前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8062字。

戦闘シーン多め。
心情描写も多めです。


加速する思考の中

「さぁ来い!」

 

ダガーを構え、いつでも攻撃できる体勢をとる。しかし、ムカデは俺のことなんか目もくれず、男を支えて歩く女の子たちの方に向かっていく。

 

「そっちに行くんじゃねぇ!」

 

間に立ち塞がり、ダガーで斜めから高速で斬りつける。けれど、ムカデは怯むことなく突進を続けたため、左腕の盾を押しつけて無理やり軌道を逸らす。

 

「お前の相手は俺だと言ってんだろ!」

 

なおも女の子の方を狙うムカデの足に鞭を引っ掛け、思いっきり引っ張って足をもつれさせて転ばせる。おそらく、こいつは血の匂いに引かれている。視界内に入っているうちは襲いかかり続けるだろう。

 

「もっと目を潰す必要があるみてぇだな」

 

ここにきてすぐ、ムカデの目に矢を刺しこんだが、ムカデは複眼だ。中心に矢を刺しても、視界を全て奪うことはできない。

 

「ならまずは足を止める!『路面凍結』!」

 

今朝、ギブドに教えてもらった魔法を発動し、ムカデの足元の地面を凍らせる。ムカデは立ち上がろうとするが、滑ってしまいすぐに転んでしまう。

 

「次は目だ!『氷装・矢』!『二の矢』!」

 

弓を引き絞り、チュチュの動きを見て、独学で得た二の矢を使い氷の矢を放つ。やや歪な軌道で矢は飛んでいくも、見事に目に命中し、その周囲を丸ごと凍らせる。これで目は潰せたはずだ。

 

「次はどこを狙えば...あっぶねぇ!」

 

今のムカデは目は見えないが、音は聞こえる。間抜けにも思考が口に漏れていた俺の声を頼りに、ムカデが唾のようなものを吐き出してきた。紫色をしていたそれは、見るからに毒だった。慌てて転がるように避ける。

 

「声に出さないようにしないと...ってまた言っちゃってるし!癖になってんなもう!」

 

動けなくても毒は吐けるので、ムカデは何度も唾を吐き出してくる。それを何度も避けながら、次の手を考える。これからはあまり考えを声に出さないようにしないとな...

 

とりあえずまず、稼がないといけない時間を考えよう。女の子たちが男を連れて逃げるのに必要な時間は、ここから見えなくなる時間と考えてもあと30秒はかかる。今はムカデのヘイトがこっちに向いているからなんとかなっているが、もしムカデが俺を狙うのを諦め、あの子たちを狙いだしたら終わりだ。なんとしてでも、ムカデを引きつけないといけない。

 

30秒なら...雷装を使ってもいいかもしれない。でも、この距離から安全に弓矢を撃ち続けるのもありだ。無理に近づいて、思わぬ反撃をもらう可能性を考えれば、遠距離攻撃も悪くない。

 

いや、最適解を探している暇はない!そんなこと考えてる暇があったら、俺の速度を活かしてひたすら攻撃しろ!手数で足りない技量を補強しろ!完璧で究極の一なんか狙うな!0.01だろうが永遠に叩き込めば究極を超えられる!速さで全てを振り切るのだ!

 

『雷装』『雷装・矢』『雷装・剣』

 

三種類の雷装を発動し、秒速40メートルで走る。まず、手に持っていた矢を路面凍結で凍らした地面に突き刺し電流を流す。氷を通して高圧電流がムカデにも流れ込む。

 

次に、ダガーを持ってムカデの足を切りにかかる。氷の矢で作り出した氷とは違い、路面凍結て作り出した氷は永遠ではない。電気の矢で常に電気を流している今、路面凍結で凍らした地面は少しずつ分解されていって少なくなっている。氷が全て無くなり、ムカデが動けるようになる前に足をできるだけ多く切り落としておきたいのだ。

 

一つ二つ三つと足を切り落としていく。その度に飛び散る血も紫をしており、毒が入っているようだったが、すぐに移動しているためほとんど効果を成していなかった。

 

あと20秒。まだまだ時間を稼ぐ必要がある。一瞬だが、女の子たちのほうに行って加速させ、脱出の手伝いをすることを考えた。けれど、やはりそれは一瞬。すぐにその考えを頭から捨てる。移動速度を加速させれば、ただの歩きでも走るときくらいの速度が出る。そうなると、ただ歩いているだけでもものすごく揺れることになる。大怪我を負っている人を無闇に揺らすのは避けたい。

 

さらに足を切り裂き、ほぼ全ての足を節から切り飛ばした。これで足はもう動かせない...と思いたいが、いざとなれば転がったり這ったりして襲い掛かってくるかもしれない。殺すまでは安心できない。

 

ちょうどその時、路面凍結で凍らした地面が完全に電気分解されつくし、氷が消滅する。ムカデを留め続けた枷が消えた。

 

そして俺の予想通り、ムカデは転がってこちらに向かってくる。それを見た俺はすぐに地面に手をつけ、頭の中で詠唱する。

 

土よ、流動しその形を変えよ!

 

転がってきていたムカデの進行方向に、流動化させた地面を集めて足止め用の沼を作る。そしてそこにムカデがハマった瞬間、ムカデの真上にある土の天井を流動化させる。そしてすぐに解除し、天井から切り離す。固体化した大量の土がムカデに降り注ぐ。

 

ムカデは暴れるも、足を失っているため思うように動けず、さらに上に乗っている土の重量も相まって少しも動くことができていない。

 

「……ふぅ...」

 

雷装を解除し、息をつく。スタミナ回復速度を加速させ、少しでも多く体スタミナを回復させる。魔力も回復させるが、聖素が少ないため回復速度もゆっくりだ。あまり多くは回復できない。

 

「あの子たちは...!」

 

バッと出口につながる道の方を見る。そこには、男を支えて歩き続ける女の子たちの姿があり、もう3秒もすれば曲がり道になり、姿も見えなくなるだろう。

 

「よかった...時間は稼げたんだな」

 

さて、俺も逃げることにしよう。後を追って道に入り、保険として土流で道を塞げばもう襲われることも無くなるだろう。

 

「俺も...っ⁉︎しまった!」

 

女の子たちが道を曲がり、姿が見えなくなった瞬間、俺の目も見えなくなる。なぜ見えなくなったかは明らかだ。

 

俺は杖を持っていない。それなのにこの広い空間が明るかったのは、片方の女の子が持っていた魔光石入りの杖があったからだ。その女の子がこの場をさった以上、この場を照らしていた光源が全て消えたことになる。

 

この広い空間が、完全な暗闇に覆われた。

 

すぐに女の子たちを追おうとする。しかし、それは叶わない。ムカデが、まるでこのタイミングを待っていたかのように唾を吐き、行手を阻んできたのだ。速度探知によってなんとかそれに気づき、避けることができたが、ムカデは諦めずに何度も唾を吐きかけてくる。

 

おそらく、移動する際になる足音を聞いて狙ってきているのだろう。狙いはやけに正確で、常に俺のいる場所に着弾していく。

 

しばらくすっと逃げに徹していたが、少しずつ追い詰められていく。地面にムカデの唾が残留しているのだ。踏むと飛び跳ねてしまい、体に付着する可能性が出てくる。そのため避けないといけないのだが、何度も唾を吐かれるせいで足の踏み場が少しずつ削られてしまっている。そろそろ避けるところがなくなってきたのだ。

 

揮発していないのが唯一の救いか。もし毒成分が揮発していたりしていたら終わりだったが、速度探知によってそれがないことは確認済みだ。けれど、速度探知で毒が残っていることもわかってしまうため、思うように動けなくなってしまう。知らなければもっと大胆に動けただろうが、知っているがために足がすくんでしまう。

 

いっそのこと毒を浴びてでも倒すなんてことを考えたが、すぐに却下する。毒の回りを速度操作で遅くすれば、普通の人よりは長く動けるだろう。けれど、回り切る前に倒せる保証はない。捨て身の行動は取れない。

 

まずは地面に残留している唾の毒をなんとかせねば...そうだ!

 

『水弾』

 

水弾を連続で発動し、周囲の地面に向けて水を撃ち込む。地面に付着していた唾は水と混ざり合い、若干その濃度を薄くしながら飛び散っていく。

 

これで周囲の安全は確保できた。あとは...これで倒し切る!

 

少し用意をしてから、地面から小石を二つほど掴み取る。その瞬間、ムカデが唾を吐くが、それが俺のもとに到達する前にムカデに向かって高く跳躍する。

 

ムカデは足音がしないことから、俺が跳んだことを察するだろう。そして、着地した瞬間を狙うはず。なら、その予測を裏切るまで。

 

ムカデがいるであろう位置の真正面に小石を二つ投げ込む。そこは本来俺が着地するであろう場所でもあった。ムカデはすぐさま唾を吐くも、当然当たらない。

 

さて、さっき言ったように、そこは俺が本来着地するであろう場所だ。そして、そこはムカデの唾がぎっしりとかけられている。このままいけば俺は毒の沼にぽちゃんだ。

 

『微風』

 

そうならないために、微風を発動させる。手のひらを真後ろに向け、ほんの少しではあるが、秒速26メートルの風を推進力にしてさらに前に移動する。ムカデは風の存在に気づき、唾を吐きかけるも俺を捉えることはできない。

 

ここからは俺の独壇場。一瞬でケリをつけてやる。でも、やつに近づいてただ斬るだけではダメだ。返り血を浴びて毒を受けることになる。遠距離から、斬撃を叩き込む必要があるのだ。そうでもしないと、こいつを倒せるビジョンが見えない。

 

『雷装・鞭』

 

そして、これが答え。先端にダガーをくくりつけた鞭を振るい、ムカデの背中にダガーを突き刺す。鞭を流れる電流がダガーを通してムカデに流れ込む。

 

「もういっちょっっっ!」

 

『雷装・剣』

 

落下速度を減速させながらロングソードを取り出し、高圧電流を流す。そしてロングソードを思い切り蹴り飛ばし、ムカデの頭を貫通させる。紫色の血飛沫が飛び出す。

 

「ラストォッッ!!」

 

『雷装・矢』『速射』『速射』『速射』!

 

地面に落ちるまでのわずか3秒のうちに、15本もの電気の矢をムカデに撃ち込む。今までどれだけ攻撃を叩き込もうが声一つ上げなかったムカデから、悲痛な叫び声が飛び出す。鼓膜を叩くその音を聞きとどけながら、毒の唾のない場所に着地し、鞭を引っ張ってダガーを回収する。バッとダガーを振り、ついていた血を飛ばす。

 

「やっと倒せた...か?一応確認しないとな」

 

唾の沼をうまく避けながらムカデに近づく。

 

「血流を確かめれば...うん、死んでそうだな」

 

速度探知で、ムカデの血がキチンと体の中を流れておらずただ外に流れ出るのみなことを確認する。よほどのことがない限り、死んでいるだろう。

 

「さて、これからどうしようか...何も見えないんだよな」

 

まずしたいのは、ここからの脱出。そしてキースたちとの合流。速度探知を使って壁沿いを歩けば、出口に行けるだろうけど...反対側に行く可能性があると考えると怖いな。

 

「いや待てよ?よくよく考えれば、キースたちが来るんだから俺動かなくてもいいじゃん。待ってよ」

 

安全なところに座り込み、真っ暗な中ゆっくりと休む。しばらくすれば、キースがやってくる。合流してから動くのでも遅くはない。

 

…そうなるはずだった。

 

地響きがこの巣穴内部に響く。

 

「この音...あぁもうマジかよ...!」

 

この地響き。その原因は、どう考えてもムカデだ。おそらく、ムカデが死ぬ間際に放った叫びが、奴らを誘き寄せたのだ。

 

この状況、魔力残量、スタミナ、どう考慮しても戦えない。せめて、目が見えていたのなら戦える見込みがあったかもしれない。けれど、明かりはない。短時間なら火球を明かり代わりに使えるかもと思ったが、さっきの戦闘中に路面凍結で凍らせた地面を電気の矢で射抜いてしまっていたため、やった瞬間に爆破して俺は死ぬ。それはできない。

 

どうやって戦っても勝つ見込みが見られない以上、次に考える手は逃げの手だ。

 

今鳴り響いているムカデたちの足音は反響してはいるが、よく聞けば一方向からしか鳴っていないことがわかる。ここに来た時、俺が入ってきた方の道のちょうど真反対にもう一つの道があるのは確認済みだ。つまり、ムカデの足音と反対に逃げれば、この場から脱出が可能ということだ。

 

けれど、迂闊にその選択肢は取れない。なぜかというと、逃げた先が出口につながっているとは限らないからだ。

 

それは、俺が考えうる限り最悪の事態。

 

考えたくもない可能性。

 

キース達がムカデにやられ、その道からムカデが大群で押し寄せているという可能性。

 

もしその可能性が現実になっていたとしたら、俺は巣穴の出口から遠ざかり、袋小路に追い詰められることになることになる。

 

二分の一の確率を超えれば普通に脱出し、キース達と合流できる。ダメなら、一人で逃げ続けなければならない。生き残れる可能性は少ない。

 

50%の壁は予想以上に大きい。つまり、この選択肢は最後の手段ということになる。

 

さて。第一の手、応戦は無理。第二の手である逃げも、一旦保留。第三の手は...第三の手...クソッ、何も思い浮かばない!何か手は...ないのか!

 

「一か八か...いやでも...」

 

そう考えている間にも、ムカデたちが近づいてくる。轟音が着実に近づいてくるのがわかってしまう。その音への恐怖が、さらに思考の幅を狭めてしまう。

 

倒す。そう、倒すしかない!これくらいの危機、簡単に乗り越えられなくてどうする!勇者を救うんだろう!世界を救うんだろう!こんな些事!乗り越えられなくてどうするんだ!

 

「チキショウやるっきゃねェ!全部まとめてかかってきやがれこんちくしょうがァ!」

 

やぶれかぶれ。ダガーを抜き、地響きの鳴る方に駆け出す。

 

俺が取った手はただ一つ。単純明快な手。

 

殺られる前に殺る。

 

「ハアアアアァァッッッ!!!」

 

しかし、やはりそれは一か八か。

 

俺は外した。

 

「あっ...」

 

半径2.5メートルの、能力適用範囲に大量の液体が入ってきた。何も考えなくてもわかる。直感でわかってしまう。毒の唾だ。

 

前に進む推進力、唾の飛んでくる速さ、この距離。避けきれない。どう能力を使ったところで避けられない。水弾や、土流も間に合わない。

 

ああ、どうしてこんな無謀なことをしたんだろう。普段の俺ならこんな選択しないのに。選ぶなら、逃げの一手のはずだった。

 

もともと、一か八かは賭博の『丁と半』を表しており、フィフティーフィフティーなのだ。突撃なんて、どう考えてもフィフティーじゃない。

 

もし一か八かをやるんだったら、逃げる一択だ。正直言って、フィフティー以上に生存率は高かっただろう。キース達がいる方からムカデがやってくるなんてことそうそうないだろうし、もしそっちから来たとしても、逃げ続けて距離を取り一対一を複数回やるということをすれば、生き残れる可能性がないわけではない。

 

俺はなぜ分が良い賭けをせず、分が悪い賭けに命をオールインしたのだろう。

 

いや待て、後悔している暇はない。これからのことを考えないと。

 

まず、毒を受けるのは必須。唾を喰らったら、能力で毒の回りを遅くして、真後ろに全力ダッシュ。おそらく、これが今取れる最善手。もし逃げた先が出口とは反対だったら、少し逃げたのちに土流を使ってドームを作り中に隠れる。そしてムカデが去ったら脱出して出口に向かって走る。

 

計画は完璧。もしこれがもう10秒ほど前に考えついていたなら、運命はどれほど変わっていただろうか...

 

思考速度の加速のおかげで、唾が俺から二メートルの距離に近づくまでの間にこれらのことを考えることができた。覚悟は決まった。できるだけ被弾を減らすために左腕の盾を構えておくが、本当に気休め程度。ハッキリ言って意味はない。高速で動く思考とは無関係に、体が勝手にしていた動作だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてこれも、俺の思考とは関係なく行われたことだ。

 

それは、その奇跡は、一つの発声から始まった。

 

「『障壁』!」

 

誰かの声が響くと、俺の目の前に透明な壁のようなものが急に現れ、唾がそれに弾かれていく。

 

「あだっ⁉︎なんだこれ!」

 

前への推進力を止めることが出来ず、俺もその壁に激突してしまう。

 

「こんなのいったい誰が...」

 

「カリヤ!早く下がって!前来てる!」

 

聞き慣れたその声に従い、急いで後ろに下がる。透明な壁がちょうどその時消え去り、前から来ていたムカデたちが唾を吐き出す。いくつかは外れるも、一発が俺に向かって飛んでくる。

 

「減速...やべっ!」

 

頭を壁に打った直後に慌てて下がったためか、足がもつれて後ろに倒れ込んでしまう。倒れ込んだところに唾の沼ができていないのは幸運だったが、前から唾が飛んできている。不運がすぐそこに近づいてきていた。

 

「『軌道変更』!」

 

またしても誰かの声が辺りに響く。すると、俺に到達するはずだった唾が何かに弾かれたかのように軌道を変えていく。

 

「た、助かった...」

 

「助けに来たよ、カリヤ!」

 

チュチュが俺のすぐそばに駆け寄ってくる。チュチュは杖を持っており、辺りが光に包まれる。ムカデたちの姿も見えるようになったが、ムカデたちはなぜか動きを止めていた。地面から鎖のようなものが飛び出し、拘束していたのだ。

 

「チュチュ、この魔法はなんだ?ギブド...じゃねぇよな」

 

そう言いながら振り向く。

 

「…キースとギブドは?」

 

そこにキースとギブドの姿はなく、代わりに俺が逃した女の子たちの姿があった。

 

「さっきの魔法はこの子たち。二人は、怪我してた人を拠点に連れて行ったからいないよ。重いだろうし、この子たちに運ばせるよりも早いからね」

 

どうやら、キースとギブドは拠点に戻ったようだ。そして代わりに女の子たちとチュチュがここに来た...と。

 

「なんで戻ってきたんだ君たち。危険だってわかってただろう?」

 

仲間がやられて心配だろうに、なぜわざわざここに戻ってきたんだ。安否を心配してついていくのが自然なはずだが...

 

「そ、それは...」

 

「敵討ちです!」

 

片方は言い淀むも、もう片方が威勢よく言い放つ。

 

「敵討ちか...悪いけど、その敵はもう俺が殺しちまったよ」

 

「そ、そうですか...」

 

女の子たちがしょんぼりとする。

 

「でも、来てくれて助かった。めっっちゃ困ってたところだ。君たちがいなかったら俺は死んでたかもしれない」

 

まさに救世主。というか、なぜ俺はこの可能性を考えられなかったのだろう。攻めでも逃げでも、諦めるわけでもない。自分でなんとかするのでもなく、非情な現実が待っているのでもない。仲間が助けに来てくれるという、もっとも簡単で、可能性の高いこれを、どうして信じられなかった?

 

自分で全て解決しなければいけないと、いつのまにか思い込んでしまっていたのだろうか。それとも、時間的に追いつけないと思い込んでしまったのだろうか。

 

いや、違う。俺は、心から仲間を信じていたわけではなかったのだ。本気で信じていたら、ムカデたちがキースたちを殺してここに近づいてきている可能性なんて思い浮かべるはずがないのだ。それを考えていたことこそが、俺が仲間を信じていないことの証明だ。

 

「ほんとダメだな、俺って」

 

両手で顔をパンっと叩く。情緒不安定に見られるかもしれないが、そんなこと無視だ。

 

「みんな、よく聞いてくれ。これからどうするかを話す。まず一つ聞くぞ。あの拘束はどれくらい持つ見込みだ?」

 

「えと...一分くらいだと思います」

 

「オーケー。まず、俺たちにはいくつか選択肢がある。一つはここから尻尾を巻いて逃げること。もう一つは向かってくるムカデを全部倒すこと。どうする?」

 

「逃げても追いつかれる可能性が高いかなー」

 

「なら全部倒すぞ。君たち、名前は?」

 

「私はフレアです」

 

「わ、私はミレアです...」

 

「フレアにミレアね。俺は仮谷。君たちは魔法使い...でいいんだよな?」

 

「はい!」

 

「私たち、補助とか防御系の魔法が得意です。それであの人にバフをかけてたんだけど...」

 

「なるほど...じゃあ俺は突っ込むからできる限りのバフを頼む。チュチュには弓矢に効果ある魔法をお願いだ。あとチュチュ、ミレアに杖を渡して」

 

「わかったー」

 

チュチュがミレアに杖を渡す。

 

「あとみんなに言っておく、絶対に火は使うな。チュチュならわかると思うけど、丸ごとボカンだ」

 

「あー...わかった。二人も絶対使っちゃダメだからね」

 

「じゃあ行くぞ。全員戦闘態勢!」

 

鎖が外れ、ムカデたちが動き出す。

 

その足音が、ゴング代わりだ。




戦闘中に長々と心情描写を入れても、『思考を加速させる』ってことができるおかげでそんなに違和感が出てこないのが書きやすくて良き。
便利な能力だなー

あと、定期考査の時期がやってきました。
というわけで、いつものようにしばらく投稿が止まります。
四つストックはあるんですけどね、勉強をしないといけないのに小説のノルマに追われるのは厳しいので、ストックの投稿もなしです。

次回の投稿は24日火曜日です。
気長にお待ちください。
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