前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8108字。

解説多めです。


今更だけど魔法とはなんぞや?

「メリッサの調子はどうだ?」

 

馬車に入った俺は、ログに真っ先にそう聞いた。

 

「疲れて寝てるけど、特に問題はない。ああでも、回復魔法は一応かけてもらえると助かる」

 

「お安い御用じゃ」

 

メリッサは、ログの肩に寄りかかって寝ていた。そんなメリッサに、ニトラスが回復魔法をかける。その間に、馬車が走り出す。

 

「これでよし...と言っても、やはり回復魔法は苦手じゃのう。念のためカイスに着いたら本職の医者に診てもらうといい。もちろん君もな」

 

「そうするよ」

 

そういえばログもニトラスの治療を受けてたな。というか、あんなレーザーが撃ててある程度の回復もできて、探知も使えるとか強くね?よくよく考えてみれば、フレアとミレアが杖に魔法陣を分割して埋め込み、二人がかりでやっと発動していた魔物探知の魔法を一人で使えてる時点でエグいよな。目に付与する形だから光の球が来るのを待つ必要もないし、数と種類まで探知できるわけだし、上位互換がすぎる。

 

「それにしても、神の使いと一緒の馬車に乗れてラッキーだなと思ってたけど、まさか『閃光』のニトラスまでいるとは思わなかったよ。一年分の運使い切ったんじゃないか?」

 

『閃光』のニトラス?その閃光ってのがニトラスの二つ名なのか?なんかカボチャ被ったやつが踊ってそうな二つ名だな。

 

「はは、そんな大層な二つ名、ワシには重すぎる」

 

「そんなこと言って、元世界最強だろ?」

 

…まじ?そんなすごい人だったのか。

 

「世界最強ってニトラスが?まじ?」

 

「元じゃ。それも、攻撃面だけ見ればの話じゃしの。ワシの世代は、分野ごとに最強がいたのう」

 

「すごいよなあのレーザー。あれってニトラスにしかできないんだろ?さすが最強」

 

「ワシにしか使えない...はずじゃったんだがの。この前会った魔法使いに一度見せただけで真似されてしまった」

 

「一度見せただけで⁉︎誰だよそれ...バケモンか?」

 

「れっきとした人間じゃよ。今代の最強じゃな、それも全分野の」

 

「あー、なるほど」

 

フレアとミレアの従姉妹だっけか。名前は確か...ニアだったっけ?ってかエグくね?あの魔法を一回見ただけで真似するとかもやばいけど、全分野の最強ってことは攻撃だけじゃなくて防御系もバフ系も回復もできるってことだろ?やっば主人公じゃん。そんなことまでできて勇者じゃないとか勇者どれだけ強いの?身体能力クソ雑魚だったりするのかな。

 

「もしかして冒険者を辞めることになったのってそれが原因だったりするのか?」

 

そんなことを聞いてみる。

 

「一番の理由は歳じゃが、確かにそれもあるのう。といっても、悔しいからではないぞ?ワシに教えられることは全て教えた。あの女性がいれば世界も安泰じゃ。ワシみたいな年配はさっさと退いて、若者にバトンを渡さないといけないのじゃ」

 

「ちゃんと引き継ぎしたってわけか...そういえばだけど、ニトラスってカイスに着いたら何するんだ?」

 

「ワシか?そうじゃな...最初はのんびり暮らすつもりじゃったが、魔法を教えるのも良さそうじゃな」

 

「元最強が教える学校とかすごい人来そうだな」

 

倍率エッグいことなりそう。

 

「そういえばじゃが、カリヤは魔法を習いにカイスに行くんじゃったよな。行くあてはあるのか?もしないならワシが教えてやってもよいぞ?攻撃魔法しか教えることないがの」

 

「あーそれは大丈夫。リヒトって人のところに行く予定なんだ」

 

「リヒトのところに行くのか?受けてくれるかのう...」

 

「そのリヒトの姪っ子たちの推薦状があるから大丈夫だ多分。というか、リヒトのこと知ってるのか?」

 

「知ってるも何も、リヒトはワシの師匠じゃ」

 

おぉぅ意外な繋がり...というかちょっとまて。ニトラスの師匠ってことは歳いくつだ?

 

「そのリヒトって人、どんな人なんだ?」

 

ログが聞いてくれた。助かる。

 

「リヒトは天才じゃ。ワシより20も年下じゃが、天才としか言いようがない。どの分野もそつなくこなせる」

 

へー、ニトラスがそう言うってことは本当に天才だったんだろうな。で、その娘が現最強と...すごい親子だな。英才教育してそうだ。

 

「天才と言っても、実践は苦手じゃったがの。研究者として一流じゃった。魔法の研究や指導に関して言えば、奴の右に出るものはおらんかった」

 

そりゃ娘もすごいわけだ。

 

「研究優先で指導することが滅多にないというのが玉に瑕じゃがの。リヒトの指導を受けることができたのは、ワシやニアを含めても片手で数えられるほどじゃ。何か特別な才能を持っていないと門前払いされる」

 

「そうなのか...推薦状あるとはいえちょっと不安だな。能力見せれば何とかなるかな?」

 

「心配ならワシも推薦してやろう」

 

「おっ、本当?ありがとう助かるわ。えっと紙紙...あっ、ペンもないじゃん」

 

「紙ならワシが持っておる。それに、ペンも代用できる」

 

ニトラスが紙を取り出す。そして空いている左手で杖を握ると、紙に高速で文字が書き込まれていく。

 

「ほれ、これでいいじゃろう」

 

「それって何の魔法なんだ?」

 

「文字を書く魔法じゃ。地面や空中にも書ける便利な魔法なんじゃよ」

 

「もしかして空中に浮いてたあの魔法陣ってそれで書いてたりするのか?」

 

「そうじゃ。ワシの閃光は二つの魔法でできておる。筆記の魔法で、空中に大量の魔法陣を用途に合わせて内容を変えながら書き込む。その時に文字に大量の魔力を流し込んでおき、その魔力で魔法を起動する。これがワシの閃光じゃ」

 

「筆記で魔法陣を書けば複数の魔法を同時に発動できるってこと?」

 

「そうじゃ。魔力総量が多い者じゃないと到底使いこなせないじゃろうがの」

 

なるほど...あれ?空中に魔法陣を書き込む時点で相当難しくね?書くには、脳内で複数の魔法陣を思い描く必要があるはずだ。さらっと言ってるけど、あれだけ精巧な魔法陣を書くとか無理だと思う。なんか魔力量さえどうにかすればいけるみたいに言うもんだから、ちょっとできるんじゃねって思ってしまった。無理だこれ。

 

「まさかこれを一回で真似されるとは思ってなかったんじゃがのう...」

 

「噂だけはめっちゃ聞くんだけど、結局そのニアってどれだけ強いんだ?死んでなければ蘇生できる(経験済み)とか、転移魔法を使えるとか、嘘って言われた方がまだ信じれるくらいの現実離れした話ばっかでよくわからないんだよね」

 

「噂になってることほぼ全てが事実じゃよ。リヒトの才能を余すことなく受け継ぎ、実践もできる最強。過去に類を見ないほどの天才じゃ」

 

天才とか最強とか、そういう単語この会話のうちに何回出てきた?何度も聞きすぎてよくわかんなくなってきた。これがゲシュタルト崩壊?

 

「まぁ才能だけじゃあそこまでの領域には至れなかったじゃろうがの」

 

「才能だけじゃ無理...ってことはなんだ?努力もしてたってことか?」

 

「九割九分努力じゃよ。天才が占める割合は一分ほど、いや、一番の才能が努力だったというのが正しいのだろう」

 

「なにそれエジソンかよ」

 

「…エジソンって誰だ?」

 

「あっ、声に出てた。気にせず忘れてくれ」

 

ついつい思ったことが垂れ流しになってしまった。

 

「んで、その努力ってのは具体的にどんな努力なんだ?記憶力的な問題?」

 

何十何百も呪文や魔法陣を覚えるのだけでも結構難しいはずだ。全部スキル名で覚えたとしても厳しいだろう。

 

「確かにそれもあるが...簡単に言うとアレンジ力じゃな」

 

「アレンジ?」

 

「カスタムの方がわかりやすいかのう。正式的な呼び名はそちらじゃしな」

 

「んー...ごめん。言葉の意味からなんとなく予想はつくけど、よくわからんわ。まずカスタムのことから教えてくれ」

 

「あいわかった。カスタムは、魔法の呪文に追加で文を入れることで本来の魔法の効果を逸脱することのできる技術じゃ」

 

「…例えば、火球の大きさを変えたり数を増やしたりできる...ってことでいいのか?追尾性能を付与したり、火球を氷に変えたりとかはできるのか?」

 

「氷に変えるのはできない。逸脱できるといっても、基礎から少し変化できるくらいじゃ。そのままの詠唱ではスキルと変わりない。カスタムすることで、効果範囲を変えたり威力を増したりするような感じじゃ」

 

「なるほど...」

 

土流は詠唱で発動すれば自由に扱うことができたが、それ以外の魔法は詠唱でもスキルでもほとんど変わらなかった。意識すれば火球を手のひらの上で留めることくらいはできたが、その程度の変化だった。

 

そんなわけで、今までずっと詠唱の利点ってなんだろうなと思いながら土流以外スキルで使ってきていたが、追加で詠唱をすれば良かったのか。バーサーカーを確定で呼ぶために詠唱を追加するようなもんだろう。

 

「どうすればカスタムできるんだ?」

 

「これ入れればこうなるという万能の言葉があるわけではない。魔法によってカスタムするために入れる言葉が違う。下手に他の魔法のカスタムワードを入れてしまえば、良くて不発、悪くて魔力の暴走を起こして自滅する。既存の詠唱に干渉することなく、うまく書き換えないといけないわけじゃな」

 

プログラムコードかな?下手に入れてしまうとバグが起きるというわけだ。魔力の暴走が起こったらどうなるんだろう。起○弾撃ち込まれたときみたいになるのかな?

 

「具体的なカスタムワードはリヒトに教えてもらうといいだろう。教えるならワシよりもリヒトの方が上手い」

 

「そっか...で、ニアはカスタムが得意だって話だけど、どういう意味なんだ?カスタムワードを見つけるのが上手いのか?」

 

「見つける才能もある。リヒトや、自分自身で創り出した新しい魔法のカスタムワードをどんどん見つけていく。まぁこれは作った本人なら見つけやすいものなんじゃが、既存の魔法のカスタムワードも開拓していくのがすごい。一つも見つかってなかったものから二、三個創り出すなんてザラらしいしの」

 

「『も』って言ったな。今の話でも十分エグいけど、まだなんかあるのか?」

 

「ああ、ニアは魔法陣でカスタムをしている」

 

「魔法陣でもカスタムができるのか。追加で文字書いたり図形を足したりするのか...えっ、ちょっと待ってそれめっちゃ難しくね?」

 

ちょっと線がズレたりしたら、既存の陣に干渉して発動しなくなりそうだ。それを戦闘中に描くとか無理でしょ。

 

「そりゃそうじゃ」

 

そんなOPのオー○ド博士みたいなこと言うの初めて聞いたわ。

 

「文章よりも、暴走を起こす可能性は高い。もし既存の陣に干渉してしまったらまずいことになってしまうが、その分魔力の効率はいいんじゃ。発動までのタイムラグも少ないしの。詠唱だとカスタムした分長くなってしまうが、魔法陣のカスタムならほとんど時間はかからない。頭で思い浮かべるだけでいいんじゃからな」

 

「…えっ、待って、俺てっきりさっきの文字書く魔法で空中に描いてるもんだと思ったけど、頭の中で描いてるの?戦闘中に?」

 

「さらに、状況に合わせてカスタムを変えているようじゃぞ?おそらく、毎回頭の中で描いている魔法陣は違うじゃろうな。それを一度のミスもなく戦闘中にやってのける...天才じゃろ?」

 

「うん、そこまでできるんだったらもう誰が聞いても天才って言うわ」

 

これはもう超絶運動音痴じゃないと釣り合いが取れんぞ。もしこれで普通の一般的な運動もできるとかだったら神に怒るよ俺。一物だけ与えてくれほんと。俺だって神には速度操作の力しかもらってないんだぞ?

 

『これワシ怒られる?』

 

うおっ、久しぶりに神の声聞いたな。ってかなんで怒られるのさ。俺もしかして速度操作以外に何かもらってた?

 

『言語』

 

あー...そういえばそうだったな。なんかもう話せるのが普通になってきてて貰いもんなの忘れてたわ。うん、二物貰ってても文句言えなくなったわ。

 

「あっ、そうだ。さらっと流しちゃったけど、魔法を創るってどうやってるんだ?ってかそもそも魔法ってなんなんだ?」

 

「魔法とはなんなのか...か。これは魔法の歴史を一から離さないといけないかのう...」

 

「それ...長くなる?」

 

「要点だけ話せばカイスに着くまでには終わるぞい」

 

「んじゃ頼む」

 

魔物に襲われたりしなければ、カイスに着くまで何もすることがないからな。それまでに終わるなら効率がいい。

 

「ふわぁ...」

 

あっ、メリッサ起きた。

 

「馬車...なぁログ、今どういう状況だ?」

 

「えっとね...」

 

ログが起きたメリッサに状況説明をする。妙に慣れているのを見るに、いつもこんな感じなんだろうな。

 

「魔法か...それ、私にも聞かせてくれないかい?」

 

「聞きたかったら勝手に聞いておれ。この狭さじゃ嫌でも聞こえる」

 

「確かに、小声でも普通に耳に入るよな。ってかごめんメリッサ。寝てたのに普通に話し込んじゃってたわ」

 

「いいよそんなの。そんなことよりもニトラスの話だ。聞かせてくれよ」

 

「わかった。まず魔法が最初に生まれたのは...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけじゃが、わかったかのう」

 

「おう、だいたいわかった」

 

ニトラスが要約して話してくれた内容をさらに要約すると、まず、魔法は体内にある魔力や外界にあるマナを利用して起こす現象全てを指す言葉らしい。魔力やマナを利用すると言ったが、一般人には到底できるようなことではなかったようだ。遥か古代、数万年も前には呪文や魔法陣といったものが存在しなかったかららしい。

 

古代では、手のひらから小さな炎を出すためだけにとてつもない時間をかけ、体を丸ごと作り替えるくらいの労力を使っていたらしい。そして、それをなんとかするために呪文や魔法陣が生まれた。呪文や魔法陣は、魔力やマナを操作するためのマニュアルみたいなものだそうだ。

 

呪文は、それを詠唱することで血流や呼吸のリズム、電気信号などを操作して魔法の発動に必要な時間と労力を短縮するためのもの。魔法陣は、線に沿って魔力が流れることで一律に同じ効果を起こすためのもの。両方とも、誰にでも同じ魔法を簡単に使えるようにするために創り出されたものだ。長い時間と労力を短縮するためのものに変なものを付け足したら機能不全を起こすのも納得だ。カスタムは難しいのだとこれを聞くだけでわかる。

 

現代で魔法を創るというのは、呪文や魔法陣を創ることを意味しているらしい。今になっても、まだ呪文が創られていない魔法が何百何千とあるようだ。そして新しい呪文は、一般的な魔法使い一人が三、四十年ほどかけてやっと一つ創り出せるくらいのものらしい。すでに呪文をいくつも創り出せているリヒトやニアはハッキリ言って異常なようだ。

 

さらに時が進んで今から千年ほど前の話。頭の中で呪文詠唱をしたり魔法陣を描いても発動できるようになった人が現れ始めた。時が流れ、人体が魔法に慣れ始めたのだ。声に出すことなく、想像だけでも人体を変えることができるように進化したのだ。

 

そして、人類の進化はそこでは止まらなかった。百年後、人類は進化の最終点にたどり着いた。それが『スキル』だ。

 

スキルとは、一度経験したことを再現する力のことを指す。古代の魔法を呪文で短縮、再現をしたように、呪文すらもスキルで短縮再現できるようになったのだ。

 

要約終わり。要約を要約してもここまで濃密になる。二百字要約とか苦手だったから、単純に俺の整理能力が低いだけかもしれんが。

 

話を聞いていて思ったが、この世界の人類、進化する速度が早すぎる。魔法への適用能力が優秀すぎる。今はまだカスタム魔法をスキルにすることができないらしいけど、いつできるようになってもおかしくない気がする。

 

というか、俺がちゃんとスキルを使えてるってことは、神様は元の地球の身体を蘇生させて使ったんじゃなくて、この世界の人間と同じ機能を持った外見俺のアバターを作った感じなのかな。スキルが使えない世界線を想像するとゾッとする。うっかりミスったってのがあり得るからな、神様。最初酷い目にあっし。

 

「あーよくわかんね。要するに、呪文覚えてたら誰でも魔法を使えるって事でいいんだよな?」

 

メリッサがニトラスに問いかける。

 

「ああ、その認識で問題ない。物理職じゃしの」

 

「そういえばだけどさ、二人はなんでカイスに行くんだ?」

 

二人とも物理職だし、魔法使わないで殴った方が強いと思うんだよな。バフかけるとかならわかるけど。

 

「主な目的は依頼を受けるためだな。何故だか知らんが、最近カイスの周辺に魔法抵抗力の高い魔物が増えてるらしくてな。倒しにきたんだよ」

 

「そんな魔物、カイスの周辺にはいないはずなんじゃがのう...そういうのは軒並みガネルの方にいるはずじゃろ?」

 

なんか、魔物の生息地に合わせて町造ったみたいな話を前に聞いたことがある。多分、ガネルには魔法耐性の高い魔物、カイスには物理耐性の高い魔物が近くにいるんだろうな。

 

「多分転移の魔族が悪さしてるんだろうな。本来いないはずの魔物がいるって事態に何回も遭遇したことあるし」

 

「その魔物の討伐のために、カイスが物理特化の冒険者を呼び込んでるんだ。それで俺たちも行こうってことになった」

 

「ついでにちょっとした魔法でも覚えようってね。私は狂化のために魔力を温存しとかないといけないから、軽いバフくらいしか使わないと思うけど」

 

「俺も毒付与で魔力を消費するから大したものは使えないけど...回復魔法くらいは覚えようかなって。俺よりもメリッサが傷つくことの方が多いし、頑張ってくれるから出来る限りのサポートをしたいんだ」

 

「ログ...」

 

「あーいちゃいちゃするなら馬車降りてやってくれ狭い空間でラブコメの波動を飛ばすんじゃあない!」

 

二人を中心にピンクい空間が見える。マナ探知でも使ったっけ俺?

 

「狭くて悪かったな。そろそろ到着だ。荷物の準備をしておけ」

 

御者が呼びかけてくる。狭いと何回か言ってたのが聞こえてしまっていたようで、ちょっとだけ言葉に怒気が含まれていたように感じた。

 

「やっと着いたか...すごい長く感じたな」

 

「まぁあれだけの戦いがあればな」

 

「話が長かったのもあると思うがのう」

 

「自分で言うのかそれ」

 

そんなことを話していると、馬車が止まる。いつのまにか町の中に入っていたようだ。

 

「到着だ。次が控えてるから早めに降りてくれると助かる」

 

「長旅運転ありがとうございまーす」

 

荷物を背負い、馬車から降りる。

 

「あー疲れた。今何時だ...?」

 

懐中時計を取り出して見る。

 

「7時か。今日リヒトのところに行くのはやめておこうかな。明日にしよ」

 

日没まであと5時間。ギルドの登録だったり宿探しをしていたら、リヒトと会う頃にはもう陽が沈みかけているだろう。そんな時に行ったら多分追い返されるだろうな。

 

「じゃあまずギルドに行くか」

 

「ワシはここでお別れじゃ。色々話せて楽しかったぞい」

 

ニトラスは冒険者を辞めている。ギルドに行く俺たちとは別れることになる。

 

「こちらこそ、話を聞けてよかったよ。すごい魔法も見せてもらったし、これもありがとうな」

 

ニトラスには推薦状を書いてもらった恩もある。数時間という短い間だったが結構お世話になったな。

 

「ギルドならそっちじゃよ。また会う時があればよろしくじゃ」

 

「最後の最後までありがとう。危うく道に迷うところだったわ」

 

俺たち三人ともカイスは初めてなので、ニトラスから教えてもらわなければ迷いまくることになっただろう。気が効くなぁ。

 

「じゃあ行くか、ギルド」

 

「だな、さっさと登録だけ済ませてしまおう」

 

「それより前に何かご飯を食べないかい?まだ今日はカリヤからもらったパンしか食べていないからお腹がぺこぺこだよ」

 

「…それもそうだな。適当に店入っておくか」

 

「何系食べる?」

 

「何でもいい」

 

「大衆食堂でいいだろう。下手に揉めなくて済む」

 

「だな。ちょっと探すか」

 

そうして俺たちは遅めの昼食を食べるために店を探して入り、それぞれ好みのご飯を食べた。ここぞとばかりに箸を見せつけ、利便性を主張しまくったが理解してもらえなかった。珍しがってはくれたが...自分のプレゼン力の低さに落胆する。

 

そして、昼食を食べ終えて店を出た俺たちは軽く絶望する。

 

「ギルドどっちにあるんだっけ?」

 

なんで先にギルド行かなかったんだろうなぁ、とちょっと後悔した俺たちだった。




やっとカイス着いた...着いたって言えるのかこれ?

次回はギルド行ったら、リヒトのところに行く...はずです。
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