんだよなぁ...」

 

「うわぁ、何気なく狩りに出かけたらカリヤが死んでるのを見つけてた可能性もあったってこと?トラウマものだねそれ」

 

「そんなことにならなくてほんと良かったぜ...運が良かったわ」

 

「本当に運が良かったら空から降るなんてことしてないと思うなー」

 

「それはそう」

 

運良く生還とか何度もしてきたけど、本当に運が良かったならそもそも危険な事態に陥るようなことないからな。そういう視点だと運が悪いって言えるよな...

 

「よし!やっと着いた!」

 

「歩きだとそれなりに時間かかっちゃうよな...いっつも走ってきてたからこんなに遠かったっけって思っちまった」

 

「カリヤといると感覚おかしくなっちゃうよねー。それにしても、久しぶりに来たなーここ」

 

「……そーいや俺ちょっと前に来たなここ。一ヶ月以上は前だけど」

 

「あーなんだっけ?ちょっと巨大化してた鳥の魔物と戦ったんだっけ?」

 

「そうそれ。いやー今回くらいは魔物と遭遇せずにいたいなー」

 

「多分無理だと思う...警戒しながら慎重に行こうねー」

 

二人で森の中に入る。

 

「……だからといって無心の弓を持ちながら歩くのはどうなんだ...?」

 

「本物の弓矢と違ってすぐに撃てるから楽なんだよねー」

 

「いやまぁ取り回しやすいってのはわかるんだけど、それ不用意に撃ったら木々が消し飛ぶから気をつけてくれよな...」

 

触れたもの全てを無に変換しちまうからな無心の弓って。誤射したら一発アウトだし、こんな森の中で撃ったら確実に木を消し飛ばしてしまう。環境破壊確定だ。

 

「というか普通の魔物に対して撃つもんじゃないよなそれって。ってか地上に魔物がいたらどうしてるんだ?背の低い魔物とかに向けて撃ったら地面も消し飛ばない?」

 

「うん、よく消し飛ばしちゃってる」

 

「あっそうなんだ...流石のステラでもそこまでの調整は難しいか」

 

「無心の弓は撃った後に軌道を変えるとかできないからね。うまくホップするように撃てたら良いんだけど...」

 

「『は』って言った今?普通の矢だったらできるの?えっ?」

 

「普通の矢じゃ流石にちょっと難しいよ。空気の矢だったら火装と氷装で操作できるけどね」

 

「それでも『ちょっと』ってことはやろうと思えば出来るんだよな...?」

 

「えっ?うん」

 

「今更ながらすごいよなぁ...っと、そーいやここか俺が落ちてきた場所」

 

「そうなの?よくわかるね」

 

「落ちてくる時にバタバタと枝を薙ぎ倒しちゃったからな。流石に新しいのが生えてきてるけど、この辺の枝ちょっと短いだろ?」

 

「あっ本当だ〜心なしか他の場所よりも明るく感じるね」

 

「それは流石に気のせいな気もするが...そーいや今の会話で思い出したが、あの時の火災の面影全く無いよな。たしかもうちょい手前の方で燃えてたはずだろ?」

 

「そういえばそうだね。木の生命力ってすごいなぁ」

 

「それ直るんならこの枝も頑張って直せって思っちゃうけどな」

 

「あはは、たしかに」

 

「んじゃあここも見たことだし、魔物に遭遇する前に次行っちゃおうぜ」

 

「だねー次行こっか。一回カリスに戻るよー」

 

「りょー」

 

ここまで来た道を逆戻りする。一回通った道だし、おそらく魔物に遭遇するようなことはないだろう。決してフラグなどではないぞ。

 

……ほら、こうやって普通に森を出れたからな。

 

「あっそうだ。カリヤーそこでちょっと止まって?」

 

「おん?何やるつもりだ?」

 

「えーっと、どんな感じだったっけなぁ...この感じの立ち位置だったっけ?」

 

ステラが俺から少し離れて立ち位置を調整する。森を出てすぐのこの場所でやることって何かあるか?何をするつもりなんだろう...

 

「えー、こほん!...大丈夫ー?そこのおにーさーん!」

 

「うっわ懐かしっ!最初に会った時のやつじゃん!」

 

大声を出して手を振りながら近づいてくるステラを見たら、すぐに記憶が蘇ってきた。この世界に来てすぐの出来事だったからな...深く印象に残っている。

 

「はいそしてこの運命構図」

 

「それステラが言う?レストもそうだけど、ステラもだいぶ染まったよなぁ...」

 

「はい次カリヤのセリフ!」

 

「え?えっと...君が助けてくれたってことでいいのかな?ありがとう」

 

「礼はいいよ別に。結果的に助けたみたいになっちゃっただけだしねー...あはは!なんか面白い!気恥ずかしいね!」

 

「だな。最初こんな感じだったっけ...」

 

「今思うと、あの時すごい猫被ってたよねカリヤ」

 

「まぁあの時は誰に対しても丁寧語してたからな...猫被ってたって表現はどうかと思うが」

 

「まさかあの時は一緒に魔王を倒しに行くだなんて思いもしなかったよねー」

 

「だな。まさかこんなちっちゃい子と一緒に魔王討伐しに行くとは思わないさ」

 

「ちっちゃいって言ったなー!」

 

「あーぐりぐりすんなちょい痛い」

 

あの時から一年と二、三ヶ月くらいか...俺もステラも、めっちゃ成長したな。ステラは背も伸びたし...ちょっとだけだけど。

 

「もー次言ったらこれだからね?」

 

「……見えないけど動き的に無心の弓使ってるよな?それだけはアカンぞ?」

 

「冗談だよ本気で撃つわけないじゃーん」

 

「冗談でも人に向けちゃいけないもんなんだよそれは...」

 

「じゃあカリスに戻ろっか!」

 

「そして切り替えも早いな...よっと」

 

ステラの隣をついていき、カリスに戻る。

 

「一度カリスに戻るって話だけど、多分用があるのはカリスの中じゃないよな。もしそうならさっきトリと会ったタイミングで一緒に済ませてるはずだからな。だから、多分またカリスの外で、こことは反対方角となると...天の怒りの荒野しかなくね?」

 

「凄いねカリヤ。全部お見通しじゃん!」

 

「まぁ思い出巡りって言ってるわけだし、自ずと可能性は絞られるからな。二人の思い出かどうかは甚だ疑問だが」

 

「別に二人のとは一言も言ってないしね。カリヤが行った場所にもどんどん行くよー!」

 

「でも俺今雷装使えないし、ステラも体には纏えないからあそこには入れないぞ?」

 

「それはわかってるよ。だから近くに寄るだけ。ちょっと遠いけど、二人で話しながらのんびり行こっ!」

 

「だなー...んあ?魔力もう回復したんだが」

 

「えっ早くない?」

 

「なぜか聖域の外の方が魔力回復早いからなぁ...まさかこんな早く回復するとは思わなんだ」

 

昼過ぎぐらいまでかかると思ってたけど、結果的にニアが言ってた通り朝頃には回復しきったな。まさかこれを予見して...?いやまぁ偶然か。

 

「でも今日はせっかくだし魔法無しで過ごしてみようかな。このまま一緒に思い出巡り旅を続けよう」

 

「えっそうするの?てっきりカリヤのことだから速度操作で走っていくとばかり...」

 

「俺のことをなんだと思っているんだ...?いやいつもならそうしてたけども、今さっきのんびり行こうって言ったばかりだろ?そんな野暮なことはしないぜ」

 

「たしかにそうだったね」

 

「まぁ車椅子は面倒だから立つのくらいは許してくれ」

 

「いいよー隣に並んで歩こ〜」

 

義足に魔力を流し込み、立ち上がる。そして魔道具を使って次元収納に車椅子をしまって...と。

 

「じゃあ行こうか」

 

二人で並んで歩く。さっきまでとは目線の方向が逆になったな。昨日ぶりにステラの頭のてっぺんを見た。

 

「車椅子に乗ってるカリヤと歩くのも楽しいけど、普通に並んで歩くのも楽しいね」

 

「目線変わるからな。さっきまでは見上げる感じだったからステラがちょっとデカく見えたけど、今はさっきとのギャップで一段と小さく...うん、それ構えるの辞めようか」

 

こりゃ今後も小さいはNGワードだな。ついうっかり言ってしまわないように気をつけよう。

 

「……んあ゛〜背中痛い。車椅子乗ってるといつも以上に猫背になっちまうんだよなぁ...」

 

「カリヤもだいぶ姿勢悪いよね。レストほどじゃないけど」

 

「あいつは...うん、めっちゃ猫背だからな。ゲームやり始めてからさらに悪くなったし、めっちゃ目に近づけてやろうとするから絶対目悪くすよなアレ」

 

「私も漫画読み始めてから目悪くなっちゃったかも...今のところは弓を撃つのに問題はないけどね」

 

「おいおい大丈夫か?弓兵が目悪いのマズイだろ気をつけてくれよ?」

 

「でも眼鏡もちょっと興味あるんだよねー。こっちだと片眼鏡しかないし」

 

この世界にも眼鏡はあるはあるが片眼鏡だけだ。基本的に目が悪くなったら冒険者は引退するのがほとんどだし、日常生活じゃ目が悪くとも大抵なんとかなってしまうためあまり普及もしていない。そもそもピッタリ度のあったレンズを二つも作らないといけないというのがこの世界の技術だと少し難しい。そういった理由もあって両眼鏡は存在していないのだ。

 

「一応言っておくけど、俺目悪くなったことないから眼鏡なんて一度も触れたことはない。だから製作でも作れんぞ」

 

「そっかぁ...残念」

 

「目は良いに限る。つーかステラの場合、目が悪くなったって言っても元々頑張れば何キロ先も見えるんだろ?ほぼ誤差みたいなもんだろ」

 

「それはそうなんだけどさ、ほら、眼鏡をかけたら知的って感じするでしょ?」

 

「ステラ思い出してみろ。眼鏡かけててアホなキャラこれまでに何人見てきた?」

 

「……うん、眼鏡かけててもあんま意味ないね」

 

「そういうことだ。まぁ本当に欲しいってなったらニアに頼むといい。ステラの話なら絶対聞いてくれるだろうし、俺の義足と車椅子作ったみたいにリヒト...ニアの親父さんが作ってくれるように頼んでもらえるはずだ」

 

そーいやいつのまにニアはあんなにステラにベタ甘になったんだろうな...ステラの頼みならなんでも聞くようになった気がする。前にも思った気がするけど、絶対詐欺に引っかかるタイプだよな。

 

「やっとカリス到着〜ただいまですヨイさん」

 

「案外戻ってくるの早かったな。あっちでの用事はもう済んだのかい?」

 

「そうだよー次は北東の方に行くから村の中通っていくんだ〜」

 

「そうか。魔物に気をつけるんだぞ」

 

「わかってるよーじゃあねおじちゃん」

 

ヨイに挨拶してからカリスの中に入る。ここから北の門までまっすぐ歩いて、そのまま北東に向かおう。

 

「……うわっ、びっくりした」

 

突然道のど真ん中から人が飛び出してくる。よく見たらライトだったが、何も無いところから急に現れるから普通にびっくりしてしまう。側から見たら転移してきたみたいに見えるしな...

 

「……おっ、こっち気づいた。おーいライトー」

 

ライトはおそらく俺の家の方へと向かおうとして振り返ろうとした瞬間に俺たちのことを見つけたのたまろう。真っ直ぐこちらへと歩いてくる。

 

「用事あるって言ってたけど、もう終わったのか?」

 

「うん、終わったよ...歩いてるけど魔力はどうなったんだ?」

 

「なんかカリスの外行ったら早く回復したわ」

 

「そっか...なぁ、一つだけ頼みを聞いてもらっていいか?」

 

「なんだ?」

 

「しばらくの間、何が起こったとしてもその場を動かないでくれ。僕がいいと言うまでね」

 

「んー?何のためかよくわからんが...ごめんなステラ、ちょっと待っててくれ」

 

「いいよー」

 

「じゃあそこで待っていてくれ」

 

ライトはそう言うと、少しずつ俺から距離を取る。

 

そして...聖剣を構えた。

 

「……本格的に何をするつもりだ?」

 

「前に魔力の治りが遅いって言ってたでしょ?一回高純度の聖素をぶつけたら治らないかなと思ってね」

 

「ああ、なるほど。試す価値はあるな」

 

「じゃあやるよ」

 

ライトは聖杖を発動させ、反転聖素のチャージを始めた。鞘から光が溢れ出し、柄が外れる。ライトはすぐさま杖を振り抜き、反転聖素の奔流を解き放つ。

 

それは瞬く間に俺のすぐ目の前にまで辿り着き...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ?」

 

気がつけば俺は、聖杖を避けていた。速度操作を発動して自身を加速させ、真横に移動して避けていた。全くの無意識でだ。

 

「えっ、なんで俺避けてんの?馬鹿なの?なんで..ヅヅ⁉︎」

 

心臓を締め付けられたかのような...いや、違う。何かに塗りつぶされるかのような感覚が走った。いや、心臓でもない。魂だ。魂が何かに侵されている。

 

「な、ん...⁉︎」

 

視界が揺らぐ。脳が揺れる。思考がぼんやりとしだして、身体が俺の意思を受け付けなくなってくる。

 

「まさ...か!」

 

俺はやっと理解した。ライトがなぜ聖杖を撃ったのか、そしてなぜアライブが俺を殺そうとしたのか...

 

「ライ、ト...受け取れ...!」

 

痺れて動かなくなりかけている身体を無理矢理動かしてポーチを取り外す。魔法図鑑も銃も次元収納の魔道具も全て入っているポーチだ。そして、それをライトに向かって放り投げた。

 

ライトは投げられたポーチを受け止めた。

 

それを見届けた瞬間、俺の意識はプツンと切れ、深い泥の奥底に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カリヤが苦しそうにして胸の辺りを押さえ、それをやめた次の瞬間、突然ライトに襲いかかった。

 

だけど、ライトは魔法を使いながらカリヤの攻撃を全て捌き切り、逆に反撃を仕掛けてカリヤの手の甲に軽く傷をつけた。

 

「な、何がどうなって...」

 

急な出来事に何が起こったのか理解がなかなか追いつかず、ただ二人の戦いを見ていることしかできなかった。

 

けれども、それはほんの少しの間だけだった。

 

次第にライトが反撃の手を強め、少しだけ優勢になってすぐのことだった。

 

カリヤの姿が一瞬にして消えてしまったのだ。

 

「逃げたか...」

 

と、ライトは呟いていた。

 

そして、カリヤが消えてから数秒後、私の身体が少しずつ動かなくなっていった。そして意識もゆっくりになっていって...

 

次に意識がハッキリとしたその時には、もう全て終わってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世全ての生命がその動きを止めた。

 

動ける者は、勇者(ライト)元凶(魔王)のみ。




……はい。

次回をお楽しみにとしか言えません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。