前世の俺がすでに転生特典決めてました 作:ダイヤモンドリリー
戦闘回です。
「これ、前にログたちが言ってたやつだな。魔法に耐性のある魔物ねぇ」
リヒトの講義が終わり、俺はギルドに来ていた。そこで、リヒトに言われた通りの依頼を受けにきたのだ。対象は魔法への耐性があるという魔物。身体能力強化や属性付与の魔法の検証にはちょうどいい相手だろう。強化した物理で叩くのだ。
「やっほーリヒト見ってるー?」
ちなみに今、リヒトの監視を受けている。千里眼のような魔法を使っているようで、常に誰かに見られているかのような気配を感じる。一方的な監視なので、こんなふうなことを言っても返事が来ることはこないのだが、見られてるならこれくらい言わないとな。
「これ受理お願いしまーす」
長い列に並んで十分ほど順番待ちをし、受付に紙を渡す。
「はいはーい...あっ」
受付の女は俺を見るとうげっ、という顔をする。赤いショートカットの女。名前は確か...サーマルだったか。やたら印象に残っている。
「サーマルだったか。受付の分際でなんちゅう態度だ...」
「そっちだって神の使いだからってそんな口振りは良くないんじゃなーい?」
「自分の仕事サボるような奴に敬意を払う必要なんてないし当然だろ」
「そうだ思い出した!あんたのせいで私この受付に配属されることになっちゃったんだからね!責任とってよ!」
「やだ」
「即答⁉︎くっそこいつキネットに似てやがる...」
「キネット?妹さんの名前か?」
「えっ?うん。あんたみたいに小言言いまくる嫌な妹だよ」
「ずっとこの調子だとキネットさんも大変だっただろうな...」
「さん付け⁉︎ちょっ、私と態度違いすぎない⁉︎」
「しょうがないだろ自業自得だ」
「自業自得ってなに?」
「自業自得知らないとか...お前の頭の中の辞書にはいったい何が書いてあるんだ」
「辞書ってなに?」
「そこからかよ...」
ダメだ埒が開かない。これ以上色々言っても無駄だろう。
「というか早く受理してくれません?後ろつっかえてますし、背中に刺さる視線が辛い」
「あんたが色々言ってくるから遅れるんでしょうが...」
「負けるってわかってんのにいちいち反論してくるからだろ。あっ、もしかして負けることすら分かってない感じ?かわいそー」
うぷぷと口に手を当てて笑う。なんかこいつ弄り甲斐があるんだよな。初対面がアレだったからかな...見た目だけで言えば結構美人で人を惹きつける魅力があるのに、中身がアレすぎてネタキャラにされる運命が宿ってるみたいだ。ゴ○シみたいだな。あっちの方がハジケ具合はすごいけど。
「くっそムカつく...」
「早くしないとまた左遷されますよぉ?給料どれくらい減っちゃうんですかねぇ?」
心の中のメスガキが表に出てくる。イメージはワールド○イスターのし○れだ。あんな感じでうまーく神経を逆撫でしていく。
「なんかキモくなってきたし早く終わらせよ」
ぐふっ。こっちにもダメージが来た...流石にキモいとか言われたらヘコむ。心は硝子だぞ。筋力もD未満だし、きっと某英霊よりも心弱いぞ。
「はい、終わったからさっさとそこ退いてね。後ろの人待ってるし」
「言われなくても退きますよー」
さっさと列から離れ、ギルドの外に出る。
「よし、さっさと行きますか」
能力を発動し、南の門まで走る。魔物がいるのは北東にある森なのだが、門は北と南にしかないうえ、北の門は魔王軍が攻めてきたときに迎え撃つためだけに使われる門だそうで、基本的には開かないらしい。兵隊しか出入りできないのだ。なので、北の方に行くのにも南の門を使う必要があるのだ。
「わざわざ南行かないといけないのめんどくせぇなぁ。東西にも門作ればいいのに...」
魔物に攻められたとき、その侵攻の方向を絞ることで迎え撃つための戦力を集中させ、防衛しやすくするためとはわかっているのだが、交通の便として考えると面倒他ならないよな。
「壁の上を通ると対空魔法に貫かれるだなんて話を聞くから壁を越えるわけにもいかないし...トンネル効果で壁抜けしてぇ」
でもこの世界なら普通に壁をすり抜ける魔法とかありそうだな。もしそうだとしたら、壁の中にも何らかしらの攻撃魔法が仕込まれていそうだ。
「…っと、変なこと考えてる間にもうそろ門か。そろそろ解除しないと」
門の手前で能力を解除し、普通に歩き出す。
「そういえばだけど無人なんだな。魔法でセキュリティー全部やってんのか...なんかすごい不安になるな」
こういうセキュリティーって魔王軍幹部の魔法使いあたりに簡単に解除されて攻められるイメージなんだよな。少しぐらいは人を置いてもいいと思うんだけど...えっ、あっ、いるわ。透明化してるけど人いるじゃん。速度探知発動中だったから気付けたけれど、普通なら気付けないだろう。流石に保険はかけてあったか。
お疲れ様でーすと心の中で言いながら門をくぐり抜ける。あっ、門の外にもいるんだな。大変そうだなこの門番たち。誰にも認識されていないのに門番の仕事を全うしていくのちょっとすごいと思う。俺だったら、誰にも見られてないなら適当にやる。一日中立ち続けるの辛いだろうなぁ...今あくびした速度を感知したが、忘れておこう。さっきまで考えていたこと全て覆されてしまう。
「よし、走るか」
秒速30メートルで、カイスの壁に沿って東に走る。しばらく走って角を抜けると、今度は北東に向かって走りだす。
そのまま十分ほど走ると、魔法耐性を持つ魔物のいるらしい森に着いた。合計で二十キロ近く走ったはずだ。速度操作を持たない人がここまで来るには、どれだけの時間がかかるだろうか。普通に歩いて時速四キロ程度だとすると往復で十時間かかる計算だ。こんな時間にここに来れるのは、夜から出発した人を除けば俺くらいだろう。絶対北の門普通の冒険者にも使えるようにしたらいいと思うんだけど、少しくらい融通してくれないもんかね?
「到着っと。さて、どこにいるかなー?」
俺が狙っている魔法耐性を持った魔物は、体長約一メートルくらいで、紫色の鎧と盾を持ち、武器としてサーベルを持っているようだ。騎士みたいな容姿らしい。
「紫だと暗くて景色に同化しててもおかしくないな...探知しないと」
この森は黒い葉の広葉樹が生い茂っており、太陽の光の大半を遮っている。暗くて見通しの効かない森の中では、紫色の鎧を纏った魔物を見逃すこともあるだろう。探知を発動し、背中からの奇襲に気をつけながらあたりを散策する。
「……いた」
右斜め前にある木の後ろに、一体いた。ダガーを構える。
「旋風を纏いて疾くあれ」
加速魔法を発動すると、自らの足に風が纏わりつく。速度操作を使いながら纏った風を噴出させ一気に走り出し、一瞬で木の後ろ側に回り込む。そしてそこに立っていた魔物の首、鎧と兜の間に存在する隙間めがけてダガーを振り抜く。
スパンっと魔物の首が飛ぶ。頭が地面に落ちる。草の上に落ちたというのに、カランコロンと兜が音を立てる。
頭と胴体が完全に切り離された。けれども、魔物はすぐには絶命しなかった。魔物は最後の力、気力を振り絞ってその手に握るサーベルを振る。ダガーを振り抜いた体勢のため、左腕の盾は間に合わない。ならば。
「柔軟なる肉体鉄壁となる」
詠唱速度加速。サーベルが俺の体を切り裂く直前に詠唱が完了し、鋼鉄になった体がサーベルを弾く。そこに全力を尽くしていた魔物は、そのまま後ろに倒れて動かなくなった。
「……やっと動けるようになった」
効果時間は五秒ほどのようだ。このカスタムだと一切動けなくなるので、使い所に気をつけないと効果が切れた瞬間にやられるなんてことにもなりかねない。
「ってか服は切れるのか。ちょっとやだな」
どうやら硬くなるのは肉体だけらしい。カイスに戻ったら服買い替えないと...
「っ、危ないなぁ」
さっきの兜が鳴らした音で魔物が引き寄せられてきたらしく、真後ろから魔物が奇襲を仕掛けてくるが、いつものように速度探知で感じ取っていた俺はこれまたいつも通り振り下ろされたサーベルを軽々と避ける。
そして、避けた時の回転を利用してダガーを首めがけて振る。しかし防がれた。左手に持っていた盾で防がれたのだ。
「チッ!」
防がれたが速度はこちらの方が上。警戒されているため首を狙うのは無理そうなので、速度に身を任せた連続攻撃をしてダメージを蓄積させていくことにしよう。
まずは横薙ぎに振られたサーベルをサッと避け、右手にダガーを打ちつける。鎧越しのため切れはしないものの、その衝撃で魔物はサーベルを手放す。さらに、地面に落ちたサーベルを勢いよく蹴り飛ばし、回収されるのを防ぐ。
よし、これで魔物の攻撃手段を絶った。あと奴にできるのは盾を使った押し潰しくらいだろう。警戒は怠らず慎重に、かつ新手が来る前に終わらせよう。
腕や腹、肩などを狙って何度もダガーを振る。鎧があるためやはり切れはしないが、この攻撃は切るためのものじゃない。どのくらいの速さ、位置なら盾による防御が間に合うのか、それと盾と鎧の耐久力を見極めるためだ。肌感覚だが、耐久力はなかなかだ。ダガーでは傷ひとつつけるのにも苦労するだろう。
しかし、反応速度が若干遅い。サーベルを失い、盾に専念できるようになっているはずだがそれでも俺の速度に追いつけていない。首の防御に間に合ったのはほとんど偶然だろう。
「なら...その足貰うよ!」
『路面凍結』『微風』
地面に手をつき、地面を凍りつかせる。そして、手を真後ろに向け風を噴き出しながら魔物の足めがけてスライディングする。魔物は盾を振り下ろして攻撃しようとするが間に合わず、すれ違いざまに放たれた斬撃によって膝裏を斬られ、膝から崩れ落ちる。
「よし、あとは首を...そうだ、せっかくだから使っておこう。その熱量は残留する」
剣に魔法を付与する。そういえば必ずカスタムするように言われてたけど、こっちを使いたかったんだからいいよなべつに。
「よっ」
首や肘を軽く斬り裂く。その瞬間、つけた傷に熱が集中してグズグズに溶けていく。それによって魔物は徐々に死へと近づいていく。
「かなーり強いけど...ちと残酷だな。傷口がちょっとグロテスクだ。まぁ殺そうとしているのに何言ってるんだって話だけど」
そもそも魔物にどれくらい意識があるのかわからないんだよな。痛いとかそういう感覚はどれくらいあるんだ?考えるだけ無駄なことだろうけど。
「よし、死んだな。次を探すか」
速度操作の応用で生死確認をする。ほんと便利だなこの能力。前世の俺と神様に感謝だな。
「そうだ。ちょっとアレだけど、これを使わせてもらおうかな」
地面に落ちていた、最初に殺した魔物の兜を持ち上げる。さっきの魔物はこれが落ちた時の音を聞いてここまで来たはずだから、これを使えば魔物を誘き寄せることができるかもしれない。使えるものはなるべく全て使っておくとしよう。
「うわびっくりした...こんな顔してたんだなこいつ」
兜の中から頭が落ちてきた。綺麗な顔してるだろ、死んでるんだぜ...一瞬で斬り飛ばしたからか、苦痛な顔に歪んでたりはしなかった。
「まぁいいや気にせず使おう。それっ」
兜を木に向かって叩きつける。カンッカランカラン...と音が辺りに響く。
「これで来てくれると嬉しいけど...どうだろ」
来ない可能性は十二分にある。音を聞いて向かった仲間が帰ってこないのだから、警戒されていても不思議じゃない。まぁこれは魔物が仲間と動いているという仮定ありきの考えだが。
「おっ、きたきた。今度は複数体できたか」
目の前から三体、こちらにやってくるのが見えた。
「よし、最後にあれ試して終わらせようかな...ってマジかよ⁉︎」
半径三メートル以内にいくつもの魔物が入り込む。数えている暇はない。ダガーをしまい、急いで足に纏わせた風を噴出させながら跳び、広葉樹の枝を掴んで距離を取る。
「危ねぇ...どれだけきてやがんだ」
見た感じ十体は超えている。逆だった。仲間が帰ってこないのなら、仲間を殺したであろう敵を全員の死力を尽くして殺す。仲間がやられているのにおずおずと逃げるなんてことはしないらしい。
「とりあえず状況の確認をしないと。どうやったらこいつらを倒せる...?」
俺も逃げる気はない。せっかく出てきてくれたのだから、全部倒すのみ。幸い、奴らはサーベルを投げることはしないらしい。この位置なら魔物たちの攻撃は届かない。ゆっくり状況を見定めよう。
まず、敵の数は14体。全て同じ魔法耐性持ちの魔物。魔法は効かない。有利に働きそうな地形は、一部凍りついた地面とこの森の木々。何体かは凍った地面と雷装を使えば足止めできる。どれだけ足止めできるのかと、木々を使った縦横無尽な高速戦闘が、この戦闘の要になるだろう。
「あとは...ん?」
なんか木が振動してる。地震...はこの世界にないし、魔物が俺を落とそうと揺らしてるのか?能力の範囲外だから下で何が起こってもわからないんだよな。いったいなにが...って嘘だろあいつら木をサーベルで切り倒そうとしてやがる⁉︎
このままじゃ無理やり地面まで引き摺り下ろされる。うまく倒れる方向を操作して魔物を潰すのも良さそうだが、さっき考えた状況を変えるのはあまり好ましくない。急いで木の枝の上から飛び、魔物たちから距離を取る。
『雷装・矢』
矢を取り出し、電流を流す。距離を取ったとき、凍った地面の方に跳んだので、このまま魔物たちが追いかけてきたらそこを通ることになる。凍っている範囲は狭い。そこまで多くは巻き込めない。出来るだけ多く、限界を見定めろ。
「………今っ!」
その一瞬を逃さない。加速を使い、完璧なタイミングで矢を凍った地面に突き刺す。
高圧電流が氷を通して魔物に流れる。その数は六体。動けるのは八体。
「これが限界か...さぁ残った奴ら!死にたいやつからかかってきな!」
ダガーを引き抜き、魔物が来るのを待つ。まず二体がこちらにやってくる。一体で来ないのは感心するが、それでも少ない。全員で来なければ死ぬだけだというのに...
「その熱量は放逐される」
付与魔法を発動し、すぐに二体を斬り裂く。何度も、何度もだ。
この魔法は傷をつけることで効果を発動するもの。傷をつけられなければ、何の意味もないのだ。このダガーで鎧に傷をつけるのは難しいが、できないわけじゃない。連続で一点を斬ることでダメージを蓄積させていき、なんとか傷をつける。
「片方はこっちにしておくか。その熱量は残留する」
さっきのと合わせて、右手のダガーには放逐の方を、左手のダガーには残留の方を付与したことになる。この二本のダガーを使い、さっきつけた傷の部分を何度も斬る。
そうして何度も斬りつけていると、少しずつ傷が大きくなっていく。ヒビが入って、鎧が欠け始める。
「やっぱり物理耐性はそこまでないみてぇだな!」
二つの付与魔法。つけた傷に大量の熱を送り込む熱残留。つけた傷から大量の熱を取り出す熱放逐。それぞれの効果は、言ってしまえば加熱と冷却だ。それを金属である鎧に交互にやれば、当然脆くなる。ダガーでも簡単に傷をつけられるようになる。
「貫いた!終わりだっ!」
ついに鎧を破壊した。中身が見える。そこに向けてダガーを一気に突き出す!
「チッ、盾めんどくせぇ!」
盾があるのを忘れていた。鎧がない場所があるなら、そこを徹底的に守るのは当然のこと。防御されるのは必然だった。
「もういいこいつで上からぶっ潰す!」
今からまた加熱と冷却を利用して盾を壊すのには時間がかかる。ダガーをしまい、さっさとロングソードを取り出す。
「オラッ、オラァッ!吹き飛びやがれ!」
盾の上から思い切りロングソードで殴る。速度操作による加速も相まって、一振りで二体の魔物が吹き飛んでいく。そのまま木に激突、動かなくなる。
「最初からこれでよかったじゃねぇか...オラオラかかってきな腰抜けども!」
ロングソードを魔物たちに突きつける。しかし、魔物たちは動かない。慎重なのか、はたまた電流で拘束されている仲間が回復するのを待っているのか...
「こねぇならこっちから行くぞ!」
時間稼ぎはさせない。一瞬で動ける六体に近づき、兜越しに顔面を殴る。兜がヘコみ、中にある頭が砕ける感触が手に伝わる。頭を斬り飛ばしても少しの間動けるのは最初の一体で確認済みなので、速度操作で死亡確認することを忘れない。死んだフリで油断させられて、背中を切られちゃたまらん。
「脆い脆い!」
頭を何度も叩き、確実に殺す。やはり物理攻撃への耐性は低いみたいだ。もちろん普通の鎧くらいの耐久性はあるようだが、ある程度の強化魔法でもかけていれば簡単に突破できるだろう。加速を使えば文字通り一瞬だ。
「あと三!」
残る動ける魔物は三体。その三体が三方向から俺に向かってサーベルを振る。そのうち一つは左腕の盾で弾き、もう一つはロングソードを当てて軌道を逸らす。最後の一つが迫ってくるが、盾で弾かれてバランスを崩していた魔物の方に体を捩ることで避ける。
「あらよっと」
無理やり身を捩ったせいで軽くバランスを崩すが、無理に体勢を戻すと隙を晒してしまうだろう。そのまま倒れ込んで地面を転がり距離を取る。
「そろそろ拘束が解けるころ...さっさと終わらせよう。『雷装』『雷装・剣』」
雷装を使いさらに速度を加速させる。秒速45メートル。魔物との間にある二メートル程度の距離。一瞬で詰め寄り、まずは足を薙ぎ払う。電流が鎧を通して魔物に流れ込む。痺れる感覚など、今まで感じたこともないはずだ。耐えきれず盾とサーベルを手放す。
「一...二...三っと」
痺れて動けない魔物の頭を一体ずつ潰していく。
「一丁上がり。さて、残りは...あいつらだけだな」
ちょうどその時、雷装の拘束が解けた。六体の魔物たちは落とした盾とサーベルを急いで拾っていた。その隙をついて攻撃することはしない。スタミナが結構減ってきているので、回復に専念する。
「すぅーー...ふぅーー...」
深呼吸で酸素を出来るだけ多く取り込む。酸素だ酸素を持ってこーい!
「よしある程度回復したな。行くか」
ロングソードを構え、秒速30メートルで走る。魔物たちの中心を突っ切り、すれ違いざまに二体を殴る。
「まずはテメェらからだ!」
殴った二体が集団から弾き出される。集団を走り抜けた俺はすぐさま方向転換し、その二体に向かって走る。そしてその勢いのまま跳び上がり、魔物の首めがけてロングソードを振り下ろす。
鎧がヘコみ、ゴシャッと肉が潰れる音がする。同じ箇所をもう一度叩いて念入りに潰してからもう一体の方を向く。魔物は集団に戻ろうとこちらに背を向けて走っていた。格好の獲物だ。
『投擲』
ダガーを一本引き抜き、魔物に向かって投げる。ダガーは回転しながら飛んでいき、鎧のない膝裏に突き刺さる。それによって魔物はその場で膝をつく。
「もーらいっ」
首めがけてロングソードをフルスイングする。骨...と言っていいのかわからないが、それに準ずる器官が粉々に砕け散る感触が伝わる。
「あと四体...行くぜェ!」
残った魔物たちの方を向く。そしてグッと足を踏み込み、最高速度で走り出そうとする。
しかし、その速度は人並みであった。
「加速が⁉︎」
なんとか踏みとどまり、後退りする。加速しないで突っ込めば、俺は数の暴力に打ちのめされることになるだろう。
「ここで魔力切れかぁ...」
加速出来なかった理由はただ一つ。魔力切れだ。速度操作は魔力の効率がいいとはいえ、ずっと使っていれば消耗する。鎧を貫通させるために付与魔法を使って何度も攻撃を叩き込んだのも、魔力が切れた理由の一つだろう。
しかし、本来ならこの程度の戦闘時間では魔力切れは起こさない。こんな時間で切れていたら、ムカデと一人で戦ったときに切れていないのがおかしいのだ。魔力が切れた根本的な理由。それは別にある。
「やっぱ、回復速度上げてないとこうなるか...」
そう、俺は魔力の回復速度を弄っていなかったのだ。リヒトに言われて、回復速度の加速を封じていた。そのせいで魔力が切れたのだ。
「この程度で切れるとなると...魔法の使い方をもっとちゃんと考えないとダメそうだな。速度操作ばっかに頼ってちゃいつか痛い目見そうだ」
魔力を使い果たせば、魔力が全回復するまで魔法とスキルが使えなくなる。速度操作も同様だ。そうなれば、能力に頼って戦ってきた俺は詰む。リヒトは、この魔力切れの状況を生み出すために、加速を封印させたのだ。
「ってダメだな今考え込んじゃ。これからどうするか考えないと」
まだ四体、魔物は残っている。今は警戒しているようで襲ってこないが、じきに魔力切れを起こしたことに気づいて襲ってくるだろう。
「まぁ倒す一択なんだけど」
魔力が切れたから逃げる?そんな無様なことはしない。それでは何のための実践だ。能力が使えなくても奴らを倒せるということを証明して見せよう。
「いいかテメェら!」
魔物に向かって叫ぶ。自らに発破を掛けると共に、魔物を挑発する。
「俺は逃げも隠れもしねぇ!行くぞ!殺し合いの始まりだァ!」
俺はロングソードを構え、魔物に向かって走り出した
戦闘シーンよりも、サーマルとの会話の方がスラスラと書くことができました。
内容の薄い掛け合いを書く方が自分の性根に合ってるみたいです。
異世界バトルものを書いてる身としてそれはどうなんだ...?