前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8263字。

今回は導入だけで、戦闘はないです。


10時間歩き続けるのが苦じゃなくなってる自分がいる

「一週間後だっけか。お前が旅立つ日は」

 

王都に来てから一ヶ月弱経過した。ここでできることはあらかたやり尽くしたので、次の町に行くことにしたのだ。

 

「そうだ。今度はついてくるんじゃねぇぞ?」

 

「行かねぇよ。カイスに用はない」

 

「そっか」

 

次に向かう町はカイス。魔法の町だ。

 

「じゃあ行こっか。カリヤと一緒にやる最後の依頼!」

 

今日は、いつもの三人と依頼をこなしに行くのだ。チュチュが言ったように、これはこのメンバーでやる最後の依頼だ。事前の話し合いによって、今回の報酬は全て俺が受け取ることになっている。嬉しい限りだ。

 

「で、どんな依頼なんだ?俺だけ知らされてないんだけど」

 

長い時間かかると言うことだけは聞いた。それ以外は知らない。

 

「ふっ、ふっ、ふっ...行ってからのお楽しみだよ」

 

「どんな系統なのかだけでも教えてくれよ。討伐?探索?それとも採取?」

 

「全部だな」

 

「全部やるような依頼ってなんだろ...?」

 

北の門から王都の外に出て、南西に向かいながら話す。依頼内容くらいすぐに教えてくれればいいのに...心構えができないぞ。

 

「どれくらい歩くんだ?」

 

「結構歩くよ。何時間くらいかかるかな...」

 

「加速するか?」

 

「いや、しなくてもいいよ。ゆっくり歩こう」

 

「わかった...こういう移動時間にブリーフィングするんじゃないのかな普通」

 

「ああもうぐちぐちうるさいなぁしょうがないから説明するよ!一回で全部覚えてね!」

 

「最初からそうしてくれればいいのに...」

 

チュチュから今回の依頼の説明をされる。

 

「魔物の巣穴調査?」

 

「そう。なんか異常な大きさの巣穴が見つかったらしくて、それの調査をしてこいっていう依頼なの」

 

「巨大な巣穴ねぇ...」

 

「あっ、言っておくけど、今まで見たいな魔物の巨大化現象とは関係ないからね?昔から何回か起こってた自然現象だから、魔族が絡んでるってことはないらしいの」

 

「へー。で、どんな魔物なんだ?虫系?」

 

「ムカデ」

 

「あー...ダメだ。想像しちまった」

 

薄暗い地下で、ムカデのような形をした魔物が大量にカサカサと...キモっ!

 

「途端に行きたくなくなってきた...」

 

「何言ってんのさ。今回はカリスの方からも人が来るんだから、今さら引き返すこともできないんだからね」

 

「カリスからも来るの?」

 

「透視魔法で調査したら、ものすごい広さになってるってことがわかったらしくて、近場のカリスからも応援が来ることになってるんだ。王都からも、私たち以外にもう何組か来るらしいよ」

 

「…もしかしてだけどさ。加速なしで歩くのって、集合時間が決まってるからだったりする?」

 

「正解。大体11時くらいに、巣穴近くの聖域に集合になってるの。このまま歩けば、ピッタリくらいに着くはずだよ」

 

懐中時計を取り出して、時間を確認する。今は3時くらい。つまり、地球時間で10時間ほど歩くわけだ。

 

「なんでそんなギリギリに?早く行って休憩すれば良くない?聖域で休憩できるんだったら魔力使ってもすぐ回復できるんだしさ」

 

「あんまり早く着きすぎるのもアレなんだよねー...」

 

「アレって?」

 

「拠点作りの手伝いをさせられる」

 

「それは確かに面倒だな。ゆっくり行くの、大賛成だ」

 

「でしょ?新人の頃、時間より早く行って何度雑用をさせられたことか...」

 

「テント建てたり、道具の点検をしたり...食糧不足に備えて魔物を狩ってこいとか言われたこともあったな...」

 

「俺みたいな盾使いは狩りができないから、偵察をさせられたな...盾持ちは攻撃役がいないとただ死ぬだけだってのに...」

 

三人とも遠い目をしだした。大変だったんだろうなぁ。

 

「他の人には悪いけど、俺たちはゆっくり行かせてもらおう」

 

「遅れないくらいにね。一秒でも集合時間から遅れると、報酬半分なくなっちゃうから」

 

なにそれキッツ。早く行っても得はないし、遅く行ったら報酬が減る。ギリギリを攻めたくなるのがわかる。

 

「そういえば、他に来る人ってどんな人かわかるか?」

 

「そんなの知らないよ。多分ほとんど知らない人だと思う」

 

「そりゃそうか」

 

誰が依頼を受けたかなんて把握している方がおかしいだろう。カリスから来る人だっているわけだし。

 

「カリス...か」

 

「あっ、今ステラのこと考えてたでしょ」

 

「うん」

 

「おぉぅ即答...」

 

「来てると嬉しいな。成長した姿を見てみたい」

 

「なんか兄みたいな視点だね...来るかはわからないよ?」

 

「来たら嬉しいってだけで、来なかったらそれまでの話だ。修行で忙しいだろうしね」

 

「そっか。でも私も来てほしいなー。弓はあの子の方が上手いから、教えて欲しいんだよねー」

 

「チュチュも十分すごいっしょ」

 

「私が知るなかではステラが一番だよ。あの子を10としたら...私は7か8くらいかな」

 

「意外と自己評価高いなお前」

 

「カリヤは6くらいだね」

 

「何勝手に格付けしてんだおい」

 

「あと雷装も使ってみたい」

 

「絶対にチュチュには渡さねぇ」

 

「えー、ケチ」

 

「火装と氷装があれば十分でしょ。それに、雷装渡したら絶対水素爆発やろうとするだろお前。危ないから渡せません!」

 

「あんたは私のママか!」

 

ギャーギャー言い合いながら歩き続ける。チュチュといると、移動中大体こうなる気がする。おかげで退屈はしないが、しゃべり尽くめで喉が渇くのだけ難点だ。

 

「何この湖。でっか」

 

王都を出発して6時間、でっかい湖が目の前に見えてきた。山中湖くらいの大きさだな。多分。

 

「そういえばだけど、目的地ってどこなんだ?虫の巣穴だから、森か?」

 

ずっと三人の後ろをついていっているだけなので、どこに向かっているのかは知らないのだ。

 

「あそこに見えてる山だよ」

 

湖の向こうにある山をチュチュが指差す。

 

「あれか。ならぐるっと回るか。右周りの方が早いか?」

 

「回らないよ?突っ切るの」

 

「え?」

 

いやまぁ、回り道するんだったら最初っからこの方向に歩いていないだろうけど...

 

「ギブド。お願い」

 

「了解」

 

ギブドが湖の端に手を突っ込む。すると、湖が一部凍りつき、氷の道ができ始める。

 

「なるほど、これで渡るのか」

 

氷の道、楽しそうだ。壊れないかちょっと心配だけど。

 

「まだ踏んだらダメだよ。割れちゃうから」

 

「対岸まで凍りつくのを待ってね」

 

一分ほど突っ込み続けたギブドが手を引き抜く。対岸まで凍ったのだろう。

 

「魔力もったな...カリヤなんかした?」

 

「一応回復速度を上げておいたよ」

 

「ありがと。もう渡れるよ」

 

「渡れるって言ってもなぁ...歩くのは厳しくね?」

 

「何言ってるのさ。氷だよ?すぐに渡れるよ」

 

スケート靴でもあるのか?...あっ、なるほどそういうことか。

 

「りょーかい。ほら用意して」

 

三人が氷の道に乗り、しゃがみ込む。俺は一番後ろに座り、手を後ろに向ける。

 

「左右の調整は頼むぞ」

 

「それはカリヤがやってよ」

 

「微調整難しいんだよ...いくぞ、『微風』」

 

手のひらから風を噴出させ、氷の道を一気に滑る。

 

「はやーい!」

 

「はしゃぐなはしゃぐな...もうあとは慣性だけでいいか」

 

風の噴射を止める。これ以上の加速はいらないし、速すぎると対岸に着地した時が怖い。

 

「もうそろそろ減速させないとやばいな」

 

能力を使い、四人の速度を減速させる。床が氷なので、こうでもしないと止まれないのだ。このまま何もしなければ、時速300キロで激突することになるだろう。

 

「もう減速するの?まだ半分だよ?」

 

「今からやらないと俺たちは死ぬ」

 

「えっ」

 

徐々にではあるが、段々と速度が落ちていく。この感じなら、対岸に着く頃には時速40キロくらいにはなるだろう。若干速すぎる気がしないでもないが、これ以上の減速は見込めない。

 

「そろそろ着地だぞー、衝撃に備えろー」

 

衝撃に備えろとは言ったが、このままだと着地は困難。なので、一つ小細工をすることにした。

 

『微風』

 

三人を減速させながら一瞬自分を加速させ、氷の道を蹴りながら風を下向きに噴射する。そうして飛び上がった俺は先頭に降り立つと、風を前に向けて吹き出し、さらなる減速を試みることにした。

 

「止まれ止まれ...あっ、ほんとに止まっちゃった。やべ」

 

思ったより風の減速が効き、対岸まであと二メートルくらいのところで止まってしまった。仕方ないので後方に手を向け、風を放って移動する。

 

「よっと、なんとか着いたな」

 

「随分速かったねー...一旦休憩しよっか。山登らないといけないしね。あと、速すぎて集合時間よりだいぶ前に着いちゃいそうだし」

 

そんなチュチュの提案に従い、15分ほど休憩したのち出発した。

 

「山登りか...富士山登って高山病なるっていう原作再現したきりだな。なんで低い山から試さなかったんだろ...」

 

3期を再現したかったのに、普通に高山病になって2期再現になったのは秘密だ。高尾山登るくらいから始めればよかったのに、なんで富士山から始めたんだろうなほんと。

 

「ふじさんってなに?」

 

「山の名前だよ」

 

「そんな名前の山あったっけな...?」

 

「気にしなくていい。というか忘れてくれ」

 

ゆっくり山を登っていく。目的地はこの山の中腹の、少し開けたところらしい。そこまで、時間をかけながら登る。

 

「そういえばだけどさ、まだ一回も魔物にあってないよな。運がいい...わけじゃないよな?」

 

口にしたらその瞬間に魔物が襲ってくるんじゃないかと思ってずっと言えずにいたが、とうとうそれを口にする。

 

「運がいいだけだよ?ここまで魔物にあわないなんて珍しいね」

 

「ほんとに運なのか...てっきり、なんか魔物避けの魔道具を持ってきてるとかだと思ったわ」

 

「魔物避けの魔道具かぁ。そんなのが本当にあったらどれだけ移動が楽なことか...」

 

「ちょっと待て、ほんとに運なのか?やっべフラグ立てちった...」

 

「フラグを乱立すれば逆に大丈夫だって前に言ってなかったっけ?」

 

「時と場合によるんだよそれ」

 

一応警戒しておこう。フラグブレイクできる可能性低いしな。フラグの管理は何よりも大事だ。

 

「まぁ出ていたところで倒すだけだろ。最悪、山の斜面に突き落とすだけでいい」

 

「魔物を突き落とす...なんか罪悪感出てくるな」

 

「さんざん殺しといて何言ってんだ。そんなの無心でやれ」

 

「無慈悲だな」

 

「襲ってくるんだ。正当防衛だろ」

 

「そういうもんなんか...」

 

なんか、斬り殺すのと突き落とすのだと残酷度が違う感じがする。死という結果は変わらないはずなのに、過程が変わると印象も結構変わるのは不思議だ。

 

「カリヤー今何時?」

 

「えっと...10時だな」

 

「オッケー。ちょっとペース早めた方がいいかも。ほんの少しだけ加速してくれない?...ああそうそれくらい」

 

集合時間が迫ってくる。どうやら、山登りに慣れていなくてペースが落ちていた俺にあわせて、3人ともゆっくり歩いてくれていたらしい。しかし、このままでは間に合わないとのことで、ほんの少し歩くスピードを加速することになった。

 

そこから30分ほど山を登り、中腹ぐらいまでやってくる。

 

「もしかして、集合場所ってあそこか?」

 

カルデラのようになっている地形を指差す。

 

「多分そうだね。あそこが拠点だと思う」

 

おそらく焚き火でもしているのだろう。モクモクと煙が上がっていた。

 

「よし、行こう。このペースならちょうどくらいに着くと思うよ」

 

「足元に気をつけろよ。加速してるから、普段の感覚で動こうとするとつまずくぞ」

 

カルデラの斜面を慎重に降りる。斜面は、まるでデス○トのBT座礁地帯のように凸凹しており、少し油断するとつまずきそうになる。俺は加速に慣れているからひょいひょいと移動できるが、3人は加速時の移動に慣れていないので、何度も足を引っ掛け転びそうになっていた。俺がミスって早く前に行きすぎ、誰かが能力適用範囲から出てしまって、急な加速の解除が起こり転ぶこともあった。

 

能力の恩恵を受けるには、俺から半径2.5メートル以内に入る必要がある。俺は速度探知によってどこに誰がいるかわかるが、3人には自分が俺からどれだけ離れた距離で歩いているのかがわからない。そのため俺がうまく距離を調節する必要があるが、近すぎると歩きづらくなるため、加減が難しかった。

 

「密集してると歩きづらいな...」

 

「もうすぐ平地になるからそれまでの辛抱だよ」

 

十分ほど悪戦苦闘し、なんとか四人で斜面を降りきる。そしてそのまま平らになった地面を歩いていく。

 

「今何時?」

 

「10時45分だ」

 

「これなら5分前には着きそうだねー...その懐中時計ズレてたりはしないよね?」

 

「毎朝確認してるから問題ない」

 

「それならよかった」

 

平地を歩き、途中にあった林を抜けると、テントが見えてきた。多分あそこが拠点だろう。

 

「とうちゃーく!」

 

ただいまの時刻は10時55分。無事に集合時間前に到着することができた。

 

「君たちも討伐依頼志願者かい?」

 

いかにも戦士っぽい装備を着たおじさんがやってくる。

 

「そうです」

 

「ならこっちに来い。作戦会議を始める」

 

おじさんについていく。物資の保管場所や、炊き出し所となっているテントをいくつか通り過ぎ、何人もの人が集まっている広場に着いた。ステラは...いないな。

 

「定刻だ。これより作戦会議を始める!」

 

高台におじさんが立つ。

 

「諸君!今回のムカデ討伐に志願してくれたこと、誠に感謝する!私はこの討伐作戦の指揮をギルドから任された、ストローグというものだ!」

 

指揮官だったのかこの人。おじさんって呼んでごめん。

 

「これから、作戦の概要を説明する!まず、今作戦は全て既存のマニュアル通りである!すでに知っているものは聞き流してくれて構わない!」

 

マニュアルなんてあんのか。そういえば、今まで何回か起こったことあるってチュチュが言ってたし、マニュアルが作られててもおかしくないな。

 

「一つ!接近してきたムカデは全て討伐する!ムカデは一匹たりとも巣穴の外に出してはならない!」

 

これは普通だな。『見つけた』でなくて、『接近してきた』なのは、踏み込みすぎて返り討ちに会うのを防ぐためだろう。

 

「言わなくてもわかるだろうが、火装や火球などの、火を扱う魔法やスキルは全て禁止とさせてもらう!火を主体に戦うものは注意するように!」

 

これも当然だ。洞窟の中で火を使うとか考えられない。使うやつは気が触れていると思う。よくて酸欠。粉塵が舞っていれば即座に粉塵爆発なのだ。粉塵の方は、雷装も気をつけないといけないかもしれない。

 

「一つ!単独行動は絶対にしない!必ずグループで行動すること!三人以上が好ましいので、個人または二人で来たものは三人以上になるようにグループを作ること!」

 

単独行動をしないというのはわかる。迷ったりしたら大変だし、複数の敵に襲い掛かられたら死だ。というか、三人たちと一緒に来てよかったな。知らない人とこの場でグループ組めとか、子供の頃のトラウマが...なんで先生は二人組を作らせたがるんだろう。思い出すだけで嫌になる。

 

「一つ!道標は必ず残す!1グループに一つずつ、この杖を渡す!分かれ道に出た時、自分達が通る道には赤の杭を打つ!赤は調査中を示す!もしその先が行き止まりだった場合、分かれ道に戻り、杭を青に変える!青の杭は調査完了を示す!あと、分かれ道には必ず出口の方向を示す黄色の杭を打つこと!」

 

杖を渡される。聖域を判別するあの杖に似ていた。あの時は白い宝石がついていたが、今回は黄色い宝石がついていた。

 

「なお、その杖には光源となる魔光石が取り付けられている!先程話したとおり、火は使えないので松明も使えない!明かりはこの杖を使うように!」

 

魔力を流すと光る石のようだ。

 

「一つ!魔力の管理に気をつけること!巣穴内部は魔素の濃度が高いことが予想される!戦闘中に魔力を使い切ってしまい、光源を失うことや杭を打てなくなることを避けるように!」

 

多分、俺たちはあまり気にしなくてもいいだろう。ほんの少しでも聖素があるなら、俺の能力で魔力回復速度を加速できる。普段よりも遅くはなるだろうが、ある程度魔力の持ちは良くなるはずだ。

 

「一つ!この魔石を巣穴内部に設置すること!行き止まりにたどり着いたら、一つ前の分かれ道に戻りながらこの魔石を壁に十メートル間隔で設置するべし!」

 

内部にオレンジの光が灯っている石を見せられる。

 

「この魔石は、最後に巣穴を潰すためのものである!調査完了後、全ての人員が巣穴から離脱したことを確認したのち、全ての魔石を同時に起爆する!」

 

なるほど、この石を起爆して巣穴を埋めてしまうのか。随分とアグレッシブだな。

 

「全ての人員とは、今この場にいる人間のことである!つまり、この作戦会議後にやってきたものは関知しない!あとから来たものがまだ巣穴の中に残っていようと、構わず起爆する!」

 

おぉぅマジかよ。怖っ。

 

「この場にいる人間の顔は全て覚えたので、巻き添えを喰らうことはない!安心してもらいたい!」

 

顔を覚えた?ざっと見て50人弱はいるぞ?さらっと言ってるけどこの人ハイスペすぎん?

 

「一つ!依頼を受けてきたものは知っているだろうが、この依頼は固定給だ!どれだけ勤勉であろうが、もらえる報酬の量は変わらない!けれど、サボることは許されない!...諸君の中にサボるものなどおらんかったな、すまない。忘れてくれ」

 

サボるつもりなんてもともとなかったが、念を押してきたな。こんな信頼している感を出されたら、サボることなんて無理でしょ。

 

「最後に一つ!絶対に生還すること!これだけは徹底してもらいたい!!」

 

今までよりも強い口調で言うストローグさん。

 

「魔力にスタミナの管理を怠るな!少しでもまずい状況になったらすぐに逃げ帰れ!常に逃げ道を確保しろ!巣穴の外に出さえすれば、ギルドの精鋭回復術師が完璧に治療することを保証する!もう一度言う!絶対に生還しろ!!」

 

ここまで言うのだ。きっと巣穴の中はとても危険なのだろう。辺りに緊張感が漂う。

 

「説明は以上で終了だ!皆がそろって生還することを祈っている!各自、魔石と食糧を持ち、巣穴に入るように!」

 

ストローグの号令で、50人近くの人間が移動し出す。

 

「私たちも行こうか」

 

「もう夜近いけどな」

 

「二、三時間潜って一度戻ればいいんだよ。何日も潜ることになるんだし、今日はそこそこやればいいよ」

 

「魔石取りに行くぞ」

 

人の波について行くと、テントの下にたどり着く。

 

「魔石結構小さいし、俺の鞄に入るだけ入れるか」

 

鞄を開け、魔石を入れていく。

 

「杖も俺が持つでいいよな?」

 

「それはキースにやってもらおうかなー。キースは魔力ほとんど使わないしね」

 

「いいけど...俺、魔力あんまり持ってねぇよ?」

 

「それはカリヤが何とかしてくれるから大丈夫だよ。無くなったら私が代わるから」

 

そんなわけで、杖はキースが持つことになった。食糧もある程度補充し、準備が完了したので巣穴へと向かった。

 

「ゆっくり行こうねー」

 

「先越されちまうぞ?」

 

「それでいいんだよ。どうせ何個も分かれ道あるんだしさ、誰も行ってないところに行こうよ。それに、それなら途中まで戦わなくて済むしね」

 

「それでいいのか...?」

 

「いいんだよ。楽できるなら楽しよーよ。楽するために時間ギリギリに来たんだよ?ここでわざわざ面倒なことしてどうするのさ」

 

「それもそうだな」

 

巣穴の前にやってきた。巣穴の入口はとても広くなっており、半径三メートル近くあった。俺の能力範囲よりもでかい。

 

「こんだけ巣穴がデカいってことはさ...ムカデの大きさって...」

 

「やばそうだね」

 

「いざ出会うまで考えないようにしよう...」

 

「入るぞ」

 

他の人が全員入ったのを確認してから巣穴に入る。内部は入り口よりも広くなっており、ざっと見た感じ半径5メートルくらいだろうか。中は暗く、前を歩く別のグループの光源があるおかげでまだ見えているが、少し離れると暗闇に包まれてしまう。

 

「灯りつけるぞ。カリヤは魔力回復の加速を頼む」

 

「りょーかい」

 

キースが魔光石に魔力を流すと、白い光が巣穴内部を照らす。

 

「やっぱ聖素少ないな...加速してもちょっと遅い」

 

「……魔力減ってる感じしないんだが?」

 

「そもそも魔光石があまり魔力を使わないみたいでさ、消費と回復が釣り合ってるわ」

 

「なにそれエグ...」

 

魔光石だけなら、魔力の心配はない。杭にどれだけ使うかはわからないが、前に使ったのと同じくらいだとしたら、確実に追いつかなくなるだろう。

 

けれど、しばらくは前にいる人たちがやってくれるので、何も問題はない。俺たちは誰も調査をしていない道が出てくるまでそのまま歩き続け、巣穴を進み続けた。




チュチュが依頼内容を隠そうとする理由?
ただ茶目っ気があるだけじゃないですかね?
カリヤくんはそういうのめんどくさがって付き合いませんけど。
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