前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8411字。

戦闘シーンはちょっと少なめかも。


ムカデ蔓延る巣窟

「そういえばだけどさ、チュチュ」

 

「なにー?」

 

巣穴を歩きながら話す。

 

「チュチュって虫ダメじゃなかったっけ?ムカデ大丈夫なん?」

 

軍隊虫の時、相当錯乱していた気が...

 

「ムカデは平気だよー。ちっさくてカサカサしてるやつがダメなんだよね」

 

「大きいのは大丈夫ってことか?巨大な虫って逆に怖くね?」

 

「デカいと普通に死の恐怖を感じるからさ、虫じゃなくて敵って思っちゃうんだよね」

 

「怯えるのは変わりないのか...」

 

「それよりもさ、なかなか調査中じゃないところ見つからないねー」

 

露骨に話を変えてきたぞこいつ。でも確かに、まぁまぁな時間歩いたが杭がない道は未だに見つけられていない。

 

「結構奥の方まで行かないとなさそうだな。もっと進むぞ」

 

「キース、あれ」

 

先頭を歩いていたギブドが急に立ち止まり、斜め上を指差す。

 

「あそこに道がある。まだ誰も行ってないみたいだ」

 

「本当だ。でもあそこには行けないよな...」

 

ギブドの指差した方には確かに道があったが、その入り口はここから4メートルほど上にあり、普通には進めないところにあった。他のグループもこの道には気づいていただろうが、進む方法がなくて断念したのだろう。

 

「いや、行けるぞ。ちょっと待て」

 

床に手をつく。

 

「土よ、流動しその形を変えよ!」

 

地面に魔力を流し込み、土を流動化させる。土を操作し、上に見えている入り口に向かって坂を作っていく。

 

「……よっと。これで行けんだろ」

 

「なるほど、これなら普通の人には行けないところにも行けるな。でも魔力は大丈夫か?」

 

「んー...多分大丈夫」

 

「そっか、じゃあ行こう」

 

土流で作った坂を登り、誰も通ってない道に入る。

 

「やっべ杭打つの忘れてた。赤が調査中だっけか?」

 

「そうそう。あと、そこに黄色も打たないとな」

 

キースが地面に杖を突き立て、魔力を流す。杖を地面から離すと、赤い杭が打たれていた。今度は壁に斜めに突き立てると、魔光石を右に少し回してから魔力を流し杭を打つ。杖を離すと、黄色の杭が斜めに打ち込まれていた。

 

「まぁまぁ魔力食うなこれ...十数回もやってたら、いくら回復速度を上げてても尽きるな」

 

俺の今の加速では、魔光石の消費と釣り合うくらいまでしか回復速度を上げられない。杭を打って消費した魔力の回復は、魔光石に魔力を流すのをやめない限りできない。

 

「尽きる前に言ってね。私が代わったげるから」

 

「わかった。進むぞ」

 

杭を打った方と反対側に進んでいく。少しだけ坂になっているようで、ほんの少しずつ上へと向かっているようだった。

 

「この道、どこに向かってんだ?」

 

「途中で下り坂になるか...地上に出るかだな」

 

「微妙だけど風を感じる。多分外に繋がってると思う」

 

勾配自体は緩いが、確実に上へと向かっていた。

 

「これは...やっぱり外に出るみたいだな」

 

キースが魔光石に魔力を流すのを止め、消灯する。しかし、真っ暗にはならなかった。巣穴の外から星光が少しだが入っているのだ。

 

「別の出口...拠点に戻ったら連絡しておかないといけないな」

 

「だな。とりあえず中に戻ろう。魔石を設置するのを忘れないようにな」

 

外に出るという選択肢はない。拠点がどこにあるかわからないから、外に出ても何もできないからだ。それに、魔石を置き、杭の色も変えないといけないため、ほっぽり出して外に出ることもできない。

 

「十メートル間隔...これくらいだな」

 

魔石を壁に取り付けていく。爆発するみたいだけど、衝撃を加えたら勝手に爆破...みたいなことになったりしないよな?怖いので、慎重に設置していく。

 

「よくそんな等間隔に置けるね」

 

「速度探知があればこれくらい簡単だぞ。秒速がわかるから距離割る速度の計算で出せるし、極論秒速十メートルに加速して一秒ごとに置いていけばそれでいいわけだし」

 

「ほんと便利な魔法だねぇ...」

 

「魔法じゃないんだけどな」

 

「カリヤ後ろからくる!」

 

「ふぁっ⁉︎」

 

急にギブドが大きな声を出したためびっくりするも、ダガーを抜き、後ろに向かって投げる。

 

「危なっ⁉︎」

 

チュチュの頬を掠るぎりぎりのところをダガーが飛んでいき、後ろから来ていた何かに刺さる。

 

「ちょっと急になにを「ムカデ来てる!戦闘準備!」了解!」

 

一瞬で全員が戦闘モードに切り替わる。

 

「キース!その杖俺に渡せ!」

 

「お、おう!」

 

キースが杖を放り投げる。魔力が流れなくなったことで光が消えるも、俺が握るとすぐに光り出す。

 

「俺は援護に回る!三人とも頑張れ!」

 

「人任せ⁉︎」

 

片手が杖で塞がれているんだからしょうがない。けれども、そうこうしている間にムカデがこっちにやってくる。ムカデは体長十数メートルほどで、横幅も二、三メートルはある。まさに巨大ムカデとも言うべき魔物が頭にダガーを刺したままカサカサと近づく。

 

「ステラ!弓!」

 

「あいよ!『氷装・矢』!」

 

氷の矢が山なりに飛んでいく。

 

「あっ」

 

山なりに飛んでいった矢は、途中で地面に突き刺さる。

 

「何やってんだバカチュチュ!」

 

「勾配あるの忘れてたー!」

 

「やばい挟まれた!下からも来てる!」

 

どんどん状況が悪くなる。というかこの狭さで魔物に挟まれたら、普通に圧死しかねない。

 

「まずは上だ!そいつを倒して上に逃げるぞ!」

 

「じゃあ俺は下を足止めする!みんな上を頼む!」

 

片手は塞がっているが、もう片手はまだ自由だ。それに、減速させれば他の誰かが足止めするよりも長く時間を稼げるだろう。

 

「こっから先は一歩も通さねぇぞ!減速開始!」

 

鞭を取り出し、ムカデを減速させながら思いっきり引っ叩く。SMAAAASH!という文字が出てきそうなくらいのいい当たりで、ムカデが壁に勢いよく弾き飛ばされていく。

 

「クリティカル!さてもう一度...うわぁ」

 

嫌なものが見えた。具体的に言えば、下からやってくる大量のムカデだ。道を埋め尽くすほどいやがる。キモすぎてやばい。

 

「やばいやばいやばい上はどうなって⁉︎」

 

バッと上を見る。もしまだ倒せていなければ土流で道を塞ぎ、三人に加勢しようと思ったのだ。

 

「カリヤ避けて!」

 

「ふぇっ⁉︎」

 

上からムカデが何故か滑り落ちてきていた。何が起こったのかまるでわからんが、反射的に横に飛び退く。落ちていったムカデは下にいる別のムカデを巻き込んでいき、その体長ゆえに巣穴を塞ぐ。

 

「よし作戦通り!」

 

「何が作戦だ偶然だろ!」

 

あーなんとなくわかったぞ。多分だけど、チュチュがさっき撃って地面に刺さった氷の矢が何かしたんだろう。凍った地面を踏んで足を滑らしたとかだな。微妙ではあるが坂なことには変わりないので、凍った地面がうまく刺さったのだろう。そもそも坂じゃなければチュチュの矢は当たっていただろうけど。

 

「復帰してくるぞ!」

 

奥にいたであろうムカデが、道を塞いでいたムカデを食い破りこちらに迫ってくる。いざとなれば仲間も食うとかほんと畜生すぎる!

 

「そうだ氷!ギブド頼む!」

 

「了解。『路面凍結』!」

 

地面が凍りつき、ムカデたちが転倒していく。けれど、ムカデ畜生どもは転倒した仲間を踏み抜き乗り越えようとしてくる。

 

「超えてくるぞどうすんだ!」

 

「俺に任せろ!『雷装・鞭』!」

 

一か八かの賭けだが、この場を切り抜けるにはこれしかない。粉塵爆発だけはやめてくれと願いながら、凍った地面に鞭を当てる。鞭に流れる電流が、氷を通してムカデたちに流れていく。けれど、全滅させることはできずさらに奥からムカデはやってくる。

 

「もう爆発させるしかないんじゃないの⁉︎」

 

「ば、爆発オチなんてサイテー...って言ってる場合じゃねぇ!もうそれしかねぇから早く上に行くぞ!外から撃ち込む!」

 

『雷装・矢』

 

殿を担当し、三人が外に出るまで待つ。鞭をしまい、矢を素手で投げながら自分も後ろに下がっていく。

 

「みんな出たよ!カリヤも早く!」

 

「了解!...はうっ⁉︎なんだこの氷⁉︎」

 

氷に足を滑らせてしまう。

 

「ごめんそれ私のー!」

 

「テメェ後でおぼえてやがれ後始末ぐらいやっとけよおい!」

 

『雷装』

 

なんとか立て直し、最高速度で巣穴を抜ける。

 

『火装・矢』

 

「衝撃に気をつけなァ!」

 

巣穴から飛び出し、地面に足をつける前に矢を矢筒から引き抜き、炎をつけて巣穴内部に向かって投げ込む。

 

「『衝撃吸収』!」

 

ギブドが巣穴と俺たちの間に入り大盾を構えた瞬間、巣穴が爆発する。密閉空間だからという理由だけでは説明できないくらいの大爆発が起き、轟音が響く。魔石で連鎖爆発したのだろう。山のほんの一部分が爆発によって崩落し、巣穴が潰れる。

 

「…ヨシ!」

 

「全然よしじゃねぇけどな。こっからどうするよ」

 

出てきた巣穴は爆発によって消失した。戻ることはできない。

 

「はぁ...なんとかして拠点に戻るしかないな。時間も時間だし」

 

「だな」

 

さて、どうやって戻ろうか...戦いの興奮というか緊張が抜けきっていなくて変な気分になっているな。頭があまり働いてくれない。

 

「適当な木でも切り倒してまずは方角を確かめないか?」

 

キースがそんなことを言う。年輪を見て方角を調べようということだろうか?実はそれは嘘だったみたいな記憶があるけど、この世界だと本当になるのかな。

 

「方角がわかったところで何もできないでしょ。ここがどこかもわかってないんだしさ」

 

「でも大体の目星はつくだろ?それに、山の位置も参考になる。拠点は山の東側にあったんだから、あそこに見えてる山の頂上がどの方角にあるかで見当をつけることができるはずだ」

 

「なるほど確かに」

 

「自然破壊するのはちょっと気がひけるが...やるしかないだろ。おらよっ!」

 

ハルバードを横薙ぎに振るい、近くにあった木を一本切り倒す。

 

「よし、年輪は...なるほど、こっちが北か」

 

年輪を見て、キースがそう言う。間隔が広い方を指差して言ったため、一瞬そっち南じゃね?と思ったが、この地点だと太陽は北の方を通っているのを思い出して納得した。この山は世界の南半分の方に位置している。もとの地球の南半球みたいなものなのだ。

 

「だから山は西にある...と」

 

「つまり俺たちは山の東側にいるってことだよな?面倒になったな...」

 

山の北や南、西側なら、東側に向かうだけで自然と拠点にたどり着けただろう。けれど、東側にいる時は話が変わってくる。北と南、どっちに拠点があるのかわからないのだ。進む方向を間違えれば大きなタイムロスになり、魔物に襲われる危険も高くなる。

 

「煙が見えたらそこだってわかるんだけどな...暗いし、ここからだと木に隠れて見えん」

 

「…いや待てよ?拠点を見つけるだけなら簡単じゃね?」

 

「そうか?」

 

「木に登ればいい」

 

俺たちは巣穴から出るまでずっと坂を登っていた。だから、最初に入った入口や拠点よりも高いところに出ている可能性が高い。木に登れば、見通しが利くようになるだろう。

 

「木に登る...か。確かに、拠点はここから下にあるだろうから、上から見るのは合理的だが...煙は暗くて見えないだろうし、火も小さくて見えないと思うぞ」

 

「見るのは火の光じゃない。拠点は聖域に造られてるんだぞ?もっともーっとわかりやすい目印があるじゃねぇか」

 

杖をキースに手渡し、荷物や装備を下ろしてから木に登る。

 

「よいしょっ...頂上到着っと」

 

木の頂点にしがみつき、あたりを見渡す。

 

「やっぱ火は見えないよな。じゃあ作戦通り...『マナ探知』」

 

視界が切り替わり、赤と青の点が見えるようになる。

 

「んー...ないな。もっと下の方なのかな?木で隠れててよく見えない...」

 

聖域特有の聖素だけの空間を探すも、見つからなかった。おそらく、木などで先が見えなくなっているか、崖があってその下が見えてないかの二択だ。

 

「もっと高いところなら...!」

 

木の枝に乗り、能力を発動させながら一気に跳ぼうとする。木から跳んでもっと高いところから見渡せば、拠点も見えるようになるだろう。

 

「あだっ、危ねっ⁉︎」

 

ぐっと足に力を入れた瞬間、木の枝が折れてしまう。なんとか幹を掴むことができたが、危うく落ちかけるところだった。危ない危ない。

 

「この枝なら耐えてくれるだろ...よっ!」

 

太い枝に移動し、そこから跳ぶ。自らの速度を加速し、重力による下方向への加速の速度を遅らせる。

 

「ここからなら...!」

 

十分なほどの高さに達した瞬間にマナ探知を発動し、青い点の密集地隊を探す。

 

「あった!あとは落下をなんとかするだけ...!」

 

聖域、拠点の場所を見つけた。すぐにマナ探知を解除し、視界を元に戻す。

 

「減速減速減速減速ゥ!『微風』!」

 

自らの速度の加速を止め、落下速度の減速を続ける。さらに下に加速した風を放ち、落下速度を少しでもいいので落とす。

 

「今度はノーダメで耐える!」

 

最初にこの世界に来た時のことを思い出す。あの時はほとんどなすすべもなく落ちただけだが、今ならなんとかできるはず!

 

落下中、一瞬だけ枝を掴んで減速し、幹を蹴って軌道を変える。そして唯一持ち込んでいた鞭を取り出し、太い枝にうまく投げて巻きつけ、さらに速度を落としながら着地する。

 

「よし!無事生還!」

 

「おぉー帰ってきた。どうだった?」

 

「見えたぞ。あっちの方向にあったわ」

 

「了解だ。早く行こう」

 

聖域の見えた方向に歩いていく。本来暗い中山を降りるのは危険なのだが、魔光石のおかげで十分なほどの明かりが手に入るので、特に問題なく移動することができていた。

 

「俺の見つけた聖域が、実は拠点の聖域じゃなかったっていうオチはないよな...?」

 

「あー、たしかにあるかもねー」

 

「もし別の聖域だとしても問題ないだろ。安全な聖域で夜を越して、朝になってから探しに行けばいいし」

 

「確かに、それでもいいのか」

 

移動を続ける。途中、崖にぶち当たったが、土流を使ってなんとか降りた。距離的にはあとちょっとのはず...

 

「あったー!焚き火だよ焚き火!」

 

やっと拠点にたどり着いた。途中で魔物に襲われなかったのは、もはや奇跡とでもいうべきほどの幸運だろう。

 

「ようやく戻ってこれたな...」

 

「ああ、災難だった」

 

「眠い...早く報告だけして寝ようぜ」

 

拠点の中に入る。聖素100%の空間に入ったことで、魔力が超高速で回復していく。それだけで、安全地帯に帰ってこれたんだという実感がした。

 

「き、君たち!巣穴の中に入って出てきてないはずだ!なのにどうして外から来たんだ⁉︎」

 

ストローグが驚いたような表情をしながらこちらにやってくる。

 

「それがですね...」

 

ストローグに、高いところにあった横道に入ったこと、その横道が地上に繋がっていたこと、そこでムカデに襲われて、巣穴内部を爆破させることでなんとか突発したことを伝える。その最中、ダガーを一本ムカデに突き刺したまま爆破させてしまったのを思い出し、軽く悶絶しかけたのは内緒だ、

 

「別の入口か...可能性は考慮してはいたが、やはりあったか」

 

「一応考えてはあったんですね」

 

「今回の巣穴は規模がでかかったからな。入口が一箇所なのは不自然だと思っていたんだ」

 

「じゃあ他にも入口がある可能性も...」

 

「ないわけじゃない。ギルド側で調査するようにしよう」

 

どうやら、ギルドのほうで山狩をしてくれるらしい。そして、俺たちは巣穴の調査を優先してほしいとのことだった。

 

「とりあえず今日は休むといい。随分と危険な戦闘もあったことだし、移動の疲れもあるだろう。ゆっくり休み、英気を養ってくれ」

 

ストローグはそう言うと、ちょうどその時巣穴から出てきた冒険者たちの方にかけて行った。

 

「あの人も大変だな。ってか、もう夜だってのにえらく元気だな」

 

「あれは多分なんかの魔法使ってるね。睡眠を必要としなくなる魔法か、超短時間で睡眠したことになるやつか...絶対ずっと起きてる気だね」

 

「エグぅ...なんか寝るの申し訳なくなってくるな」

 

「あの人が休めって言ったんだからいいでしょ」

 

それもそうだなとチュチュの意見に賛成し、俺たちはご飯を食べたのち、テントに入ってすやすやと寝入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新しく判明したことを伝える!この場にいるものだけでもいいので聞いてくれ!」

 

朝、俺たちが巣穴に入ろうとする直前、ストローグが大きな声で話し出した。何の話をするんだろう?

 

「まず、一つのグループが地上へと向かう道を見つけた!他にも地上へと続く道があるかもしれないと我々は判断し、ギルド側で調査した!その結果、もう二つ別の入口を発見した!調査の障害になりうるとの判断から、入口から一番近くにあった分かれ道までの間を先に魔石で起爆し、塞がせてもらった!」

 

はっや。仕事が早すぎてびっくりしたわ。有能すぎん?

 

「そしてもう一つ!いままでに現れていたムカデと種類が違うことが判明した!」

 

種類が違う...?

 

「以前現れたムカデと今回現れたムカデの相違点は一つ!今回のムカデは毒を放つ!毒は遅効性なので、すぐに命を落とすことはない!もし浴びてしまったら、すぐに拠点まで戻り、治療を受けるように!」

 

毒なんてもってたのか。昨日は出してこなかったけど、もし使ってきてたら危なかったな...

 

「これが最後だ!ミツヤくん、あれを!」

 

「了解しました」

 

ストローグの斜め後ろに立っていた青年が前に出てきて、持っていた杖の底を地面に当てる。

 

「諸君!これを見てほしい!」

 

そうストローグが言った瞬間、突然空中に点のようなものが浮かび出した。

 

「これは、諸君らに打ってもらった杭の位置を映したものである!さらに、諸君らからの聞き込み調査から得たデータと、魔石の位置のデータを加える!」

 

点と点が曲がった線で結ばれていく。

 

「これが今現在判明している巣穴内部のマップだ!これを見てもらうとわかるように、巣穴の地上に近い部分はほとんど探索済みになっている!諸君らの活躍のおかげだ!」

 

おぉ...という声が辺りから聞こえる。ほんとこの人、その気にさせるのがうまいな。

 

「しかし、未だ探索されていない道があることは確かだ!それにまだ奥がある!引き続き調査をお願いしたい!」

 

空中に展開されていたマップが消える。

 

「明日もこの時間に報告会を行う!では、諸君らの活躍を期待している!何度も言うが、絶対に生きて帰るように!」

 

そう言うと、ストローグは高台から降り、テントの中に入っていった。

 

「俺たちが休んでる間も、結構な人が探索してたんだな」

 

「まぁ人数が人数だしね。どんな時間でも誰か1グループくらいは巣穴にいるんでしょ」

 

「俺たちも行くぞ。なんとなくだが地図は覚えた。一番近くにあった誰も調査していない道にさっさと行くとしよう」

 

「さっきの短い間でよく覚えれるな...」

 

「地理を知ることは冒険者にとって大事なことだからな。出来るだけ早く覚えられるに越したことはない」

 

「そういうもんなんか」

 

巣穴の中に入る。何回かあった分かれ道を左、左、真ん中、右と歩いて行き、次の分かれ道にたどり着く。右か左の二択だ。

 

「ここはどっちに行くんだ?」

 

「…あれ?おかしいな。ここだったはずなんだが...」

 

「えっ、ここ?」

 

「もしかして間違えた?」

 

「いや、俺たちがくる前に誰かが来たんだろう。ほら、調査中の赤い杭が打ってあるだろ?」

 

「本当だ。仕方ない、別の道に進むしかないな」

 

「ああ、左の道ならもっと奥の方に調査されてないところがあったはずだ。そっちに行こう」

 

左の道に進もうとした、その時。

 

「ギャアアアッッッ!!!」

 

とても人とは思えない叫び声が、右の道から聞こえてきた。一瞬トレントの叫びかと勘違いしたが、確実に人の声だ。

 

「この声...!」

 

「間に合うかわからんが助けに行くぞ!」

 

「カリヤならどうせそんなこと言うだろうなと思ってたよ!加速お願い!」

 

自分含め4人の速度を加速させ、右の道を走る。

 

「ア゛ア゛ア゛アアァァァァァァァァ...」

 

声でヤベェってわかる!

 

「悪いみんな俺先に行く!」

 

『雷装』

 

返事を待つ暇もない。雷装を発動し、急いで声の発信源に向かう。杖がないせいで何も見えないが、速度探知のおかげでなんとかぶつからずに走れていた。

 

「だ、だれかあの人を助けて!」

 

「死んじゃう!」

 

杖を持った女の子たちの声が聞こえる。その視線の先には、ムカデに貪るように噛みつかれている男の姿があった。

 

「あれか!今助ける待ってろ!」

 

『雷装・矢』

 

矢を二本取り出し、電気を流しながら目に思い切り突き刺す。痛みに悶えたムカデが口を開けたので、なんとか男を引っ張り出す。まだ下半身が繋がっていたが、このままだと出血多量で死ぬだろう。

 

三人がここに辿り着くのには時間がかかる。なら、俺ができることはただ一つ。

 

「そこの君たち!この人を外に運んであげて!」

 

「「う、うん!」」

 

片方の女の子が男に緑色の光を振りかけたのち、二人で男を肩で支えながら歩いていく。

 

「俺一人...か」

 

俺の目の前で死人は出さない。ストローグも、絶対に生きて帰るように言った。こんなすぐに、その期待を裏切ることなんて、誰ができようか!

 

「時間稼ぎ、行きますか!」

 

俺は一本になったダガーを構えた。




戦闘シーン書くのがなかなかうまくできなくて、ついついそれ以外のシーンに文字数を使ってしまう...

次回は戦闘してくれる...はず!
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