前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

211 / 213
8306字。

魔王戦三話目です。


託されたもの、止まらぬ二人

「まずはその脚を...!」

 

やることは前も今も変わっていない。カリヤを殺さずに魔王を仕留めること。そのために魔力を削り切ろうとしていたのだが、それはほぼ実現不可能だとわかったため次の行動に出る。

 

それは、脚を無くすこと。あの義足をどうにかして処理してしまえば、魔王は下からの雷を防げなくなるばかりか、移動のために何かしらの魔法を使うか魔力で脚を作るの二択を迫られることになる。どちらにしても魔力は消費するしいいこと尽くめだ。カリヤ自身を傷つけることもないため、今の僕には最適の選択だ。

 

「貰うよ!」

 

刀を鞘に押し込み、義足を狙って音速の抜刀を放つ。

 

「遅いな」

 

しかし、必要最小限の動きで躱されてしまう。カリヤの身体にこの刀が染み付いているため、他の攻撃よりも避けやすかったのだろう。この刀の射程は完全に知られてしまっている。

 

だから、裏をかける。

 

「もう一度...!」

 

刀を鞘にしまい、もう一度押し込む。だが、魔王はここぞとばかりに近づいてくる。それもそのはず。押し込んでからほんの少しのタイムラグを置いてから音速の抜刀が放たれるが、そのタイミングでは魔王に命中することはない。抜刀後の無防備な状態の僕に攻撃できるチャンスだから前に詰めてきたのだ。

 

絶対に当たることはないという驕り。それを断つ。

 

「なっ...⁉︎」

 

当たるはずのない距離。だが、確かに刀は義足に傷をつけた。

 

「いっつつ...クリーンヒットはしなかったか」

 

音速の抜刀、その発生の瞬間に手を離すことで、刀だけが音速で鞘から抜けてすっ飛んでいった。手を離した瞬間に刀の鍔が指に当たってしまったために軌道が僅かにズレてしまい、義足に刺さらず横を僅かに切るだけになってしまったが当たっただけでも御の字だ。

 

「……なるほど、そういうこともできるのか」

 

「戦いは発想力の差で決まる。その点で僕はお前は凌駕する!」

 

跳弾鏡射を発動し、周囲に鏡を発生させる。そしてそこにカリヤの次元収納に入っていた数々の魔法を射出して、義足を狙う。

 

「狙いはコレか。よくもまぁそんな単調な攻撃ができるな!」

 

魔王は魔力の盾を生み出して魔法を受け止め、そして古代の魔法を使って糸のようなものを手のひらから発射して鏡に付着させ、グズグズに溶かしてしまう。鏡が消失してしまったことで、反射させることを前提に撃ち込んでいた魔法がいくつか、遥か彼方へと飛んでいく。

 

「何が単調だって?」

 

超光速弾を次元収納から放ち、義足を撃ち抜く。僕が跳弾鏡射を使った時点で、それを使った攻撃しかしてこないと思い込んだ魔王の思考の方がよっぽど単調で単純だ。

 

「これでへこむだけ...?どれだけ頑丈なんだアレ」

 

完璧にクリーンヒットしたというのに、義足の脛の辺りがすこしへこんだだけだった。ニアのお父さん、リヒトが作ったものらしいけど流石に頑丈すぎる。カリヤの動きに耐えないといけないからなんだろうけど、まさかその頑丈さが僕に牙を向くことになるなんて...!

 

「光速を超える光弾か...もう通用しないと思え」

 

魔王は光すら減速させきることが可能だ。さっきみたいに完璧に不意をつけたなら撃ち抜けるが、警戒されている状態で撃っても止められてしまうだろう。

 

「……なら、次はこれだ!」

 

次元収納の中から大量の刀剣を射出し、魔王に横に飛ばせて回避させる。そして魔王が着地する前に、クミリアとフレアミレアのバフ魔法を同時に使った全力ダッシュで接近し義足に手を伸ばす。一度触れさえすれば、物質転移の魔法で無理矢理剥ぎ取ることができる。多少の攻撃でびくともしないなら、そもそも奪い取ってやる!

 

「あぐっ⁉︎」

 

だが、何かに阻まれ義足に手を伸ばすことは叶わなかった。完全静止した空気の壁に衝突したのだ。加速にだけバフをかけていたせいで、衝突による衝撃から身を守ることができず右手が曲がってはいけない方向にひしゃげてしまっている。側から見たら何も無いように見えるから気づくことができなかった...って、待てよ?

 

「それなら!!」

 

魔王は空気の壁を一枚挟んだ向こう側にいる。流石にこの距離では光速を止められまい。僕は右手を再生させるよりも前に、義足の付け根、皮膚との接合部を狙って超光速弾を放った。

 

メキィッ!と音を立てて義足が軋み、命中箇所があからさまにへこんだ。先程とは違い接合部のめり込みだ。さっきよりも影響度合いは大きいだろう。

 

「やはり、空気の壁は光を通す!」

 

もし空気の壁が光を透過しないとしたら、壁は黒く染まって見え向こう側を見通すことはできないはず。奥の魔王の姿を見ることができたということは、即ち光を通すことを意味する。それは、光の性質を持つ魔法なら透過できるといっても変わりない。

 

「面倒な...!」

 

魔王はそう言いながら口からフッと息を吐いた。次の瞬間、その息によって生じた風が加速され、暴風となって僕に襲いかかった。

 

「んぐっ⁉︎」

 

暴風に吹き飛ばされ、地面を転がる。地面との衝突で生じた痛みに耐えながら、今できた擦り傷とさっきの右手の負傷を魔王から奪った魔法で再生させる。

 

「距離は離されたけど...反撃は、しっかり入れさせてもらった!」

 

減速を発動している間、加速は一つの対象にしか発動させることはできない。先程までずっと魔王は、僕が発動させていたカイの絶対零度から体温を保護するために加速を使用していた。だが魔王が暴風を起こすために一瞬体温維持の加速を解除したことで、僕は一瞬だが自由に温度を操作することができた。

 

義足が絶対零度の温度で凍りつき、地面と完全に結合してしまう。金属は温度の急激な低下に弱い。極度の低温状態時に衝撃を加えると、塑性変形を起こさずにそのまま破壊されてしまう。流石のあの義足でも、例外では無いはず...!

 

「カリヤには悪いけど、破壊する!」

 

クミリアの魔法を使い、空気の腕を作り出して義足を覆う氷を破壊しようと振りかぶる。

 

「ハァッッ!」

 

勢いよく腕を振り抜き、それに伴って生じた空気の腕が氷ごと義足を破壊...することはなく、空気の壁によって遮られる。

 

「義足ごと止めたのか...!」

 

クミリアの魔法で空気の壁を貫通できたのは、壁の奥にある空気を操作して攻撃できたからだ。今回は攻撃に必要な義足周りの空気を丸ごと止められてしまったため、攻撃することができなかったのだ。

 

「まだまだッ!!」

 

空気の壁を貫通できる光弾を大量にばら撒き、義足を狙う。

 

「目眩しか」

 

「っ!」

 

大量にばら撒いた光弾で視界を塞ぎ、その影に紛れて魔王に接近して雷装を流し込むことで氷を電気分解し、空気の壁の内側の圧力を高めて...といったことをしようとしていたのだが、魔王には速度探知があるため簡単に見破られてしまった。

 

……けど、今ので気づけた。魔王の速度探知には穴がある。僕の位置や僕が放った攻撃など、意識を向けたものにはしっかりと探知を働かせて位置を特定して対処してくるけど、隷属の印を刻んだ時のように、意識の範囲外のものは探知できないらしい。

 

そりゃ当然だ。世界全域の情報を全て頭に叩き込まれていて、それでいて思考の加速を使っていないのだから、全ての情報を処理するなんてこと出来やしない。

 

だから、あの攻撃が当たった。

 

「なっ...⁉︎」

 

魔王の凍った義足が、後方からやってきた光弾の命中によって粉々に砕け散った。

 

「ど、どこから...⁉︎魔法の発動兆候はなかったはず...!」

 

「そういえば、魔王は魔法の発生を見抜けるみたいな話カリヤがしてたっけ...じゃあなおさらこの攻撃は有効だったわけだ」

 

「……そうか、あの時の...!」

 

義足を失った魔王は地面に這いつくばりながらも頭を働かせ、今の攻撃の正体に気がついたようだ。

 

魔王を襲った魔法は、鏡の破壊によって反射が起こらず、遥か彼方へと飛んでいっていた光弾だった。魔法が飛んで行った瞬間、この時のために微弱な追尾機能を魔法に付与し、時間差で襲い掛かるようにしていたのだ。実際は飛んでいった複数種類の魔法に全て付与していたのだが、光弾が空気の壁を貫通できるとわかってからは光弾以外を全て解除し、この一撃に絞った。

 

意識さえされていなければこういった搦手も通用する。そんな速度探知の穴を見つけられたのと、義足の完全破壊。この一撃で一気にアドバンテージを得ることができた。

 

「……まさか、こんな小癪な手に苦辛させられるとはな...まぁ良い。此奴の製作スキルでいくらでも脚は作れる。貴様を葬るまでは、この姿でいることにしよう」

 

魔王は魔王の足の付け根から噴き出させ、魔力体の脚を生み出した。

 

「ふむ、雷装とやらを使わない限り脆弱な脚に過ぎないか。だが、貴様を葬るならこれで十分よ」

 

「それはどうかな?僕はそれを待っていたよ」

 

「魔力切れ狙いは疾く諦めろ。無用な疲労を生むだけだ」

 

「それは...やってみなけりゃわからない!」

 

魔法を射出しながら魔王に近づく。微弱な追尾機能を付与させた魔法をいくつかわざと外すなどして魔王の注意を分散させながら接近し、脚めがけて聖剣を振る。魔力で出来た脚なら、攻撃すればするだけ魔力を散らせるはず...!

 

「脆弱とは言ったが、それは相対的なものだ。生身よりも幾分かは硬いぞ」

 

聖剣が脚に命中したが、一切めり込むことはなかった。しかも、聖剣の中に魔力が入り込もうとしてる...⁉︎

 

「せ、『聖剣展開』!」

 

急いで地面を蹴って飛び、その場を離れながら聖剣展開を発動させる。それによって聖剣に纏わりつく微弱な聖素を使い、魔王に流し込まれた魔力から邪悪な力を取り除く。

 

「っ...んなっ⁉︎」

 

着地の際、少し前に僕が射出した刀剣が落ちているところを偶然踏み抜いてしまい足裏に深々と切り傷が入る...どう考えても偶然じゃ無い。魔王に僕の運を弄られたか...ってヤバい無心の弓を構えてる...⁉︎

 

「あぶ   なかった...」

 

なんとかギリギリのところで未来跳躍が発動し、魔王の放った無心の弓の回避に成功する。そして魔王から奪った再生魔法で足を治して...っと、ここで来るか...!

 

「略奪は十分経てば自動返却される...返してもらったぞ」

 

贄の魔法や再生魔法など、魔王から略奪した魔法が時間制限によって自動返却されてしまった。再生はギリギリ間に合ったけれど、もう一度略奪を使うのは厳しいし困ったな...

 

「十分経ったけど、じっくりと嬲ってから殺すんじゃなかったか?僕はまだ死んで無いぞ」

 

とりあえずそう返しながら次の策を考える。一つやることは決まっているが、それをどうやって決め切るか...

 

「ああ、だからもう終わりだ」

 

来る。また、全減速解除からの加速攻撃が来る。しかも、今度はおそらく万が一にも隷属の印を描かれないように細心の注意を払って攻撃してくるだろう。さらには失った魔力の補給もしてくるはず。これら全てを対処するには...これしかない!

 

僕は二つの行動を同時に行う。一つは、とある物を二つ次元収納から取り出すこと。もう一つは、二つのスキルの発動だ。

 

『聖剣納刀』

 

次元収納の中から物を取り出しながら聖剣を元に戻す。そして即座に聖剣を地面に突き刺した。

 

「『聖域展開』!!」

 

周囲の速度が全て戻ったのと同時に、地面に突き刺した聖剣を中心に聖域が広がる。魔王が攻撃してきたならば、これで魔王の魔力回復を阻止できるはずだ。

 

だが、魔王の攻撃は避けられない。

 

「ッ 」

 

光速で放たれた魔王の蹴りが僕の頭を蹴り砕いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……捉えた」

 

「っ...⁉︎」

 

魔王の蹴りは直前で防がれた。そして、右手で持っている腕輪を魔王の魔力体の脚に押し付けた。

 

「なっ...魔力が...⁉︎」

 

腕輪を押し付けた脚が消失した。いや、腕輪に吸収されたのだ。そして魔王が動転しているうちに左脚も削り取ってしまう。

 

「クソッ、その腕輪は...!!」

 

一時的に脚を失った魔王は地面に落ち、すぐに僕から距離取った。これ以上魔力を吸収されないように。

 

「……チッ、そろそろ不味いか...」

 

また全ての速度が止まる。僕は聖剣を地面から引き抜き、右手で持って携える。

 

「どちらも此奴の魔道具の仕業か...!」

 

「ああ、指輪の方はステラから借りたよ。無断だけどね」

 

魔王の攻撃を防いだのは、ステラの魔力が込められた指輪。そして、魔力体を削り取った腕輪はカリヤが常に左腕につけていたものだ。長い間つけられていたこの腕輪は、そのせいもあってかカリヤの魔力を溜め込む効率が恐ろしいほど良くなっており、魔力体に触れれば問答無用で魔力を取り込むようになっていた。魔力切れを狙うならこれで削り取るのが一番効率が良い。だから義足を破壊して魔力体を生み出させたのだ。

 

「さて、今ので魔力の大部分を取り込めたと思うけど、あとどれくらい持つかな?」

 

聖域展開のおかげで魔王に魔力を回復させずに加速を切り抜けることができた。このまま魔力を削り切ることができれば、あるいは...

 

「回復はさせないよ!」

 

カイの熱操作をフルに使い、魔王の周囲の温度を急激に低下させる。一つしかない加速枠はこれで潰せる。魔力回復加速なんてさせない。

 

そもそも、魔力回復のために魔素の速度を戻したなら聖剣の力を使えるようになる。聖杖を使って魔王の周囲の魔素ごと魔王を反転させ滅することができるようになるから、魔王は軽率に魔力を回復させることができない。

 

しかし、また全ての減速をやめて加速だけ使われたら、この作戦は通用しなくなる。けれど、多分その心配はしなくていい。さっきの「そろそろ不味いか」という口ぶりからして、魔王は長時間加速を使うことができないと思われるからだ。いや、長時間減速を解除していられないといった方が正しいかもしれない。

 

これはあくまで予想でしかないが、おそらく魔王はとある速度を減速させている。それは、カリヤの意識。抵抗して表に出ようとするカリヤの意識を速度操作を使って押し留めているのだ。減速を解けば、カリヤは表に出てこようとする。だから長時間加速だけを使うことが出来ないのだ。

 

勝利条件が増えた。一つは魔王の魔力切れ。もう一つは、カリヤの意識の復活。なんとかしてカリヤの意識を呼び覚まし、速度操作の制御を取り戻してくれれば...そんな勝ち筋が見えてきた。

 

「魔力全部、奪わせてもらう!」

 

右手で聖剣を持ち、左手で腕輪を持って走る。魔王が放つ魔法を次元収納から出した魔法で弾き飛ばし、聖剣で切り裂き、前へと進む。

 

「同じ手は食わぬ!」

 

魔王は魔力体で足を生み出してから後ろへと飛び退き、そのまま全速力で走り出した。

 

「逃がさないよ!」

 

ここまでやって逃すとか有り得ない。絶対零度で空気を凍らせ魔王の逃げ道を塞ぐ。

 

「撃ち抜け...!」

 

次元収納に残っている超光速弾の残りは三発。それを全て放出し、両脚と左手を狙って射出する。

 

「ぐっ...!」

 

たとえ空気を止めたとしても、光弾が元になっている超光速弾は止められない。何事にも阻まれることなく魔王の手脚に命中し、その魔力を散らす。

 

「カリヤの力を使っているのに弱すぎじゃないか?こんな奴に殺されそうになっただなんて笑ってしまうよ!」

 

飛び散った魔力を腕輪で吸収した僕は、そのまま聖剣を振って魔王の左腕に攻撃する。

 

やはり、体重を支える必要がないためか脚を形作っている魔力体よりも幾分か脆い。思いの外スルリと刃が入り、その腕を傷つける。そして、赤い鮮血が舞う...血⁉︎

 

「生身⁉︎」

 

「贄の礫」

 

左腕から吹き出した血が空中に静止し、石飛礫のような形になって飛んでくる。

 

「魔力体にしなければ、それだけで済む!」

 

普通に腕を切らせて再生するのと、魔力体の腕を腕輪で丸ごと削り取られるのだと、どう考えても後者の方が魔力消費が多い。より最小限の消費でかつ攻撃もできる最善手をここで出してくるのか。

 

「それなら...!」

 

飛んでくる血の雨を、熱操作で空間ごと凍り付かせて無効化する。そして凍った空気の壁を作ることで魔王からの贄魔法による攻撃をシャットアウトし、その裏で弓をつがえる動作をして無心の弓を発動させる。

 

「甘いッ!」

 

脚を狙って無心の弓を放つが、魔王の動きを読み違えて僅かに外れてしまう。いや、よく見たら魔王の魔素の動きと目に見える動きがズレているな。光の速度を僅かに減速させることで、僕にほんの少し前の位置を見させて外させたのか。

 

「けど、跳んでくれたね!」

 

魔王は地面を蹴って無心の弓を回避した。その着地の隙を突くために走り出す。

 

「不運も...もう慣れた!」

 

ズルッと足が滑りそうになったがクミリアとフレアミレアのバフを総動員することでなんとか体勢を立て直し魔王に近づく。

 

「消し飛べ...!」

 

スライディングで魔王の下に潜り込みながら腕輪を放り投げる。そして磁力操作を使い放り投げた腕輪を脚にぶつけて魔力を奪い取る。

 

「あと少し...そしてチャンス!『雷装』!」

 

着地の直前で脚を失った魔王は地面を転がっていた。スライディングの体勢から体を起こした僕は、急いで魔王に飛びかかり雷装を流し込みにかかる。

 

「させる...かァ!」

 

魔王は腕から魔力を噴射することで推進力を得て僕の攻撃を回避した。その魔力はきっちり回収しておくが、距離を取られてしまったな。

 

「あとどれくらいで終わるかな。一回?二回?それとも、もう減速も限界かな?」

 

腕輪に新たに貯蔵した魔力の量からして、カリヤの魔力はもう一割も残っていないはずだ。この全世界停止にどれほどの魔力を使っているのかはわからないけれど、もうそろそろキツくなってくる頃だろう。

 

ならば、やることは一つ。加速に切り替え、魔力を回復させながら僕を葬る...そうだろう?

 

……来る。なんとなくの直感がそう告げてくる。クミリアの力を引き出しているから、雷装で五感の強化を通り越した第六感でも発揮されているのだろうか。

 

おそらく、ここが転換点。

 

僕に魔王の攻撃を必ず防ぐ策はもう存在しない。隷属の印は描けないだろうし、過去改変の指輪は使い切った。

 

やるべきことは全てやる。最大限のバフを付与し、聖剣を地面に突き立て聖域展開の用意をし、そして最後にレストの力を引き出す。彼の持つ慣れの極致。あの超感覚で魔王の攻撃を避けたり受け止めたりすることができれば...これ以上はもはや運に身を任せるしか無い。

 

魔王に確実に不運を付与されるだろうが、関係ない。どんな不運に見舞われようとも、魔王に打ち勝つ運命を必ず掴み取ってやるつもりで身構える。

 

次の瞬間、世界の減速が解かれる。

 

『聖域展開』

 

聖域の展開と共に、光速の攻撃が僕に向かって放たれる。

 

そして...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光の速さの一撃が、天から()()()に降り注いだ。

 

「アグッッ!!?」

 

僕も魔王も、ここがどんな場所かまるで忘れていた。

 

天の怒りの降り注ぐ荒野。

 

僕は雷装を発動させていた。そして減速は解除されており、更には僕に付与されていた不運...雷が直撃する条件が揃っていた。

 

たしかにこれは不運だ。雷の光によって、僕の目が見えなくなってしまうのだから。対して魔王は目が見えなくなっても速度探知でいくらでも見ることができる。ああ、理不尽な不幸だ。

 

だがしかし、見方を変えればどんな不運も幸運となる。

 

魔王への雷の直撃。雷装を使えない魔王にとって、この直撃は手痛いダメージどころの話ではない。完全に痺れてしまい、一時的に身動きが取れなくなってしまった。

 

そして、僕への雷の直撃は、一時的な雷装の強化へと結びついた。カリヤの雷装を喰らった直後のクミリアのように、異常なほどの出力の雷装が僕の体を駆け巡る。

 

ゆえに、魔王より一手先に動くことができた。

 

「ハァッッ!!!」

 

聖剣を地面から抜き、勢いよく振り抜いた。

 

カリヤの左腕が斬り飛ばされた。グルグルと腕が宙を舞い、少し離れたところにボトっと落ちる。

 

「き、さま...!!」

 

魔王は痺れる身体を酷使して魔法を発動させると、失った左腕が再生する。脅威の再生能力だ。だが、通常通りの時間が流れている今治したのは失敗だった。

 

僕は聖剣の柄から手を離し、鞘の方を持った。そして、柄を再生直後の魔王の左手に握りしめさせた。

 

次の瞬間、聖剣の反発力が魔王に流れ込み、その反射で魔王は柄から手を離す。

 

何のためにこんなことを...とでも言いたげな表情浮かべる魔王だったが、今のがトリガーだ。

 

聖剣を通じて、女神の力を左腕に流した。神の使いの左腕には、神の使いの紋章が記されている。その紋章を活性化させたのだ。

 

「な...貴様...まさか...!」

 

魔王は左腕を押さえながら呻く。

 

「もう夢は終わりだ。さっさと起きて世界を共に救うぞ!カリヤ!!」

 

魔王の内に眠るカリヤが今、目を覚ます。




とうとうカリヤが復活...ライトとの共闘なるか?
次回を乞うご期待です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。