前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
カイスに向かいます。
「荷物はこれで全部...っと」
今日はこの王都を旅立つ日だ。昨日買い集めた物は全て鞄に詰めたし、忘れ物はない...はず。
「武器も装備済みっと。行くか」
ムカデ討伐の時に無くしたダガーは、ちゃんと買い直しておいた。お得意様ということで、安くしてくれたのには感謝だ。無くした原因をクルスに話したら、軽く呆れられたが。
準備が完了したので、部屋を出る。そして宿をチェックアウトし、外に出る。
「まだ暗いな...」
今日と言ったが、実はまだ日付を越していない。陽が登るのと同時に出発なのだ。この世界の一日の初めは日の出と共に訪れるので、正確には出発は明日と言えるだろう。
太陽がまだ出ていないので、辺りを照らす光は星明かりと魔力灯だけだ。カリスよりは魔力灯の数が多いので、歩きづらいなんてことはなかった。
「時間には間に合いそうだな」
懐中時計を見る。結構早めに宿を出たので、アクセルの普段の歩きぐらいの速さでも十分間に合うだろう。
「……なんだ?」
後ろを振り向く。コツコツと足音が聞こえたのだ。こんな時間に出歩く人間はそうそういないだろう。もしかしたら同じ馬車に乗る人なのかもしれない。
「いない?」
背後には誰もいなかった。道中に脇道みたいなのもない。振り返った時にちょうど後ろにいた人が曲がった、なんてことはない。
「いや、でも気のせいってわけじゃないし...」
不思議に思いながら歩くのを再開する。すると、少し遅れてまた足音が聞こえてくる。一人じゃない。明らかに複数人だ。
その時、俺はある出来事を思い出した。聖域の調査の依頼を受けたときに襲いかかってきた男。そいつの使っていた、光を操作する魔法。姿が見えないのに、音だけはするこの状況とよく似ている。
また何か別の犯罪集団にでも狙われたか...?と思ったが、違うな。俺がこの時間に出てくると知っている奴らがいる。どうせそいつらの仕業だろう。
「あー、時計がずれてるじゃないかー。急がないとまずいぞー(棒)」
わざとらしく大きな声で呟く。
「こりゃ能力を使わないと間に合わないー(棒)」
能力を使い、走る。しかし、全力は出さない。奴らの視界からギリギリ外れないくらいの速度で走る。
そして曲がり角を曲がり、そこで加速を解除、立ち止まる。
「お、おい急げ!見失う!」
「全然間に合うはずなのになんで走ってんのさアイツ!」
急いで走るドタバタとした足音と、声が聞こえてくる。さて、イタズラをしてやろう。
『路面凍結』
地面に手をつき、薄く氷を張る。
「うわっ⁉︎」
「ギャフン!」
明かりがあるとはいえ、薄く張った氷に気づけるほど明るくはない。気づけるはずもなく、俺を追っていたそいつらは足を滑らせて転ぶ。
「よぉお前ら。お見送りするなら普通にやりゃあいいのに」
転んだショックで魔法が解けたのか、無様に転んでいた五人の姿が見えるようになる。五人とは言うまでもない。キースにギブドにチュチュ、フレアにミレアだ。
「というか足音も消せばいいのに。ルナ○ャイルドがいない時のサニー○ルクみたいになってたぞ」
「ルナ...誰?」
「それで要件はなんだ?お見送りであってるよな?」
「ああ、あってる。ちょっと驚かせようとはしたがな」
「どうせチュチュの発案だろ」
「な、なんでわかったし」
「こういうことするの、どうせチュチュだし」
「なーんか変なイメージついてない?」
「そういうイメージつくようなことしてる方が悪い。というか、こういうのにフレアとミレアか協力するとは思ってなかったな」
「結構ノリノリだったよ?」
「あっ!チュチュさんそれは言わないお約束です!」
「というかフレアミレアちゃんたちがお見送りするって発案してきたんだよ?驚かせようって言ったのは私だけど」
「それも言わないやつ!」
「昨日ばったりギルドであってな。その時に言われたんだ」
「キースさんまで⁉︎」
「へー。ギルドでそんなことが...」
「あっ、ギルドと言えばアクセルに会ったよ。ちょうど報酬を受け取りに来たところだったんだって」
「アクセルに?そっか、一昨日は拠点で休んでたから昨日受け取りに来たのか」
「それでね、カリヤがカイスに旅立つからお見送りに来ない?って聞いたんだけどね、断られちゃった。『まだ戦っても勝負にならない』だってさ」
「…次会ったときは戦おうとは言ったけどさ、お見送りくらいしに来てくれてもいいだろ。融通効かない奴だな...それっぽいけど」
一度決めたことを貫き通すのは、なんともアクセルっぽい。そんなに見知った仲ってわけでもないけどな。
「そろそろさよならしないとな。時間は大丈夫か?」
「問題ない。早めに出たからな。こうやって話してても十分間に合う」
「まぁでもこのままだとキリがないからな。そろそろ終わりにしよう」
みんながビシッと姿勢を正す。
「行ってらっしゃいカリヤ。カイスでも頑張れよ」
「勉強頑張りなねー」
「カリヤなら器用貧乏にはならないと思う。頑張れ」
「「リヒトおじさんのもとで頑張ってください!」」
「お前ら...」
ダメだ頑張るって何度も聞いてるとどこぞのガンバリマスロボの顔が頭に浮かんでくる...自分で頑張りますって言ってるわけじゃないのになんでだ。
「ありがとな」
みんなに手を振って歩き出す。
「あっ、着いて来んなよ!」
振り返りながら言う。
「行かねぇよ。カイスに用はないって前にも言っただろ」
「そうだったな...じゃあなみんな。次会ったときには成長した姿を見せてやるぜ」
「ああ、期待してるよ」
みんなの視線を背後に、北の門に向かって歩き出した。
「よいしょっと」
予約していた、カイス行きの馬車に乗り込む。中には三人の男女が座って待っていた。
「これで四人、全員揃ったな」
御者がそう言う。
「日の出までちょっと待っててくれ。門が開いたら出発する」
門が開くのは日中だけなのだ。日の出まではあと数分。すぐに出発できるだろう。
「ふぅ...」
鞄や装備を下ろし、座り込む。
「その装備、君も冒険者かい?」
向かいに座っていた男が話しかけてくる。
「はい、そうです」
「カイスには何をしに行くんだい?」
今度は男のすぐ隣に座っていた女の人が話しかけてくる。
「魔法を学びに行くんです。貴方達も冒険者ですか?」
二人の近くにはモーニングスターのようなものと、フランベルジュのようなものが置いてあった。
「ああ。俺はログ。そしてこいつはメリッサだ」
「どうも」
「お二人はパーティーを組んでるんですか?」
「確かに組んでるな」
「それよりも夫婦って言った方が正しいがな」
「あっ、ご夫婦だったんですか」
「敬語じゃなくていい。冒険者はあまり上下関係ないしな。年齢とかも気にしなくていいぞ」
敬語じゃなくていいって言われるの結構きついんだよな。初対面の人には丁寧語つけてないと話しにくい。
「なぁ、君の名前ってもしかして...カリヤと言うんじゃないかい?」
「そうですけど...なんでわかったんです?」
「その荷物とか武器とかが噂で聞くのとよく似ていたからな。神の使いカリヤ。結構有名だぞ」
「いつのまにそんな有名になってたんだ俺...」
「他にも二つ名が付いてたな。神速とか」
「雷装とか天の怒りを纏いし者、とかいうのも聞いたことあるねぇ」
おぉぅ、そんな二つ名までついてるのか。二つ名...なんかカッコいいよな。
「ボマー」
俺から少し離れたところに座っていた、最後の乗客である老人がそんなことを呟いた。
「…え?」
「お主の二つ名じゃ。
ボ、ボマーか...なんか嫌だなその二つ名。ヤベェ犯罪者感がすごいんだけど。
「あなたも冒険者ですか?」
「ちょうど今日引退した身じゃ。この馬車には故郷に戻るために乗っておる」
つまり、この老人はカイス出身の魔法使いだったのだろう。
「お主の活躍は聞いておる。カリスでの超巨大トレントの討伐に、軍隊虫の駆除。王都では護衛中に突如現れた巨大ミニゴブリンの討伐に、ムカデの巣での魔族討伐。とても初めて冒険者として活動してから三ヶ月半とは思えないのう」
…改めて振り返るとすごいことしてるな俺。
「どれも仲間がいましたし、一人では無理でしたよ」
とりあえずそう言っておく。事実だし。
「でも一人でも十分強いんじゃろう?もしこの馬車が魔物に襲われても安心じゃな」
「おいおい、俺たちだって冒険者だ。一人に全部負担させるわけないだろ」
「魔物が出てきたらアンタにも手伝ってもらうからね。冒険者には年齢関係ない...だろ?」
「冒険者引退したと言ったはずだがのう...」
「引退するには許可証を返す必要があるが、受理されるのは翌日になる。つまり、今日まではアンタも冒険者だろう?」
「…確かにそうじゃな。老いぼれの微力でいいなら力を貸してやる」
「はい言質取った。全員で協力して倒そうな」
メリッサさんが言う。その時だった。
「門が開いた。出発する」
御者がこちらに声をかけてから、馬を走らせ始める。門をくぐり、王都の外に出る。
「時速15キロ...か」
「そうか、周囲の物体の速度がわかるんだっけか」
「ええ。今は自分を中心として半径3メートル以内の速度がわかります」
ムカデ討伐の中で、能力も少し成長した。速度も、秒速30メートルで走れるくらいになっている。
「時速15キロって速歩だったよな...速歩だと一時間しか持たないんじゃ?王都からカイスまでってどれくらい距離離れてるんです?」
「直線距離で80キロくらいじゃのう」
「そんな長い距離走らせて、馬はもつんですか?」
「途中で小休憩を挟むんだよ。王都から北に向かう馬車を走らせる御者は、全員回復魔法を持っているんだ。それで馬の疲労を抜き、エネルギーを回復させて走れるようにするんだ」
なるほど。途中で馬を交換することができないから、魔法で無理矢理回復させるのか。ずっと走らされる馬カワイソス。
そこまでして走らせても、休憩の時間を含めないで5時間強かかるとか結構距離離れてるな。いや、王都とカリスの距離が近すぎるだけか。自転車で一時間くらいと考えると結構近い。大きい聖域にしか集落を造れないとはいえ、ここまで距離にばらつきがあると大変そうだな。
その後も四人で話しながら馬車に揺られ続ける。一時間走るごとに五分程度休憩を挟んでまた発進を繰り返す。
そうして大体三時間くらいかかった時のことだった。
「あの穴...地図にあったやつか。なんなんだろあれ」
馬車の窓から見えた景色に、巨大な穴が見えた。地図にあった、世界の中心にあるナゾの穴だ。
「あの穴ってなんなんですか?」
「お主、知らないのか?」
質問に質問で答えるなと言いたくなったが、グッと堪える。
「知らないんですよね。学校教育受けてないんで」
「あの穴は、シレンの穴と呼ばれておる。はるか古代に人の手によって作られた人工ダンジョンだ」
「人工ダンジョン?」
「中は螺旋階段状になっており、最下層に着くまでに100の横穴がある。横穴の内部は空間が拡張されており、一つ一つがまったく毛色のことなるダンジョンになっておる。つまり、100の戦闘経験を短期間で積むための修練場というわけじゃ」
「な、なるほど...」
そんな施設だったのか。俺も勇者パーティーに入るから、そこに行くことになるな。覚えておいた方がよさそうだ。
「最下層には何かが封印されている...なんて伝説はあるが、それが本当かはわからない。ただ、修練場なのは確かだ」
「正直邪魔だよね、私たちからすると」
「勇者たち以外関係ないもんな。王都からの交通の便を悪くしてる邪魔な穴だ」
「結構なことを言ってるな...」
まぁ一般人からすると、そんなもんなのかもしれない。価値を知らなければ、どんなに高価な宝石だったとしてもちょっと綺麗な石くらいにしか見ることができないように、価値を活かすことのできない者にはただの障害物になってしまう。この様子だと、視界を邪魔しない分、縦に長い塔じゃないだけマシだと思っていそうだ。
「そろそろ休憩を挟む。止まるぞ」
馬車が止まる。これで三度目の休憩だ。
「腹減ってきた...パン食べよ」
鞄から袋に包んだパンを取り出す。起きてからまだ何も口にしていないので腹がペコペコだ。
「お、ご飯かい?私たちも持ってくればよかったな」
「要ります?非常食としてある程度持ち歩いてるんで、あげれますよ」
「なら遠慮なくもらっておこうかな」
「俺ももらっておこう」
「ならワシも」
パンを取り出し、渡す。そして自分の分のパンを口に含む。うん、味は普通。あくまでこの世界の普通なので、地球のものと比べるとランクは落ちるが。
「…これ、今襲われたらやばいな」
「そんときはささっと食べて戦うだけだ。あと、あんまりそういうことを言うもんじゃないぞ?だいたい現実になる」
「…マジで?」
「経験則だがな。嫌な予感だとか想像は現実になることがほとんどだ」
「悪いが、そうなる前に出発だ」
御者がこちらに声をかける。そして、馬を走らせるために前に向き直る。
「……は?」
御者が一瞬フリーズし、絞り出したような声を出す。
「どうした?」
「どうして...さっきまでいなかったのに...」
「なにがあった!」
「魔物だ!百以上の魔物が突然現れやがった!」
「姉さんに『いくら大きくしても無駄なら何百体も転移すればいいじゃん!』と言われたので今回は数を優先しましたが...きっと無駄でしょうね」
赤い髪をたなびかせた女が、空から見下ろしていた。
「速い魔物に攻撃能力が高い魔物、硬い魔物に空飛ぶ魔物まで揃えました。ここまでやったのだから、何かしらの成果は欲しいですね」
神の使いを殺せるなんて可能性は最初から除外していた。女は次を考えていた。
「どの魔物が苦手なのか、見定めさせてもらいます。神の使いカリヤ...その手の内、見抜いてやる。お手並み拝見だ」
「魔物だ!百以上の魔物が突然現れやがった!」
「みんな行くぞ!」
それぞれ武器や杖を持ち、馬車を飛び出す。
「突然...あんときと同じか!」
装備をつけていきながら、思考を回転させる。御者がこちらを向き、前方から目を離したほんの一瞬のうちに現れた魔物。状況が巨大ミニゴブリンのときと似ている。これはおそらく、魔族の攻撃だ。
「悪い遅れた!どんな状況だ!」
三人よりも装備する武器の数が多いので、少し遅れて馬車を出る。
「魔物の数は146体。10種類じゃな」
探知魔法を使っているのか、両目を紫に光らせた老人が言う。
ここから見えるのは、狼のような魔物に、ゴブリンっぽい魔物、空を飛んでいる鳥の魔物に蛇の魔物、鎧を纏った魔物に槍を持ったガイコツの魔物、宙を浮くローブを着た魔物に独りでに動く剣の魔物、そしてトカゲの魔物。あと一種類いるはずだが、ここから見えないということは透明化しているか、地面の中だろう。
「空の敵はワシに任せろ。地面はお主らに任す」
「じゃあ俺は狼からだ!」
魔物たちの中では、狼が一番素早い。一番に馬車まで辿り着くのは狼だ。まずはそれを防ぐ。
速度操作を発動し、秒速30メートルで駆け抜ける。そしてダガーを引き抜き、すれ違いざまに二体首を斬り飛ばす。
すぐに方向転換し、次の獲物を狙う。狼は16体いた。あと14。
スパンスパンと立ち止まることなく斬り続ける。経験則だが、並の魔物は仲間が攻撃されてから一、二秒ほどの間、何が起こったのか理解できず動くことができなくなる。その二秒の間に、馬車に近い狼から斬り飛ばしていく。
やっと状況を飲み込めたのか、残った4体の狼が口を開く。そして大きく息を吸い込んでいた。
「遠吠え?させない!」
足が一切動いていないので、飛びかかってこようとしてるのではなさそうだ。息を吸い込んでいるということは、遠吠えをする可能性が高い。正直、得体の知れないことをされるよりは噛み殺しにきてくれた方が良かったのだが...
急いで喉を斬り裂き、狼の動きを防ぎにかかる。けれど、見てから止めるには時間と速度が少し足りなかった。2体取り逃がした。
狼たちが遠吠えをする。空気が揺れ動く。
狼が十数体に増える。
「音を介した認識操作か?それとも単純に影分身をしてるだけか...まっ、意味ないけど」
速度探知を使えば、偽物と本物を見分けられる。偽物も、動くなら速度はある。けれど、どの物体がどの速度で動いているかまでわかるので、そのような小細工は通用しないのだ。
「これじゃないこれじゃない...こいつ!」
スパッと本物の喉を斬り飛ばすと、分身も全て消え去る。
「あいつすげぇな...」
「何見惚れてるんだいログ。私たちも行くぞ」
「あ、ああ。だな」
馬車の近くにいたログとメリッサがこちらにやってくる。
「お前さんだけに負担はかけさせないよ。私は鎧のやつを叩く!」
「俺はゴブリンだ!」
「じゃあ俺は...近いところからやってくか」
ログがフランベルジュを持ち、メリッサはモーニングスターを持ってそれぞれ魔物のもとに走る。
…武器逆だと思ってたわ。意外とパワー系なんだな、メリッサ。
「ハァッ!」
「ほいほいっと」
ログはフランベルジュでゴブリンの腹を横凪に斬り裂く。その独特な剣の形状が、肉を引き裂き傷を大きくする。
メリッサはモーニングスターで鎧の魔物を鎧の上から何度も叩き、へこませ、叩き潰す。
「おぉ、すごいな二人とも。俺も動かないとな...っと危ない危ない」
真上から突進してきていた鳥の魔物を探知したので、速度を遅くしながら身を捩って避け、その翼を斬り落とす。
「鳥めんどくせぇなぁ...キーキーウルセェ!」
矢を取り出し、速度操作で加速しながら投げる。けれど、当たる寸前で避けられてしまい、一匹も当たらない。
「ほんとめんどくせぇ...!」
弓を使っても避けられるだろう。警戒されてしまったため、近づいたところを斬ることもできそうにない。
「…空はワシに任せろと言ったはずじゃがのう」
背後から緑色のレーザーのようなものが飛んできて、鳥の翼を撃ち抜いた。
「撃ち抜いた⁉︎スッゲェな爺さん!」
「爺さん呼びはやめてくれ。ニトラスでいい」
そう言いながらも魔法の発動はやめない。さまざまな色のレーザーを打ち出し、鳥の魔物を撃ち落とし続けていた。
「お主も休んでないで早く働け」
「人使い荒いねぇニトラス。さっき狼全滅させたばっかだってのに」
「老人を働かせておいて何を言っておるんだ」
「それもそうだな」
さて、どいつからやろうか...あいつにしよう。
「お前もーらい!」
鞭を振るい、剣の形をした魔物を絡めとる。そのまま絡めとった剣を鞭ごと振り回してガイコツの魔物の鎖骨あたりに突き刺す。
『雷装・鞭』
超高圧の電流が鞭を通して剣、そしてガイコツに流れ込む。3秒ほど流し続けると、剣もガイコツも動かなくなった。
「次は...ん?この速度は...こっちに来る!」
その場からサッと離れる。その瞬間、地面からウナギが出てきた。
「なっつかしいなお前。三ヶ月半ぶりってところか?いや、あいつは攻撃性なかったから別種か」
地中から出てきたウナギは、ビチビチと暴れ出し周囲に冷気を振り撒いた。
「電気を出すわけじゃないのか...って寒っ⁉︎さっさと消えろ!」
『火装・鞭』
火を纏った鞭を叩き込み、息の根を止める。
「最後の一種類はこいつだな。何体いるんだか...走り回ってたら見つかるか」
地中にいるウナギを見つけるには、ニトラスの探知魔法か、俺の速度操作しかない。ニトラスは空を飛んでいる魔物の駆除に集中しているので、ウナギは俺が倒すべきだろう。他の魔物を倒すために走っているうちに見つかると思うので、優先順位は少し下がるが。
「ほらよっ!あっ、悪い気をつけろ!」
真横から急に鎧の魔物が飛んできた。その速度を落とし、自らを加速させながらロングソードを取り出して真横から殴り抜く。
「悪い悪い。加減を間違えて吹っ飛ばしてしまった」
「気をつけろよーメリッサ。お前はほんと脳筋で大雑把なんだから...」
「ログも大概じゃないか。狙って斬るのが苦手だからって、当たればそれだけで大きく傷をつけられるフランベルジュなんて使ってるんだし。しまいには毒まで付与するんだろ?戦い方が男らしくないねぇ」
「戦闘中に夫婦喧嘩してやがる...」
喧嘩しながらも、武器は振り続けていた。魔物をばったばったと薙ぎ倒していく二人。
「冒険者ってのはこういうのばっかなのかな...っ!」
真後ろ3メートル以内に魔物が入り込んだので、後ろにバックステップを取りながらロングソードを振り回す。
「当たらない⁉︎物理無効か⁉︎」
背後にいた魔物は、宙に浮いているローブを着た魔物だった。ロングソードはその魔物をすり抜け、地面に突き刺さる。
俺の攻撃をすり抜けた魔物は杖をどこからともなく取り出し、魔力を込め始めた。
「チッ!『微風』!」
手のひらを魔物の方に向け、風を噴き出す。魔法は効果があるようで、魔物は上に吹き飛ばされた。
「ニトラス!」
「任せろ」
七色のレーザーがローブの魔物を貫き、消しとばした。
「そいつは魔法しか効かないようじゃな。ワシが片付けるとしよう」
ニトラスが杖を振りかざすと、周囲にいくつもの魔法陣が浮かび上がり、さまざまな色をしたレーザーが飛び交う。空を飛ぶ鳥も、ローブの魔物も避けることができず撃ち落とされていく。
「よし、だいぶ片付いてきたな」
ものの数分で、魔物の数は結構減っていた。地上に見える敵は十数体ほど。地面に潜っている敵もそこまで多くはないだろう。数は多かったが、三人とも優秀な冒険者だったおかげで特に危なげもなく倒せていた。
「このまま全部ぶっ潰すよ!」
「おう!」
メリッサとログが張り切り、魔物を打ち倒していく。
「俺も地中のウナギを倒さないとな...!」
鞭を取り出し、走り出そうとした。その時だった。
「これは...マナの揺らぎ...?」
ニトラスがボソッとつぶやいた。
「な、なんだって?」
「危ない二人とも!そこから離れるんじゃ!」
ニトラスが前に出ていたログとメリッサにそう叫んだ瞬間、世界が揺らいだ。
数十体の魔物が、ログとメリッサを囲む形で突如として現れた。
「な、なに⁉︎」
「まずい助けないと!」
俺は急いで魔物の群れに向かって走り出した。
向かうとは言ったが、着くとは言ってない...というわけで、カイス到着は次回に持ち越しです。
なんか長くなっちゃったからね、仕方ないね。
ちなみに、今のカリヤくんの出せる雷装なしの最高速度は秒速30メートルなので、自力で走れば45分くらいで着きます。
…走った方が何倍も早く着くのに何で馬車乗ってるんだ?