前世の俺がすでに転生特典決めてました   作:ダイヤモンドリリー

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8354字。

前回の予告通りギルドに行って、翌日リヒトのところに行きます。


タガの外れた研究者

「よかったたどり着けた...」

 

なんとかギルドまで来ることができた。率直に言ってとても大変だった(小並感)

 

まず、適当に歩けば行けると言いながら歩き出そうとしたメリッサをログが押さえつけている間に、俺が大衆食堂の店員にギルドの場所を聞いた。

 

そうしてギルドの場所を知った俺たちはギルドに向かって歩き出したのだが、初めてカイスに来たため物珍しいものが多かったのか、メリッサがフラフラと店に引き寄せられるように入ろうとしたのが4回ほどあった。メリッサのブレーキ役であり、頼みの綱でもあったログも『毒魔法教えます』と書かれた看板を下げた学校っぽい場所に入ろうとしたし、それを止めてる間にまたメリッサがどっか行ってたり...なんか子供の世話してるみたいだった。

 

「いやーごめんごめん。見たことないものが多くて気になっちゃってね」

 

「それはわかるけどさ、ギルド行ってからでいいじゃん?町の探索は後で二人でやってくれよ」

 

確かに、珍しいものが多かった印象だ。異世界だから見慣れないものが多いのも当然だが、それにしても多い。さすが魔法使いの町といったところか。王都とは違ってやけに近代的な印象を抱いた。ありとあらゆるところに魔道具が使われているらしい。まぁ一番驚いたのは、コンクリートが使われていたことだが。カリスは木造で、王都は石造り。北に行くにつれて文明が進んでいるように感じるのは偶然だろうな多分。

 

「ほら、さっさと受付すますぞ」

 

ギルドの中に入る。登録の列は一番左、どこのギルドも同じらしい。人と人の隙間をうまくすり抜けて一番左の受付の前に出る。この時間に受付しに来る人は自分達以外にいないようで、誰も列に並んでいなかった。

 

「…受付係もいねぇんだけど」

 

たまたま席を外してるだけか?受付の前に立って待ってみる。

 

「…こねぇな」

 

「呼んでみるか。あのーすみませーん!登録お願いしたいんですけどー!」

 

「えっ、あっ、ちょーっと待っててくださいねー...あんにゃろ

 

奥で作業していた女の人が、こちらに待つように言ってから扉の向こうに消えていく。なんか聞こえた気がしたが気のせいか?

 

「あんた朝も休憩目一杯取ったってのにまたサボってもう!何やってんの!」

 

「うげっ⁉︎」

 

「うげっ、じゃないわよ早く仕事戻りなさい!」

 

「えーだってこの時間に登録してくるやついないもん」

 

「いるよ来てるよ行きなさいよ。というかあんたまさかいつもこの時間サボってるわけじゃないわよね⁉︎」

 

「まさかー」

 

「そんなにサボりたいならカリスに左遷するように上司に進言しようかしら」

 

「えっ、それって仕事時間減るよね⁉︎喜んで!」

 

「その代わり給料は減るけどね」

 

「すぐ戻りまーす」

 

なんか奥から聞こえてくるぞ?あっ、出てきた。さっきの女の人と一緒に、ʅ(◞‿◟)ʃ←こんなふうにやれやれといった感じを出しながら赤いショートカットの女の人が出てくる。なんでサボってた側なのにそんな態度取れるんだ?

 

「はいはーい、サーマルさんが来ましたよー」

 

赤髪の女が受付の席に座る。

 

「はいはいちゃっちゃと済ませたいからカード出して」

 

随分なこと言うなこいつ。わざとゆっくり出してやろうかな。

 

「なんだいその態度!失礼でしょう!」

 

「あでっ⁉︎」

 

スパーンと頭を引っ叩かれるサーマルとやら。

 

「なにすんのさ!」

 

「口答えしないでちゃんと仕事しなさい!」

 

「あだっ⁉︎二回も叩いたね!妹にも言葉の刃を突き立てられたことはあれど殴られたことはないのに!」

 

ガン○ムかよ。というかこいつ妹にも負けてんのかよ姉の威厳どこ行ったし。

 

「…カードお願いします」

 

もう一回叩かれてやっと抵抗が無駄だと気づいたのか、態度をあらためて再度受付をしだす。

 

「3枚ですね...えっ、君神の使いなの?やば、初めて会ったわー!」

 

他の人とは違って俺のカードは黒いからな。色を見るだけですぐにわかるのだろう。

 

「カイスにはどれくらいいるんすか?」

 

おいまた態度が崩れてきてんぞまた叩かれるけどいいのか?

 

「だいたい三ヶ月くらいですかね。魔法を勉強しにきたんです」

 

「なるほどなるほど...その次はどちらに?」

 

なんか入国審査官みたいだな。ペー○ーズプリーズみたいだ。

 

「三ヶ月したらガルムに行く予定です」

 

「なるほど...その次は?」

 

「あの、その質問意味あります?」

 

「えっ、あはは... れたか

 

「何か言いました?」

 

「いや、なにも。登録完了です。カードお返ししまーす」

 

カードを返される。露骨に話を変えられた気がするが、なんて言ってたんだろう。まぁ別にいっか気にしなくても。

 

「よーし仕事終わり!」

 

「終わってませんよ。終業時間はまだまだ先です。逃げようだって無駄ですよ」

 

「あ、いや、別ににげ、逃げようとしたわけじゃ...」

 

「サボろうとするのは仕事が少ない部署だからですよねー、そうですよね?」

 

「は、はいぃっ!」

 

「じゃあ上司に別部署に移動してもらうように進言しておくから。明日も仕事頑張ってねー」

 

「…ちょっ!そんな殺生なー!」

 

因果応報だな。南無三。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リヒトの研究所は...ここであってるのかな?」

 

次の日の朝、俺はリヒトに会うために研究所の前まで来ていた。研究所はカイスの端に位置しており、結構広い敷地を確保していた。個人の研究所にしては結構でかいな。

 

「推薦状よし、菓子折りよし」

 

行き道に菓子折りも買ってきたし、門前払いされることはない...はずだ。推薦状を渡すのが一番手っ取り早いだろうが念のためだ。

 

「すみませーん!リヒトさんいますかー!」

 

扉をノックしてから呼びかける。

 

「…いないのかな?」

 

返事は返ってこない。留守か?居留守の線もあるな。研究してて気づいてない可能性もある。とりあえずもう一回くらいノックしとくか。

 

コンコン

 

「リヒトさんいらっしゃいますかー!」

 

コンコンコンコン

 

「いませんかー?」

 

コンコンコンコンドン

 

「すみませーん!」

 

ドンドンドン!

 

「…いないのか」

 

少しずつノックが強くなっていたのはわざとだ。決して苛立っていたわけではない。「喧しい!」とか「ドア壊す気か!」とかそんな感じで出てきてもらうのを期待していたのだが、ここまでやって出てこないということは留守なのだろう。出直すか...

 

「お前、そこ退いてくれないか」

 

「ひょっ?」

 

後ろを振り返る。そこには、白髪細身の男が立っていた。

 

「邪魔だ。入れないだろう」

 

その男は俺を軽く押し退けると、扉を開けて中に入ろうとする。細身なのにどこに俺を軽く押し退けるだけの力が...と一瞬考えてしまったが、このチャンスを逃すわけがない。閉まりそうになる扉の速度を落とし、なんとか掴んで閉まるのを防ぐ。

 

「…何をしている。閉められないではないか」

 

男はグッと扉を引っ張ると、勢いよく扉がもってかれる。その勢いのせいで手を離してしまったので、足を挟んでなければ閉まっていただろう。ただめっちゃ足痛い。

 

「力強っ⁉︎あのっ、魔法を習いに来ました開けてください!」

 

「悪いが弟子は取らない主義なんだ。研究に集中したいんでね」

 

やはりこの男はリヒトだろう。まず何とかして中に入れてもらわなければ...シャ○子がやったときみたいに食べ物で釣って中に入れてもらおう。

 

「あの、菓子折りよかったら...」

 

「そんなものいらん。物で釣れると思うなよさっさと帰れ」

 

あかん逆効果だ扉を引く力が増してる⁉︎こうなったのも全てシャ○子が悪いんだよ!ちくしょうなんとか交渉しないと...!

 

「弟子は取らないってあなた自分の娘さん弟子にしてましたよね!それにニトラスだって弟子でしょう!弟子取ってるじゃないですか!」

 

「それは前の話だ。今はもう弟子を取るつもりはない」

 

「ああもう埒あかないこれ読んでくださいこれ!」

 

ドアに挟んでいる足とは逆の足ですぐ近くの壁を蹴り、全身を使って扉をこじ開けて中に滑り込む。そして鞄の中から推薦状を取り出す。

 

「勝手に入るんじゃない!」

 

推薦状を渡そうとしたその時、突如として突風が足元から吹き込んでくる。体が後ろに吹き飛びそうになってしまうが、能力でその突風の速度をゆっくり落とし、自らの速度を加速させて無理矢理前に歩く。

 

「とりあえずこれ読んでください話はそれからです!」

 

「話をするつもりは...この文字は⁉︎」

 

風が止む。急に止まったので、自分の加速を解くのが少し遅れてしまい危うく前に吹っ飛んで壁に突き刺さるところだった。危ない危ない。

 

「ちょっとそれ貸してくれ。読ませろ」

 

ぶんどるようにして俺の手から推薦状を取り、リヒトは椅子に座って読んでいく。

 

「これはニトラスの...こっちはフレアとミレアのか...」

 

この反応、いけそうな感じがする。

 

「推薦状、しかと拝見した。フレアとミレアのものは普通のインクで書かれているから偽造の可能性はあるが、ニトラスのは偽造のしようがない。本物だろうな」

 

なるほど、ニトラスのは筆記の魔法で描いたものだから、魔力を見ればわかるのか。というか偽造疑うのか...

 

「ということはつまり?弟子にしてくれると?」

 

「なぜそうなる。本物だからといって弟子にするとは限らない...話だけでも聞いてやる。俺を認めさせてみろ」

 

おおぅ面倒なこっちゃ。さて、どうやって認めさせようか...とりあえずずっと立ってるのもアレだし、俺も椅子に座ろう。

 

「まず、なぜ君は私に教えをこう?他でもいいのではないか?」

 

なるほど、ここでしかできない理由を示せとそういうわけだな。他のところでもできると思われてしまえば、他を当たれと言われるだろう。

 

「まず、俺は神の使いです」

 

「ああ、知っている。書いてあったからな」

 

「神の使いとして、勇者たちのサポートを命じられています。最大限のサポートをするために、ありとあらゆる力を手にしておきたい。なので、魔法を習いに来ました」

 

「それなら別を当たればいいだろう。わざわざ私でなくてもいいわけだ」

 

やはりそうきたか。

 

「リヒトさんじゃなきゃダメなんです。時間がない」

 

「時間...ニトラスのに書いてあったな。期間は三ヶ月。無茶としか言いようがない」

 

「だからこそです。ここなら何とかしてくれると、フレアとミレアに言われたので」

 

「…ふむ」

 

少し考えるような仕草をとるリヒト。

 

「次に、だ。お前...カリヤといったか。仮にカリヤが私の弟子となったとして、私はどんな得をする?」

 

得...か。何があるだろう。

 

「カリヤが弟子になると、私の時間が減る。研究の時間が減る。その損失を補えるだけの得がなければ、私が損するだけだ。弟子にする気が起きないのも当然だろう?」

 

「世界が救われる...というのは得になりません?」

 

「君がここで学ばなければ、世界が滅ぶとでも?」

 

「それはわかりませんが...俺がいないと世界が滅ぶのは確定です。それだけは確かなんです」

 

「それは神からの啓示かなにかか?」

 

「似たようなものです」

 

どうなってそうなるのか。勇者が全滅するという事実は聞いているが、その過程は知らされていない。俺がいるだけで問題ないのか、ちゃんと最大限の力をつけていないと全滅を変えられないのか、それすらもわからない。最悪、速度操作能力だけあればいいのかもしれない。それでも力を求める理由は、ただ単に俺が心配性なだけなのだが、持てる力は持っておきたい。

 

「…他に理由は?私が聞いている得というのは、君を弟子にしている間に出る損失を補うためのものだ。そんな未来のことを言われても困る」

 

やっぱだめか。別の得...あっ。

 

「この能力なんてどうです?周囲のものの速度を操れるこの能力、これを使えば研究が捗ると思いますよ?」

 

俺が次に浮かんだのはこれだ。魔法の研究とはどんなものなのかはわからないが、何らかしらの形で役に立てそうだ。

 

「確かに、君のその力をうまく使えば研究の効率が上がるかもしれない」

 

「でしょう?なら弟子に「だが、その力は魔法の実証実験くらいにしか使えない」…それが何か?」

 

「私の研究は主に新しい魔法を創り出したり、カスタムワードを見つけ出すものだ。創り出した後の実験なら君の力も役に立つだろうが、今実験するような新しい魔法はない。君の力では何もできない」

 

確かに、速度操作だとそこに干渉することはできないよな...思考速度を加速させたりすればできるかもしれんが、それを言っても変わらないだろう。

 

「それに、君の速度操作の力は一般性がない。神の使いの力はその人個人の力なせいで、魔法化して広めることもできない。スキルだったら原理を解明し、魔法にすることもできたのだがな」

 

へー、そんなこともできるのか。知らんかった...ってそんなこと考えてる場合じゃねぇわ。

 

「他に利点は?君に何ができる」

 

何か...何かないのか...?

 

「君がいないとできないこと、それを示せないことには弟子にすることはないね」

 

俺にしかできないこと...速度操作はダメで、他には...あっ、あんじゃん。

 

「ないのなら、ニトラスたちには悪いが...」

 

「いやちょっと待ってくれリヒトさん。一つあった、俺にしかできないことがな」

 

椅子から立ち上がる。

 

「なんだい?」

 

「これです!見ててください!俺の...『雷装』!」

 

俺の体に高圧電流が流れ出す。体から漏れ出る電流は、リヒトにも見えているだろう。

 

「………へあっ⁉︎」

 

すっごい変な奇声を上げたぞこの人。

 

「な、なんだその力⁉︎いやちょっと待て落ち着け私...その力もどうせ神の使いとしてのなのだろう?天の怒りを使いこなせる魔法なんてあれしかないはず...!」

 

「いや違う。この雷装は神の使いとしての力じゃない。れっきとしたスキルさ!」

 

俺しか持ってないため(なおステラ)、スキルなことを忘れていた。これなら研究材料として使えるだろう。

 

「そんな馬鹿な...天の怒りは勇者にしか扱えない魔法だぞ。それがスキルだというなら、どうやって手に入れたのか説明してみろ」

 

「特に変なことをしたわけではないですよ。雷...天の怒りに撃たれたら使えるようになりました」

 

「それ自体が変なことなんだが...そんなことでできるようになるなら、今どれだけの人がその雷装を使えるようになってることか...」

 

「でも実際なってるわけですし、認めるしかないのでは?あっ、武器なら天の怒りを直接浴びる必要はなかったですね。武器を上に投げて天の怒りを直撃させ、電流が残ってるうちに掴み取れば...『雷装・剣』こんな感じになる」

 

電流を纏ったダガーを見せる。

 

「これに触れれば、武器の方なら誰でも使えるようになる。実際、矢はカリスにいるステラって子も使えるようになってます。体に流す雷装は直接浴びないとダメそうですけどね」

 

「武器はそれでできるのか...あの地に近づく者はそうそういないから、検証も不十分だったのか。だが雷装、そっちは謎だな。何か特別な条件があるのか...ちょっと待て、そもそもピンピンしてるのがおかしい。あれを浴びた者は大抵なんらかの障害を負う。なぜ冒険者として活動できているんだ?」

 

「それは...あなたのお弟子さんに救ってもらったんですよ。その時意識なくて、お礼を言うことも出来なかったですけれど」

 

「…ニアか...確かにあいつなら蘇生できるだろうな。蘇生が一つの条件なのか...?」

 

リヒト、自分の娘のことあいつって言うのか...仲が悪いのか、そういう感じで言えるくらいに仲が良いのか...弟子にするくらいだから後者か。

 

「…ん?君はあの荒野で天の怒りを受けたんだよな?ニアがそこに偶然居合わせて蘇生したと?」

 

「いや、自分の足でカリスまで走りましたね。確か門の目の前くらいで倒れたような...そういえばその時にはもう雷装使えるようになってたな」

 

「蘇生が条件ではない?それよりも、天の怒りを浴びて動けるとは...それも走っただと?」

 

「一回目喰らった時、そのまま気絶したんだったな。懐かしいわ」

 

一ヶ月半くらい前だったかな。なんとか思い出す。

 

「気絶した...一回目?二回浴びたのか⁉︎」

 

「何回浴びたかは正直わかんないですけど、気絶する原因になった一回目と、飛び起きるきっかけになった最後の落雷は覚えてます。少なくとも二回ですね」

 

「二回浴びて生き残ったものはいない。もしかしたらそれが原因かも..」

 

顎に手を当て、考え込むリヒト。

 

…あれ?結局弟子にするかどうかってどうなった?雷装に意識向きすぎて忘れてない?この人。

 

「あの、それで弟子にするって話はどうなったんでしょう...か?」

 

「弟子?そんなことよりその雷装の調査だ!片手間程度に教えてやるから調査に付き合え!」

 

「えっ、ちょっ⁉︎」

 

襟を掴まれ、引っ張られる。何でこんな力強いの?魔法なのか?

 

「痛い痛い首絞まってる!」

 

襟を掴むその手を軽く叩き、降伏の合図を送る。

 

「喋れてるなら首は締まってない!」

 

伝わってねぇ!

 

「どこに連れてくつもりだ自分で歩けるから手を離してくれ!」

 

「早く実験!実験!」

 

どこの4342だよ!

 

「まずは仕組みを調べなければ...そしたらスキルの適用範囲を調べ、応用をできるか確認し、どうにかして魔法化させなければ!」

 

「なんか怖い熱量が怖い!もう少し落ち着いてリヒトさん!」

 

「十分落ち着いている!」

 

「全然落ち着いてない!なんなの?研究者みたいなのってみんなこういうキャラなのテンプレなの?」

 

「テンプレが何なのかわからないが俺はこれが普通だ!」

 

「一人称変わってんぞおい絶対興奮してんじゃねぇか!」

 

「俺はこれが平常運転だ!」

 

「嘘つけ!」

 

そうやって話している間も、俺は引っ張られ続ける。とりあえず速度操作で抵抗しようとしたが、自分を加速させて逃げようとしても、リヒトの謎の剛腕で逃げられなかったし、リヒトを遅くさせようとしたら逆に加速した。デバフに反応して加速バフでもかけたのか?何はともあれ、抵抗虚しく俺は地下室に引っ張られていった。

 

「さて実験をしよう。まずは仕組みの解明だ!とりあえず雷装を発動させてくれ。解析が完了するまでずっとだ!」

 

「はいはいわかりましたよ...なんでこうなった?」

 

雷装を見せない、別の方法で何かすればこんな面倒なことにはならなかったのだろうか。今すぐフローチャート戻して別のルート見たい。

 

「早くしてくれ」

 

「へいへい、『雷装』」

 

体に電流が流れ始める。

 

「まず、君が知っている限りの雷装の効果を話してくれ」

 

「それ、発動中にやる必要あります?」

 

「時間短縮だ。調べながら聞く」

 

時短のためならしょうがない。

 

「わかってることか...まず、雷装中は身体能力が増す。具体的にどれくらいってのはあんまりわからないけれど、速度は1.5倍くらいになる」

 

「速度操作でわかったのか。それ以外の強化率は要検証だな」

 

「電流は、自分の意思である程度操作できる。完全に接触していても流れないようにすることができるし、周りに流すこともできる。でも空気に流すことはできない。電圧とか電流も操作できるけど、空気に流せないってことはそこまで大きくはできなさそう」

 

そこは自分でも気になっているところだ。雷を受けたことで得た力なのに、雷のように空気を引き裂いて電流を放つといったことができないのだ。あくまで自分に流れ込んだ電流だけを再現しているのだろうか?まぁその謎もリヒトに解明してもらえばいいか。

 

「なるほどなるほど、他には?何かないのか?」

 

「あとは...魔力だけじゃなくスタミナも消耗することくらいですね」

 

「スタミナも?確かに、身体能力強化系の魔法はスタミナの消耗が少し増えることもあるが...動いてなくても減るのか?」

 

「そうですね、そしてもう限界」

 

スタミナを使い切ってしまい、痛みに耐えきれず雷装を解除してその場に倒れ込む。さっき引っ張られていた時にある程度消耗していたので、一分くらいで底をついてしまった。

 

「そうだ最後にわかってることが一つ。スタミナを使い切っても、魔力切れで雷装が解除されるまでは動けます。ものすごい激痛に襲われますけど」

 

「スタミナがなくなっても動ける?面白そうだやってみてくれ」

 

「面白そうって...さっきの話聞いてました?激痛がとっても痛いんですよ?」

 

「ちゃんと聞いている。研究のために必要なことだ。やれ」

 

「このマッドサイエンティストが!」

 

『雷装』

 

仕方なく雷装を発動した。全身に電流が流れ始め、それと同時に痛みが走り出す。

 

「痛い痛い痛い!」

 

「そのまま耐えてくれ。二分...いや一分でいい」

 

「そんなには...無理...ですって...!」

 

「頑張れ。この痛みを耐えれないようじゃこの先魔王と戦えないぞ」

 

「何知ったような口利いてんだあんたこの痛み知らないだろ!」

 

結局、その後一分経たずに力尽き、俺は意識を失った。

 

この人に師事するの失敗だったかなぁ...というのが、最期に考えたことだった。




リヒトの一人称、「私」にしたのに普段の癖で何度も「俺」にしちゃったので、興奮したら変わるような設定が生えてきました。
自分の小説そんなことばっかだなぁ...RTAの唐突なオリチャーみたいになって後々崩壊する、なんてことにならないよう祈ってます。

サーマルの名前ミスってるところあるの今さら気がついちゃった...(2024年1月4日)
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